説明

搬送台車のハイブリット車輪

【課題】走行振動、騒音、発塵等の抑制及び加速性能を維持しつつ、かつ搬送物の大型化、大重量化に対応できるようにした搬送台車のハイブリット車輪を提供すること。
【解決手段】車輪の芯金1の外周部に、芯金1の幅方向に物性の異なる複数種類の合成樹脂をもって合成樹脂製タイヤ2を一体に形成して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送台車のハイブリット車輪に関し、特に、クリーンルーム内で走行するスタッカークレーン、天井搬送車、無人搬送車などの搬送台車(以下、「搬送台車」という。)で、特に搬送物の大重量化に対応して許容荷重力を高くし、かつ所要の摩擦係数も有するようにして加速性能を向上するようにした搬送台車のハイブリット車輪に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クリーンルーム内で走行するスタッカークレーン、天井搬送車、無人搬送車などの搬送台車においては、走行振動や騒音、発塵を抑制して走行するようにした走行車輪として、金属製の芯金の外周に合成樹脂製のタイヤ、これは特に限定されるものではないが、例えば、ウレタンゴム製のタイヤを一体に形成したものが汎用されている。
このウレタンゴム製のタイヤは、摩擦係数が高く、搬送台車の走行時、走行路に対してスリップすることなく走行及び加速をすることができ、該種搬送台車の走行車輪として適している。
【0003】
しかし、ウレタンゴム製のタイヤは、その材質特性より走行振動、騒音、発塵等の抑制及び加速性能において優れているが、許容荷重力が低いので耐荷重に限度があり、かつ耐磨耗性にも劣るという問題があった。
したがって、近年のように搬送物の大型化、大重量化に対応することが難しいという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、搬送台車の走行車輪の有する問題点に鑑み、走行振動、騒音、発塵等の抑制及び加速性能を維持しつつ、かつ搬送物の大型化、大重量化に対応できるようにした搬送台車のハイブリット車輪を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の搬送台車のハイブリット車輪は、車輪の芯金外周部に、芯金の幅方向に物性、例えば、摩擦係数の異なる複数種類の合成樹脂をもって合成樹脂製タイヤを一体に形成して構成したことを特徴とする。
【0006】
この場合において、芯金外周部に形成する合成樹脂製タイヤを、ポリアミド樹脂とウレタンゴムとの2種の合成樹脂を互いに隣接するよう形成して構成することができる。
【0007】
また、芯金外周部に形成する合成樹脂製タイヤの径を、ポリアミド樹脂タイヤ部径よりもウレタンゴムタイヤ部径を大とすることができる。
【0008】
また、ウレタンゴムタイヤ部径を、設定荷重を受けたとき、ポリアミド樹脂タイヤ部が接地するまで変形してポリアミド樹脂タイヤ部及びウレタンゴムタイヤ部がともに接地するように設定することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の搬送台車のハイブリット車輪によれば、車輪の芯金外周部に、芯金の幅方向に物性、例えば、摩擦係数の異なる複数種類の合成樹脂をもって合成樹脂製タイヤを一体に形成して構成することにより、従来の走行車輪の形態を変えることなく物性の異なる複数種類の合成樹脂の利点を相互に有効活用して走行振動、騒音、発塵等の抑制及び加速性能を維持し、かつ搬送物の大型化、大重量化にも対応することができるので、クリーンルーム内で走行する大重量搬送物用搬送台車の走行車輪として最適である。
【0010】
また、芯金外周部に形成する合成樹脂製タイヤを、ポリアミド樹脂とウレタンゴムとの2種の合成樹脂を互いに隣接するよう形成して構成することにより、従来の形態を変えることなく2種の合成樹脂の特性による相乗効果を得た走行車輪を製作することができので、既設の搬送台車の走行車輪としても採用することができる。
【0011】
また、芯金外周部に形成する合成樹脂製タイヤの径を、ポリアミド樹脂タイヤ部径よりもウレタンゴムタイヤ部径を大とすることにより、車輪にかかる荷重に応じて合成樹脂製タイヤの接地面積が変化するので、軽い輪重から重い輪重まで同一の車輪にて対応することができる。
【0012】
また、ウレタンゴムタイヤ部径を、荷重を受けたとき、ポリアミド樹脂タイヤ部が接地するまで変形してポリアミド樹脂タイヤ部及びウレタンゴムタイヤ部がともに接地するように設定することにより、軽い輪重から重い輪重まで同一の車輪にて対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の搬送台車のハイブリット車輪の実施の形態を、図1〜図3の図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1に、本発明の搬送台車のハイブリット車輪の第1実施例を示す。
本発明の搬送台車のハイブリット車輪Wは、車軸Sに取り付けるようにした芯金1と、この芯金1の外周部に物性の異なる複数種類の合成樹脂をもって形成する合成樹脂製タイヤ2とより構成する。
この合成樹脂製タイヤ2を構成する1つの合成樹脂としては、摩擦係数が高く、許容荷重が低い合成樹脂、これは特に限定されるものではないが、例えば、ウレタンゴムを用い、他の合成樹脂としては、摩擦係数が低く、許容荷重が高い合成樹脂、これは特に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド樹脂(日本ポリペンコ株式会社製の商標名「MCナイロン」等)を用いることができる。
【0015】
なお、芯金1の外周部に形成する合成樹脂製タイヤ2のウレタンゴムタイヤ部2Aとポリアミド樹脂タイヤ部2Bは、特に限定されるものではないが、例えば、図1に示すように、芯金1の外周中央部位にウレタンゴムタイヤ部2Aを、そしてその左右両側位置にポリアミド樹脂タイヤ部2B、2Bを配設する。この場合、両タイヤ部2A、2Bの側面は互いに接するようにし、かつ芯金1の外周中央部位置に配設するウレタンゴムタイヤ部2Aの径は、ポリアミド樹脂タイヤ部2B、2Bの径よりも大きくする。
この両タイヤ部2A、2Bの径差Cは、ハイブリット車輪Wに設定した荷重を受けたとき、ポリアミド樹脂タイヤ部2Bが接地するまでウレタンゴムタイヤ部2Aが変形してポリアミド樹脂及びウレタンゴムの両タイヤ部2A、2Bがともに接地するようにして設定する。
【0016】
本発明のハイブリット車輪Wは、車軸Sに取り付けて使用するが、これは特に限定されるものではなく、例えば、図1に示す芯金1の中央のディスク部に軸受け(図示省略)を取り付け、この軸受けに車軸Sを挿通するようにすることができる。
また、図3に示すように、芯金1の中央部にベアリングケースを一体に形成し、このベアリングケース内にベアリングBを固定して車軸Sを支持するようにすることもできる。
さらに、このハイブリット車輪Wが駆動輪として使用する場合と、従動輪として使用する場合において、芯金1に取り付ける車軸Sの取付方法が異なるようにする。
【0017】
次に、本発明の搬送台車のハイブリット車輪の作用について説明する。
本発明のハイブリット車輪Wを取り付けた搬送台車Dが、走行路Rに沿って走行する際、搬送する搬送物荷重(輪重)がハイブリット車輪Wにかかる。この搬送物荷重に応じてウレタンゴムタイヤ部2Aが変形して接地する。この場合、搬送物荷重が軽いときは、ウレタンゴムタイヤ部2Aの変形だけとなって接地し、従来のウレタンゴムタイヤの車輪と同様にして走行する。
【0018】
しかし、この搬送物荷重が重いときは、ウレタンゴムタイヤ部2Aが搬送物荷重に応じて変形するが、この変形が最大限となるとともに、ポリアミド樹脂タイヤ部2Bがウレタンゴムタイヤ部2Aと共に接地するようになり、大重量の搬送物荷重をウレタンゴムタイヤ部2Aとポリアミド樹脂タイヤ部2Bとにより支持されるものとなる。
したがって、搬送物荷重が重いときは、ハイブリット車輪Wの両タイヤ部2A、2Bがともに接地しているので、加速時などはウレタンゴムタイヤ部2Aの接地で適当な摩擦力をえるのでスリップすることなく加速走行が可能となり、また搬送物荷重は両タイヤ部2A、2Bの双方で支持されるので、従来のウレタンゴムタイヤのみでは支持できなかった大重量の搬送物の搬送も可能となる。
【実施例2】
【0019】
図2に、本発明の搬送台車のハイブリット車輪の第2実施例を示す。
この第2実施例においては、芯金1の外周部に形成するウレタンゴムタイヤ部2Aとポリアミド樹脂タイヤ部2Bの配置が、第1実施例と異なっているだけで、他の構成は同じである。
第2実施例のハイブリット車輪Wは、芯金1の外周中央部位にポリアミド樹脂タイヤ部2Bを、そしてその左右両側位置にウレタンゴムタイヤ部2A、2Aを配設する。
【0020】
この場合も、両タイヤ部2A、2Bの側面は互いに接するようにし、かつ芯金1の外周中央部位置に配設するポリアミド樹脂タイヤ部2Bの径は、ウレタンゴムタイヤ部2A、2Aの径よりも小さく径差Cを有するようにする。これにより、ハイブリット車輪Wの外周中央部が少し窪んだ形状となり、作用は第1実施例と同様に搬送物荷重が軽いときは、ウレタンゴムタイヤ部2Aの変形により接地して走行し、また搬送物荷重が重いときは、ウレタンゴムタイヤ部2Aが搬送物荷重に応じて許容された最大限まで変形するとともに、ポリアミド樹脂タイヤ部2Bがウレタンゴムタイヤ部2Aと共に接地し、両タイヤ部2A、2Bにて支持されるようになる。
【0021】
以上、本発明の搬送台車のハイブリット車輪について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の搬送台車のハイブリット車輪は、搬送物の大型化、大重量化に対応し、かつ加速性能を高めるという特性を有していることから、スタッカークレーンの用途に好適に用いることができるほか、例えば、天井搬送車(OHV)、無人搬送車(RGV)の用途にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の搬送台車のハイブリット車輪の第1実施例を示す正面縦断面図である。
【図2】本発明の搬送台車のハイブリット車輪の第2実施例を示す正面縦断面図である。
【図3】搬送台車に取り付けた状態を示す正面縦断面図である。
【符号の説明】
【0024】
W ハイブリット車輪
S 車軸
1 芯金
2 合成樹脂製タイヤ
2A ウレタンゴムタイヤ部
2B ポリアミド樹脂タイヤ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の芯金外周部に、芯金の幅方向に物性の異なる複数種類の合成樹脂をもって合成樹脂製タイヤを一体に形成して構成したことを特徴とする搬送台車のハイブリット車輪。
【請求項2】
摩擦係数の異なる複数種類の合成樹脂をもって合成樹脂製タイヤを一体に形成して構成したことを特徴とする請求項1記載の搬送台車のハイブリット車輪。
【請求項3】
芯金外周部に形成する合成樹脂製タイヤを、ポリアミド樹脂とウレタンゴムとの2種の合成樹脂を互いに隣接するよう形成して構成したことを特徴とする請求項1又は2記載の搬送台車のハイブリット車輪。
【請求項4】
芯金外周部に形成する合成樹脂製タイヤの径を、ポリアミド樹脂タイヤ部径よりもウレタンゴムタイヤ部径を大としたことを特徴とする請求項3記載の搬送台車のハイブリット車輪。
【請求項5】
ウレタンゴムタイヤ部径を、設定荷重を受けたとき、ポリアミド樹脂タイヤ部が接地するまで変形してポリアミド樹脂タイヤ部及びウレタンゴムタイヤ部がともに接地するように設定したことを特徴とする請求項4記載の搬送台車のハイブリット車輪。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−45972(P2009−45972A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212125(P2007−212125)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】