説明

損傷した神経系を機能回復させるための手段

本発明は、一般的に、中枢神経または末梢神経組織の空洞にブリッジングをすることにより、損傷した神経系を部分的にまたは完全に機能回復させるための方法、および、デバイスに関する。本発明は、マイクロ電極の素子(より好ましくは刺激用マイクロ電極および記録用マイクロ電極)を用いて空洞をブリッジングすることにより、神経シグナル伝達を修復するためのシステムおよび方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、一般的に、例えばヒト患者の損傷した神経系を部分的にまたは完全に機能回復させることに適している方法およびデバイスに関する。該損傷は、中枢または末梢神経組織における空洞であってもよい。また、本発明は、より好ましくは、例えば空洞内での、神経シグナル伝達を修復することに適しているシステムおよび方法に関する。また、本発明は、マイクロ電極の素子、より好ましくは刺激用マイクロ電極および記録用マイクロ電極に関する。本発明は、空洞(例えば、安定組織病変)により遮断されている、第1興奮性細胞と第1興奮性細胞から離れている第2興奮性細胞との相互連結を回復させること、および、第1興奮性細胞から離れている第2興奮性細胞の活動に比例して、第2興奮性細胞から離れている第1興奮性細胞を電気刺激することに、特に適している。
【0002】
〔発明の背景〕
中枢神経系の病変は、本発明を用いた治療に適切な疾患である。脳病変および脊髄病変によって、軽症または重症の病的状態が引き起こされる。それらの病変のいくつか考えられる原因には、外傷性傷害(道路交通事故、墜落、喧嘩、中枢神経系における外科的行為、および、外傷性障害による病変の多くの他の例が存在している)、自発性出血(脳内出血、髄内出血、小脳および脳幹出血、脳卒中後の出血など)、脳卒中、以前に部分的にまたは完全に治療されたあるいは自発的に治癒した腫瘍および感染、ならびに、脳性麻痺の一般的な原因となる周産期病変がある。
【0003】
中枢神経系は、脳、小脳、脳幹、および脊髄から成りたっている。本発明において、我々が対象にしたいと考える中枢神経系の病変は、時間的に比較的安定な病変である。これは、本発明が、急性感染、増大する腫瘍、つい最近に起こった出血などを対象としていないことを意味する。安定病変は例えば、神経系における空洞(例えば、急性期が消散した時点(すなわち初期負傷から数週間または数ヶ月過ぎた時点)での外傷傷害後の中枢神経系(CNS);脳内出血が吸収された後のCNS空洞;脳室の大きさ、および、脳脊髄液の循環を安定させた後のCNS空洞;任意の手段(外科的切除、化学療法、放射線療法、放射線外科または定位的放射線療法、免疫療法)によって、腫瘍または感染を部分的にまたは完全に治癒した後のCNS空洞;脳性麻痺を引き起こし、かつ、安定として定義されている周産期病変が原因のCNS空洞;ならびに、中枢神経系にある特定部分の形成不全が原因のCNS空洞からなる群の空洞)である。これらのリストは網羅的ではなく、中枢神経系の病変の分野において、考えられることができる他の多くの例を排除していない。
【0004】
本発明の治療に適している脳病変の実施例は、例えば、図1に説明されている。図1a、b、および、cは安定大脳内病変を示す図である。なお、該安定大脳病変は、このスキャン(T1強調核磁気共鳴画像)が撮られる数年前に、落下後に脳に侵入したブレーキが原因で生じたものである。患者は、このような負傷を負った後に、ジスキネジー(運動異常)を有している。図1d、e、およびfは、それぞれ尾状核、淡蒼球、および視床における病変を示す電子化された断層写真撮影スキャンを示す図である。
【0005】
本発明により治療することができる脳病変の他の実施例は、図2に示されている。図2aは、両方の脳半球における大きな脳病変を示す図である。体液で満たされた空洞には、頭蓋開口術(頭蓋骨の妥当な部分を開口する手術)により外側から容易に到達できる。図2bは片脳半球における大きな脳病変を示す図である。体液で満たされた空洞には、頭蓋開口術により外側から容易に到達できる。図2cは、脊髄(灰色)における大きな病変(T1強調核磁気共鳴画像法上の低信号、すなわち黒色)を示す。大きな病変によって、病変より下の部位で知覚麻痺と運動麻痺との両方、および、大小便の失禁が引き起される。
【0006】
本発明がなされるまで、提示した上述の病変の発生により損失した神経系機能を回復させる技術が、明らかに必要とされていた。
【0007】
また、中枢神経系の変性疾患は、本発明を用いた治療に適切な疾患であってもよい。
【0008】
このように、上述した神経系での病変または空洞により生じた神経系疾患を治療する、または、前記病変または空洞により無効になった神経系の機能を回復させる技術が、明らかに必要とされている。本発明は、マイクロ電極の素子(より好ましくは刺激用マイクロ電極または記録用マイクロ電極)を用いて、神経シグナル伝達を修復することにより空洞にブリッジングをすることによってこの問題を解決する。本発明のシステムは、時間的に比較的安定な病変に特に適している。
【0009】
〔発明の概要〕
本発明は、一般的に、興奮性細胞の組織における空洞、例えば中枢または末梢神経組織における空洞にブリッジングをすることにより、損傷した神経系の一部または全てを機能回復させる方法およびデバイスに関する。より好ましくは、本発明は、マイクロ電極の素子(より好ましくは刺激用マイクロ電極および記録用マイクロ電極)を用いて空洞をブリッジングすることにより、神経シグナル伝達を修復するためのシステムおよび方法に関する。ブリッジングデバイスは、空洞(例えば、安定組織病変)により遮断されている、第1興奮性細胞と第1興奮性細胞から離れている第2興奮性細胞の間の相互連結を回復させることに、および、第1興奮性細胞から離れている第2細胞の活動に比例して第2興奮性細胞から離れている第1興奮性細胞を電気刺激をすることに特に適している。従って、本発明は、遮断された興奮性細胞の間、または、離れている興奮性細胞の間に、電気刺激の情報伝達をブリッジングすることに、特に適している。
【0010】
本発明は、電気シグナルを第1興奮性細胞から、第1興奮性細胞から離れている第2興奮性細胞までブリッジングするために、活動を記録することと興奮性細胞を刺激することとが可能なブリッジングデバイスに関する。第1および第2細胞は、1の患者内、例えば一人の人間の脳内に位置していてもよい。本発明のブリッジングデバイスは、基板および基板上部に設けられたダイを備えている。ここで、該ダイは、(i)少なくとも1つの刺激手段および少なくとも1つの記録手段を有している刺激/記録部位を備えているアレイを具備しているか、あるいは、(ii)記録部位および/または刺激部位を備えているアレイを具備している。ダイを具備している前記基板は、標的空洞の内壁に適合するようにカスタマイズされている寸法および形状を有している折りたたみ式の薄片である。あるいは、本発明のブリッジングデバイスは、所定の位置に配置されたときに、該ブリッジングデバイスの一部が標的空洞の境界付近において、記録部位および/または刺激部位を備えているアレイが興奮性細胞と接触する、というような様式にて、標的空洞内に適合するようにカスタマイズされているデバイスである。上記標的空洞は、例えば、脳病変をブリッジングするのに用いられるニューロ‐ブリッジングデバイス(20)の場合は患者の脳に存在する。
【0011】
本発明の目的は、刺激パルスを運ぶこと、および、空洞の端、または、空洞の端付近を取り囲んでいる組織の3次元の測定を行うことができるブリッジングデバイス、ならびに、それを使用する方法およびそれを製造する方法を提供することである。
【0012】
さらに、本発明のもう1つ別の目的は、高い電気抵抗から低い電気抵抗への変更が可能であり、故に長期記録のシグナル対ノイズ比を強化する検出デバイスを具備する、ブリッジングデバイスを提供することである。
【0013】
上述の目的は、本発明の方法およびデバイスによって成し遂げられる。
【0014】
本発明の1つの態様では、本発明は、ブリッジングデバイスに含まれるマイクロ電極ピクセルを備えているアレイが適合する空洞の周囲の組織に存在している興奮性細胞の活動を、電気的に刺激および記録するためのブリッジデバイスを提供する。例えば、ブリッジングデバイスは、脳病変の周辺の脳組織に存在しているニューロンを電気刺激するため、および、興奮性細胞の相互連結を遮断している空洞の端付近におけるニューロンの活動を記録するためのニューロ‐ブリッジングデバイスであってもよい。本発明の前記態様のブリッジングデバイスは、ピクセルを備えているアレイを具備している。なお(i)各ピクセルは、少なくとも1つの刺激手段および少なくとも1つの記録手段を具備するか、あるいは、(ii)刺激手段を具備するピクセルの区域および記録手段を具備するピクセルの区域が存在している。
【0015】
記録手段とは、脳組織を例にすると、検査または治療される組織に存在している興奮性細胞の活動を、測定、表示、記録、感知することなどに使用することができる手段を意味する。
【0016】
本発明の第1態様のブリッジングデバイスにおいて、刺激手段および記録手段は、同じ部位に位置することができるし(すなわち「刺激/記録部位」を形成することができる)、または、別々の区域に位置することができる(刺激部位および記録部位を形成することができる)。
【0017】
さらに、刺激/記録部位、ならびに/あるいは、記録部位および/または刺激部位を備えているアレイが存在するので、少なくとも2つの方向から、興奮性細胞を刺激し、次に、興奮した興奮性細胞の活動を記録することが可能である。
【0018】
本発明の実施の形態において、ピクセルを備えているアレイは、ダイに配置されていてもよい。例えば、該ダイは、例えばシリコンダイのような半導体ダイであってもよい。一方、他の実施の形態において、該ダイは、GaAsダイまたは絶縁体上に形成された結晶シリコン(SOI(silicon on insulator))ダイであってもよい。本発明の実施の形態によれば、該ダイは、基板上に配置されていてもよい。該基板は、生体適合性材料に由来するものが好ましく、例えば、パリレンC(parylene C)、パリレンN(parylene N)、ポリイミド、ポリシロキサンゴム、テフロン(登録商標)、貴金属、チタニウム、酸化物、Si、または、生体適合性エポキシのうちの1つを具備していてもよい。該基板は、基板が患者の組織に導入されるときに、組織に存在している興奮性細胞を3次元刺激する、および、組織に存在している興奮性細胞の活動を3次元測定するのが可能となるように形成されていてもよい。該組織は、例えば、神経、心臓、または、筋肉組織であってもよい。
【0019】
本発明の実施の形態によれば、前記基板は第1領域を有していてもよく、前記ダイは、第2領域を有してもよい(ここで、第1領域は、第2領域よりも広い)。第1領域は、ブリッジングデバイスの軸と定義されていてもよく、そして第2領域は、ブリッジングデバイスの活性部分として定義されていてもよい。
【0020】
本発明の実施の形態によれば、ブリッジングデバイスは、生物の組織もしくは臓器の病変の3次元構造および3次元寸法に一致するようにカスタマイズされた形状を有していてもよい。そのような形状の長所は、記録および刺激用ピクセルを備えているアレイを、哺乳類のような被検体の組織または臓器の病変に正確に適合できること、および、前記病変の端周辺における興奮性細胞に直接接触させることができることである。
【0021】
本発明の前記態様の実施の形態において、デバイスは、基板上およびダイ上に存在するコンタクトが腐食されることから、プローブを保護するための生体適合性の絶縁被覆をさらに含んでいてもよい。
【0022】
本発明の第1態様の具体例では、ブリッジングデバイスは、脳病変をブリッジングするための(BLB)ニューロ‐ブリッジングデバイスであってもよい。該ニューロ‐ブリッジングデバイスは、(i)上面を有している基板、および(ii)基板の上面に位置し、刺激/記録部位を備えているアレイを具備しているダイを備えており、各刺激/記録部位は、少なくとも1つの刺激手段および少なくとも1つの記録手段を具備しているニューロ‐ブリッジングデバイスである。
【0023】
本発明の第2態様において、本発明の第1態様のブリッジングデバイスを製造するための方法が提供される。前記方法はピクセルを備えているアレイを提供する工程を含み、各ピクセルは、少なくとも1つの刺激手段および/または少なくとも1つの記録手段を含んでいる。そのようなピクセルを備えているアレイは、ダイ上に蒸着することにより入手可能である。
【0024】
記録手段とは、脳組織を例にすると、検査または治療される組織に存在している興奮性細胞の活動を、測定、表示、記録することなどに使用することができる手段を意味する。
【0025】
本発明の第2実施の形態の方法は、刺激および記録手段が、同じ部位に位置している(すなわち「刺激/記録部位」を形成している)ブリッジングデバイスを提供する。さらに、刺激/記録部位、および/または、記録部位および/または刺激部位を備えているアレイが存在するので、少なくとも2つの方向から、興奮性細胞を刺激すること、および、興奮した興奮性細胞の活動を記録することが可能である。
【0026】
本発明の実施の形態によれば、本発明の方法は、ダイ上にピクセルを備えているアレイを提供する工程を、さらに含んでいてもよい。
【0027】
さらなる実施の形態において、本発明の方法は、ピクセルを備えているアレイを具備しているダイを薄くする工程を、さらに含んでいる。この工程は、ダイがシリコン(Si)またはGaAsのような厚い基板から形成されているときに、特に必要とされてもよい。しかしながら、ダイが、絶縁体上に形成された結晶シリコン(SOI)で形成されているときは、前記工程が省略されてもよい。というのも、ブリッジングデバイスの製造を始める前に、前記SOIが十分な薄さで形成されてもよいからである。
【0028】
本発明の第2実施の形態の方法は、ピクセルを備えているアレイを具備するダイを基板上に接着する工程を、さらに含んでいてもよい。
【0029】
本発明の第2態様の実施の形態によれば、前記方法は、(i)埋め込まれる標的空洞を3次元イメージングし、(ii)標的空洞の3次元構造および寸法に一致するように、型をラピッド・プロトタイピングすることを含んでいるカスタマイズされた様式に基づいて、基板を形作る工程をさらに含んでいてもよい。これにより、生物(例えば、哺乳類患者)の空洞に導入されたときに、ブリッジングデバイスが、空洞の端の周辺の組織に存在している興奮性細胞を3次元刺激することができ、そして空洞の端付近の周辺の組織に存在している興奮性細胞を3次元測定することができる。いくつかの実施の形態において、基板を形作る工程は、基板を折り畳む段階かまたは基板を曲げる段階、および、最終的に標的空洞に接近するように型の寸法を縮小させる段階を含んでいてもよい。
【0030】
本発明の第2態様の実施の形態の方法では、ダイは、ワイヤーボンディング(wire bonding)という手段により、基板上に接着させてもよい。他の実施の形態において、ダイは、フリップ‐チップ(flip-chip)技術という手段により、基板上に接着させてもよい。
【0031】
本発明の第2態様の実施の形態によれば、本発明の方法は、基板上およびダイ上に存在するコンタクトが腐食されることから、保護するための生体適合性の絶縁被覆を提供する工程を、さらに含んでいてもよい。
【0032】
本発明の第2態様の具体例として、脳病変ブリッジングを実行するためのニューロ‐ブリッジングデバイスを製造するための方法が提供される。前記方法は、(i)上面を備えている基板を提供する工程、(ii)刺激/記録部位、あるいは、刺激部位または記録部位を備えているアレイを具備しているダイを提供する工程(ここで、そのような各部位は、少なくとも1つの刺激手段および少なくとも1つの記録手段を含んでいる)、(iii)刺激部位および/または記録部位を備えているアレイを具備しているダイを薄くする工程、(iv)刺激/記録部位、あるいは、刺激部位または記録部位を備えているアレイを具備しているダイを、基板の上面に接着させる工程、ならびに、(v)例えば、標的組織病変の寸法および3次元形状を有している内型または外型上に基板を折りたたみ、これによって、外側の側面を有している標的組織病変の境界の形状に対応するようにカスタマイズされた形状にまで拡張可能なデバイスを形成する工程(ここで、基板は、空洞の所定の位置にあるときに、刺激/記録部位、および/または、記録部位および/または刺激部位が、空洞の周囲の境界に適合するように折りたたまれている)を含んでいてもよい。
【0033】
本発明の第3態様として、本発明のプローブ‐デバイスを用いて、組織における興奮性細胞へ適用するための刺激パターンを決定するための方法が提供される。前記方法は、(i)興奮した細胞の電気的な活動を記録する工程、(ii)記録した電気的な活動を、興奮した細胞のあらかじめ定められた活動値と比較する工程、ならびに(iii)比較した結果から、刺激パターンを決定する工程を含んでいる。
【0034】
また、本発明は、制御演算装置上で実行したときに、本発明の第3態様の方法を実行するコンピュータプログラム製品、および、本発明のコンピュータプログラム製品を保存している機械読み込み可能なデータ記録装置を含んでいる。
【0035】
第4態様において、本発明は、本発明の第1実施の形態のブリッジングデバイスを用いて、組織における興奮性細胞へ適用するための刺激パターンを決定するためのデバイスを提供する。前記デバイスは、(i)興奮した細胞の電気的な活動を記録するため、および、対応する活動シグナルを発生させるための、本発明の第1実施の形態のブリッジングデバイス、(ii)発生した活動シグナルを、興奮した細胞に関する予め定められた活動シグナルと比較するための処理手段、ならびに(iii)前記比較から、刺激パターンの刺激パターンパラメータを発生させるための刺激パターン決定手段、を含んでいる。ここで、前記刺激パターンパラメータは、周波数、および/または、振幅、および/または、パルス幅を含んでいてもよい。特別で好ましい本発明の態様は、添付の独立請求項および従属請求項に記載されている。従属請求項の特徴は、単に請求項に明確に記載されただけではないような独立請求項の特徴、および、他の独立請求項の特徴を適宜組み合わせてもよい。
【0036】
上記ならびに本発明の他の特性、特徴、および、長所は、本発明の方針、実施例を通して例証する添付図面を参照した下記の詳細な説明から明白になるであろう。実施例のみが、詳細な説明に記載されているが、本発明の範囲を制限するものではない。下記に引用されている参考数字は、添付図面を参照している。
【0037】
〔定義〕
本出願において生物は、生命の個々の形態、すなわち臓器、細胞器官または生命の様々な処理を共に行う他の部分から構成されている体という意味である。生物としては、例えば、動物または植物が挙げられる。一方、臓器、特定の機能を実行する生物の区別される部分、例えば、目、心臓、脳、肝臓、または葉である。
【0038】
興奮性細胞(例えば、神経、筋肉細胞(心筋収縮細胞)、および、膵臓のランゲルハンス島のβ‐細胞、下垂体の分泌細胞分、副腎髄質の細胞)は、電気刺激に積極的に反応する、または、活動電位を伝藩できる、あるいは、わずかな電流を引き起こすために刺激されていてもよい細胞である。組織に存在している興奮性細胞を、電界により調節することができる。
【0039】
〔図面の簡単な説明〕
本発明は、下記の本明細書に記載の詳細な説明、および、説明のためだけに用いられている添付の図面から、より十分に理解が深まるであろう。ただし、それらは本発明を制限していない。
【0040】
図1は、脳病変(2)の冠状断面、矢状断面および横(軸)断面の脳の画像例を提供する。a、bおよびcは安定大脳内病変を示す図である。なお、安定大脳内病変は、このスキャン(T1強調核磁気共鳴画像)が撮られる数年前に、落下後に脳に侵入した自転車のブレーキが原因で生じた。その患者は、このような負傷を負った後に、ジスキネジー(運動異常)を有している。d、e、fは、それぞれ尾状核、淡蒼球、視床における病変を示す電子化された断層写真撮影スキャンを示す図である。
【0041】
図2は、両方の脳半球における大きな脳病変の冠状横断画像(a)、片半球における大きな脳病変(2)の横断面画像(b)、および脊髄(灰色)における大きな病変(T1強調核磁気共鳴画像上の低信号、すなわち黒色)(c)を提供する。aおよびbに示された、体液で満たされた空洞に、頭蓋開口術(頭蓋骨の妥当な部分を開口する手術)により外側から容易に到達できる。cに示された大きな病変は、病変より下の部位で知覚麻痺と運動麻痺との両方、および、大小便の失禁を引き起こす。脊髄、および脊髄病変は、それぞれコード番号3、およびコード番号4により印されている。
【0042】
図3は、脳病変(1)(a)、カニューレが側面からきている脳病変(b)、カニューレがより上側からきている脳病変(c)、を示す概略図である。この場合、カニューレの直径(6)は、図3bに記載されている直径よりも小さい。
【0043】
図4は、(i)バルーンまたはバルーン様構造体を満たすため、または、(ii)バルーンまたはバルーン様構造体を吸引するためのカテーテルおよびデバイスと接続された病変空洞の3次元構造に似ているバルーンまたはバルーン様構造体を示す概略図である。前記バルーンまたはバルーン様構造体を吸引するためのカテーテルおよびデバイスの両方は、すでに技術的に利用可能である。そのようなものは、例えば、脳室‐外側短絡術(ventriculo-external shunt)のためのカテーテル、および、貯水器であってもよい。これらは、単純な金属結合部材、および、マーシレン(Mersilen)(登録商標)または他の非吸収性の生体適合性材料の2号縫合糸を用いて、バルーンまたはバルーン様構造体に接着している。上記脳室‐外側短絡術のためのカテーテルとしては、例えば、脳室内カテーテル20cm((切取り可能なカテーテルであってもよい)、Integra Neurosciences Implants S.A., 2905 Route des Dolines, 06921 Sophia Antipolis, Cedex. France)または脳室内カテーテル(Codman, Johnson & Johnson, Raynham, MA, 02767-0350 USA)が挙げられる。上記貯水器としては、オムカナ貯水器(type Omcana reservoir)またはアキュ‐フロ(登録商標)CSF貯水器((Accu- Flo CSF Reservoir)式 14mm、ref 82-6100, Codman)である。このことは、脳室短絡および髄腔内化学療法の分野に従事している神経外科医に知られている。カテーテルは、バルーンまたはバルーン様構造体を挿入するために使用されるカニューレの直径よりも小さい任意の直径であってもよい。刺すためのデバイスを、バーホール(穿頭孔)、皮下、または、体の任意の位置に配置させることができる。刺すためのデバイスを、皮下に配置する場合、脳室内カテーテルは、好ましくは90度の角度を形成する。このような機器はすでに存在している。バルーンまたはバルーン様構造体を、図3に示された脳病変の大きさよりも直径が小さいカニューレにより挿入することができる。この理由は、カニューレを通じてデバイスを挿入した後に、バルーンまたはバルーン様構造体を大きくすることができるからである。バルーンまたはバルーン様構造体を満たすか、あるいはこの構造体から吸引するためのデバイス、カテーテル、および病変空洞の3次構造に似ているバルーンまたはバルーン様構造体は、それぞれコード番号7、コード番号8、およびコード番号5により印されている。
【0044】
図5aは、カニューレおよび探り針の使用に関する図である。バーホールを形成した後、大きな探り針を有しているカニューレ(大きな探り針はとがっていない先端を有している)が、従来の定位的な方法を用いて、脳に挿入される(なお、上記探り針は、カニューレの全体容量を好ましく満たすものである)。これは、空間のどこにこのカニューレが配置されたか、外科医が正確に知っているということを意味している。この理由は、現在の位置調節および画像診断システムによって、どこに3次元の病変空洞が位置しているかを、外科医が正確に知ることができるからである。また、外科医は、病変空洞に対して、カニューレの位置を知ることもできるであろう。カニューレ壁、(挿入された)探り針、およびとがっていない先端は、それぞれコード番号9、コード番号10、およびコード番号11により印されている。
【0045】
図5bは、カニューレおよび探り針の使用に関する図である。とがっていない先端を有する大きな探り針は、カニューレから引き抜かれている。カニューレ壁は、コード番号9により印されている。
【0046】
図5cの(実施例、例証された実施の形態に説明したとおりに構成された)折りたたまれたバルーンまたはバルーン様構造体はカニューレに挿入されている。異なった探り針(10)は、ちょうどバルーンまたはバルーン様構造体(5)の内側に、すなわちちょうど尖端に取り付けられている。これは、イメージング技術により視覚化されたような病変空洞の3次元構造に基づいて実現することができる。バルーンまたはバルーン様構造体、および探り針(10)は、良好な機械的安定性を有する生体内適合性チューブにより取り囲まれている。また、該チューブはカニューレ(9)の内側にちょうど適合する。このチューブの基部は、バルーンまたはバルーン様構造体に取り付けられている。チューブの先端は、バルーンまたはバルーン様構造体を後で閉じることができるように、カニューレの内孔に向かうねじ山を備えている。チューブの先端の外側では、骨セメントに、チューブを固定できるいくつかの不均整の構造(例えば、2以上のピン)がある。なお、上記骨セメントは、後でバーホールに適用されるものである。探り針は、該探り針が硬いチューブに入っている間は、ほぼ真っ直ぐである。しかし、一度探り針が押し出されれば、探り針は、病変空洞の3次元画像のデータが解析された後に実地されるデバイスの構成の前に方針された状態をとるようになる。各バルーンまたはバルーン様構造体の先端の正確な位置は重要である。これは、例えば、印をつけることにより、正確な位置の情報を得ることができる。探り針毎に、またチューブ毎に印をつけることによって、外科医が正確にデバイスを正しく配置することができる。可能性のある方針の1つは、探り針のグリップとねじ山の上部との両方に、前方方向の印をつけることであってもよい。しかし、望ましい方向性を提供するために、器具に印をつけるという多くの他の可能なやり方がある、ということが明白である。探り針の数は、空洞の3次元容積または寸法の先端の数によって決まり、その数は、1〜20の間で変えることができる。ただし、探り針の数が少なければ、探り針をより容易に適用することができる。ヒトの体内に挿入するための医療用生体適合性チューブ、バルーンまたはバルーン様構造体、および、探り針は、技術的によく知られている。良好な機械的安定性を有する生体適合性チューブ(例えば、ポリウレタン)、テフロンで被覆されたステンレス製のスチール探り針、および、ラテックス製のバルーンまたはバルーン様構造体は、ヒトでの使用が認可されている。
【0047】
バルーンまたはバルーン様構造体のハード(hard(硬い))延長部分の長さは、病変と頭蓋骨との間の距離によって決まる。そして、前記長さは、定位的な診療を方針する要領で、画像データから得られてもよい。このような手法は、定位脳手術に精通した外科医に知られている。
【0048】
コード番号12は、必要に応じて、例えば前方方向を印を有する探り針のグリップを表す。コード番号13は、バルーンまたはバルーン様構造体のハード延長部分に取り付けることができる、ねじ山を表す。該ねじ山の上部に、前方を示す印があってもよい。該ねじ山の側面に、セメント中で固定される2以上のピンがあってもよい。コード番号14は、挿入後に、所定の位置に留まるバルーンまたはバルーン様構造体のハード延長部分を表す。この延長部分の長さは、バーホールと、バルーンまたはバルーン様構造体のハード延長部分との間に等しいことが好ましい。また、この拡張部分の長さは、図示された長さよりも長くてもよい。コード番号10、コード番号5、およびコード番号9は、それぞれ探り針、病変空洞の3次元構造に似たバルーンまたはバルーン様構造体、およびカニューレ壁を表す。前記カニューレは、バルーンまたはバルーン様構造体の挿入後に除去されてもよい。このカニューレの長さは、図示された長さよりも長くてもよい。
【0049】
図5dは、押し出された配置における探り針の図を示す。図示されたコード番号12は探り針のグリップを表し、コード番号13はねじ山を表し、コード番号14はバルーンまたはバルーン様構造体あるいハード生体適合性チューブのハード延長部分を表す。バルーンまたはバルーン様構造体あるいはハード生体適合性チューブは、挿入後に、所定の位置に留まることができる。また、バルーンまたはバルーン様構造体あるいはハード生命体適合性チューブの長さは、バーホールとバルーンまたはバルーン様構造体との間の距離に等しいことが望ましい。コード番号5は、バルーンまたはバルーン様構造体を表す。このバルーンまたはバルーン様構造体は、拡張した状態のときに、病変空洞の3次元構造に似ていてもよい。さらに、該バルーンまたはバルーン様構造体は、その表面に電気刺激部位および電気記録部位を備えている。コード番号9はカニューレ壁を表す。このカニューレは、バルーンまたはバルーン様構造体の挿入後に除去されていてもよいが、除去されなくてもよい。また、このカニューレの長さは、図5に図示されているよりも短くてもよいし(あまり好ましくない)、または、定位脳手術のフレーム(stereotactic fram)の案内装置(guide)に適合するよう、より長くてもよい(好ましい状態)。
【0050】
図5eは、カニューレが除去され、且つ、いくつかの生体適合性材料(15)がバルーンまたはバルーン様構造体のハード延長部分(14)と骨(16)との間に配置された(なお、配置されなくてもよい)後の集合体の状態を示す図である。ここで、上記生体適合性材料(15)は、骨セメントが硬膜の下に侵入することを後で防ぐために、そのように配置される。また、上記生体適合性材料(15)は、好ましくは足場材料、より好ましくは吸収性と止血性とを備える足場材料(酸化セルロース(例えば、オキシセル(Oxycell)あるいはコラーゲン(15)など)である。図5eに示されたコード番号12、コード番号13、およびコード番号14は、それぞれ、湾曲した先端の方向の印を有していることが好ましい探り針のグリップ、バルーンまたはバルーン様構造体のハード延長部分に固定されることが好ましいねじ山、およびバルーンまたはバルーン様構造体のハード延長部分を表す。バルーンまたはバルーン様構造体のハード延長部分は、挿入後に、所定の位置に留まることができる。また、バーホールとバルーンまたはバルーン様構造体の間の距離に等しいことが好ましい。コード番号5は、病変空洞の3次元構造に似ていることが好ましいバルーンまたはバルーン様構造体を表す。コード番号10は、探り針を表す。コード番号15は、生体適合性材料、より好ましくは吸収性と止血性とを備えた足場材料(セルロース(オキシセル)など)を表す。コード番号16は、神経系の周りの骨を表す。
【0051】
図5fは、骨セメント(18)が足場材料オキシセル(15)の上部に添加された後の集合体を示す図である。外科医は、骨セメントが堅くなるまで待つ(通常5〜10分)。使用する骨セメントによって、より長い時間待ってもよい。骨にチューブを良好に硬く固定させるために、バーホールの基部における骨に、少なくとも3つの孔を開けることが望ましい(しかし例えば、バーホールの他の形態が可能であるので、このことは必須ではない。)。図示されたコード番号12は探り針のグリップを表す。なお、探り針のグリップには湾曲した先端の方向を知ることができる印がつけられていることが好ましい。コード番号13はねじ山を表す。このねじ山は、バルーンまたはバルーン様構造体のハード延長部分に固定されることができる。コード番号14はバルーンまたはバルーン様構造体のハード延長部分を表す。バルーンまたはバルーン様構造体のハード延長部分は、挿入後に、所定の位置に留まることができる。また、拡張部分の長さは、バーホールとバルーンまたはバルーン様構造体の間の距離に等しいことが好ましい。コード番号10、コード番号5、コード番号18、およびコード番号16は、それぞれ、cm/mmの印(または、cm/mmの印に関連していてもよい距離を示す印)を含んでもよい探り針、病変空洞の3次元構造に似ていることが好ましいバルーンまたはバルーン様構造体、骨セメント、および神経系の周りの骨を表す。
【0052】
図5gは、探り針(10)が、ハードチューブの内側に配置された探り針のための固定点(20)に側面を押し込まれた後の集合体を示す図である。この手順が行われる間、外科的処置の前に計画された正確な深さに、探り針(10)が位置すれば、外科医は、探り針(10)が固定されることだけを注意する。ここで、探り針上のmmおよびcmの印から、深さを読み取ることができる。探り針を固定点において固定すれば、探り針の残りを切断することができる。切断方法としては、探り針を裂いてもよいし、切断器を用いて切断してもよい。図示されたコード番号19は、探り針が切断されるレベルを表し(このレベルは、チューブ(14)内の任意のレベルであってもよい)、コード番号20は探り針のための固定点を表し、コード番号10は探り針のための固定点(20)に固定されるcm/mmの印を有していることが好ましい探り針を表し、コード番号21は、本明細書のこのページの前後において、バルーンまたはバルーン様構造体の壁に固定点において固定されることが好ましい探り針を表し、コード番号16は、神経系の周囲の骨を表す。
【0053】
図5hは、探り針の固定点の例を示す図である。固定点のもう1つのタイプは、市販品を利用することができるか、または、さらに設計されていてもよい。図示されたコード番号23は、バルーンまたはバルーン様構造体壁あるいはチューブ壁を表す。コード番号24は、圧力で開けたり、探り針が内側に適合したときに即時に閉じたりする(準)軟質のプラスチックを表す。コード番号22は、固定点に押し込まれた探り針を表す。
【0054】
図5iは、ねじ山の上に、ねじが締められた後の集合体を示す図である。その後、針を液体を注入するために挿入することができる。もう1つの針から空気を排出することができる。針としては任意の針を用いることができるが、好ましくは、ヒューバー(Hueber)針である。液体を漏らすことなく孔を開けることが可能なデバイスを、シンクロームドポンプ(Synchromed pump)(Medtronic Inc.)に用いられている材料と同じ材料、または同様の任意の材料で作製することができる。これらの針は、本発明の集合体の一部分であってもよい。ねじを、バーホールよりも広くすることができる。また1以上のホールは後で開けられてもよい(図示せず)。そのようなホールを、主要なねじを骨に固定させるために、一度主要なねじが締められれば、より小さいねじ(例えば、セルフ‐タッピングねじ)により塞ぐことができる。セルフ‐タッピングねじを用いることにより、全デバイスを骨にさらに固定することができる。図示されたコード番号25は、水密型の状態でねじ山に完全に適合するねじを表す。また、前記ねじと同じ寸法を有しているドリルを用いて手術を開始する際に、適宜孔を開けることができる骨の輪郭に、ねじを適合することができる。コード番号26、コード番号10、およびコード番号21は、それぞれ、液体を漏らさずに孔を開けることが可能なデバイス、cm/mmの印を有していることが好ましい探り針、および本明細書のこのページの前後において、チューブの壁に固定点において固定される探り針を表す。コード番号20は探り針の固定点を表し、コード番号19は探り針を切断することができるレベルを表し、コード番号16は神経系の周囲の骨を表し、コード番号17は骨の周囲の皮膚を表す。
【0055】
図6aは、神経系における病変空洞(27)の壁を示す図である。
【0056】
図6bは、バルーンまたはバルーン様構造体の挿入と同様にして、バーホールを通じて挿入可能なカニューレまたはチューブ(28)を示す図である。コード番号27は、病変壁を示す。
【0057】
図6cは、要素1(Pl)が、導入機器(29)を用いて挿入可能であることを説明する図である。導入機器(29)がチューブ(28)の内部に留まる限り、導入機器(29)を上下に移動させたり、中央に移動させたり、横方向に移動させたりすることができる。要素1は、(i)数個〜数千個の刺激用マイクロ電極および記録用マイクロ電極で覆われているか、もしくはそれらを備えているか、あるいは、(ii)少なくとも1つの電気刺激手段/記録手段を備えているピクセルを具備しているアレイで覆われているか、もしくは該アレイを備えている。病変空洞の壁(27)に接触していない側は、好ましくはそのようなマイクロ電極で覆われていない。この側において、ワイヤーの全てが要素1から伸びている。要素1の内部に、ワイヤーを格納することができる。また、この場所に、刺激用機器または多くのマイクロ刺激用機器を格納することもできる。
【0058】
図6dは、要素2(P2)が、第2導入機器(2)を用いて挿入可能であることを説明する図である。この図に明確に示されているように、最初に要素1を配置して、次いで要素2を配置することだけが可能であり、この反対は不可能であった。図示されたコード番号28、コード番号27、およびコード番号29は、それぞれチューブ、病変壁、および導入機器を表す。要素1と同様に、要素2は、マイクロ電極を備えているデバイスにより覆われるかもしくは該デバイスを具備している。
【0059】
図6eは、要素3(P3)が挿入可能であることを説明する図である。コード番号28、コード番号27、コード番号29は、それぞれチューブ、病変壁、および導入機器を表す。要素1および要素2と同様に、要素3は、マイクロ電極を備えているデバイスを具備している。
【0060】
図6fは、要素4(P4)が挿入可能であることを説明する図である。この要素は、マイクロ電極を覆っておらず、要素4が機械的に存在することによって要素1、2および3を所定の位置に保持する。刺激用マイクロ部材の全てを要素1(P1)、2(P2)および3(P3)に配置することができる場合、この要素は、完全な要素である構造を有することができる。しかし、全ての刺激用機器はそこに適合しないと考えられる。そのとき、ワイヤーおよび刺激用機器を、要素4に配置することができる。また、全てのワイヤーをチューブを通して持ってくることが可能であるし、チューブの中、バーホールの中、体のどこかに、または体の外に刺激用機器を配置することが可能である(なお、上記チューブは、引き抜かれるか、または、所定の場所に残されることのどちらかが可能である)。最も後者の場合、感染症を防ぐために、刺激用機器と体との距離が10cmまたは20cmよりも長くなるような長さのケーブルを用いて、全てのワイヤーと刺激用機器とを接続することが最も好ましい。図示されたコード番号28、コード番号27、およびコード番号29は、それぞれチューブ、病変壁、および導入機器を表す。
【0061】
図6gは、深さおよび横径によって示されるものを示す図である。横径は、チューブに垂直な面に対して測定され、一方、深さは、チューブの面に対して測定される。図示されたコード番号28、コード番号27、およびコード番号29は、チューブ、病変壁、および導入機器を表す。コード番号30は、P2の深さを表す。コード番号31はP2の横径を表す。
【0062】
図7aは、脳の上側部分を介した水平T2強調MRI断片を示す図である。上記断片において、脳回、溝、脳脊髄液および血管を有する大脳皮質が示されている。図示されたコード番号32、コード番号33、およびコード番号34は、それぞれ血管、大脳皮質(溝)、および脳脊髄液を有する溝を表す。
【0063】
図7bでは、大脳皮質に入ることを避けている(硬膜でできた)鎌と血管との間の空間および溝における黒色で描かれた構造体は、手動で描かれている。なお、隣接している脳の断片においても、上記構造体を描くことができる。断片が薄い場合(1または2mmの薄さの断片)、3次元の体積を作製することができる。また、自動で描写するプログラムも販売されている。バルーンまたはバルーン様構造体を製造するようにして、または、多くの要素でできた電極を製造するようにして、脳脊髄液の空間部分と同じ3次元の体積を有する柔軟なもしくは硬い構造体を、病変を復元するためのラピッド・プロトタイピング技術を用いて製造することができる。CTスキャン、MRI、MRIのマルチプラナ再構成(multiplanar reconstruction)、または、病変の3次元画像を構築する血管造影図により病変のイメージングを行った後、ラピットプロトタイピング&製造技術用いて、病変空洞に適合する要素を再構成することができる。ラピットプロトタイピング&製造技術は、技術的に利用可能である(例えば、マテリアライズおよびメディシムNV(Materialise and Medicim NV))。大脳皮質の側(すなわち、バルーンまたはバルーン様構造体または多くの要素から作製された電極の外側上)には、記録および刺激するための多くの(2〜数千または数百万もの)マイクロ電極が配置されている。鎌の側には、マイクロ電極は配置されていない。
【0064】
もちろん、類似したデバイスを、中枢神経または末梢神経の表面上、表層溝または深層溝(例えば、外側溝、ローランド溝、硬膜下、くも膜下、または、硬膜外)の中の任意の場所に描くことができるし、さらに、小脳回(folia of cerebellum)の間、または、脳幹周辺、または、脊髄周辺、または、脊髄と神経根との周辺、または、馬尾の神経根間、傷ついた末梢神経周辺の任意の場所にも描くことができる。それらうちの最後に適用した実施例が、図7cに示されている。図に示されているコード番号35、コード番号36、およびコード番号37は、それぞれ血管が少ない部分、オーダーメードした電極、および鎌を表す。
【0065】
図7cは、前述の全てのデバイスと同様に、医用イメージング技術を用いて視覚化されたような3次元構造体に再び基づいて、作製することができるデバイスによって取り囲まれる、傷ついた末梢神経(この場合、完全に離断していてもよいし、部分的に離断していてもよい)を示す図である。外側の部分は、チューブとして描かれている。しかし、該外側の部分が、取り囲んでいる筋肉、筋膜、靭帯、骨、血管などの輪郭(contour)に、側面に設けられた小さな孔により適合するように、外側の部分を形成することができる。これにより、取り囲んでいる筋肉の上部にある、取り囲んでいる筋膜に外側の部分を適合させることができる。2〜数千または数百万の刺激用マイクロ電極および記録用マイクロ電極は、神経とデバイスとの間の端に存在している。なお、上記刺激用マイクロ電極および記録用マイクロ電極は両方とも、近位の(proximal)神経末端と遠位の(distal)神経末端との間にあり、上記神経とデバイスとは両方とも、横断している箇所および切り口にある。多くの遠位軸索は、ワーラー変性(Wallerian degeneration)のために死んでいると考えられるが、生存し、且つ電気刺激に反応したシグナルを導くことができる軸索が存在している可能性もある。このデバイスと存在しているデバイスとの違いは、(i)軸索との多数の接触、ならびに、(ii)関連性のある記録により関連性のある刺激を誘導し、ニューロン間の電気シグナルの相互連結を遮断する隙間をブリッジングするために、コンピューターにより互いに連結している記録用電極および刺激用電極を利用できることである。バルーンまたはバルーン様構造体に用いられた戦略と同じ戦略を用いることができる(また、「本発明に記載されている機能を回復させるための異なるデバイスの実用的な機能」を参照のこと)。しがたって、神経の機能的なブリッジングを実現することができる。このため、運動機能、知覚機能および自立機能を回復させることができる。図示されたコード番号38、コード番号39、およびコード番号40は、それぞれ縫合糸、神経、およびデバイスを表す。
【0066】
図7dは、T2強調核磁気共鳴画像の脊髄管の横断面を示す図である。右側には、脳脊髄液で満たされている空洞部分もしくは関連性のある空洞部分(左側の画像の白色部分)と完全に似ているデバイスが示されている(右側の画像の黒色部分)。デバイスは比較的に柔軟な材料で作られていてもよいし、該デバイスの外側は、記録用電極および刺激用電極で完全に覆われている。図示されたコード番号41は、T2強調核磁気共鳴画像(白色は脳脊髄液を示し、灰色/黒色は神経根を示す)を使用した横断面の馬尾における脊髄管の端を表し、コード番号42、およびコード番号40は、馬尾の神経根、およびデバイスを表す。
【0067】
図7eは、図7dと同様の画像を示す図である。デバイス(40)はより小さい。慢性の神経障害性の痛みの部位に、チクチクする感覚を提供するために刺激される必要がある損傷した神経根またはそれらの神経根を、上記デバイスが覆うように、デバイスを設計することができる、ということが明確である。刺激用電極および記録用電極で覆われたこれらのデバイスを、コンピューターを介して、脊髄の損傷箇所から吻側方向にある(すなわち、より頭方向に位置している)脊髄周辺に、または、脊髄の損傷により生じた脊髄の空洞の中にあるいは脊髄自体に埋め込まれたデバイスに接続することができる。このようにして、運動情報を、より吻側に埋め込まれた電極において記録することができ、さらに、刺激用電極を介してより尾側のデバイスのレベルで刺激することができる。なお、上記刺激用電極は、脊髄の病変空洞、より尾側に位置する脊髄周辺、馬尾の特定の関連性のある神経根周辺、末梢神経のレベル、または、筋肉自体に埋め込まれている。知覚情報に関していえば、尾側の記録用電極を用いて、該知覚情報をコンピューターを介して、より吻側に位置しているデバイスの刺激用電極まで送る。
【0068】
図7fは、T2強調MR画像における脊柱管を介した矢状断面を示す図である。デバイス(40)は、医用イメージングに基づいて馬尾周辺に配置されている。実際には、該デバイスは、図7cに示されたデバイスと同じものであるが、(刺激用および記録用)マイクロ電極の間には相互作用が神経根とデバイスとの間の端に存在する。また、該デバイスには多くの孔が開けられている。デバイスの上縁と下縁とは、馬尾の神経根を傷つけないようにするために、鋭角になっているべきではない。1またはいくつかの神経根だけをブリッジするだけで、十分な場合がある。上記デバイスの作用により、損傷した神経根をブリッジすることができるし、または、慢性の神経障害性の痛みの治療として神経根を刺激することができるし、上述したように脊髄の損傷箇所をブリッジすることができる。デバイスの外側の部分は、図7cに示されたような円形である必要はないが、任意の神経根または他の組織(特に、神経根が脊柱管から分岐している場所)を圧迫しないことに配慮した、医用イメージング(特にT2強調MRI画像)に基づいた3次元構造体である。また、上記デバイスは、できる限り小さいべきである。これにより、患者が前方または後方に曲がったときにデバイスが一緒に上下に移動することができ、マイクロ電極が全ての位置において同じ軸索と接触し続けることができる。
【0069】
図7gは、上丘または下丘のどちらか、ならびに小脳を記録および刺激するためのデバイスの例を示す図である。バルーンまたはバルーン様構造体もしくはパズルデバイスを挿入する方法と同様の方法、開放的手術によるくも膜下の空間を介して、あるいは、古典的な内視鏡的技術により、上記デバイスを挿入することができる。これらは単なる可能性を示す例であることは明らかであるべきである。神経組織と他の組織との間の端のどこでも、そのようなデバイスを配置することができる。本発明の1実施の形態では、脳脊髄液が存在している場所に、該デバイスを配置することができるが、神経組織の上に位置している骨を切除することができるか、あるいは筋膜または筋肉などを押しのけるなどを行うことができる。図示されたコード番号43、コード番号44、コード番号45、およびコード番号46は、それぞれ小丘、脳脊髄液、小丘用デバイスの例、および小脳皮質用の極小デバイスの例を表す。
【0070】
図8は、本発明において記載した電極を有する全てのデバイスにおける、数千または数百万の他の刺激コンタクトおよび記録コンタクトと組み合わせることができる電気的なコンタクトを示す図である。外側の円と内側の円との間の領域は、現在市販されている神経系の刺激用電極に用いられている金属と同じ金属である。材料は、例えば、白金、金、タングステン、Pt/Ir、ステンレス鋼、Pt/IrN Sfin(これらは、金属様の、セラミック様の、またはダイヤモンド様の被覆あるいは高分子被覆を有していてもよいし、または、有していなくてもよい)であってもよい。この領域の内側(すなわち最も小さい円内)および外側の円の外側には、1〜数千の記録用マイクロ電極および刺激用マイクロ電極を配置することができる。コンタクトは、任意の形状(円形、楕円形、四角形、三角形など、また、それらのいくつかは、上パネルに示されている)であってもよい。さらに、該コンタクトは平坦な構造物であってもよい。マイクロ電極のためのワイヤーを、コンタクトの背後に通すことができるし、または、図の下側に示されている大きいコンタクトを通り抜ける経路に通すことができる。
【0071】
図9は、神経系の損傷したチューブ様の構造体(負傷した脊髄、負傷した神経根または、負傷した末梢神経など)を再構築するのためのデバイスを示す図である。該デバイスは、図7cに描かれたデバイスと同じである。しかしながら、1以上のホールを通して、1以上の極めて小さい針を挿入することができる。それらの針は、神経組織と接触するそれらの部位において、記録および刺激する多数(数百または数千)のマイクロ電極で完全に覆われている。例えば脊髄損傷における概念は、灰白質(例えば、前角および後角)および白質を刺激すること、および、灰白質(例えば、前角および後角)および白質から記録することである。同じ戦略を、本発明に記載した全てのデバイスに関して使用することができる。前記戦略は、表題「本発明に記載されている機能を回復させるための異なるデバイスの実用的な機能」において見出すことができる。針は、例えば、灰白質および白質を精密に見ることができるMRIに視覚されたような脊髄の解剖学的構造に基づいて、および、特定の空間的な経路(運動繊維、知覚繊維、自律繊維)の位置に関する知識に基づいて挿入することができる。
【0072】
図示されたコード番号47は、刺激用マイクロ電極および記録用マイクロ電極で覆われた針を挿入するための電極内のホールを表す。コード番号48は、刺激用マイクロ電極および記録用マイクロ電極で覆われた針を表す。コード番号49は、針が所定の位置に留まることができるように、デバイスと関連付けて針を固定するための固定道具(例えば、蓋、ねじ、または、任意の固定道具)を表す。コード番号38、コード番号39、およびコード番号40は、それぞれ、縫合糸、神経、およびデバイスを表す。
【0073】
図10は、カスタマイズされる3次元電極を生産するための、別の成形戦略を示す図である。外型は、キャスティングするか、または噴霧することにより3次元の薄片を製造するために用いることができる。内型は、吹込成形することにより3次元の薄片を製造するために用いることができる。
【0074】
図11は、柔軟な薄片上の電子構成要素の局在を説明する図である。活性領域とは、病変領域と健全領域との境界(the lesion healthy border)と直接接触する刺激および/または記録コンタクトを具備している薄片の領域のことである。活性領域上のコンタクトは、(A)薄片上の同じ側に、設けられた読み出し電子機器と接続しているか、または、(B)反対の側上に設けられた読み出し電子機器と薄片を通して接続している。なお、上記読み出し電子機器を、ワイヤレスリンクが備えていてもよいし、備えていなくてもよい。
【0075】
図12は、脳における埋没物の概略図である。図12Aは、読み出し電子ブロックを硬膜上に配置させることができることを説明する図である。この場合、上記電子ブロックは、図1Aに示されているように、接触コンタクトおよび記録コンタクトと同じ薄片の側に配置されている。図12Bは、読み出し電子ブロックを硬膜下に配置させることができることを説明する図である。この場合、上記電子ブロックは、埋没物の活性領域の内部または外部に、適切に包装されて備えられることができる(図示しない)。読み出し電子ブロックの好ましい位置は、バーホール、または、頭蓋骨の外側、あるいは皮下か、体の他の場所のどちらかであると考えられる。
【0076】
図11は、型を作る工程の概略図ある。方法2の場合では、「接着」層は型または柔軟な埋没物の薄片の裏側を覆っている。ここで上記型は、剥離層および生体適合性高分子で覆われている。
【0077】
図14は、シリコン球上の金属化パターン(Ball Semiconductor Inc.)を示す図である。
【0078】
図15は、本発明のプローブを用いた2つの実行可能な包装方法を説明する図である。すなわち、図15の左側では、ワイヤーボンディングアプローチが説明され、右側では、フリップチップアプローチが説明されている。これらの方法によれば、本明細書に記載の3次元イメージングおよびラピッド・プロトタイピング技術により、興奮性細胞組織の標的空洞に適合するようにブリッジングデバイスを形成することができる薄片を製造することができる。
【0079】
本発明の他の実施の形態は、本明細書に開示された発明を記載した明細書および該発明の実施を考慮することにより、当業者に明らかであるだろう。明細書および実施例は単なる例として考慮される、ということが意図されている。
【0080】
〔発明の説明のための実施の形態〕
本発明は、特定の図面を参照して特定の実施の形態に関して記載されているが、本発明は、それらに制限されず、また特許請求の範囲のみに制限される。記載された図面は、概略図のみであり、本発明を制限するものではない。前記図面では、いくつかの要素の大きさは、誇張されていてもよく、目的を説明するために縮尺どおりに描かれていなくてもよい。寸法および相対的な寸法は、本発明を実施するための実際の縮図に一致していない。
【0081】
さらに、明細書および特許請求の範囲における、上部、下部、上、下などの用語は、目的を解説するために用いられ、相対的な配置を解説する必要はない。そのように用いられる用語は、適切な状況の下では同義であること、および、本明細書に記載された本発明の実施の形態は、本明細書に記載または例証されたもの以外の方法で使用できること、が理解される。
【0082】
特許請求の範囲に用いられている「備えている」、「具備している」および「含んでいる」という用語は、その後のリストに記載された手段を限定するものとして解釈すべきではなく、他の要素または他の工程を排除しないということに注意されたい。ゆえに、上記用語は、(i)言及されているような、定まった特徴、整数、工程または構成要素の存在を明確に述べるものとして解釈されるが、(ii)1以上の他の特徴、整数、工程または構成要素、あるいは、それらのグループの追加または存在を除外しない。従って、「手段Aおよび手段Bを備えているデバイス」の表現の範囲は、構成要素Aおよび構成要素Bのみから成るデバイスに制限されるべきではない。上記表現に範囲は、本発明について関係するデバイスの構成要素のみが、AおよびBであるということを表す。
【0083】
本発明は、本発明のいくつかの実施の形態の詳細な説明により、説明される。本発明の他の実施の形態は、本発明の真の精神もしくは本発明を教える技術から逸脱することなく、当業者の知識によって構成されてもよい。また、前記本発明は、添付の特許請求の範囲の用語だけに制限される。
【0084】
本発明は、生物の組織または臓器における空洞(例えば大脳内の安定病変)に挿入するため、および、興奮性細胞間の電気シグナルの相互接続性または伝達を回復させるためのブリッジングデバイスを提供する。なお、ブリッジングデバイスは3次元の測定を行うことができ、ブリッジングデバイスの電気抵抗は低いため、低出力消費が可能である。また、本発明は、そのようなブリッジングデバイスを製造するための方法を提供する。上記ブリッジングデバイスは、主に、脳病変ブリッジング(BLB)への使用に適したニューロ‐ブリッジングデバイスを用いて記載される。しかしながら、これは本発明の範囲を制限するものではなく、本発明のブリッジングデバイスは他の用途、例えば筋肉を刺激するなどのために使用されてもよい、ということを理解されたい。
【0085】
本発明の、電気的な細胞活動を刺激および記録するためのブリッジングデバイスは、ジスケニア(dyskenia)、知覚麻痺、運動麻痺、および大小便失禁のような障害を引き起こす、神経系の機能損失を回復させる治療に、または、神経シグナル伝達の修復に、使用されてもよい。また、本発明の、電気的な細胞活動を刺激および記録するためのブリッジングデバイスは、負傷した脊髄、負傷した神経根、または、負傷した末梢神経のような、神経系における負傷したチューブ様の構造体を機能的にブリッジングするために、あるいは該構造体を再構築するために使用されていてもよい。
【0086】
詳細な説明および特許請求の範囲において、「記録手段」が用いられるときに、手段は、検査または治療される組織(例えば、脳病変ブリッジング(BLB)では脳組織)に存在している興奮性細胞の細胞活動を、例えば測定、表示、読み込みするために用いられることができる手段を意味する。
【0087】
さらに、「列」および「行」の用語は、お互いに連結されたアレイ要素の一組を説明するために用いられていてもよい。連結は、行および列で構成されたデカルトアレイ(Cartesian array)を形成できるが、本発明はそれに制限されない。当業者に理解されるように、行および列を、容易に交換することができる。このことは、これらの用語は交換可能であるということを意図している。また、非‐デカルトアレイが構築されていてもよく、該非‐デカルトアレイは本発明の範囲内に含まれる。したがって、用語「列」および「行」は、広義的に解釈しなければならない。この広義的な解釈を容易にするために、「論理的に体系化された列および行」に言及してもよい。これによれば、記憶要素の一組は、形態的に位相幾何学的直線交差(topologically linear intersecting manner)において一緒に連結されており、物理学的構成もしくは位相幾何学的構成はそうである必要がない、という意味である。
【0088】
空洞の端の組織(脳病変をブリッジングするためのニューロブリッジングデバイスの場合では脳など)に接触するブリッジングデバイス(例えばニューロ‐ブリッジンングデバイス)の表面は、生体適合性材料で製造または被覆されている。脳に接触するデバイスの表面は、貴金属(例えばAu、PtまたはIrなど)、および、絶縁被覆(以下を参照のこと)から製造されてもよい刺激/記録部位、および/または、記録部位および/または刺激部位である。ここで、絶縁被覆は、酸化物(例えばIrOx、Ta、SiO、ZrO)、Si、高分子(例えば、パリレンC、パリレンN、シリコンゴム、ポリイミド)、または、生体適合性エポキシから形成されてもよい。
【0089】
各ピクセルは、組織(例えば、脳病変をブリッジングする場合は、脳など)の一部を刺激するための少なくとも1つの刺激変換器またはマイクロ電極、および、組織(例えば、脳病変をブリッジングする場合は、脳など)の一部の活動を測定するための、少なくとも1つの記録変換器またはマイクロ電極を備えている。したがって、各ピクセルは、少なくとも2つのマイクロ電極を備えている。さらに詳細に説明すると、各ピクセルは、刺激/記録部位、あるいは、記録部位または刺激部位として称される。各刺激/記録部位、または、刺激部位に存在している少なくとも1つの刺激変換器は、貴金属(例えば、Au、Pt、Ir)を含んでいてもよいマイクロ電極により形成されている。好ましくは、興奮性細胞(例えば、脳病変ブリッジングの場合は神経)に接触しているときに、Ptおよび/またはIrは、刺激パルスを伝達するために使用されていてもよい。マイクロ電極は、電圧制御されたパルス発生器により発生した単相性の陰極パルスまたは二相性のパルス(刺激振幅0〜20V、20〜1000μsec(例えば、パルス幅60〜200間μsec)、2〜1000Hz(例えば、周波数60〜200間Hz))を伝達することができるべきである。また、本発明の実施の形態では、定電流パルス発生器が、パルスを発生させるために使用されていてもよい。
【0090】
例えば、電界効果トランジスタ(FETs)は、細胞活動を記録するための記録変換器またはマイクロ電極として使用されていてもよい。記録変換器によって提供されたシグナルは、例えば、バーホールまたは皮膚より下の硬膜上のどこかに置かれていてもよい制御器(例えば、マイクロプロセッサ)によりさらに処理される。また、前記マイクロプロセッサは、刺激用電極に適用されるために不可欠のパルスパターンを提供する。電子機器の操作装置は、完全に組織(例えば、脳病変ブリッジングの場合は脳)の外部であってもよいし、あるいは、ブリッジングデバイス(例えば、脳病変ブリッジングの場合はニューロ‐ブリッジングデバイス)とそれの外部との間に分布されていてもよい。「外部」という用語が用いられているが、これは、電子機器の操作装置が、必ず患者の体の外に存在するという意味ではない。また、脳病変ブリッジングの場合では、これは、電子機器の操作装置が脳自体に埋め込まれていないが、例えば、バーホールまたは皮膚より下の、頭蓋骨と硬膜との間に埋め込まれていてもよい(以下を参照のこと)、ということを含んでいる。
【0091】
各刺激/記録部位は、5〜100μmの幅および長さを有していてもよい。好ましくは、各ピクセルまたは刺激/記録部位は、5〜50μm、より好ましくは5〜30μm、最も好ましくは5〜10μmの大きさを有していてもよい。刺激/記録部位、または、記録部位または刺激部位の大きさにより、ブリッジングデバイス(例えば、ニューロ‐ブリッジングデバイス)の解像度が決定される。従って、解像度がよくなるほど、ブリッジングデバイスの制御性が正確になるので、良好な解像力を得るために、各刺激/記録部位は可能な限り小さくてもよいことが好ましい。しかしながら、刺激用電極の表面積が小さくなれば、電荷密度が高くなる(μCoul/cm)。電荷密度は、伝達することができる電流の量を決定する。このことを、ブリッジングデバイスが配置される組織(例えば、脳病変ブリッジングの場合における脳)を損傷することなく、起こさなければならない。
【0092】
刺激/記録部位、ならびに/あるいは、記録部位および/または刺激部位を含んでいるアレイは、CMOSアレイであってもよい。また上記アレイは、生体適合性基板(また、包装基板とも称される)に接着している。上記生体適合性基板は、関係する解剖学的標的(例えば、STN)へ埋め込むための適切な所定の形状を有しているものである。本発明によれば、3次元の界分布は重要であり、ブリッジングデバイスの形状は、これを可能にする。従って、理想的には、ブリッジングデバイスおよびブリッジングデバイスの基板は、外部の部位(空洞に配置されるときは、外側の部位)に分布された、活動ピクセル、あるいは、刺激/記録部位、および/または、記録部位および/または刺激部位51を有している標的空洞の端の形状を備えていてもよく、これによって、上記基板は組織(例えば、脳組織)に接触する。アレイに配置されているピクセルの刺激変換器および記録変換器のおかげで(ここで、アレイは基板上に接着している)、電界分布を制御することができる。さらに、ブリッジングデバイスがニューロ‐ブリッジングデバイス(例えば、BLBを行うためのブリッジングデバイス)である場合では、興奮性細胞の電気的な活動(例えば、神経の電気的な活動)の記録は、3次元において行われる。さらに、ブリッジングデバイスは、標的組織(例えば脳)に、最良に順応するために、十分な柔軟性を備えている。これは、柔軟な包装基板を折りたたむか、または曲げることによって成し遂げられる。刺激/記録部位、および/または、記録部位および/または刺激部位が、基板に接着されれば、刺激/記録部位、および/または、記録部位および/または刺激部位を具備している付着した柔軟な基板(例えば、脳病変ブリッジングおよび脳病変記録または刺激のアレイ)は、組織の空洞(例えば、脳病変)にブリッジングデバイスとして導入することができる。
【0093】
本発明のブリッジングデバイスがとることができるカスタマイズされた形状、および、本発明のブリッジングデバイス上の多数の刺激/記録部位、ならびに/あるいは、記録部位および/または刺激部位の分布のために、本発明のブリッジングデバイスは3次元寸法において測定を行うことができるので、該ブリッジングデバイスは、高い空間分解能および高いシグナル対ノイズ比でもって機能することができる。さらに、本発明のブリッジングデバイスを用いれば、興奮性細胞の活動(例えばSTNにおける細胞の活動)を記録することにより、フィードバックが与えられ、必要な間だけ刺激することができる。これにより、電力の消費を抑えることができる。
【0094】
本発明のブリッジングデバイスは、既存のシグナル処理および制御回路および位置決め埋込手順と互換性があるということに注意されたい。
【0095】
本発明の第2態様では、本発明の第1態様のブリッジングデバイスを製造するための方法が検討され、かつ、図15で例証されている。前記方法は、例えば脳病変をブリッジングするためのニューロ‐ブリッジングデバイスについて単に記載されている。しかし、それは、u20であり、筋肉組織または心臓組織に存在している興奮性細胞を刺激するための、筋肉組織または心臓組織の病変に埋め込まれるブリッジングデバイスなどが、本発明の方法を使用して製造されてもよい。
【0096】
第1工程では、刺激/記録部位、および/または、記録部位および/または刺激部位51を備えているアレイは、例えば、シリコンダイであってもよいダイ53上に形成されている。以下では、本発明の第1態様にしたがって、ブリッジングデバイスを製造するための方法は、シリコンダイ53に関して記載される。しかし、このことは、本発明の範囲を制限するものではなく、かつ、他の半導体(例えばGaAs、SOIなど)を使用することができる、ということを理解されたい。しかし、SOIの場合では、本発明の方法は、ブリッジングデバイスを製造する前に、SOIを十分な薄さにすることができるので、薄くする工程を必要としなくてもよいということが、適応されてもよい。
【0097】
刺激/記録部位、ならびに/あるいは、記録部位および/または刺激部位51を、ダイ53上に、当業者に知られている微細加工技術を用いて(例えば、ICまたはCMOSの標準および非標準処理などにより)形成することができる。ダイ53は、300μm〜1mm間、例えば850μmの厚さを有していてもよい。
【0098】
刺激/記録部位、ならびに/あるいは、記録部位および/または刺激部位51を、標準の基板上に、標準の処理により設けることができるということが、本発明の長所である。というのも、これにより、製造工程が、実質的に円筒または円錐の基板に設けられた刺激/記録部位を備えているアレイを作製するよりも容易になるからである。例えば、標準のCMOS金属化処理を用いて、コンタクト24が提供される。コンタクト55を形成するのに適した材料は、例えば、Al、Au、または、任意の適した他の貴金属であってもよい。
【0099】
次の工程では、刺激/記録部位、ならびに/あるいは、記録部位および/または刺激部位51を備えているアレイが形成されたダイ53は、最初に、例えば50μm、好ましくは25μm、より好ましくは10μm、最も好ましくは5μmに至るまで薄くされてもよい。すでに検討したように、SOIで形成されたダイの場合では、該SOIがすでに十分な薄さになっているので、ダイ53を薄くする工程は必要ではなくてもよい。ブリッジングデバイスが、不活性電極(例えば金属線)のみを含んでいるという場合では、それはプラスチックを含んでいる全種類の基板において処理されてもよい。しかし、シグナル対ノイズ比および長期記録は、そのような電極を用いれば質が落ちるであろう。また、薄膜トランジスタは、シリコントランジスタと比較して性質がより落ちている。従って、好ましくは、例えば、Si、GaAs、または、SOI基板のような半導体基板上で実施される標準CMOS処理が、本発明の実施の形態によって使用されていてもよい。ダイが柔らかくなるのに十分な厚みになるまで、薄くする工程が実施される。薄くする工程は、任意の適した方法、例えば、機械研磨法または化学研磨法により、または、両方の組み合わせにより実施されていてもよい。
【0100】
次の工程では、刺激/記録部位、ならびに/あるいは、記録部位および/または刺激部位51を備えている薄くなったダイ53は、基板55に接着される。基板55は、例えば、生体適合性材料(例えば、パリレンC、パリレンN、ポリイミド、ポリシロキサンゴム、または、テフロンの何れか)を含んでいてもよいが、貴金属(例えば、Au、Pt、Ir)、チタニウム、酸化物(例えば、IrOx、Ta、SiO、ZrO)、Si、または、生体適合性エポキシも含んでいてもよい。該材料で形成された基板55は、ブリッジングデバイスが組織(例えば、脳病変をブリッジングするためのニューロ‐ブリッジングデバイスの場合は脳)に埋め込まれるときに、細胞毒性および材料の劣化を防ぐようなものであるべきである。
【0101】
基板55は、領域を有しており、平面にのっている。また、該領域はその平面の方向に広がっている。また、刺激/記録部位、ならびに/あるいは、記録部位および/または刺激部位51を具備しているダイ53は、基板55の平面に対して、実質的に平行な方向に広がっているダイ53の領域を有している。好ましくは、基板55の領域は、刺激/記録部位、および/または、記録部位および/または刺激部位51を具備しているダイ53の領域よりも、大きくてもよい。刺激/記録部位、および/または、記録部位および/または刺激部位51を具備しているダイ53は、ブリッジングデバイス50の活性部分を形成する。
【0102】
包装または接着する方法は、基板55上に刺激/記録部位、および/または、記録部位および/または刺激部位51を備えているアレイを具備しているダイ53を、ワイヤーボンディングにより集合させるか、または、フリップ‐チップにより集合させるかのどちらかに基づいていてもよい。ここで、前記基板55は、組織または臓器における標的空洞の端の形状および寸法をとるようにカスタマイズされた様式で形成されうる生体適合性の柔軟な基板である。
【0103】
ワイヤーボンディングアプローチ(左側)およびフリップ‐チップアプローチ(右側)に関する工程が、図15に、両方とも概略的に例証されている。
【0104】
ワイヤーボンディングアプローチでは、刺激/記録部位、および/または、記録部位および/または刺激部位21を具備しているダイ53は、基板55の底面53aから上面55aまでに配置されていてもよい。そして、当業者に知られているように、そのコンタクト54は、基板55に存在しているコンタクト56に接着したワイヤー(すなわち、細長い金属ワイヤー、例えば金ワイヤーで接続されている)である。それから、ダイ53上に設けられているコンタクト54、および、基板55上に設けられているコンタクト56は、生体適合性の絶縁被覆57により覆われる。生体適合性の絶縁被覆57は、例えば、酸化物(IrOx、Ta、SiO、ZrOなど)、Si、高分子(パリレンC、パリレンN、シリコンゴム、ポリイミド)、または、生体適合性エポキシであってもよい。この生体適合性の絶縁被覆57は、表面安定化処理の理由から必要とされる。刺激/記録部位、ならびに/あるいは、記録部位および/または刺激部位51の「活性領域」のみが、脳に接触するべきである。ブリッジングデバイス50の残り(主に電気的な接続部位)は、該電気的な接続部位を形成する材料と脳との間において起こる腐食または他の好ましくない反応を避けるように保護された様式になっている。
【0105】
フリップ‐チップアプローチ(図15の右側)では、犠牲基板58上に、パターン化された柔軟な基板55が提供される。前記犠牲基板58は、任意の適切な材料、例えば、シリコン、プラスチック(例えば、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド)、または、ガラスなどを含んでいてもよい。適切な材料は、十分に丈夫であり、且つ、平面を形成できるべきである。基板55の上面にコンタクト56が提供される。それから、刺激/記録部位、ならびに/あるいは、記録部位および/または刺激部位51を具備しているダイ53は、ダイ53上に設けられたコンタクト54が基板55の上面に設けられたコンタクト56に合致するように、基板55の上面に接着される。必要に応じて、犠牲層(図示せず)は、犠牲基板58と柔軟な基板55との間に存在していてもよい。犠牲層は、例えば、薄い金属層(例えば、Al、Au)、高分子、アセトン可溶性ワックス、または、強い粘着を防ぐ分子の自己集合型の単分子層(例えば、シラン、チオール、フルオロポリマー)であってもよい。それから、ダイ53上におよび柔軟な基板55上に生体適合性の絶縁被覆57が提供される。生体適合性の絶縁被覆57は、例えば、酸化物(IrOx、Ta、SiO、ZrOなど)、Si、高分子(パリレンC、パリレンN、シリコンゴム、ポリイミドなど)、または、生体適合性エポキシであってもよい。その後、犠牲基板58が除去される。これは、柔軟な基板55を剥がすことにより実行されていてもよい。他の実施の形態では、犠牲基板58と柔軟な基板55との間に犠牲層が存在していた場合、例えば、該犠牲層が溶媒に可溶な高分子であるとき、犠牲層は、所定の溶媒に溶解する(例えば、アセトンに浸すことにより、アセトン溶剤ワックスを除去することができる)。このため、犠牲基板58を除去する工程は、それ自身の溶媒を溶かすことによってこの犠牲層を除去する工程により実行されていてもよい。
【0106】
ダイ53は、柔軟な基板55上に接着している(ワイヤーボンディングアプローチに示されている)。細いワイヤーを、ダイ53上に設けられたコンタクト54と柔軟な基板55上に設けられたコンタクト56との間に設けることができる。
【0107】
本発明はさらに、コンピューティングデバイス上で実行したときに、本発明の実施の形態のブリッジングデバイスを用いて、組織に存在している興奮性細胞へ適用するための刺激パターンを測定するための方法の機能を実行するコンピュータプログラム製品を含んでいる。さらに、本発明は、CD‐ROMまたはFDのようなデータ記憶媒体を含んでいる。該記録媒体は、(i)機械読み込み可能な形式において本発明のコンピュータプログラム製品を保存し、(ii)コンピューティングデバイス上でコンピュータプログラム製品を実行したときに、本発明の実施の形態のブリッジングデバイスを用いて、組織に存在している興奮性細胞へ適用するための刺激パターンを測定するための方法を実行するものである。現在、ソフトウェアをダウンロードするために、インターネットまたは企業イントラネット(例えば病院インターネット)上に、しばしばソフトウェアが提供されている。したがって、本発明は、LAN(ローカルエリアネットワーク)またはWAN(ワイドエリアネットワーク)にわたって、本発明のコンピュータプログラム製品を決定する刺激パターンを伝送することを含んでいる。コンピューティングデバイスは、マイクロプロセッサーおよびFPGAのうちの1つを含んでいてもよい。
【0108】
本発明は、本発明の第1実施の形態のブリッジングデバイスを用いて、組織に存在している興奮性細胞へ適用するための刺激パターンを決定するためのデバイスをさらに提供する。該デバイスは、(i)興奮した細胞の電気的な活動を記録するため、および、対応している活動シグナルを発生させるための本発明の第1実施の形態のブリッジングデバイス、(ii)発生した活動シグナルを、興奮した細胞の予め決められた活動シグナルと比較するための処理手段、ならびに(iii)前記比較から、刺激パターンの刺激パターンパラメータを発生させるための刺激パターン決定手段、を備えている。刺激パターンパラメータは、周波数および/または振幅および/またはパルス幅を含んでいてもよい。
【0109】
本発明のデバイスに関する好ましい実施の形態、特定の構成および形状、ならびに、材料が、本明細書に記載しているが、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、形状および細部において様々な変更または改良が可能であるということを理解されたい。
【0110】
〔実施例〕
病変空洞に正確に適合するか、または、興奮性細胞に接触する電気刺激部位もしくは記録部位を少なくとも備えている本発明のデバイス(磁気共画像撮影デバイス(MRI)と一緒に用いることができるか、もしくは用いることができない)は、構造が規則的または不規則的な神経系の空洞の壁にぴったりと適合するように設計されている。
【0111】
病変の最小体積および領域の3次元形状は、電子機器にとって非常に重要な要素になりうる。例えば、病変は、必須の電子機器を収容することができる物理的な寸法を有している。単純な金属電極が用いられた場合、現状の最小の電極の大きさは1‐5μmであり、活性電極が各コンタクトに配置された場合、現状の最小のピクセルの大きさは、5‐10μmに増加する。アスペクト比が非常に高い(すなわち凸部と凹部とが互いに近接している)埋没物の表面の領域に電極を設けることは、困難である。それでもなお、電極を均等に分配することは、必ずしも必要とされない。
【0112】
適切な手段は、空洞(例えば病変空洞)に正確に適合するように製造された、バルーン様デバイスである。なお、バルーン様デバイスは、刺激用マイクロ電極および/または記録用マイクロ電極で覆われた袋または薄片であって、空洞に挿入される、中空体を形成している袋または薄片を意味する。空洞は、既に長期間存在している空洞であってもよいし、または、手術の間に(例えば、良性腫瘍の切除の際に)生じた空洞であってもよい。この設計は、コンピューター断層撮影デバイス(CTスキャン)、磁気共鳴画像撮影デバイス(MRI)、または患者の神経系を視覚化する他のイメージングモダリティ(陽電子放出断層撮影デバイス(PET)、単光子放出コンピューター断層撮影デバイス(SPECT)、脳磁気図撮影デバイス(MEG)など)を用いて、医用イメージングを実施することによって実現することができる。したがって、空洞の3次元構造は、視覚化される。さらに、空洞の3次元構造は、この3次元データセットに基づいている。また、3次元のハード構造体、樹脂の型、またはその他の材料は、公知の技術を用いて作製することができる。そのような技術としては、例えば、ラピッド・プロトタイピング&マニュファクチュアリング技術、ならびに、各会社が提供する医用イメージング技術(Materialise、および、Medicim NV (Oralim(登録商標))、3D Systems soft、VIDX Scan Imaging Software (Evex Analytical Instruments)、Zmode、Vis5D、VIDAなど)が挙げられる。そのようなソフトウェアを用いた場合、非常に鮮明な細部を、型のデジタル設計に統合させることが可能である。型のコンピューターモデルを用意すれば、当該型を層製造技術(layer manufacturing technique)を用いて直接的に生成することができる。層製造技術としては、選択的レーザー焼結(SLS)、選択的レーザー融解(SLM)、ステレオリソグラフィ(SLA)、融合沈殿成形(FDM)、インクジェット方式に基づくシステム、3次元プリンティング(3DP)、積層体製造法(LOM);レーザーエンジニアドネットシェイピング(TM)(LENS(登録商標))などが挙げられる。これらのラピッド・マニュファクチュアリング処理には、幾何学的な自由度があるという利点があり、微小な形態を容易に作製することができる。型は、金属または高分子(好ましくはPC‐ISOポリカーボネート)を含んでいることが好ましい。金属を含んでいる型はSLSにより製造することができ、高分子を含んでいる型はSLAにより製造することができる。成形戦略を用いて、カスタマイズされた3次元電極を製造する場合、2つの方法を適用することができる。
【0113】
木製の構造体上に靴を作製することと同じようにして、中枢神経系における空洞の3次元構造に完全に似ている、このハード材料または型の上に、完全に適合するバルーン様構造体またはクロース(cloth)様構造体を作製することができる。外型(外側式の型)(図10)では、3次元の薄片(バルーンまたはバルーン様構造体)は、キャスティングするか、または噴霧することにより得ることができ、内型(内側式の型)(図10)では、3次元的な薄片(バルーンまたはバルーン様構造体)は、吹込成形することにより得ることができる。
【0114】
バルーンまたはバルーン様構造体は、10〜数千もしくは数百万の刺激用マイクロ電極および記録用マイクロ電極を、外部に備えている。刺激用マイクロ電極および記録用マイクロ電極は、各電極の空間的な相対位置が、既知の状態を保つように、規則的に配置されていることが好ましい。この規則的な配置は、カルテシアン(Cartesian(デカルト座標))であってもよいが、任意の規則を有する配置であってもよい。バルーンまたはバルーン様構造体の外部の全てもしくは一部だけを、覆うことができる。バルーンまたはバルーン様構造体の壁の厚みを、Brainlabソフトウェアに以前から慣行的に使用されるソフトウェア技術を用いて、全表面の距離(例えば1または2mm)を単純に引くことによって、神経組織系の空洞の体積から引くことができる。なお、上記Brainlabソフトウェアは、放射線手術を計画するときに用いられるものである。バルーンまたはバルーン様構造体を通過させるのに十分な大きさの直径を有しているカニューレを用いて、デバイスを、頭蓋開口術(頭蓋骨に大きい開口部が生じる)、または、頭蓋骨における単純なバーホール(burr hole)(より簡単である)を介して挿入することができる。直径は、病変における空洞の最大直径および3次元な複雑さに依存すると考えられる。小病変における空洞では、直径の小さいカニューレで十分であると考えられる。ヒトまたはヒトではない哺乳類へ使用するための少なくとも3つの異なる種類のバルーンが存在する。
【0115】
<実施例1.マイクロ電子機器を備えているバルーンデバイスの第1の実施の形態>
バルーンまたはバルーン様構造体は、液体で満たされたときに液体を漏らさないように液密性の薄片を備えていてもよい。この液体は、生理食塩水であってもよく、好ましくは、シリコン(例えば、ダウコーニング(Dow Corning)732シリコン)であってもよい。本発明のもう1つ別の実施の形態では、バルーンまたはバルーン様構造体は、ハード材料で満たされる。この場合、集合体は、バルーンまたはバルーン様構造体と呼ぶことはほとんどできないが、病変の3次元の寸法を有しているハード要素(hard piece)は、本発明の目的に適切である。デバイスの直径と少なくとも同じ直径を有しているカニューレを用いて、デバイスは、病変における空洞(病変空洞)に挿入される。また、この挿入は、デバイスが挿入される方向にも依存する。図3に、このことが説明されている。つまり、カニューレが病変に到達する方向は、病変の3次元構造によって決定されるだけではなく、周囲の脳構造および血管によっても決定される。カニューレを、より重要ではない脳の領域を経て接近させることができるが、機能の優れた脳の領域を通過させることは不可能である。一般的に、重要な血管を含んでいる領域を通過させることは不可能である。
【0116】
刺激用マイクロ電極および記録用マイクロ電極は、全てバルーンまたはバルーン様構造体の外部に設けられている。ケーブルおよび刺激用機器(stimulator)は、バルーンまたはバルーン様構造体内部に設けられている。必要に応じて、刺激用機器とコンピューターとの間を無線で接続する接続機器(ワイヤレスコネクション)が、体の所望の位置(例えば、硬膜とクモ膜との間、バーホールの中、または皮下)に埋め込まれているか、または体の外に設けられている。
【0117】
<実施例2.マイクロ電子機器を備えているバルーンデバイスの第2の実施の形態>
実施例2で説明するバルーンは、実施例1で示したバルーンと形状において同じである。また、実施例2で説明するバルーンの外部には、2つの異なる電極が実施例1で示した数と同程度設けられている。該バルーンは、カテーテルに接続されている。なお、デバイスを挿入する間にカニューレが通過した跡に、該カテーテルを敷設することができる。このカテーテルを、単純な経皮的穿刺によって満たされることができるデバイス(type Omcana reservoirまたはAccu-Flo(登録商標) CSF reservoir 14 mm, ref 82-6100, Codman))に接続することができる。上記カテーテルとしては、例えば、20cmの切り取り可能な心室用カテーテル(Integra Neurosciences Implants S. A., 2905 Route des Dolines, 06921 Sophia Antipolis, Cedex. フランス)、または、心室用カテーテル(Codman, Johnson & Johnson, Raynham, MA, 02767-0350 アメリカ)を挙げることができる。埋め込まれたデバイスからの漏れのために、該デバイスの体積が減少する場合、または、電極と脳組織との接触が不十分である場合、上記デバイスは孔をあけられ、バルーンまたはバルーン様構造体の中に液体が加えられる。デバイスが、脳をあまりにも強く圧迫する場合、皮下の孔からいくらかの液体を吸引することができる。このことは、次の図4において説明されている。病変空洞の3次元構造に似ているバルーンまたはバルーン様構造体は、(i)カテーテル、および、(ii)バルーンまたはバルーン様構造体を満たすか、あるいは、バルーンまたはバルーン様構造体を吸引するためのデバイスに連結することができる。カテーテルおよびバルーンを吸引するためのデバイスは、本段落に記載されているように技術的に利用可能である。さらに、カテーテルおよびバルーンを吸引するためのデバイスは、脳室‐外部シャント(ventriculo-external shunt)のためのカテーテル、および、貯水器(reservior)であってもよい。これらカテーテルおよび貯水器は、単純な金属の連結部材およびMersileneの2の縫合糸または他の非吸収性で且つ生体適合性材料を用いて、バルーンまたはバルーン様構造体に連結している。このことは、脳室シャントおよび髄腔内化学療法の分野に従事している脳外科医の間で公知である。上記カテーテルの直径は、バルーンまたはバルーン様構造体の挿入に用いられたカテーテルの直径よりも小さい任意の大きさであってもよい。孔を開けるためのデバイスを、バーホールに配置することができるし、または、皮下に配置するこができる。後者の場合、脳室内カテーテルは、90°の角度になる。この種の機器は既に存在している。バルーンまたはバルーン様構造体を、図3に示されたカテーテルの直径よりも小さい直径のカテーテルを用いて挿入することができる。というのも、該カテーテルを通してデバイスを挿入した後に、バルーンまたはバルーン様構造体をより大きくすることができるからである。
【0118】
全ての記録用マイクロ電極および刺激用マイクロ電極は、バルーンまたはバルーン様構造体の外側(外表面)に設けられている。ケーブルおよび刺激用機器は、バルーンまたはバルーン様構造体の内部に設けられている。刺激用機器とコンピューターとの間を繋ぐ接続機器(好ましくは無線で接続する接続機器)が、体の所望の位置(例えば、硬膜とクモ膜との間、バーホールの中、または皮下)に埋め込まれているか、または体の外に設けられている。また、バルーンまたはバルーン様構造体からくる第2のカテーテルを、上記カニューレが脳組織を通過した場所、バーホール、または、体の他の任意の場所に配置することができるし、あるいは、体外のコンピューターに接続するための外部リードを介して設けることができる。
【0119】
<実施例3.マイクロ電子機器を備えているバルーンデバイスの第3の実施の形態>
病変空洞が大きく、不規則である場合、該病変空洞の3次元構造に似ているバルーンまたはバルーン様構造体の特定の部分を、内側から外側へ押すことが必要になり得る。これにより、バルーンまたはバルーン様構造体の外壁(すなわち電極が配置されている外壁)と、神経組織とを良好に接触させることができる。したがって、手術されている患者の病変の解剖学的構造に基づいて設計された、所定の弾力を有している1以上のまっすぐな探り針もしくは屈曲した探り針(あるいは、他の任意の堅いまたは柔軟な材料もしくはプラスチックからできている探り針)を用いて押すことを、役立たせることができる。これによれば、空洞壁に正確に適合するような様式で、バルーンまたはバルーン様構造体を、極端な角に正確に適合させることができる。上記探り針がまっすぐではない場合、該探り針がまっすぐなカニューレの中に存在する限り、該探り針がまっすぐになることができるような材料で、探り針を作製することができる。しかしながら、バルーンまたはバルーン様構造体を所定の位置に配置するために、該探り針をカニューレから押し出すとすぐに、該探り針は、コンピューターによって計画されたような方向に屈曲する。屈曲する方向を、探り針のグリップにつけられた小さな印(例えば前方を示す印)によって示すことができる。
【0120】
デバイスの挿入を、図5aから5iに示す。
【0121】
バーホールを作製した後、大きい探り針を有しているカニューレを、従来公知の方法を用いて脳内に挿入する(なお、上記探り針の先端はとがっておらず、また、該探り針はカニューレの体積の全てを満たしている)。このことは、外科医は、上記カニューレがどこに配置されたかを空間的に正確に知っていることを意味する。また、外科医は、3次元の病変空洞がどこに位置しているかを正確に知っているので、外科医は、病変空洞の位置と相対的なカニューレの位置を知っていると考えられる(図5a)。
【0122】
その後、先端とがっていない大きい探り針は、カニューレから引き抜かれる(図5b)。
【0123】
それから、本発明の説明のための実施の形態および実施例に説明されているように構築されている、折りたたまれたバルーンまたはバルーン様構造体が、カニューレの中に挿入される。異なる探り針が、バルーンまたはバルーン様構造体の内部(ちょうどバルーンまたはバルーン様構造体の末端)において固定される。このことは、イメージングの手法によって視覚化されるような病変空洞の3次元構造および寸法に基づいて実現することができる。バルーンまたはバルーン様構造体および探り針は、カニューレの内部に正確に適合しているハードで生体適合性のあるチューブ(例えばポリアミドチューブ)により包まれている。このチューブの基部は、バルーンまたはバルーン様構造体に固定される。このチューブの先端には、バルーンまたはバルーン様構造体を後で閉じることができるように、内孔に向かうねじ山が設けられている。該チューブの先端の外側には、後でバーホールの中に加えられる骨セメントに、チューブを固定することができるいくつかの不規則な構造体(例えば3つのピン)が設けられている。探り針は所望の弾力を有しているが、該探り針が堅いチューブの中にあるうちは、ほぼまっすぐである。標的空洞にバルーンまたはバルーン様構造体を配置したときに、前もって調整された弾力性によって、バルーンまたはバルーン様構造体の極端な角に上記探り針の外端を正確に位置させることができる。しかしながら、該探り針を押し下げれば、探り針は、病変空洞の3次元画像データを解析した後に計画されたような状態をとる。バルーンまたはバルーン様構造体の各末端の正確な位置が重要である。したがって、外科医がデバイスを正確に正しい方向に向けることができるように、全ての探り針およびチューブに印をつけることが必要になる。方向性を良好にするための実行可能な戦略の1つとして、探り針のグリップおよびおよびねじ山の先端の両方に前方方向の印を付けることができるが、器具に印を付ける他の実行可能な方法が多くあるということが明白である。探り針の数は、3次元体積の末端の数に依存しており、1〜20以上の間で変更することができる。しかし、探り針が少ないほど、概念を簡単にすることができる(図5c)。
【0124】
バルーンまたはバルーン様構造体のハード延長部分の長さは、病変と頭蓋骨との距離に依存している。また上記長さを、定位干渉(stereotactic intervention)を計画することと同様に、イメージングデータから得ることができる。この手法は、定位脳手術の外科医に知られている。
【0125】
その後、探り針を、押し出す(図5d)。カニューレは除去されている。また、後で用いられる骨セメントが硬膜の下に入ることを予防するために、いくつかの生体適合性材料(例えばオキシセル(Oxycell))を、バルーンまたはバルーン様構造体のハード延長部分と骨との間に配置することができる(しかし配置する必要は無い)(図5e)。それから、骨セメントが生体適合性材料(例えばオキシセル)の上部に添加される。外科医は、骨セメントが固まるまで待つ。待つ時間は、一般的には5〜10分であるが、用いられる骨セメントに応じて長く待つこともできる。ハードチューブを骨に良好に固定するために、バーホールの基部の骨に少なくとも複数の孔を開けることが望ましい。
【0126】
その後、好ましくは、ハードチューブの内部に位置している探り針の固定点へくるように探り針を側面へ押し付けることによって、探り針を該側面に固定する。この手法を行っている間、外科医は、探り針が正確な深さに位置すれば探り針が固定されることだけに注意している。なお、正確な深さは、手術の前に計画されており、探り針上に印されているミリメートルおよびセンチメートルから読み取ることができる。探り針を固定点において固定すれば、探り針の残りを切断することができる(図5g)。切断方法としては、探り針を裂いてもよいし、または、切断器を用いて切断してもよい。探り針の固定点の例が示されているが、多くの種類の固定点を利用することができ、また、市販品を利用することもできる(図5h)。
【0127】
その後、ネジをねじ山に締める。必要に応じて、デバイスと骨との固定を改善するために(このことは、デバイスが比較的大きくなると確かに求められる)、別のセルフタッピングネジを、主要なネジの側面部分を通して周辺の骨の中に埋め込むことができる。それから、針を液体を注入するために挿入することができる。もう1つ別の針から、空気を排出することができる。針としては任意の針を用いることができるが、好ましくは、ヒューバー(Hueber)針である。液体を漏らすことなく孔を開けることが可能なデバイスを、シンクロームドポンプ(Synchromed pump)pump(Medtronic Inc.)に用いられている材料と同じ材料、または同様の任意の材料で作製することができる。記録用マイクロ電極および刺激用マイクロ電極の全ては、バルーンまたはバルーン様構造体の外側、または外表面の軸に設けられている。ケーブルおよび刺激用機器は、バルーンまたはバルーン様構造体の内部、および/またはチューブの中に設けられている。刺激用機器とコンピューターとの間を無線で接続する接続機器が、体の所望の位置(例えば、硬膜とクモ膜との間、バーホールの中、または皮下)に埋め込まれているか、または体の外に設けられている。また、ネジに開口部を設けることができる。これによれば、全てのワイヤーを含んでいるバルーンまたはバルーン様構造体の内部に接続することができ、該ワイヤーを体の残りの部分または体の外側と接続することができる(図5i)。
【0128】
バルーンまたはバルーン様構造体を作製する工程の間に、外科医が極端な角を正しい位置に正確に押すことを確実にするために、探り針は内部の極端な角に固定される(なお、固定される必要はない)。しかし、それから、はさみ、または探り針を作っている材料を切断する他の任意の切断デバイスにより、探り針を切断する必要がある。また、ネジを取り付けるデバイスまたは小さなフックあるいは任意の分離することが可能なシステムを用いて、探り針をネジを緩めてはずすまたは分離することができるような様式で、探り針をバルーンまたはバルーン様構造体の内部の極端な角に固定することができる。また、探り針の代わりに、探り針様の単純な器具を用いることができる。上記器具は、外科医が支障なく手に持てるものであり、外科医は、該器具が脳組織に正確に接触するまで、バルーンまたはバルーン様構造体を押すために該器具を用いる。また、バルーンまたはバルーン様構造体を、病変空洞の壁に正確に接触させるために、オープンMR機械を用いて、この手法を実施することができる。バーホールに完全に適合する、デバイスを、所定の位置に留まっているバルーンまたはバルーン様構造体のハード延長部分の先端に、ネジでもって取り付けることができる。上記デバイスは、必要に応じて、孔を開けるために用いることができ、これにより、探り針を用いて内部からバルーンまたはバルーン様構造体を扱うことができる。その場合、前記デバイスは、ネジを緩めてはずれることが必要である。
【0129】
カニューレを骨に固定するためのデバイスを、異なる形態で作製することができる。1つの実行可能な形態が、図5iに示されている。
【0130】
バルーンまたはバルーン様構造体およびカニューレの両方の3次元構造を、各患者について、別々に計画し、開発することができる。この計画と開発とは、前述したような、実際の埋め込み作業の前に行われる医用イメージングに基づいている。また、バルーンもしくはバルーン様構造体またはカニューレのどちらかあるいは両方の解剖学的構造が、手術される1の患者に類似している場合、バルーンまたはバルーン様構造体およびカニューレの両方の3次元構造を、別の患者から模倣することができる。
【0131】
実施例1、2および3では、刺激用電極および記録用電極の大きさは、神経細胞体(neuronal body)の大きさよりも小さい。全ての電極は、刺激用機器と、バーホールの中またはバーホールの近くの皮下中において、あるいは、バーホールから少し離れたところにおいて、皮下に設けられたケーブルを介して接続している。該刺激用機器は、バルーンまたはバルーン様構造体の内部、または、バルーンまたはバルーン様構造体のハード延長部分によって作製された管(canal)のどちらかに配置されている。また、電極と刺激用機器/記録用部材とを接続する経路も存在する。刺激用機器/記録用機器(recorder)は、できるだけ長持ちし、且つ、できるだけ小さいか、または、充電可能な電池によって作動する。あるいは、刺激用機器/記録用部材は、無線周波数システムによって作動する。
【0132】
バルーンまたはバルーン様構造体の壁は、柔軟性を有している必要があり、好ましくは、それほど伸縮性には優れていない。なお、上記壁の伸縮性が小さかったとしても、問題にならないと考えられる。各電極の3次元的な位置は、バルーンまたはバルーン様構造体の壁に、MRIにより検出することができる印(例えば、星、点、数字、文字、矢印など)をつけることによって、知ることができる。各電極の各印に対する相対的な位置が分かるので、各印の位置を、1mm未満の薄さのMRIスライス上に視覚化することができる。また、周辺の神経組織に対する各電極の位置を、知ることができるだろう。
【0133】
もちろん、デバイスを埋め込む前に滅菌性を確保するために、全てのシステムを滅菌することができる。好ましい滅菌は、ガス滅菌である。感染症または他の任意の理由から、バルーンまたはバルーン様構造体を除去することが必要になるときはいつでも、(i)デバイスの上の皮膚を開口して、(ii)ネジをはずし、(iii)探り針の接続を緩めるかまたは探り針を切断し、そして、(iv)デバイスを引っ張ることによって、デバイスを簡便に除去することができる。
【0134】
また、複雑な探り針を用いる代わりに、探り針の形をしている単純なまっすぐもしくは曲がった小さい器具を用いることができる。この場合、直視にて、もしくは図示されているような技術と同じ技術を正確に用いて、探り針をバルーンまたはバルーン様構造体の壁に固定することなく、バルーンまたはバルーン様構造体の壁を所定の位置に手動により押す。このため、探り針を挿入した後に、該探り針を簡便に除去することができる。もう1つ別の方法では、内部に第2探り針を備えている探り針を用いることができる。バルーンまたはバルーン様構造体を所定の位置に配置すれば、第2探り針をさらに1または2mm押し出す。これにより、探り針とバルーンまたはバルーン様構造体の壁との固定が解除(debloc)される。したがって、探り針とバルーンまたはバルーン様構造体の壁との接続は、この単純な機械的機構が可能なように作製されている必要がある(市販品を利用することができる)。この機構により、バルーンまたはバルーン様構造体が所定の位置に配置されれば、探り針を完全に除去することができる。ネジでもって固定した後に、液体を注入することによって、バルーンまたはバルーン様構造体は、神経組織の近くに留まる。注入に必要な体積は、3次元体積をソフトウェアにより知ることができるので、簡便に測定することができる。このことが、困難な測定であると判明した場合、3次元の体積を有しているスチレン製の見本を作製し、体積が既知の水槽に該見本を配置する。水を押しのけた分の体積が、脳における病変の3次元の体積である。
【0135】
<実施例4.本発明に記載されている機能を回復させるための異なるデバイスの実用的な機能>
‐神経系の解剖学的構造の視覚化‐
開始するに当たって実行可能な戦略は、MRI技術の1つである拡散テンソルイメージング技術(DTI)を用いることであると考えられる。空洞の境界において、DTIにより1以上の繊維束が示されれば、空洞の端における繊維束と3つの隣接するマーカーとの間の距離を、MRI画像上または定位脳手術のためのソフトウェア・プログラム(Brainlabから提供されているようなもの)により、測定することによって、どの電極が該繊維束と非常に近いかおおよそ知ることができる。DTIを用いることにより、どこから該繊維が来るかを検出することができるため、該繊維の起源に関する解剖学的情報を得ることもできる。しかし、DTIは、デバイスを機能させるための必要条件ではない。また、経路の情報も、古典的なMRI技術(T1およびT2強調画像など)およびCTスキャン、ならびに単純な解剖学的地図から得ることができる。なお、上記情報がなくとも、デバイスを機能させることができると考えられる。しかし、細胞および繊維(軸索および樹状突起)の解剖学的構造に関するいくつかの情報を用いることにより、目的(神経系の機能を回復させること)を達成することをより簡便にすることができる。
【0136】
‐外的刺激に基づく全ての記録用マイクロ電極を用いた記録‐
損傷した繊維では、スパイクを検出することできない。しかし、それらの損傷した軸索の近くに存在し、損傷したニューロンの無傷の部分と接触することができる神経細胞体に、これらの細胞(細胞体、軸索、または樹上突起)を興奮させることによって、影響を与えることができる。また、死んでいるニューロンとほとんど同じ機能をするいくつかの健康なニューロンに由来する活動を検出することができる。研究に基づく経路(運動経路、知覚経路、視覚経路、味覚経路など)に依存して、それらの領域においてスパイクを産生することが有望な外的刺激を誘発することができる。例えば、運動経路が遮断されているが、運動野に存在する細胞体が無傷である場合、運動野に存在する細胞体と空洞の壁との間に存在する軸索は、生存し且つ機能性を保っていることがある。しかし、もはや細胞体に接続していない軸索は、ウォラー変性により死んでいると考えられる。病変のために患者が実行することができない動作について考えるように、患者に頼むことによって、病変の部位(すなわち、空洞の壁)において検出され得るスパイクを誘導することができる。その後、特定の運動活動を実施することを考える過程によって影響されるシグナルを検出することができる全ての記録用電極の配置図(map)を、単純な検出コンピュータープログラムによって作製することができる。一回考えて、一回記録するということでは、不十分であると考えられる。この過程は、特定の運動活動を実行することを考える過程と明確な関連性が、シグナルにあることが確実に示されるまで、繰り返され、且つ、患者が休息している(すなわち、特定の運動活動を実行することを考えていない)ときの状態と比較されることが必要である。コンピューターソフトウェアは、いくつかの試行(例えば、10、20、100またはそれ以上の試行)の結果を考慮に入れるために設計される。それから、課せられた刺激に関連したシグナルを最も高い頻度で記録する記録用マイクロ電極を用いて続けることができる。
【0137】
しかし、病変の壁では、シグナルが記録されない可能性がある。この場合、第2電極をどこかに設けることができる(例えば、運動野自身の上部、または運動野自身の中である)。それから、同じ試行(例えば、特定の動きについて考えることと、そのことについて考えないこととを対比すること)が実施することができる。
【0138】
‐1以上の刺激用電極、または刺激用電極のいくつかのグループを用いた刺激の効果の研究‐
次のステップでは、Medtronic、ANSまたはBion neurostimulatorsのいずれかにおいて産生されたブロックパルス波と同様のブロックパルス波を有する、異なる振幅、パルス幅、および周波数でもって、1以上の刺激用電極または刺激用電極のいくつかのグループを刺激することができ、そして、最終的に臨床結果(例えば、運動収縮)を検出すことができる。なお、記録用電極に関する同じ技術を用いて、刺激用電極の3次元座標を、容易に決定することができる。また、異なる刺激パラメータを用いることができる。該刺激パラメーターとしては、例えば、(a)Prof. Tass (Peter A Tass, Nonlinear phenomena in complex systems, 2002, Vol.5, No.4, pp.470-478)に記載の刺激、あるいは、(b)(i)あるマイクロ電極に由来する記録されたシグナル、または(ii)別のマイクロ電極に記録されたシグナル、と同じ振幅および/またはパルス幅および/または周波数を用いるシグナルの投与、あるいは、(c)関連性のある記録されたシグナルのいくつかもしくは全てを数学的に計算したものの投与、が挙げられる。他の実施可能なものとしては、生物シグナルに似ているランダムなシグナルを与えることである。
【0139】
‐記録された情報と刺激用マイクロ電極との接続‐
次の工程は、関連性のある記録用電極でのスパイクの受信に応じて(例えば、運動収縮を考えることに応じたスパイクを記録すること)関連性のある刺激用電極を活性化させること(例えば、運動反応を産生すること)から成る。それから、関連性のある刺激用電極は、ブロックされたパルスを産生することができる。なお、このパルスは、Medtronic、ANSまたはBion neurostimulatorsにおいて産生されたものと同様である。また、関連性のある記録用電極において記録される受信シグナルと同じ刺激パターンを用いて、関連性のある刺激用電極を刺激することもできる。この方式では、天然のシグナルと似ているシグナルが、刺激されるニューロンに与えられる。
【0140】
‐適切な応用‐
運動経路を回復させる例が、単純な例としてのみ提示されていたが、神経系の任意の経路または異なる経路の組み合わせを同時に回復させる、あるいは、複雑なネットワークでさえも回復させるという可能性を持っているということは明白である。このことは、実験状態の脳シグナルもしくは脳機能の一連の記録と、対照状態(休憩中の状態)の一連の記録とを比較することによって達成される。実験状態として、例えば、動作について考えること、何かを思い出そうとすること、見ようとすること、何を感じているか考えること、集中しようとすること、笑おうとすること、話そうとすること、計算しようとすることなどが挙げられる。これらの状態は、ランダムな順番または擬似ランダムで行われることが好ましいが、必須ではない。上記記録用電極は、実験状態と対照状態との間で異なるシグナルを確実に産生する。そして、上記記録用電極は、刺激用電極を操作する刺激を提供することができ、これにより、最後の作用が誘発される(動作、思い出すこと、何かを見ること、感じること、集中すること、笑うこと、話すこと、計算することなど)。記録用電極と刺激用電極との間の接続は、刺激用機器/コンピューターによって単純に形成されている。
【0141】
<実施例5.動物実験におけるテストパラダイムのための、多数の(例えば数百の)刺激用電極および記録用電極が両面に設けられているプレートからなるデバイス>
本実施例のデバイスは、多数の(数百の)刺激用電極および記録用電極が両面に設けられているプレートである。該デバイスを、ヒト以外の動物の神経系(一般的には脳であるが、神経系の任意の部位であってもよい)に挿入することができる。上記ヒト以外の動物としては、マウス、ラットなどや、サルまでの大型動物が挙げられる。該デバイスを神経系に挿入することによって、該デバイスは神経構造に損傷を与え、軸索と樹状突起とを遮断し、神経系の細胞体に損傷を与える。最も明らかな最初のアプローチは、そのようなプレート電極を脳の灰白質および白質に挿入することである。それから、記録および刺激を、「本発明に記載されている機能を回復させるための異なるデバイスの実用的な機能」の表題の下において検討されているようにテストすることができる。デバイスが神経系に挿入される場所に依存して、異なるシステムまたは複数のシステムの組み合わせを、テストすることができる。例えば、運動システムの再接続を試みたい場合、運動システムのどこかに電極を挿入する。全てのマイクロ電極を介して、どのシグナルが課せられた刺激と関連しているかを検出することができる。動作の実行について考えることを動物に求めることは、不可能である。しかし、例えば、ベルの音に反応して、右前足を特定の物体に移動させるということを、電極を挿入する前に訓練することができる。電極が右前足の運動経路に挿入されたときは、このためにこの経路が破壊されている。このとき、ベルを鳴らして、動物が前足を持ち上げようとしている(しかし持ち上がらない)間に、シグナルが記録用マイクロ電極に記録されることを良好に行うことができる。もちろん、この企画に、対照状態を加えることができる。
【0142】
電極の反対側では、運動反応の喚起を試みるために、刺激を行うことができる。この運動反応が得られれば、「本発明に記載されている機能を回復させるための異なるデバイスの実用的な機能」の表題の下において検討されているように、関連性のある記録されたシグナルを、刺激のきっかけとして供給することができる。
【0143】
<実施例6.パズル様の一組の3次元体積構造体からなるデバイス>
上記3次元体積構造体は、ハード(メチルメタクリレートなど)またはより柔軟(シリコンなど)である。バルーンまたはバルーン様構造体を構築している間と同様に、病変空洞の3次元構造体の体積を、イメージングによって知ることができ、3次元構造体を、利用可能な技術(Materialise、MedicimおよびNobelbiocare)を用いて再構築する。脳脊髄液で満たされている病変の体積をハード構造体に置き換えるという発想である。該ハード構造体は1つの要素からなることができる。しかし、一般的には、ハード構造体の3次元体積を2以上の要素に分解することが必要になるであろう。なお、図6a〜gには、4つの要素が示されているが、パズルは最大で20の要素を含むことができるし、それ以上の要素を含むことができる。外科的干渉の前に、3次元構造を知ることができるので、パズルの要素に1つずつ番号をつけることができる(図では、要素に1、2、3および4がつけられている)。これにより、外科医が上記要素を正しい順番で病変空洞に配置することが容易になる。また、探り針はmmまたはcmでの印を有することができると共に、例えば前方向を示すための印を有することができる。これにより要素を3次元的に正しい方向に合わせることができる。3次元パズルの要素の横径(図6g)は、挿入カニューレ(図ではチューブと記載されている)の横径よりも大きくすることはできない。一方、深さ(図6g)を、チューブの横径よりも大きくすることができる。神経系における病変空洞の壁は、図6aに示されている。
【0144】
その後、バルーンまたはバルーン様構造体の挿入と同様に、カニューレまたはチューブを、バーホールを通して挿入する(図6b)。導入機器(introducer)を用いて、要素1を挿入する。導入機器がチューブの内部に留まる限り、導入機器を上下に移動させたり、中央に移動させたり、横方向に移動させたりすることができる。要素1は、数個〜数千個の刺激用マイクロ電極および記録用マイクロ電極で覆われている。病変空洞の壁に接触していない側は、そのようなマイクロ電極で覆われていない。この側において、ワイヤーの全てが要素1から伸びている。要素1の内部に、ワイヤーを格納することができる。また、この場所に、刺激用機器または多くのマイクロ刺激用機器を格納することもできる(図6c)。その後、第2導入機器を用いて、要素2を挿入する。この図にはっきりと示されているように、最初に要素1を配置して、次いで要素2を配置することだけが可能であり、この反対は不可能であった(図6d)。その後、要素3を挿入する(図6e)。それから、要素4を挿入する。この要素は、マイクロ電極を覆っておらず、要素4が機械的に存在することによって要素1、2および3を所定の位置に保持する。刺激用マイクロ部材の全てを要素1、2および3に配置することができる場合、この要素は、完全な要素である構造を有することができる。しかし、全ての刺激用機器はそこに適合しないと考えられる。そのとき、ワイヤーおよび刺激用機器を、要素4に配置することができる。また、全てのワイヤーをチューブを通して持ってくることが可能であるし、チューブの中、バーホールの中、体のどこかに、または体の外に刺激用機器を配置することが可能である(なお、上記チューブは、引き抜かれるか、または、所定の場所に残されることのどちらかが可能である)。最も後者の場合、感染症を防ぐために、刺激用機器と体との距離が10cmまたは20cmよりも長くなるような長さのケーブルを用いて、全てのワイヤーと刺激用機器とを接続することが最も好ましい(図6f)。深さおよび横径によって示されるものが、図6gに示されている。横径は、チューブに垂直な面に対して測定され、深さは、チューブの面に対して測定される。
【0145】
バルーンまたはバルーン様構造体と同様の方法(例えば、切断、チューブの壁に固定する、除去するなど)で、導入機器を取り扱うことができる。チューブが所定の位置に残された場合、バルーンまたはバルーン様構造体に用いた固定方法(図5i)と同様の固定方法を用いることができる。感染症が発症した場合または他の任意の理由のために、デバイスを要素ごとに簡便に取り出すことができるということは、明らかである。
【0146】
機能を回復させるための上記デバイスの実用的な機能は、バルーンまたはバルーン様構造体を使用ことによって得られる機能と同じようにして、得ることができる。
【0147】
病変の端から遠くない健康な組織に存在しているニューロンを刺激する、または、該ニューロンから記録することが必要になることがある。その場合、刺激用マイクロ電極および記録用マイクロ電極で覆われた1以上の針様構造体を、デバイスから突出させる(例えば要素1上に取り付ける)ことができる。
【0148】
<実施例7.Materialise、NobelbiocareまたはMedicimなどに使用されているようなラピッドプロトタイピング、および3次元イメージング技術を用いた構築に基づいて、中枢神経系または末梢神経系の溝(sulci)、脳回または他の表面に沿って表面刺激を実施するためのデバイス>
本発明のこの実施の形態の詳細な記載は、添付の図面に参照されている。
【0149】
脳の上側部分を介した水平T2強調MRI断片が、図7aに示されている。また、上記断片において、脳回、溝、脳脊髄液および血管を有する大脳皮質が示されている。
【0150】
黒色で描かれた構造体は、大脳皮質に入ることを避けている(硬膜でできた)鎌と血管との間の空間および溝を手動で描いたものである(図7b)。なお、隣接している脳の断片においても、上記構造体を描くことができる。断片が薄い場合(1または2mmの薄さの断片)、3次元の体積を作製することができる。また、自動で描写するプログラムも販売されている。バルーンまたはバルーン様構造体を製造することと同様に、または、多くの要素でできた電極を製造することと同様に、同じ3次元の体積を有するハード構造体を、3次元イメージングまたはラピッド・プロトタイピング(Materialse、Medcim、Nobel Biocare)という利用可能な技術を用いて製造することができる。大脳皮質の側には、記録および刺激するための多くの(2〜数千または数百万もの)マイクロ電極が配置されている。鎌の側には、マイクロ電極は配置されていない。
【0151】
もちろん、類似したデバイスを、表面上、表層溝または深層溝(例えば、外側溝、ローランド溝、硬膜下、くも膜下、または、硬膜外)の中の任意の場所に描くことができるし、さらに、小脳回(folia of cerebellum)の間、または、脳幹周辺、または、脊髄周辺、または、脊髄と神経根との周辺、または、馬尾の神経根間、傷ついた末梢神経周辺の任意の場所にも描くことができる。それらうちの最後に適用した実施例が、図7cに示されている。これらのデバイスは、非常に多くの刺激用マイクロ電極および記録用マイクロ電極が設けられているという点、ならびに、それぞれの患者について作製されているために、解剖学的構造を有する構造体に3次元的に完全に適合するという点で、既に存在しているデバイスと異なる。
【0152】
傷ついた末梢神経(この場合、完全に離断していてもよいし、部分的に離断していてもよい)は、デバイスによって取り囲まれる(図7c)。前述の全てのデバイスと同様に、医用イメージング技術を用いて視覚化されたような3次元構造体に再び基づいて、該デバイスを作製することができる。外側の部分は、チューブとして描かれている。しかし、該外側の部分が、取り囲んでいる筋肉の輪郭(contour)に、側面に設けられた小さな孔により適合するように、外側の部分を形成することができる。これにより、取り囲んでいる筋肉の上部にある、取り囲んでいる筋膜に外側の部分を適合させることができる。2〜数千または数百万の刺激用マイクロ電極および記録用マイクロ電極は、神経とデバイスとの間の端に存在している。なお、上記刺激用マイクロ電極および記録用マイクロ電極は両方とも、近位の(proximal)神経末端と遠位の(distal)神経末端との間にあり、上記神経とデバイスとは両方とも、横断している箇所および切り口にある。多くの遠位軸索は、ワーラー変性(Wallerian degeneration)のために死んでいると考えられるが、生存し、且つ電気刺激に反応したシグナルを導くことができる軸索が存在している可能性もある。このデバイスと存在しているデバイスとの違いは、(i)軸索との多数の接触、ならびに、(ii)関連性のある記録により関連性のある刺激を誘導することができるようにコンピューターにより互いに連結している記録用電極および刺激用電極を利用できることである。バルーンまたはバルーン様構造体に用いられた戦略と同じ戦略を用いることができる。しがたって、神経の機能的なブリッジングを実現することができる。このため、運動機能、知覚機能および自立機能を回復させることができる。
【0153】
デバイスは、2つの要素からなる。それら2つの要素を互いに移動させることができるし、いくつかの非再吸収性の縫合糸により所定の位置に維持することができる。上記縫合糸としては、例えば、Mersileneまたは別の縫合糸が挙げられる。縫合糸の1つは、図に示されているが、縫合糸を複数用いることができる。縫合糸を保持するために、デバイスの外側に小さなキャナルを設けることができる。ここで、以下の(1)、(2)の点に注意されたい。つまり、(1)神経は圧迫されていないが、デバイスの内部の空洞と正確に適合している点、(2)医用イメージングに基づいてデバイスが構築されているので、少なくともMRI画像の歪曲およびCTスキャンの部分容積効果が考慮されているときに(このときは、当然であるが)、該デバイスは完全に適合するはずである点。また、T2強調画像は、特定の構造物の寸法を過大評価することがあるので、このことも考慮するべきである。
【0154】
図9に示されているように、刺激用マイクロ電極および記録用マイクロ電極で覆われているピンを、神経系に侵入させることができる。脊髄損傷の場合、病変空洞の頭側にあり、神経細胞体を未だ有している下行白質路(descending white matter pathways)を、尾側に位置している灰白質に接続することができる。付加的な適応性を頼りにすれば、この戦略により、運動機能を回復させることができる。他の方針では、病変空洞の尾側にあり、神経細胞体を未だ有している上行白質路(ascending white matter pathways)を、尾側に位置している灰白質に接続することにより、知覚機能を回復させることができる。これにより機能が回復されない場合、白質路と白質路とを接続するか、あるいは、灰白質と灰白質とを接続する。病変部位の白質において記録することができない場合、第2電極を、未だ存在している細胞体に配置するか、または、上位(または下位)のニューロンの近くに配置することができる。また、路の頭側に位置した部分または灰白質構造体を、路の頭側に位置した部分または灰白質に接続することができる。また、この反対も同様に実施することができる。
【0155】
末梢神経および神経根では、同様の方法にて軸索を互いに接続することができる。また、ここで、病変部位の記録が不可能であるある場合、第2電極を未だ存在している細胞体のレベルに配置するか、または、上位(または下位)のニューロンの近くに配置することができる。この戦略を用いることにより、運動機能、知覚機能、および自律機能を、部分的または完全に回復させることができる。
【0156】
さらに、より遠位または近位のレベルで刺激または記録するために、第1デバイス(最終的には第2デバイス)よりも遠位または近位にある第3デバイスを用いることが可能である。これは、生存している関連性のあるニューロンの近隣のニューロンに、この近隣のニューロンから記録して、刺激するための電極を設けることを目的としている。それから、刺激用機器を、2または3の記録デバイスおよび刺激デバイスに接続することができる。神経の近位に1つのデバイスを設け、神経の2つの枝に2つの遠位デバイスを設けることができる。また、運動神経により刺激される筋肉に、直接的な筋肉刺激を提供することができる。筋肉を、脳深部刺激用の電極に似ている、1以上の柔軟性のある電極により刺激することができる。
【0157】
本発明の実施の形態では、デバイスは、比較的柔軟な材料から作製されており、該デバイスの外側は、記録用電極および刺激用電極により満たされている。このことは、T2強調MRI画像である脊柱管の横断面を示す図7dおよびeに示されている。右側には、デバイスが示されている(右側の画像の黒色部分)。このデバイスは、脳脊髄液で満たされている空洞部分(左側の画像の白色部分)と完全に似ている。
【0158】
そのようなデバイスの作用(indication)により、慢性の神経障害性の痛みの部位にチクチクする感覚を与えることができるか、または、1以上の損傷した神経根を回復させることができるか、または、痙縮を減少させることができるか、または、腸および膀胱の機能を回復させることができる。図7eにおけるデバイスは、図7dにおけるデバイスよりも小さい。しかし、デバイスは、デバイスが脳脊髄液で満たされた空洞に似ている限りは、任意の大きさであってもよい。図7dおよび図7eの両方では、空洞は、馬尾の特定の神経根の周辺のくも膜下における空間の一部である。図9に示されているように、刺激用電極および記録用電極で覆われたこれらのデバイスを、コンピューターを介して、脊髄の損傷箇所から吻側方向にある(すなわち、より頭方向に位置している)脊髄周辺に、または、脊髄の損傷により作られた脊髄の空洞の中に、あるいは、脊髄自体に埋め込まれたデバイスに接続することができる。このようにして、運動情報を、より吻側に埋め込まれた電極において記録することができ、さらに、刺激用電極を介してより尾側のデバイスのレベルで刺激することができる。なお、上記刺激用電極は、脊髄の病変空洞、より尾側に位置する脊髄周辺、馬尾の特定の関連性のある神経根周辺、末梢神経のレベル、または、筋肉自体に埋め込まれている。知覚情報に関していえば、尾側の記録用電極を用いて、該知覚情報をコンピューターを介して、より吻側に位置しているデバイスの刺激用電極まで送る。
【0159】
T2強調MR画像における脊柱管を介した矢状断面が図7fに示されている。デバイスは、医用イメージングに基づいて馬尾周辺に配置されている。実際には、該デバイスは、図7cに示されたデバイスと同じものであるが、異なる角度から見られている(横断面の変わりに矢状断面が用いられている)。(刺激用および記録用)マイクロ電極の間には相互作用が神経根とデバイスとの間の端に存在する。また、該デバイスには多くの孔が開けられている。デバイスの上縁と下縁とは、馬尾の神経根を傷つけないようにするために、鋭角になっているべきではない。1またはいくつかの神経根だけをブリッジするだけで、十分な場合がある。上記デバイスの作用により、損傷した神経根をブリッジすることができるし、または、慢性の神経障害性の痛みの治療として神経根を刺激することができるし、上述したように脊髄の損傷箇所をブリッジすることができる。デバイスの外側の部分は、図7cに示されたような円形である必要はないが、任意の神経根または他の組織、特に、神経根が脊柱管から分岐している場所を圧迫しないことに配慮した、医用イメージング(特にT2強調MRI画像)に基づいた3次元構造体である。また、デバイスは、できる限り小さいべきである。これにより、患者が前方または後方に曲がったときにデバイスが一緒に上下に移動することができ、マイクロ電極が全ての位置において同じ軸索と接触し続けることができる。
【0160】
図7gには、上丘または下丘のどちらか、ならびに小脳を記録および刺激するためのデバイスの例が示されている。バルーンまたはバルーン様構造体もしくはパズルデバイスを挿入する方法と同様の方法、開放的手術によるくも膜下の空間を介して、あるいは、古典的な内視鏡的技術により、上記デバイスを挿入することができる。これらは単なる可能性を示す例であることは明らかであるべきである。神経組織と他の組織との間の端のどこでも、そのようなデバイスを配置することができる。脳脊髄液が存在している場所に、該デバイスを配置することを考えつくことができるが、神経組織の上に位置している骨を切除することができるか、あるいは、筋膜または筋肉などを押しのけることができる。
【0161】
慢性の神経障害性の痛みの治療として脊髄を刺激するために、ANSおよびMedtronic Incという会社から市販されているものと正確に同じデバイスを製造することができる。しかし、本発明のデバイスは、数千〜数百万もの電極を備えており、該デバイスは、柔軟であるはずであり(例えば、我々の以前の特許のようにシリコン製である)、上述したように、患者毎に医用イメージング技術を用いて視覚化されるような解剖学的構造に基づいているはずである。また、2の患者の脊髄の解剖学的構造が類似していれば、同様の電極を2の患者に用いることができる。
【0162】
<実施例8.記録用マイクロ電極および刺激用マイクロ電極と刺激用マイクロ電極との組み合わせ>
検討した全てのデバイスにおいて、Medtronicにおいて設計された導線(lead)またはANSにおいて設計された導線という古典的なコンタクトを追加することができる。これらのコンタクトにより、刺激用マイクロ電極を用いた場合よりも、神経細胞の活動を調節することができる範囲を、広くすることができる。したがって、上述した全ての設計物を、記録用マイクロ電極および刺激用マイクロ電極の組み合わせか、または、記録用マイクロ電極および刺激用マイクロ電極と刺激用マイクロ電極との組み合わせのどちらかとして、製造することができる。これらの電気的なコンタクトは、MedtronicおよびANSのような会社により製造されたコンタクトとほどんど同じであってもよいが、大きさおよび形状の点で異なっていてもよい。特に、有益なコンタクトは、図8に記載されているコンタクトであると考えられる。
【0163】
外側の円と内側の円との間の領域は、現在市販されている神経系の刺激用電極に用いられている金属と同じ金属である(図8)。この領域の内側(すなわち最も小さい円内)および外側の円の外側には、1〜数千の記録用マイクロ電極および刺激用マイクロ電極を配置することができる。コンタクトは、任意の形状(円形、楕円形、四角形、三角形など、また、それらのいくつかは、上パネルに示されている)であってもよい。さらに、該コンタクトは平坦な構造物であってもよい。マイクロ電極のためのワイヤーを、コンタクトの背後に通すことができるし、または、図の下側に示されている大きいコンタクトを通り抜ける経路に通すことができる。
【0164】
本発明の全てのデバイスに関して言えば、いくつかの患者の医用イメージング画像に基づいて、いくつかのモデルを作製した後に、3次元体積のいくつかの標準モデルが、いくつかの患者に適合することを判明するということが可能である。このことにより、製造過程を簡便にすることができる。
【0165】
いくつかのデバイスの組み合わせが可能であること、および、刺激用機器をケーブルを介して相互接続された2以上のデバイスに接続することが、全てのデバイスに当てはまる。上記刺激用機器は、記録し、刺激し、記録用電極および刺激用電極からの情報を導くものである。例えば、運動野のシグナルの記録により、脳、脳幹、脊髄、または末梢神経の運動経路にある刺激用電極、あるいは直接筋肉にある刺激用電極を、直接操作することができる。また、反対のものが知覚システムに当てはまる。さらに、神経系の他の系に同様の適用をすることを考えつくことができる。
【0166】
神経シグナル伝達経路を回復させるために必要な電子機器は、神経細胞を電気刺激するための電極、ニューロンの電気シグナルを記録するための電極、シグナルを増幅および選別する部材、ADコンバーター、パルス発生部材、ならびに外部にデータを転送するための無線送信ブロックを備えている。
【0167】
<実施例9.3次元の物体上への電子機器のブリッジング>
3次元の形状を有する電子回路を実現するための別のアプローチがある:
‐柔軟な基板上での平面製造(planar fabrication)(従来のリソグラフィーを利用すること)
‐既に形成された3次元基板上での「湾曲」製造(「curved」 fabrication)(球状リソグラフィーを利用すること)。
【0168】
記録用電極および刺激用電極を、病変領域の周辺の健康な組織に直接接触している埋没物に存在させるべきである。該埋没物は、空洞の関連性のある部分に適合する固体の構造物、すなわち液体または固体で満たされたバルーンまたはバルーン様構造体である。シグナルを増幅および選別する部材を、(i)記録用部材の極近傍において、且つ刺激用機器および記録用部材と同じ側(図10A)もしくは反対側(図11B)に直接配置するか、または、(ii)病変から特定の距離だけ離れたところで、且つ硬膜よりも上側(図12A)もしくは下側(図12B)に直接配置することができる。
【0169】
図15は、2つの実現可能な包装方法、すなわち、本発明のプローブとともに使用するためのワイヤーボンディングアプローチ(左)およびフリップチップアプローチ(右)を説明する図である。本明細書に記載の3次元イメージングおよびラピッドプロトタイピング技術により、興奮性細胞組織の標的空洞に適合するような、ブリッジングデバイスへ形作ることができる薄片を製造するために、これらの方法を用いることができる。図15に示された方法は、空洞により分断された神経細胞間の相互接続を回復させるための、ニューロブリッジングデバイスに関して、単に記載されている。しかし、本発明はこれに限定されず、他のブリッジングデバイス20(例えば筋肉組織または心臓組織の興奮性細胞を刺激するための筋肉組織もしくは心臓組織に埋め込まれるブリッジングデバイス)も、本発明の方法を用いて製造してもよいということを理解されたい。第1の工程では、刺激/記録用ピクセル(あるいは刺激用ピクセルおよび/または記録用ピクセル)の配列51が、ダイ53上に形成される。該ダイ53は例えばシリコンダイであってもよい。これ以降、本発明の第1の態様のブリッジングデバイス50を製造するための方法は、シリコンダイ53に関して記載されている。なお、本発明はこれに限定されず、他の半導体材料(例えばGaAs、SOI(絶縁物上に形成した結晶シリコン))も用いることができるということを理解されたい。しかし、SOIの場合、ブリッジングデバイス50の製造を始める前にSOIを十分に薄く作製することができるので、薄くする工程を必要としなくてもよいという意味合いで、本発明の方法を改造してもよい。ダイ53上への刺激/記録用ピクセル(あるいは刺激用ピクセルおよび/または記録用ピクセル)51の形成を、技術分野における当業者に公知のマイクロハブリケーション(micro−fabrication)技術(例えばICまたはCMOSの標準処理および非標準処理)を用いて実施してもよい。ダイ53は、300μm〜1mmの間(例えば850μm)の厚みを有していてもよい。刺激/記録用ピクセル(あるいは刺激用ピクセルおよび/または記録用ピクセル)51の配列を、標準処理によって標準基板上に適用してもよいことが本発明の長所である。というのも、これにより、記録/刺激部位の配列を実質的に円筒形もしくは円錐形の基板上に作製することよりも、製造過程をはるかに容易にすることができるからである。コンタクト54を、例えば標準のCMOS金属化処理を用いて設ける。コンタクト55を形成するための適切な材料は、例えばAl、またはAu、あるいは他の任意の適切な貴金属であってもよい。次の工程では、まず始めに、刺激/記録用ピクセル(あるいは刺激用ピクセルおよび/または記録用ピクセル)51の配列が形成されているダイ53を、例えば50μm、好ましくは55μm、より好ましくは10μm、最も好ましくは5μmまで薄くしてもよい。既に検討したように、SOIで形成されたダイの場合、SOIダイはすでに十分に薄いことがあるので、この薄くする工程は必要ではなくてもよい。ブリッジングデバイス50が、不活性電極(例えば金属線)を含んでいるだけの場合、それはプラスチックを含んでいる全ての種類の基板において処理することができる。
【0170】
しかし、シグナル対ノイズ比および長期記録は、そのような電極では良好ではないと考えられる。また、シリコントランジスターの性能の方が薄層トランジスターの性能よりも良い。したがって、好ましくは、半導体基板(例えばSi、GaAsまたはSOI基板)上において実施される標準CMOS処理が、本発明の実施の形態にしたがって使用されてもよい。ダイが柔軟になるのに十分な薄さになるまでダイを薄くする。薄くする工程は、任意の適切な方法(例えば、機械研磨法または化学研磨法、あるいは両方の組み合わせ)により実施されてもよい。次の工程では、刺激/記録用ピクセル(あるいは刺激用ピクセルおよび/または記録用ピクセル)51を備えている薄くなったダイ53を、基板55に接続する。基板55は、例えば、生体適合性材料(例えばパリレンC、パリレンN、ポリイミド、ポリシロキサンゴム、またはテフロンの何れか)を含んでいてもよいし、貴金属(例えばAu、Pt、Ir)、チタニウム、酸化物(例えばIrOx、Ta2O5、SiO2、ZrO2)、Si3N4、あるいは、生体適合性エポキシを含んでいてもよい。基板55が形成される材料は、ブリッジングデバイス50が組織に埋め込まれたときに、細胞毒性および材料の劣化を防ぐようなものであるべきである。上記組織としては、例えば、病変による脳のシグナルギャップの原因をブリッジングすることによって脳機能を回復させるためのニューロブリッジングデバイス50の場合は、例えば脳である。基板55は、領域を有しており、平面にのっている。上記領域はその平面の方向に伸びている。また、刺激/記録用ピクセル(あるいは刺激用ピクセルおよび/または記録用ピクセル)51を備えているダイ53は、領域を有しており、ダイ53の領域は、基板55の平面と実質的に平行な方向に伸びている。基板55の領域は、好ましくは、刺激/記録用ピクセル(あるいは刺激用ピクセルおよび/または記録用ピクセル)51を備えているダイ53の領域よりも大きくてもよい。刺激/記録用ピクセル(あるいは刺激用ピクセルおよび/または記録用ピクセル)51を備えているダイ53は、ブリッジングデバイス50の活性部分を形成する。包装方法または接続方法は、生体適合性の柔軟な基板である基板55上に、刺激/記録用ピクセル(あるいは刺激用ピクセルおよび/または記録用ピクセル)51を備えているダイ53を、ワイヤーボンディングにより集合させるか、または、フリップ‐チップにより集合させるかのどちらかに基づいていてもよい。その後、(さらに本出願に記載されたような)多細胞生物(例えば哺乳類もしくはヒト)の組織または臓器における3次元イメージングを処理すること、および、ラピッドプロトタイピングにより、表している型を製造することによって、マイクロ電極ピクセルの配列を含んでいる基板を、空洞に正確に適合し、且つヒートルティ(heatlty)にするために空洞の端にピクセルを配置させる形状になるように折りたたむことができる。
【0171】
‐柔軟な基板上での平面製造‐
各ピクセルが、刺激変換器および記録変換器を備えているアレイを、高い空間分解能と高いシグナル対ノイズ比とにより、神経の電気的な活動を記録するために用いることができるし、3次元の電場分布を制御するために用いることができる。そのようなアレイは、集積回路(IC)技術を用いて、生体適合性で且つ柔軟性な基板(例えばポリイミド、ポリウレタン、パリレン、ポリシロキサンなど)、または、古典的なシリコンウエハー上に直接的に製造することができる。後者のアプローチでは、処理の後、シリコンウエハーは柔軟な基板上に取り付けられており、その後、数μmまたは十分の1μmに薄くされる。
【0172】
最終的に、アレイは、少なくとも1つの刺激部材を備えている分離したピクセル、および少なくとも1つの記録部材を備えている分離したピクセルを具備してもよいし、または、アレイは、分離した刺激用ピクセルゾーンもしくは分離した記録用ピクセルゾーンを具備していてもよい。
【0173】
さらに、電子機器を備えている柔軟な薄片を、成形アプローチを用いて3次元の形状にする。型は、所定の病変の特徴にしたがって設計される。
【0174】
さらに、電子機器を備えている柔軟な薄片は成形アプローチを用いて3次元の変形にする。カスタマイズされた埋め込み用の電極は、空洞に正確に適合する必要があるので、型は所定の病変の特徴にしたがって設計される。空洞のデジタルモデルを、患者のCTスキャンまたはMRIスキャンにより利用することができる。適切なソフトウェアを用いることによって、非常に鮮明な細部を、型のデジタル設計に統合させることができる。上記ソフトウェアとしては、例えば、the 3D Systems soft, VIDX Scan Imaging Software (Evex Analytical Instruments), Zmode, Vis5D, VIDA)が挙げられる。型のコンピューターモデルが準備されれば、層製造技術により型を直接製造することができる。該層製造技術としては、選択的レーザー焼結(Selective Laser Sintering (SLS))、選択的レーザー溶融(Selective Laser Melting (SLM))、ステレオリソグラフィー(Stereolithography (SLA))、融合沈殿成形(Fused Deposition Modeling (FDM))、インクジェット方式に基づくシステム(Inkjet based systems)、3次元プリンティング(Three Dimensional Printing (3DP))、積層体製造法(Laminated Object Manufacturing (LOM))、Laser Engineered Net Shaping (TM)(LENS(登録商標))などが挙げられる。これらの迅速な製造方法は、幾何学的な自由度があるという利点を有しており、非常に小さい特徴を簡便に作製することができる。異なる材料を用いることが可能である。金属の型を、SLSにより製造することができるし、あるいは、高分子(好ましくはPC‐ISO ポリカーボネート)を、SLAにより製造することができる。カスタマイズされた3次元電極を製造するために成形戦略を用いるとき、2つの方法を用いることができる。キャスティングするか、もしくは噴霧することにより3次元薄片を製造するために、外型(図10)を作製することができる。あるいは、吹込成形すること(blowing)によって3次元薄片を製造するために、内型(図10)を作製することができる。
【0175】
別のアプローチを、成形手法に用いることができる。
【0176】
(方法1)
病変の正確な形状を有している型(例えば金属型)を製造する(図13を参照のこと)。電極を備えている薄片を、型に対して押しつける。そして熱処理を行い、プラスチック薄片を変形させる。さらに、型を薄片から剥がす。容易に剥がすために、溶解するかもしくはエッチングされる「犠牲的な」剥離層で、型を最終的に覆うことができる。そのような犠牲的な剥離層として、金属の薄層(例えば、蒸発もしくはスパッタリングにより型上に直接沈着されるアルミニウム)を用いることができる。熱処理の後、この層を適切な金属エチャント(例えばアルミニウム・エッチング溶液(aluminium etch solutions)により溶解する。
【0177】
(方法2)
型(例えば金属型)は、生体適合性高分子で等角に(conformally)覆う。このとき、上記生体適合分子がパリレンであれば、真空昇華が用いられ、ポリイミドであれば、スプレイコーティングが用いられる。次に、「接着」層(glue layer)を、生体適合性の層上に等角に分散させる。該接着層として、高分子材料またはエポキシ材料(例えば光電流エポキシもしくは熱硬化性エポキシ)を用いることができる。接着層を、浸せきまたはスプレイコーティングを用いて型上に設けることができる。電子機器を備えている薄片を接触させて、被覆された型に対して押し付ける。接着後、薄片を型から剥がす。なお、容易に剥離するために、犠牲的な剥離層を用いることができる。
【0178】
‐すでに3次元の構造をとっている基板上での「湾曲」製造‐
近年、1mmの直径の球形のシリコン基板上において半導体デバイスおよびセンサーを製造する方法が実証された([Takeda, Adv. Pack. Materials, 2001](図14を参照のこと)。Ball Semiconductor Inc.は、球形の基板を処理するために適切な、特別なマスクレスの球形リソグラフィー技術(special mask-less spherical lithographic technique)およびレイアウトを設計するツールを開発した。この技術では、800×600マイクロミラー(micro-mirror)のアレイにより、平坦な焦点面の代わりに、球形の焦点面が作製される。マイクロミラーアレイを用いたパターンの生成は、電気的に制御される。
【0179】
また、電子ビームリソグラフィー(electron beam lithography)を、湾曲した/平坦ではない基板に用いることができる。NASA(米国航空宇宙局)のジェット推進研究所のためにCaltechは、ポリメチルメタクリレートの薄膜に書き込む電子ビーム位相ホログラム(electron-beam phase hologram)に基づく技術を開発した([Makes et. al. www.nasatech.com and NASA Tech Briefs, May 1999 Maker, Paul et al. ])。この技術を、凹状および凸状の基板に応用することは、以下の工程を含んでいる。(1)基板上に格子点を設ける工程、(2)各格子点に関して、電子ビームデバイスの焦点、回転、および偏向の校正値を決定する工程、(3)焦点深度情報を用いて、深度区域を定義する工程、(4)照射パターンをサブパターン(各深度区域に関して1つのサブパターン)に分割する工程、(5)電子ビーム装置を用いて、上記サブパターンにしたがって各深度区域を照射する工程。
【0180】
これらの技術を、カスタマイズすることができるし、局所的に凸状/凹状の表面を有している非球面の物体上へ電極パターンを転写することに適用することができる。さらに、この転写は、接した点の間において表面形状が、激変しないという状態で行われる。
【0181】
本発明は、以下の製造スキームを含んでいる;
1‐病変の型を産生する工程(上記型は中枢神経系における病変が模られている)、
2‐上記型を、犠牲的な剥離層で始めに等角的に被覆し、次いで生体適合性の埋め込み用材料(例えば、ポリイミド、パリレン、ポリウレタンなど)で等角的に被覆する工程、
3‐上記型を、電子ビームレジストまたはフォトレジスト(例えばポリメチルメタクリレート)で被覆する工程、
4‐Bell Semiconductorsのマスクレスアプローチまたは電子ビームリソグラフィーを用いて、被覆の表面をパターニング(好ましくはフォトレジストをパターニング)する工程(このようにして、電極パターンを基板上に設ける)、
5‐金属蒸着またはスパッタリングを用いて電極材料(例えば、Pt、Ir、Pt/Ir、Au、活性化酸化インジウム)を沈着させる工程、
6‐ストリップをレジストする工程
7‐電極が設けられれば、剥離層を溶解して型を除去する工程。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】脳病変(2)の冠状断面、矢状断面および横(軸)断面の脳の画像の例を示す図である。
【図2】両方の脳半球における大きな脳病変の冠状横断画像(a)、片半球における大きな脳病変(2)の横断面画像(b)、および脊髄(灰色)における大きな病変(T1強調核磁気共鳴画像上の低信号、すなわち黒色)(c)を示す図である。
【図3】脳病変(1)(a)、カニューレが側面からきている脳病変(b)、カニューレがより上側からきている脳病変(c)、を示す概略図である。
【図4】(i)バルーンまたはバルーン様構造体を満たすため、または、(ii)バルーンまたはバルーン様構造体を吸引するためのカテーテルおよびデバイスと接続された病変空洞の3次元構造に似ているバルーンまたはバルーン様構造体を示す概略図である。
【図5a】カニューレおよび探り針の使用に関する図である。
【図5b】カニューレおよび探り針の使用に関する図である。
【図5c】折りたたまれたバルーンまたはバルーン様構造体がカニューレに挿入されていることを示す図である。
【図5d】押し出された配置における探り針の図である。
【図5e】カニューレが除去され、且つ、いくつかの生体適合性材料(15)がバルーンまたはバルーン様構造体のハード延長部分(14)と骨(16)との間に配置された(なお、配置されなくてもよい)後の集合体の状態を示す図である。
【図5f】骨セメント(18)が足場材料オキシセル(15)の上部に添加された後の集合体を示す図である。
【図5g】探り針(10)が、硬いチューブの内側に配置された探り針のための固定点(20)に側面を押し込まれた後の集合体を示す図である。
【図5h】探り針の固定点の例を示す図である。
【図5i】ねじ山の上に、ねじが締められた後の集合体を示す図である。
【図6a】神経系における病変空洞(27)の壁を示す図である。
【図6b】バルーンまたはバルーン様構造体の挿入と同様にして、バーホールを通じて挿入可能なカニューレまたはチューブ(28)を示す図である。
【図6c】要素1(Pl)が、導入機器(29)を用いて挿入可能であることを説明する図である。
【図6d】要素2(P2)が、第2導入機器(2)を用いて挿入可能であることを説明する図である。
【図6e】要素3(P3)が挿入可能であることを説明する図である。
【図6f】要素4(P4)が挿入可能であることを説明する図である。
【図6g】深さおよび横径によって示されるものを示す図である。
【図7a】脳の上側部分を介した水平T2強調MRI断片を示す図である。
【図7b】鎌と血管との間の空間および溝における黒色で描かれた構造体を示す図である。
【図7c】医療イメージング技術を用いて視覚化されたような3次元構造体に再び基づいて、作製することができるデバイスによって取り囲まれる、傷ついた末梢神経を示す図である。
【図7d】T2強調核磁気共鳴画像の脊髄管の横断面を示す図である。
【図7e】図7dと同様の画像を示す図である。
【図7f】T2強調MR画像における脊柱管を介した矢状断面を示す図である。
【図7g】上丘または下丘のどちらか、ならびに小脳を記録および刺激するためのデバイスの例を示す図である。
【図8】本発明において記載した電極を有する全てのデバイスにおける、数千または数百万の他の刺激コンタクトおよび記録コンタクトと組み合わせることができる電気的なコンタクトを示す図である。
【図9】神経系の負傷したチューブ様の構造体を再構築するのためのデバイスを示す図である。
【図10】カスタマイズされる3次元電極を生産するための、別の成形戦略を示す図である。
【図11】柔軟な薄片上の電子構成要素の局在を説明する図である。
【図12】脳における埋没物の概略図である。
【図13】型を作る工程の概略図ある。
【図14】シリコン球上の金属化パターンを示す図である。
【図15】本発明のプローブを用いた2つの実行可能な包装方法を説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
興奮性細胞の電気記録および電気刺激をするためのデバイスにおいて、
上記デバイスは、組織における第1興奮性細胞と組織における第1興奮性細胞から離れている第2興奮性細胞との間の電気刺激の伝達の回復、または、電気シグナル接続の作製をするためのブリッジングデバイス(5、40、(P1、P2および/またはP3))であり、
上記ブリッジングデバイスは、
組織における第1興奮性細胞の電気的な記録活動のための記録手段を備えているピクセル(51)を具備している第1アレイと、
上記組織における第2興奮性細胞を電気刺激するための刺激手段を備えているピクセルを具備している第2アレイと、
を備えており、
上記記録手段と刺激手段とは、電気的に接続されていることを特徴とする、ブリッジングデバイス。
【請求項2】
上記第1アレイの各ピクセルは記録手段を備えており、第2アレイの各ピクセルは刺激手段を備えている、請求項1に記載のブリッジングデバイス。
【請求項3】
ピクセルを備えている上記第1アレイがダイ(53)上に配置されており、ピクセルを備えている上記第2アレイがダイ(53)上に配置されている、請求項1または2に記載のブリッジングデバイス。
【請求項4】
ピクセルを備えている上記第1アレイがダイ上に配置されており、該ダイは基板(55)上に配置されており、ピクセルを備えている上記第2アレイがダイ(53)上に配置されており、該ダイは基板(55)上に配置されている、上記請求項の何れか1項に記載のブリッジングデバイス。
【請求項5】
上記ブリッジングデバイスの形状および寸法が、臓器または生物の組織における空洞、安定な病変、もしくはそれらの本質的な部分に適合するように、カスタマイズされている、上記請求項の何れか1項に記載のブリッジングデバイス。
【請求項6】
上記ブリッジングデバイスの形状および寸法が、臓器または生物の組織における標的空洞もしくは安定な病変の壁に、上記ピクセルを適合するようにカスタマイズされている、上記請求項の何れか1項に記載のブリッジングデバイス。
【請求項7】
上記ブリッジングデバイスが、パズルデバイス(40、(P1、P2および/またはP3))であり、該パズルデバイスの形状および寸法が、標的空洞または安定病変の形状および寸法にカスタマイズされていることを特徴とする請求項5または6に記載のブリッジングデバイス。
【請求項8】
上記ブリッジングデバイスが、バルーン様構造体(5)であり、該バルーン様構造体の形状および寸法が、標的空洞または安定病変の形状および寸法にカスタマイズされていることを特徴とする請求項5または6に記載のブリッジングデバイス。
【請求項9】
上記バルーン様構造体は、外型上にキャスティングするか、または噴霧することにより得られる、請求項8に記載のブリッジングデバイス。
【請求項10】
3次元の型または3次元の基板が、
(i)2次元から3次元へデジタルイメージングすること、ならびに、
(ii)選択的レーザー焼結、選択的レーザー融解、ステレオリソグラフィ、融合沈殿成形、インクジェット方式に基づくシステム、3次元プリンティング、積層体製造法、およびレーザーエンジニアドネットシェイピングからなる群の層製造技術により、型または基板の3次元のコンピューターモデルを物理的なモデルになるように、転写すること、
というコンピューター化された方法によって、得られる、上記請求項の何れか1項に記載のブリッジングデバイス。
【請求項11】
バルーン様構造体が、内型に吹込成形することによって得られる、上記請求項の何れか1項に記載のブリッジングデバイス。
【請求項12】
標的空洞または安定病変の形状および寸法になるようにカスタマイズされた形状および寸法が、2次元から3次元へのデジタルイメージ技術、および、上記デバイス(P1、P2および/またはP3)のラピッドプロトタイピングというコンピューター化された方法によって得られる、上記請求項の何れか1項に記載のブリッジングデバイス。
【請求項13】
3次元イメージングは、
イメージングデバイスからの組織における空洞または安定病変の2次元画像を受信して、該2次元画像から上記空洞または安定病変の3次元画像を生成することによって、空洞または安定病変をイメージングすること、を含んでいる、上記請求項の何れか1項に記載のブリッジングデバイス。
【請求項14】
上記イメージングデバイスは、コンピューター断層撮影デバイス(CTスキャン)、磁気共鳴画像撮影デバイス(MRI)、陽電子放出断層撮影デバイス(PET)、単光子放出コンピューター断層撮影デバイス(SPECT)、または、脳磁気図撮影デバイス(MEG)である、上記請求項の何れか1項に記載のブリッジングデバイス。
【請求項15】
上記基板(25)が、パリレンC、パリレンN、ポリイミド、ポリシロキサンゴム、テフロン(登録商標)、貴金属、チタニウム、酸化物、Si3N4、または、生体適合性エポキシの1つを含んでいる、上記請求項の何れか1項に記載のブリッジングデバイス。
【請求項16】
上記基板(25)が、柔軟な基板である、上記請求項の何れか1項に記載のブリッジングデバイス。
【請求項17】
上記基板(25)が、第1領域と、第2領域を有しているダイ(23)とを備えており、該第1領域は該第2領域よりも広い、上記請求項の何れか1項に記載のブリッジングデバイス。
【請求項18】
上記ダイ(23)がシリコンダイである、上記請求項の何れか1項に記載のブリッジングデバイス。
【請求項19】
上記ブリッジングデバイスが、基板(25)上およびダイ(23)上に設けられたコンタクトの腐食を防止するための、生体適合性絶縁被覆をさらに備えている、上記請求項の何れか1項に記載のブリッジングデバイス。
【請求項20】
空洞または安定病変により遮断された、第1興奮性細胞と第1興奮性細胞から離れている第2興奮性細胞との間の相互接続を回復させるための治療に用いられる、上記請求項の何れか1項に記載のブリッジングデバイス。
【請求項21】
刺激用マイクロ電極素子および記録用マイクロ電極を用いて、中枢神経組織または末梢神経組織における空洞もしくは安定病変をブリッジングすることによって、神経シグナル伝達を修復するための治療に用いられる、上記請求項の何れか1項に記載のブリッジングデバイス。
【請求項22】
神経シグナル伝達を修復するための、または神経系の機能欠失を回復させるための治療に用いられる、上記請求項の何れか1項に記載のブリッジングデバイス。
【請求項23】
脊髄損傷もしくは損傷した神経根における神経機能を回復させるための治療に用いられる、上記請求項の何れか1項に記載のブリッジングデバイス。
【請求項24】
ジスケニア、知覚麻痺、運動麻痺、尿失禁、および便失禁からなる群の障害の治療に用いられる、上記請求項の何れか1項に記載のブリッジングデバイス。
【請求項25】
空洞または安定病変により遮断された、第1興奮性細胞と第1興奮性細胞から離れている第2興奮性細胞との間の相互接続を回復させるための治療に適用するための物を製造するための、上記請求項の何れか1項に記載のブリッジングデバイス。
【請求項26】
刺激用マイクロ電極素子および記録用マイクロ電極を用いて、中枢神経組織または末梢神経組織における空洞もしくは安定病変をブリッジングすることによって、神経シグナル伝達を修復するための治療に適用するための物を製造するための、上記請求項の何れか1項に記載のブリッジングデバイス。
【請求項27】
神経シグナル伝達を修復するための、または神経系の機能欠失を回復させるための治療に適用するための物を製造するための、上記請求項の何れか1項に記載のブリッジングデバイス。
【請求項28】
脊髄損傷もしくは損傷した神経根における神経機能を回復させるための治療に適用するための物を製造するための、上記請求項の何れか1項に記載のブリッジングデバイス。
【請求項29】
ジスケニア、知覚麻痺、運動麻痺、尿失禁、および便失禁からなる群の障害の治療のための物を製造するための、上記請求項の何れか1項に記載のブリッジングデバイス。
【請求項30】
組織における第1興奮性細胞と組織における第1興奮性細胞から離れている第2興奮性細胞との間の電気刺激の伝達の回復、または、電気シグナル接続の作製をするためのブリッジングデバイス(5、40、(P1、P2および/またはP3))を製造するための方法であって、
ピクセル(21)を備えているアレイを提供する工程を含んでおり、
各ピクセル(21)は、少なくとも1つの刺激手段および/または少なくとも1つの記録手段を、ダイ(23)上に備えている、方法。
【請求項31】
上記ピクセル(21)を備えているアレイを具備しているダイ(23)を、薄くする工程をさらに含んでいる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ピクセル(21)を備えているアレイを具備しているダイ(23)を、基板(25)上に接着させる工程、ならびに、
空洞または安定病変の2次元から3次元へのデジタルイメージング、および、ピクセル(51)を備えているアレイのための3次元的な基板のラピッドプロトタイピングというコンピューター化された方法によって、上記基板(25)の寸法および形状を標的空洞もしくは安定病変の形状および寸法にカスタマイズし、その後、空洞または安定病変へ導入するための適切な寸法になるようにより小さなユニットに分割する工程をさらに含んでいる、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
ピクセルを備えているアレイが、平坦な基板上に作製され、
その後、空洞または安定病変の2次元から3次元へのデジタルイメージング、および、バルーン様デバイス(5、40)もしくはその基板(55)を3次元の型においてバルーン様構造体へと形作るための3次元の型のラピッドプロトタイピングというコンピューター化された方法によって、標的空洞または安定病変の形状および寸法になるようにカスタマイズするされたバルーン様デバイス(5)へと形作られる、請求項30または31に記載の方法。
【請求項34】
上記型は、選択的レーザー焼結、選択的レーザー融解、ステレオリソグラフィ、融合沈殿成形、インクジェット方式に基づくシステム、3次元プリンティング、積層体製造法、およびレーザーエンジニアドネットシェイピングからなる群の層製造技術により、コンピューターモデルの型を物理的な型へと直接転写することによって得られる、請求項30または31に記載の方法。
【請求項35】
上記ピクセルを備えているアレイが、3次元の基板上に直接作製される、請求項30または31に記載の方法。
【請求項36】
上記バルーン様構造体が、外型上に基板をキャスティングするか、または噴霧することによって得られた、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
上記バルーン様構造体が、内型に基板を吹込成形することによって得られる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
上記基板は、硬い基板であり、
該硬い基板の形状および寸法が、2次元から3次元へのデジタルイメージング、および上記基板のラピッドプロトタイピングというコンピューター化された方法によって、標的空洞または安定病変の形状および寸法になるようにカスタマイズされる、請求項30または31に記載の方法。
【請求項39】
上記3次元イメージングは、
イメージングデバイスから組織における空洞または安定病変の2次元画像を受信して、該2次元画像から上記空洞または安定病変の3次元画像を生成することによって、病変をイメージングすることを含んでいる、上記請求項に記載の方法。
【請求項40】
上記イメージングデバイスは、コンピューター断層撮影デバイス(CTスキャン)、磁気共鳴画像撮影デバイス(MRI)、陽電子放出断層撮影デバイス(PET)、単光子放出コンピューター断層撮影デバイス(SPECT)、または、脳磁気図撮影デバイス(MEG)である、上記請求項に記載の方法。
【請求項41】
上記基板の表面をパターニングする工程、および、電極材料を沈着させる工程を含んでいる、上記請求項に記載の方法。
【請求項42】
レジストをストリップする工程をさらに含んでいる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
上記基板は、フォトレジストであり、電極パターンがマスクレスアプローチもしくは電子ビームリソグラフィによって、該フォトレジスト上に設けられる、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
上記電極材料(例えばPt、Ir、Pt/Ir、活性化酸化インジウム)の沈着は、電極材料の沈着を実施される、請求項41に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図5e】
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【図5f】
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【図5g】
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【図5h】
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【図5i】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図6e】
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【図6f】
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【図6g】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【図7e】
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【図7f】
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【図7g】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2008−546491(P2008−546491A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518574(P2008−518574)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【国際出願番号】PCT/BE2006/000077
【国際公開番号】WO2007/003019
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(508000685)
【出願人】(508000696)インターユニヴェルシテール マイクロエレクトロニカ セントルム ヴィーズィーダブリュー (2)
【Fターム(参考)】