説明

揮発性有機物回収処理装置及びこれを有する揮発性有機物回収処理システム

【課題】
例えば、活性炭、ゼオライト、メソポーラスシリカなどの多孔質吸着剤が持つVOC吸着処理能力の高さと、揮発性有機物吸収材の持つ高いVOC吸収能力を複合するという技術を用いた極めて有用な揮発性有機物回収処理装置及びこれを有するシステムを提案することにある。
【解決手段】
揮発性有機物を回収処理する揮発性有機物回収処理装置10を、内部に揮発性有機物吸着剤18が配設され、導入口14から導入する揮発性有機物を含む被浄化ガス12を吸着浄化して導出口20から外部に導出する揮発性有機物吸着槽16と、内部に揮発性有機物吸収材30が配設され、揮発性有機物吸着剤18に吸着された揮発性有機物を導入して吸収する揮発性有機物吸収槽28を含む構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機物の回収処理に用いる揮発性有機物回収処理装置及びこれを有する回収処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗装、印刷、洗浄等の様々な分野において大量に用いられている有機溶剤の多くは、揮発性有機物(VOC)が多量に含まれているため、このような有機溶剤を使用すると、VOCを含むガスが大量に発生し、それが大気中に放出・拡散されてしまう。
【0003】
このVOCは、光化学オキシダントと浮遊粒子状物質の主な原因となるため、工場等の固定発生源からのVOC排出及び飛散に関して、排出規制や自主的取組の促進が行われている。例えば、特許文献1及び2において開示されている技術のように、大規模工場等で発生する比較的高濃度のVOCに対しては、主に触媒や助燃剤等を用いた燃焼法を用いた処理によって対策が行われている。
【0004】
しかし、この特許文献1及び2に開示されている触媒や助燃剤等を用いた燃焼法は、中小工場で発生した低濃度・大風量のVOC処理には適していない。従って、中小工場が中心である塗装、印刷、洗浄業界が望むような、低コストでのVOC処理を可能にする決定的な技術は未だ確立されていないのが実情である。
【0005】
上記の要望を満たすためには、低VOC濃度であっても高い吸着能力を有する吸着剤を使用し、回収する方法がもっとも適切である。例えば、特許文献3に開示されているように吸着剤として活性炭を利用する技術が知られている。特許文献3の方法では、1000m/g以上の大比表面積を有し、VOCを効率的に回収できるが、吸着後の再生により、活性が低下するため、再利用に制限があるという問題点があり、さらに、VOCを吸着することにより発熱するため、自然発火の危険性が高く、VOCの回収作業に危険が伴うといった問題点がある。
【0006】
一方、例えば非可燃性吸着剤であるゼオライト等の無機酸化物系吸着剤が知られている。この無機酸化物系吸着剤は、再生が可能であるとともに、可燃性VOCの回収に適しているが、活性炭に比べ「処理できるVOC量が少ない」、「高価」といった問題点が生じてしまい、使い勝手が良くない。
【0007】
これらの問題点を解決するために、種々の有機溶剤回収システムが提案されている。一般に、有機溶剤回収システムは、有機溶剤蒸気を濃縮する濃縮装置と、濃縮された有機溶剤を液化する液化装置とから構成されているが、従来、この有機溶剤回収システムに使用される有機溶剤濃縮装置は、内部に吸着剤を有する複数の吸着塔のうち、1塔の吸着剤に有機溶剤を吸着させた後、1塔の吸着剤から有機溶剤を脱着させて濃縮させている(例えば、特許文献4)。
【0008】
しかしながら、この濃縮方法では、脱着時にある程度の流量の空気がないと十分脱着しないことから、脱着工程の流量を大幅に減少させることはできず、濃縮倍率を高めることには限界があった。また、このような低い濃縮倍率では、例えば、液化回収をする際の液化過程において、有機溶剤を冷却装置により相当な温度まで冷却しなければ液化回収することができないため、冷却装置が大型化し、その分コストも高くなるという問題があった。
【特許文献1】特許第3768733号公報
【特許文献2】特開2004−125329公報
【特許文献3】特開2000−93727公報
【特許文献4】特許第3421923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上述の各問題及び課題を解決するため、例えば、活性炭、ゼオライト、メソポーラスシリカなどの多孔質吸着剤が持つVOC吸着処理能力の高さと、揮発性有機物吸収材の持つ高いVOC吸収能力を複合するという新たな技術を用いることにより、極めて有用な揮発性有機物回収処理装置及びこの装置を有するシステムを提案することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、本発明は、以下の技術的手段を講じている。
即ち、請求項1記載の発明は、内部に揮発性有機物吸着剤が配設され、導入口から導入する揮発性有機物を含む被浄化ガスを吸着浄化して導出口から外部に導出する揮発性有機物吸着槽と、内部に揮発性有機物吸収材が配設され、前記揮発性有機物吸着剤に吸着された揮発性有機物を導入して吸収する揮発性有機物吸収槽と、を備えたことを特徴とする揮発性有機物回収処理装置である。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の揮発性有機物回収処理装置であって、前記揮発性有機物吸着槽と、前記揮発性有機物吸収槽とは、開閉自在な開閉手段を備えた仕切板を介して一体に構成されていることを特徴としている。
【0012】
そして、請求項3記載の発明は、請求項2記載の揮発性有機物回収処理装置であって、前記開閉手段は、逆止弁を含むことを特徴としている。
【0013】
また、請求項4記載の発明は、請求項1乃至3いずれか1項記載の揮発性有機物回収処理装置であって、前記揮発性有機物吸収槽には、当該揮発性有機物吸収槽の内部を減圧する減圧手段が設けられていることを特徴としている。
【0014】
またさらに、請求項5記載の発明は、請求項1乃至4いずれか1項記載の揮発性有機物回収処理装置であって、前記揮発性有機物吸着槽には、揮発性有機物吸着剤に吸着されている揮発性有機物の気化を促進させる加熱手段が設けられていることを特徴としている。
【0015】
さらに、請求項6記載の発明は、請求項1乃至5いずれか1項記載の揮発性有機物回収処理装置であって、前記揮発性有機物吸収槽には、揮発性有機物吸収材に吸収されている揮発性有機物を気化させ、冷却するとともに、回収貯蔵する揮発性有機物貯蔵手段を備えたことを特徴としている。
【0016】
そして、請求項7記載の発明は、請求項1乃至6いずれか1項記載の揮発性有機物回収処理装置であって、前記揮発性有機物吸着剤は、ミクロ孔、メソ孔、マクロ孔及びこれらの組み合わせのうちの少なくともいずれかが設けられた多孔質体であることを特徴としている。
【0017】
また、請求項8記載の発明は、請求項1乃至7いずれか1項記載の揮発性有機物回収処理装置であって、前記揮発性有機物吸着剤が、活性炭、ゼオライト、シリカライト、粘土鉱物、疎水性シリカゲル、メソポーラスシリカ及びカーボンナノチューブからなる群から1つ以上選択されることを特徴としている。
【0018】
またさらに、請求項9記載の発明は、請求項1乃至8いずれか1項記載の揮発性有機物回収処理装置であって、前記揮発性有機物吸収材が、固体状またはゲル状であって、揮発性有機物を溶解する不活性有機溶媒と、前記不活性有機溶媒のゲル化剤としての疎水性有機分子物質とを含むことを特徴としている。尚、不活性有機溶媒は、脂肪族二塩基酸エステル、フタル酸エステル、シリコーンオイル及びこれらの混合物の少なくともいずれかを用いることが好ましく、さらに、脂肪族二塩基酸エステルが、ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジメチルセバケート及びこれらの混合物の少なくともいずれかを用いるとより好ましい。
【0019】
そして、疎水性有機物質は、ポリスチレン、オクタデシルアクリレート、トリアコンタアクリレート、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン、ポリメチルアクリレート、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、ビニル樹脂、セルロース、脂肪族炭化水素樹脂、天然ゴム、スチレンブタジエン樹脂、クロロプレンゴム、ワックス、アルキッド樹脂及びこれらの混合物の少なくともいずれかを用いると好ましい。尚、これらは、粉末状、ペースト状、繊維状等それぞれの使用に適した形状で用いるのが特に有効である。
【0020】
さらに、請求項10記載の発明は、請求項1乃至9いずれか1項記載の揮発性有機物回収処理装置であって、前記揮発性有機物吸収材が、前記揮発性有機物吸収槽に千鳥状又はハニカム状に配設されていることを特徴としている。
【0021】
そして、請求項11記載の発明は、請求項1乃至10いずれか1項記載の揮発性有機物回収処理装置を少なくとも有することを特徴とする揮発性有機物回収処理システムである。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る揮発性有機物回収処理装置及びこれを有する揮発性有機物回収処理システムは、交換や再生を頻繁に行う必要があった吸着剤の再生を当該回収処理装置内で行うことができるため、ランニングコストを大幅に抑えることが可能となる。また、当該回収処理装置で用いる揮発性有機物吸収材は、高沸点不活性物質を構成要素に含んでおり、吸収したVOCガスの自然発火を防ぐことができるため、揮発性有機物の回収処理における安全性が極めて高くなる。
【0023】
そして、本発明に係る揮発性有機物回収処理装置及びこれを有する揮発性有機物回収処理システムは、揮発性有機物回収手段を有しているため、当該回収処理装置内において揮発性有機物吸収材の再生も可能となる。また、当該回収装置で用いる揮発性有機物吸収材は、高濃度のVOCを捕集する事が可能であり、さらに高濃度のVOCを捕集した揮発性有機物吸収槽を揮発性有機物回収手段に接続できるため、高濃度に濃縮されたVOCを比較的容易に例えば、溶液状態等にて回収することが可能となる。
【0024】
尚、VOCは、例えば、トルエン、イソプロピルアルコール、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチル、メタノール、メチルエチルケトン等々挙げられるが、本発明に係る揮発性有機物回収処理装置及びこれを有する揮発性有機物回収処理システムは、いずれの揮発性有機物(VOC)であっても、処理対象とすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態における揮発性有機物回収処理装置を示した一例図である。10は揮発性有機物回収処理装置、12は被浄化ガス、14は導入口、16は揮発性有機物吸着槽、18は揮発性有機物吸着剤、20は導出口、22は浄化空気、24は仕切板、26は開閉部材、28は揮発性有機物吸収槽、30は揮発性有機物吸収材、32は減圧手段を示している。
【0026】
まず、図1(a)に示すように、固定発生源から発生した揮発性有機物(VOC)を含む被浄化ガス12が、揮発性有機物回収処理装置10の導入口14から揮発性有機物吸着槽16に導入される。次に、被浄化ガス12に含まれる揮発性有機物が、揮発性有機物吸着槽16に配設されている揮発性有機物吸着剤18によって吸着浄化される。続いて、吸着浄化された被浄化ガス12は、導出口20から浄化空気22として外気に排出される。
【0027】
尚、導入口14及び導出口20に手動又は自動による開閉自在のバルブを設けておくことで、揮発性有機物の回収処理の効率化や安全化等を図ることが可能となる。また、導出口20から排出される浄化空気22を活性炭等からなるフィルターに通してから外気に排出させるようにすると、揮発性有機物吸着槽16において除去しきれなかった揮発性有機物を除去でき、より安全に外気へと排出すること可能となる。また、揮発性有機物吸着剤18は、ミクロ孔、メソ孔、マクロ孔等が設けられている多孔質体のものを用いることで、吸着性能の向上が望める。
【0028】
そして、揮発性有機物吸着剤18は、活性炭、ゼオライト、シリカライト、粘土鉱物、疎水性シリカゲル、メソポーラスシリカ及びカーボンナノチューブからなる群より1つ以上選択することで、より一層吸着性能の向上が図れる。また、揮発性有機物吸着剤18を千鳥状又はハニカム状によって揮発性有機物吸着槽16に配設させることにより、さらなる優れた吸着性能を発揮させることが可能となる。
【0029】
次に、図1(b)を参照しながら、揮発性有機物吸着剤に吸着された揮発性有機物の処理の流れについて説明する。まず、導入口14への被浄化ガス12の導入を停止させた後、揮発性有機物吸着槽16と揮発性有機物吸収槽28とを隔てた仕切板24に設けられている開閉部材26を開放させる。そして、揮発性有機物吸着剤18から揮発性有機物を脱離させ、揮発性有機物吸収槽28に誘導し、揮発性有機物吸収材30に吸収させる。尚、開閉部材26は、バルブ、貫通孔、逆止弁等を用いて構成させることによって、揮発性有機物回収作業の効率を上がることができ、さらに揮発性有機物が揮発性有機物吸収槽28から揮発性有機物吸着槽16へと逆行することを防止することもできる。また、揮発性有機物吸収材30を揮発性有機物吸収槽28に千鳥状又はハニカム状にて配設させておくと、より吸収性能の向上が望める。
【0030】
本実施形態における、揮発性有機物吸着剤18から揮発性有機物(VOC)を脱離させる方法は、一例として、圧力スイング法(容積一定の下、圧力の変化によって脱着させる方法)を用いている。予め、揮発性有機物吸収槽28を減圧手段32で減圧環境下に保持しておき、続いて、揮発性有機物吸着槽16と揮発性有機物吸収槽28との仕切板24に設けた開閉部材26を開放させて揮発性有機物吸着槽16を減圧させる。それにともない揮発性有機物吸着剤18から揮発性有機物を脱離させるとともに、揮発性有機物吸収槽28へと誘導させるのである。ここで、例えば前述のように開閉部材26に逆止弁を用いると、一旦、揮発性有機物吸収槽28に誘導された揮発性有機物が揮発性有機物吸着槽16に戻らず、揮発性有機物吸着剤18への再吸着をより効果的に防ぐことが可能となる。
【0031】
一般に、VOCの吸脱着は、VOC飽和蒸気圧(P)とVOC分圧(P)の比(P/P)に依存している。即ち、減圧環境下にすることでP/P値が減少し、VOCは揮発性有機物吸着剤18から脱離するわけである。そうすると、VOCが揮発性有機物吸収槽28に誘導され、揮発性有機物吸収槽28内のVOC濃度が高くなっていき、揮発性有機物吸収材30に徐々に吸収されていくことになる。
【0032】
また、揮発性有機物吸収材30を固体状またはゲル状であって、揮発性有機物を溶解する不活性有機溶媒と、不活性有機溶媒のゲル化剤としての疎水性有機分子物質とを構成要素とするものにすると、揮発性有機物吸収槽28に誘導する揮発性有機物の吸収性能を飛躍的に向上させることが可能となるため、より効果的である。
【0033】
尚、疎水性有機物質は、ポリスチレン、オクタデシルアクリレート、トリアコンタアクリレート、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン、ポリメチルアクリレート、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、ビニル樹脂、セルロース、脂肪族炭化水素樹脂、天然ゴム、スチレンブタジエン樹脂、クロロプレンゴム、ワックス、アルキッド樹脂及びこれらの混合物のいずれかのように、低分子量化合物の自己組織化や、水素結合、分子間力などを利用したもの及び架橋等により形成された3次元構造をもつものを利用するのが良いが、ゲル化剤としての疎水性有機物質は疎水性が高ければ高いほど良いため、疎水性の高い官能基、例えば、オクタデシル基、トリアコンチル基等を用いるのが特に良い。さらにこれらを粉末状であったり、ペースト状や繊維状にして用いることが特に有効である。
【0034】
そして、不活性有機溶媒は、ジメチルアジペート、ジメチルセバケート等の脂肪族二塩基酸エステル(特にジメチルセバケートは、融点が27℃であることから、固体として利用することができ、操作性に優れている。)や芳香剤炭化水素、フタル酸エステルそしてシリコーンオイル及びこれらの混合物のいずれかを用いることが非常に有用である。
【0035】
(吸着剤のVOC吸着実験)
ここで、動的環境下における吸着剤のVOC(本実験では、トルエンを採用)吸着実験について説明する。図8(a)に示す構成により、エアーポンプから流量2l/minで100ppmのトルエンガスを試料(本実験では、比較のためポリスチレンゲル・活性炭)の入った捕集槽に導入させる。そして、捕集槽から導出される部分にFID検出器を設置し、導出されるトルエンガスの濃度をモニタリングした。結果は、図8(b)に示すように、ポリスチレンゲルは、活性炭に比べてトルエンを吸収しにくいことが分かった。
【0036】
これは、ポリスチレンゲルの比表面積が狭く、動的環境下ではトルエンとの接触確率が低いため、うまく吸収することができないということが原因である。逆に、静的環境下では、ポリスチレンゲルの表面にトルエンが接触する時間が十分にあるので、表面のトルエン濃度の上昇によりポリスチレンゲル内部にうまく吸収することが可能となるわけである。つまり、動的環境下では、活性炭のような多孔質なものの方がトルエンをはじめとするVOCの吸収に優れていることが理解できる。
【0037】
動的環境下では、VOC吸着能力の高い活性炭などの多孔質吸着剤が有利であり、静的環境下では、高いVOC吸収能力を持つポリスチレンゲルなどの揮発性有機物吸収材が有利である。従って、前述のように、例えば、活性炭、ゼオライト、メソポーラスシリカなどの多孔質吸着剤が持つVOC吸着処理能力の高さと、揮発性有機物吸収材の持つ高いVOC吸収能力を複合するという技術を用いることは、揮発性有機物の回収処理において非常に有用なものとなる。
【0038】
図2は、本発明の第2の実施形態における揮発性有機物回収処理装置を示した一例図である。図中の符号は、図1においてふられたものと同様である他、34は加熱手段を示している。図2(a)に示すように、固定発生源から発生した揮発性有機物を含む被浄化ガス12が、揮発性有機物回収処理装置10の導入口14から揮発性有機物吸着槽16へと導入される。続いて、被浄化ガス12に含まれる揮発性有機物が、揮発性有機物吸着槽16に配設されている揮発性有機物吸着剤18によって吸着浄化される。そして、吸着浄化された被浄化ガス12は、導出口20から浄化空気22として外気に排出される。
【0039】
尚、導入口14及び導出口20に、手動又は自動による開閉自在のバルブを設けておくことで、揮発性有機物の回収処理の効率化や安全化等を図ることが可能となる。また、導出口20から排出される浄化空気22を活性炭等からなるフィルターに通してから外気に排出させるような構成にすると、揮発性有機物吸着槽16において除去しきれなかった揮発性有機物を除去でき、より安全に外気へと排出すること可能となる。また、揮発性有機物吸着剤18に、ミクロ孔、メソ孔、マクロ孔等が設けられている多孔質体のものを用いると、吸着性能の向上が望める。
【0040】
さらに、揮発性有機物吸着剤18を、活性炭、ゼオライト、シリカライト、粘土鉱物、疎水性シリカゲル、メソポーラスシリカ及びカーボンナノチューブからなる群より1つ以上選択することによって、より一層吸着性能を上げることが可能となる。また、揮発性有機物吸着剤18を千鳥状又はハニカム状によって揮発性有機物吸着槽16に配設させることで、さらなる優れた吸着性能を発揮させることも可能となる。
【0041】
次に、図2(b)を参照しながら、揮発性有機物吸着剤18に吸着された揮発性有機物の処理の流れについて説明する。まず、導入口14への被浄化ガス12の導入を停止させた後、揮発性有機物吸着槽16と揮発性有機物吸収槽28との間を隔てる仕切板24に設けられている開閉部材26を開放させる。そして、揮発性有機物吸着剤18から揮発性有機物を脱離させ、揮発性有機物吸収槽28に誘導し、揮発性有機物吸収材30に吸収させる。尚、開閉部材26は、バルブ、貫通孔、逆止弁等を用いて構成させることによって、揮発性有機物回収作業の効率を上がることができる。また、揮発性有機物吸収材30を揮発性有機物吸収槽28に千鳥状又はハニカム状にて配設させておくと、より吸収性能の向上が望める。
【0042】
本実施形態における揮発性有機物吸着剤18から揮発性有機物を脱離させる方法は、加熱脱着法を用いている。揮発性有機物吸着剤を加熱することにより、吸着質と吸着剤間の相互作用が弱まることで、吸着質の脱離が発生するという性質に基づくものである。即ち、加熱手段34を用いて揮発性有機物吸着槽16内を加熱し、揮発性有機物吸着剤18に吸着されているVOCを追い出し、揮発性有機物吸収槽28へとVOCガスを誘導させる。すると、揮発性有機物吸収槽28内のVOC濃度が上昇し、徐々に揮発性有機物吸収材30にVOCが吸収されていくという流れを採る方法である。尚、加熱手段34による加熱方法は、例えば、揮発性有機物吸着剤18に電熱線をコイル状に巻きつけることで、直接揮発性有機物吸着剤18を加熱する方法や電熱機を揮発性有機物吸着槽16の外部に配置して、揮発性有機物吸着槽16全体を外部から加熱する方法、電熱機を揮発性有機物吸着槽16内部に配置して、揮発性有機物吸着槽16内部を加熱する方法等を用いても良い。
【0043】
揮発性有機物吸収材30は、固体状またはゲル状であって、揮発性有機物を溶解する不活性有機溶媒と、不活性有機溶媒のゲル化剤としての疎水性有機分子物質とを構成要素とするものにすることで、揮発性有機物吸収槽28に誘導する揮発性有機物の吸収性能を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0044】
尚、疎水性有機物質は、ポリスチレン、オクタデシルアクリレート、トリアコンタアクリレート、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン、ポリメチルアクリレート、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、ビニル樹脂、セルロース、脂肪族炭化水素樹脂、天然ゴム、スチレンブタジエン樹脂、クロロプレンゴム、ワックス、アルキッド樹脂及びこれらの混合物のいずれかのように、低分子量化合物の自己組織化や、水素結合、分子間力などを利用したもの及び架橋等により形成された3次元構造をもつものを利用するのが良いが、ゲル化剤としての疎水性有機物質は疎水性が高ければ高いほど良いため、疎水性の高い官能基、例えば、オクタデシル基、トリアコンチル基等を用いるのが特に良い。さらにこれらを粉末状であったり、ペースト状や繊維状にして用いることが特に有効である。
【0045】
そして、不活性有機溶媒は、ジメチルアジペート、ジメチルセバケート等の脂肪族二塩基酸エステル(特にジメチルセバケートは、融点が27℃であることから、固体として利用することができ、操作性に優れている。)や芳香剤炭化水素、フタル酸エステルそしてシリコーンオイル及びこれらの混合物のいずれかを用いることが非常に有用である。
【0046】
図3は、本発明の第3の実施形態における揮発性有機物回収処理装置を示した一例図である。図中の符号は、図1と同様である。まず、図3(a)に示すように、固定発生源から発生した揮発性有機物を含む被浄化ガス12が、揮発性有機物回収処理装置10の導入口14から揮発性有機物吸着槽16に導入される。次に、被浄化ガス12に含まれる揮発性有機物が、揮発性有機物吸着槽16に配設されている揮発性有機物吸着剤18によって吸着浄化される。続いて、吸着浄化された被浄化ガス12は、導出口20から浄化空気22として外気に排出される。
【0047】
尚、導入口14及び導出口20に手動又は自動による開閉自在のバルブを設けておくことで、揮発性有機物の回収処理の効率化や安全化等を図ることが可能となる。また、導出口20から排出される浄化空気22を活性炭等からなるフィルターに通してから外気に排出させるような構成にすると、揮発性有機物吸着槽16において除去しきれなかった揮発性有機物を除去でき、より安全に外気へと排出すること可能となる。また、揮発性有機物吸着剤18に、ミクロ孔、メソ孔、マクロ孔等が設けられている多孔質体のものを用いることは、吸着性能の向上に効果的である。
【0048】
また、揮発性有機物吸着剤18は、活性炭、ゼオライト、シリカライト、粘土鉱物、疎水性シリカゲル、メソポーラスシリカ及びカーボンナノチューブからなる群より1つ以上選択することで、より一層吸着性能の向上が図れる。また、揮発性有機物吸着剤18を千鳥状又はハニカム状によって揮発性有機物吸着槽16に配設させることにより、さらなる優れた吸着性能を発揮させることが可能となる。
【0049】
次に、図3(b)を参照しながら、揮発性有機物吸着剤に吸着された揮発性有機物の処理の流れについて説明する。まず、導入口14への被浄化ガス12の導入を停止させた後、揮発性有機物吸着槽16と揮発性有機物吸収槽28との間を隔てる仕切板24に設けられている開閉部材26を開放させる。そして、揮発性有機物吸着剤18から揮発性有機物を脱離させ、揮発性有機物吸収槽28に誘導し、揮発性有機物吸収材30に吸収させる。尚、開閉部材26は、バルブ、貫通孔、逆止弁等を用いて構成させることによって、揮発性有機物回収作業の効率を上がることができる。また、揮発性有機物吸収材30を揮発性有機物吸収槽28に千鳥状又はハニカム状にて配設させておくと、より吸収性能の向上に効果的である。
【0050】
本実施形態における、揮発性有機物吸着剤18から揮発性有機物を脱離させる方法は、前述の圧力スイング法及び加熱脱着法を組み合わせた方法を採用している。揮発性有機物吸着槽16を減圧環境下で加熱することにより、前述の第2の実施形態に比べて、より低温でのVOCガスの脱離が可能となる。
【0051】
尚、揮発性有機物吸収材30は、固体状またはゲル状であって、揮発性有機物を溶解する不活性有機溶媒と、不活性有機溶媒のゲル化剤としての疎水性有機分子物質とを構成要素とするものにすることで、揮発性有機物吸収槽28に誘導する揮発性有機物の吸収性能を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0052】
尚、疎水性有機物質は、ポリスチレン、オクタデシルアクリレート、トリアコンタアクリレート、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン、ポリメチルアクリレート、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、ビニル樹脂、セルロース、脂肪族炭化水素樹脂、天然ゴム、スチレンブタジエン樹脂、クロロプレンゴム、ワックス、アルキッド樹脂及びこれらの混合物のいずれかのように、低分子量化合物の自己組織化や、水素結合、分子間力などを利用したもの及び架橋等により形成された3次元構造をもつものを利用するのが良いが、ゲル化剤としての疎水性有機物質は疎水性が高ければ高いほど良いため、疎水性の高い官能基、例えば、オクタデシル基、トリアコンチル基等を用いるのが特に良い。さらにこれらを粉末状であったり、ペースト状や繊維状にして用いることが特に有効である。
【0053】
そして、不活性有機溶媒は、ジメチルアジペート、ジメチルセバケート等の脂肪族二塩基酸エステル(特にジメチルセバケートは、融点が27℃であることから、固体として利用することができ、操作性に優れている。)や芳香剤炭化水素、フタル酸エステルそしてシリコーンオイル及びこれらの混合物のいずれかを用いることが非常に有用である。
【0054】
図4は、本発明の第4の実施形態における揮発性有機物回収処理装置を示した一例図である。図中の符号に関しては、図1においてふられたものと同様である他、25は連結部材を示している。本実施形態における、揮発性有機物吸着剤18から揮発性有機物を脱離させる方法は、前述の圧力スイング法や、加熱脱着法又はこれらの組み合わせによる方法のいずれかを採用する。揮発性有機物回収処理装置10の揮発性有機物吸収槽28に配設されている揮発性有機物吸収材30を回収処理する際には、揮発性有機物吸収槽28を連結部材25から外し、例えば工場等に揮発性有機物吸収材30とともに揮発性有機物吸収槽28を運び出し、回収処理が行えるような構成となっている。
【0055】
図5は、本発明の第5の実施形態における揮発性有機物回収処理装置を示した一例図である。図中の符号に関しては、図1においてふられたものと同様である他、36は減圧中間槽を示している。本実施形態における、揮発性有機物吸着剤18から揮発性有機物を脱離させる方法は、一例として、圧力スイング法(容積一定の下、圧力の変化によって脱着させる方法)を用いている。予め、揮発性有機物回収処理装置10の減圧中間槽36を減圧手段32で減圧環境下に保持しておき、続いて、揮発性有機物吸着槽16と減圧中間槽36とを隔てる仕切板24に設けた開閉部材26を開放し、揮発性有機物吸着槽16を減圧させ、それにともない揮発性有機物吸着剤18から揮発性有機物を脱着させて、一旦、減圧中間槽36へと誘導させる。
【0056】
その後、減圧中間槽36と揮発性有機物吸収槽28とを隔てる仕切板24に設けた開閉部材26を開放し、減圧中間槽36から揮発性有機物吸収槽28へと揮発性有機物を誘導させ、揮発性有機物吸収材30に吸収させるという流れである。本構成を採ることにより、回収効率のさらなる向上が望める。
【0057】
図6(a)は、本発明の第6の実施形態における揮発性有機物回収処理装置を示した一例図である。図中の符号に関しては、図1においてふられたものと同様である。揮発性有機物回収処理装置10の揮発性有機物吸着槽16と揮発性有機物吸収槽28は、図6(b)に一例として示すように、全体として円筒形の構造となっており、中心部に揮発性有機物吸着剤(図示せず)が配設された揮発性有機物吸着槽16、その周囲に揮発性有機物吸収材30が配設された揮発性有機物吸収槽28が囲むような構成となっている。
【0058】
まず、固定発生源から発生した揮発性有機物を含む被浄化ガス12が、揮発性有機物回収処理装置10の導入口14から揮発性有機物吸着槽16に導入される。次に、被浄化ガス12に含まれる揮発性有機物が、揮発性有機物吸着槽16に配設されている揮発性有機物吸着剤18によって吸着浄化される。続いて、吸着浄化された被浄化ガス12は、導出口20から浄化空気22として外気に排出される。
【0059】
尚、導入口14及び導出口20に手動又は自動による開閉自在のバルブを設けておくことで、揮発性有機物の回収処理の効率化や安全化等を図ることが可能となる。また、導出口20から排出される浄化空気22を活性炭等からなるフィルターに通してから外気に排出させるような構成にすると、揮発性有機物吸着槽16において除去しきれなかった揮発性有機物を除去でき、より安全に外気へと排出すること可能となる。また、揮発性有機物吸着剤18は、ミクロ孔、メソ孔、マクロ孔等が設けられている多孔質体のものを用いることで、吸着性能が向上する。
【0060】
また、揮発性有機物吸着剤18は、活性炭、ゼオライト、シリカライト、粘土鉱物、疎水性シリカゲル、メソポーラスシリカ及びカーボンナノチューブからなる群より1つ以上選択することで、より一層吸着性能の向上が図れる。また、揮発性有機物吸着剤18を千鳥状又はハニカム状によって揮発性有機物吸着槽16に配設させることにより、さらなる優れた吸着性能を発揮させることが可能となる。
【0061】
次に、揮発性有機物吸着剤に吸着された揮発性有機物の処理の流れについて説明する。まず、導入口14への被浄化ガス12の導入を停止させた後、揮発性有機物回収処理装置10の揮発性有機物吸着槽16と揮発性有機物吸収槽28との間を隔てる仕切板24に設けられている開閉部材26を開放させる。そして、揮発性有機物吸着剤18から揮発性有機物を脱離させ、揮発性有機物吸収槽28に誘導し、揮発性有機物吸収材30に吸収させる。尚、開閉部材26は、バルブ、貫通孔、逆止弁等を用いて構成させることによって、揮発性有機物回収作業の効率を上がることができる。
【0062】
次に、本実施形態における、揮発性有機物吸着剤18から揮発性有機物を脱離させる方法について説明する。揮発性有機物吸着槽16内の揮発性有機物吸着剤18がVOCを吸着した後、例えば、加熱脱着法により揮発性有機物吸着剤18からVOCを脱着させ、次に、揮発性有機物吸着槽16を図6(b)に示すように所定の回転方向に回転させる。そうすると、回転によって生じる遠心力により、揮発性有機物吸着槽16と揮発性有機物吸収槽28との間に対流を作ることができる。
【0063】
続いて、揮発性有機物吸着剤18から脱離したVOCが揮発性有機物吸着槽16の周囲を囲む揮発性有機物吸収槽28に向かって誘導され、揮発性有機物吸収槽28内に配設されている揮発性有機物吸収材30に吸収されることになる。尚、加熱方法は、例えば、加熱装置等を使用して、揮発性有機物吸着槽16を加熱させるようにしても良いし、揮発性有機物吸着剤18に電熱線をコイル状に巻き付けることで直接揮発性有機物吸着剤18を加熱しても良い。また、揮発性有機物吸着槽16内で、例えばカートリッジ等に揮発性有機物吸着剤18を配設し、当該カートリッジを揮発性有機物吸着槽16内で回転させるように構成しても良い。
【0064】
揮発性有機物吸収材30は、固体状またはゲル状であって、揮発性有機物を溶解する不活性有機溶媒と、不活性有機溶媒のゲル化剤としての疎水性有機分子物質とを構成要素とするものにすることで、揮発性有機物吸収槽28に誘導する揮発性有機物の吸収性能を飛躍的に向上させることが可能となる。また、揮発性有機物吸収材30を揮発性有機物吸収槽28に千鳥状又はハニカム状にて配設させておくと、より吸収性能の向上に効果的である。
【0065】
尚、疎水性有機物質は、ポリスチレン、オクタデシルアクリレート、トリアコンタアクリレート、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン、ポリメチルアクリレート、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、ビニル樹脂、セルロース、脂肪族炭化水素樹脂、天然ゴム、スチレンブタジエン樹脂、クロロプレンゴム、ワックス、アルキッド樹脂及びこれらの混合物のいずれかのように、低分子量化合物の自己組織化や、水素結合、分子間力などを利用したもの及び架橋等により形成された3次元構造をもつものを利用するのが良いが、ゲル化剤としての疎水性有機物質は疎水性が高ければ高いほど良いため、疎水性の高い官能基、例えば、オクタデシル基、トリアコンチル基等を用いるのが特に良い。さらにこれらを粉末状であったり、ペースト状や繊維状にして用いることが特に有効である。
【0066】
そして、不活性有機溶媒は、ジメチルアジペート、ジメチルセバケート等の脂肪族二塩基酸エステル(特にジメチルセバケートは、融点が27℃であることから、固体として利用することができ、操作性に優れている。)や芳香剤炭化水素、フタル酸エステルそしてシリコーンオイル及びこれらの混合物のいずれかを用いることが非常に有用である。
【0067】
図7は、本発明の第7の実施形態における揮発性有機物回収処理装置を示した一例図である。図中の符号は、図1と同様である他、38は排出ポンプ、40は拡散槽、42はプレフィルター、44は排風機、46は最終フィルター、48は冷却トラップ、50は回収溶液タンク、52は真空ポンプ、54は加熱処理装置を示している。
【0068】
本実施形態における揮発性有機物処理装置10は、VOCを捕集する捕集手段(濃縮)と捕集手段からVOCを回収貯蔵する回収貯蔵手段からなっている。捕集手段は、プレフィルター42、拡散槽40、揮発性有機物回収処理ユニット(本実施形態においては、導入口14、揮発性有機物吸着槽16、揮発性有機物吸着剤18、導出口20、仕切板24、開閉部材26、揮発性有機物吸収槽28、揮発性有機物吸収材30を含む)、排風機44、最終フィルター46及び排出ポンプ38を含む構成となっており、回収貯蔵手段は、冷却トラップ48、最終フィルター46、回収溶液タンク50、真空ポンプ52、加熱処理装置54とを含む構成となっている。
【0069】
まず、固定発生源から発生した揮発性有機物を含む被浄化ガス12は、排出ポンプ38により導入口14から装置内に導入され、プレフィルター42により固形物が取り除かれる。そして、拡散槽40において被浄化ガス12のみを均一に拡散させるとともに、当該拡散された被浄化ガス12を揮発性有機物回収処理ユニットの揮発性有機物吸着槽16に導入させ、揮発性有機物吸着剤18に吸着浄化させる。揮発性有機物が浄化された浄化空気22は、導出口20を通り、排風機44に送り出されることによって、微量に残存している可能性のある揮発性有機物を除去する最終フィルター46を流通し、大気中に放出されることになる。尚、最終フィルター46は活性炭等を用いることが好適である。また、揮発性有機物吸着剤18は、ミクロ孔、メソ孔、マクロ孔等が設けられている多孔質体のものを用いることで、吸着性能の向上が図れる。またさらに、導入口14及び導出口20に手動又は自動による開閉自在のバルブを設けておくことで、揮発性有機物の回収処理の効率化や安全化等を図ることが可能となる。
【0070】
また、揮発性有機物吸着剤18は、活性炭、ゼオライト、シリカライト、粘土鉱物、疎水性シリカゲル、メソポーラスシリカ及びカーボンナノチューブからなる群より1つ以上選択することで、より一層吸着性能の向上が図れる。また、揮発性有機物吸着剤18を千鳥状又はハニカム状によって揮発性有機物吸着槽16に配設させることにより、さらなる優れた吸着性能を発揮させることが可能となる。
【0071】
そして、揮発性有機物吸着槽16内に配設された揮発性有機物吸着剤18に吸着している揮発性有機物を揮発性有機物吸収槽28に誘導させ、揮発性有機物吸収槽28内に配設されている揮発性有機物吸収材30に吸収させる。尚、揮発性有機物吸収材30は、固体状またはゲル状であって、揮発性有機物を溶解する不活性有機溶媒と、不活性有機溶媒のゲル化剤としての疎水性有機分子物質とを構成要素とするものにすることで、揮発性有機物吸収槽28に誘導する揮発性有機物の吸収性能を飛躍的に向上させることが可能となる。また、揮発性有機物吸収材30を揮発性有機物吸収槽28に千鳥状又はハニカム状にて配設させておくと、より吸収性能の向上に効果的である。
【0072】
揮発性有機物吸収材30に吸収されている揮発性有機物を回収するためには、以下のような流れを踏む。まず、揮発性有機物吸収槽28を真空ポンプ52によって減圧状態にし、さらに加熱処理装置54により加熱する。そうすると、揮発性有機物吸収材30に吸収(捕集)されている揮発性有機物が気化することになる。尚、加熱処理装置54による加熱方法は、例えば、揮発性有機物吸収材30に電熱線をコイル状に巻くことによって、直接揮発性有機物吸収材30を加熱する方法や電熱機を揮発性有機物吸収槽28の外部に配置して、揮発性有機物吸収槽28全体を外部から加熱する方法、電熱機を揮発性有機物吸収槽28内部に配置して、揮発性有機物吸収槽28内部を加熱する方法等を用いても良い。
【0073】
次に、この気化した揮発性有機物を冷却トラップ48に誘導させる(真空ポンプ52による減圧操作に起因)。そうすると、一旦気化した揮発性有機物が冷却されて液化され、そして、当該液化された揮発性有機物が回収溶液タンク50内に回収される。
【0074】
尚、図9に示すように、揮発性有機物の代表であるトルエンを気体から液体に変化(飽和蒸気圧に達した際に変化)させるには、ポリスチレンゲルに吸収されたトルエンより活性炭に吸着されたトルエンの方が、より低い温度までの冷却が必要であることが知られている。つまり、揮発性有機物吸収材の一例であるポリスチレンゲルの使用は、より高い温度条件下での液化回収を可能にし、且つ、これまでの活性炭を用いて行っていたVOCの捕集、液化の過程よりも効率を上げることが可能となるわけである。
【0075】
回収後の浄化空気22は、微量に残存している可能性のある揮発性有機物を除去する最終フィルター46を流通し、大気中に放出されることになる。尚、最終フィルター46は活性炭等を用いることが好適である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る揮発性有機物回収処理装置及びこれを有する揮発性有機物回収処理システムは、揮発性有機物吸着剤や揮発性有機物吸収材の交換や再生を頻繁に行う必要がなく、さらに当該装置内において可能であるため、ランニングコストを抑えるとともに、回収処理の安全性や機能の面で極めて優れたVOC対策が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施形態における揮発性有機物回収処理装置を簡略的に示した一例図で、(a)は、VOCガスの処理を示したもので、(b)は、VOC回収処理を示したものである。
【図2】本発明の第2の実施形態における揮発性有機物回収処理装置を簡略的に示した一例図で、(a)は、VOCガスの処理を示したもので、(b)は、VOC回収処理を示したものである。
【図3】本発明の第3の実施形態における揮発性有機物回収処理装置を簡略的に示した一例図で、(a)は、VOCガスの処理を示したもので、(b)は、VOC回収処理を示したものである。
【図4】本発明の第4の実施形態における揮発性有機物回収処理装置を簡略的に示した一例図である。
【図5】本発明の第5の実施形態における揮発性有機物回収処理装置を簡略的に示した一例図である。
【図6】(a)は、本発明の第6の実施形態における揮発性有機物回収処理装置を簡略的に示した一例図であり、(b)は、その断面構造を簡略的に示した一例図である。
【図7】本発明の第7の実施形態における揮発性有機物回収処理装置を簡略的に示した一例図である。
【図8】(a)は、吸着剤のVOC吸着実験方法の概略を示した一例図で、(b)は、実験結果を示した図である。
【図9】トルエン飽和蒸気圧曲線を示した図である。
【符号の説明】
【0078】
10 揮発性有機物回収処理装置
12 被浄化ガス
14 導入口
16 揮発性有機物吸着槽
18 揮発性有機物吸着剤
20 導出口
22 浄化空気
24 仕切板
25 連結部材
26 開閉部材
28 揮発性有機物吸収槽
30 揮発性有機物吸収材
32 減圧装置
34 加熱手段
36 減圧中間槽
38 排出ポンプ
40 拡散槽
42 プレフィルター
44 排風機
46 最終フィルター
48 冷却トラップ
50 回収溶液タンク
52 真空ポンプ
54 加熱処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に揮発性有機物吸着剤が配設され、導入口から導入する揮発性有機物を含む被浄化ガスを吸着浄化して導出口から外部に導出する揮発性有機物吸着槽と、
内部に揮発性有機物吸収材が配設され、前記揮発性有機物吸着剤に吸着された揮発性有機物を導入して吸収する揮発性有機物吸収槽と、
を備えたことを特徴とする揮発性有機物回収処理装置。
【請求項2】
前記揮発性有機物吸着槽と、前記揮発性有機物吸収槽とは、開閉自在な開閉手段を備えた仕切板を介して一体に構成されていることを特徴とする請求項1記載の揮発性有機物回収処理装置。
【請求項3】
前記開閉手段は、逆止弁を含むことを特徴とする請求項2記載の揮発性有機物回収処理装置。
【請求項4】
前記揮発性有機物吸収槽には、当該揮発性有機物吸収槽の内部を減圧する減圧手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の揮発性有機物回収処理装置。
【請求項5】
前記揮発性有機物吸着槽には、揮発性有機物吸着剤に吸着されている揮発性有機物の気化を促進させる加熱手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の揮発性有機物回収処理装置。
【請求項6】
前記揮発性有機物吸収槽には、揮発性有機物吸収材に吸収されている揮発性有機物を気化させ、冷却するとともに、回収貯蔵する揮発性有機物貯蔵手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項揮発性有機物回収処理装置。
【請求項7】
前記揮発性有機物吸着剤は、ミクロ孔、メソ孔、マクロ孔及びこれらの組み合わせのうちの少なくともいずれかが設けられた多孔質体であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の揮発性有機物回収処理装置。
【請求項8】
前記揮発性有機物吸着剤が、活性炭、ゼオライト、シリカライト、粘土鉱物、疎水性シリカゲル、メソポーラスシリカ及びカーボンナノチューブからなる群から1つ以上選択されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の揮発性有機物回収処理装置。
【請求項9】
前記揮発性有機物吸収材が、固体状またはゲル状であって、揮発性有機物を溶解する不活性有機溶媒と、前記不活性有機溶媒のゲル化剤としての疎水性有機分子物質とを含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の揮発性有機物回収処理装置。
【請求項10】
前記揮発性有機物吸収材が、前記揮発性有機物吸収槽に千鳥状又はハニカム状に配設されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載の揮発性有機物回収処理装置。
【請求項11】
請求項1乃至10いずれか1項記載の揮発性有機物回収処理装置を少なくとも有することを特徴とする揮発性有機物回収処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−142719(P2009−142719A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320334(P2007−320334)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(506209422)地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター (134)
【Fターム(参考)】