説明

搬送装置

【課題】駆動制御が複雑化するのを抑制しながら、温度変化に起因するワークの搬送位置の精度の低下を抑制する。
【解決手段】搬送装置では、制御機構25は、温度検出部31によって検出された支持ビーム4の内部空間の温度が所定の温度範囲よりも高い場合には、温風を支持ビーム4の内部空間に導入しないとともに冷風を支持ビーム4の内部空間に導入する一方、温度検出部31によって検出された支持ビーム4の内部空間の温度が所定の温度範囲よりも低い場合には、温風を支持ビーム4の内部空間に導入するとともに冷風を支持ビーム4の内部空間に導入しない機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特定方向に延びる支持部材に支持されるとともにワークを保持しながら前記支持部材に沿って移動する搬送部を備え、当該搬送部によりワークを前記支持部材の長手方向の所定位置に搬送する搬送装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に開示された搬送装置は、自動車工場で用いられる搬送装置であり、自動車部品からなるワークを保持する保持部が搬送部に設けられている。搬送部は、特定方向に延びる支持部材としての鋼製の走行レールに支持されており、この走行レールに沿って移動するように構成されている。そして、この搬送装置では、搬送部の位置決めのためのガイド部が走行レールに付設されており、このガイド部によって走行レールに沿って移動する搬送部がワークを搬送する位置が走行レールの長手方向の所定の位置に位置決めされる。なお、ガイド部は、走行レールに対してその長手方向に移動可能に構成されている。そして、この搬送装置では、搬送部の駆動を制御するとともに、前記ガイド部の走行レールの長手方向に沿った移動も制御している。
【0004】
また、この特許文献1の搬送装置は、気温の変化や搬送装置自体の発熱等による走行レールの温度変化に伴う伸縮に起因してワークの搬送位置がずれるのを補正する機能を有している。すなわち、走行レールの温度が変化すると走行レールに伸縮が生じるとともに、その走行レールに付設された前記ガイド部が走行レールの長手方向に位置ずれを生じ、その結果、搬送部によるワークの搬送位置にずれが生じる。そこで、上記特許文献1の搬送装置には、周囲の雰囲気温度を検出する温度センサが走行レールに付設されているとともに、その温度センサで検出された温度に基づいて制御装置内のリレー、シーケンサ及びコントローラの機能により走行レールの伸縮に伴った前記ガイド部の位置ずれに対する補正量を演算し、前記ガイド部を算出した補正量の分、走行レールの長手方向に沿って移動させるようにしている。これにより、この特許文献1の搬送装置では、搬送部によるワークの搬送位置のずれが補正されて、ワークの搬送位置の精度が確保されるようになっている。
【特許文献1】特開平8−166812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された搬送装置では、走行レールの温度変化に伴う伸縮に応じて前記ガイド部の位置の補正量を演算するとともに、その補正量の分、ガイド部を移動させるという制御を行う。従って、上記特許文献1に開示された搬送装置では、搬送部の駆動制御のみならず、ワークの搬送位置の精度を確保するためにガイド部の駆動制御も行う必要があり、制御が複雑化するという問題点がある。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、駆動制御が複雑化するのを抑制しながら、温度変化に起因するワークの搬送位置の精度の低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明による搬送装置は、特定方向に延びる筒状の支持部材と、その支持部材に沿ってワークを保持しながら移動する搬送部とを備え、当該搬送部により前記ワークを前記支持部材の長手方向の所定位置に搬送する搬送装置であって、前記支持部材の内部空間の温度または前記支持部材自体の温度を検出する温度検出部と、温風を送風する温風送風部と、冷風を送風する冷風送風部と、前記温度検出部によって検出された温度に基づいて前記温風送風部からの温風を前記支持部材の内部空間に導入するか否かを制御するとともに前記冷風送風部からの冷風を前記支持部材の内部空間に導入するか否かを制御する制御手段とを備えている。そして、前記制御手段は、前記温度検出部によって検出された温度が所定の温度範囲よりも高い場合には、前記温風を前記支持部材の内部空間に導入しないとともに前記冷風を前記支持部材の内部空間に導入する一方、前記温度検出部によって検出された温度が前記所定の温度範囲よりも低い場合には、前記温風を前記支持部材の内部空間に導入するとともに前記冷風を前記支持部材の内部空間に導入しない機能を有する。
【0008】
この搬送装置では、制御手段によって、支持部材の内部空間の温度または支持部材自体の温度が所定の温度範囲よりも高い場合には、冷風送風部からの冷風を支持部材の内部空間内に導入して支持部材を冷やす一方、支持部材の内部空間の温度または支持部材自体の温度が所定の温度範囲よりも低い場合には、温風送風部からの温風を支持部材の内部空間内に導入して支持部材を温めるようになっている。このため、気温の変化や搬送装置の発熱等が生じた場合でも、支持部材の温度変化を抑制することができる。これにより、温度変化に伴う支持部材の伸縮を抑制することができるので、支持部材の伸縮に起因して発生する搬送部の移動距離の誤差を抑制することができる。従って、この搬送装置では、温度変化に起因するワークの搬送位置の精度の低下を抑制することができる。さらに、この搬送装置では、支持部材の温度変化を抑制してワークの搬送位置の精度低下を抑制できるので、従来の搬送装置と異なり、温度変化に伴う搬送部の位置決め用のガイド部の位置ずれを補正するために当該ガイド部の駆動制御を行うことなく、ワークの搬送位置の精度を確保することができる。従って、この搬送装置では、駆動制御が複雑化するのを抑制しながら、温度変化に起因するワークの搬送位置の精度の低下を抑制することができる。
【0009】
上記搬送装置において、前記支持部材に沿ってラックギアが付設され、前記搬送部は、前記ラックギアに噛み合う駆動歯車を有するとともに、この駆動歯車を回転させることによって前記支持部材に沿って移動するように構成されていてもよい。この構成では、温度変化に伴って支持部材が伸縮すると同時にラックギアも伸縮する。この場合には、ラックギアと噛み合う駆動歯車の回転によって移動する搬送部の移動距離に誤差が生じる。しかしながら、本発明による搬送装置では、上記のように、支持部材の温度変化に伴う伸縮を抑制できるのでラックギアの伸縮も抑制できる。その結果、搬送部の移動距離の誤差を抑制できるので、このラックギアと駆動歯車によって搬送部を移動させる構成においても、温度変化に起因するワークの搬送位置の精度低下を抑制することができる。
【0010】
上記搬送装置において、前記制御手段は、前記温風送風部から前記支持部材の内部空間への温風の供給経路に設けられた温風供給バルブと、前記冷風送風部から前記支持部材の内部空間への冷風の供給経路に設けられた冷風供給バルブとを含み、前記温度検出部によって検出された温度が前記所定の温度範囲よりも高い場合には、前記温風供給バルブが閉じるとともに前記冷風供給バルブが開く一方、前記温度検出部によって検出された温度が前記所定の温度範囲よりも低い場合には、前記温風供給バルブが開くとともに前記冷風供給バルブが閉じるように構成されているのが好ましい。このように構成すれば、温度検出部によって検出された温度が所定の温度範囲よりも高い場合には、温風を支持部材の内部空間に導入しないとともに冷風を支持部材の内部空間に導入する一方、温度検出部によって検出された温度が所定の温度範囲よりも低い場合には、温風を支持部材の内部空間に導入するとともに冷風を支持部材の内部空間に導入しない制御手段の構造を構成することができる。
【0011】
この場合において、前記制御手段は、前記温度検出部によって検出された温度に基づいて前記温風供給バルブの開閉と前記冷風供給バルブの開閉とを制御する制御部を含み、前記制御部は、前記温度検出部によって検出された温度が前記所定の温度範囲よりも高い場合には前記温風供給バルブを閉じるように制御するとともに前記冷風供給バルブを開くように制御する一方、前記温度制御部によって検出された温度が前記所定の温度範囲よりも低い場合には前記温風供給バルブを開くように制御するとともに前記冷風供給バルブを閉じるように制御してもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、駆動制御が複雑化するのを抑制しながら、温度変化に起因するワークの搬送位置の精度の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態による搬送装置の構成を示した正面図である。図2は、図1のII−II線に沿った断面図であり、図3は、図1に示した搬送装置の伸縮補正装置8の構成を示したシステム図である。まず、図1〜図3を参照して、本発明の一実施形態による搬送装置の構成について説明する。
【0015】
本実施形態による搬送装置は、例えば、自動車の製造工場等に設置されるものであり、自動車部品等のワークを特定方向に搬送するためのものである。この搬送装置は、図1に示すように、支柱部2と、支持ビーム4(支持部材)と、搬送部6と、伸縮補正装置8とを備えている。
【0016】
前記支柱部2は、設置面に垂直に立設されるとともに、特定方向に所定間隔で設置されている。
【0017】
前記支持ビーム4は、鋼製の角筒状の部材であり、各支柱部2の上端面に固定されて前記設置面に平行かつ前記特定方向に延びるように設置されている。また、支持ビーム4は、複数の単位ビーム4aが前記特定方向に繋ぎ合わされることによって形成されている。そして、図2に示すように、支持ビーム4の上面にはラックギア4bが設けられている。このラックギア4bは、支持ビーム4の長手方向に沿って延びるように設けられている。また、支持ビーム4の正面側の側面には、レール4cが設けられている。このレール4cも前記ラックギア4bと同様、支持ビーム4の長手方向に沿って延びるように設けられている。
【0018】
前記搬送部6は、図略のワークを保持しながら支持ビーム4に沿って移動し、ワークを支持ビーム4の長手方向の所定位置に搬送する機能を有している。この搬送部6は、キャリア部11と、一対のアーム部13,13とを有している。
【0019】
キャリア部11は、支持ビーム4に対してその長手方向に移動可能に設置されている。キャリア部11には、ローラ11a,11bと、図略の駆動歯車とが設けられている。一方のローラ11aは、キャリア部11の下部から下向きに設けられており、前記支持ビーム4の上面に当接してキャリア部11を支持ビーム4に対して支えている。もう一方のローラ11bは、キャリア部11のうち支持ビーム4の正面側に被さるように形成された部分から背面側へ向かって突設されているとともに、前記レール4cの正面側の側面に当接している。そして、ローラ11a,11bは転動可能に構成されており、これによってキャリア部11が支持ビーム4に沿って移動可能となっている。
【0020】
また、前記図略の駆動歯車は、キャリア部11の下部に設けられているとともに前記ラックギア4bに噛み合っている。この駆動歯車は、キャリア部11に内蔵されたモータの駆動によって回転するように構成されており、駆動歯車が前記ラックギア4bに噛み合いながら回転することによってキャリア部11が支持ビーム4に沿って移動するようになっている。そして、キャリア部11には前記モータの回転数を検知するエンコーダが設けられており、そのモータの回転数から支持ビーム4の長手方向に沿ったキャリア部11の位置、すなわち搬送部6の位置を検出するように構成されている。
【0021】
前記一対のアーム部13,13は、キャリア部11の正面側に設置されている。これらアーム部13,13は、支持ビーム4の長手方向に所定間隔を隔てて互いに平行、かつ、前記設置面に対して垂直に設けられている。そして、アーム部13,13は、上下に移動可能に構成されているとともに、その下端部においてワークを把持可能に構成されている。そして、アーム部13,13は、降下した状態でワークを把持した後、上昇し、搬送部6が支持ビーム4に沿って所定の搬送位置に移動した後、降下してワークを離すように構成されている。
【0022】
上記伸縮補正装置8は、周囲の気温の変化や搬送装置自体の発熱等に起因して生じる支持ビーム4及びラックギア4bの温度変化に伴う伸縮を補正するためのものである。すなわち、周囲の気温の変化や搬送装置自体の発熱等によって支持ビーム4及びラックギア4bの温度が変化すると、これら支持ビーム4及びラックギア4bに伸縮が生じる。支持ビーム4及びラックギア4bに伸縮が生じると、そのラックギア4bに前記駆動歯車が噛み合いながら回転することによって移動する搬送部6の移動距離に誤差が生じる。そこで、本実施形態では、伸縮補正装置8により支持ビーム4及びラックギア4bの温度変化に伴う伸縮を補正するようになっている。
【0023】
具体的には、伸縮補正装置8は、冷風または温風を支持ビーム4の内部空間に送風することにより、支持ビーム4及びラックギア4bの温度変化を抑制してそれらの伸縮を抑制するものである。この伸縮補正装置8の詳細な構成が、図3に示されている。伸縮補正装置8は、冷温風送風機構21と、エア供給バルブ23と、制御機構25(制御手段)と、減圧弁29と、温度検出部31とを備えている。
【0024】
前記冷温風送風機構21は、絞り弁21bと、冷温風送風装置21cと、2つの減圧弁21d,21eとを有している。冷温風送風機構21には、前記エア供給バルブ23からの空気の供給路がそれぞれ繋がっている。そして、前記エア供給バルブ23には、工場内に設置された図略のコンプレッサから空気が供給されるようになっている。これにより、エア供給バルブ23が開状態のときは、空気が冷温風送風機構21に供給されるようになっている。そして、空気の供給路は、冷温風送風機構21において絞り弁21bを介して冷温風送風装置21cに繋がっている。絞り弁21bは、冷温風送風装置21cへの空気の供給量を調節するために設けられている。
【0025】
前記冷温風送風装置21cは、供給された空気を用いて熱交換により温風と冷風を同時に生成する機能を有している。この冷温風送風装置21cは、本発明における冷風送風部と温風送風部の機能を兼ね備えたものである。そして、冷温風送風装置21cの一方の送風口22aから温風が送風されるとともに、他方の送風口22bから冷風が送風されるように構成されている。そして、冷温風送風装置21cの温風の送風口22aは、減圧弁21dを介して前記制御機構25の後述する温風供給バルブ25aと温風排気バルブ25bにそれぞれ繋がっている一方、冷風の送風口22bは、減圧弁21eを介して前記制御機構25の後述する冷風供給バルブ25cと冷風排気バルブ25dにそれぞれ繋がっている。前記減圧弁21dと前記減圧弁21eは、前記冷温風送風装置21から送風される温風と冷風が均一の圧力となるように調節するために設けられている。
【0026】
前記制御機構25は、前記温度検出部31によって検出された支持ビーム4の内部空間の温度に基づいて、冷温風送風装置21cからの温風を支持ビーム4の内部空間に導入するか否かを制御するとともに、冷温風送風装置21cからの冷風を支持ビーム4の内部空間に導入するか否かを制御する機能を有している。具体的には、制御機構25は、温風供給バルブ25aと、温風排気バルブ25bと、冷風供給バルブ25cと、冷風排気バルブ25dと、制御部25eとを備えている。
【0027】
温風供給バルブ25aには、前記冷温風送風装置21cからの温風の供給路が繋がっている。温風排気バルブ25bには、前記冷温風送風装置21cからの温風の供給路が繋がっているとともに、その下流側は外部に繋がっている。冷風供給バルブ25cには、前記冷温風送風装置21cからの冷風の供給路が繋がっている。冷風排気バルブ25dには、前記冷温風送風装置21cからの冷風の供給路が繋がっているとともに、その下流側は外部に繋がっている。制御部25eは、前記温度検出部31によって検出された温度に基づいて温風供給バルブ25a、温風排気バルブ25b、冷風供給バルブ25c及び冷風排気バルブ25dのそれぞれの開閉を制御するものである。
【0028】
前記温度検出部31は、支持ビーム4に付設されており、支持ビーム4の内部空間の温度を検出するものである。そして、温度検出部31は、前記制御部25eに電気的に接続されており、支持ビーム4内の温度を検出してその温度が設定された所定の温度範囲よりも高い場合と低い場合とでそれぞれ異なった信号を制御部25eに出力するように構成されている。
【0029】
そして、前記制御機構25では、制御部25eが温度検出部31から入力される信号に基づいて上記各バルブ25a〜25dの開閉を制御し、支持ビーム4内の温度が所定の温度範囲よりも高い場合には支持ビーム4の内部空間へ冷風を送る一方、支持ビーム4内の温度が所定の温度範囲よりも低い場合には支持ビーム4の内部空間へ温風を送るようになっている。
【0030】
また、制御部25eには、警報部33が電気的に接続されている。温度検出部31で検出された支持ビーム4内の温度が異常な高温となっている時には、制御部25eの制御により警報部33から警報を発するように構成されている。
【0031】
そして、前記温風供給バルブ25aと冷風供給バルブ25cから前記減圧弁29を介して支持ビーム4の内部空間へ送風路が繋がっている。この送風路の支持ビーム4の手前には、手動で開閉する開閉バルブ35が設けられている。この開閉バルブ35は、支持ビーム4内への送風時には開状態に保持されている。
【0032】
また、支持ビーム4には、手動で開閉可能な開閉バルブ37aを備えた排気口37が設けられている。前記開閉バルブ37aが開けられることにより、支持ビーム4内から排気口37を通じて外部へ排気可能となっている。
【0033】
次に、図3を参照して、本実施形態の伸縮補正装置8による支持ビーム4及びラックギア4bの伸縮補正のプロセスについて説明する。なお、以下の説明では、支持ビーム4の内部空間の温度を25℃に維持して支持ビーム4及びラックギア4bの伸縮を抑制する場合について説明する。
【0034】
まず、エア供給バルブ23が開いて外部のコンプレッサ(図示せず)から空気が冷温風送風機構21に供給される。そして、冷温風送風機構21において、供給された空気は絞り弁21bを通じて冷温風送風装置21cに導入される。冷温風送風装置21cでは、導入された空気を用いて熱交換により温風と冷風が同時に生成される。そして、冷温風送風装置21cの一方の送風口22aから温風が送風されるとともに、冷温風送風装置21cの他方の送風口22bから冷風が送風される。そして、前記一方の送風口22aから送風された温風は、減圧弁21dで減圧された後、温風供給バルブ25a及び温風排気バルブ25b側へ供給される。また、前記他方の送風口22bから送風された冷風は、減圧弁21eで減圧された後、冷風供給バルブ25c及び冷風排気バルブ25d側へ供給される。
【0035】
そして、温度検出部31では、支持ビーム4の内部空間の温度が25℃よりも高くなったことを検知すると所定の検知信号を制御部25eへ出力する。制御部25eでは、この検知信号を受けて、温風供給バルブ25aを閉じるとともに温風排気バルブ25bを開く制御が行われる一方、冷風供給バルブ25cを開くとともに冷風排気バルブ25dを閉じる制御が行われる。これにより、冷風が冷風供給バルブ25cを通って供給されるとともに、温風が温風排気バルブ25bを通って外部に排気される。そして、冷風が減圧弁29で減圧された後、支持ビーム4の内部空間に送風される。これにより、支持ビーム4及びラックギア4bが冷やされてそれらの温度上昇が抑制される。その結果、支持ビーム4及びラックギア4bの温度上昇に起因する伸長が抑制される。
【0036】
また、温度検出部31では、支持ビーム4の内部空間の温度が25℃よりも低くなったことを検知すると、それに応じた検知信号を制御部25eへ出力する。制御部25eでは、この検知信号を受けて、温風供給バルブ25aを開くとともに温風排気バルブ25bを閉じる制御が行われる一方、冷風供給バルブ25cを閉じるとともに冷風排気バルブ25dを開く制御が行われる。これにより、温風が温風供給バルブ25aを通って供給されるとともに、冷風が冷風排気バルブ25dを通って外部に排気される。そして、温風が減圧弁29で減圧された後、支持ビーム4の内部空間に送風される。これにより、支持ビーム4及びラックギア4bが温められてそれらの温度低下が抑制される。その結果、支持ビーム4及びラックギア4bの温度低下に起因する収縮が抑制される。以上のようにして、伸縮補正装置8によって、温度変化に起因する支持ビーム4及びラックギア4bの伸縮が補正される。
【0037】
そして、このように温度変化に起因する支持ビーム4及びラックギア4bの伸縮が補正されることによって、搬送部6の移動距離に誤差が生じるのが抑制される。すなわち、搬送部6は、ラックギア4bと噛み合う前記駆動歯車の回転によって移動するように構成されている。さらに、搬送部6では、その駆動歯車を回転させるモータの回転数をエンコーダで検出することによって、当該搬送部6の支持ビーム4に沿った位置を監視している。このため、検出している前記モータの回転数、すなわち駆動歯車の回転数が同じであっても、ラックギア4bが伸長した場合には搬送部6の移動距離が増大し、ラックギア4bが収縮した場合には搬送部6の移動距離が減少する。従って、温度変化に伴うラックギア4bの伸縮に起因して搬送部6の移動距離に誤差が生じる。しかしながら、本実施形態では上記のようにラックギア4bの伸縮が補正されるので、そのような搬送部6の移動距離の誤差が生じるのが抑制される。
【0038】
以上説明したように、本実施形態による搬送装置では、制御機構25によって、支持ビーム4の内部空間の温度が所定の温度範囲よりも高い場合には、冷温風送風装置21cからの冷風を支持ビーム4の内部空間に導入して支持ビーム4及びラックギア4bを冷やす一方、支持ビーム4の内部空間の温度が所定の温度範囲よりも低い場合には、冷温風送風装置21cからの温風を支持ビーム4の内部空間に導入して支持ビーム4及びラックギア4bを温めるようになっているため、気温の変化や搬送装置の発熱等がある場合でも支持ビーム4及びラックギア4bの温度変化を抑制することができる。これにより、支持ビーム4及びラックギア4bの温度変化に伴う伸縮を抑制することができるので、ラックギア4bと噛み合う駆動歯車の回転によって移動する搬送部6の移動距離の誤差を抑制することができる。その結果、温度変化に起因するワークの搬送位置の精度の低下を抑制することができる。
【0039】
さらに、本実施形態による搬送装置では、支持ビーム4及びラックギア4bの温度変化を抑制してワークの搬送位置の精度低下を抑制できるので、従来の搬送装置のように温度変化に伴う搬送部の位置決め用のガイド部の位置ずれを補正するためにそのガイド部の駆動制御を行うことなく、ワークの搬送位置の精度を確保することができる。従って、本実施形態による搬送装置では、駆動制御が複雑化するのを抑制しながら、温度変化に起因するワークの搬送位置の精度の低下を抑制することができる。
【0040】
なお、本発明の範囲は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更例を含む。
【0041】
例えば、上記実施形態では、温度検出部31が検出した支持ビーム4の内部空間の温度に基づいて支持ビーム4の内部空間に温風または冷風のいずれかを導入するようにしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、温度検出部31が支持ビーム4自体の温度を検出するように構成して、その検出された支持ビーム4の温度に基づいて支持ビーム4の内部空間に温風または冷風のいずれかを導入するようにしてもよい。
【0042】
また、上記実施形態における支持ビーム4及びラックギア4bの伸縮補正のプロセスの説明では、支持ビーム4の内部空間の温度を25℃に維持する場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限らず、支持ビーム4の内部空間の温度を25℃以外の所定の温度範囲に設定してもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、支持ビーム4にラックギア4bを付設するとともに、そのラックギア4bに噛み合う駆動歯車の回転によって搬送部6を支持ビーム4に沿って移動させるように構成したが、搬送部6の移動機構はこの構成に限らず、上記以外の種々の構成を適用することができる。例えば、上記背景技術の項に挙げた特許文献1に開示された移動機構と同様のものや、支持ビーム4に沿ってボールねじを設けるとともに、そのボールねじと螺合するナット部を搬送部6に設け、ボールねじをその軸回りに回転させることによってナット部とともに搬送部6を支持ビーム4に沿って移動させる移動機構や、リニアモータで搬送部6を支持ビーム4に沿って移動させる移動機構など様々な移動機構を本発明による搬送装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態による搬送装置の構成を示した正面図である。
【図2】図1に示した搬送装置のII−II線に沿った断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による搬送装置の伸縮補正装置の構成を示したシステム図である。
【符号の説明】
【0045】
4 支持ビーム(支持部材)
4b ラックギア
6 搬送部
21c 冷温風送風装置(温風送風部、冷風送風部)
25 制御機構(制御手段)
25a 温風供給バルブ
25c 冷風供給バルブ
25e 制御部
31 温度検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定方向に延びる筒状の支持部材と、その支持部材に沿ってワークを保持しながら移動する搬送部とを備え、当該搬送部により前記ワークを前記支持部材の長手方向の所定位置に搬送する搬送装置であって、
前記支持部材の内部空間の温度または前記支持部材自体の温度を検出する温度検出部と、
温風を送風する温風送風部と、
冷風を送風する冷風送風部と、
前記温度検出部によって検出された温度に基づいて前記温風送風部からの温風を前記支持部材の内部空間に導入するか否かを制御するとともに前記冷風送風部からの冷風を前記支持部材の内部空間に導入するか否かを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記温度検出部によって検出された温度が所定の温度範囲よりも高い場合には、前記温風を前記支持部材の内部空間に導入しないとともに前記冷風を前記支持部材の内部空間に導入する一方、前記温度検出部によって検出された温度が前記所定の温度範囲よりも低い場合には、前記温風を前記支持部材の内部空間に導入するとともに前記冷風を前記支持部材の内部空間に導入しない機能を有する、搬送装置。
【請求項2】
前記支持部材に沿ってラックギアが付設され、
前記搬送部は、前記ラックギアに噛み合う駆動歯車を有するとともに、この駆動歯車を回転させることによって前記支持部材に沿って移動する、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記温風送風部から前記支持部材の内部空間への温風の供給経路に設けられた温風供給バルブと、前記冷風送風部から前記支持部材の内部空間への冷風の供給経路に設けられた冷風供給バルブとを含み、
前記温度検出部によって検出された温度が前記所定の温度範囲よりも高い場合には、前記温風供給バルブが閉じるとともに前記冷風供給バルブが開く一方、前記温度検出部によって検出された温度が前記所定の温度範囲よりも低い場合には、前記温風供給バルブが開くとともに前記冷風供給バルブが閉じるように構成されている、請求項1または2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記温度検出部によって検出された温度に基づいて前記温風供給バルブの開閉と前記冷風供給バルブの開閉とを制御する制御部を含み、
前記制御部は、前記温度検出部によって検出された温度が前記所定の温度範囲よりも高い場合には前記温風供給バルブを閉じるように制御するとともに前記冷風供給バルブを開くように制御する一方、前記温度制御部によって検出された温度が前記所定の温度範囲よりも低い場合には前記温風供給バルブを開くように制御するとともに前記冷風供給バルブを閉じるように制御する、請求項3に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−225593(P2008−225593A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59397(P2007−59397)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(301020891)マツダエース株式会社 (3)
【Fターム(参考)】