説明

搬送装置のブレーキ装置及び搬送装置

【課題】搬送装置において、勾配が強ければ物品の搬送は確実になるが停止時に過度の衝撃が発生し勾配が弱ければ停止の衝撃は抑制できるが搬送の確実性が低下するという二律背反した問題を解決し、確実な物品の搬送と所定停止位置での停止とを可能にする。
【解決手段】物品Wに当接して回転自在となる原節ローラ20と、取付部27を支点として従節杆部25側を揺動自在に設けられた梃子部材21と、梃子部材21に対して揺動に抗した負荷を生じさせる負荷部材22とを有し、原節ローラ20と梃子部材21の従節杆部25との間には原節ローラ20の回転を梃子部材21の揺動に変換させるカム部34が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラコンベアなどの搬送装置に対し、好適に採用することのできるブレーキ装置と、このブレーキ装置を具備した搬送装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の棚部を有する物品収納用ラックにおいて、各棚部に設ける物品支持部材としてローラコンベアなどの搬送装置を採用し、且つこの搬送装置に対し、棚の奥方(例えば物品の投入口とする)から手前に向けて下り勾配を付したものが知られている。
このような搬送装置付きのラックでは、棚の手前側(物品の取出口とする)で物品を取り出せば、棚奥方側の物品が順次、自動的に棚手前に移動し、次の物品取り出しに控えるようになり、至便とされている。
このような場合に採用される搬送装置としては、複数本のローラ支持枠を、その長手方向が搬送方向となるように平行に並べて設置し、各ローラ支持枠の長手方向に沿わせるように、互いに所定間隔で複数のフリーローラを保持させて成るローラテーブルを使用することが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
なお、各ローラ支持枠の前端(棚の最も手前となる位置)には、所謂、ストッパとしての下受部材が取り付けられており、棚奥方から棚手前へ移動してきた物品をこの下受部材で係止させて棚から落下するのを防止するようにしてあった。
【特許文献1】実公平3−40808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように、ローラテーブルに勾配を付してこれを搬送装置とする場合、この搬送装置上を搬送される物品は、重量が重ければ重いほど、また搬送距離が長ければ長いほど加速度が増し、搬送速度が速くなる傾向にある。
物品の搬送速度が速すぎた場合、物品が取出口の下受部材に係止するときの衝撃が大きくなり、大きな衝突音や振動が発生することになり、甚だしい場合には物品の破損や取出口での位置ズレ、又は落下に至るおそれもあった。
これを回避するためにローラテーブルの勾配を緩やかにすると、場合によっては、取出口側の物品を取り出しても次位の物品が搬送抵抗で動かず、結果、この次位の物品が取出口まで搬送されずに搬送装置上で渋滞錯綜を起こしてしまう、という不具合に至るおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、勾配の強弱によって生じる二律背反した問題(勾配が強ければ物品の搬送は確実になるが停止時に過度の衝撃が発生し勾配が弱ければ停止の衝撃は抑制できるが搬送の確実性が低下するという問題)を解決し、確実な物品の搬送と所定停止位置での停止とが得られるようにした搬送装置のブレーキ装置と、このブレーキ装置を具備して成る搬送装置とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る搬送装置のブレーキ装置は、搬送される物品に当接可能な状態で回転自在に設けられる原節ローラと、揺動支点となる取付部から原節ローラへ向けて従節杆部を延出させた状態で当該従節杆部側を揺動自在に設けられた梃子部材と、この梃子部材に対して揺動に抗した負荷を生じさせる負荷部材とを有している。
そして上記原節ローラと梃子部材の従節杆部との間には、原節ローラの回転を梃子部材の揺動に変換させるカム部が設けられている。
【0007】
このような構成であると、物品との当接で原節ローラが回転したときに、カム部の作用で梃子部材が揺動し、このときの梃子部材の揺動に対して負荷部材により負荷が加えられるようになり、結果、この負荷が梃子部材からの反作用となって、原節ローラに回転抵抗を生じさせるべく、伝えられることとなる。そのため、この原節ローラを介して物品の搬送状態に減速作用(制動作用)が付与されるのである。
このようにして、搬送中の物品を確実に減速させることができるので、搬送装置自体には、物品を確実に搬送させることができる勾配を付することができる。すなわち、確実な物品の搬送が可能であると共に、物品を所定停止位置で停止させることができるようになる(振動や騒音を伴わない静かな停止が可能になる)。
【0008】
原節ローラは、搬送される物品の底面に当接する状態で設けることができる。この場合、梃子部材の取付部は、原節ローラの上流又は下流で回転自在に保持されるローラの側部に併設された位置関係にあるものとすればよく、従って梃子部材は、従節杆部を上下揺動させるような構成となる。
このようにすると、原節ローラは物品の自荷重を利用して確実な当接状態となるので、確実で且つ損失の少ない回転力を得ることができる。従って、カム部の作用、梃子部材の揺動も確実なものとなり、結果として物品の減速作用にも高い確実性(信頼性)が得られるものとなる。
【0009】
カム部は、原節ローラの回転により梃子部材の従節杆部に押し下げ作用を生じるように、原節ローラの外周寄りで側方へ突出するカムピンを有したものとすればよい。
このような構造は、カム部として機構的に簡潔でありながら確実な動作が得られる利点がある。
負荷部材は、原節ローラから遠ざかる方向で梃子部材の取付部に対して突出された作動杆部と、この作動杆部に設けられたカウンターウエイトとを有したものとすればよい。
すなわち、梃子部材は、従節杆部側が押し下げられることで作動杆部側が上昇するから、この作動杆部に設けられたカウンターウエイトも一緒に上昇するようになる。このときの梃子部材の揺動に費やされる運動エネルギー(カウンターウエイトを上昇させる力)が、梃子部材の従節杆部からカムピンを介して原節ローラへと伝わるので、結果として原節ローラにとって回転抵抗となる。そのため、それだけ物品に対して減速作用が生じることになる。
【0010】
このような構造は、負荷部材として機構的に簡潔でありながら確実な動作が得られる利点がある。
カムピンは、梃子部材の揺動によって上昇されたカウンターウエイトが、その後の動作で下降し終わる前に、繰り返して従節杆部に押し下げ作用を付与できるように、原節ローラの周方向に所定間隔をおいて複数設けられたものとすればよい。
すなわち、カウンターウエイトが下降しようとする運動エネルギーを一旦打ち消すと同時に、更にカウンターウエイトを上昇に転じさせるための過大な負荷が、上昇しようとする従節杆部とこれを再度、押し下げようとするカムピンとの間で、二次的に生じることになる。
【0011】
そのため、この過大で且つ二次的な負荷が、原節ローラに回転抵抗として作用し、それだけ物品に対する減速作用が確実に、また減速効果の強いものとして得られることになる。
なお、このよう現象は、原節ローラが速く回転するとき、すなわち物品が速く搬送されるときである。これに対し、停止している物品が自走可能な勾配(自走勾配)上にあって、自走を開始しようとするときには、原節ローラがゆっくり回転し、カウンターウエイトがゆっくりと押し上げられる状態となるので、再度、カウンターウエイトが下降、上昇を繰り返すまでに時間的余裕ができる。
【0012】
そのため、このようなカウンターウエイトの動作は、物品に対する減速作用として作用することがなく、結果、原節ローラの初期回転は軽快なものとなる。すなわち、この原節ローラはブレーキ装置を構成する要素でありながら、停止した物品が自走を開始する時点では、搬送装置に具備される他のフリーローラと同等の転がり状態を発揮することになる。
このことにより、搬送装置としては、ブレーキ装置を具備させることに関して、わざわざ追加勾配を付与させる(一般的に採用される自走勾配を強めるような措置を採る)必要はない。
【0013】
カウンターウエイトには、パッド部材を設けておくとよい。
このようにすると、カウンターウエイトが下降したときに周辺部材(例えば、搬送装置が具備するローラ支持枠の内底)との直接的な接触を防止し、衝撃や振動、騒音を軽減乃至防止できることになる。
一方、本発明に係る搬送装置は、長手方向を搬送方向に向けた条材として形成されたローラ支持枠に対し、その長手方向で所定間隔をおいてフリーローラが設けられたローラコンベアタイプであって、ローラ支持枠の長手方向で相互隣接する複数のフリーローラ設置位置に対し、フリーローラに代えて本発明に係るブレーキ装置が設けられたものである。
【0014】
ブレーキ装置において原節ローラ、梃子部材の取付部、及び負荷部材の相互間隔と、ローラ支持枠のフリーローラ間隔とを、互いに一致して設けておくのが好ましい。
このようにすると、ローラコンベアから複数のフリーローラを取り外し(又は最初から取り付けないものとし)、この空いたスペースを利用して、原節ローラ、梃子部材、負荷部材をそのまま埋め込むように取り付けることができる。
ローラ支持枠にはフリーローラの回転軸を差し込む軸受凹部が設けられており、前記ブレーキ装置の原節ローラはローラ支持枠の軸受凹部に嵌る原節ローラ軸を有してこの原節ローラ軸まわりに回転自在とされ且つ梃子部材の取付部はローラ支持枠の軸受凹部に嵌る支点軸を有してこの支点軸を中心に揺動自在とすればよい。
【0015】
このようにすることで、 ローラコンベア側に改造などの手間をかけずに、このローラコンベアに対して本発明に係るブレーキ装置を簡単に組み込むことができるという利点を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る搬送装置のブレーキ装置及び搬送装置では、勾配の強弱によって生じる二律背反した問題(勾配が強ければ物品の搬送は確実になるが停止時に過度の衝撃が発生し勾配が弱ければ停止の衝撃は抑制できるが搬送の確実性が低下するという問題)を解決し、確実な物品の搬送と所定停止位置での停止とが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図8乃至図10は本発明に係るブレーキ装置2を具備して成る搬送装置1の一実施形態を示しており、また図1乃至図7は上記ブレーキ装置2の一実施形態を示している。
搬送装置1は、複数の棚部を有する物品収納用ラック等において、各棚部で物品Wを支持するための部材として採用されており、棚の奥方側が物品Wの投入口とされ、棚の手前側が物品Wの取出口とされている。
図8乃至図10に示すように、この搬送装置1は、複数本(図例では2本)のローラコンベア3をその長手方向が搬送方向となるように平行に並べて設置して成るローラテーブルを構成したもので、棚の奥方から手前に向けて下り勾配が付されたものとしてある。
【0018】
すなわち、棚の奥方に設けられた投入口で物品Wを載せると、物品Wは搬送装置1上を下り勾配にしたがって手前側へと搬送され、棚の手前側に設けられた取出口へ至るようになっている。この取出口には、所謂、ストッパとしての下受部材(図示略)を設けて、物品Wを係止できるようにしておけばよい。
各ローラコンベア3は、断面コ字状の条材として形成されたローラ支持枠6に対し、その長手方向で互いに所定間隔となるように複数のフリーローラ7(回転自在のローラ)が保持されて成る。このうち、ローラ支持枠6の長手方向(搬送方向)で相互隣接する複数(図例では3つ)のフリーローラ設置位置に対し、フリーローラ7に代えてブレーキ装置2が組み込まれている。
【0019】
なお、ローラコンベア3の長手方向において、ブレーキ装置2が設けられる位置は、棚の取出口に対してその近傍となる上流位置とすればよいが、具体的には、物品Wの大きさや重さ、搬送距離、勾配の程度(要は物品Wの搬送速度)に応じて、制動に最適な位置を適宜選択できるものとする。
場合によっては、ローラコンベア3の長手方向に沿って、複数のブレーキ装置2を設けることもできる。また搬送装置1を構成する全てのローラコンベア3に対して、それぞれブレーキ装置2を設ける態様と、いずれかのローラコンベア3にだけブレーキ装置2を設ける態様とを選択することも、適宜行えるものである。
【0020】
ローラコンベア3のローラ支持枠6は、帯板素材を断面コ字状に折曲することで、コ字状断面の内側にフリーローラ7が嵌る溝部10を設けたものである。溝部10の両側に形成される溝壁11は、二重壁構造となるように帯板素材の両側縁が折り返されて成り、この溝壁11の溝内側となる壁面11aには、フリーローラ7の回転軸12を嵌め入れる軸受凹部13が設けられている。
また溝壁11の溝外側となる壁面11bには、軸受凹部13に嵌め入れられた回転軸12がガタツキを起こさず、また抜け止めされるように、壁面11a,11bの相互間で斜め下方へ向けて切り起こし片14が突設されている。
【0021】
図1乃至図7に示すように、ブレーキ装置2は、原節ローラ20と、梃子部材21と、負荷部材22とを有している。本実施形態において梃子部材21は、一端側に従節杆部25が設けられ他端側に作動杆部26が設けられ、これら従節杆部25と作動杆部26との中間にローラ支持枠6に取り付けるための取付部27が設けられて成る長細い部材とされている。
この梃子部材21は、ローラ支持枠6に対し、従節杆部25を搬送方向上流側へ向け、作動杆部26を搬送方向下流側へ向けるようにして取り付けられるものであり、従節杆部25に対応する部分に原節ローラ20が配置され、また作動杆部26を含んで負荷部材22が構成されている。
【0022】
すなわち、搬送装置1の搬送方向において、上流側から下流側へ向けて、原節ローラ20、梃子部材21の取付部27、負荷部材22がこの順番で並んで設けられていることになる。
図5に示すように、原節ローラ20は、その両側へ突出する原節ローラ軸30を有しており、この原節ローラ軸30をローラ支持枠6の両溝壁11間へ架け渡すようにして軸受凹部13に嵌め入れることで、この原節ローラ軸30まわりで回転自在に保持されるようになる。
【0023】
軸受凹部13に対して原節ローラ軸30を押し込むようにすれば、原節ローラ軸30の軸端で切り起こし片14が押され、この切り起こし片14が溝外側の壁面11bから突出する状態を小さくすべく弾性変形し、その後、原節ローラ軸30の通過後に元の突出状態に弾性復帰する。
このような構造であるため、ローラ支持枠6に対する原節ローラ20の装着は極めて簡単であり、しかも軸受凹部13内での原節ローラ軸30のガタツキは防止され、また軸受凹部13に対する原節ローラ軸30の抜け止め作用が得られるようになる。
【0024】
この原節ローラ20には、側面の外周寄り位置から側方へ向けてカムピン31が突出して設けられている。このカムピン31は、原節ローラ20の回転に伴って円周移動することになるため、この円周移動の途中で梃子部材21の従節杆部25に当接し、そのまま従節杆部25側を押し下げ、その後、当接状態を解放するようになる。
すなわち、梃子部材21の従節杆部25と原節ローラ20のカムピン31とにより、原節ローラ20の回転を梃子部材21の揺動へと変換するためのカム部34が構成されている。
【0025】
本実施形態では、原節ローラ20の側面にフォローセットビスを約半分ねじ込み、残り半分を外部に突出させるようにすることで、この突出部分によってカムピン31を形成させてある。なお、フォローセットビスに代えて圧入ピンなどでカムピン31を形成させることもできる。
またカムピン31は、原節ローラ20の周方向に所定間隔をおいて複数個設けてある(図例では120°間隔で3個としてある)。すなわち、原節ローラ20が1回転すると、梃子部材21の従節杆部25に対して3個のカムピン31が一定間隔で断続的に当接し、この当接のたびに梃子部材21は従節杆部25側が押し下げられるようになる。
【0026】
梃子部材21は、上記説明から明かなように、原節ローラ20よりも搬送方向の下流位置に配置される取付部27を揺動支点として、この取付部27より上流側へ延びる従節杆部25と下流側へ延びる作動杆部26とを有したものである。
すなわち、原節ローラ20の回転に伴い、従節杆部25側がカムピン31により押し下げられるごとに、それとは交代的に作動杆部26が押し上げられることになり、従節杆部25と作動杆部26とは交互に上下揺動する関係となっている。
図6に示すように、この梃子部材21の取付部27は、ローラ支持枠6の両溝壁11間で架け渡される支点軸33として形成されており、この支点軸33の中央部分にはローラ32が回転自在に設けられている(取付部27がローラ32の側部に併設された位置関係となっている)。このローラ32は、ローラコンベア3における他のフリーローラ7と同じ高さに保持されており、搬送装置1で搬送される物品Wの底面に当接するので、搬送装置1としては、ブレーキ装置2を組み付ける前と同様に、ローラ間隔が一定に保たれた状態となっている。
【0027】
梃子部材21をローラ支持枠6に対して装着する構造及びその手順(方法)は、上記した原節ローラ20の場合と略同様であり、支点軸33をローラ支持枠6の両溝壁11間へ架け渡すようにして軸受凹部13に押し込むようにするだけでよい。
すなわち、支点軸33の軸端で切り起こし片14が押され、この切り起こし片14が溝外側の壁面11bから突出する状態を小さくすべく弾性変形し、その後、支点軸33の通過後に元の突出状態に弾性復帰する。従って、ローラ支持枠6に対する梃子部材21の装着も極めて簡単である。
【0028】
図7に示すように、負荷部材22は、梃子部材21に設けられた作動杆部26と、この作動杆部26から側方へ向けて円柱状に突出して設けられたカウンターウエイト35とを有している。本実施形態では、このカウンターウエイト35の周りに、円筒形のパッド部材36が外嵌されたものとした。
これらカウンターウエイト35及びパッド部材36は、いずれも梃子部材21に対して固定状態にあり回転はしない。なお、回転自在に設けることも可能である。
カウンターウエイト35は例えば鉛や黄銅、鉄などにより形成されており、またパッド部材36は例えばゴムや樹脂、スポンジなどにより形成されている。
【0029】
このカウンターウエイト35が梃子部材21の作動杆部26に設けられていることで、梃子部材21は常態(従節杆部25が無負荷のとき)として、作動杆部26側が下降していることになる。
なお本実施形態において、カウンターウエイト35は、片フランジ35aを有する本体部35bと、この本体部35bに対して片フランジ35aとは反対側にネジ固着されるフランジ部35cとを有したものとして、これら本体部35bとフランジ部35cとで梃子部材21及びパッド部材36を挟持する構造とした。
【0030】
このような構成のブレーキ装置2が装備されて成る搬送装置1では、搬送された物品Wが原節ローラ20上を通過するとき、物品Wの底面が原節ローラ20に当接してこれを回転させるようになり、この原節ローラ20の回転に伴い、カムピン31が円周移動しつつ梃子部材21の従節杆部25に当接してこれを押し下げるようになる。
梃子部材21は、従節杆部25側が押し下げられることで作動杆部26側が上昇するから、この作動杆部26に設けられたカウンターウエイト35も一緒に上昇するようになる。このときの梃子部材21の揺動に費やされる運動エネルギー(カウンターウエイト35を上昇させる力)が、梃子部材21の従節杆部25からカムピン31を介して原節ローラ20へと伝わるので、結果として原節ローラ20にとって回転抵抗となる。そのため、それだけ物品Wに対して減速作用(制動作用)が生じることになる。
【0031】
殊に、本実施形態では原節ローラ20に対して複数本(図例では3本)のカムピン31が設けられているため、梃子部材21の揺動によって上昇されたカウンターウエイト35が下降し終わる前に、繰り返して従節杆部25に押し下げ作用が付与される状態が起こる。
そのため、カウンターウエイト35が下降しようとする運動エネルギーに対し、これを一旦打ち消すと同時に、更にカウンターウエイト35を上昇に転じさせるための過大な負荷が、上昇しようとする従節杆部25とこれを再度、押し下げようとするカムピン31との間で、二次的に生じることになる。
【0032】
これにより、この過大で且つ二次的な負荷が、原節ローラ20に回転抵抗として作用し、それだけ物品Wに対する減速作用(制動作用)は確実に、また減速効果の強いものとして得られることになる。
これらのことから、搬送装置1自体には、物品Wを確実に搬送させることができる、十分な勾配を付することができ、結果として、確実な物品Wの搬送も可能となるのである。
なお、このよう現象は、原節ローラ20が速く回転するとき、すなわち物品Wが速く搬送されるときである。これに対し、停止している物品Wが自走可能な勾配(自走勾配)上にあって、自走を開始しようとするときには、原節ローラ20がゆっくり回転し、カウンターウエイト35がゆっくりと押し上げられる状態となるので、再度、カウンターウエイト35が下降、上昇を繰り返すまでに時間的余裕ができる。
【0033】
そのため、このようなカウンターウエイト35の動作は、物品Wに対する減速作用として作用することがなく、結果、原節ローラ20の初期回転は軽快なものとなる。すなわち、この原節ローラ20はブレーキ装置2を構成する要素でありながら、停止した物品Wが自走を開始する時点では、搬送装置1に具備される他のフリーローラ7と同等の転がり状態を発揮することになる。
このことにより、搬送装置1としては、ブレーキ装置2を具備させることに関して、わざわざ追加勾配を付与させる(一般的に採用される自走勾配を強めるような措置を採る)必要はない。
【0034】
なお、原節ローラ20と梃子部材21の取付部27と負荷部材22との相互間隔は、ローラコンベア3のフリーローラ間隔と一致しているので、ローラコンベア3から複数(図例では3つ)のフリーローラ7を取り外し(又は最初から取り付けないものとし)、この空いたスペースを利用して、原節ローラ20、梃子部材21、負荷部材22をそのまま組み込むことができる。
すなわち、ローラコンベア3においてローラ支持枠6にフリーローラ7(回転軸12)を装着する構造(図8参照)と、原節ローラ20(原節ローラ軸30)を装着する構造(図5参照)と、梃子部材21(支点軸33)を装着する構造(図6参照)とが共通であり、ローラコンベア3側に改造などの手間をかけずに、このローラコンベア3に対してブレーキ装置2を簡単に組み込むことができるという利点がある。
【0035】
また、搬送装置1として、その搬送方向の適宜位置を選んでブレーキ装置2を組み込むことが可能になり、最適な位置決めができる利点にも繋がる。
本実施形態のブレーキ装置2では、負荷部材22のカウンターウエイト35に対してパッド部材36を設けているので、カウンターウエイト35が下降するときに、カウンターウエイト35がローラ支持枠6の内底と接触することがなく、もって衝撃や振動、騒音が軽減乃至防止されるという利点に繋がる。
なお、カウンターウエイト35が上昇したときには物品Wの底面に当接しないよう、構成すればよいものであるが、物品Wの底面に当接するように構成することもできる。このようにした場合であれば、パッド部材36が物品Wに対する保護部材や、ブレーキパッドとしての作用をも奏することになり、好適と言える。
【0036】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
例えば、搬送方向に対する原節ローラ20、梃子部材21、負荷部材22の配置関係(上流側、下流側の位置関係)は特に限定されるものではない。
また物品Wに対し、その底面以外に原節ローラ20が当接するように構成することも可能である。
負荷部材22はカウンターウエイト35を用いる代わりに、梃子部材21の従節杆部25に対して押し下げの下方側にバネを設けたり、支点軸33まわりにコイルバネ(従節杆部25を跳ね上げる向きに作用するバネ)を設けたりする構造に置換することもできる。
【0037】
ローラコンベア3において、ローラ支持枠6は断面コ字状をしたものに限定されるものではなく、断面L型やI型、H型等をはじめ、その他、適宜形状を採用可能である。
ローラコンベア3は、物品Wの底面を横切るほど長い長尺のローラを具備したものとして構成してもよい。この場合、ブレーキ装置2においても、原節ローラ20や梃子部材21に設けるローラ32や負荷部材22を、幅方向に長い長尺のローラとして形成することができる。
ローラコンベア3は、シュートなどに置換することも可能である。
【0038】
なお、搬送装置1及びブレーキ装置2はラックの棚部に設ける物品支持部材として採用することが限定されるものではない。
その他、細部の構造、機構、部材形状、部材材質などについても適宜変更可能であり、例えば原節ローラ20においてカム部31の形状や個数など、適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図2からの動作状況を示した側断面図である。
【図2】図3のA−A線断面図である。
【図3】図4に対応する平面図である。
【図4】図10の一部(本発明に係るブレーキ装置)を拡大して示した斜視図である。
【図5】図3のB−B線断面図である。
【図6】図3のC−C線断面図である。
【図7】図3のD−D線断面図である。
【図8】図3のE−E線断面図である。
【図9】ローラ支持枠の一部を拡大して示した斜視図である。
【図10】本発明に係るブレーキ装置を具備して成る搬送装置の一実施形態を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 搬送装置
2 ブレーキ装置
3 ローラコンベア
6 ローラ支持枠
7 フリーローラ
12 回転軸
13 軸受凹部
20 原節ローラ
21 梃子部材
22 負荷部材
25 従節杆部
26 作動杆部
27 取付部
30 原節ローラ軸
31 カム部
32 ローラ
33 支点軸
35 カウンターウエイト
36 パッド部材
W 物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される物品(W)に当接可能な状態で回転自在に設けられる原節ローラ(20)と、
揺動支点となる取付部(27)から原節ローラ(20)へ向けて従節杆部(25)を延出させた状態で当該従節杆部(25)側を揺動自在に設けられた梃子部材(21)と、
この梃子部材(21)に対して揺動に抗した負荷を生じさせる負荷部材(22)とを有し、
上記原節ローラ(20)と梃子部材(21)の従節杆部(25)との間には原節ローラ(20)の回転を梃子部材(21)の揺動に変換させるカム部(34)が設けられている
ことを特徴とする搬送装置のブレーキ装置。
【請求項2】
前記原節ローラ(20)は、搬送される物品(W)の底面に当接する状態で設けられていると共に、前記梃子部材(21)の取付部(27)は、原節ローラ(20)の上流又は下流で回転自在に保持されるローラ(32)の側部に併設された位置関係にあり、この梃子部材(21)が従節杆部(25)を上下揺動させるようになっていることを特徴とする請求項1記載の搬送装置のブレーキ装置。
【請求項3】
前記カム部(34)は、原節ローラ(20)の回転により梃子部材(21)の従節杆部(25)に押し下げ作用を生じるように原節ローラ(20)の外周寄りで側方へ突出するカムピン(31)を有していることを特徴とする請求項2記載の搬送装置のブレーキ装置。
【請求項4】
前記負荷部材(22)は、原節ローラ(20)から遠ざかる方向で梃子部材(21)の取付部(27)に対して突出された作動杆部(26)と、この作動杆部(26)に設けられたカウンターウエイト(35)とを有していることを特徴とする請求項3記載の搬送装置のブレーキ装置。
【請求項5】
前記カムピン(31)は、梃子部材(21)の揺動によって上昇されたカウンターウエイト(35)がその後の動作で下降し終わる前に、繰り返して従節杆部(25)に押し下げ作用を付与できるように、原節ローラ(20)の周方向に所定間隔をおいて複数設けられていることを特徴とする請求項4記載の搬送装置のブレーキ装置。
【請求項6】
前記カウンターウエイト(35)にはパッド部材(36)が設けられていることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の搬送装置のブレーキ装置。
【請求項7】
長手方向を搬送方向に向けた条材として形成されたローラ支持枠(6)に対し、その長手方向で所定間隔をおいてフリーローラ(7)が設けられたローラコンベアタイプの搬送装置であって、ローラ支持枠(6)の長手方向で相互隣接する複数のフリーローラ設置位置に対し、フリーローラ(7)に代えて請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載したブレーキ装置(2)が設けられていることを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
前記ブレーキ装置(2)において原節ローラ(20)、梃子部材(21)の取付部(27)、及び負荷部材(22)の相互間隔と、ローラ支持枠(6)のフリーローラ間隔とが互いに一致して設けられていることを特徴とする請求項7記載の搬送装置。
【請求項9】
前記ローラ支持枠(6)にはフリーローラ(7)の回転軸(12)を差し込む軸受凹部(13)が設けられており、前記ブレーキ装置(2)の原節ローラ(20)はローラ支持枠(6)の軸受凹部(13)に嵌る原節ローラ軸(30)を有してこの原節ローラ軸(30)まわりに回転自在とされ且つ梃子部材(21)の取付部(27)はローラ支持枠(6)の軸受凹部(13)に嵌る支点軸(33)を有してこの支点軸(33)を中心に揺動自在とされていることを特徴とする請求項8記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−107800(P2009−107800A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283493(P2007−283493)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(591225291)双福鋼器株式会社 (4)
【出願人】(501231727)
【Fターム(参考)】