説明

換気塔構造

【課題】 建物の屋根に設けられる換気塔を、パーツ化された必要最小限の構成部品によって構成し、構造が簡単で、施工も容易に行えるようにする。
【解決手段】 建物1の屋根2上に屋根裏と屋外とを連通させるための換気塔10を立設した状態で設けられる。この換気塔は、屋根の屋根下地材21の所定個所に穿設された換気塔取付用開口22に嵌挿されるとともに該開口の口縁部分に水密性を保って係止固定されるフランジ部11aを有する換気塔固定ベース部材11と、この換気塔固定ベース部材の上部筒部に嵌装されるように屋根ふき材31に一体に設けた水切り12と、前記換気塔固定ベース部材の上部筒部および上記水切りの筒状部に嵌装して組付け固定される筒状部を有し屋根裏から屋外に開口する換気路を形成する換気塔本体14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内の換気を図るために建物の屋根等に立設させて設けられる換気塔構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物内の換気を図るために、建物上部の屋根等の適宜の位置に換気塔を立設させて設け、小屋裏空間を初めとする建物内の換気を行うことが従来から行われている。(例えば、特許文献1,2等参照)。
【0003】
これらの従来構造では、屋根の所定個所に開口を設けるとともに、該開口の側縁に沿って周壁部を順次組み立てることにより、全体としてほぼ角筒状を呈する換気塔を構築するように構成されている。
【0004】
そして、このような換気塔によって形成される換気通路により、建物内の換気を行うことができるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−232257号公報
【特許文献2】特開2008−106512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したような従来の換気塔構造にあっては、構造が複雑で、構成部品点数が多く、組み立て作業も繁雑であった。特に、上述した従来構造のように、角筒体を煙突状に屋根上に立設させて設ける際の施工作業には手間がかかり、作業日数も嵩む等といった問題があった。
【0007】
さらに、このような従来構造では、屋根材と換気塔を構成する部材との間での水密性を確保することが必要であり、上述した作業の繁雑さや作業期間、さらに作業コストが嵩み、しかも確実な水切り状態を確保することが難しいといった問題を避けられず、何らかの対策を講じることが望まれている。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、換気塔をパーツ化した単純な構造とし、簡単かつ確実に組立でき、施工性に優れているとともに、各部の水密性を確実に確保することができる換気塔構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的に応えるために本発明(請求項1記載の発明)に係る換気塔構造は、建物の屋根上に立設した状態で設けられ、屋根裏と屋外とを連通させるための換気塔を備え、この換気塔は、前記屋根の屋根下地材の所定個所に穿設された換気塔取付用開口に嵌挿されるとともに該開口の口縁部分に水密性を保って係止固定されるフランジ部を有する換気塔固定ベース部材と、この換気塔固定ベース部材の上部筒部に嵌装されるように屋根ふき材に一体に設けた水切りと、前記換気塔固定ベース部材の上部筒部および上記水切りの筒状部に嵌装して組付け固定される筒状部を有し屋根裏から屋外に開口する換気路を形成する換気塔本体とを具備してなることを特徴とする。
【0010】
本発明(請求項2記載の発明)に係る換気塔構造は、請求項1記載の換気塔構造において、前記換気塔本体は、前記換気塔固定ベース部材の上部筒部および上記水切りの筒状部に嵌装して組付け固定される第1の筒状部と、この第1の筒状部の上端側部分に並設されるとともに下端側が前記屋根表面よりも上方位置で開口されている第2の筒状部と、これら第1、第2の筒状部の上端部に設けられ各筒状部内の換気通路を連通させる連通路を有するキャップ部とからなり、屋根裏から第1の筒状部内の第1通路、キャップ部内の連通路、第2の筒状部内の第2通路を経て屋外に開口する換気路を形成するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明(請求項3記載の発明)に係る換気塔構造は、請求項1または請求項2記載の換気塔構造において、前記換気塔固定ベース部材は、フランジ部が屋根下地材上にビス止め固定されるとともに、防水シートが設けられ、この防水シート上に設けられる屋根ふき材に、前記防水シート上に突出される換気塔固定ベース部材の上部筒部に嵌装される水切りが一体に形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明(請求項4記載の発明)に係る換気塔構造は、請求項2または請求項3記載の換気塔構造において、前記換気塔本体を構成する第1及び第2の筒状部は、円筒体の中央部を仕切る仕切り壁の両側に形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明(請求項5記載の発明)に係る換気塔構造は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の換気塔構造において、前記換気塔本体の第2の筒状部における屋外への開口部分にはネットが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明に係る換気塔構造によれば、換気塔を、換気塔固定ベース部材、屋根ふき材に一体に形成した水切り、換気塔本体等による必要最小限にパーツ化された構成部品によって構成しているから、簡単な構成で、組み立て作業も極めて簡単に行え、施工作業が簡単である等の種々優れた効果がある。すなわち、本発明によれば、屋根の下地板に開けた開口に換気塔固定ベース部材を組付け、これに屋根ふき材の水切りを被冠させて組付けるとともに、上方から換気塔本体を組付けることで、簡単かつ確実に組み立てることができる。
【0015】
さらに、本発明によれば、上述した水切りを屋根ふき材に一体に設けることにより、上述した組立性に加えて水密性も簡単かつ確実に確保することができ、この点でも施工性が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る換気塔構造の一実施形態を示す要部断面図である。
【図2】本発明に係る換気塔構造の一実施形態を示し、換気塔を設ける屋根上に敷設される屋根ふき材の平面図である。
【図3】本発明に係る換気塔構造を適用する建物の一例を示し、(a),(b),(c)は建物の正面図、側面図および屋根の平面図である。
【図4】本発明に係る換気塔構造において、換気塔本体を示す概略斜視図である。
【図5】本発明に係る換気塔構造の一実施形態を示し、(a),(b),(c),(d),(e),(f),(g)は換気塔の組立手順を示す概略斜視図である。
【図6】(a),(b)は図5の(g)に続く換気塔の組立手順を示す概略斜視図である。
【図7】本発明に係る換気塔構造の別の実施形態を示し、(a)は換気塔本体を示す概略斜視図、(b)はその構成要素を分解して示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
建物の屋根上に立設される換気塔を、パーツ化した単純な構造とするとともに、屋根ふき材に一体型水切りを一体に設けることにより、各部の水密性を確実に保って構成することができる換気塔構造を実現した。
【実施例1】
【0018】
図1ないし図6は本発明に係る換気塔構造の一実施例を示す。
これらの図において、全体を符号10で示す換気塔は、図3(a),(b),(c)に示すように、建物1の屋根2において、適宜の個所に立設して設けられている。なお、屋根2は陸屋根形状で形成され、わずかな水勾配をもって傾斜して形成されている。また、図中2aは屋根2の周囲を取り囲む覆い部である。
【0019】
なお、本実施例の建物1は、壁や床、屋根といった建物の構成要素を予め工場にてパネル化しておき、施工現場でこれらの建築用パネルを組み立てて構築するパネル工法で構築されるが、従来の軸組工法や壁式工法の木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造等の建物にも適用することができる。
【0020】
ここで、この建築用パネルとは、図示はしないが、縦横の框材が矩形枠状に組み立てられるとともに、矩形枠の内部に補助棧材が縦横に組み付けられて枠体が構成され、この枠体の両面もしくは片面に、面材が貼設されたものであり、内部中空な構造となっている。さらに、その内部中空な部分には、通常、グラスウールやロックウール等の断熱材が装填されるものである。
【0021】
本発明によれば、上述したような建物1の屋根2の所定個所に、図1、さらに図5および図6に示すような構造をもち、屋根裏と屋外とを連通させるための換気塔10を立設させて設けている。
【0022】
これを詳述すると、換気塔10は、屋根2の屋根下地材21の所定個所に穿設された換気塔取付用開口22に嵌挿されるとともに該開口22の口縁部分に水密性を保って係止固定されるフランジ部11aを有する換気塔固定ベース部材11と、この換気塔固定ベース部材11の上部筒部に嵌装されるように屋根ふき材31に一体に設けた水切り12と、前記換気塔固定ベース部材11の上部筒部および上記水切り12の筒状部に嵌装して組付け固定される筒状部を有し屋根裏から屋外に開口する換気路を形成する換気塔本体14とを備えている。
【0023】
ここで、前記換気塔固定ベース部材11は、図1、図5等から明らかなように、フランジ部11aが屋根下地材21上にビス止め固定されるとともに、防水シートとしてルーフィング23,25,26が設けられ、この防水シート23,25,26上に設けられる屋根ふき材31,32,33の一つ(31)に、前記防水シート23,25,26上に突出される換気塔固定ベース部材11の上部筒部に嵌装される水切り12が一体に形成されている。なお、24は防水テープである。
【0024】
また、前記換気塔本体14は、前記換気塔固定ベース部材11の上部筒部および上記水切り12の筒状部に嵌装して組付け固定される第1の筒状部14aと、この第1の筒状部14aの上端側部分に並設されるとともに下端側が前記屋根2の表面よりも上方位置で開口されている第2の筒状部14bと、これら第1、第2の筒状部14a,14bの上端部に設けられ各筒状部14a,14b内の換気通路を連通させる連通路を有するキャップ部14cとからなり、屋根裏から第1の筒状部14a内の第1通路、キャップ部14c内の連通路、第2の筒状部14b内の第2通路を経て屋外に開口する換気路を形成するように構成されている。
【0025】
なお、この実施例では、換気塔本体14を、円筒体とその中央部を仕切る仕切り壁と円筒体の上端を覆う半円球状のキャップとで構成している。
また、この換気塔本体14の第2の筒状部14bにおける屋外への開口部分にはネット15が設けられている。
【0026】
さらに、屋根ふき材31,32,33は、図2および図6(a),(b)に示すように、それぞれの端部に形成された折り曲げ縁部31a,31b;32a,32b;33a、33bが順次組み合わされて締結することにより、屋根ふき材として屋根下地材21上に順番に組付けて並べることで並設され、これにより屋根2が形成されるようになっている。
【0027】
なお、この実施例では、屋根ふき材31,32,33等のうち、屋根ふき材31の所定位置に換気塔本体14を立設して取り付けるために、水切り12を一体的に設け、これを屋根下地材21側に形成した開口22に組付けた換気塔固定ベース部材11の上部筒部に嵌装することにより、防水性を簡単かつ確実に確保することができる。
【0028】
ここで、図中41は屋根ふき材31の下側に並べて配置される屋根ふき材、図中51は屋根ふき材31の上側に並べて配置される屋根ふき材を示し、上述した屋根ふき材31,32,33等と共に、屋根2を覆うように並べて設けられている。
【0029】
以上の構成によれば、図5および図6に示すようにして、換気塔10を施工することができる。
すなわち、図5(a),(b)に示すように、屋根下地材21に形成されている換気塔取付用の開口22の口縁部分に防水シートとしてルーフィング23を敷設した後、同図(c)に示すように、開口22に換気塔固定ベース部材11の下部筒部を嵌挿させ設け、しかる後、同図(d)に示すように、該ベース部材11のフランジ部11aをビス止めする。
【0030】
ビス止め後、同図(e)に示すように、フランジ部11aの上側にも防水テープ24を敷設し、その後同図(f),(g)に示すように、屋根下地材21上にルーフィング25,26を敷設する。
【0031】
その後、図6(a)に示すように、ルーフィング25,26の上方に突出しているベース部材11の上部筒部に対し、屋根ふき材31に一体に設けた水切り12を嵌装し、該ベース部材11のフランジ部11a回りでの水密性を確実なものとする。このとき、屋根ふき材31は、図2および図6(b)に示すように、隣接する屋根ふき材32,33と順次連結される。
【0032】
この状態において、図6(b)に示すように、上方に突出しているベース部材11の上部筒部に、図4、図6(b)に示すような換気塔本体14の第1の筒状部14aを嵌装し、該第1の筒状部14aをベース部材11の上部筒部にビス止めすることで、換気塔10が組み立てられる。
【0033】
そして、このような構成による換気塔10によれば、換気塔固定用ベース部材11の下部筒部が屋根2を貫通して屋根裏空間に臨み、小屋裏空間や各所室内等との自然換気を促進し、建物の内外を連通させて換気を行えるものである。
【0034】
上述した換気塔構造によれば、換気塔10を、換気塔固定用ベース部材11、屋根ふき材31に一体に形成した水切り12、さらに換気塔本体14等によって構成しており、これらを順次屋根2に組付けることで、換気塔10が形成されるものであり、パーツ化された簡単な構造であるにもかかわらず、組立作業も簡単で、しかも所要の部位には水切り12、さらに防水シート23,25,26等を適宜介在させるだけで、必要とされる防水性を確保できる等の種々優れた効果を奏する。
【実施例2】
【0035】
図7は本発明の別の実施例を示すものであり、同図において、この実施例では、換気塔本体14を、円筒体ではなく、板材を湾曲した湾曲材(14a,14b)、半球材(14c)、板材(14d)などを組み立てることにより形成している。
【0036】
このような構成によれば、換気塔本体14の製造、組立が簡単にしかも安価に行えるものであり、換気塔10に用いて実用面での効果は大きい。
【0037】
なお、本発明は上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、換気塔10を構成する各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることはいうまでもない。
また、本発明に係る換気塔10を適用する建物1としても、実施例で説明したものには限定されないことも言うまでもない。
【符号の説明】
【0038】
1 建物
2 屋根
10 換気塔
11 換気塔固定用ベース部材
11a フランジ部
12 水切り
14 換気塔
14a 第1の筒状部
14b 第2の筒状部
14c キャップ部
14d 仕切り板材
21 屋根下地材
22 換気塔取付用開口
23 ルーフィング(防水シート)
24 防水テープ
25 ルーフィング(防水シート)
26 ルーフィング(防水シート)
31 屋根ふき材
32 屋根ふき材
33 屋根ふき材
41 屋根ふき材
51 屋根ふき材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋根上に立設した状態で設けられ、屋根裏と屋外とを連通させるための換気塔を備え、
この換気塔は、前記屋根の屋根下地材の所定個所に穿設された換気塔取付用開口に嵌挿されるとともに該開口の口縁部分に水密性を保って係止固定されるフランジ部を有する換気塔固定ベース部材と、この換気塔固定ベース部材の上部筒部に嵌装されるように屋根ふき材に一体に設けた水切りと、前記換気塔固定ベース部材の上部筒部および上記水切りの筒状部に嵌装して組付け固定される筒状部を有し屋根裏から屋外に開口する換気路を形成する換気塔本体とを具備してなることを特徴とする換気塔構造。
【請求項2】
請求項1記載の換気塔構造において、
前記換気塔本体は、前記換気塔固定ベース部材の上部筒部および上記水切りの筒状部に嵌装して組付け固定される第1の筒状部と、この第1の筒状部の上端側部分に並設されるとともに下端側が前記屋根表面よりも上方位置で開口されている第2の筒状部と、これら第1、第2の筒状部の上端部に設けられ各筒状部内の換気通路を連通させる連通路を有するキャップ部とからなり、
屋根裏から第1の筒状部内の第1通路、キャップ部内の連通路、第2の筒状部内の第2通路を経て屋外に開口する換気路を形成するように構成されていることを特徴とする換気塔構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の換気塔構造において、
前記換気塔固定ベース部材は、フランジ部が屋根下地材上にビス止め固定されるとともに、防水シートが設けられ、
この防水シート上に設けられる屋根ふき材に、前記防水シート上に突出される換気塔固定ベース部材の上部筒部に嵌装される水切りが一体に形成されていることを特徴とする換気塔構造。
【請求項4】
請求項2または請求項3記載の換気塔構造において、
前記換気塔本体を構成する第1及び第2の筒状部は、円筒体の中央部を仕切る仕切り壁の両側に形成されていることを特徴とする換気塔構造。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の換気塔構造において、
前記換気塔本体の第2の筒状部における屋外への開口部分にはネットが設けられていることを特徴とする換気塔構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−189296(P2012−189296A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55578(P2011−55578)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【Fターム(参考)】