説明

搬送システム及び搬送方法

【課題】
処理装置の前面を塞ぐことなく、かつ搬送システムが平面視で占める床面積を小さくしながら、処理装置に物品を速やかに供給搬出する。
【構成】
複数の処理装置間で物品を搬送するため、処理装置のロードポートの上部を通過する第1の軌道と、第1の軌道に沿って走行しかつホイストを備える天井走行車とを設ける。第1の軌道の下方で、ロードポートの上方を通過し、かつ第1の軌道と平行に第2の軌道を配置する。第2の軌道の下方で、ロードポートよりも高い位置に、ロードポートの直上部を物品が鉛直方向に通過自在に物品を置くためのバッファを設ける。バッファ及びロードポートとの間で物品を受け渡しするホイストを備えたローカル台車を、第2の軌道に沿って走行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は搬送システムに関し、特に処理装置を待たせずに物品を供給搬出する搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体加工装置及び半導体の検査装置等の処理装置を待たせずに、FOUP(半導体ウェハーを搬送するための密閉型カセット)等の物品を、これらの装置のロードポートに供給及び搬出する必要がある。このために、処理装置の付近にバッファを設け、かつバッファと処理装置間の搬送を行うための第2の搬送装置を設けることが提案されている。例えば特許文献1(JP2006-224944A)では、天井走行車の軌道を天井スペースに平行に複数配置し、一方を長距離搬送用、他方を短距離搬送用とする。そして長距離搬送用の軌道の直下にバッファを、短距離搬送用の軌道の直下に処理装置のロードポートを配置する。長距離搬送用の天井走行車はバッファとの間で物品を受け渡しし、短距離搬送用の天井走行車はバッファとロードポートとの間で物品を受け渡しする。従って処理装置が必要とする物品が予めバッファまで搬送されていると、処理装置への物品の供給を高速で行うことができる。また処理装置のロードポートからの物品の搬出は、短距離搬送用の天井走行車により高速で行われる。しかしながらこのようにすると、同じ高さ位置に平行に軌道を設けるため、搬送システムが平面視で占める床面積が増大する。
【0003】
特許文献2(JP2005-150129A)では、処理装置の前面に搬送装置を備えたバッファを設け、天井走行車はバッファとの間で物品を受け渡しし、バッファ内の搬送装置がロードポートとの間で物品を受け渡しする。しかしながら処理装置の前面には、稼働状況を示すディスプレイ、マニュアル操作用の操作パネル等が設けられ、バッファでこれらを塞ぐことは好ましくない。またロードポートは自動搬送装置のみが用いるものではなく、人手で物品を供給搬出することもあり、処理装置の前面をバッファで覆うと、人手でのアクセスが難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】JP2006-224944A
【特許文献2】JP2005-150129A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の課題は、処理装置の前面を塞ぐことなく、かつ搬送システムが平面視で占める床面積を小さくしながら、処理装置に物品を速やかに供給及び搬出することにある。
この発明での追加の課題は、ローカル台車の具体的な構成を提供することにある。
この発明での追加の課題は、ローカル台車の給電線を不要にすることにある。
この発明での追加の課題は、ローカル台車が天井走行車の直下に存在することを、追加の装置無しで検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の搬送システムは複数の処理装置間で物品を搬送し、
処理装置のロードポートの上部を通過する第1の軌道と、
第1の軌道に沿って走行しかつホイストを備える天井走行車と、
前記第1の軌道の下方で、前記ロードポートの上方を通過し、かつ前記第1の軌道と平行に配置された第2の軌道と、
前記第2の軌道の下方で、前記ロードポートよりも高い位置に、前記ロードポートの直上部を物品が鉛直方向に通過自在に設けられた、物品を置くためのバッファと、
前記バッファ及び前記ロードポートとの間で物品を受け渡しするホイストを備え、かつ第2の軌道に沿って走行するローカル台車、とが設けられている。
【0007】
この発明では、天井走行車が走行するスペースとローカル台車が走行するスペースとを鉛直方向に重ねることができる。従って搬送システムが平面視で占める床面積を小さくできる。また処理装置の前面をバッファで塞ぐことがない。そして天井走行車もローカル台車も共に、バッファ及びロードポートの双方との間で物品を受け渡しする。よって処理装置を待たせることが無く、かつ処理装置からの物品を速やかに搬送できる。バッファはロードポートの直上部から外れた位置にのみ設けても良く、あるいはバッファのフレーム等をロードポートの直上部にも配置しても良い。
【0008】
この発明はまたホイストを備える天井走行車と、処理装置のロードポートの上部を通過する天井走行車の軌道とから成る既設の天井走行車システムに後付けする搬送システムに関する。このシステムは、
天井走行車の軌道の下方で、処理装置のロードポートの上方を通過し、かつ天井走行車の軌道と平行に配置された第2の軌道と、
前記第2の軌道の下方で、前記ロードポートよりも高い位置に、前記ロードポートの直上部を物品が鉛直方向に通過自在に設けられた、物品を置くためのバッファと、
前記バッファ及び前記ロードポートとの間で物品を受け渡しするホイストを備え、かつ第2の軌道に沿って走行するローカル台車、とを備えることを特徴とする。
【0009】
このようにすると、既設の天井走行車システムに、第2の軌道とローカル台車、及びバッファから成る搬送システムを後付けできる。そして後付けする搬送システムは、処理装置の改造を必要とせず、既存の天井走行車システムに対しても、支柱を兼用する程度の改造しか必要としない。
【0010】
この発明では、ホイストを備える天井走行車と処理装置のロードポートとの間で物品を受け渡しする。
そして天井走行車は処理装置のロードポートの上部を通過する天井走行車の軌道に沿って走行し、
天井走行車の軌道の下方で、処理装置のロードポートの上方を通過し、かつ天井走行車の軌道と平行に第2の軌道が設けられ、
前記第2の軌道の下方で、前記ロードポートよりも高い位置に、前記ロードポートの直上部を物品が鉛直方向に通過自在に物品を置くためのバッファが設けられ、
前記バッファ及び前記ロードポートとの間で物品を受け渡しするホイストを備え、かつ第2の軌道に沿って走行するローカル台車が設けられ、
天井走行車によりバッファとの間でホイストにより物品を受け渡しするステップと、
ローカル台車により、バッファとロードポートとの間で物品を受け渡しするステップ、とを実行する。
【0011】
好ましい搬送システムでは、前記第2の軌道は少なくとも一対のレールを備え、さらに前記一対のレール間に前記物品が鉛直方向に通過自在な隙間が設けられている。この態様では、第2の軌道でのローカル台車を支持する一対のレール間の隙間を物品の奥行きよりも大きくすること等によって、物品は第2の軌道を鉛直方向に通過できる。従って、第1の軌道と第2の軌道とロードポートとが鉛直方向に重なるように配置でき、物品の受け渡しが簡単になる。またローカル台車を一対のレールで支持できる。
【0012】
より好ましい搬送システムでは、第1の軌道と第2の軌道とバッファとが、平行に平面視で重なるように、処理装置の前面に配置されている。そしてロードポートの上部でバッファはバッファの隙間を備え、バッファの隙間を介して天井走行車もローカル台車もロードポートとの間で物品を受け渡し自在にされている。このようにすると、天井走行車もローカル台車も共にロードポートにアクセスできる。
【0013】
特に好ましい搬送システムでは、物品が置かれているバッファの上部を、物品を搬送しているローカル台車が通過できる高さに、バッファが配置されている。このようにすると、天井走行車とローカル台車はバッファ上の任意の空位置に物品を荷下ろしし、任意の位置から物品を搬出できる。
【0014】
あるいはまた、物品が置かれているバッファの上部を、物品を搬送していないローカル台車は通過できるが、物品を搬送しているローカル台車が通過できない高さに、バッファを配置しても良い。このようにするとローカル台車によるバッファとの物品の搬出入の順序に制約が生じるが、バッファと第2の軌道との高さの差を小さくし、バッファの設置を容易にできる。
【0015】
例えば、天井走行車とローカル台車を制御する手段を設けて、天井走行車は前記バッファへの物品の搬入と、前記ロードポートからの物品の搬出とを行い、前記ローカル台車は前記バッファから前記ロードポートへの物品の搬入を行うように制御する。このようにすると、天井走行車側からすると、バッファが物品の搬入専用のロードポート、処理装置のロードポートが物品の搬出専用のロードポートとなり、ロードポートへ物品を搬入できないとのトラブルを減らすことができる。また処理装置側からすると、処理する予定の物品をバッファに蓄積できる。
【0016】
好ましくは、前記ローカル台車はバッテリ駆動で、かつローカル台車のバッテリを充電するための充電装置が、第2の軌道に沿って、前記ロードポートの直上部からも前記バッファの直上部からも外れた位置に設けられている。このようにすると、ロードポート及びバッファへの物品の搬出入を妨げずに、ローカル台車がバッテリへ充電できる。
【0017】
あるいは好ましくは、ローカル台車は蓄電器からの電力で駆動され、かつローカル台車のバッテリを充電するための充電装置がローカル台車の第2の軌道に沿う各停止位置に設けられている。ローカル台車は停止する毎に充電できるので、バッテリあるいは電気二重層キャパシタ等の蓄電器で駆動でき、かつ蓄電器が充電不足になることが無い。
【0018】
好ましくは、天井走行車は、ロードポートの直上の位置で、光軸が上下方向を向きかつローカル台車の走行経路を通過する光により、ロードポートと光通信を行うための光通信部を備えている。このようにすると、ローカル台車がロードポートの直上に位置すると、天井走行車はロードポートとの光通信ができなくなる。従ってロードポートとの光通信を利用して、天井走行車とロードポート間の物品の移載にローカル台車が干渉する可能性を排除できる。
【0019】
またローカル台車のコントローラにより、天井走行車とローカル台車と処理装置とに対し通信するようにしても良い。例えばローカル台車のコントローラは天井走行車と光もしくは無線で通信し、ローカル台車及び処理装置とは光、無線あるいは有線で通信する。このようにすると、ローカル台車のコントローラによりバッファ及びロードポートへの物品の搬出入を制御できる。
【0020】
好ましい搬送システムでは、前記ロードポート側の干渉物を検出するルックダウンセンサが前記バッファに設けられている。ここにロードポート側は、ロードポートの付近あるいはその近傍を意味する。そしてこのセンサの信号により、コントローラを介してローカル台車と天井走行車とを制御すると、人などのロードポート付近の干渉物と、ローカル台車及び天井走行車の移載装置動作とが干渉することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例の搬送システムの要部側面図
【図2】図1からバッファの高さレベルを変えた変形例の搬送システムの要部側面図
【図3】実施例の搬送システムの要部平面図
【図4】変形例の搬送システムの要部平面図
【図5】ローカル台車の側面図
【図6】ローカル台車がモノレールで走行する変形例の要部平面図
【図7】最適実施例の搬送システムの要部側面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づき、明細書の記載とこの分野での周知技術とを参酌し、当業者の理解に従って定められるべきである。
【実施例】
【0023】
図1〜図7に、実施例の搬送システムとその変形とを示す。図1〜図5において、2は天井走行車で、例えば半導体工場内で工程間搬送と工程内搬送とを行う。4はローカル台車で、個々の処理装置12に対するFOUP等の物品24の供給と搬出とを行い、あるいは隣接した数台の処理装置12に対する物品の供給と搬出とを行う。6は天井走行車の軌道で、走行レールと給電レールとから成る。8はローカル台車4の軌道で、図3などに示す一対のレール9,9から成り、レール9,9間の隙間を物品24が上下に通過できる。ローカル台車4は軌道8の上方を走行するが、軌道8の下方を走行しても良い。処理装置12は1個〜複数個のロードポート14を備え、処理装置12の前面に平行に軌道6,8とバッファ10が延びている。16はクリーンルームなどの天井で、支柱17〜19により、軌道6,8とバッファ10とが支持されている。
【0024】
10はバッファで、物品24を仮置きし、軌道8の下方に、軌道6,8と平行に配置されている。軌道8を走行するローカル台車4は、物品24が仮置きされているバッファ10の上部を、物品24を搬送していない場合は通過できるが、物品24を搬送している場合は通過できない。このためバッファ10に多数の物品が仮置きされている場合、ローカル台車4がバッファ10内で物品24を搬送する際に、搬送に順序が生じる。これに対して図2のように、バッファ10の高さレベルを下げてバッファ11とし、物品24が仮置きされているバッファ11の上部を、物品24を搬送しているローカル台車4が通過できるようにしても良い。例えば軌道8の底部とバッファ11の上部との間に、物品24の高さの2倍以上の間隔を設ける。このようにすると、天井走行車2とローカル台車4はバッファ11上の任意の空位置に物品24を荷下ろしし、任意の位置から物品24を搬出できる。高さレベルが低い点を除いて、バッファ11はバッファ10と同一で、実施例ではバッファ10,11のいずれを用いても良い。
【0025】
天井走行車の軌道6が最も高い位置にあり、その例えば直下にローカル台車の軌道8があり、軌道6,8は平行で上下に重なっている。軌道6,8の直下にこれらと平行にバッファ10,11があり、ロードポート14は軌道6,8の直下にある。実施例のようにバッファ10,11とロードポート14とが平面視で重なるように配置する場合、物品が24が鉛直方向に通過するための隙間30を、ロードポートの直上部で、バッファ10,11に設ける。あるいはまた、ロードポート14と平面視で重なる位置を避けるように、バッファ10,11を設けても良い。ローカル台車の軌道8では、例えばその一端でロードポート14ともバッファ10,11とも平面視で重ならない位置に充電装置20があり、ローカル台車4のバッテリを充電する。なお充電装置20はバッファ10,11の物品24と鉛直方向に重なる位置に設けてもよい。しかしこのようにするとローカル台車4への充電と天井走行車2とバッファ10,11との間での物品の受け渡しとが干渉する。従って、軌道8の端部で、ロードポート14ともバッファ10,11とも鉛直方向に重ならない位置に、充電装置20を設けることが好ましい。
【0026】
22はローカルコントローラで、ローカル台車4を制御し、実施例では充電装置20の付近に設けて、光通信などでローカル台車4と通信する。なおローカルコントローラ22は地上側に設けてもよい。また充電装置20への給電は例えば支柱18に沿って設けた図示しない給電線により行う。
【0027】
天井走行車2は例えば前後に落下防止カバー25,25を備え、昇降台26を図示しないホイストにより昇降させて、鉛直方向に沿って物品24を移載する。天井走行車2にはこれ以外に、物品24を横送りするための横送り機構等を設けてもよい。天井走行車2は光通信部31を備え、ロードポート14の側に設けた光通信部31’との間で、光軸が上下方向を向き、かつローカル台車4の走行経路を通過する光での光通信により物品の受け渡し前のインターロックを行う。ここで天井走行車2とロードポート14との間にローカル台車4が存在すると、光通信部31,31’間の光軸が遮られるように、光通信部31,31’を配置する。これによってローカル台車4を検出するための余分の装置無しで、天井走行車2とロードポート14との間にローカル台車が存在しないことを確認できる。さらに天井走行車2にはローカルコントローラ22との通信手段(不図示)を設けて、バッファ10,11との間で物品を受け渡しする際に、ローカルコントローラ22と通信する。
【0028】
処理装置12はここでは加工装置の他に検査装置も含むものとする。処理装置12の前面にはロードポート14が設けられ、ロードポート14との間で、天井走行車2、ローカル台車4、及び地上を移動する人が物品24を受け渡しする。処理装置12の前面にはロードポート14の他に、ディスプレイ28と操作パネル29などが設けられ、処理装置12の稼働状況を監視し、かつ人手で処理装置12を制御できるようにする。
【0029】
ローカル台車の軌道8は一対のレール9,9から成り、レール9,9間の幅D(図3)は物品24の奥行きよりも大きく、物品24は昇降台26と共にレール9,9間の隙間を鉛直方向に通過できる。さらにバッファ10,11では、ロードポート14,14の上部に隙間30を設け、物品24がバッファ10,11を鉛直方向に通過できるようにする。あるいはまた、ロードポート14の直上部を外すようにバッファ10,11を配置する。これらのため、軌道6,8とロードポート14とが鉛直方向に重なるように配置しても、天井走行車2はロードポート14及びバッファ10,11に対して物品の受け渡しができる。同様にローカル台車4はバッファ10,11及びロードポート14に対し、物品の受け渡しができる。従って平面視で搬送システムが占める床面積を最小にできる。
【0030】
ローカル台車の軌道8の直下のバッファ10等のみではバッファの容量が不足する場合、図4のように、追加のバッファ32を設けて、支柱34で天井などから支持してもよい。この場合、追加のバッファ32は例えばバッファ10等と高さ位置を揃えて配置し、天井走行車2及びローカル台車4にホイストを横送りする機構などを設ける。
【0031】
図5はローカル台車4の構造を示し、40は走行モータで、走行車輪41などによりレール9,9上を走行する。42はホイストで、吊持材43を巻き取りあるいは繰り出すことにより、昇降台27により支持された物品24を昇降させる。45はバッテリ、46はコネクタで、充電装置20によるバッテリ45の充電を行う。47は光通信部で、天井走行車2の光通信部31と同様にして、ロードポート14の光通信部31’との間で、インターロックのための通信を行う。なお光通信部47を設けず、ロードポート14とのインターロックを、ローカルコントローラ22経由で行うようにしてもよい。ローカル台車4は走行距離が短く、物品の横送り等の機構を備えず、走行ルートの選択、他の台車との干渉の回避などの情報処理機構を備えない簡素なものである。例えば1台のローカル台車4を軌道8に沿って走行させ、処理装置12の前面と前面からやや離れた位置との間を、ローカルコントローラ22の制御で往復させる。そしてローカル台車4は、天井走行車の軌道6の直下の軌道8を走行するので、追加の床面積を必要としない。また軌道8でのレール9,9間の隙間Dは、物品24の奥行きよりも大きいので、軌道8を鉛直方向に通過するように物品24を受け渡しできる。
【0032】
図6に変形例の搬送システムを示し、図1〜図5と同じ符号は同じものを表し、図6では天井走行車2に対し、落下防止カバー25を外して示す。この変形例ではローカル台車の軌道8’はモノレールから成る。その断面形状はここではL字状としたが、形状は任意である。ローカル台車4’は例えば3種類のガイドローラ51〜53を備え、これらを軌道8’でガイドすることにより、ローカル台車4’の姿勢を維持する。ガイドローラ53は設けなくても良い。10’は新たなバッファで隙間30を備え、物品24は鉛直方向に隙間30を通過する。図6の変形例では、モノレールでローカル台車4’を支持するため、ローカル台車4’の姿勢が不安定になりやすい。
【0033】
実施例での天井走行車2とローカル台車4の制御を示す。天井走行車2は図示しない上位コントローラにより制御され、ローカルコントローラ20は上位コントローラ及び天井走行車2,ローカル台車4との間で通信する。天井走行車14及びローカル台車4がロードポート14との間で物品24を受け渡しする場合、光通信部31,31’,47を用いてインターロックを行う。ロードポート14の直上にローカル台車4が存在すると、天井走行車2は、光通信ができずインターロックが成立しないことにより、ローカル台車4が他の位置へ移動するまで、物品の受け渡しを遅らせる。バッファ10,11等と天井走行車2との間の物品24の受け渡しは、天井走行車2とローカルコントローラ22との間の通信によりインターロックを成立させる。またローカル台車4は、ローカルコントローラ22からの指示により、バッファ10等と物品24を受け渡しし、受け渡し前のインターロックは行わない。
【0034】
以上の通信により、バッファ10等のどの位置にどの物品が所在するかの在庫データが得られ、ローカルコントローラ22が記憶する。バッファ10等の物品24はローカルコントローラ22が管理する。そしてロードポート14とのインターロックは天井走行車2及びローカル台車との直接通信、あるいはローカルコントローラ22を介しての通信により成立させる。
【0035】
最適実施例
図7に最適実施例を示し、図1〜図6と同じ符号は同じものを表し、特に指摘した点以外は図2の変形例と同様である。60はルックダウンセンサで、レーザ光を照射し、人などの干渉物により反射すると受光素子により検出する。そしてレーザ光の向きを変えて走査し、反射光とレーザ光の位相差を用いることなどにより、ロードポート14付近の鎖線で示す監視範囲内の干渉物を検出する。ルックダウンセンサ60の信号はコントローラ22からローカル台車4と天井走行車2とに伝えられ、干渉物が存在する際に、ロードポート14への荷下ろしと荷積みとが禁止される。なお干渉物の検出用のセンサの種類は任意である。
【0036】
充電装置20は例えば軌道8に沿って、ローカル台車4の停止位置毎に設けられ、ローカル台車4は停止すると、任意の位置でバッテリへの充電を受けることができる。ただしロードポート14の直上部はローカル台車4の待機位置としては好ましくないので、充電装置20をロードポート14の直上部には設けないようにしても良い。またリチウムイオン電池等のバッテリの代わりに、電気二重層キャパシタ等の蓄電器を用いても良い。
【0037】
ローカルコントローラ22は、天井走行車2と光もしくは無線で通信し、ローカル台車4及び処理装置12と光、無線、あるいは有線で通信する。これによって天井走行車2及びローカル台車4がバッファ11及びロードポート14と物品24を移載する際のインターロックを、ローカルコントローラ22を介して成立させることができる。
【0038】
図7の搬送システムは例えば以下のように運用する。
1)天井走行車2は、バッファ11への物品24の荷下ろしと、ロードポート14からの搬出を行う。バッファ11を設けたので、天井走行車2が物品24を荷下ろしできないとのトラブルを減らすことができ、処理装置12はバッファ11に次に処理する物品24をストックできる。
2)バッファ11からロードポート14への搬入は、ローカル台車4が行う。
3)ただしロードポート14が物品24でオーバーフローするおそれがある場合は、ローカル台車4により物品24をバッファ11へ搬出する。
4)特急品は天井走行車2が直接ロードポート14へ荷下ろししても良い。
5)ローカル台車4の待機位置は、ロードポート14の直上部を除く位置で、かつ次にロードポート14へ荷下ろしする物品の上部である。これによって、ロードポート14への搬入を速やかに行うことができる。
6)ローカル台車4は停止中は任意の位置で充電する。これによって小さな容量のバッテリでローカル台車4を駆動することができる。
7)天井走行車2がロードポート14から物品を搬出することと並行して、ローカル台車4がロードポート14へ搬入する物品を荷掴みする。従って次の物品をロードポート14へ速やかに搬入できる。
8)ロードポート14に搬出すべき物品がある場合、ロードポート14への搬入物品を搬送している天井走行車2はロードポート14の上流側でバッファ11へ物品を荷下ろしし、次いで同じ天井走行車2がロードポート14から物品を搬出する。すると効率的に物品を搬送できる。
【0039】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) 処理装置12の前面を塞がずにバッファ10等を設けることができる。
(2) 軌道6,8を鉛直方向に重なるように配置し、軌道8に設けた隙間を物品24が通過するので、天井走行車2もローカル台車4も横送り機構を必要としない。
(3) 軌道8を長くすることにより、処理装置12に対し充分な容量のバッファ10,11を用意できる。
(4) 天井走行車2もローカル台車4も、共にロードポート14とバッファ10,11の双方に対し物品を受け渡しできる。このため、ロードポート14及びバッファ10,11に対する物品24の供給と搬出を効率的に行える。
【0040】
なお全ての処理装置12に対して、バッファ10,ローカル台車4の軌道8及びローカル台車4から成るシステムを設ける必要はなく、物品24の処理数が多い処理装置12に対してのみ、上記のシステムを設けても良い。搬送物品の種類は任意で、例えば半導体の露光用のレチクルを収容したカセット、フラットパネルディスプレイの基板等でも良い。
【符号の説明】
【0041】
2 天井走行車
4 ローカル台車
6 天井走行車の軌道
8 ローカル台車の軌道
9 レール
10,11 バッファ
12 処理装置
14 ロードポート
16 天井
17〜19 支柱
20 充電装置
22 ローカルコントローラ
24 物品
25 落下防止カバー
26,27 昇降台
28 ディスプレイ
29 操作パネル
30 隙間
31 光通信部
32 バッファ
34 支柱
40 走行モータ
41 走行車輪
42,50 ホイスト
43 吊持材
45 バッテリ
46 コネクタ
47 光通信部
51〜53 ガイドローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の処理装置間で物品を搬送する搬送システムであって、
処理装置のロードポートの上部を通過する第1の軌道と、
第1の軌道に沿って走行しかつホイストを備える天井走行車と、
前記第1の軌道の下方で、前記ロードポートの上方を通過し、かつ前記第1の軌道と平行に配置された第2の軌道と、
前記第2の軌道の下方で、前記ロードポートよりも高い位置に、前記ロードポートの直上部を物品が鉛直方向に通過自在に設けられた、物品を置くためのバッファと、
前記バッファ及び前記ロードポートとの間で物品を受け渡しするホイストを備え、かつ第2の軌道に沿って走行するローカル台車、とが設けられている、搬送システム。
【請求項2】
前記第2の軌道は少なくとも一対のレールを備え、さらに前記一対のレール間に前記物品が鉛直方向に通過自在な隙間が設けられていることを特徴とする、請求項1の搬送システム。
【請求項3】
第1の軌道と第2の軌道とバッファとが、平行に平面視で重なるように、処理装置の前面に配置され、
ロードポートの上部でバッファは隙間を備え、バッファの隙間を介して天井走行車もローカル台車もロードポートとの間で物品を受け渡し自在にされていることを特徴とする、請求項1または2の搬送システム。
【請求項4】
物品が置かれているバッファの上部を、物品を搬送しているローカル台車が通過できる高さに、バッファが配置されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの搬送システム。
【請求項5】
物品が置かれているバッファの上部を、物品を搬送していないローカル台車は通過できるが、物品を搬送しているローカル台車が通過できない高さに、バッファが配置されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか搬送システム。
【請求項6】
前記ロードポート側の干渉物を検出するルックダウンセンサが前記バッファに設けられていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかの搬送システム。
【請求項7】
前記天井走行車は前記バッファへの物品の搬入と、前記ロードポートからの物品の搬出とを行い、前記ローカル台車は前記バッファから前記ロードポートへの物品の搬入を行うように、天井走行車とローカル台車を制御する手段をさらに備えていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかの搬送システム。
【請求項8】
前記ローカル台車はバッテリ駆動で、かつローカル台車のバッテリを充電するための充電装置が、第2の軌道に沿って、前記ロードポートの直上部からも前記バッファの直上部からも外れた位置に設けられていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかの搬送システム。
【請求項9】
前記ローカル台車は蓄電器からの電力で駆動され、かつローカル台車のバッテリを充電するための充電装置が前記ローカル台車の第2の軌道に沿う各停止位置に設けられていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかの搬送システム。
【請求項10】
前記天井走行車は、前記ロードポートの直上の位置で、光軸が上下方向を向きかつローカル台車の走行経路を通過する光により、ロードポートと光通信を行うための光通信部を備えていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかの搬送システム。
【請求項11】
さらにローカル台車のコントローラが、前記天井走行車と前記ローカル台車と処理装置とに対し通信自在に設けられていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかの搬送システム。
【請求項12】
ホイストを備える天井走行車と、処理装置のロードポートの上部を通過する天井走行車の軌道とから成る既設の天井走行車システムに後付けする搬送システムであって、
天井走行車の軌道の下方で、処理装置のロードポートの上方を通過し、かつ天井走行車の軌道と平行に配置された第2の軌道と、
前記第2の軌道の下方で、前記ロードポートよりも高い位置に、前記ロードポートの直上部を物品が鉛直方向に通過自在に設けられた、物品を置くためのバッファと、
前記バッファ及び前記ロードポートとの間で物品を受け渡しするホイストを備え、かつ第2の軌道に沿って走行するローカル台車、とを備える搬送システム。
【請求項13】
ホイストを備える天井走行車と処理装置のロードポートとの間で物品を受け渡しする方法であって、
天井走行車は処理装置のロードポートの上部を通過する天井走行車の軌道に沿って走行し、
天井走行車の軌道の下方で、処理装置のロードポートの上方を通過し、かつ天井走行車の軌道と平行に第2の軌道が設けられ、
前記第2の軌道の下方で、前記ロードポートよりも高い位置に、前記ロードポートの直上部を物品が鉛直方向に通過自在に物品を置くためのバッファが設けられ、
前記バッファ及び前記ロードポートとの間で物品を受け渡しするホイストを備え、かつ第2の軌道に沿って走行するローカル台車が設けられ、
天井走行車によりバッファとの間でホイストにより物品を受け渡しするステップと、
ローカル台車により、バッファとロードポートとの間で物品を受け渡しするステップ、とを実行する搬送方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate