説明

搬送トレイとこれを備える搬送装置システム

【課題】コストを上昇させることなく、かつ、組立体および搬送トレイの搬送能率を全体として高く維持できるようにする。
【解決手段】積載対象物が積載される搬送トレイ5は、1つ又は複数の部品からなる組立体を把持するロボットハンドに把持されて搬送される。搬送トレイ5には、搬送トレイの上面5aから上方に突出した被把持部7が設けられる。被把持部7は、ロボットハンドが把持可能な寸法および形状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ロボットのロボットハンドに把持されて搬送される搬送トレイに関する。また、本発明は、1つ又は複数の部品からなる組立体を把持して搬送する搬送ロボットと、積載対象物(例えば部品)が積載される搬送トレイとを備える搬送装置システムに関する。
【背景技術】
【0002】
搬送ロボットは、例えば、複数の部品から組立品を組み立てる場合に、所定の組立工程エリア内に置かれている未完のまたは完成した組立体をロボットハンドで把持して、別の組立エリアに搬送する装置である。
【0003】
複数の部品(特に小型物品)を一度に搬送するために、複数の部品が積載された搬送トレイを搬送ロボットで搬送するのがよい。これにより、搬送ロボットによる搬送作業の効率を高めることができる。
【0004】
この場合、搬送トレイの積載対象とならない組立体(特に中型、大型の組立体)と搬送トレイの両方を、1つの搬送ロボットで搬送することが望ましい。
これを実現するために、組立体把持用のロボットハンドと、トレイ把持用のロボットハンドとを、搬送ロボットのアームに対し互いに交換可能に取り付けることが行われている(例えば、下記特許文献1)。
【0005】
なお、本願の他の先行技術文献として下記特許文献2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3673117号
【特許文献2】特開平7−132477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、組立体把持用のロボットハンドとトレイ把持用のロボットハンドを用いる場合、以下の問題(1)、(2)がある。
(1)トレイ把持用のロボットハンドを余分に用意する必要があるため、その分だけコストが上昇してしまう。
(2)また、組立体把持用のロボットハンドとトレイ把持用のロボットハンドとを互いに交換するのに、時間を要する。従って、組立体および搬送トレイの搬送能率が全体として低下してしまう。
【0008】
本発明は、上記問題(1)、(2)を解決するために創案されたものである。即ち、本発明は、コストを上昇させることなく、かつ、組立体および搬送トレイの搬送能率を全体として高く維持できるようにする搬送トレイおよび搬送装置システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明によると、積載対象物が積載される搬送トレイであって、
前記搬送トレイは、1つ又は複数の部品からなる組立体を把持するロボットハンドに把持されて搬送されるものであり、
前記搬送トレイには、該搬送トレイの上面から上方に突出した被把持部が設けられ、該被把持部は、前記ロボットハンドが把持可能な寸法および形状に形成されている、ことを特徴とする搬送トレイが提供される。
【0010】
また、上記目的を達成するため、本発明によると、前記搬送トレイと、前記ロボットハンドを有する搬送ロボットと、を備える搬送装置システムが提供される。
【0011】
上述の本発明では、前記搬送トレイには、該搬送トレイの上面から上方に突出した被把持部を設け、該被把持部を、前記ロボットハンドが把持可能な寸法および形状に形成することにより、搬送ロボットの同じロボットハンドで、組立体だけでなく、搬送トレイをも把持できる。従って、搬送トレイを把持するロボットハンドを別個に用意する必要がなくなるので、コスト上昇を抑えることができる。
また、搬送ロボットに対し、組立体把持用のロボットハンドを、トレイ把持用のロボットハンドに交換する時間が不要になるので、組立体および搬送トレイの搬送能率を高めることができる。
よって、本発明の上記構成により、コストを上昇させることなく、かつ、組立体および搬送トレイの搬送能率を全体として高く維持できる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によると、前記ロボットハンドは、組立体における水平方向一方側部分および水平方向他方側部分をそれぞれ把持する第1および第2の把持部材を有し、
前記ロボットハンドは、前記第1および第2の把持部材で、前記被把持部を挟持することにより、前記搬送トレイを把持する。
【0013】
このように、ロボットハンドの第1および第2の把持部材が、組立体における水平方向一方側部分および水平方向他方側部分をそれぞれ把持する場合に、前記被把持部を、第1および第2の把持部材で挟持する。この構成により、ロボットハンドは、組立体だけでなく搬送トレイをも把持できる。
【0014】
本発明の別の実施形態によると、前記ロボットハンドは、組立体における水平方向一方側部分および水平方向他方側部分をそれぞれ把持する第1および第2の把持部材を有し、
前記被把持部は、前記搬送トレイの上面から所定の長さだけ上方側に延びる上方突出部と、それぞれ該上方突出部から水平方向一方側および水平方向他方側へ延びる第1および第2の水平突出部と、を有し、前記搬送トレイの上面と第1および第2の水平突出部との間には、それぞれ、鉛直方向に第1および第2の隙間が形成され、
第1および第2の把持部材は、それぞれ、第1および第2の隙間に挿入された状態で、第1および第2の水平突出部を下方から支持し、これにより、前記搬送トレイを把持する。
【0015】
このように、ロボットハンドの第1および第2の把持部材が、組立体における水平方向一方側部分および水平方向他方側部分をそれぞれ把持する場合に、前記搬送トレイの前記被把持部として、所定の長さだけ上方側に延びる上方突出部と、それぞれ上方突出部から水平方向一方側および水平方向他方側へ延びる第1および第2の水平突出部とを設け、第1および第2の把持部材は、それぞれ、第1および第2の水平突出部を下方から支持する。この構成により、ロボットハンドは、組立体だけでなく搬送トレイをも把持できる。
【0016】
本発明の別の実施形態によると、前記被把持部は、前記搬送トレイの上面から所定の長さだけ上方側に延びる上方突出部と、それぞれ該上方突出部から水平方向一方側および水平方向他方側へ延びる第1および第2の水平突出部と、を有し、前記搬送トレイの上面と第1および第2の水平突出部との間には、それぞれ、鉛直方向に第1および第2の隙間が形成され、
前記ロボットハンドは、組立体における水平方向一方側部分および水平方向他方側部分をそれぞれ把持する第1および第2の把持部材を有し、
第1の把持部材は、第1の上方側挟持部と第1の下方側支持部とを有し、第1の下方側支持部は、第1の上方側挟持部材よりも下方側に位置し、第1の上方側挟持部材の下方位置から第2の把持部材側へ水平方向に突出し、
第2の把持部材は、第2の上方側挟持部と第2の下方側支持部とを有し、第2の下方側支持部は、第2の上方側挟持部材よりも下方側に位置し、第2の上方側挟持部材の下方位置から第1の把持部材側へ水平方向に突出し、
第1および第2の下方側支持部が、それぞれ、第1および第2の隙間に挿入された状態で、第1および第2の上方側挟持部は、第1および第2の水平突出部からなる部分を水平方向に挟む。
【0017】
このように、第1および第2の下方側支持部が、それぞれ、第1および第2の水平突出部の真下に位置し、かつ、第1および第2の上方側挟持部は、第1および第2の水平突出部からなる部分を水平方向に挟むので、第1および第2の水平突出部が、第1および第2の把持部材から外れることをより確実に防止できる。
【0018】
好ましくは、第1および第2の把持部材は、それぞれ、前記搬送トレイの前記被把持部または組立体を挟持する挟持面を有し、
前記挟持面は、1対の屈曲面からなり、該1対の屈曲面の一方は、他方から屈曲しており、これにより、1対の屈曲面が向く方向が交差している。
【0019】
このように、各挟持部材の挟持面は、1対の屈曲面からなり、該1対の屈曲面の一方は、他方から屈曲しており、これにより、1対の屈曲面が向く方向が交差しているので、合計4つの屈曲面で把持対象を囲むことができる。従って、組立体、または、搬送トレイの被把持部が、第1および第2の把持部材から外れることを一層確実に防止できる。
【発明の効果】
【0020】
上述した本発明によると、コストを上昇させることなく、かつ、組立体および搬送トレイの搬送能率を全体として高く維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態による搬送ロボットのロボットハンドを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態による搬送トレイを示し、(A)は平面図であり、(B)は(A)のB−B線矢視図である。
【図3】図3は、駆動機構を示し、(A)は正面図であり、(B)は(A)のB−B線矢視図(平面図)である。
【図4】挟持方法で組立体を把持する場合の動作説明図であり、(A)は正面図であり、(B)は(A)のB−B線矢視図(平面図)である。
【図5】挟持方法で搬送トレイの被把持部を把持する場合の動作説明図であり、(A)は正面図であり、(B)は(A)のB−B線矢視図(平面図)である。
【図6】下方支持方法で組立体を把持する場合の動作説明図であり、(A)は正面図であり、(B)は(A)のB−B線矢視図(平面図)であり、(C)は、(A)から動作した状態を示す。
【図7】下方支持方法で搬送トレイの被把持部を把持する場合の動作説明図であり、(A)は正面図であり、(B)は(A)のB−B線矢視図(平面図)であり、(C)は、(A)から動作した状態を示す。
【図8】挟持・下方支持方法で組立体を把持する場合の動作説明図であり、(A)は正面図であり、(B)は(A)のB−B線矢視図(平面図)である。
【図9】挟持・下方支持方法で搬送トレイの被把持部を把持する場合の動作説明図であり、(A)は正面図であり、(B)は(A)のB−B線矢視図(平面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0023】
本発明の実施形態による搬送装置システムは、組立体1を把持して搬送する搬送ロボットと、積載対象物が積載される搬送トレイ5とを備える。なお、組立体1は、1つ又は複数の部品からなる組立途中品または完成品である。なお、前記積載対象物は、部品(例えば、組立体1の構成部品)であってよい。
図1は、本発明の実施形態による搬送ロボットのロボットハンド3を示し、図2は、本発明の実施形態による搬送トレイ5を示す。図2において、(A)は平面図であり、(B)は(A)のB−B線矢視図である。
【0024】
搬送トレイ5には、該搬送トレイ5の上面5aから上方に突出した被把持部7が設けられ、該被把持部7は、ロボットハンド3が把持可能な寸法および形状に形成されている。これにより、ロボットハンド3は、組立体1だけでなく、搬送トレイ5をも把持できるようになっている。
【0025】
次に、ロボットハンド3、および、搬送トレイ5の被把持部7について詳しく説明する。
【0026】
ロボットハンド3は、組立体1における水平方向一方側部分を把持する第1の把持部材9aと、組立体1における水平方向他方側部分を把持する第2の把持部材9bを有する。
第1の把持部材9aは、第1の上方側挟持部11aと第1の下方側支持部13aとを有する。第1の下方側支持部13aは、第1の上方挟持部11aよりも下方側に位置し、第1の上方挟持部11aの下方位置から第2の把持部材9b側へ水平方向に突出している。第1の上方側挟持部11aと第1の下方側支持部13aは、互いに上下に結合している。
第2の把持部材9bは、第2の上方側挟持部11bと第2の下方側支持部13bとを有する。第2の下方側支持部13bは、第2の上方挟持部11bよりも下方側に位置し、第2の上方挟持部11bの下方位置から第1の把持部材9a側へ水平方向に突出している。第2の上方側挟持部11bと第2の下方側支持部13bは、互いに上下に結合している。
第1の上方側挟持部11aと第2の上方側挟持部11bは、後述するように、搬送トレイ5の被把持部7または組立体1を水平方向両側から挟む。第1の下方側支持部13aと第2の下方側支持部13bは、後述するように、搬送トレイ5の被把持部7または組立体1を下方から支持する。
【0027】
搬送トレイ5の被把持部7は、搬送トレイ5の上面5aから所定の長さだけ上方側に延びる上方突出部15と、上方突出部15の上部から水平方向一方側へ延びる第1の水平突出部17aと、上方突出部15の上部から水平方向他方側へ延びる第2の水平突出部17bと、を有する。この構成で、搬送トレイ5の上面5aと第1の水平突出部17aとの間には、鉛直方向に第1の隙間19aが形成され、搬送トレイ5の上面5aと第2の水平突出部17bとの間には、鉛直方向に第2の隙間19bが形成される。
この搬送トレイ5の被把持部7の構成により、第1および第2の下方側支持部13a,13bが、それぞれ、第1および第2の隙間19a,19bに挿入された状態で、第1および第2の上方側挟持部11a,11bは、第1および第2の水平突出部17a,17bからなる部分を挟む。
なお、図2において、符号12は、部品(例えば、ベアリングやネジなどの組立体1の部品)が積載される搬送トレイ上面5a上の窪みである。
【0028】
次に、第1および第2の把持部材9a,9bを動作させるための駆動機構について説明する。駆動機構は、フレーム21、駆動装置(図示せず)を有する。図3は、前記駆動機構を示し、(A)は正面図であり、(B)は(A)のB−B線矢視図(平面図)である。
【0029】
フレーム21は、開閉駆動される。このフレーム21に、第1および第2の把持部材9a,9bが設けられる。即ち、第1および第2の把持部材9a,9bは、フレーム21の閉動作によりそれぞれ搬送トレイ5の被把持部7または組立体1を挟むように動作する。フレーム21は、搬送ロボットのアームの先端部23に取り付けられている。
フレーム21は開閉駆動される1対の開閉フレーム部21a、21bからなる。1対の開閉フレーム部21a、21bの一方21aには、第1の把持部材9aが設けられ、1対の開閉フレーム部21a、21bの他方21bには、第2の把持部材9bが設けられる。
1対の開閉フレーム部21a、21bは、開閉動作をするために、例えば、搬送ロボット(例えば、アームの先端部23)に設けられたガイドレール(図示せず)に沿って往復移動自在となっている。また、開閉フレーム部21a、21bは、往復移動自在に搬送ロボットに設けられた支持部(図示せず)に支持されている。
【0030】
駆動装置は、フレーム21を開閉駆動する。駆動装置は、例えば、空圧または油圧によるシリンダ装置であってよい。この場合、シリンダ装置において、シリンダが1対の開閉フレーム部21a、21bの一方に固定され、シリンダ内部を往復運動するピストンの先端部が、1対の開閉フレーム部21a、21bの他方に固定されてよい。駆動装置は、例えば、搬送ロボットのアーム先端部23に設けられてよい。
また、駆動装置が、電動サーボモータである場合には、例えば、サーボモータにより回転駆動されるピニオンと、このピニオンを間に挟んで該ピニオンに噛み合う1対のラックと、が設けられ、1対のラックの一方が1対の開閉フレーム部21a、21bの一方に固定され、1対のラックの他方が1対の開閉フレーム部21a、21bの他方に固定され、これにより、サーボモータの回転により1対の開閉フレーム21が開閉される。
【0031】
なお、図3には、組立体1として、組立途中の回転機械(例えば、電動モータ)が示されている。符号2は、回転機械の回転軸である。ただし、本発明によると、組立体1は、電動モータ以外の回転機械の構成部品からなるものでも、回転機械以外の機械の構成部品からなるものであってもよい。
図3では、組立体1は、回転軸2の一端部が収容される窪み6aを有する支持具6の上面により支持されている。これにより、組立体1の水平方向一方側部と水平方向他方側部の真下には、それぞれ、支持具6の高さだけ第1および第2の空間8a,8bが形成されている。空間8a,8bには、後述するように、第1および第2の下方側支持部材13a,13bが挿入される。
【0032】
上述した図1〜図3の構成により、組立体1、搬送トレイ5を把持する方法を説明する。この方法には、挟持方法、下方支持方法、挟持・下方支持方法とがある。以下、各方法について説明する。
【0033】
(挟持方法)
図4と図5を用いて、組立体1を把持する場合と、搬送トレイ5の被把持部7を把持する場合とを説明する。図4、図5において、(A)は正面図であり、(B)は(A)のB−B線矢視図(平面図)である。
(1)組立体1を把持する場合
図4の状態よりも、第1および第2の把持部材9a,9bが水平方向(即ち、図4(A)の左右方向)に互いに離間している離間状態から、フレーム21の閉動作により、第1および第2の把持部材9a,9bが互いに向かって水平方向に移動する。これにより、図4(A)のように、第1の下方側支持部13aが組立体1の下方(真下)にある第1の空間8aに位置し、かつ、第2の下方側支持部13bも組立体1の下方(真下)にある第2の空間8bに位置し、さらに、図4(B)のように、第1および第2の上方側挟持部11a,11bが、それぞれ、組立体1における水平方向一方側部と水平方向他方側部に押し付けられることで、組立体1を水平方向両側から挟持した挟持状態となる。その後、前記挟持状態で搬送ロボットが組立体1を搬送している途中で、組立体1が、第1および第2の上方側挟持部11a,11bから下方にずれたとしても、組立体1の真下に第1および第2の下方側支持部13a,13bが位置しているので、第1および第2の下方側支持部13a,13bで組立体1を下方から支持できる。
(2)搬送トレイ5の被把持部7を把持する場合
図5の状態よりも、第1および第2の把持部材9a,9bが水平方向(即ち、図5(A)の左右方向)に互いに離間している離間状態から、フレーム21の閉動作により、第1および第2の把持部材9a,9bが互いに向かって水平方向に移動する。これにより、図5(A)のように、第1の下方側支持部13aが第1の水平突出部17aの下方(真下)にある第1の隙間19aに位置し、かつ、第2の下方側支持部13bが第2の水平突出部17bの下方(真下)にある第2の隙間19bに位置し、さらに、第1および第2の上方側挟持部11a,11bが、それぞれ、第1および第2の水平突出部17a,17bに押し付けられることで、第1および第2の水平突出部17a,17bを水平方向両側から挟持した挟持状態となる。その後、前記挟持状態で搬送ロボットが搬送トレイ5を搬送している途中で、第1および第2の水平突出部17a,17bが、第1および第2の上方側挟持部11a,11bから下方にずれたとしても、第1および第2の水平突出部17a,17bの真下にそれぞれ第1および第2の下方側支持部13a,13bが位置しているので、第1および第2の下方側支持部13a,13bで第1および第2の水平突出部17a,17bを下方から支持できる。
【0034】
(下方支持方法)
図6と図7を用いて、組立体1を把持する場合と、搬送トレイ5の被把持部7を把持する場合とを説明する。図6、図7において、(A)は正面図であり、(B)は(A)のB−B線矢視図(平面図)である。
(1)組立体1を把持する場合
図6(A)の状態よりも、第1および第2の把持部材9a,9bが水平方向(即ち、図6(A)の左右方向)に互いに離間している離間状態から、フレーム21の閉動作により、第1および第2の把持部材9a,9bが互いに向かって水平方向に移動する。これにより、図6(A)、(B)のように、第1の下方側支持部13aが組立体1の下方(真下)にある第1の空間8aに位置し、かつ、第2の下方側支持部13bも組立体1の下方(真下)にある第2の空間8bに位置する。次いで、搬送ロボットの動作によりアーム先端部23が上昇することで、図6(C)のように、第1および第2の下方側支持部13a,13bは、上昇して、組立体1に下方から接触して組立体1を下方から支持することで、組立体1を把持する。
(2)搬送トレイ5の被把持部7を把持する場合
図7(A)の状態よりも、第1および第2の把持部材9a,9bが水平方向(即ち、図7(A)の左右方向)に互いに離間している離間状態から、フレーム21の閉動作により、第1および第2の把持部材9a,9bが互いに向かって水平方向に移動する。これにより、図7(A)、(B)のように、第1の下方側支持部13aが第1の水平突出部17aの下方(真下)にある第1の隙間19aに位置し、かつ、第2の下方側支持部13bが第2の水平突出部17bの下方(真下)にある第2の隙間19b位置する。次いで、搬送ロボットの動作によりアーム先端部23が上昇することで、図7(C)のように、第1および第2の下方側支持部13a,13bは、上昇して、それぞれ、第1および第2の水平突出部17a,17bに接触して第1および第2の水平突出部17a,17bを下方から支持することで、搬送トレイ5の被把持部7を把持する。
【0035】
(挟持・下方支持方法)
図6(C)、図7(C)、図8、図9を用いて、組立体1を把持する場合と、搬送トレイ5の被把持部7を把持する場合とを説明する。図8、図9において、(A)は正面図であり、(B)は(A)のB−B線矢視図(平面図)である。
(1)組立体1を把持する場合
図6(C)の状態から、フレーム21が閉動作することにより、第1および第2の把持部材9a,9bが互いに向かって水平方向に移動する。これにより、図8(A)、(B)のように、第1および第2の上方側挟持部11a,11bが、それぞれ、組立体1における水平方向一方側部と水平方向他方側部に押し付けられることで、組立体1を水平方向両側から挟持した挟持状態となる。従って、図8において、第1および第2の上方側挟持部11a,11bが、組立体1を挟持しているとともに、第1および第2の下方支持部材が組立体1を下方から支持している。
(2)搬送トレイ5の被把持部7を把持する場合
図7(C)の状態から、フレーム21が閉動作することにより、第1および第2の把持部材9a,9bが互いに向かって水平方向に移動する。これにより、図9(A)、(B)のように、第1および第2の上方側挟持部11a,11bが、それぞれ、第1および第2の水平突出部17a,17bに押し付けられることで、第1および第2の水平突出部17a,17bからなる部分を水平方向両側から挟持した挟持状態となる。従って、図9において、第1および第2の上方側挟持部11a,11bが、搬送トレイ5の被把持部7を挟持しているとともに、第1および第2の下方支持部材が搬送トレイ5の被把持部7を下方から支持している。
【0036】
次に、第1および第2の把持部材9a,9bの形状について説明する。
【0037】
第1および第2の把持部材9a,9b(図1、図3〜図9の例では、第1および第2の上方側挟持部11a,11b)は、それぞれ、搬送トレイ5の被把持部7または組立体1を挟持する挟持面25を有する。各挟持面25は、1対の屈曲面27,29からなり、該1対の屈曲面27,29の一方は、他方から屈曲しており、これにより、各挟持面25において、1対の屈曲面27,29が向く方向が交差している。即ち、1対の屈曲面27,29は、その仮想水平面による断面形状が、図3(B)のように、略「く」の字型(または略「く」の字を左右反転させた形状)となっている。この構成により、図4(B)、図5(B)、図6(B)、図7(B)、図8(B)、図9(B)のように、合計4つの屈曲面27,29で把持対象(組立体1または被把持部7)を囲むことができる。従って、図4(B)、図5(B)、図6(B)、図7(B)、図8(B)、図9(B)において、前記把持対象が、第1および第2の把持部材9a,9bが互いに対向する水平方向(これら各図の左右方向)に第1および第2の把持部材9a,9bから外れることを防止するだけでなく、前記把持対象が、第1および第2の把持部材9a,9bが対向する方向と直交する水平方向(これら各図の上下方向)に第1および第2の把持部材9a,9bから外れることをも防止できる。
また、図5(B)、図7(B)、図9(B)において、第1および第2の水平突出部17a,17bにおける挟持面25に対向する面は、各挟持面25の前記形状に整合した形状(即ち、挟持面25と同じ形状)になっている。言い換えると、第1および第2の水平突出部17a,17bにおける挟持面25に対向する面は、その仮想水平面による断面形状が、略「く」の字型(または略「く」の字を左右反転させた形状)となっている。これにより、被把持部7の位置ずれを精度よく防止できる。
【0038】
次に、上述した搬送ロボットの他の構成について説明する。
【0039】
ロボットハンド3は、上述の挟持方法または挟持・下方支持方法を実施する場合に、第1または第2の把持部材9a,9bが、前記把持対象を挟持する力を検知する力センサ(図示せず)を有するのがよい。例えば、力センサは、第1または第2の把持部材9a,9bに組み込まれた圧電センサやひずみゲージ式センサであってよい。また、前記駆動装置が、電動サーボモータである場合には、力センサは、サーボモータのトルクを検知するものであってよい。
このような力センサを設けることで、フレーム21を閉じる時に、力センサにより検知された力に基づいて、制御装置(図示せず)が前記駆動装置を制御することでフレーム21の移動を停止させてよい。これにより、適切な値の挟持力が前記把持対象に作用している状態とすることができる。
【0040】
上述したロボットハンド3は、多関節ロボットなどの搬送ロボットのアーム先端部23に取り付けられて、搬送ロボットにより3次元的に移動させられてよい。例えば、ロボットハンド3は、搬送ロボットにより鉛直方向、第1水平方向、および、第1水平方向とは異なる第2水平方向に移動させられてよい。また、ロボットハンド3は、搬送ロボットにより所定の軸を中心に旋回させられてもよい。なお、多関節ロボットは、例えば特許文献2に記載されている。
【0041】
上述した本発明の実施形態による搬送装置システムによると、以下の効果(A)〜(C)が得られる。
【0042】
(A)搬送トレイ5には、該搬送トレイ5の上面5aから上方に突出した被把持部7を設け、該被把持部7を、ロボットハンド3が把持可能な寸法および形状に形成することにより、搬送ロボットの同じロボットハンド3で、組立体1だけでなく、搬送トレイ5をも把持できる。従って、搬送トレイ5を把持するロボットハンド3を別個に用意する必要がなくなるので、コスト上昇を抑えることができる。
また、搬送ロボットに対し、組立体把持用のロボットハンド3を、トレイ把持用のロボットハンド3に交換する時間が不要になるので、組立体1および搬送トレイ5の搬送能率を高めることができる。
よって、本発明の上記構成により、コストを上昇させることなく、かつ、組立体1および搬送トレイ5の搬送能率を全体として高く維持して、組立体1と搬送トレイ5のいずれも1つのロボットハンド3で把持して搬送できる。
【0043】
(B)第1および第2の下方側支持部13a,13bが、それぞれ、第1および第2の水平突出部17a,17b(または組立体1)の真下に位置し、かつ、第1および第2の上方側挟持部11a,11bは、第1および第2の水平突出部17a,17bからなる部分(または組立体1)を挟むので、第1および第2の水平突出部17a,17b(または組立体1)が、第1および第2の把持部材9a,9bから外れることを確実に防止できる。
【0044】
(C)各把持部材9a,9bの挟持面25は、1対の屈曲面27,29からなり、該1対の屈曲面27,29の一方は、他方から屈曲しており、これにより、1対の屈曲面27,29が向く方向が交差しているので、合計4つの屈曲面27,29で前記把持対象(被把持部7の一部または組立体1の一部)を囲むことができる。従って、前記把持対象が、第1および第2の把持部材9a,9bから外れることを一層確実に防止できる。
【0045】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、以下のように変更してもよい。以下において、以下で述べる内容以外の点は、上述と同じであってよい。
【0046】
例えば、上述の第1および第2の把持部材9a,9bにおいて、第1および第2の下方側支持部13a,13bを省略してもよい。この場合、第1および第2の把持部材9a,9bは、それぞれ、第1および第2の隙間19a,19b(または、第1および第2の空間8a,8b)に挿入されることで、第1および第2の水平突出部17a,17bの下方で上方突出部15を水平方向に挟持してよい。
代替的には、上述の第1および第2の把持部材9a,9bにおいて、第1および第2の下方支持部を省略し、さらに、上述の被把持部7において、第1および第2の水平突出部17a,17bを省略してもよい。この場合、第1および第2の把持部材9a,9bは、上方突出部15を水平方向に挟持してよい。
【符号の説明】
【0047】
1 組立体(回転機械のケーシング)、2 回転機械の回転軸、
3 ロボットハンド、5 搬送トレイ、5a 上面、
6 支持具、6a 窪み、7 被把持部、8a 第1の空間、
8b 第2の空間、9a 第1の把持部材、9b 第2の把持部材、
11a 第1の上方側挟持部、11b 第2の上方側挟持部、
12 搬送トレイ上面の部品積載用くぼみ13a 第1の下方側支持部、
13b 第2の下方側支持部、15 上方突出部、
17a 第1の水平突出部、17b 第2の水平突出部
19a 第1の隙間、19b 第2の隙間、21 フレーム、
21a,21b 開閉フレーム部、
23 搬送ロボットのアームの先端部、25 挟持面、
27,29 屈曲面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積載対象物が積載される搬送トレイであって、
前記搬送トレイは、1つ又は複数の部品からなる組立体を把持するロボットハンドに把持されて搬送されるものであり、
前記搬送トレイには、該搬送トレイの上面から上方に突出した被把持部が設けられ、該被把持部は、前記ロボットハンドが把持可能な寸法および形状に形成されている、ことを特徴とする搬送トレイ。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送トレイと、前記ロボットハンドを有する搬送ロボットと、を備える搬送装置システム。
【請求項3】
前記ロボットハンドは、組立体における水平方向一方側部分および水平方向他方側部分をそれぞれ把持する第1および第2の把持部材を有し、
前記ロボットハンドは、前記第1および第2の把持部材で、前記被把持部を挟持することにより、前記搬送トレイを把持する、ことを特徴とする請求項2に記載の搬送装置システム。
【請求項4】
前記ロボットハンドは、組立体における水平方向一方側部分および水平方向他方側部分をそれぞれ把持する第1および第2の把持部材を有し、
前記被把持部は、前記搬送トレイの上面から所定の長さだけ上方側に延びる上方突出部と、それぞれ該上方突出部から水平方向一方側および水平方向他方側へ延びる第1および第2の水平突出部と、を有し、前記搬送トレイの上面と第1および第2の水平突出部との間には、それぞれ、鉛直方向に第1および第2の隙間が形成され、
第1および第2の把持部材は、それぞれ、第1および第2の隙間に挿入された状態で、第1および第2の水平突出部を下方から支持し、これにより、前記搬送トレイを把持する、ことを特徴とする請求項2に記載の搬送装置システム。
【請求項5】
前記被把持部は、前記搬送トレイの上面から所定の長さだけ上方側に延びる上方突出部と、それぞれ該上方突出部から水平方向一方側および水平方向他方側へ延びる第1および第2の水平突出部と、を有し、前記搬送トレイの上面と第1および第2の水平突出部との間には、それぞれ、鉛直方向に第1および第2の隙間が形成され、
前記ロボットハンドは、組立体における水平方向一方側部分および水平方向他方側部分をそれぞれ把持する第1および第2の把持部材を有し、
第1の把持部材は、第1の上方側挟持部と第1の下方側支持部とを有し、第1の下方側支持部は、第1の上方側挟持部材よりも下方側に位置し、第1の上方側挟持部材の下方位置から第2の把持部材側へ水平方向に突出し、
第2の把持部材は、第2の上方側挟持部と第2の下方側支持部とを有し、第2の下方側支持部は、第2の上方側挟持部材よりも下方側に位置し、第2の上方側挟持部材の下方位置から第1の把持部材側へ水平方向に突出し、
第1および第2の下方側支持部が、それぞれ、第1および第2の隙間に挿入された状態で、第1および第2の上方側挟持部は、第1および第2の水平突出部からなる部分を水平方向に挟む、ことを特徴とする請求項2に記載の搬送装置システム。
【請求項6】
第1および第2の把持部材は、それぞれ、前記搬送トレイの前記被把持部または組立体を挟持する挟持面を有し、
前記挟持面は、1対の屈曲面からなり、該1対の屈曲面の一方は、他方から屈曲しており、これにより、1対の屈曲面が向く方向が交差している、ことを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の搬送装置システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−188435(P2010−188435A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32281(P2009−32281)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】