説明

搬送管理システム、搬送管理方法及び搬送管理プログラム

【課題】搬送対象物を移動させる場合に、装置状況や保管状況に応じて保管先を決定するための搬送管理システム、搬送管理方法及び搬送管理プログラムを提供する。
【解決手段】搬送管理サーバ20の制御部21は、搬送先の装置においてキャリアの受入不可を検出した場合、目的搬送先の限界深度情報を取得する。そして、制御部21は、一時保管先の状況情報を取得する。この保管先において受入不可の場合、制御部21は、同じ深度において「同列」の一時保管先の有無や受入可否を判定する。「同列」の他の一時保管先が存在していない場合や存在していても受入不可の場合、制御部21は、現在深度と搬送先の限界深度とを比較し、現在深度が搬送先の限界深度に到達していない場合、制御部21は、「系列」の保管先を用いて搬送の可否を判定する。そして、「同列」或いは「系列」の保管先を用いて、キャリアの一時保管を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の搬送システムを利用して、搬送対象物を移動させる場合の搬送を支援するための搬送管理システム、搬送管理方法及び搬送管理プログラムに関する。例えば、半導体素子の製造プロセス装置間において、キャリアを積載させた搬送ユニットの搬送を支援する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体製造プロセスにおいては、半導体基板(ウェハ)に対して、複数の工程が順番に行なわれて素子や配線層が形成される。具体的には、酸化・拡散工程、CVD工程、リソグラフィ工程、エッチング工程、イオン注入工程、検査工程や測定工程等が予め定められた順番に行なわれる。この場合、処理すべきウェハは、複数枚毎にキャリアに収容されて各処理装置に搬送される。
【0003】
また、後工程の処理装置へ搬送すべきキャリアや、前工程から搬送されてきたキャリアを一時的に保管するための搬送棚(ストッカ)が保管場所として併設されている。更に、各装置やストッカは軌道によって結ばれており、この軌道上で搬送台車(搬送ユニット)を移動させたり、軌道上にあるバッファにキャリアを一時保管させたりする。以下、キャリアを一時保管させるストッカや軌道上にあるバッファを保管バッファと呼ぶ。そして、搬送ユニットは各キャリアを積載して軌道上を走行することによって、搬送元ポートから搬送先ポートまでキャリアを搬送する。
【0004】
ここで、搬送先の各装置や保管バッファが既に満杯となっているなどの事情により、キャリアを収納できないこともあり、この場合は、その近くにある別の保管バッファが搬送先として選ばれる。このため、予定搬送先へ搬送できない場合に、適切な代替え搬送先へ搬送するための技術が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。この文献記載の搬送システムでは、物品毎に属性データを付与し、予定の倉庫に搬送できない場合に、属性データに基づき代替えの倉庫を選定する。
【特許文献1】特開2003−285906号公報(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の搬送システムにおいては、この搬送システムの統合コントローラは、次の作業場までの搬送時間の短い順に倉庫を記憶させたテーブルから、利用可能な自動倉庫を搬送時間の短い順に検索して、搬送先を選択する。この場合、新たな装置や保管バッファを設けた場合や装置の配置を変更した場合、人手でテーブルを作成し直す必要がある。特に、複数のフロアや複雑な製造ラインが設けられている場合には、このテーブルの作り直しは大きな負荷となる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、搬送対象物を移動させる場合に、装置状況や保管状況に応じて保管先を決定するための搬送管理システム、搬送管理方法及び搬送管理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、搬送先の装置識別子に対して、受入可否情報を記録した装置状況情報記憶手段と、装置識別子に対して、一時保管先の保管先識別子を記録した保管先情報記憶手段と、保管先識別子に対して、代替の保管先識別子を関連付けて記憶した関連保管先情報記憶手段と、保管先の保管先識別子に対して、
受入可否情報を記録した保管先状況情報記憶手段と、搬送対象物の移動を管理する制御手段とを備えた搬送管理システムであって、前記制御手段が、目的地の装置識別子を取得した場合、前記装置状況情報記憶手段から、目的地の装置識別子の受入可否情報を取得する手段と、前記受入可否情報において受入可能であった場合には、目的地への搬送を指示し、受入不可であった場合には、前記保管先情報記憶手段から、この目的地の装置識別子に関連付けられた保管先識別子を特定する手段と、前記保管先状況情報記憶手段から、この保管先識別子の受入可否情報を取得し、前記受入可否情報において受入可能であった場合には、この保管先識別子の保管先への搬送を指示し、受入不可であった場合には、前記関連保管先情報記憶手段から、この保管先識別子に関連付けられた代替の保管先識別子を特定する保管先検索処理を実行する手段と、保管先が見つかるまで、前記保管先検索処理を繰り返す手段とを備えたことを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の搬送管理システムにおいて、装置識別子毎に限界深度に関する情報を記録した限界深度情報記憶手段を更に備え、装置識別子に関連付けられた保管先識別子を特定する場合には、検索対象深度として初期値を設定し、前記保管先検索処理を実行した場合には、前記検索対象深度として次深度を設定し、前記検索対象深度が限界深度に達するまで前記保管先検索処理を繰り返すことを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の搬送管理システムにおいて、前記関連保管先情報記憶手段においては、代替の保管先識別子に優先順位が関連付けられて記憶されており、優先順位が高い順番に保管先検索処理を実行することを要旨とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一つに記載の搬送管理システムにおいて、前記関連保管先情報記憶手段には、保管先の保管先識別子に対して、第1関係の保管先識別子及び第2関係の保管先識別子を関連付けて記憶し、前記保管先検索処理において、第1関係の保管先識別子を優先的に検索し、第2関係の保管先識別子を特定した場合にのみ、検索対象深度として次深度を設定することを要旨とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、搬送先の装置識別子に対して、受入可否情報を記録した装置状況情報記憶手段と、装置識別子に対して、一時保管先の保管先識別子を記録した保管先情報記憶手段と、保管先識別子に対して、代替の保管先識別子を関連付けて記憶した関連保管先情報記憶手段と、保管先の保管先識別子に対して、受入可否情報を記録した保管先状況情報記憶手段と、搬送対象物の移動を管理する制御手段とを備えた搬送管理システムを用いて、搬送を管理するための方法であって、前記制御手段が、目的地の装置識別子を取得した場合、前記装置状況情報記憶手段から、目的地の装置識別子の受入可否情報を取得する段階と、前記受入可否情報において受入可能であった場合には、目的地への搬送を指示し、受入不可であった場合には、前記保管先情報記憶手段から、この目的地の装置識別子に関連付けられた保管先識別子を特定する段階と、前記保管先状況情報記憶手段から、この保管先識別子の受入可否情報を取得し、前記受入可否情報において受入可能であった場合には、この保管先識別子の保管先への搬送を指示し、受入不可であった場合には、前記関連保管先情報記憶手段から、この保管先識別子に関連付けられた代替の保管先識別子を特定する保管先検索処理を実行する段階と、保管先が見つかるまで、前記保管先検索処理を繰り返す段階とを備えたことを要旨とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、搬送先の装置識別子に対して、受入可否情報を記録した装置状況情報記憶手段と、装置識別子に対して、一時保管先の保管先識別子を記録した保管先情報記憶手段と、保管先識別子に対して、代替の保管先識別子を関連付けて記憶した関連保管先情報記憶手段と、保管先の保管先識別子に対して、受入可否情報を記録した保管先状況情報記憶手段と、搬送対象物の移動を管理する制御手段とを備えた搬送管理システムを用いて、搬送を管理するためのプログラムであって、前記制御手段を、目的地の装置識
別子を取得した場合、前記装置状況情報記憶手段から、目的地の装置識別子の受入可否情報を取得する手段、前記受入可否情報において受入可能であった場合には、目的地への搬送を指示し、受入不可であった場合には、前記保管先情報記憶手段から、この目的地の装置識別子に関連付けられた保管先識別子を特定する手段、前記保管先状況情報記憶手段から、この保管先識別子の受入可否情報を取得し、前記受入可否情報において受入可能であった場合には、この保管先識別子の保管先への搬送を指示し、受入不可であった場合には、前記関連保管先情報記憶手段から、この保管先識別子に関連付けられた代替の保管先識別子を特定する保管先検索処理を実行する手段、保管先が見つかるまで、前記保管先検索処理を繰り返す手段として機能させることを要旨とする。
【0013】
(作用)
請求項1、5又は6に記載の発明によれば、制御手段が、目的地の装置識別子を取得した場合、装置状況情報記憶手段から、目的地の装置識別子の受入可否情報を取得する。ここで、受入可否情報において受入可能であった場合には、目的地への搬送を指示し、受入不可であった場合には、保管先情報記憶手段から、この目的地の装置識別子に関連付けられた保管先識別子を特定する。次に、制御手段は、保管先状況情報記憶手段から、この保管先識別子の受入可否情報を取得する。そして、受入可否情報において受入可能であった場合には、この保管先識別子の保管先への搬送を指示し、受入不可であった場合には、関連保管先情報記憶手段から、この保管先識別子に関連付けられた代替の保管先識別子を特定する保管先検索処理を実行する。そして、制御手段は、保管先が見つかるまで、保管先検索処理を繰り返す。これにより、保管先が相互に関連付けられた関連保管先情報記憶手段を利用して、保管先に対して代替する保管先を特定し、搬送対象物を保管することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、制御手段は、装置識別子に関連付けられた保管先識別子を特定する場合には、検索対象深度として初期値を設定する。そして、制御手段は、保管先検索処理を実行した場合には、検索対象深度として次深度を設定し、検索対象深度が限界深度に達するまで保管先検索処理を繰り返す。これにより、保管先について、必要以上の検索を抑制することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、優先順位が高い順番に保管先検索処理を実行する。これにより、保管先によって選択の重み付けを行なうことができる。
請求項4に記載の発明によれば、保管先検索処理において、第1関係の保管先識別子を優先的に検索し、第2関係の保管先識別子を特定した場合にのみ、検索対象深度として次深度を設定する。これにより、同じ深度にある第1関係と、深度が異なる第2関係とを組み合わせることにより、保管先について多様な相互関係を設定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、搬送対象物を移動させる場合に、装置状況や保管状況に応じて保管先を決定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した一実施形態を、図1〜図5を用いて説明する。本実施形態では、図1に示すように、半導体素子の製造ラインにおけるプロセス装置や保管バッファ間において、搬送対象物であるキャリアの搬送を管理する搬送システム10に対して、搬送先を決定するための搬送管理システム、搬送管理方法及び搬送管理プログラムとして説明する。ここでは、搬送先を決定するための搬送管理システムとして搬送管理サーバ20を用いる。この搬送管理サーバ20は、搬送システム10との間でデータの送受信を行なう。この搬送システム10は、プロセス装置(加熱装置、成膜装置、リソグラフィ装置、エッチング装置等)や保管バッファ間におけるキャリアの搬送を管理する。
【0018】
例えば、図4に示すように、装置(EQ1〜EQ4)や保管バッファ(ST1〜ST8)が搬送システムC1に接続されている場合を想定する。
この搬送システムC1は搬送システム10によって制御される。各搬送システムC1には、キャリアを積載して移動させる搬送ユニットが設けられている。そして、キャリアを移動させる場合、各ポートに搬送ユニットを呼び出し、搬送ユニットに搭載する。そして、搬送ユニットは目的の装置や保管バッファまで移動して、キャリアを装置や保管バッファ側に引き渡す。ここで、搬送対象キャリアについて装置EQ1から装置EQ3への移動を想定した場合、直接、搬送する場合が最も効率的である。しかし、搬送先の装置EQ3が受け入れできない場合、保管バッファに一時的に保管して搬送する。
【0019】
本実施形態では、この搬送先を決定するために搬送管理サーバ20を用いる。この搬送管理サーバ20は、搬送システム10からデータを収集し、搬送先を決定するコンピュータシステムである。この搬送管理サーバ20は、図1に示すように、CPU、RAM、ROM等から構成された制御手段としての制御部21を備える。更に、搬送管理サーバ20は、装置状況情報記憶手段22、保管先情報記憶手段23、関連保管先情報記憶手段24、保管先状況情報記憶手段25、限界深度情報記憶手段26を備える。
【0020】
この制御部21は、後述する処理(目的地の装置識別子の受入可否情報を取得する段階、目的地への搬送を指示する段階、保管先識別子を特定する段階、保管先識別子の保管先への搬送を指示する段階、保管先検索処理を実行する段階、保管先検索処理を繰り返す段階等の各処理)を実行する。そして、制御部21は、搬送先情報取得手段211、受入可否情報取得手段212、搬送指示手段213、保管先検索手段214、検索限度管理手段215として機能する。
【0021】
搬送先情報取得手段211は、搬送先の装置識別子に関する情報を取得する処理を実行する。
受入可否情報取得手段212は、搬送先の装置や保管先における受入可否についての情報を取得する処理を実行する。
【0022】
搬送指示手段213は、搬送システム10に対して、搬送の指示や搬送保留の指示を提供する処理を実行する。
保管先検索手段214は、搬送先や保管先の装置において受入ができない場合、代替の保管先を検索する処理を実行する。
【0023】
検索限度管理手段215は、検索回数が限度に達しているかどうかについて判断する処理を実行する。このため、検索限度管理手段215は、限界深度と現在深度とを記憶するメモリを備えている。
【0024】
装置状況情報記憶手段22には、図2(a)に示すように、各装置の状況を特定するための装置状況レコード220が記録される。この装置状況レコード220は、搬送管理サーバ20の制御部21が各装置の稼動状況に関する情報を、各装置から取得した場合に記録される。この装置状況レコード220は、装置識別子、ステータスに関するデータを含んで構成される。
【0025】
装置識別子データ領域には、各装置を特定するための識別子に関するデータが記録される。
ステータスデータ領域には、各装置の状況を特定するための識別子に関するデータが記録される。具体的には、新たなキャリアを受け入れることができるかどうかを判定するためのフラグ(「受入可能」フラグ又は「受入不可」フラグ)が記録される。
【0026】
保管先情報記憶手段23には、図2(b)に示すように、各装置においてキャリアの受入ができない場合に一時的に保管する保管バッファを特定するための保管先情報レコード230が記録されている。この保管先情報レコード230は、各装置に対する一時的保管先が決定されて、登録された場合に記録される。この保管先情報レコード230は、装置識別子、保管先識別子に関するデータを含んで構成されている。
【0027】
装置識別子データ領域には、各装置を特定するための識別子に関するデータが記録される。
保管先識別子データ領域には、この装置に対して一時的に保管を行なう保管バッファ(保管先)を特定するための識別子に関するデータが記録される。
【0028】
関連保管先情報記憶手段24には、図2(c)に示すように、相互に関連付けられた保管先を特定するための関連保管先情報レコード240が記録されている。この関連保管先情報レコード240は、相互に関連する保管バッファ(保管先)が決定されて、登録された場合に記録される。この関連保管先情報レコード240は、保管先識別子、関連保管先識別子、関連性判定識別子、優先順位に関するデータを含んで構成されている。
【0029】
保管先識別子データ領域には、各保管先の保管バッファを特定するための識別子に関するデータが記録される。
関連保管先識別子データ領域には、この保管先が受入不可の場合に代替する保管先を特定するための識別子に関するデータが記録される。
【0030】
関連性判定識別子データ領域には、保管先と関連保管先との関係を判定するための識別子に関するデータが記録される。本実施形態では、第1関係としての「同列」又は第2関係としての「系列」を特定するデータが記録される。ここで、「同列」には優先関係がなく横並びの関係にあり、「系列」には優先順位がある関係を示す。そして、「系列」の保管先を利用する場合には、後述する深度を更新し、「同列」の保管先を利用する場合には深度を更新しない。
【0031】
優先順位データ領域には、同列又は系列において搬送を行なう順番を決定するための優先順位に関するデータが記録される。
ここで、図5に示す装置と保管バッファとの関係を説明する。図5においては、装置EQ3の保管先として保管バッファST4が設定されている。この場合、保管先情報記憶手段23には、装置EQ3の装置識別子に対して保管バッファST4の保管先識別子が記録された保管先情報レコード230が記録される。
【0032】
更に、この保管バッファST4の関連保管先として、保管バッファ(ST2,ST3)が設定されている。この場合、関連保管先情報記憶手段24には、保管バッファST4の保管先識別子に対して、関係性判定識別子として「同列」、関連保管先識別子として保管バッファ(ST2,ST3)の保管先識別子が記録された関連保管先情報レコード240が記録される。
【0033】
また、関連保管先情報記憶手段24には、保管バッファST4の保管先識別子に対して、関係性判定識別子として「系列」、関連保管先識別子として保管バッファ(ST6,ST1)の保管先識別子が記録された関連保管先情報レコード240が記録される。更に、関連保管先情報記憶手段24には、保管バッファST1の保管先識別子に対して、関係性判定識別子として「同列」、関連保管先識別子として保管バッファST5の保管先識別子が記録された関連保管先情報レコード240が記録される。
【0034】
関連保管先情報記憶手段24には、保管バッファST6の保管先識別子に対して、関係性判定識別子として「系列」、関連保管先識別子として保管バッファ(ST7,ST8)の保管先識別子が記録された関連保管先情報レコード240が記録される。更に、関連保管先情報記憶手段24には、保管バッファST1の保管先識別子に対して、関係性判定識別子として「系列」、関連保管先識別子として保管バッファST8の保管先識別子が記録された関連保管先情報レコード240が記録される。
【0035】
保管先状況情報記憶手段25には、図2(d)に示すように、保管先における保管状況を特定するための保管先状況情報レコード250が記録されている。この保管先状況情報レコード250は、搬送管理サーバ20の制御部21が各保管バッファにおける利用状況に関する情報を取得した場合に記録される。この保管先状況情報レコード250は、保管先識別子、ステータスに関するデータを含んで構成されている。
【0036】
保管先識別子データ領域には、各保管先を特定するための識別子に関するデータが記録される。
ステータスデータ領域には、この保管先における保管状況を特定するための識別子に関するデータが記録される。具体的には、新たなキャリアを受け入れることができるかどうかを判定するためのフラグ(「受入可能」フラグ又は「受入不可」フラグ)が記録される。
【0037】
限界深度情報記憶手段26には、図2(e)に示すように、保管先の検索を繰り返す限度を特定するための限界深度情報レコード260が記録されている。この限界深度情報レコード260は、保管先の検索を繰り返す限度が決定されて、登録された場合に記録される。この限界深度情報レコード260は、装置識別子、限界深度に関するデータを含んで構成されている。
【0038】
装置識別子データ領域には、各装置を特定するための識別子に関するデータが記録される。
限界深度データ領域には、この装置において保管先の検索を繰り返す回数(検索限度)に関するデータが記録される。
【0039】
このように構成されたシステムを用いて行なう搬送先決定処理を、図3に従って説明する。この処理は、図示しないMES(Manufacturing Execution System)から搬送先決定依頼を受けた場合に実行される。
【0040】
まず、搬送管理サーバ20の制御部21は、搬送先の取得処理を実行する(ステップS1−1)。具体的には、キャリアの搬送を行なう必要が生じた場合に、MESは、搬送管理サーバ20に対して搬送先決定依頼を送信する。この場合、制御部21の搬送先情報取得手段211が搬送先決定依頼を取得する。この搬送先決定依頼は、キャリアの識別子、搬送元や搬送先(目的地)の装置や保管バッファの識別子に関するデータを含んで構成される。
【0041】
次に、搬送管理サーバ20の制御部21は、保管先がキャリアを受入可能かどうかについての判定処理を実行する(ステップS1−2)。具体的には、制御部21の受入可否情報取得手段212が、装置状況情報記憶手段22から搬送先の装置識別子が記録された装置状況レコード220を抽出する。そして、受入可否情報取得手段212は、装置状況レコード220に記録されたステータスに基づいて受入可否を判定する。
【0042】
搬送先の装置において受入可能な場合(ステップS1−2において「YES」の場合)、搬送管理サーバ20の制御部21は、目的搬送先への移動指示処理を実行する(ステッ
プS1−3)。具体的には、制御部21の搬送指示手段213が、受入可否情報取得手段212から搬送先情報(ここでは装置識別子)を取得し、搬送システム10に対して、搬送先の装置にキャリアを搬送させるための指示を送信する。
【0043】
一方、搬送先の装置において受入不可の場合(ステップS1−2において「NO」の場合)、搬送管理サーバ20の制御部21は、目的搬送先の限界深度情報の取得処理を実行する(ステップS1−4)。具体的には、制御部21の保管先検索手段214は、限界深度情報記憶手段26から、搬送先の装置識別子が記録された限界深度情報レコード260を抽出し、このレコードに記録された限界深度を取得する。そして、保管先検索手段214は、検索限度管理手段215に対して、取得した限界深度についての情報を供給する。この場合、検索限度管理手段215は、取得した限界深度をメモリに記録する。
【0044】
次に、搬送管理サーバ20の制御部21は、初期深度設定処理を実行する(ステップS1−5)。具体的には、制御部21の検索限度管理手段215は、この処理における現在深度として、深度の初期値「1」をメモリに記録する。
【0045】
次に、搬送管理サーバ20の制御部21は、一時保管先の取得処理を実行する(ステップS1−6)。具体的には、制御部21の保管先検索手段214は、保管先情報記憶手段23から、搬送先の装置識別子が記録された保管先情報レコード230を抽出する。そして、保管先検索手段214は、この保管先情報レコード230に記録された保管先識別子の保管バッファを一時保管先として特定する。
【0046】
次に、搬送管理サーバ20の制御部21は、この保管先において受入可能かどうかについての判定処理を実行する(ステップS1−7)。具体的には、制御部21の保管先検索手段214は、特定した保管先識別子を、受入可否情報取得手段212に対して供給する。そして、受入可否情報取得手段212は、保管先状況情報記憶手段25から、特定した保管先識別子が記録された保管先状況情報レコード250を抽出する。そして、受入可否情報取得手段212は、保管先状況情報レコード250に記録されたステータスを用いて受入可否を判定する。
【0047】
この保管先において受入可能な場合(ステップS1−7において「YES」の場合)、搬送管理サーバ20の制御部21は、一時保管先への移動指示処理を実行する(ステップS1−8)。具体的には、制御部21の搬送指示手段213は、特定された保管先へのキャリアの搬送を指示する。
【0048】
一方、この保管先において受入不可の場合(ステップS1−7において「NO」の場合)、搬送管理サーバ20の制御部21は、同じ深度に他の一時保管先が存在しているかどうかについての判定処理を実行する(ステップS1−9)。具体的には、制御部21の保管先検索手段214は、関連保管先情報記憶手段24から、この保管先識別子が記録されたすべての関連保管先情報レコード240を抽出する。そして、保管先検索手段214は、関連性判定識別子として「同列」が記録された保管先の有無を判定する。
【0049】
ここで、同列の保管先が存在する場合、同じ深度の保管先として扱う。同じ深度に他の一時保管先が存在する場合(ステップS1−9において「YES」の場合)、搬送管理サーバ20の制御部21は、優先順位の順番で一時保管先の取得処理を実行する(ステップS1−10)。具体的には、制御部21の保管先検索手段214は、抽出した関連保管先情報レコード240の中で、関連性判定識別子として「同列」が記録された保管先の中で、優先順位が最も高い保管先を特定する。そして、この保管先について受入可能かどうかについての判定(ステップS1−7)を繰り返す。
【0050】
一方、同じ深度に他の一時保管先が存在していない場合(ステップS1−9において「NO」の場合)、搬送管理サーバ20の制御部21は、現在深度が搬送先の限界深度に到達しているかどうかについての判定処理を実行する(ステップS1−11)。具体的には、制御部21の検索限度管理手段215は、メモリに記録された搬送先の限界深度と現在深度とを比較する。
【0051】
ここで、現在深度が搬送先の限界深度に到達している場合(ステップS1−11において「YES」の場合)、搬送管理サーバ20の制御部21は、搬送の延期処理を実行する(ステップS1−12)。具体的には、制御部21の搬送指示手段213は、搬送システム10に対して、保管先において受入可能になるまで搬送を延期する。
【0052】
一方、現在深度が搬送先の限界深度に到達していない場合(ステップS1−11において「NO」の場合)、搬送管理サーバ20の制御部21は、「系列」の保管先の有無の判定処理を実行する(ステップS1−13)。具体的には、制御部21の保管先検索手段214は、関連保管先情報記憶手段24から抽出した関連保管先情報レコード240の中で、関連性判定識別子として「系列」が記録された保管先の有無を判定する。
【0053】
ここで、「系列」の保管先が存在する場合(ステップS1−13において「YES」の場合、搬送管理サーバ20の制御部21は、現在深度の更新処理を実行する(ステップS1−14)。具体的には、制御部21の検索限度管理手段215は、メモリに記録された現在深度に対して「1」を加算する。そして、再度、この深度において、優先度の順番に一時保管先の取得処理を繰り返す(ステップS1−6)。
【0054】
以上、本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
・ 上記実施形態では、保管先情報記憶手段23は、各装置においてキャリアの受入ができない場合に一時的に保管する保管バッファを特定するための保管先情報レコード230が記録されている。この保管先情報レコード230は、装置識別子、保管先識別子に関するデータを含んで構成されている。更に、関連保管先情報記憶手段24は、相互に関連付けられた保管先を特定するための関連保管先情報レコード240が記録されている。この関連保管先情報レコード240は、保管先識別子、関連保管先識別子、関連性判定識別子、優先順位に関するデータを含んで構成されている。そして、この保管先において受入不可の場合(ステップS1−7において「NO」の場合)、搬送管理サーバ20の制御部21は、同じ深度に他の一時保管先が存在しているかどうかについての判定処理を実行する(ステップS1−9)。更に、同じ深度に他の一時保管先が存在していない場合(ステップS1−9において「NO」の場合)、搬送管理サーバ20の制御部21は、現在深度を確認し(ステップS1−11)、「系列」の保管先の有無の判定処理を実行する(ステップS1−13)。これにより、装置においてキャリアの受入ができない場合に代替する保管先を関連付けておくことにより、この保管先に関連付けられている保管先を順次、特定することができる。従って、関連保管先情報記憶手段24に、保管バッファの相互関係を記録しておくことにより、効率的に関連保管先の特定を行なうことができる。また、保管バッファ同士の相互関係を記録するだけでよいので、代替保管先の登録も容易である。
【0055】
・ 上記実施形態では、限界深度情報記憶手段26は、保管先の検索を繰り返す限度を特定するための限界深度情報レコード260が記録されている。この限界深度情報レコード260は、装置識別子、限界深度に関するデータを含んで構成されている。そして、現在深度が搬送先の限界深度に到達している場合(ステップS1−11において「YES」の場合)、搬送管理サーバ20の制御部21は、搬送の延期処理を実行する(ステップS1−12)。これにより、必要以上の検索を抑制することができる。
【0056】
・ 上記実施形態では、関連保管先情報記憶手段24の関連保管先情報レコード240
は、保管先識別子、関連保管先識別子、関連性判定識別子、優先順位に関するデータを含んで構成されている。関連性判定識別子データ領域には、保管先と関連保管先との関係を判定するための識別子に関するデータが記録される。本実施形態では、「同列」又は「系列」を特定するデータが記録される。これにより、同じ深度にある「同列」と、深度が異なる「系列」とを組み合わせることにより、保管バッファについて多様な相互関係を設定することができる。
【0057】
なお、上記実施形態は、以下の態様に変更してもよい。
○ 上記実施形態では、半導体素子の製造ラインにおけるプロセス装置や保管バッファ間において、搬送対象物であるキャリアの搬送への利用を想定したが、これに限定されるものではない。
【0058】
○ 上記実施形態では、同じ深度に他の一時保管先が存在する場合(ステップS1−9において「YES」の場合)、搬送管理サーバ20の制御部21は、優先順位の順番で一時保管先の取得処理を実行する(ステップS1−10)。一時保管先の検索方向は、優先順位の順に限定されるものではない。例えば、搬送管理サーバ20の制御部21が、各保管先の保管バッファもついて受入不可までの飽和度(割合)を定期的に取得し、保管先状況情報記憶手段25に、この飽和度を記録しておく。そして、搬送管理サーバ20の制御部21は、飽和度が低い保管バッファを一時保管先と特定するように構成することも可能である。
【0059】
○ 上記実施形態では、保管先情報記憶手段23には、保管先情報レコード230が記録されている。この保管先情報レコード230は、装置識別子、保管先識別子に関するデータを含んで構成されている。これに加えて、キャリア(加工対象)の属性に応じて保管先を設定できるようにしてもよい。具体的には、保管先情報レコード230において、装置識別子、キャリア属性に対して保管先識別子に関するデータを関連付けておく。そして、搬送管理サーバ20の制御部21は、搬送先決定依頼において更にキャリア属性に関するデータを取得し、これに応じて保管先情報レコード230を抽出することにより、保管先を決定する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態のシステムの概略図。
【図2】各情報記憶手段に記録されたデータの説明図であって、(a)は装置状況情報記憶手段、(b)は保管先情報記憶手段、(c)は関連保管先情報記憶手段、(d)は保管先状況情報記憶手段、(e)は限界深度情報記憶手段に記録されたデータの説明図。
【図3】本実施形態の処理手順の説明図。
【図4】搬送システムの接続関係の説明図。
【図5】装置、保管先、関連保管先の関係の説明図。
【符号の説明】
【0061】
10…搬送管理システム、20…搬送管理サーバ、21…制御部、211…搬送先情報取得手段、212…受入可否情報取得手段、213…搬送指示手段、214…保管先検索手段、215…検索限度管理手段、22…装置状況情報記憶手段、23…保管先情報記憶手段、24…関連保管先情報記憶手段、25…保管先状況情報記憶手段、26…限界深度情報記憶手段、EQ1〜EQ4…装置、ST1〜ST8…保管バッファ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送先の装置識別子に対して、受入可否情報を記録した装置状況情報記憶手段と、
装置識別子に対して、一時保管先の保管先識別子を記録した保管先情報記憶手段と、
保管先識別子に対して、代替の保管先識別子を関連付けて記憶した関連保管先情報記憶手段と、
保管先の保管先識別子に対して、受入可否情報を記録した保管先状況情報記憶手段と、
搬送対象物の移動を管理する制御手段とを備えた搬送管理システムであって、
前記制御手段が、
目的地の装置識別子を取得した場合、前記装置状況情報記憶手段から、目的地の装置識別子の受入可否情報を取得する手段と、
前記受入可否情報において受入可能であった場合には、目的地への搬送を指示し、
受入不可であった場合には、前記保管先情報記憶手段から、この目的地の装置識別子に関連付けられた保管先識別子を特定する手段と、
前記保管先状況情報記憶手段から、この保管先識別子の受入可否情報を取得し、
前記受入可否情報において受入可能であった場合には、この保管先識別子の保管先への搬送を指示し、
受入不可であった場合には、前記関連保管先情報記憶手段から、この保管先識別子に関連付けられた代替の保管先識別子を特定する保管先検索処理を実行する手段と、
保管先が見つかるまで、前記保管先検索処理を繰り返す手段と
を備えたことを特徴とする搬送管理システム。
【請求項2】
装置識別子毎に限界深度に関する情報を記録した限界深度情報記憶手段を更に備え、
装置識別子に関連付けられた保管先識別子を特定する場合には、検索対象深度として初期値を設定し、
前記保管先検索処理を実行した場合には、前記検索対象深度として次深度を設定し、
前記検索対象深度が限界深度に達するまで前記保管先検索処理を繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の搬送管理システム。
【請求項3】
前記関連保管先情報記憶手段においては、代替の保管先識別子に優先順位が関連付けられて記憶されており、
優先順位が高い順番に保管先検索処理を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送管理システム。
【請求項4】
前記関連保管先情報記憶手段には、保管先の保管先識別子に対して、第1関係の保管先識別子及び第2関係の保管先識別子を関連付けて記憶し、
前記保管先検索処理において、第1関係の保管先識別子を優先的に検索し、
第2関係の保管先識別子を特定した場合にのみ、検索対象深度として次深度を設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の搬送管理システム。
【請求項5】
搬送先の装置識別子に対して、受入可否情報を記録した装置状況情報記憶手段と、
装置識別子に対して、一時保管先の保管先識別子を記録した保管先情報記憶手段と、
保管先識別子に対して、代替の保管先識別子を関連付けて記憶した関連保管先情報記憶手段と、
保管先の保管先識別子に対して、受入可否情報を記録した保管先状況情報記憶手段と、
搬送対象物の移動を管理する制御手段とを備えた搬送管理システムを用いて、搬送を管理するための方法であって、
前記制御手段が、
目的地の装置識別子を取得した場合、前記装置状況情報記憶手段から、目的地の装置識別子の受入可否情報を取得する段階と、
前記受入可否情報において受入可能であった場合には、目的地への搬送を指示し、
受入不可であった場合には、前記保管先情報記憶手段から、この目的地の装置識別子に関連付けられた保管先識別子を特定する段階と、
前記保管先状況情報記憶手段から、この保管先識別子の受入可否情報を取得し、
前記受入可否情報において受入可能であった場合には、この保管先識別子の保管先への搬送を指示し、
受入不可であった場合には、前記関連保管先情報記憶手段から、この保管先識別子に関連付けられた代替の保管先識別子を特定する保管先検索処理を実行する段階と、
保管先が見つかるまで、前記保管先検索処理を繰り返す段階と
を備えたことを特徴とする搬送管理方法。
【請求項6】
搬送先の装置識別子に対して、受入可否情報を記録した装置状況情報記憶手段と、
装置識別子に対して、一時保管先の保管先識別子を記録した保管先情報記憶手段と、
保管先識別子に対して、代替の保管先識別子を関連付けて記憶した関連保管先情報記憶手段と、
保管先の保管先識別子に対して、受入可否情報を記録した保管先状況情報記憶手段と、
搬送対象物の移動を管理する制御手段とを備えた搬送管理システムを用いて、搬送を管理するためのプログラムであって、
前記制御手段を、
目的地の装置識別子を取得した場合、前記装置状況情報記憶手段から、目的地の装置識別子の受入可否情報を取得する手段、
前記受入可否情報において受入可能であった場合には、目的地への搬送を指示し、
受入不可であった場合には、前記保管先情報記憶手段から、この目的地の装置識別子に関連付けられた保管先識別子を特定する手段、
前記保管先状況情報記憶手段から、この保管先識別子の受入可否情報を取得し、
前記受入可否情報において受入可能であった場合には、この保管先識別子の保管先への搬送を指示し、
受入不可であった場合には、前記関連保管先情報記憶手段から、この保管先識別子に関連付けられた代替の保管先識別子を特定する保管先検索処理を実行する手段、
保管先が見つかるまで、前記保管先検索処理を繰り返す手段
として機能させることを特徴とする搬送管理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−70322(P2010−70322A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239889(P2008−239889)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(592131906)みずほ情報総研株式会社 (187)
【Fターム(参考)】