説明

搬送用カート

【課題】不使用の際の保管時においては、ネステイングまたはスタッキングまたはその両方の組み合わせて格納可能な搬送用カートを実現する。
【解決手段】 両端下部にキャスターを取り付けた、対向する一対のベースパイプの対角線上の一端部同士を平面視N字状に斜パイプで連結したベース部と、該一対のベースパイプの上方に、水平面部を有するコーナー載置部を両端に配置した一対の積載パイプを対向させて配置し、前記一対のベースパイプと前記一対の積載パイプを縦パイプを介して連結すると共に、該縦パイプ同士を水平パイプで積載パイプと干渉しないように連結した積載部とから構成とし、保管場所や保管形態に対応して、ネステイングまたはスタッキングまたはその両方により格納を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナ等搬送物を乗載して搬送する搬送用カートであって、保管時においては、該カートをネステイングまたはスタッキングまたはその両方の組み合わせにより格納可能な搬送用カートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、平面視N又はN字状に構成した数台のテーブルを密に接近させて格納保管する構成としたキャスターテーブルの実用登録3025440号公報がある(特許文献1参照)。
また、一対の底梁を連結梁にて平面視ほぼN字状に対角線状に連結して形成した基台を有し、接近させて格納保管する構成とした陳列棚兼用運搬台の特開平11−89684号公報がある(特許文献2)。
さらに、相対する一対の門型枠間を水平にN型連結枠で対角方向に相対する側脚材間に接続して、接近させて格納する構成としたケース置台の実開平05−80328号公報がある(特許文献3参照)。
【特許文献1】実用登録3025440号公報
【特許文献2】特開平11−89684号公報
【特許文献3】実開平05−80328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術では、いずれもネステイングのみを可能としたものであり、保管場所の様々な形態、面積の大小の状況に対応してスタッキング等による格納保管ができないため格納場所の有効利用ができないという問題点がある。
【0004】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて発明されたもので、不使用時の保管時においては、ネステイングまたはスタッキングまたはその両方の組み合わせが可能で、保管効率の高い搬送用カートの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1の発明に係る搬送用カートは、
両端下部にキャスターを取り付けた、対向する一対のベースパイプの対角線上の一端部同士を平面視N字状に斜パイプで連結したベース部と、該一対のベースパイプの上方に、水平面部を有するコーナー載置部を両端に配置した一対の積載パイプを対向させて配置し、前記一対のベースパイプと前記一対の積載パイプ間を縦パイプを介して連結すると共に、該縦パイプ同士を水平パイプで積載パイプと干渉しないように連結した積載部とから構成とし、保管場所や保管形態に対応して、ネステイングまたはスタッキングまたはその両方による格納を可能にすることを特徴としている。
【0006】
上記構成としたことにより、搬送物はそのコーナー部四隅をコーナー載置部の平面部に水平状態で安定的に乗載して搬送される。また、搬送用カートをネステイングさせて格納する場合は、各搬送用カートの斜パイプ同士を接近させる形態で重ねて格納する。さらに、搬送用カートをスタッキングさせて格納する場合は、下段のカートの4箇所のコーナー載置部の平面部に上段のカートの4箇所のキャスターを乗載して上段のカートを格納する。
【0007】
本発明の請求項2の発明に係る搬送用カートは、請求項1に記載の搬送用カートにおいて、コーナー載置部の外側コーナー辺に、搬送物の外方への落下を防止する阻止壁を立設したことを特徴としている。
【0008】
本発明の請求項3の発明係る搬送用カートは、請求項1または2に記載の搬送用カートにおいて、斜パイプ不連結側の対角線側の一対のべースパイプの端部とその上方の一対の積載パイプの端部間を補強パイプで連結したことを特徴としている。
【0009】
本発明の請求項4の発明係る搬送用カートは、請求項1から3のいずれか一に記載の搬送用カートにおいて、ベース部と積載部の各構成部品は、樹脂被覆鋼管とこれを連結する樹脂製継手により組み立てられてなることを特徴としている。
【0010】
本発明の請求項5の発明係る搬送用カートは、請求項1から4のいずれか一に記載の搬送用カートにおいて、対向する一対のコーナー載置部又は積載パイプの内縁の間隔を、搬送物底面凸部を落とし込める間隔にしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以下の効果を奏するものである。
請求項1によれば、搬送用カートは、保管場所の面積や形態に対応してネステイングまたはスタッキングまたはその両方の格納形態を選択して格納できる。また、同じ面積の格納場所でもネステイングまたはスタッキングまたはその両方を組み合わせた格納を行うことにより保管効率を格段に高めることができる。
【0012】
請求項2によれば、搬送用カートをスタッキング格納した時には、上段に乗載した搬送用カートの落下が防止でき、安定した状態で格納できる。また、搬送時には、搬送物の横滑りを防止するので安定した状態で搬送が可能である。
【0013】
請求項3によれば、積載部においては、一対の積載パイプの対角線端部は補強パイプでも固定されているため、積載部の強度を高めるので耐久性を向上させ、搬送用カートを数段のスタッキング状態にして格納できる。
【0014】
請求項4によれば、軽量な搬送用カートが製造できるため取り扱いが楽にできる。また、搬送用カートの製作は、熟練技術者でなくても容易にできる。
【0015】
請求項5によれば、搬送物の底面が平面状のもののみならず、底面中央部が凸状に盛り上がる搬送物のように、異なった底面構造の搬送物でも安定した搬送が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明における搬送用カートの1実施例を図示した図1乃至図10を参照して説明する。
図1は搬送用カートの斜視図、図2は搬送用カートの右側面図、図3は搬送用カートの平面図、図4は搬送用カートの正面図、図5は搬送物乗載時の正面図、図6は別の底面構造の搬送物を乗載した時の正面図、図7は搬送用カートをネステイング格納した時の平面図、図8はコーナー載置部の斜視図、図9は二台の搬送用カートをネステイング状態で格納した時の斜視図、図10は二台の搬送用カートをスタッキング状態で格納した時の斜視図である。
【0017】
本発明の搬送用カート1は、キャスター2を下部に取り付けた平面視N字状のベース部5と、搬送物16、16a等を乗載する平面視ほぼH字状の積載部11とから構成され、前記ベース部5と前記積載部11の各構成部品は、樹脂被覆鋼管,例えば直径28mm程度の樹脂被覆鋼管とこれを連結する樹脂製継手により組み立てられている。
【0018】
搬送用カート1のベース部5は、対向する一対の同じ長さの平行なベースパイプ3の両端下部にキャスター2の取り付け部(図示省略)が固定され、該一対のベースパイプ3の対角線上の一端部同士を平面視N字状に斜パイプ4で連結形成されている。詳細には、ベース部5は、2本の同じ長さのベースパイプ3を平行に配置し、該ベースパイプ3の両端にL字状ジョイント19の水平方向側の嵌合筒19aを挿入して接着固定されている。また、該L字状ジョイント19の垂直方向側の嵌合筒19bに、その内部に挿入する継手パイプ(図示省略)を介してL字状ジョイント15の嵌合筒15aを嵌着し、他方の嵌合筒15b同士に平面視N字状に斜パイプ4の端部を挿着して接着固定されている。さらに、嵌合筒19bの下端には、その内部に挿入される継手パイプ(図示省略)にキャスター2の取り付け部(図示省略)を挿入固定して、キャスター2が取り付けられている。
【0019】
積載部11は、搬送物16、16aの底面の大きさに合わせて設計されている。
2本のベースパイプ3の直上には、上面に平面部8aを形成した、搬送物16の底面部分の短手辺が入る寸法にカットされた同じ長さの2本の積載パイプ8を、搬送物の底面部分の長手辺が入る間隔で平行に配置されている。該積載パイプ8の両端には、コーナー継手を利用して、図8に示すように、水平面部7を有するコーナー載置部6が配置されている。
該コーナー載置部6は、積載パイプ8の端部を嵌着部6aに挿入可能に円管状に削った挿入部(図示省略)を形成し、該挿入部に嵌着部6aを挿入して接着固定されている。このコーナー載置部6は、積載面のコーナー4箇所に配置され、コーナー載置部6の水平面部7と積載パイプ8の平面部8aとで、搬送物16の底面を載置する積載面を形成し、図5のように搬送物の底面は、コーナー載置部6の平面部7と積載パイプ8の平面部8a上に載置される。この積載パイプ8は、平面部8aがない円管の形状としてもよい。この場合はコーナー載置部6の嵌着部6aの肉厚分だけ積載パイプ8の上面が低くなるので、搬送物16は4箇所のコーナー載置部6の水平面部7に載置される。
【0020】
また、搬送物16は、平面部8aに載置されているだけでは搬送時に搬送物16が平面部8aを滑り積載部から落下する危険があるので搬送物16の落下を防止するためと、スタッキング時におけるキャスター2の車輪を載せた時の落下防止のため、図8のよううに、コーナー載置部6の外側コーナー辺12に所定高さの阻止壁13が立設されている。
【0021】
また、図6のような底面に底面凸部18を有する搬送物16aの場合に対応するため、底面凸部18が平面部8aに乗ると、それだけ搬送時に滑る距離が長くなって、搬送物16aが、落下する危険性が大きくなるので、対向するコーナー載置部6の水平面部7の内寸法間隔yを、その間へ搬送物16aの底面凸部18が落とし込める間隔に設けて、底面凸部18がコーナー載置部6の水平面部7の内縁7aと積載パイプ8の内縁8bに搬送物16aの移動が阻止され、搬送物16aの底面外周縁に繋がる平面部17aが、コーナー載置部6の水平面部7か積載パイプ8の平面部8a、またはその両方に乗っかって搬送物16aは、搬送されることになる。
【0022】
一対のベースパイプ3のほぼ中央と一対の積載パイプ8のほぼ中央の間は、図1、2のように、縦パイプ9で連結されている。詳細には、ベースパイプ3の中央部にL字状ジョイント21の嵌合筒21aを挿通して固定し、垂直方向の嵌合筒21bに縦パイプ9の下端を挿入し、該縦パイプ9の上端はL字状ジョイント22の嵌合筒22aへ挿入すると共に、上端に積載パイプ8の下側の丸管部分へ嵌め込み可能なU字状部20bを設けたジョイント20の嵌合筒20aを嵌入すると共に、前記積載パイプ8のU字状部分をU字状部20bに嵌め込み接着固定している。
【0023】
斜パイプ4側とは別の対角線上に配置したL字状ジョイント19の嵌合筒19bに補強パイプ14を挿入配置した場合は、この補強パイプ14の下端部にキャスター2の取り付け部(図示省略)が挿入固定されてキャスター2が取り付けられている。逆に補強パイプ14を取り付けない場合は、嵌合筒19b内部に挿入する継手パイプ(図示省略)へキャスター2を取り付ける事になる。
なお、前記キャスター2は、保管時のネスティングさせる時等の作業性を考慮して、回動自在な旋回キャスターを使用するのが好ましい。
【0024】
また、両側のL字状ジョイント22の他方嵌合筒22b間に水平パイプ10を挿着して縦パイプ9同士が連結されている。搬送用カート1をネスティングする場合には、重ねる方向への前方側のコーナー載置部6と積載パイプ8は、水平パイプ10を通過させて突き出す必要があるので、水平パイプ10は積載パイプ8の高さより下方へ下げて配置している。
【0025】
さらに、積載パイプ8の中央部を縦パイプ9で固定した場合は、積載パイプ8は片持ち受けとなるが、積載部11の強度を上げるため、斜パイプ4の不連結側のもう一方の対角線上に位置する一対のベースパイプ3のL字状ジョイント19の通し側の嵌合筒19bと、その直上に位置するコーナー載置部6の取付嵌合部6bとに補強パイプ14を挿入して補強している。
【0026】
補強パイプ14を取付けた搬送用カート1の場合は、搬送用カート1をネスティングした時に方向性が生じて、図9で示すように、斜パイプ4を下から重ねる方向(図9での下から上)にしかネスティングが出来なくなる。搬送物重量が軽量等の理由で、前記補強パイプ14を取り付けない場合は、ネスティングの方向性がなくなり、上から水平パイプ10を重ねる方向(図9での上から下)にもネスティング可能となる。
【0027】
スタッキングの際は、図10のように下段の搬送用カート1の4隅のコーナー載置部6の水平面部7に、上段の搬送用カート1の4隅の4個のキャスター2の車輪を載せてスタキングを行う。スタキングされた上段の搬送用カート1は、阻止壁13により落下が防止され、安定したスタッキング状態が可能となる。また、搬送用カート1の積み上げた高さを考慮した場合は、スタッキング時の高さを3段程度の設計とするのがよい。
【0028】
上記説明の実施例では、円形の継手と円形のパイプで組み立てられているが、角形の継手と角形のパイプで組み立てられててもよい。また、金属製パイプを用いて溶接して組み立てても良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の搬送用カートの斜視図である。
【図2】搬送用カートの右側面図である。
【図3】搬送用カートの平面図である。
【図4】搬送用カートの正面図である。
【図5】搬送物乗載時の正面図である。
【図6】別の底面構造の搬送物を乗載した時の正面図である。
【図7】搬送用カートをネステイング格納した時の平面図である。
【図8】コーナー載置部の斜視図である。
【図9】二台の搬送用カートをネステイング状態で格納した時の斜視図である。
【図10】二台の搬送用カートをスタッキング状態で格納した時の斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 搬送用カート
2 キャスター
3 ベースパイプ
4 斜パイプ
5 ベース部
6 コーナー載置部
6a 嵌着筒
6b 取付嵌合部
7 水平面部
8 積載パイプ
8a 平面部
9 縦パイプ
10 水平パイプ
11 積載部
12 外側コーナー辺
13 阻止壁
14 補強パイプ
15 L字状ジョイント
16 搬送物
17 コーナー底部
18 底面凸部
19 L字状ジョイント
20 T字状ジョイント
21 L字状ジョイント
22 L字状ジョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端下部にキャスターを取り付けた、対向する一対のベースパイプの対角線上の一端部同士を平面視N字状に斜パイプで連結したベース部と、該一対のベースパイプの上方に、水平面部を有するコーナー載置部を両端に配置した一対の積載パイプを対向させて配置し、前記一対のベースパイプと前記一対の積載パイプ間を縦パイプを介して連結すると共に、該縦パイプ同士を水平パイプで積載パイプと干渉しないように連結した積載部とから構成とし、保管場所や保管形態に対応して、ネステイングまたはスタッキングまたはその両方による格納を可能にすることを特徴とする搬送用カート。
【請求項2】
コーナー載置部の外側コーナー辺に、搬送物の外方への落下を防止する阻止壁を立設したことを特徴とする請求項1に記載の搬送用カート。
【請求項3】
斜パイプ不連結側の対角線側の一対のべースパイプの端部とその上方の一対の積載パイプの端部間を補強パイプで連結したことを特徴とする請求項1または2に記載の搬送用カート。
【請求項4】
ベース部と積載部の各構成部品は、樹脂被覆鋼管とこれを連結する樹脂製継手により組み立てられてなることを特徴とする請求項1から3のいずれか一に記載の搬送用カート。
【請求項5】
対向する一対のコーナー載置部又は積載パイプの内縁の間隔を、搬送物底面凸部を落とし込める間隔にしたことを特徴とする請求項1から4のいずれか一に記載の搬送用カート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−256540(P2006−256540A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−79042(P2005−79042)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000245830)矢崎化工株式会社 (47)
【Fターム(参考)】