説明

推進工法用掘進機および推進工法

【課題】 隔壁板を分解せずに、そのまま撤去・回収できるので、工程の簡素化、工期の短縮化を図ることができる。
【解決手段】 外殻2の前方に複数のビット3aを備えたカッター3を設け、カッター3の後方で外殻2の内部に隔壁板28aを設けて外部と仕切り、隔壁板28aの背面にカッター3を回動させる駆動装置4を設けた推進工法用掘進機1において、隔壁板28aは、外殻2の内側に周設した受け部材29に対してその後方側に接合し、この受けフランジ29と離脱してカッター3や駆動装置4とともに後方に移動撤去できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山、地下に直径の中口径又は小口径のトンネルを構築するための推進工法に用いられるものとして、前方の回転するカッターによって地中を掘削し、後端に推進管を接続して地中に押し込むように推進させて地中管を構築する推進工法用掘進機およびそれを用いた推進工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の推進工法用掘進機は、外殻である鋼管のスキンプレートの内側に台座や支持アームを接合し、掘進機本体を台座や支持アームにボルトや溶接で取り付け、掘進機本体の前方に隔壁板を取り付け、隔壁板と外殻とは溶接で接合していた。
【0003】
隔壁板からは、前方に向かって掘進機本体の駆動軸が突出し、駆動軸に複数のビットを備えたカッターを取り付ける。
【0004】
従来の推進工法用掘進機で人孔に向かって掘削するには、まず発進用の立抗を築造し、クレーン等で掘進機を坑内に設置する。次にカッターを回動させ、掘進機の後方に既設したジャッキで掘進機の後方に取り付けた推進管を押して掘削する。
【0005】
推進工法用掘進機が人孔へ向かって掘削し前進すると最後方の推進管の後方に新たな推進管を取り付けジャッキで押す。これを繰り返すことにより暗渠を築造する。人孔付近に達し、推進工法用掘進機を回収するには、掘進機を分割しない場合では、掘進機の大きさに合わせた非常に大きな到達立抗を人孔付近に築造していた。また、掘進機を溶断により分割して回収する場合にも推進工法用掘進機の2〜4分割に合わせた到達立抗を人孔付近に築造する必要があった。さらに、どちらの場合においても推進工法用掘進機の回収用の到達立抗は人孔より大きなものであった。
【0006】
これに対して、外殻(スキンプレート)を地中に残し、残した外殻(スキンプレート)の内側にコンクリートを配設して本設として利用する場合には、掘削設備のみを人孔から排出すればよく、その場合には、外殻(スキンプレート)を地中に残し、溶断やボルトの取り外しにより推進工法用掘進機の本体を外殻より分解・撤去する。
【0007】
かかる推進工法用掘進機の本体の分解・撤去は、カッターが回転軸に脱着自在に取り付ける構造になっていて、目的地点まで掘削した後に隔壁板とカッターと駆動装置とを分解し回収できるようにする。
【0008】
隔壁板については、溶断して細分化するのが通例であるが、下記特許文献は隔壁板を複数の面板を脱着自在に連結した構成にし、隔壁板を取り外して複数の面板に分解して除去することが提案されている。これによれば、隔壁板が、扇状の面板の直線辺部分を重ね合わせ、ボルトで連結するものは、ボルトの連結取り外しで容易に隔壁板の分解・組立てができるようにし、かつ、連結部分が隔壁板の中心から偏心するようにして回転軸用の開口を避けるようにして隔壁板の強度を確保する。
【0009】
【特許文献1】特開2002−322896号公報(分割回収ができる推進掘削装置)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように隔壁板は推進工法用掘進機の外殻の前端部にあって外部と掘削機本体とを閉鎖するものであり、その撤去は溶断して細分化するか、または、細分化可能に組み立てたものを分解するかであり、溶断の場合は作業に時間と手間がかかり、細分化可能に組み立てるものでは、構造が複雑となり、強度を確保のための十分な配慮が必要となる。
【0011】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、隔壁板を分解せずに、そのまま撤去・回収できるので、工程の簡素化、工期の短縮化を図ることができる推進工法用掘進機および推進工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は前記目的を達成するため、推進工法用掘進機としては、外殻前方に複数のビットを備えたカッターを設け、カッターの後方で外殻の内部に隔壁板を設けて外部と仕切り、隔壁板の背面にカッターを回動させる駆動装置を設けた推進工法用掘進機において、隔壁板は、外殻の内側に周設した受け部材に対してその後方側に接合し、この受け部材と離脱してカッターや駆動装置とともに後方に移動撤去できるようにしたことを要旨とするものである。
【0013】
推進工法用掘進機を用いた推進工法としては、発進立抗を築造し、外殻前方に複数のビットを備えたカッターを設け、カッターの後方で外殻の内部に隔壁板を設けて外部と仕切り、隔壁板の背面にカッターを回動させる駆動装置を設けた推進工法用掘進機を坑内に設置し、次にカッターを回動させ、掘進機の後方に既設したジャッキで掘進機の後方に取り付けた推進管を押して掘削し、掘進機が前進すると最後方の推進管の後方に新たな推進管を取り付けジャッキで押し、これを繰り返すことにより暗渠を築造する推進工法において、推進工法用掘進機は外殻の内側に周設した受け部材に対してその後方側に接合し、この受け部材と離脱してカッターや駆動装置とともに後方に移動可能とし、推進工法用掘進機が到達した地点で外殻を残して、カッター、隔壁板、駆動装置を一体として発進立抗まで移動撤去することを要旨とするものである。
【0014】
本発明によれば、隔壁板を外殻内に着脱自在とし、また、カッター、隔壁板、駆動装置はこれらを一体として外殻に対して移動撤去できるようにしたので、隔壁板を分解せずに、そのまま撤去・回収できるので、工程の簡素化、工期の短縮化を図ることができる。
【0015】
請求項3および請求項4記載の本発明によれば、隔壁板は、カッターや駆動装置とともに後方に移動可能とすることで、大きな立坑である発進立坑まで戻して、推進掘削装置をつり上げるようにして回収することができる。その結果、到達地点が人孔又は既設管のような場合のごとく開口が小さい場合にも問題はない。さらに、前記のごとく第1推進掘削装置と第2推進掘削装置とを用意し、地盤の離れた位置から対向させて掘進させ、衝突した外殻同士を接合させる場合でも、これら第1推進掘削装置と第2推進掘削装置のそれぞれ、またはいずれか一方のカッター、駆動装置、隔壁板を一体として発進立坑まで移動させ、ここから撤去することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように本発明の推進工法用掘進機および推進工法は、隔壁板を分解せずに、そのまま撤去・回収できるので、工程の簡素化、工期の短縮化を図ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の推進工法用掘進機の第1実施形態を示す縦断側面図で、掘進機1は、外殻2の前方に前面にビット3aを複数取り付け、先端に半径方向に伸縮自在の伸縮部3bを設けたカッター3を配設する。
【0018】
外殻2の前部には、フード管5をスライドジャッキ34により外殻2の外側に前後にスライドするように設け、また、本実施形態では外殻2は前後に2分割してフロント管2aとテール管2bとは相互に屈折可能に嵌合させ、相互間に方向修正ジャッキ37を配設した。
【0019】
これらフロント管2aとテール管2bからなる外殻2の内側にコンクリート製の壁体6を設けた。
【0020】
また、外殻2の前端部に隔壁板28aを設けて外部との閉鎖を行い、隔壁板28aの前面からは、前方に向かって掘進機本体の駆動軸が突出し、この駆動軸にカッター3を複数のビットを備えたカッター3を取り付ける。
【0021】
さらに、隔壁板28aの背面にはギヤボックス4a、減速機4b、電動機4c、油圧ユニット4dからなる駆動装置4を設け、この駆動装置4に排泥バルブ35、緊急ゲート36を取り付けた。また、駆動装置4には車輪31a,31bを設けておく。
【0022】
隔壁板28aはカッター3や駆動装置4に一体のものであり、また、外殻2の内側に受け部材としての受けフランジ29を周設し、この受けフランジ29に対して隔壁板28aの周端に形成した係合部としての係合フランジ30をボルト止めして相欠き継ぎの状態で固定する。
【0023】
また、隔壁板28aは受けフランジ29に対してカッター3や駆動装置4とともに外殻2の後方に移動可能なように係合段部が前に向くように係合フランジ30は後方が突設するものである。当然、この係合フランジ30の径はコンクリート製の壁体6の内径よりも小さく、該係合フランジ30を周端とする隔壁板28aがコンクリート製の壁体6内を通過できるようにする。
【0024】
受け部材としての、受けフランジ29は、部材29aと部材29bとの相欠き継ぎでボルト結合し、部材29bを外した後の部材29aはコンクリート製の壁体6の内径よりも出っ張らないものである。
【0025】
駆動装置4には車輪31a,31bを設けておく。また、17はゴム製からなり内部に空隙を形成して液体や気体による流体を導入して膨張させることができるようにした膨張体で、これらは掘進機1の外殻2の外側に設ける。
【0026】
次に使用法について説明する。掘削すべき地盤Gで掘進機1を発進立坑7に設置し、到達地点の人孔8に向けて掘削する。掘進機1は後方から発進立坑7に設けた押圧装置21で推進管20を押圧して管路を構築しながらそれぞれ掘進していく。
【0027】
掘進機1を到達位置(人孔8の所)まで進め、図2に示すように、掘削を停止させてカッター3の伸縮部3bをそれぞれ縮める。
【0028】
次に図2に示すように、スライドジャッキ34をかけて伸長させ、フード管5を前方にスライドさせて人孔8に挿入させ、フード管5で地盤を遮蔽する。また、膨張体17の内部に図示しないポンプで流体を導入し、全体を膨張させて地山に圧着させ外殻2の間の隙間を密閉する。
【0029】
そして図3に示すように受けフランジ29から係合フランジ30を分離させ、カッター3、駆動装置4、隔壁板28aをともに外殻2の後方に車輪31a,31bにより移動する。
【0030】
その際、邪魔になる方向修正ジャッキ37やスライドジャッキ34は取り外し、また、駆動装置4からは排泥バルブ35、緊急ゲート36は取り外しておく。
【0031】
このようにして、外殻2を残して、カッター3、隔壁板28a、駆動装置4を一体として発進立抗7まで移動させ、この発進立抗7から地上に撤去する。
【0032】
なお、前記実施形態は到達地点の人孔または到達立抗に向けて掘削する場合について説明したが、第1推進掘削装置と第2推進掘削装置を地盤の離れた位置から作動させて対向して掘削し、第1推進掘削装置と第2推進掘削装置の外殻同士を当接させて連続する管路を形成するようにした場合においても適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の推進工法用掘進機の1実施形態を示す縦断側面図である。
【図2】本発明の推進工法用掘進機の1実施形態で、カッターを縮めた状態の縦断側面図である。
【図3】本発明の推進工法用掘進機の1実施形態で、カッター、隔壁、駆動装置の1体移動を示す縦断側面図である。
【図4】本発明の推進工法用掘進機の掘進状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1 掘進機 2 外殻
2a フロント管 2bテール管
3 カッター 3a ビット
3b 伸縮部 4 駆動装置
4a ギヤボックス 4b 減速機
4c 電動機 4d 油圧ユニット
5 フード管 6 壁体
7 発進立抗 8 人孔
17 膨張体 20 推進管
21 押圧装置 28a 隔壁板
29 受けフランジ 29a, 29b 部材
30 係合フランジ 31a,31b 車輪
34 スライドジャッキ 35 排泥バルブ
36 緊急ゲート 37 方向修正ジャッキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻前方に複数のビットを備えたカッターを設け、カッターの後方で外殻の内部に隔壁板を設けて外部と仕切り、隔壁板の背面にカッターを回動させる駆動装置を設けた推進工法用掘進機において、隔壁板は、外殻の内側に周設した受け部材に対してその後方側に接合し、この受け部材と離脱してカッターや駆動装置とともに後方に移動撤去できるようにしたことを特徴とする推進工法用掘進機。
【請求項2】
発進立抗を築造し、外殻前方に複数のビットを備えたカッターを設け、カッターの後方で外殻の内部に隔壁板を設けて外部と仕切り、隔壁板の背面にカッターを回動させる駆動装置を設けた推進工法用掘進機を坑内に設置し、次にカッターを回動させ、掘進機の後方に既設したジャッキで掘進機の後方に取り付けた推進管を押して掘削し、掘進機が前進すると最後方の推進管の後方に新たな推進管を取り付けジャッキで押し、これを繰り返すことにより暗渠を築造する推進工法において、推進工法用掘進機は外殻の内側に周設した受け部材に対してその後方側に接合し、この受け部材と離脱してカッターや駆動装置とともに後方に移動可能とし、推進工法用掘進機が到達した地点で外殻を残して、カッター、隔壁板、駆動装置を一体として発進立抗まで移動撤去することを特徴とした推進工法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−37595(P2006−37595A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221494(P2004−221494)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(596006972)進和技術開発株式会社 (2)
【Fターム(参考)】