説明

搬送制御方法、搬送制御装置、およびコンピュータプログラム

【課題】 鉄鋼圧延設備などのヤードを効率的に運用するための鋼材の搬送ルート制御方法において、生産性の低下を起こすことなく、できるだけ次工程における同一ロットとなる鋼材の搬送ルートを揃えるような搬送ルートを算出する技術を提供することを目的とする。
【解決手段】 ヤードのルート条件、置場能力及び搬送機器能力などの制約条件下において、次工程で同一ロットとなる搬送対象群が、ヤードの効率的な運用を行う上で最適となる通過ルートにまとめ、かつ次工程への払出遅れを最小化する搬送ルートを算出し、クレーンなどの搬送機器に指令を出力することにより、ヤードからの払出作業に遅滞を生ずるような特定搬送機器への負荷集中を起こすことなく、できるだけ次工程における同一ロットとなる鋼材の搬送ルートを揃えるような搬送ルートを制御する技術を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄鋼プロセスにおいて、スラブやコイルなどの半製品を次工程へ円滑に供給するために設けられたヤードの操業を、効率的に運用するための鋼材の搬送制御方法とそれを実現するための装置およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼プラントの鉄鋼圧延設備などにおいては、工程間のバファー的な役割を有し、鋼片またはコイルなどの半製品の置場となる、スラブヤードやコイルヤードなどのヤードが設けられており、該ヤードの管理は鉄鋼圧延設備などの効率的な操業を図る上で極めて重要である。
まず、ヤードでの操業のあらましを図1に示すスラブヤードを例に説明する。ヤードでは、上流工程より払い出されたスラブなどの鋼材を、図1に示すように通常、縦横に区画された置場101〜104に、クレーン1A、1B、2A、2Bや高速台車109などの搬送機器により搬送し山積みする。尚、ここでは縦方向の分割区分を"棟"、横方向の分割区分を"列"と称し、置場として"棟"及び"列"を指定することを、番地を指定すると称するものとする。
通常、ヤード操業においては次の二つのことが要求される。
(1)高い山を作り、置場効率を高める。
(2)後工程への払出遅れを無くす、或いは少なくする。
ヤードに鋼材を置く際、例えばスラブならば一つの置場に数枚から十数枚まで積み上げて、置場スペースを有効に活用している。この際、積み上げる枚数が多ければ多いほどヤード全体としての鋼材保有可能数は増えるので、(1)の要請が満たされる。また、ヤードでの放冷を防ぐため、保温台車などが装備されている場合には、保温台車にできるだけ多くの鋼材を入れるため、できるだけ高く積み上げることが必要となる。
次に(2)の要請は、言うまでもないが、(1)のようにいくら置場スペースを効率良く使えたとしても、後工程への払出遅れが発生しては、後工程での損失に繋がることに起因する。例えば後工程が圧延用の加熱炉の場合、払い出し遅れは加熱炉を空炉にすることになるから、燃料費の損失に直結する。更に、後工程での生産効率を落とすことにも繋がる。払出遅れが発生する原因は、払出順に積み直すための配替え作業が多く遅れが生ずる場合、或いは、払出数量が多いにもかかわらず、特定のクレーンに負荷が集中してしまい払出作業が遅れてしまう場合などである。
上記(2)の要請に対し、まず、払出順に積み直すための配替え作業を抑制するために、これまでも多くの検討がなされている。それらを整理すると、(a)クレーンの効率的な運行による手法、(b)山立て(受入、配替による)の工夫による手法、(c)搬出順番(加熱炉装入順)適正化による手法の三つに分けられる。
まず、(a)に関して、特許文献1には、GA(遺伝アルゴリズム)を用いて、受入、払出、配替処理をクレーンへ準最適に配分し、その結果をシミュレータで評価する手法が開示されている。また、特許文献2には、クレーン間の衝突防止のためクレーン間で作業情報を交換し合う技術が開示されている。
(b)に関して、特許文献3には、将来の払出負荷を予測し、時間的に払出負荷を均等化するようルールベースに基づき適正に配替を行い、払出作業を効率化する技術が開示されている。また、特許文献4には、払出順番に上から積まれるように、受入順の工夫や受入及び払出に余裕がある適切なタイミングで配替を行う技術が開示されている。
(c)に関して、特許文献5には、板厚に応じて変動する加熱ピッチにより、搬出遅れによる空炉発生を防止するため、その変動を吸収するよう加熱炉装入順番をルールベース制御により適正化する技術が開示されている。
次に、特定クレーンに負荷が集中することを防止するための発明として特許文献6がある。この発明では、受入前の段階で、将来の払出時の負荷状況を予測し、同時期に払い出される鋼材の搬送が特定クレーンに集中しないよう、置場を分散することで、払出時のクレーン負荷も複数のクレーンに適切に分配し、払出遅れをなくすよう受入置場を決定する方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−274652号公報
【特許文献2】特開2002−114378号公報
【特許文献3】特開昭56−53813号公報
【特許文献4】特開昭56−103028号公報
【特許文献5】特開2005−307347号公報
【特許文献6】特開2008−260630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1−5の発明では、いずれも鋼材の置場が決まった"後"に様々な工夫により払出作業を円滑にするよう対策がなされている。つまりどの置場に置かれるかがありきの前提での発明であることから、鋼材の置場を決定する際に、鋼材が不適切な配置になっていたら、どうしようもないケースが生ずる。例えば、これらの発明を利用し、うまく払出順に鋼材を積めたとしても、ある置場でのある時点における払出要請数が払出搬送能力を超えるほど多過ぎては払い出し遅れが生じてしまう。その点、上記特許文献6に記載の発明では、置場の決定の段階で、払出時点での負荷予測に基づき、置場を決定しているので上記のような問題を回避することができ、(2)の要請は満足できる。しかし、この方法で置場が分散されると、「高い山を作る」という(1)の要求を十分に満たすことが出来ないケースが生ずる。これは、山立てが後工程で同一ロットとなる鋼材(即ち払出予定時刻が近い鋼材)により行われるにもかかわらず、そのような鋼材の置場を分散させると山立てを行う際の鋼材の組み合わせの自由度が低下することにより、結果的に低い山となってしまうからである。
【0005】
更に、後工程へ払い出すロットがまとまって置かれておれば、それらはある時間帯の間に一斉に払出が行われる。したがって、低山状態で鋼材が残ることなく、一定の空きスペースがヤード内にできることから、次に受け入れるロットの置場を回転よく確保できるというメリットもある。逆に、ヤード内の色々の置場に鋼材が点在していると、まとまった空きエリアを確保できず、受入の際に鋼材の置場がなく困ることになる。また、鋼材の置場がまとまっておれば、払出の際それを搬送するクレーン1A、1B、2A、2Bも離散した置場を走行する必要もなく、そのまとまったエリアと払出テーブルZとの往復を繰り返せばよいので効率よく払出を行うことができる。つまり、クレーン1A、1B、2A、2Bの利用効率からみても、対応可能な負荷範囲内であれば、同時期に複数の異なる仕事(受入、配替え、払出)を担うよりも、いずれかの仕事に集中した方が好ましいと考えられる。
【0006】
つまり、「高い山を作る」という(1)の要求に対しては、後工程で同一ロットとなる鋼材を数多く同一の置場に置くことで有利となるが、これまではこれを実現する有効な手段がなかった。また、一方で、後工程で同一ロットとなる鋼材を同一の置場に集中させ過ぎると、払出の際の負荷集中が起こりやすくなり、払出遅れに繋がりかねない点に対する配慮も欠かすことは出来ない。
従って、本発明では、高い山を作り、鋼材の置場のスペース効率を高めるために、後工程で同一ロットとなる鋼材を同一の置場に集めながらも、払出の際の負荷集中による鋼材の払出遅れを防止しできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
まず、(1)の「高い山を作る(置場スペース効率をアップする)」ため、これまでの技術では、鋼材の置場が決まった前提で、どのように作るかが検討されており、それぞれの鋼材をどのような置場配分にするかまでは考えが及んでいなかった。これは搬送計画の作成段階で、山立て制約を考慮して配替え作業までをモデリングすることが困難であることに起因していた。これに対して、本願発明者らは、
・「ロット毎に主搬送ルートを決定し」
・「主搬送ルートへの集中度を高める」
ことにより高い山が作成可能であることを見出した。ここで、各ロットに属する鋼材が通過する搬送ルートのうちで、最も多くの鋼材が通過する搬送ルートを、該ロットに対する主搬送ルートと呼ぶものとする。従って、ロット毎に搬送ルートを揃えること(主搬送ルートへの集中度を高める)を直接的な計画作成の目標とすることで、実質的には置場スペースの効率アップを実現させることが可能である。
(2)の「払出遅れを無くす、或いは少なくする」については、それを直接評価の対象とすれば、計画作成に反映させることが可能である。
その結果、搬送ルートの過度のまとまりを抑え、置場スペースの効率と払出遅れの抑制とのバランスの取れた最適な搬送計画が実現可能となる。
即ち、本発明の搬送制御方法は、複数の置場と複数の搬送機器とを持ち、鉄鋼プロセスにおける半製品である鋼材を工程間で保管するヤードにおいて、前記鋼材毎に、前工程から該鋼材を受け入れる受入口から該鋼材の置場まで、及び該置場から次工程への払出口までの搬送ルートを決定し、予め指定された搬送制御開始時刻から搬送制御終了時刻までの間の各時刻における各搬送機器の搬送作業を指示する搬送制御方法であって、搬送制御開始時刻に既にヤードに存在する鋼材の置場位置情報及び払出予定時刻情報と、計画策定開始時刻以降にヤードに到着予定の鋼材の受入予定時刻情報及び払出予定時刻情報と、搬送対象の全鋼材についての次工程における処理のロットの区分を示す情報であるロット区分情報と、を少なくとも含む鋼材情報を取り込む鋼材情報取込ステップと、前記ロット毎に、該ロットに属する鋼材が通過する搬送ルートのうちで最も多くの鋼材が通過する搬送ルートを主搬送ルートと呼ぶときに、該ロットに属する鋼材が通過可能な各搬送ルートが、主搬送ルートであるか否かを表す1-0変数と、各時刻における各置場での鋼材の配置数を表す整数変数と、各時刻における各搬送機器による鋼材の搬送数を表す整数変数との少なくともいずれか1つを決定変数とする、線形方程式及び線形不等式のうち少なくともいずれか一方により表現した、ヤードの置場能力及び搬送機器の搬送能力についての制約式であるヤード能力条件制約式を設定するヤード能力条件制約式設定ステップと、前記搬送制御開始時刻における鋼材の置場位置情報に基づく置場の初期条件と、前記ヤードに存在する鋼材の払出予定時刻情報と、前記ヤードに到着予定の鋼材の受入及び払出予定時刻情報との全部または一部の情報に基づく置場の境界条件に従って、境界条件制約式を設定する境界条件制約式設定ステップと、前記決定変数の全てまたは一部の変数を線形和式又は二次形式により表現した関数であって、次工程から指定された払出時刻からの払出遅延が最小のときに値が最小値をとる関数と、前記ロット毎に、該ロットに含まれる全ての鋼材に対する、前記主搬送ルートを通過する鋼材の数の比率である主搬送ルート集中度が最大の時に最小値を取る関数とのいずれか一方の関数である、或いは該2つの関数の重みづけ和である評価関数を設定する評価関数設定ステップと、前記ヤード能力条件制約式及び前記境界条件制約式の下、前記評価関数を最小化する前記決定変数の値を最適決定変数として算出する最適化計算を行う最適解算出ステップと、前記最適化計算により算出された最適決定変数に基づいて、前記各ロットについて、前記主搬送ルートであるか否かを表す1-0変数と、前記各置場毎かつ前記各時刻毎の鋼材の配置数と、前記各搬送ルート毎かつ各時刻毎の鋼材の搬送数と、を算出する搬送作業算出ステップと、前記搬送作業として、前記搬送作業算出ステップで算出された各値を前記各搬送機器に指示する搬送作業指示ステップと、を少なくとも含むことを特徴とする。
また、前記搬送制御方法において、前記境界条件制約式は、前記搬送対象とする各鋼材の、払出予定時刻からの払出遅延を禁止する制約条件式を含み、前記評価関数は、前記ロット毎の前記主搬送ルート集中度が最大の時に最小値を取る関数であってもよい。
また、前記搬送制御方法において、前記評価関数は、前記搬送対象とする各鋼材の、払出予定時刻からの払出遅延が最小のときに値が最小値をとる関数と、前記ロット毎の前記主搬送ルート集中度が最大の時に最小値を取る関数との重みづけ和であってもよい。
本発明の搬送制御装置は、複数の置場と複数の搬送機器とを持ち、鉄鋼プロセスにおける半製品である鋼材を工程間で保管するヤードにおいて、前記鋼材毎に、前工程から該鋼材を受け入れる受入口から該鋼材の置場まで、及び該置場から次工程への払出口までの搬送ルートを決定し、予め指定された搬送制御開始時刻から搬送制御終了時刻までの間の各時刻における各搬送機器の搬送作業を指示する搬送制御装置であって、搬送制御開始時刻に既にヤードに存在する鋼材の置場位置情報及び払出予定時刻情報と、計画策定開始時刻以降にヤードに到着予定の鋼材の受入予定時刻情報及び払出予定時刻情報と、搬送対象の全鋼材についての次工程における処理のロットの区分を示す情報であるロット区分情報と、を少なくとも含む鋼材情報を取り込む鋼材情報取込手段と、前記ロット毎に、該ロットに属する鋼材が通過する搬送ルートのうちで最も多くの鋼材が通過する搬送ルートを主搬送ルートと呼ぶときに、該ロットに属する鋼材が通過可能な各搬送ルートが、主搬送ルートであるか否かを表す1-0変数と、各時刻における各置場での鋼材の配置数を表す整数変数と、各時刻における各搬送機器による鋼材の搬送数を表す整数変数との少なくともいずれか1つを決定変数とする、線形方程式及び線形不等式のうち少なくともいずれか一方により表現した、ヤードの置場能力及び搬送機器の搬送能力についての制約式であるヤード能力条件制約式を設定するヤード能力条件制約式設定手段と、前記搬送制御開始時刻における鋼材の置場位置情報に基づく置場の初期条件と、前記ヤードに存在する鋼材の払出予定時刻情報と、前記ヤードに到着予定の鋼材の受入及び払出予定時刻情報との全部または一部の情報に基づく置場の境界条件に従って、境界条件制約式を設定する境界条件制約式設定手段と、前記決定変数の全てまたは一部の変数を線形和式又は二次形式により表現した関数であって、次工程から指定された払出時刻からの払出遅延が最小のときに値が最小値をとる関数と、前記ロット毎に、該ロットに含まれる全ての鋼材に対する、前記主搬送ルートを通過する鋼材の数の比率である主搬送ルート集中度が最大の時に最小値を取る関数とのいずれか一方の関数である、或いは該2つの関数の重みづけ和である評価関数を設定する評価関数設定手段と、前記ヤード能力条件制約式及び前記境界条件制約式の下、前記評価関数を最小化する前記決定変数の値を最適決定変数として算出する最適化計算を行う最適解算出手段と、前記最適化計算により算出された最適決定変数に基づいて、前記各ロットについて、前記主搬送ルートであるか否かを表す1-0変数と、前記各置場毎かつ前記各時刻毎の鋼材の配置数と、前記各搬送ルート毎かつ各時刻毎の鋼材の搬送数と、を算出する搬送作業算出手段と、前記搬送作業として、前記搬送作業算出ステップで算出された各値を前記各搬送機器に指示する搬送作業指示手段と、を少なくとも備えることを特徴とする。
また、前記搬送制御装置において、前記境界条件制約式は、前記搬送対象とする各鋼材の、払出予定時刻からの払出遅延を禁止する制約条件式を含み、前記評価関数は、前記ロット毎の前記主搬送ルート集中度が最大の時に最小値を取る関数であってもよい。
また、前記搬送制御装置において、前記評価関数は、前記搬送対象とする各鋼材の、払出予定時刻からの払出遅延が最小のときに値が最小値をとる関数と、前記ロット毎の前記主搬送ルート集中度が最大の時に最小値を取る関数との重みづけ和であってもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータに、前記搬送制御方法の各ステップを実行させるためのコンピュータプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上記技術手段より成るので、鋼材ヤードなどのヤードを効率的に運用するための搬送制御方法において、ヤードの運行状態を数式モデル化し、ヤードからの払出予定時刻に対する遅滞時間の最小化指標と、後工程で同一ロットとなる鋼材の搬送ルートを揃えた割合を最大化する指標とのバランスを任意に調整できるよう定式化した最適化問題を解いて鋼材ルートを算出することにより、ヤードからの払出作業に遅滞を生ずることなく、次工程における同一ロットとなる鋼材の搬送ルートを揃えるような搬送制御技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】鉄鋼圧延設備などでのスラブヤードを説明する図である。
【図2】搬送ルート制御装置の構成を示す図である。
【図3】ヤード内の搬送可能ルートモデルをペトリネットで表した図である。
【図4】各時刻及び各置場数量または搬送数量で識別された状態変数とペトリネットモデルとの関係を表した図である。
【図5】各時刻、各置場数量または搬送数量、及び各ロットで識別された状態変数とペトリネットモデルとの関係を表した図である。
【図6】搬送ルート制御方法のステップを示す図である。
【図7】実施例における搬送制御を実施する際の条件を示す図である。
【図8】最適計算結果の第1の例を示す図である。
【図9】最適計算結果の第2の例を示す図である。
【図10】最適計算結果の第3の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態の鉄鋼プロセスなどにおける搬送制御装置の構成を図2に示す。また、その搬送制御装置を用いて実行する搬送制御方法の各ステップを図6に示す。搬送制御装置のハードウェアは、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、通信インターフェース、及びユーザインタフェース等を備えたコンピュータシステム(例えばパーソナルコンピュータ)を用いることにより実現できる。
まず、ビジネスコンピュータなどの鋼材全般に関するデータベースである鋼材管理系計算機1より、"搬送制御開始時刻"と、"搬送制御終了時刻"と、評価関数のバランスを取るための"調整係数"(後述の「評価関数設定手段6」にて説明)と、ヤードの搬送作業対象となる鋼材についての、ヤード能力条件制約式、評価関数、および境界条件制約式(初期条件を含む)の設定に必要となる、"受入予定時刻"、"払出予定時刻(未定の場合もあり)"、"鋼材情報(鋼材種別,次工程でのロット区分情報,熱冷片区分,必要な手入れ区分,寸法)"、および搬送制御開始時刻における"各置場の鋼材配置数"と、を、搬送制御装置2の鋼材情報取込手段3にて受け取る(鋼材情報取込ステップS1)。そして、該鋼材情報取込手段3が、以下に説明するヤード能力条件制約式設定手段4、境界条件制約式設定手段5、及び評価関数設定手段6の各手段に対し、取り込んだ情報に係るデータを出力する。
このように、鋼材情報取込手段3は、搬送制御開始時刻に既にヤードに存在する鋼材の置場位置情報及び払出予定時刻情報と、計画策定開始時刻以降にヤードに到着予定の鋼材の受入予定時刻情報及び払出予定時刻情報と、搬送対象の全鋼材についての次工程における処理のロットの区分を示す情報であるロット区分情報と、を少なくとも取り込むようにする。
鋼材情報取込手段3は、例えば、搬送制御装置2の通信インターフェースが鋼材管理系計算機1と通信すると共に、搬送制御装置2のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
【0011】
(1)ヤード能力条件制約式設定手段4(ヤード能力条件制約式設定ステップS2):鋼材などの搬送対象を次工程で同一ロットとなるまとまり毎に分類し、そのロット毎にヤード内の「搬送可能ルートモデル」を予め作成しておく。その際のルートモデルは例えば図3のようなペトリネットにより表現する。
これは、図1に示すヤードの搬送ルートをペトリネットで表現したものである。以下に、このモデルの作成方法を説明する。
まず図1のヤードにおける搬送ルートは次の4ルートある。まず、連鋳機110から搬出されたスラブがパイラー111を経由して受入テーブルXに搬送され、受入テーブルXの1棟側からクレーン1Aで1棟1列の置場(以下、i棟j列の置場を「置場(ij)」と表
記する。この場合は「置場(11)101」)に搬送する搬送ルート1がある。次に、受入テーブルXの2棟側からクレーン2Aで熱片置場(21)103に搬送する搬送ルート2がある。それから受入テーブルXから高速台車109を経由して受入テーブルYに搬送し、受入テーブルYの1棟側からクレーン1Bで置場(12)102に搬送する搬送ルート3がある。さらに、受入テーブルXから高速台車109を経由して受入テーブルYに搬送し、受入テーブルYの2棟側からクレーン2Bで熱片置場(22)104に搬送する搬送ルート4がある。このように、搬送ルートと置場とが1対1に対応しており、搬送ルートにより置場が決まることがわかる。また、払出の際は、1棟の場合はクレーン1Bにより、2棟の場合はクレーン2Bにより払出テーブルZへ搬出される。
【0012】
これらの搬送ルートをペトリネットモデルで表現したものが図3である。まず、パイラー111でのパイリング処理を「トランジション(以下Tr.で表す)パイリング完了20」の発火により表し、パイリングが完了すると受入テーブルXに流されるが、これを「プレース(以下Pl.で表す)受入テーブルX(21)」にトークンが移動することで表す。搬送ルート1のクレーン1Aによる搬送は、「Tr.1棟クレーン1A受入(22)」により表され、置場(11)101に置かれたことを、「Pl.置場11(25)」にトークンがあることで表現する。搬送ルート2も同様に、クレーン2Aによる搬送を、「Tr.2棟クレーン2A受入(23)」により表し、熱片置場(21)103を「Pl.置場21(26)」により表す。
また、高速台車109を経由する搬送ルート3、4は、高速台車109での移送を「Tr.高速台車移送(24)」により表し、受入テーブルYを「Pl.受入テーブルY(27)」により表す。
【0013】
そして、搬送ルート3のクレーン1Bによる搬送を、「Tr.1棟クレーン1B受入(28)」により表し、置場(12)102を「Pl.置場12(30)」により表す。搬送ルート4も同様に、クレーン2Bによる搬送を、「Tr.2棟クレーン2B受入(29)」により表し、熱片置場(22)104を「Pl.置場22(31)」により表す。
払出についても、1棟の置場(11)101からのクレーン1Bによる払出は、「Tr.1棟クレーン1B払出(32)」により表され、置場(12)102からのクレーン1Bによる払出は、「Tr.1棟クレーン1B払出(33)」により表される。2棟の払出も1棟の払出と同様に、熱片置場(21)103からのクレーン2Bによる払出は、「Tr.2棟クレーン2B払出(34)」により表され、熱片置場(22)104からのクレーン2Bによる払出は、「Tr.2棟クレーン2B払出(35)」により表す。
この様な、「搬送可能ルートモデル」を用いて、ヤード能力条件制約式設定手段4が以下に説明するように、ヤード能力条件制約式を設定する。
【0014】
上記のように「搬送可能ルートモデル」では、置場101〜104やテーブルX、Y、Zをプレースとし、該置場101〜104に配置される鋼材をトークンで表す。また、置場101〜104間を搬送するクレーン1A、2A、1B、2Bや台車(例えば高速台車109)などの搬送機器10をトランジションで表現し、搬送数をトランジションの発火数にて表現する。そして、これらの置場の配置数や置場間の搬送数を決定変数とし、例えば図4のように置場i1の時刻kにおける配置数をx[i1][k]、置場i2の時刻kにおける配置数をx[i2][k]と定義し、時刻kにおける搬送機器jの搬送量をu[j][k]と定義すると、時刻k+1における置場i1、i2の配置数x[i1][k+1]、x[i2][k+1]はそれぞれ(式1-1)、(式1-2)のような差分方程式で表すことができる。つまり、このようにペトリネットモデルにより搬送ルートを表現すると、ヤード内の各置場における配置数の時間推移はここで示したように差分方程式で表現することができる。なお、ここでの最適化を行う期間は、予め設定され、例えば対象となる鋼材の受入開始予定日時を立案開始日時とし、払出完了予定日時を立案終了日時として定めるものとする。
X[i1][k+1]=X[i1][k]-u[j][k] ・・・(式1-1)
X[i2][k+1]=X[i2][k]+u[j][k] ・・・(式1-2)
【0015】
上記の変数において、ロットを区別するには決定変数に対しロット種別cの次元を増やしx[i][k][c]、u[j][k][c]のようにする。この表記法を用いると、先の図4が図5のようになり、(式1-1)、(式1-2)はそれぞれ(式2-1)、(式2-2)のようになる。
X[ia][k+1][c]=X[ia][k][c]-u[j][k][c] ・・・(式2-1)
X[i2][k+1][c]=X[i2][k][c]+u[j][k][c] ・・・(式2-2)
この表記法を用いて先ほどの図3のモデルによる各置場の配置数及び置場間の搬送数の時系列変化を表すと(式3-1)のような連立方程式で表すことができる。また、(式3-2)の連立不等式は、置場(プレース)に鋼材(トークン)が置かれていなければ、搬送(発火)できないという制約を表すために必要となる。
【0016】
【数1】

【0017】
なお、(式3-1)及び(式3-2)は、ロット種別c毎に作成される。その際、ヤード能力条件制約式設定手段4は前記鋼材情報取込手段3から前記鋼材情報(鋼材種別,次工程でのロット区分情報,熱冷片区分,必要な手入れ区分,寸法)を入手し、その鋼材情報に基づき、当該ロット種別cにおいては通過できないルートについては、(式3-1)及び(式3-2)から削除するか、通過不可能なルートに対し通過できない制約を設ける。これは、例えば当該ロット種別cのサイズ制約から扱うことのできるクレーンが限定されており、例えば図3の例で、1棟のクレーン1A、1Bでしか扱えない場合には、搬送ルート2及び搬送ルート4に対応する方程式を(式3-1)及び(式3-2)から削除するか、或いは搬送ルート2及び搬送ルート4の通過を禁止する制約を設けることである。
また、ヤード能力条件制約式作成手段4では、各置場での置場容量や各搬送機器の搬送能力などの限界を表す制約式も合わせて作成する。これらは例えば、図3における置場iの置場容量が最大配置可能数Ciで制約されているとすれば(式4-1)のように、また搬送機器jの搬送能力が単位時間内の最大搬送可能数がTjで制約されておれば(式4-2)のような線形不等式で表すことができる。ここでScはロット種別cの区分数(ロット種別数)を表し、鋼材情報取込手段3により取り込んだ鋼材情報のうちの、次工程でのロット区分情報により決定される。
【0018】
【数2】

【0019】
更に、ヤード能力条件制約式設定手段4では、本実施形態の特長となる搬送制御を行うため、任意のロット種別cに対し、そのロット種別cに属する鋼材が通過可能な各搬送ルートrが主搬送ルートであるか否かを表す1,0決定変数δ[c][r]を定義する。ここで、主搬送ルートとは、各ロットに属する鋼材が通過する搬送ルートのうちで、最も多くの鋼材が通過する搬送ルートをいう。δ[c][r]は、ロット種別cの通過可能な各搬送ルートr(r=1・・・Rn)の内、主搬送ルートrに対してのみ「1」(δ[c][r]=1)となり、それ以外の搬送ルートに対しては「0」(δ[c][r]=0)となる。この制約は、(式5-1)の等式制約により表す。そして、このδ[c][r]を用いて、搬送ルートをある適切なルートに揃えるには、ロット種別cの通過可能な各搬送ルートに対し、それが主搬送ルートとなった際、それ以外のルートは非主搬送ルートとなることから、非主搬送ルートを通過する鋼材数に対しペナルティを課すという方法を採る。ここで非主搬送ルート通過数は、(式5-2)の等式制約を使い、nP[c][r]により表現することが出来るので、これを評価関数の項に加えれば、非主搬送ルート通過数を減らすことが出来る。(式5-2)において、Ncはロット種別cに属する鋼材数であり、u[jr][k][c]は、ロット種別cに属する鋼材が時刻kに搬送ルートrに対応するトランジションを通過(発火)する量である。
また、必要に応じて、その主搬送ルートを通過する鋼材数(即ち割合)が設定値以上となるよう制約する関数の設定も可能である。これは(式5-3)により表現される。ちなみに、ここでは主搬送ルートを通過"しない"鋼材数に対応するnP[c][r]がNT以下となるよう制約する関数としている(即ち(Nc-NT)以上の鋼材が主搬送ルートを通過するよう制約されている)。
【0020】
【数3】

【0021】
図3の例で、制約式の作り方を具体的に示す。図3の例では、各ロット種別cが、先に示した4つの搬送ルートとも選択可能とすると、(式5-1)に対応する制約式は(式6-1)のように表すことができる。また、各ロット種別cに属する鋼材数をNc(鋼材情報取込手段3により取り込んだ鋼材情報の内の、次工程でのロット区分情報により決定される)とすると、非主搬送ルート通過数nP[c][r]を表すための(式5-2)で、あるロット種別cの主搬送ルートがrであった場合、δ[c][r]=1となることから、(式5-2)の左辺第二項をロット種別cに属する鋼材の内、主搬送ルートrを通過する鋼材の個数を表す変数とすれば、(式5-2)の左辺全体で、非主搬送ルート通過数を表すことになる。
一方、(式5-2)の右辺は、(式5-2)の左辺が正の場合、非主搬送ルート通過数は正なので、nP[c][r]で表されるものとする(この場合、本問題がnp[c][r]の最小化問題であるからnM[c][r]は「0」となる)。また、δ[c][r]=0の場合(ロット種別cの主搬送ルートがrでない場合)、(式5-2)の右辺は、一般に(式5-2)の左辺第二項は正なので負となり、−nM[c][r]で表されるものとする(この場合、nM[c][r]は正、nP[c][r]は「0」となる)。つまり、(式5-2)の左辺第二項として主搬送ルートrの通過ルートに対応するトランジションを選択することがポイントとなる。図3では、次のように表現できる。まず、本制約式は、任意のロット種別c及び任意の搬送ルートr(r=1,2,3,4)に対し設定される。搬送ルート1に対しては、搬送ルート1の通過は、1棟のクレーン1Aによる受入処理の有無により判定できる。これはu[1][k][c]の発火の有無に対応することから、(式6-2-1)により表現される。同様に、搬送ルート2の通過は、2棟のクレーン2Aによる受入処理の有無により判定できるので、(式6-2-2)により表現される。搬送ルート3の通過は、1棟のクレーン2Aによる受入処理の有無により判定できるので、(式6-2-3)により表現される。搬送ルート4の通過は、2棟のクレーン2Bによる受入処理の有無により判定できるので、(式6-2-4)により表現される。
【0022】
【数4】

【0023】
ヤード能力条件制約式設定手段4は、例えば、搬送制御装置2のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
【0024】
(2)境界条件制約式設定手段5(境界条件制約式設定ステップS3):前記ヤード内の搬送可能ルートモデルにおいて境界にあたる鋼材を受け入れる置場(以降、受入置場)及び払い出す置場(以降、払出置場)における、受入時期及び払出時期を守る必要となる。また、受入数量及び払出数量を所与としている場合には、受入置場あるいは払出置場の配置数に対し、予定された鋼材種の受入数量あるいは払出数量が当該置場に揃うことが必要となる。
従って、境界条件制約式設定手段5では、以下のように上記の制約を満たす境界条件を設定する。まず受入時の境界条件は、例えば図3の例では、パイリング完了予定時刻を前述の鋼材情報取込手段3より取り込んだ受入予定時刻とすれば、受入予定時刻に、パイリング完了に対応するトランジションu[0][k][c]を強制発火させる。これは(式7-1)により表すことができる。
u[0][kx][c]=I[kx][c] ・・・(式7-1)
【0025】
次に、払出時の境界条件は、受入時と同様に、前記鋼材情報取込手段3より取り込んだ払出予定時刻に強制的に払い出すよう"制約式"として設定することもできる。これは、次工程の搬出に対応するトランジションu[10][k][c]を受入時と同様強制発火させることにより制約化できる。これは(式7-2)により表すことができる。ただし、払い出し遅れを許容し他の条件とのバランスの上で払出時刻を決めたい場合には、後述する評価関数作成手段6にて、払出予定時刻より遅れるほどペナルティをかけるような"評価関数"として設定する方法も考えられる。後者の方法は評価関数設定手段6の説明箇所で記述する。
u[10][ky][c]=O[ky][c] ・・・(式7-2)
また、境界条件制約式設定手段5では、指定された搬送制御開始時刻(この時刻を初期時刻k=0とする)における各置場iにおける配置数を初期条件として設定する。例えば初期時刻における置場iにおけるロット種別cの既に配置された数をmとすると、この初期条件は、x[i][0][c]=mとする制約式で表すことができる。この初期時刻における既配置数の情報も前記鋼材情報取込手段3より取り込んだ搬送制御開始時刻における各置場の鋼材配置数より入手されたものである。
境界条件制約式設定手段5は、例えば、搬送制御装置2のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
【0026】
(3)評価関数設定手段6(評価関数設定ステップS4):評価関数設定手段6では、「搬送ルートを揃えること(つまり、主搬送ルートに鋼材を集中させること)」と「払出遅れをなくすこと」とのバランスをとる評価(目的)関数Jを以下のように設定する。まず、搬送ルートを揃えるために、先のヤード能力条件制約式設定手段4で示した主搬送ルート非通過数np[c][r]を評価する。これは(式8)のように設定できる。
【0027】
【数5】

【0028】
また、払出遅れをなくすため、先の境界条件制約設定手段5で記したように、鋼材情報取込手段3より取り込んだ払出予定時刻情報を基に、その払出予定時刻より遅れた時間にペナルティを課すような関数を設定する。そのため、時系列的に見た払出予定数を目標払出時系列関数YC[k]として定義する。例えばロット種別cの払出予定が時刻k=5,7,10においてそれぞれ、2,3,1枚の鋼材を払い出す予定の場合、目標払出時系列関数YC[k]は(式9-1)により表すことができる。これに対しロット種別cの払出数量は払出テーブルZに対応するプレースx[6][k][c]であるから、目標払出時系列関数YC[k]から不足する数が、その時刻における払出遅れ数となるので、これにペナルティを課す評価関数を導入する。この際、目標払出時系列関数YC[k]からの不足分だけが問題となるので、(YC[k]-x[6][k][c])のプラス成分のみを評価するため(式9-2)の制約式を設定する。ここで、ov_Yc[k]は左辺が正の場合、un_Yc[k]は左辺が負の場合における右辺の絶対値に対応する変数であり、プラス成分に対応するov_YC[k]に対し(式9-3)のようにペナルティを課す。これにより、もし払出遅れがある場合にはその数量に対し積分的にペナルティが課されることになるので、払い出し遅れ数量、時間ともに低減することができる。なお、必要な時間より早めに払い出されることを防ぎたい場合には、(式9-3)の右辺第二項を加える。P1は目標値未達数ov_YC[k]と目標値過達数un_Yc[k]とのバランス調整パラメータである。
【0029】
【数6】

【0030】
そして、「搬送ルートを揃えること」を評価する(式8)と「払出遅れをなくすこと」を評価する(式9-3)のバランスをとるため調整係数Padj(鋼材情報取込手段3から入力)を用いて、最終的には(式10)の評価関数を設定する(ここでは、目標値過達数un_Yc[k]を評価する項は省略している))。
評価関数設定手段6は、例えば、搬送制御装置2のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
【0031】
【数7】

【0032】
(4)最適解算出手段7(最適解算出ステップS5):ここまでの処理により、最適化計算を行う準備が整ったこととなるので、前記ヤード能力条件制約式設定手段4及び境界条件制約式設定手段5にて設定された制約式の条件下において前記評価関数設定手段6にて設定した評価関数を最小化する決定変数である置場配置数xopt[i][k][c]、搬送量(処理量)uopt[j][k][c]、及び任意のロット種別cに対し、そのロット種別cに属する鋼材が通過可能な各搬送ルートrが最適なルートであるか否かを表す1,0決定変数の最適値δopt[c][r] (これらを以降最適解と称する)を最適解算出手段7にて算出する。ここで、最適解算出にあたっては、例えば混合整数計画法を用いる。
最適解算出手段7は、例えば、搬送制御装置2のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
【0033】
(5)搬送作業算出手段8(搬送作業算出ステップS6):最適解として求められた最適搬送量uopt[j][k][c]は、各時刻kにおいて搬送機器jにより鋼材のロット種別cを搬送すべき数量を表していることから、搬送機器jへの搬送指示に対応している。従ってこの最適解に基づき、搬送機器毎の各時刻における搬送量を算出する。
搬送作業算出手段8は、例えば、搬送制御装置2のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すること等により実現できる。
(6)搬送作業指示手段9(搬送作業指示ステップS7):前記搬送作業算出手段8(搬送作業算出ステップS5)にて算出された搬送量を適宜、搬送機器(図1の例ではクレーンや高速台車など)へ出力しヤード内の物流を制御する。
搬送作業指示手段9は、例えば、搬送制御装置2のCPUがROM等に記憶されたプログラムを、RAMをワークエリアとして使用して実行すると共に、搬送制御装置2の通信インターフェースが搬送機器と通信すること等により実現できる。
【0034】
上記のように、本発明の実施形態による搬送制御方法は、鋼材ヤードなどの複数の搬送ルートを持つ置場を効率的に運用するため、ヤードのルート条件、置場能力及び搬送機器能力などの制約条件下において、次工程で同一ロットとなる搬送対象群を、ヤードの効率的な運用を行う上で最適となる搬送ルートにまとめ、かつ次工程への払出遅れを最小化する搬送ルートを算出し、その結果に基づいてクレーンなどの搬送機器に指令を出力することにより、ヤードからの払出作業に遅滞を生ずるような特定搬送機器への負荷集中を起こすことなく、できるだけ次工程における同一ロットとなる鋼材の搬送ルートを揃えるような搬送ルートを制御する技術を提供することを可能とする。
【0035】
なお、1,0決定変数(例えばδ[c][r])と、整数変数である配置数(例えばx[i][k][c])と、整数変数である搬送量(例えばu[j][k][c])との少なくとも何れか1つを決定変数とする、線形方程式及び線形不等式のうち少なくともいずれか一方を設定していれば、ヤード能力条件制約式は前述したものに限定されない。
また、受入予定時刻、払出予定時刻、及び置場における初期条件の少なくとも何れか1つに基づく置場の境界条件に従って、境界条件制約式を設定していれば、境界条件制約式も前述したものに限定されない。 また、決定変数の全てまたは一部の変数を線形和式又は二次形式により表現した関数であって、次工程から指定された払出時刻からの払出遅延が最小のときに値が最小値をとる関数(例えば(式10)の右辺第二項)と、主搬送ルート集中度が最大の時に最小値を取る関数(例えば(式10)の右辺第一項)との何れか一方の関数である、或いは該2つの関数の重みづけ和である評価関数を設定していれば、評価関数は(式10)の評価関数に限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
次に、図3を例題として本発明の実施例を詳細に示す。
図7は本実施例による搬送制御を実施する際の条件を表したものである。この図7に示す表には、鋼材毎に、鋼材が属する「ロットNo」と、鋼材の「受入予定時刻」と、鋼材の「払出予定時刻」とが示される。また、受入済みの鋼材についてはそれを受け入れた置場(棟・列)が「受入ヤード」に示される。また「受入限定」は、鋼材の寸法などにより扱えるクレーンが限定されることから、指定された置場にしか受け入れられない鋼材の場合、その置場を表す。
【0037】
この例に対し、本実施例による搬送制御を実施する方法を示す。
まず、ヤード能力条件制約式設定手段4で設定される制約式として、搬送ルートに関する制約式は、(式3)の通りである。ただし、本例ではロットcはc=1,2,3、時刻kは最終の払出予定時刻がk=11であることから、多少余裕を見て0≦k≦14程度の範囲で考えるものとする。また、置場の容量制約は、各置場(11,12,21,22)101〜104に配置可能なスラブ数量を3とすると、(式11-1〜4)となる。
【0038】
【数8】

【0039】
同様に、搬送機器の単位時間当たりの搬送数制約式は、単位時間当たり搬送可能最大数を2とすると、(式12-1〜4)となる。
【0040】
【数9】

【0041】
そして、主搬送ルートを定義する制約式は、(式13-1-1)となる((式5-1)、(式6-1)に対応)。ここで、搬送ルートrがr=1,2,3,4となっているのは、前記搬送ルート1,2,3,4に対応するものである。また、非主搬送ルート通過数は、(式13-2-1〜12)の等式制約を使い、np[c][r](c=1,2,3、r=1,2,3,4)により表現することが出来る((式5-2)、(式6-2-1〜4)に対応)。ちなみに、np[c][r](c=1,2,3、r=1,2,3,4)は後述する評価関数設定手段6により、主搬送ルートへ鋼材を集中させるための評価関数設定の際に利用される。
【0042】
【数10】

【0043】
次に、境界条件制約式設定手段により、受入時の境界条件として、受入完了(パイリング完了)予定時刻に、パイリング完了に対応するトランジションu[0][k][c]を強制発火させる。本例ではロット種別cが「1」(c=1)の場合には、これに属する鋼材No.3,6,9,12,1
4がそれぞれ時刻k=0,3,4,6,7に受入予定なので、この時刻kにおいてu[0][k][1]=1とする(なお、鋼材No.0は受入済みなので境界条件制約が不要である)。ロット種別cが「2
」(c=2)の場合には、これに属する鋼材No.4,7,10がそれぞれ時刻k=0,3,5に受入予定なの
で、u[0][0][2]=1、u[0][3][2]=1、u[0][5][2]=1とする。ロット種別cが「3」(c=3)の場合にもこれらと同様に受入時の境界条件を設定する。
また、払出条件については、境界条件とせず、評価関数設定手段6にて評価関数として設定するものとし、後述する。もし、払出条件についても、受入条件と同様に、境界条件つまり遅れを許さず強制的に払い出しを行いたい場合には、次工程の搬出に対応するトランジション発火変数u[10][k][c]を払出予定時刻に合わせ強制発火させればよい。例えばロット種別cが「1」(c=1)の場合には、これに属する鋼材No.0,3,6,9,12,14の払出予定
時刻がk=5,4,7,9,11,11なので、u[10][4][1]=1、u[10][5][1]=1、u[10][7][1]=1、u[10][9][1]=1、u[10][11][1]=2の制約式を設定する。
【0044】
更に、境界条件制約式設定手段5では、各置場iにおける配置数を初期条件として設定する。本実施例では、鋼材No.0(c=1),1(c=2),2(c=3)が時刻k=0(初期状態)にて置場(11,21
,12)101、103、102に受入済みであるため、それぞれ、置場(11)101に対応するx[1][k][c]に対し、x[1][0][1]=1、熱片置場(21)103に対応するx[2][k][c]に対し、x[2][0][2]=1、置場(12)102に対応するx[4][k][c]に対し、x[4][0][3]=1と設定する。
次に、評価関数設定手段6にて、「主搬送ルートに集中させる」ことと「払出遅れをなくす」こととのバランスをとる評価(目的)関数を以下のように設定する。まず、主搬送ルートに鋼材を集中させるために、先のヤード能力条件制約式作成手段4で示した主搬送ルート非通過数np[c][r]を評価する。これは(式14-1)のように設定できる。
【0045】
また、払出遅れをなくすため、払出予定時刻より遅れた時間にペナルティを課すような関数を設定する。そのため、時系列的に見た払出予定数を目標払出時系列関数YC[k]として定義する。これは、c=1,2,3に対し、それぞれ(式14-2-1〜3)の様に設定される。そして、この目標払出時系列関数YC[k]と払出テーブルZでの払出数量x[6][k][c]との偏差を評価するため、(式14-3-1〜3)の制約式を設定する。そして、(式14-4)により、目標値未達数ov_YC[k](必要に応じて更に目標値過達数un_Yc[k])を、バランス調整パラメータP1を用いて評価する。目標値過達数un_Yc[k]を評価する必要がない場合はバランス調整パラメータP1を「0」(P1=0)とすれば良い。
【0046】
【数11】

【0047】
そして、「主搬送ルートへの集中度合い」を評価する(式14-1)と「払出遅れをなくすこと」を評価する(式14-4)とのバランスをとるため、調整係数Padjを用いて、最終的には(式15)の評価関数Jを設定する。
【0048】
【数12】

【0049】
また、置場制約としてロットNo.2の鋼材(No.4,7,10)は2棟にしか置けないものとする
。この制約は搬送機器と鋼材寸法との兼ね合いで、鋼材寸法がクレーンの把握可能な寸法限界を超える場合などに生ずる制約である。この制約は(式16-1,2)のように、当該鋼材は1棟には置けないという制約により表現する。
【0050】
【数13】

【0051】
そして、上記の設定された制約式の元で上記の評価関数を最小化する、最適な決定変数を最適解算出手段7にて、混合整数計画問題のsolverを用いて算出する。ここでは、まずPadj=1、P1=0.5の場合の計算結果を図8に示す(ケース1とする)。
まず、払い出し遅れは最右欄の「払出遅れ」の欄に示すように全て「0」となり、予定時刻通りに払い出しが行われている。また、主搬送ルートへの鋼材の集中度合いについては、まず、ロットNo.1に属する鋼材(鋼材No.3,6,9,12,14)は、いずれも、「受入ヤード」
の欄に示すように全て1棟1列となっている(主搬送ルート1)。同様にロットNo.2に属
する鋼材(鋼材No.4,7,10)は、全て2棟1列となり(主搬送ルート2)、上記の置場制約条
件も満たしていることがわかる。ロットNo.3に属する鋼材(鋼材No.5,8,11,13)も、全て2
棟1列(主搬送ルート2)となり、いずれのロットもそれに属する鋼材の全てが主搬送ルートに集中していることがわかる。
【0052】
また、計算条件を変えて、ヤードの各置場における配置可能数の限界値(先の条件(式11-1〜4)の右辺の値)を「3」から「2」に下げると、最適計算結果は図9の様になる(ケース2とする)。このケース2では、払い出し遅れはないが、主搬送ルートへの集中度合いについては、ロットNo.1の主搬送ルートは搬送ルート4である(δ[1][4]=1)である
にもかかわらず、鋼材No.6の搬送ルートは1となっている(図9のグレーの部分を参照)

これに対し、主搬送ルートへの集中度合いを高めるため、「主搬送ルートへの集中度合い」と「払出遅れをなくすこと」との調整係数PadjをPadj=0.1((式15)を参照)とした場合の最適計算結果を図10に示す(ケース3とする)。このケース3では、Padj=0.1としたため相対的に「主搬送ルートへの集中度合い」に対する重みが高まったため、主搬送ルートから外れる鋼材はなくなる。一方、ケース2ではなかった払出遅れが鋼材No.11
において発生していることがわかる(図10のグレーの部分を参照)。
上記の例のケース2、3で示したように、「主搬送ルートへの集中度合い」と「払出遅れをなくすこと」との調整係数Padjを調整することにより、意のままに両者を制御することが出来る。
【0053】
(本発明に係る他の実施の形態)
また、本発明の目的は前述した実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(CPU若しくはMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えばフレキシブルディスク,ハードディスク,光ディスク,光磁気ディスク,CD−ROM,CD−R,磁気テープ,不揮発性のメモリカード,ROMなどを用いることができる。
また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
更に、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 鋼材管理系計算機
2 搬送ルート制御装置
3 鋼材情報取込手段
4 ヤード能力条件制約式設定手段
5 境界条件制約式設定手段
6 評価関数設定手段
7 最適解算出手段
8 搬送作業算出手段
9 搬送作業指示手段
10 搬送機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の置場と複数の搬送機器とを持ち、鉄鋼プロセスにおける半製品である鋼材を工程間で保管するヤードにおいて、前記鋼材毎に、前工程から該鋼材を受け入れる受入口から該鋼材の置場まで、及び該置場から次工程への払出口までの搬送ルートを決定し、予め指定された搬送制御開始時刻から搬送制御終了時刻までの間の各時刻における各搬送機器の搬送作業を指示する搬送制御方法であって、
搬送制御開始時刻に既にヤードに存在する鋼材の置場位置情報及び払出予定時刻情報と、計画策定開始時刻以降にヤードに到着予定の鋼材の受入予定時刻情報及び払出予定時刻情報と、搬送対象の全鋼材についての次工程における処理のロットの区分を示す情報であるロット区分情報と、を少なくとも含む鋼材情報を取り込む鋼材情報取込ステップと、
前記ロット毎に、該ロットに属する鋼材が通過する搬送ルートのうちで最も多くの鋼材が通過する搬送ルートを主搬送ルートと呼ぶときに、該ロットに属する鋼材が通過可能な各搬送ルートが、主搬送ルートであるか否かを表す1-0変数と、各時刻における各置場での鋼材の配置数を表す整数変数と、各時刻における各搬送機器による鋼材の搬送数を表す整数変数との少なくともいずれか1つを決定変数とする、線形方程式及び線形不等式のうち少なくともいずれか一方により表現した、ヤードの置場能力及び搬送機器の搬送能力についての制約式であるヤード能力条件制約式を設定するヤード能力条件制約式設定ステップと、
前記搬送制御開始時刻における鋼材の置場位置情報に基づく置場の初期条件と、前記ヤードに存在する鋼材の払出予定時刻情報と、前記ヤードに到着予定の鋼材の受入及び払出予定時刻情報との全部または一部の情報に基づく置場の境界条件に従って、境界条件制約式を設定する境界条件制約式設定ステップと、
前記決定変数の全てまたは一部の変数を線形和式又は二次形式により表現した関数であって、次工程から指定された払出時刻からの払出遅延が最小のときに値が最小値をとる関数と、前記ロット毎に、該ロットに含まれる全ての鋼材に対する、前記主搬送ルートを通過する鋼材の数の比率である主搬送ルート集中度が最大の時に最小値を取る関数とのいずれか一方の関数である、或いは該2つの関数の重みづけ和である評価関数を設定する評価関数設定ステップと、
前記ヤード能力条件制約式及び前記境界条件制約式の下、前記評価関数を最小化する前記決定変数の値を最適決定変数として算出する最適化計算を行う最適解算出ステップと、
前記最適化計算により算出された最適決定変数に基づいて、前記各ロットについて、前記主搬送ルートであるか否かを表す1-0変数と、前記各置場毎かつ前記各時刻毎の鋼材の配置数と、前記各搬送ルート毎かつ各時刻毎の鋼材の搬送数と、を算出する搬送作業算出ステップと、
前記搬送作業として、前記搬送作業算出ステップで算出された各値を前記各搬送機器に指示する搬送作業指示ステップと、
を少なくとも含むことを特徴とする搬送制御方法。
【請求項2】
前記境界条件制約式は、前記搬送対象とする各鋼材の、払出予定時刻からの払出遅延を禁止する制約条件式を含み、前記評価関数は、前記ロット毎の前記主搬送ルート集中度が最大の時に最小値を取る関数である、
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送制御方法。
【請求項3】
前記評価関数は、前記搬送対象とする各鋼材の、払出予定時刻からの払出遅延が最小のときに値が最小値をとる関数と、前記ロット毎の前記主搬送ルート集中度が最大の時に最小値を取る関数との重みづけ和である、
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送制御方法。
【請求項4】
複数の置場と複数の搬送機器とを持ち、鉄鋼プロセスにおける半製品である鋼材を工程間で保管するヤードにおいて、前記鋼材毎に、前工程から該鋼材を受け入れる受入口から該鋼材の置場まで、及び該置場から次工程への払出口までの搬送ルートを決定し、予め指定された搬送制御開始時刻から搬送制御終了時刻までの間の各時刻における各搬送機器の搬送作業を指示する搬送制御装置であって、
搬送制御開始時刻に既にヤードに存在する鋼材の置場位置情報及び払出予定時刻情報と、計画策定開始時刻以降にヤードに到着予定の鋼材の受入予定時刻情報及び払出予定時刻情報と、搬送対象の全鋼材についての次工程における処理のロットの区分を示す情報であるロット区分情報と、を少なくとも含む鋼材情報を取り込む鋼材情報取込手段と、
前記ロット毎に、該ロットに属する鋼材が通過する搬送ルートのうちで最も多くの鋼材が通過する搬送ルートを主搬送ルートと呼ぶときに、該ロットに属する鋼材が通過可能な各搬送ルートが、主搬送ルートであるか否かを表す1-0変数と、各時刻における各置場での鋼材の配置数を表す整数変数と、各時刻における各搬送機器による鋼材の搬送数を表す整数変数との少なくともいずれか1つを決定変数とする、線形方程式及び線形不等式のうち少なくともいずれか一方により表現した、ヤードの置場能力及び搬送機器の搬送能力についての制約式であるヤード能力条件制約式を設定するヤード能力条件制約式設定手段と、
前記搬送制御開始時刻における鋼材の置場位置情報に基づく置場の初期条件と、前記ヤードに存在する鋼材の払出予定時刻情報と、前記ヤードに到着予定の鋼材の受入及び払出予定時刻情報との全部または一部の情報に基づく置場の境界条件に従って、境界条件制約式を設定する境界条件制約式設定手段と、
前記決定変数の全てまたは一部の変数を線形和式又は二次形式により表現した関数であって、次工程から指定された払出時刻からの払出遅延が最小のときに値が最小値をとる関数と、前記ロット毎に、該ロットに含まれる全ての鋼材に対する、前記主搬送ルートを通過する鋼材の数の比率である主搬送ルート集中度が最大の時に最小値を取る関数とのいずれか一方の関数である、或いは該2つの関数の重みづけ和である評価関数を設定する評価関数設定手段と、
前記ヤード能力条件制約式及び前記境界条件制約式の下、前記評価関数を最小化する前記決定変数の値を最適決定変数として算出する最適化計算を行う最適解算出手段と、
前記最適化計算により算出された最適決定変数に基づいて、前記各ロットについて、前記主搬送ルートであるか否かを表す1-0変数と、前記各置場毎かつ前記各時刻毎の鋼材の配置数と、前記各搬送ルート毎かつ各時刻毎の鋼材の搬送数と、を算出する搬送作業算出手段と、
前記搬送作業として、前記搬送作業算出ステップで算出された各値を前記各搬送機器に指示する搬送作業指示手段と、
を少なくとも備えることを特徴とする搬送制御装置。
【請求項5】
前記境界条件制約式は、前記搬送対象とする各鋼材の、払出予定時刻からの払出遅延を禁止する制約条件式を含み、前記評価関数は、前記ロット毎の前記主搬送ルート集中度が最大の時に最小値を取る関数である、
ことを特徴とする請求項4に記載の搬送制御装置。
【請求項6】
前記評価関数は、前記搬送対象とする各鋼材の、払出予定時刻からの払出遅延が最小のときに値が最小値をとる関数と、前記ロット毎の前記主搬送ルート集中度が最大の時に最小値を取る関数との重みづけ和である、
ことを特徴とする請求項4に記載の搬送制御装置。
【請求項7】
コンピュータに、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の搬送制御方法の各ステップを実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−254429(P2010−254429A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106610(P2009−106610)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】