説明

揮散性物質放出器および製造方法

【課題】表面積の大きいゲル成形体を形成して揮散性物質を効率よく揮散させ、運搬、保存、取扱い時にゲル成形体の破損、変形や水分の分離を防止でき、これにより商品の外観や商品価値を高く維持でき、揮散性物質が揮散してゲル成形体が収縮しても、容器の目立ち易い部分に保持され、これにより装飾性に優れ、揮散性物質揮散の終点が判別しやすい揮散性物質放出器を得る。
【解決手段】揮散性物質放出器1は、両端部に開口部11、11aを有する容器3の中間部に形成されたゲル収容空間6内に、揮散性物質を保持する透明なゲル成形体2が充填されている。ゲル成形体2は、縦断面V字状のコーン形を有する可剥性の型部材21、21aが、容器3のゲル収容空間6に突出するように両端部の開口部11、11aに取り付けられて外部と遮断され、この型部材21、21aを剥離除去することにより、開口部11、11aに連絡する通気路22がゲル成形体2に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮散性物質を保持するゲル成形体を収容し、揮散性物質を徐々に放出するようにした揮散性物質放出器およびその製造方法に関し、特に収縮するゲル成形体を容器内に安定的に保持できるようにした揮散性物質放出器、およびその効率的な製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芳香剤、消臭剤、抗菌剤等の揮散性物質を保持するゲル成形体を容器内に収容し、容器を開口させて、ゲル成形体に含まれる揮散性物質を徐々に放出するようにした揮散性物質放出器がトイレット用等に使用されている。このような揮散性物質放出器としては、放出器全体を装飾性の高い構造、使用形態とすることにより、装飾部材としての機能を付与するものが求められている。しかし揮散性物質放出器は、揮散性物質の放出という本来の機能を保持するために、ゲル成形体の揮散面積を大きくした状態で、装飾性を高くすることが重要である。また装飾性を高めるためには、使用形態の多様性も求められており、容器を横向きにしたり、倒立させたりして、装飾性を高くすることも行われている。
【0003】
図5は特許文献1(特開2006−254943)に示された従来の揮散性物質放出器の使用前の状態を示し、(a)はシール部材および通気部材を一部取り去った平面図、(b)はその垂直断面図である。図5において、揮散性物質放出器1は、ゲル成形体2が透明な容器3のゲル収容空間6内に充填され、容器3の開口部11側から容器3の反対側の底面9に至らない深さで凹部4がゲル成形体2に形成され、表面積が大きい外表面5が形成されている。容器3の開口部11はシール部材12で密封され、通気部材13が容器3の開口部11に取り付けられている。ゲル成形体2は、揮散性物質を保持する形状保持性を有する可剥性透明架橋ゼラチン水性ゲル成形体からなり、容器3に開口部11側から隙間なく充填されて、容器3の内壁に密着した構造を有する。
【0004】
容器3は、硬質透明プラスチックによりポット状に形成され、開口部11が容器3の最大径部7より小径とされ、開口部11の外周部には通気部材13とのフランジ8が形成されている。凹部4は、先端が球面となった円筒状で、開口部4aを有している。シール部材12は、開口部11に剥離可能に固着されている。通気部材13は、上壁に通気孔17を有し、容器3の開口部11を覆うように、取り外し可能に取り付けられている。
【0005】
上記の揮散性物質放出器1は、以下のようにして製造される。まず開口部11を上にした容器3に、ゼラチン、架橋剤および揮発成分を含む水性ゾルを入れ、凹部4に対応した凸形状の凹部4形成用の成形型(図示省略)を開口部11側から水性ゾル中に挿入した状態で反応させることにより、容器3に開口部11側から隙間なく充填されて容器3の内壁に密着した構造を有し、開口部11側に凹部4が形成されたゼリー強度15以上の形状保持性透明ゼラチン水性ゲル成形体からなるゲル成形体2を形成する。
【0006】
反応終了後、成形型を開口部11側から抜き取ると、ゲル成形体2の外表面5には容器3の内壁に至らない凹部4が形成される。この状態で容器3の開口部11をシール部材12で密封し、通気部材13と組み合わせることにより、揮散性物質放出器1が製造される。揮散性物質放出器1は、開口部11を上にした状態で、製品として運搬、保管される。
【0007】
上記の揮散性物質放出器1は、容器3のシール部材12を引き剥がし、開口部11を上または下にして通気部材13で覆った状態で使用する。揮散性物質放出器1の使用状態では、容器3内のゲル成形体2は、容器3の開口部11および通気部材13の通気孔17を
通して大気と接触することになり、ゲル成形体2に含まれる香料、防虫成分等の揮発成分は、ゲル成形体2の凹部4を含む外表面5から大気中に揮散し、芳香剤、防虫剤などとしての機能を発揮する。ゲル成形体2は、凹部4の形成により大表面形状となっているため、大気との接触面積が大きくなり、揮散性物質を効率よく揮散させて大気中に放出させ、芳香の付与、消臭等の機能を長く維持することができる。ところが揮散性物質の揮散に伴って、ゲル成形体2が収縮して容器3の内壁から剥離し、容器3の底面9上に堆積して、揮散性物質揮散の終点が判別しにくいという問題があった。
【0008】
上記従来の揮散性物質放出器1は、ゲル成形体2の表面積を大きくして揮散性物質の放出を容易にするために、ゲル成形体2の開口部11側に凹部4を形成しているので、容器3の開口部11側の外表面5とシール部材12との間に、凹部4により大きい空間が形成されている。このような状態で揮散性物質放出器1を運搬し、陳列等のために移動させたりすると、ゲル成形体2の性状によっては、形状が崩れたり、変形することがある。特に陳列等に際して製品を落下させると、ゲル成形体2の凹部4に面する部分が破壊されることがある。またゲルの性状によっては、ゲル成形体2から凹部4に水分が蒸発し、発生する蒸気が結露したり、あるいは流下して水相が形成されることがある。そのような破壊状態や、結露あるいは流下した水相は、透明な容器およびゲル層を通して外部から視認され、外観、商品価値を低下させるなどの問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−254943
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は上記のような従来のゲル成形体に凹部が形成されることによる問題点を解決し、表面積の大きいゲル成形体を形成して揮散性物質を効率よく揮散させることができるとともに、運搬、保存、取扱い時にゲル成形体の破損、変形や水分の分離を防止し安定して収容でき、これにより商品の外観や商品価値を高く維持することができ、しかも揮散性物質の揮散に伴って、ゲル成形体が収縮しても、容器の目立ち易い部分に保持され、これにより装飾性に優れ、揮散性物質揮散の終点が判別しやすい揮散性物質放出器、ならびにその効率的な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は次の揮散性物質放出器および製造方法である。
(1) 両端部に開口部および中間部にゲル収容空間を有する容器と、
揮散性物質を保持し、前記容器のゲル収容空間内に充填され、かつ両端部の開口部に連絡する通気路が形成されるゲル成形体と、
前記容器のゲル収容空間に突出するように両端部の開口部に取り付けられ、ゲル成形体に通気路を形成する可剥性の型部材と
を備えていることを特徴とする揮散性物質放出器。
(2) 使用時において収縮するゲル成形体を容器内に保持するゲル保持部が容器の中間部に設けられている上記(1)記載の揮散性物質放出器。
(3) 容器の開口部を通気状態で支持する通気部材が設けられている上記(1)または(2)記載の揮散性物質放出器。
(4) ゲル保持部は、容器の壁面から突出する突出部もしくは突出部材、または容器の壁面を連絡する桟部材からなる上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の揮散性物質放出器。
(5) ゲル成形体が、ゼラチン、カラギーナン、寒天、澱粉、CMC、オイルゲル、吸水ポリマー、および多官能の酸とポリオールの重縮合ゲルから選ばれるものである上記
(1)ないし(4)のいずれかに記載の揮散性物質放出器。
(6) ゲル成形体が、架橋ゼラチン水性ゲル成形体からなる上記(5)記載の揮散性物質放出器。
(7) 室内、台所、クローゼット、トイレット、浴室、自動車または冷蔵庫に設置して、芳香剤、消臭剤、抗菌剤、防虫剤および忌避剤から選ばれる揮散性物質を放出するために使用される上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の揮散性物質放出器。
(8) 揮散性物質を保持するゲル成形体が容器に充填された揮散性物質放出器において、容器の両端部の開口部に連絡する通気路をゲル成形体に形成する型部材であって、
容器の開口部に取り付けられる取付部と、
この取付部から容器のゲル収容空間内に、ゲル成形体の通気路を形成するように突出する型面を有することを特徴とする揮散性物質放出器用型部材。
(9) 両端部に開口部および中間部にゲル収容空間を有する容器の一方の開口部に、ゲル収容空間に突出するように可剥性の型部材を取り付け、
揮散性物質を保持するゲル材料を前記容器のゲル収容空間内に充填し、
前記容器の他方の開口部に、別の可剥性の型部材を取り付け、型部材の型面をゲル材料中に挿入してゲル化し、
両端部の開口部に連絡する通気路が形成されるゲル成形体を形成する
ことを特徴とする揮散性物質放出器の製造方法。
【0012】
本発明において、揮散性物質を保持するゲル成形体を充填する容器は、両端部に開口部および中間部にゲル収容空間を有する容器であり、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート等の硬質プラスチックのほか、ガラス等の形状保持性を有する材料から、容器状に形成される。容器の材料は、容器のゲル収容空間内にゲル成形体を充填して保持できるものであればよい。容器は透明または半透明であれば、装飾性を高くできるとともに、容器側または反対側からゲル成形体を観察できるので好ましい。容器の形状は、両端部に開口部および中間部にゲル収容空間を有する円筒形、多角形筒形等の筒形、あるいは箱形のものが好ましいが、目的、用途等に応じて適宜選択できる。
【0013】
本発明の揮散性物質放出器は、後で詳細に説明するように、使用時において収縮するゲル成形体を容器内に保持するゲル保持部が、容器の中間部に設けられているのが好ましいが、このゲル保持部は、容器自体に形成されていてもよく、また容器と一体化するように、他の材料により形成されていてもよい。ゲル保持部は、容器の壁面から突出する突出部もしくは突出部材、または容器の壁面を連絡する桟部材等から形成することができる。これらの容器およびゲル保持部は、プラスチックの射出成形、真空成形、圧空成形等により、一体的に形成することができる。
【0014】
容器に収容されるゲル成形体は、揮発成分を大気中に効率よく揮散させるためには外表面の表面積を大きくするのが好ましく、このため本発明ではゲル成形体に、両端部の開口部に連絡する通気路が形成されるように構成する。従来のように成形型で通気路を形成する場合は、ゲル化して型抜きするまでに時間がかかり、生産性が悪いほか、通気路を形成し気相と接触させた状態に保持すると、運搬、落下等によるゲルの損傷や液相の分離等の問題が発生するが、本発明では可剥性の型部材を装着してゲル成形体を形成し、使用に際して型部材を剥離することにより、通気路を形成することができる。型部材を装着したままで、ゲル材料を充填し、さらに型部材を装着して製品とされ、これにより製造の操作は終わり、ゲル化はその後進行するので、短時間で効率よく通気路を有するゲル成形体を形成することができ、しかもゲルの損傷や液相の分離等の発生を防止することができる。
【0015】
型部材は、容器の両端部の開口部にそれぞれ取り付けられる取付部と、この取付部から容器のゲル収容空間内に、ゲル成形体の通気路を形成するように突出する型面を有する。型面は、ゲル成形体に形成される通気路の片側に対応する形状であり、縦断面V字状のコ
ーン形、あるいは縦断面U字状の有底筒形とすることができるが、揮散性物質の放出面積を大きくする他の形状としてもよい。通気路の片側に対応する形状の型面とすることにより、型部材の型面がゲル成形体に転写され、型部材の型面に対応する通気路が形成される。
【0016】
型部材は可剥性とされるが、ここで可剥性とは、型部材とゲルが剥離可能であることを意味するが、さらに型部材と容器とを剥離可能にすることもできる。容器とゲルとは、可剥性であっても、なくても良い。型部材とゲルが可剥性とされるのは、揮散性物質放出器の使用に際して型部材を剥離することにより、ゲル成形体に形成された通気路を露出させて多表面とするためである。このときゲル成形体の剥離面を乱すことなく、均一な面を有する通気路を形成することが求められる。可剥性は相対的な概念であり、型部材とゲルの関係については、容器とゲルの材料の選択により、任意に形成することができる。
【0017】
型部材と容器が可剥性とされるのは、使用に際して型部材をゲル成形体から剥離する際、型部材が容器から容易に剥離できることが重要なためである。型部材は蓋材としての機能を有し、装着状態では密封状に容器に固着される必要があるが、使用に際して容易に剥離できるように、可剥性の状態で容器に固着されることが重要である。型部材と容器の固着は一般的にはヒートシールにより熱融着されるが、このとき可剥性の状態で固着する。型部材と容器が非融着性であるときは、そのまま熱融着することにより可剥性とすることができるが、型部材と容器が融着性であるときは、中間に可剥性のイージイピールフィルムを介在させて熱融着することにより可剥性とすることができる。
【0018】
容器の一方の開口部に、ゲル収容空間に突出するように可剥性の型部材を取り付け、容器の中間部に形成されたゲル収容空間内に、揮散性物質を保持するゲル材料を充填し、容器の開口部に別の可剥性の型部材を取り付け、型部材の型面をゲル材料中に挿入してゲル化し、可剥性の型部材を剥離することにより、両端部の開口部に連絡する通気路が形成されるように構成する。この場合、容器にゲル材料を充填し、容器の開口部に可剥性の型部材を取り付けるだけでゲル成形体に両端部の開口部に連絡する通気路を形成することができ、ゲル化はその後に生じさせることができるので、短時間で揮散性物質放出器の製造が可能である。
【0019】
ゲル成形体に形成される通気路は、別々の型部材により両端部の開口部に連絡するように形成されるが、それぞれの型部材により形成される通気路は、成形時において完全に連通しているのが好ましいが、完全に連通していない場合でも、使用時におけるゲル成形体の収縮によって通気路が形成されてもよい。通気路は別々の型部材により形成されるが、それぞれの型部材の先端を突き合わせて、型部材間にゲルが存在しない状態に成形すると、完全に連通している通気路が形成される。型部材の突き合わせ部に若干のゲルが存在する場合には、通気路は完全に連通していないが、使用時におけるゲル成形体の収縮によって、中間のゲルが破れ、通気路が形成される。
【0020】
揮散性物質放出器は、容器の開口部を上下向き、横向き、または斜向きにして使用することができるが、開口部を上下向き、横向き、または斜向きにして使用するとき、収縮するゲル成形体が剥離して容器から脱落しないようにするために、使用時において収縮するゲル成形体を容器内に保持するゲル保持部を、容器の中間部に設けるのが好ましい。このようなゲル保持部は、容器の壁面から突出する突出部もしくは突出部材、または容器の壁面を連絡する桟部材からなるものがあげられる。突出部としては、容器の壁面自体が内向きに突出しているものがあり、例えば筒状の容器の中間の胴部が絞られて内向きに突出しているものなどがある。突出部材としては、容器の壁面から、あるいは突出部から、さらに内向きに突出しているものがあり、例えば容器の壁面から、あるいは突出部から内向きに突出する突出片、突出棒等があげられる。容器の壁面を連絡する桟部材は、容器のゲル
収容空間の横断面が大きい場合、あるいは多数の通気孔が形成される場合などに好適に採用されるもので、単一または複数の桟部材を平行および/または交差させて形成することができる。
【0021】
揮散性物質放出器の型部材は蓋材としての機能を有するが、型面の形成により開口部側が凹部になり、外観を害する場合には、容器の開口部および型部材を覆うように、シール部材でシールすることができる。シール部材は型部材とともに容器に融着させることができる。シール部材に替えて、あるいはシール部材とともに、通気部材と同様の外蓋材をさらに設けることができる。外蓋材は型面の上から着脱式に容器に取り付けるように構成することができる。また外蓋材は、支持部材を兼ねることもできる。
【0022】
揮散性物質放出器の使用状態として、開口部を上下向きにして使用する場合は、容器の下側の開口部を通気状態で支持する通気部材が設けられているのが好ましい。この通気部材は、使用における揮散性物質放出器の台座として、揮散性物質放出器の下部を支持し、しかも容器の開口部を通してゲル成形体、特にその通気路が外部と連絡して通気状態を維持するように、周辺部に通気孔を有するものが好ましい。
【0023】
本発明において、ゲル成形体に保持される揮散性物質は、ゲル成形体から揮散により大気中に放出される物質であり、揮散性の芳香剤、香料、消臭剤、防虫成分、薬剤成分などが挙げられる。これらの揮発成分は、水溶性でも油溶性でもよいが、ゲル中に均一に溶解ないし分散して透明なゲル成形体を形成し、容易にゲルの表面に浸透して揮散するものが好ましい。
【0024】
ゲル成形体はこのような揮散性物質を保持するゲルからなる成形体であり、特に架橋ゼラチン水性ゲル成形体が好ましい。ゲル成形体は型部材に対して可剥性であるものが好ましい。ここで可剥性であるということは、ゲル成形体を容器のゲル収容空間に充填して型部材を取り付けたときに、ゲル成形体が型部材から剥離可能であることを意味する。ここで剥離可能であるということは、ゲル成形体と型部材の相対的な関係にあり、ゲル成形体と型部材の接着性ないし可剥性が組み合わさって現れる。このため型部材の接着性が低い場合には、ゲル成形体の接着性が高くても可剥性になる場合があるが、種々の型部材に対して可剥性になるためには、ゲル成形体の接着性が低いものが好ましい。ゲル成形体と容器とは可剥性であっても、なくてもよいが、ゲル成形体を容器の中間部に保持した状態を維持するためには、可剥性でないものが好ましい。
【0025】
ゲル成形体としては、揮散性物質を溶解して保持するゲルから形成される。このようなゲル成形体を形成するゲル成分は、ゼラチン、カラギーナン、寒天、澱粉、CMC(カルボキシメチルセルロース)、オイルゲル、吸水ポリマー、多官能の酸とポリオールの重縮合ゲル等の公知のゲルが用いられるが、揮散性物質を水に溶解して保持する水性ゲルが好ましい。上記のゲルはいずれもポリオレフィン等の接着性の低い型部材と接触させる場合には、特別の処理を行わなくても可剥性とすることができるが、ゼラチンのように接着性の高いゲルは、架橋等の接着性を低くする処理を行うことにより、接着性の高い型部材に対しても可剥性とすることができる。
【0026】
ゲル成形体は容器内に充填した状態で使用されるため、容器の開口部側を上下向きにして使用する場合には、ゲル成形体の形状保持性が要求されるため、ゲル成形体は形状保持性を有するものが使用される。形状保持性を有するゲル成形体としては、架橋ゼラチン水性ゲル成形体が好ましく、特にゼラチン、架橋剤および揮発成分を含む水性ゾルの反応物であって、ゼリー強度15以上の透明ゼラチン水性ゲル成形体が好ましい。このような架橋ゼラチン水性ゲル成形体は、透明で可剥性を有し、水分が分離せず、形状保持性に優れ、大表面形状に形成しても、形状を保持することが可能であり、ゲル保持部がない場合で
も、収縮するゲル成形体が容器の中間部に保持される。
【0027】
本発明の揮散性物質放出器は、このような揮散性物質を保持するゲル成形体が容器のゲル収容空間に充填され、可剥性の型部材が両端部の開口部側からゲル収容空間に突出して、ゲル成形体に通気路が形成されるように構成したものであり、型部材は容器に取り付けた状態で製品とされる。容器の開口部の形状は、ゼラチン水性ゲルから揮散性物質が放出されやすい形状とするのが好ましい。
【0028】
上記のゲル成形体は、両端部に開口部および中間部にゲル収容空間を有する容器の一方の開口部に、ゲル収容空間に突出するように可剥性の型部材を取り付け、ゲル材料および揮発成分を含むゾルからなるゲル材料を他方の開口部から容器に注入して容器のゲル収容空間内に充填し、ゲル材料を注入した開口部に別の可剥性の型部材を取り付け、型部材の型面をゲル材料中に挿入して通気路が形成される構成とし、型部材を取り付けた状態でゲル化することにより、揮散性物質を保持するゲル成形体を形成する。ゲル成形体は、開口部側の面が上下方向または傾斜した状態で使用できるように、形状保持性を有するように形成される。またゲル成形体は、型部材が容易に剥離するように可剥性に形成する。
【0029】
架橋ゼラチン水性ゲル成形体を形成する場合は、ゼラチン、架橋剤および揮発成分を含む水性ゾルからなるゲル材料を開口部側から容器のゲル収容空間に注入し反応させることにより、ゲル収容空間内に充填される。容器の壁面から突出する突出部もしくは突出部材、または容器の壁面を連絡する桟部材からなるゲル保持部が形成される場合は、ゲル保持部の周囲にゲル材料が充填され、ゲル材料のゲル化によりゲル保持部に保持された構造を有する可剥性架橋ゼラチン水性ゲル成形体が形成される。ゲル材料を充填した後、あるいは他方の型部材を取り付け、あるいはさらに容器の開口部を型部材とともにシール部材で密封することにより、揮散性物質放出器が得られ、ゲル化はその後進行する。
【0030】
本発明で用いる可剥性ゼラチン水性ゲルは、分子量100,000以上、500,000未満の高分子量ゼラチン1.5〜5重量%、好ましくは2〜4重量%、分子量3,000以上、10,000未満の低分子量ゼラチン0.05〜0.5重量%、好ましくは0.1〜0.4重量%、架橋剤0.1〜1重量%、好ましくは0.4〜0.8重量%、および揮発成分0.5〜10重量%、好ましくは1〜8重量%を含む水性ゾルの反応物からなるゼラチン水性ゲルが好ましい。上記の水性ゾルは、分子量10,000以上、100,000未満の中分子量ゼラチン0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜4重量%を含むものが好ましい。
【0031】
ゼラチンはニカワとして接着剤に用いられることから分かるように、接着性に優れるため、複雑な形状に成形すると、成形型の剥離が困難であるが、さらに分子量3,000以上、10,000未満の低分子量ゼラチンを含むゼラチン混合物を用いると、離型性、可剥性がよくなる。このため複雑な形状の成形型を用いる場合でも、ゲル成形体の収縮に伴う剥離が可能となる。このゲル成形体を、容器の開口部を横方向にした状態で使用する場合でも、ゲル成形体の自重だけではゲル成形体が開口部から流出することはなく、容器のゲル収容空間内に保持することができ、これにより開口部を下または横向きにして自立させて使用したときでも、ゲル成形体の保持性を高めることができる。
【0032】
架橋剤としては、ゼラチンの官能基と反応して架橋できるものであればよいが、エチレン性不飽和化合物−無水マレイン酸共重合体、その開環重合体またはその塩が好ましい。エチレン性不飽和化合物としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1,ブテン−2、イソブチレン等のオレフィン類、その他のエチレン性不飽和基を有する化合物が挙げられる。開環重合体はエチレン性不飽和化合物−無水マレイン酸共重合体に加水して開環した重合体、その塩は開環重合体のアンモニウム塩、ナトリウム塩等の塩である。塩は上記酸共
重合体または開環重合体と水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム等のアルカリを反応させて形成することができる。
【0033】
上記の可剥性ゼラチン水性ゲルは、これらのゼラチン、架橋剤および揮発成分を含む水性ゾルの反応物であって、ゼラチンと架橋剤とは揮発成分、水性溶媒、および必要により加えられる他の成分を抱き込むように反応して架橋し、水性ゲルを形成した反応物からなる可剥性透明架橋ゼラチン水性ゲル成形体である。このような可剥性ゼラチン水性ゲルは、上記水性ゾルを20〜70℃、好ましくは室温〜60℃で反応させることにより、製造することができる。こうして形成される可剥性ゼラチン水性ゲルは、揮発成分、水性溶媒、および必要により加えられる他の成分を抱き込んだ状態でゼラチンが架橋した水性ゲルであり、ゲル形成剤の濃度が低い場合でも、形状保持性に優れる成形体を形成することができる。
【0034】
本発明の可剥性ゼラチン水性ゲルの好ましい製造方法は、高分子量ゼラチン1.5〜5重量%、好ましくは2〜4重量%、中分子量ゼラチン0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜4重量%、低分子量ゼラチン0.05〜0.5重量%、好ましくは0.1〜0.4重量%、架橋剤0.1〜1重量%、好ましくは0.4〜0.8重量%、および揮発成分0.5〜10重量%、好ましくは1〜8重量%、および必要により加えられる他の成分0〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%、残部水の水性ゾルを反応させてゲル化させることにより、可剥性ゼラチン水性ゲル成形体として製造することができる。
【0035】
こうして製造される可剥性ゼラチン水性ゲル成形体は、ゼラチン濃度の低い場合でもゲル強度が高く、常温または高温の未使用の状態あるいは使用状態で、長期にわたって形状を保持することが可能な高い形状保持性を有し、水分が分離せず、揮発成分の揮散性が高く、かつ透明で装飾性が高い形状保持性ゼラチン水性ゲルが得られる。ゼラチン水性ゲルのゼリー強度は15以上、好ましくは20以上である。
【0036】
本発明の揮散性物質放出器は、使用前の状態では、揮散性物質を含むゲル成形体を収容する容器は、蓋材を兼ねる型部材がゲル成形体に形成された通気路を気相から遮断し、ゲル成形体の変形、移動を防止するように、両端部の開口部に取り付けられている。このため揮散性物質放出器はこの状態で製品とし、流通し、保存し、取り扱うことができ、この状態では運搬、保存、取扱い時にゲル成形体の破損、変形や水分の分離を防止することができる。この場合、揮散性物質放出器は型部材がゲル成形体に形成された通気路に係合してこれを覆う蓋材として機能するため、使用前の状態では、容器の開口部を上下または横方向にした状態で運搬、保存しても、また落下させてもゲル成形体の損傷が防止される。
【0037】
上記の揮散性物質放出器を使用する場合は、容器から型部材を引き剥がしてゲル成形体に形成された通気路を露出させ使用する。この場合、容器から型部材を引き剥がすだけで、ゲル成形体に通気路を形成し、ゲル成形体の外表面を多表面化することができる。これによりゲル成形体から放出される揮散性物質の放出量を多くし、芳香、消臭、抗菌処理を効果的に行うことができるとともに、ゲル成形体の外表面を多表面化することにより、装飾性を向上させることができる。
【0038】
上記の揮散性物質放出器は、容器の開口部を上下、横または斜方向など、任意の方向に配置して使用することができる。開口部を上下または斜方向にした状態で使用する場合、下側の開口部の周壁部に通気孔が形成されている場合は、下側の開口部を直接設置場所に置くこともできるが、周辺部に通気孔を有する通気部材により、容器の下部を支持し、通気状態を維持して使用するのが好ましい。この場合、容器の両端部に開口部が形成され、また容器の両端部の開口部に連絡する通気路がゲル成形体に形成されているので、収縮するゲル成形体を容器中央部の内壁側に集約させて保持することができる。またゲル保持部
を形成した場合には、剥離するゲルをゲル保持部に付着させ保持することができる。揮散性物質放出器の容器およびゲル成形体が透明な場合は、容器を通して観察できるが、容器の目立ち易い部分に保持されることになり、これにより装飾性を高めるとともに、揮散性物質揮散の終点が判別しやすくなる。
【0039】
使用状態では、開口部を上下または斜方向にした状態でも、形状保持性を有するゲル成形体は容器内で形状を保持し、ゲル成形体自体は容器内壁に密着し、ゲル成形体に形成された通気路は形成されたときの形状を保持する。形状容器内のゲル成形体は容器の開口部を通して大気と接触することになり、ゲル成形体に含まれる香料、防虫成分等の揮発成分はゲルの通気路および開口部を通して大気中に揮散し、芳香剤、防虫剤などとしての機能を発揮する。使用開始により容器に充填されたゲル成形体の通気路および両端部の開口部から揮散性物質が放出され、揮散が進むとゲルが収縮し、ゲル成形体は容器の中間の内壁に保持される。容器の開口部を横または斜向きにして使用する場合でも、同様に使用することができる。
【0040】
容器、型部材およびゲル成形体を透明にすることにより、揮散性物質放出器に当たる光線は、容器、型部材およびゲルを透過、屈折、放出に伴い反射するため、優れた美観が得られる。そして揮散性物質の放出に伴うゲル成形体の形状変化、剥離状態が容器を通して観察され、意外性、装飾性が高い揮散性物質放出器が得られる。
【0041】
本発明の揮散性物質放出器は、室内、台所、クローゼット、トイレット、浴室、自動車、冷蔵庫、その他の場所に設置して、芳香剤、消臭剤、抗菌剤、防虫剤、忌避剤、その他の揮散性物質を徐々に放出するための揮散性物質放出器として使用することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、両端部に開口部および中間部にゲル収容空間を有する容器の一方の開口部に、ゲル収容空間に突出するように可剥性の型部材を取り付け、揮散性物質を保持するゲル材料を前記容器のゲル収容空間内に充填し、前記容器の他方の開口部に、別の可剥性の型部材を取り付け、型部材の型面をゲル材料中に挿入してゲル化し、両端部の開口部に連絡する通気路が形成されるゲル成形体を形成するようにしたので、表面積の大きいゲル成形体を形成して揮散性物質を効率よく揮散させることができるとともに、運搬、保存、取扱い時にゲル成形体の破損、変形や水分の分離を防止し安定して収容でき、これにより商品の外観や商品価値を高く維持することができ、しかも揮散性物質の揮散に伴って、ゲル成形体が収縮しても、容器の目立ち易い部分に保持され、これにより装飾性に優れ、揮散性物質揮散の終点が判別しやすい揮散性物質放出器、ならびにその効率的な製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】一実施形態の揮散性物質放出器を示し、(a)は使用前の状態を示す垂直断面図、(b)は使用中の状態を示す垂直断面図である。
【図2】他の実施形態による揮散性物質放出器を示し、(a)は使用前の状態を示す垂直断面図、(b)は使用中の状態を示す垂直断面図である。
【図3】さらに他の実施形態による揮散性物質放出器を示し、(a)は使用前の状態を示す垂直断面図、(b)は使用中の状態を示す垂直断面図である。
【図4】さらに他の実施形態による揮散性物質放出器を示し、(a)は使用前の状態を示す垂直断面図、(b)は型部材を外す状態を示す垂直断面図、(c)は(b)のA−A断面図であり、(a)、(b)は(c)のB−B断面図である。
【図5】従来の揮散性物質放出器の使用前の状態を示し、(a)はシール部材および通気部材を一部取り去った平面図、(b)はその垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施の形態を図面により説明する。図1ないし図3はそれぞれ単一の通気孔を形成する別の実施形態による揮散性物質放出器を示し、それぞれ(a)は使用前の状態、(b)はその使用状態を示しており、図5と同一符号は同一または相当部分を示す。
【0045】
図1において、揮散性物質放出器1は、両端部に開口部11、11aを有する容器3の中間部に形成されたゲル収容空間6内に、揮散性物質を保持する透明なゲル成形体2が充填されている。ゲル成形体2は、縦断面V字状のコーン形を有する可剥性の型部材21、21aが、容器3のゲル収容空間6に突出するように両端部の開口部11、11aに取り付けられて外部と遮断されており、この型部材21、21aを剥離除去することにより、開口部11、11aに連絡する通気路22がゲル成形体2に形成されるように構成されている。通気路22の開口端部29、29aを大きくすることにより、表面積が大きい外表面5が形成されている。
【0046】
容器3は、透明な硬質のプラスチック材により、両端部に開口部11、11aおよび中間部にゲル収容空間6を有する円筒形の形状に成形されている。容器3の中間部には、使用時において収縮するゲル成形体を容器内に保持するゲル保持部23が設けられているが、図1では、容器3の胴部の中間部が絞られて、中央部の壁面が内向きに突出する突出部24からなるゲル保持部23が形成されている。図2では、容器3の胴部の中間部が絞られて中央部の壁面が内向きに突出する突出部24、およびその突出部24からさらに突出する突出部材25からなるゲル保持部23が形成されている。図3では、容器3は円筒状に形成されて、壁面が内向きに突出する突出部はなく、容器3の円筒状の内壁から突出する突出部材25からなるゲル保持部23が形成されている。
【0047】
型部材21、21aは、容器3の両端縁部26、26aに係合するリング状かつ断面U字状の取付部27、27aと、この取付部27、27aから容器3のゲル収容空間6内に、ゲル成形体2の通気路22を形成するように突出するコーン状の型面28、28aを有する。型部材21、21aは、型面28、28aのコーン状の先端部を突き合わせるように、容器3の開口部11、11aに取り付けられており、この型部材21、21aを剥離することにより、容器3の両端部の開口部11、11aに連絡する通気路22をゲル成形体2に形成するように構成されている。
【0048】
型部材21、21aは、取付部27、27aからコーン状の型面28、28aが容器3のゲル収容空間6内に突出して、ゲル成形体2の通気路22を形成するように型面28、28aの先端が密着し、両者間には隙間がない構造となっているが、ゲル成形体2の崩壊を生じさせない程度の若干の隙間を形成してもよい。型部材21、21aを軟質のプラスチック材により形成すると、装着だけで気密性を維持できるが、ヒートシールにより融着して気密性を高めてもよい。
【0049】
上記の揮散性物質放出器1には、一方(下側)の開口部11aに、周壁に通気孔17、および通気孔17の上部内周に支持部18を有する通気部材13が、容器3の一方(下側)の開口部11aを覆うように、取り外し可能に取り付けられ、使用時の台座として用いられるようにされている。通気部材13は他方(上側)の開口部11にも取り付けられてもよい。揮散性物質放出器1は上記の状態で製品(商品)とされるが、さらにフィルム、
箱等の包装材で包装しても良い。
【0050】
上記の揮散性物質放出器1は、以下のようにして製造される。まず両端部に開口部11、11aおよび中間部にゲル収容空間6を有する容器3の一方の開口部11aに、ゲル収容空間6に突出するように可剥性の型部材21aを取り付け、残りのゲル収容空間6に、ゼラチン、架橋剤および揮発成分を含む水性ゾルからなるゲル材料を充填し、型面28をゲル材料中に挿入させるように、他方の型部材21を他方の開口部11に取り付ける。このとき型部材21、21aの型面28、28aがゲル材料中に挿入され、ゲル成形体2の通気路22が形成されるので、この状態でゲル化して通気路22を有するゲル成形体2を形成し、揮散性物質放出器1を製造する。この場合、容器3の一方の開口部11aに型部材21aを取り付け、ゲル収容空間6にゲル材料を充填し、容器3の他方の開口部11に可剥性の型部材21を取り付けるだけでゲル成形体2に通気路22を形成することができ、ゲル化はその後起こさせることができるので、短時間で揮散性物質放出器1の製造が可能である。
【0051】
上記の揮散性物質放出器1は、使用前の状態では、揮散性物質を含むゲル成形体2を収容する容器3は、蓋材を兼ねる型部材21、21aがゲル成形体2に形成された通気路22を気相から遮断し、ゲル成形体2の変形、移動を防止するように開口部11に取り付けられているため、揮散性物質放出器1は図1(a)の状態で製品とし、流通、保存、その他の取扱いをすることができる。この状態では運搬、保存、取扱い時にゲル成形体2の破損、変形や水分の分離を防止することができる。この場合、揮散性物質放出器1は型部材21、21aがゲル成形体2に形成された通気路22を覆う蓋材として機能するため、使用前の状態では、容器3の開口部11、11aを上下または横方向にした状態で運搬、保存しても、また落下させてもゲル成形体2の損傷が防止される。
【0052】
上記の揮散性物質放出器1を使用する場合は、図1ないし図3の(a)の状態から、容器3に取り付けられた型部材21、21aを引き剥がし、図1ないし図3の(b)に示すように、ゲル成形体2に形成された通気路22を露出させ使用することができる。この場合、容器3から型部材21、21aを引き剥がすだけで、ゲル成形体2に通気路22を形成し、ゲル成形体2の外表面5を多表面化することができる。
【0053】
この状態で容器3の一方(下側)の開口部11aを、通気部材13の内周部に形成された支持部18上に装着して支持し、使用する。使用状態では、ゲル成形体2の外表面、すなわち通気路22から揮散性物質が放出され、芳香、消臭、抗菌処理を行うことができる。この場合、容器3の上側の開口部11を開放状態にしておくと、下側の開口部11a、通気孔17を通して空気が出入りし、通気路22内に気流が生じて揮散性物質の放出量を多くし、芳香、消臭、抗菌処理を効果的に行うことができる。上側の開口部11に通気部材13を被せた場合も同様である。揮散性物質の放出に伴って、ゲル成形体2は鎖線2aに示すように収縮する。
【0054】
このとき容器3の両端部に開口部11、11aが形成され、また容器3の両端部の開口部11、11aに連絡する通気路22がゲル成形体2に形成されているので、揮散性物質の放出は、通気路22および開口部11、11a側から起こる。このため収縮するゲル成形体2は容器3の中央部の内壁側に集約され、保持される。そしてゲル保持部23が形成されているため、剥離するゲル成形体2はゲル保持部23に付着して保持される。また揮散性物質放出器1の容器3およびゲル成形体2が透明であるため、収縮するゲル成形体2は容器3を通して観察できるが、収縮するゲル成形体2が容器3の目立ち易い部分に保持されるため、これにより装飾性が高くなり、揮散性物質揮散の終点が判別しやすくなる。
【0055】
ゲル成形体2として、ゼリー強度15以上の透明ゼラチン水性ゲル成形体、特に架橋ゼ
ラチン水性ゲル成形体は形状保持性に優れ、大表面形状に形成しても、形状を保持することが可能であり、ゲル保持部23がない場合でも、収縮するゲル成形体2が容器3内壁の中間部に保持される。従って図3の円筒形の容器3において、ゲル保持部23がない場合でも、収縮するゲル成形体2の保持は可能である。しかしゲル保持部23として、図1の容器3の壁面が突出する突出部24、図3の容器3の壁面から突出する突出部材25などを設けることにより、収縮するゲル成形体2の保持を安定して行うことができ、特に図2の突出部24と突出部材25の組合せが効果的である。
【0056】
図4は多数の通気孔22を形成し、冷蔵庫で使用するのに適した実施形態を示している。図4の揮散性物質放出器1では、容器3は上下両端部に開口部11、11aを有する高さの低い四角筒状に形成されているが、実際は四辺形状に張りめぐらされたテープ状の枠からなり、対向辺間に片状のゲル保持部23が架け渡されている。ゲル保持部23は中央で交差して田字状に形成され、容器3と一体成形されている。ゲル成形体2は容器3の内壁間に、ゲル保持部23を埋設するように充填されている。
【0057】
型部材21、21aは、容器3の両端縁部26、26aに係合する四辺形状かつ断面U字状の取付部27、27aと、この取付部27、27aから容器3のゲル収容空間6内に、多数の通気路22を形成するように突出するホーン状の型面28、28aを有する。ホーン状の型面28、28aは、容器3の対向辺間に架け渡されている片状のゲル保持部23を避けるように突出し、ゲル保持部23と干渉しないようにされている。
【0058】
図4の揮散性物質放出器1も図1ないし図3のものとほぼ同様に製造される。すなわち容器3の一方(下側)の開口部11aに、ゲル収容空間6に突出するように可剥性の型部材21aを取り付け、残りのゲル収容空間6にゲル材料を充填し、型面28をゲル材料中に挿入させるように、他方の型部材21を他方(上側)の開口部11に取り付ける。このとき型部材21、21aの型面28、28aがゲル材料中に挿入され、ゲル成形体2に多数の通気路22が形成されるので、この状態でゲル化して多数の通気路22を有するゲル成形体2を形成し、揮散性物質放出器1を製造する。この状態は図4(a)に示される。
【0059】
上記の揮散性物質放出器1を使用する場合は、図4(a)の状態から、図4(b)に示すように容器3に取り付けられた型部材21、21aを引き剥がし、ゲル成形体2に形成された通気路22を露出させる。揮散性物質放出器1は、下側の端縁部26aで自立するので、冷蔵庫内のスクリーン状の支持目板などの上に置いて、そのままの状態で使用することができる。この場合、通気路22内に気流が生じて揮散性物質の放出量を多くし、芳香、消臭、抗菌処理を効果的に行うことができる。揮散性物質の放出は、通気路22および開口部11、11a側から起こるため、収縮するゲル成形体2は容器3の中央部に集約され、ゲル保持部23に保持された状態で収縮する。そして収縮するゲル成形体2が容器3の目立ち易い部分に保持され、収縮する状態は容器3の上から観察でき、揮散性物質揮散の終点が判別しやすくなる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
室内、台所、クローゼット、トイレット、浴室、自動車、冷蔵庫等に設置して、芳香剤、消臭剤、抗菌剤、防虫剤、忌避剤等の揮散性物質を徐々に放出するための揮散性物質放出器として使用される。
【符号の説明】
【0061】
1:揮散性物質放出器、2:ゲル成形体、3:容器、4:凹部、5:外表面、6:ゲル収容空間、7:最大径部、8:フランジ、9:底面、11、11a:開口部、12:シール部材、13:通気部材、17:通気孔、18:支持部、21、21a:型部材、22:通気路、23:ゲル保持部、24:突出部、25:突出部材、26、26a:端縁部、2
7、27a:取付部、28、28a:型面、29、29a:開口端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部に開口部および中間部にゲル収容空間を有する容器と、
揮散性物質を保持し、前記容器のゲル収容空間内に充填され、かつ両端部の開口部に連絡する通気路が形成されるゲル成形体と、
前記容器のゲル収容空間に突出するように両端部の開口部に取り付けられ、ゲル成形体に通気路を形成する可剥性の型部材と
を備えていることを特徴とする揮散性物質放出器。
【請求項2】
使用時において収縮するゲル成形体を容器内に保持するゲル保持部が容器の中間部に設けられている請求項1記載の揮散性物質放出器。
【請求項3】
容器の開口部を通気状態で支持する通気部材が設けられている請求項1または2記載の揮散性物質放出器。
【請求項4】
ゲル保持部は、容器の壁面から突出する突出部もしくは突出部材、または容器の壁面を連絡する桟部材からなる請求項1ないし3のいずれかに記載の揮散性物質放出器。
【請求項5】
ゲル成形体が、ゼラチン、カラギーナン、寒天、澱粉、CMC、オイルゲル、吸水ポリマー、および多官能の酸とポリオールの重縮合ゲルから選ばれるものである請求項1ないし4のいずれかに記載の揮散性物質放出器。
【請求項6】
ゲル成形体が、架橋ゼラチン水性ゲル成形体からなる請求項5記載の揮散性物質放出器。
【請求項7】
室内、台所、クローゼット、トイレット、浴室、自動車または冷蔵庫に設置して、芳香剤、消臭剤、抗菌剤、防虫剤および忌避剤から選ばれる揮散性物質を放出するために使用される請求項1ないし5のいずれかに記載の揮散性物質放出器。
【請求項8】
揮散性物質を保持するゲル成形体が容器に充填された揮散性物質放出器において、容器の両端部の開口部に連絡する通気路をゲル成形体に形成する型部材であって、
容器の開口部に取り付けられる取付部と、
この取付部から容器のゲル収容空間内に、ゲル成形体の通気路を形成するように突出する型面を有することを特徴とする揮散性物質放出器用型部材。
【請求項9】
両端部に開口部および中間部にゲル収容空間を有する容器の一方の開口部に、ゲル収容空間に突出するように可剥性の型部材を取り付け、
揮散性物質を保持するゲル材料を前記容器のゲル収容空間内に充填し、
前記容器の他方の開口部に、別の可剥性の型部材を取り付け、型部材の型面をゲル材料中に挿入してゲル化し、
両端部の開口部に連絡する通気路が形成されるゲル成形体を形成する
ことを特徴とする揮散性物質放出器の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−253198(P2010−253198A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109884(P2009−109884)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(592260882)
【Fターム(参考)】