説明

搬送装置

【課題】例えば半導体装置製造用の基板等が収容された被搬送物を搬送する搬送装置において、搬送効率の低下を回避しつつカーブを安定して走行する。
【解決手段】搬送装置(20)は、搬送手段(3)と、搬送手段が走行する予定経路を設定する旨を示す搬送指令を受信可能な受信手段と、予定経路を走行する際の目標速度を示す速度指令を特定する特定手段(4)と、新たに特定される新規の速度指令により示される新規の目標速度に向けて速度変更を行いつつ受信手段により新たに受信される新規の搬送指令により示される新規の予定経路を走行するものと仮定して、搬送手段の現在速度及び特定された今回の速度指令により示された今回の目標速度に基づいて、搬送手段が新規の予定経路に含まれる所定箇所に進入するまでに速度変更が完了するか否かを判定する判定手段(6)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体装置製造用の各種基板等が収容された容器などの被搬送物を、カーブを有する軌道上で搬送する搬送装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の搬送装置として、例えばカーブを安定して走行するためのカーブ走行速度が設定されており、カーブ走行時にカーブ走行速度で走行するように搬送車を制御するものがある(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−44139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の搬送装置によれば、例えば、新規経路の設定や変更に係る計算時間による応答遅れや、実際の指令に従って動作する際におけるサーボ機構の応答遅れが生じ、搬送車がカーブに到達するまでに、カーブ走行速度まで減速されないことが起こり得る。このような事態は、搬送車がカーブから脱線する等の事故を招きかねないという技術的問題点がある。
【0005】
一方、前方に存在する分岐経路の一方にカーブがある場合にカーブに進入するか否かによらずに早めに、或いは、前方に存在する単一経路にカーブがある場合にとにかく早めに、減速を開始してしまうと、カーブの上流側における搬送効率が低下してしまいかねないという技術的問題点もある。
【0006】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、搬送効率の低下を回避しつつ、カーブを安定して走行可能な搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の搬送装置は上記課題を解決するために、例えば、軌道上を走行すると共に被搬送物を積載可能な搬送手段と、前記軌道のうち前記搬送手段が走行する予定である予定経路を設定又は変更する旨を示す搬送指令を受信可能な受信手段と、前記受信される搬送指令により示される予定経路を走行する際の目標速度を示す速度指令を特定する特定手段と、前記特定手段により新たに特定される新規の速度指令により示される新規の目標速度に向けて速度変更を行いつつ前記受信手段により新たに受信される新規の搬送指令により示される新規の予定経路を走行するものと仮定して、前記搬送手段の現在速度及び前記特定手段により特定された今回の速度指令により示された今回の目標速度に基づいて、前記搬送手段が前記新規の予定経路に含まれる所定箇所に進入するまでに前記速度変更が完了するか否かを判定する判定手段と、前記速度変更が完了すると判定された場合に、前記速度変更を行いつつ前記新規の予定経路を走行するように前記搬送手段を制御し、前記速度変更が完了しないと判定された場合に、前記新規の予定経路及び前記新規の目標速度を無効として前記搬送手段を制御する搬送制御手段とを備える。
【0008】
本発明の搬送装置によれば、その動作時には、例えばFOUP(Front Opening Unified Pod)等の被搬送物は、例えばOHT(Overhead Hoist Transport)、ビークル等の搬送手段によって、例えば天井又は床上に敷設されたレール等の軌道に沿って搬送される。本発明に係る軌道は、例えば、単純な単一経路の軌道部分、分岐部から分岐される軌道部分、合流部に合流される軌道部分等にカーブを有する。
【0009】
本発明では、搬送手段が軌道上を走行中に、例えば搬送装置の外部に配置されたコンピュータ或いはコントローラ、プロセッサ、メモリ等を有する制御装置から発信された搬送指令が、軌道に沿った伝送路を介して有線にて又は無線にて、受信手段により受信される。ここで「搬送指令」は、搬送手段が走行する予定である予定経路を設定又は変更する旨を示す。すると、特定手段によって、搬送指令に基づく速度指令が特定される。ここで「速度指令」は、詳しくは、搬送手段が有する地図情報、及び搬送指令に示される予定経路から算定され、搬送手段が予定経路を走行する際の目標速度(例えば、後述の目標速度V1、V3、V4等)を示す。「目標速度」は、例えばカーブ等の特定箇所における制限速度である。具体的には、例えば、直進する軌道部分を走行する際の予定経路から、カーブを有する軌道部分を走行する際の予定経路に変更される場合に、特定手段によって、現在速度より低い目標速度が算定され、走行速度が現在速度より低速となる。或いは、カーブを有する軌道部分を走行する際の予定経路から、直進する軌道部分を走行する際の予定経路に変更される場合に、特定手段によって、現在速度より高い目標速度が算定され、走行速度が現在速度より高速となる。
【0010】
続いて、例えばプロセッサ、メモリ等を備えて構成される判定手段によって先ず、搬送手段は、新規の速度指令により示される新規の目標速度(例えば、後述の目標速度V4)に向けて速度変更を行いつつ、該新規の搬送指令により示される新規の予定経路(例えば、カーブを有する分岐経路)を走行するものと仮定される。
【0011】
この仮定の下で、搬送手段の現在速度(例えば、後述の現在速度Vn)と今回の目標速度(例えば、現在有効である目標速度、即ち後述の目標速度V3)とに基づいて、搬送手段が新規の予定経路に含まれる、例えばカーブ(即ち、カーブの入口)などの所定箇所に進入するまでに、減速又は加速である速度変更が完了するか否かが判定される。この判定では、速度変更が完了する走行位置が、軌道上において所定箇所に進入する手前であるか否かが判定される。或いは、速度変更が完了する時点が、時間軸上において所定箇所に進入する以前であるか否かが判定される。
【0012】
ここで特に、新規の搬送指令が受信された場合、新規の搬送指令が受信されてから搬送制御手段による搬送手段の制御が実際に開始されるまでに、例えば計算時間、処理時間等を含む応答の遅れによる遅延時間(以下適宜「第1応答遅延期間」と称する)がある。更に、新規の速度指令が特定された場合、搬送手段が速度変更を行うように制御されてから速度変更が実際に開始されるまでに、例えばサーボ遅れ等を含む応答の遅れによる遅延時間(以下適宜「第2応答遅延期間」と称する)がある。例えば、特定手段が速度指令を特定してから速度指令を実行するまでに、たまりパルス(即ち、計算時間や応答の遅れ)による、例えば百〜数百msec(1/1000秒)が第1応答遅延時間として経過する。更に、搬送手段が有する走行モータにおけるサーボ遅れ等による、例えば百〜数百msecが、第2応答遅延時間として経過する。このような第1及び第2応答遅延時間には、搬送手段は、新規の目標速度が有効となる(即ち新規の目標速度へ向けての速度変更が開始される)まで、現在速度は今回の目標に向けて速度変化し続けるか、又は現在速度が今回の目標速度に既に一致していれば現在速度はそのまま維持されようとする。
【0013】
このため仮に、所定箇所(例えばカーブ等)に進入するまでに速度変更(例えば減速)が完了するか否かの判定を、現在速度のみに基づいて行ったのでは、現在速度及び今回の目標速度間における乖離の大きさと上述の第1及び第2応答遅延時間の長さとに応じて、無視し得ない程度に、判定は不正確になってしまう。或いは仮に、この判定を、現在目標としている今回の目標速度のみに基づいて行ったのでは、やはり、現在速度及び今回の目標速度における乖離の大きさと上述の第1及び第2応答遅延時間の長さとに応じて、無視し得ない程度に、判定は不正確になってしまう。即ち、いずれにせよ、誤判定が生じる可能性が非常に高くなってしまう。
【0014】
しかるに本発明によれば、この判定は、少なくとも現在速度と今回の目標速度との二者に基づくので、上述の第1応答遅延期間及び第2応答遅延期間のうち少なくとも一方の遅延時間中における搬送手段の走行に係る走行距離分或いは速度変化分を加味しての判定が可能となる。即ち、現在速度と今回の目標速度との二者の組み合わせの各種に対して、速度変更を完了するのにどれだけの走行距離又は走行時間を要するかを、予め実験等により求めておけば、実際の動作中における速度変更の際には、これら二者を入力として速度変更を完了するのに要する走行距離又は走行時間を単純且つ迅速に特定できる。即ち、実験等により予め設定された関係式或いは関数や、予め設定されたテーブルに従って単純且つ迅速に特定できる。尚、これら二者の組み合わせの各種に対して速度変更を完了するのにどれだけの走行距離又は走行時間を要するかについては、実験のみならず、シミュレーション、計算等で予め求めてもよい。
【0015】
このような判定の結果、新規の予定経路に含まれる所定箇所に進入するまでに速度変更が完了すると判定されると、コントローラ等を備える搬送制御手段の制御下で、搬送手段は、新規の予定経路を実際に走行する。即ち、新規の予定経路及び新規の目標速度が有効とされる。この際、新規の搬送指令及び速度指令に従った実際の速度変更が行われる。すると、搬送手段は、例えばカーブに向って進行するが、カーブ入口などの所定箇所に進入する前に、カーブの制限速度などの新規な目標速度までの速度変更が完了することになる。
【0016】
他方、このような判定の結果、新規の予定経路に含まれる所定箇所に進入するまでに速度変更が完了しないと判定されると、搬送制御手段の制御下で、搬送手段は、新規の予定経路を実際に走行しない。即ち、新規の予定経路及び新規の目標速度が無効とされ、それまで有効であった経路を、それまで有効であった今回の目標速度で走行し続ける。
【0017】
よって、いずれの場合にも、不必要なまでに早めに速度変更をする必要なしで、脱線等の不都合が生じるのを効率良く回避できる。例えば、カーブが分岐経路の片側に存在する分岐部の上流で、今回の目標速度として直線経路用の比較的高めの目標速度を設定しておくことも可能となるので、搬送手段を不必要に減速させないで済み、搬送効率を高く維持可能となる。
【0018】
以上の結果、搬送効率の低下を回避しつつ、カーブ等の所定箇所も含めて軌道上を安定して走行可能となる。
【0019】
本発明の搬送装置の一態様では、前記判定手段は、前記現在速度及び前記今回の目標速度に加えて、前記特定手段により特定された前回の目標速度に基づいて、前記速度変更が完了するか否かを判定する。
【0020】
この態様によれば、判定手段によって先ず、搬送手段は、新規の目標速度に向けて速度変更を行いつつ新規の予定経路を走行するものとの仮定の下で、現在速度及び今回の目標速度に加えて、前回の目標速度(例えば、後述の目標速度V1)に基づいて、搬送手段が新規の予定経路に含まれる所定箇所に進入するまでに、減速又は加速である速度変更が完了するか否かが判定される。
【0021】
ここで特に、新規の速度指令が特定された場合、前回の目標速度から今回の目標速度への目標速度の切り替えが完了する前に新規の速度指令が特定されるのであれば、今回の速度指令が特定された後における上述の第1及び第2応答遅延時間内に、搬送手段は、前回の目標速度に向けて一旦速度変化し、その後に、今回の目標速度に向けて速度変化する。更に、新規の速度指令が特定された後における上述の第1及び第2応答遅延時間内に、搬送手段は、今回の目標速度に向けて一旦速度変化し、その後に、新規の目標速度に向けて速度変化する。
【0022】
このため仮に、所定箇所に進入するまでに速度変更が完了するか否かの判定を、現在速度及び現在の目標速度(即ち、今回の目標速度)のみに基づいて判定したのでは、前回の目標速度が何であったかによって或いは現在の目標速度(即ち、今回の目標速度)に既に一致している否かによって、上述の第1及び第2応答遅延時間の分だけ、判定は不正確になってしまう。
【0023】
しかるに本発明によれば、この判定は、少なくとも現在速度及び今回の目標速度に加えて前回の目標速度という三者に基づくので、上述の第1応答遅延期間及び第2応答遅延期間のうち少なくとも一方の遅延時間中における搬送手段の走行に係る走行距離分或いは速度変化分を、より厳格に加味しての判定が可能となる。即ち、これら三者の組み合わせの各種に対して、速度変更を完了するのにどれだけの走行距離又は走行時間を要するかを、予め実験等により求めておけば、実際の動作中における速度変更の際には、これら三者を入力として速度変更を完了するのに要する走行距離又は走行時間を単純且つ迅速に特定できる。
【0024】
尚、判定手段による判定は、前回より前の目標速度にも基づいてよいが、実際には、応答遅延時間は数十から数百msecのオーダである反面、速度指令が特定される時間間隔は、概ねそのオーダ以上である。よって、前回より前の目標速度は、例えばカーブである所定箇所へ進入する前に減速が完了するか否かに対して、何ら影響を及ぼさない場合が殆どである。即ち、これら三者(即ち、現在速度を近付けている最中の今回の目標速度、今回の目標速度についての応答遅延時間内になお有効である前回の目標速度、及び前回の目標速度に一旦近付いた後に今回の目標速度に近付く現在速度)に基づけば、搬送手段が所定箇所に進入するまでに減速が完了するか否かを高精度で判定できることになる。
【0025】
以上の結果、搬送効率の低下をより一層回避しつつ、カーブ等の所定箇所も含めて軌道上をより一層安定して走行可能となる。
【0026】
本発明の搬送装置の他の態様では、前記所定箇所は、カーブであり、前記新規の目標速度は、前記カーブに対して予め規定される制限速度を含み、前記判定手段は、前記現在速度及び前記今回の目標速度に基づいて、前記搬送手段が前記カーブに進入するまでに前記速度変更として前記制限速度までの減速が完了するか否かを判定する。
【0027】
この態様によれば、判定手段によって、現在速度と今回の目標速度との二者に基づいて、搬送手段が新規の予定経路に含まれる、カーブに進入するまでに、その制限速度までの減速が完了するか否かが判定される。よって、確実に、カーブに制限速度以上で進入して脱線を発生させる事態を確実に回避でき、同時に、カーブの手前では今回の目標速度として直線経路用の比較的高い目標速度を設定しておくことができるので、カーブの手前における搬送効率を低下させないで済む。
【0028】
本発明の搬送装置の他の態様では、前記判定手段は、前記現在速度及び前記今回の目標速度に基づいて、前記新規の予定経路を走行するものと仮定した場合に前記速度変更が開始される筈の開始時点から前記新規の搬送指令が発行された発行時点まで仮想的に遡ることで、前記開始時点における前記搬送手段の速度変更開始位置及び速度変更開始速度に対応する、前記発行時点における前記搬送手段の仮想速度指令位置及び仮想速度を、特定し、前記特定された仮想速度から前記新規の目標速度までの前記速度変更が、前記仮想速度指令位置から前記所定箇所へ進入するまでに完了するか否かを判定する。
【0029】
この態様によれば、判定手段によって先ず、現在速度と今回の目標速度との二者に基づいて、開始時点から発行時点まで仮想的に遡ることで、開始時点における速度変更開始位置(例えば、後述の速度変更開始位置Sc)及び速度変更開始速度(例えば、後述の速度変更開始速度Vc)に対応する、発行時点における仮想速度指令位置(例えば、後述の仮想速度指令位置S2)及び仮想速度(例えば、後述の仮想速度V2)が特定される。ここで特に、開始時点における速度変更開始位置及び速度変更開始速度は、新規の目標速度の高低に関わらずに(即ち、現時以後に、減速となるか加速となるかに関わらず)一義的に定まる。このため、発行時点における仮想速度指令位置及び仮想速度も、新規の目標速度の高低に関わらずに一義的に定まる。ここに「仮想的に遡る」とは、走行位置と走行速度とで張られた二次元座標上で走行位置をとる軸を、開始時点(即ち、新規の予定経路を走行するものと仮定した場合における速度変更が開始される筈の時点)から発行時点(即ち、新規の搬送指令が発行された時点)まで遡ることを意味する。
【0030】
更に判定手段によって、このように特定された仮想速度から新規の目標速度までの速度変更が、このように特定された仮想速度指令位置から所定箇所へ進入するまでに完了するか否かが判定される。
【0031】
よって、新規の目標速度の高低によらずに、速度変更開始位置及び速度変更開始速度を特定し、これらを判定の基準として利用することで、比較的簡単にして判定を行うことが可能となる。
【0032】
この態様では、前記判定手段は、各種仮想速度と各種目標速度との差に対応付けて前記速度変更を完了するのに必要となる各種速度変更用距離を格納するテーブル上で、前記特定された仮想速度及び前記新規の目標速度に対応する一の速度変更用距離を抽出し、該抽出された一の速度変更用距離と前記特定された仮想速度指令位置から前記所定箇所までの距離との大小比較により、前記速度変更が完了するか否かを判定するように構成してもよい。
【0033】
このように構成すれば、前述の如く仮想速度が特定されると、テーブル上でこの仮想速度及び新規の目標速度に対応する一の速度変更用距離が抽出される。更に、このように抽出された一の速度変更用距離と前述の如く特定された仮想速度指令位置から、所定箇所までの距離との大小比較により、速度変更が完了するか否かが判定される。よって、予めテーブルを作成して、判定手段が有するメモリ等に格納しておけば、実際の判定の際における一連の処理を迅速且つ簡単に行える。尚、各種仮想速度と各種目標速度との差と、速度変更を完了するのに必要となる各種速度変更用距離(例えば、差の分だけ減速するのに必要な制動距離)との関係を、予め実験的に或いはシミュレーション等により求めることで、このようなテーブルを予め構築できる。
【0034】
このように構成する場合更に、前記速度変更開始速度及び前記速度変更開始位置は、各種現在速度、前記搬送手段の各種現在加速度若しくは減速度、並びに前記新規の搬送指令が受信されてから前記搬送制御手段による前記搬送手段の制御が実際に開始されるまでの第1応答遅延期間及び前記新規の速度指令が特定され前記搬送手段が前記減速を行うように制御されてから前記減速が実際に開始されるまでの第2応答遅延期間の関数として、予め算出されており、前記テーブルは、前記算出された速度変更開始速度及び速度変更開始位置に対応する前記各種仮想速度と各種目標速度との差に対応付けて各種速度変更用距離を格納するように構成してもよい。
【0035】
このように構成すれば、第1及び第2応答遅延期間の両者を加味した上で、各種仮想速度と各種目標速度との差と、速度変更を完了するのに必要となる各種速度変更用距離(例えば、差の分だけ減速するのに必要な制動距離)との関係を示すテーブルを構築できる。即ち、個々の搬送装置における遅延時間が機知であれば、かかるテーブルを予め構築できる。よって、その後における実際の動作時には、このテーブル上で、仮想速度指令位置及び仮想速度を高精度で特定でき、最終的に、判定を極めて高精度で実行可能となる。
【0036】
このように構成する場合更に、前記速度変更は、減速であり、前記判定手段は、前記テーブル上で、前記算出された速度変更開始速度に最も近く且つ前記算出された速度変更開始速度以上の値のものを前記仮想速度として特定するように構成してもよい。
【0037】
このように構成すれば、テーブルを大なり小なり粗く作成しても、特定された仮想速度(即ち、テーブル上で、算出された速度変更開始速度に最も近く且つ算出された速度変更開始速度以上の値を有する仮想速度)を判定基準として用いる限り、速度変更が減速である場合に、実際に減速が完了する場合にのみ、減速が完了するものとの判定がされることになる。即ち、テーブルが粗い分だけマージンが大きくなる可能性があるが、いずれにせよ十分なマージンを持って減速が完了する場合にのみ、減速が完了するものとの判定がされることになる。よって、比較的簡単な処理にて、カーブ進入時における脱線を回避する上で、実践上大変有利である。
【0038】
本発明の搬送装置の他の態様では、前記搬送制御手段は、前記新規の搬送指令が受信されると、前記判定手段による判定結果を待って、前記新規の目標速度に向けて前記速度変更を行う又は行わないように前記搬送手段を制御し、前記判定手段は、前記判定結果に応じた前記搬送制御手段による前記速度変更が行われるまでの間に、前記新規の目標速度に向けて前記速度変更が行われないことを前提として、前記速度変更が完了するか否かを判定する。
【0039】
この態様によれば、新規の搬送指令が受信されてから、判定手段による速度変更が完了する旨の判定に応じて新規な目標速度へ向けての速度変更が実際に開始されるまでの間には、今回の目標速度が維持される。この維持を前提として、判定等の処理が実行されるので、判定等の処理が簡単で済む。
【0040】
或いは本発明の搬送装置の他の態様では、前記搬送制御手段は、前記新規の搬送指令が受信されると、前記判定手段による判定結果を待たずして、前記新規の目標速度に向けて前記速度変更を暫定的に行うように前記搬送手段を制御し、前記判定手段は、前記判定結果に応じた前記搬送制御手段による前記速度変更が行われるまでの間に、前記速度変更が暫定的に行われていることを前提として、前記速度変更が完了するか否かを判定する。
【0041】
この態様によれば、新規の搬送指令が受信されてから、判定手段による速度変更が完了する旨の判定に応じて新規な目標速度へ向けての速度変更が実際に開始されるまでの間には、今回の目標速度が新規の目標速度へと暫定的に変更される。この変更を前提として、判定等の処理が実行されるので、判定手段による速度変更が完了する旨の判定に応じて本格的に(即ち暫定的でなく)変更されるまでの時間を短縮できる。
【0042】
本発明の搬送装置の他の態様では、前記受信手段、前記特定手段、前記判定手段及び前記搬送制御手段は、前記搬送手段に搭載されており、前記搬送指令は、前記搬送手段に搭載されていない制御装置が備える送信手段から送信される。
【0043】
この態様によれば、例えば搬送装置に搭載されておらず、固定されたコンピュータ等を有する制御装置から搬送指令が発信されると、その後の判定は、軌道上を走行中の搬送装置により実行される。よって、例えば搬送指令を受けた搬送装置がカーブの手前間近で判定を実行できるので、より一層確実に、カーブにおける脱線等を回避できる。或いは、より不必要なマージンを持ってカーブを回避すること或いはより手前で減速することなどによる搬送効率の低下を抑制可能となる。
【0044】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0046】
先ず、実施形態に係る搬送装置を適用する搬送システムの構成について説明する。ここに図1は、実施形態に係る搬送装置の構成を機能的に示し、図2は、図1の搬送手段の一状態を模式的に示すと共に、該搬送手段の走行位置に対応する走行速度をグラフに示す。
【0047】
図1において、搬送システム100は、軌道1、及び搬送装置20を備える。搬送装置20は、ビークル3、及び搬送コントローラ11を備える。
【0048】
図2において、軌道1は、ビークル3が走行するためのレールである。軌道1は、本軌道1a、及び該本軌道1aから分岐する支軌道1bを含む。図2に示すように、本軌道1aは、直線に延びる軌道である。本軌道1aには、所定位置に分岐点B1が設定されている。支軌道1bは、本軌道1a上の分岐点B1で走行方向D1に対して右方にカーブする軌道部分を含む。その軌道部分は、カーブC1として設定されている。カーブC1には、予め、カーブC1を安定して走行するための制限速度v4が設定されている。
【0049】
図1において、ビークル3は、本実施形態に係る「搬送手段」の一例として、軌道1上を走行すると共に不図示のFOUPを積載し、積載されるFOUPを不図示の製造装置やストッカに搬送可能とする。
【0050】
ビークル3は、本体部3a内に、不図示の受信部、速度指令特定部4、ポイント特定部5、カーブ走行判定部6、及びメモリ7を含む制御部9を備える。受信部は、本発明に係る「受信手段」の一例として、後述する指令部10からの搬送指令を受信し、それら指令を示す信号を制御部9に送る。制御部9は、本発明に係る「搬送制御手段」の一例として、受信部からの搬送指令を受けると、それら指令に従って、ビークル3の各部を総括的に制御する。
【0051】
搬送コントローラ11は、本発明に係る「制御装置」の一例として、半導体装置製造のための搬送工程に従って、複数のビークル3を総括的に制御する。搬送コントローラ11は、指令部10を備える。
【0052】
指令部10は、本発明に係る「送信手段」の一例として、搬送工程に基づいて、予定経路(本発明に係る「新規の予定経路」の一例)を暫定的に設定する。指令部10は、予定経路を示す搬送指令を各ビークル3に送信する。それら指令を受信したビークル3は、後述するカーブ走行判定部6の判定結果に応じて、それら指令を実行する。指令の実行により、ビークル3は、目標速度に向けて走行速度を変更しながら、予定経路を走行する。
【0053】
速度指令特定部4は、本発明に係る「特定手段」の一例として、軌道1を示す地図データを用いて、指令部10からの搬送指令に示される予定経路に対応する目標速度を算定する。速度指令特定部4は、算定された目標速度を示す速度指令を特定する。
【0054】
図2において、速度指令に示される目標速度について詳細に説明する。カーブC1を含む予定経路を走行する際には、速度指令特定部4は、軌道1における分岐点B1より上流側で、速度指令を4回特定する。4回の速度指令について、具体的には、ビークル3が現在時刻N1に走行速度vnで走行する場合に、最初の速度指令S1は、指令部10から前回特定された速度指令であって、目標速度v1(本発明に係る「前回の目標速度」の一例)を示す。次の速度指令S2は、指令部10から今回特定された速度指令であって、目標速度v3(本発明に係る「今回の目標速度」の一例)を示す。次の速度指令S3は、今回の目標速度と同値である目標速度v3を示す。最後の速度指令S4は、カーブC1の制限速度である目標速度v4(本発明に係る「新規の目標速度」の一例)を示す。本実施形態では、速度指令特定部4により最後の速度指令S4が特定されると、その目標速度v4に向けて、走行速度が暫定的に変更される(即ち、速度変更が行われる)。
【0055】
図1において、ポイント特定部5は、本発明に係る「判定手段」の一部として機能し、前回の目標速度v1、今回の目標速度v3、及び現在時刻N1での現在速度vnに基づいて、速度指令S4(カーブC1に対する目標速度v4)に対応する新規経路を走行するものと仮定する。この場合に、ポイント特定部5は、速度変更が開始される(具体的には、目標速度v3からv4への変更であって、カーブC1に向けて減速が開始される)筈の開始時点P0における速度変更開始位置Sc(本発明に係る「速度変更開始位置」の一例)及び速度変更開始速度Vcに対応する、発行時点P1における仮想速度指令位置Si(本発明に係る「仮想速度指令位置」の一例)及び仮想速度Viを特定する。その特定に際して、図2に示すように、ビークル3の走行位置及び走行速度が、開始位置P0から、カーブC1を走行させるための搬送指令が発行された発行時点P1(即ち、現在時刻N1)まで仮想的に遡る。
【0056】
仮想速度指令位置Si及び仮想速度Viの特定に先立って、速度変更開始速度Vcは、以下の式(1)で特定され、速度変更開始位置Scは、以下の式(2)で特定される。式(1)及び(2)に含まれる符号について、「α」をビークル3の加速度とし、「T1」を計算時間遅れの解消時間(本発明に係る「第1応答遅延期間」の一例)とし、「T2」を応答遅れの解消時間(本発明に係る「第2応答遅延期間」の一例)とする。
【0057】
Vc = Vn+α*(T1+T2) (1)
Sc = Vn*(T1+T2)+α*(T1+T2)/2 (2)
【0058】
ポイント特定部5は、特定された速度変更開始位置Sc及び速度変更開始速度Vcに基づいて、仮想速度指令位置Si及び仮想速度Viを特定する。本実施形態では、ビークル3が、現在時刻N1に、カーブC1を走行させる新規の搬送指令を受信したと仮定して、仮定速度Vi(v2)から速度変更開始速度Vcまで減速されるビークル3の制動距離を特定する。制動距離は、後述する仮定速度情報テーブルに予め記録されている。
【0059】
次に、本実施形態の仮想速度情報テーブルについて説明する。ここに図3は、本実施形態の仮定速度情報テーブルを示す。仮定速度情報テーブルは、メモリ7に記録されている。
【0060】
メモリ7は、「記憶手段」の一例として、仮想速度情報テーブル20を格納する。図3において、仮想速度情報テーブル20は、本発明に係る「テーブル」の一例として、「仮想速度Vi」に対応付けて、「速度変更後速度」及び「制動距離L1」を示す。発行時点P1における仮想速度Vi(v2)は、仮想速度情報テーブル20上で、速度変更開始速度Vcに最も近く、且つ速度変更開始速度Vc以上の値を有するものとする。速度変更後速度(v4)は、カーブC1を走行するための制限速度の他、速度変更開始速度Vcであってもよい。制動距離L1は、本発明に係る「速度変更用距離」の一例として、仮想速度Viから変速後速度まで減速させる距離であって、現在速度vn、減速度、及びたまりパルスを考慮して設定されている。
【0061】
カーブ走行判定部6は、本発明に係る「判定手段」の一部として機能し、ビークル3がカーブC1の入口に進入するまでに、仮想速度v2から速度変更後速度(制限速度)v4への速度変更が完了するか否かを判定する。
【0062】
仮想速度Viが仮想に受信される位置(即ち、仮想速度指令位置)Siは、以下の式(3)で特定される。式(3)に含まれる符号について、「β」をビークル3の減速度とする。
【0063】
Si = Sc−Vi*T2―(Vi−Vc)/(2*β) (3)
【0064】
次に、カーブ走行判定部6による判定の方法について説明する。カーブ走行判定部6は、先ず、仮定速度情報テーブル20から、仮想速度Vi及び速度変更後速度v4に対応する制動距離を取得する。例えば、仮想速度v2が「3000」、速度変更後速度v4が「700」である場合に、制動距離L1が「2312」となる。また、カーブ走行判定部6は、地図データを用いて、軌道1上の仮想速度指令位置SiからカーブC1の入口までの距離(以下、「カーブ間距離」と言う)Lwを算出する。更に、カーブ走行判定部6は、算出された制動距離L1とカーブ間距離Lwとを比較し、以下の式(4)が成立するか否かを判定する。
【0065】
Lw > Lx (4)
【0066】
カーブ走行判定部6は、式(4)が成立する場合(カーブ間距離Lwが制動距離L1より大きい)場合に、ビークル3がカーブC1に進入するまでに制限速度v4に減速可能として、新規経路及び新規の目標速度v4を有効とする。一方、式(4)が成立しない場合(カーブ間距離Lwが制動距離L1より小さい)に、カーブC1に進入するまでに制限速度v4に減速不可能として、新規経路及び新規の目標速度v4を無効とする。カーブ走行判定部6は、判定結果、即ち、新規経路及び新規の目標速度が「有効」又は「無効」を示す信号を搬送コントローラ11に送る。
【0067】
カーブ走行判定部6による判定結果が「有効」を示す場合に、速度指令特定部4は、仮定速度Viを示す速度指令を仮定速度指令位置Siに特定する。すると、制御部9は、その速度指令に従って、ビークル3をカーブC1に向けて減速走行させる。一方、カーブ走行判定部6による判定結果が「無効」を示す場合に、搬送コントローラ11は、ビークル3が本軌道1aを走行するための新規の搬送指令をビークル3に送信する。すると、速度指令特定部4は、その新規の搬送指令に基づいて速度指令を特定し、制御部9は、その速度指令に従って、ビークル3を減速せずに本軌道1aに向けて走行させる。
【0068】
(第1カーブ走行判定処理)
次に、本実施形態に係る搬送装置の第1カーブ走行判定処理について図4を参照して説明する。ここに図4は、本実施形態の第1カーブ走行判定処理を示すフローチャートである。
【0069】
図4において、先ず、搬送コントローラ11の指令部10によって、暫定的に新規経路が設定される(ステップ51)。すると、ビークル3の速度指令特定部4によって、新規経路に対応する目標速度が算定される。すると、ポイント特定部5によって、最初の速度指令S1による目標速度v1、次の速度指令S2による目標速度v3、及び現在速度vnに基づいて、速度変更開始速度Vc及び速度変更開始位置Scに対応する仮想速度Vi(v2)及び仮想速度指令位置Siが特定される(ステップS52)。すると、カーブ走行判定部6によって、仮想速度情報テーブル20から、仮想速度v2及び新規の目標速度(速度変更後速度)v4に対応する制動距離L1が取得されると共に(ステップS53)、仮想速度指令位置Siに対応する位置からカーブ入口までのカーブ間距離Lwが取得され(ステップS53)、これら制動距離L1とカーブ間距離Lwとが比較される(ステップS54)。この比較の結果、制動距離L1がカーブ間距離Lwより短ければ(ステップS55:YES)、ビークル3がカーブ入口までに減速可能であるとして、暫定的に設定された新規経路が有効とされ(ステップS56)、制御部9によって、仮想された仮想速度v2で、ビークル3が減速走行を行う(ステップS57)。これにより、一連の第1カーブ走行判定処理が終了される。
【0070】
一方、ステップS55の比較の結果により、制動距離Lxがカーブ間距離Lwより短くなければ(ステップS55:NO)、ビークル3がカーブ入口までに減速不可能であるとして、新規経路が無効とされ(ステップS58)、指令部10によって、新たに新規経路が設定される。すると、制御部9によって、新たな新規経路、即ち、分岐点B1後に直進される本軌道1aを走行するようにビークル3の走行が継続される(即ち、減速されない)(ステップS59)。これにより、一連の第1カーブ走行判定処理が終了される。
【0071】
このように、本実施形態の第1カーブ走行判定処理によれば、新規経路を走行するものと仮定し、制動距離L1とカーブ間距離Lwとを比較し、制動距離L1がカーブ間距離Lwより短い場合に、新規経路を有効とすることによって、搬送効率の低下を回避しつつビークル3が新規経路に含まれるカーブC1を安定して走行することが可能となる。
【0072】
尚、本実施形態では、カーブC1までに減速することが可能か否かの判定について、制動距離L1及びカーブ間距離Lwを取得したが、それらの代わりに、制動にかかる時間、及びカーブ間距離Lwを走行する時間を取得してもよい。
【0073】
(第2カーブ走行判定処理)
次に、本実施形態に係る搬送装置の第2カーブ走行判定処理について図5を参照して説明する。ここに図5は、本実施形態の第2カーブ走行判定処理を示すフローチャートである。尚、第2カーブ走行判定処理は、図4に示される第1カーブ走行判定処理と比較して、カーブC1を含む新規経路を有効とする機会を高めるための処理である。
【0074】
図5において、先ず、第1カーブ走行判定処理と同様にして、搬送コントローラ11の指令部10により暫定的に新規経路が設定される(ステップS51)。すると、制御部9によって、減速が指示され、ビークル3が減速走行を行う(ステップS61)。この後、第1カーブ走行判定処理と同様にして、ステップS52〜S59の処理が行われ、一連の第2カーブ走行判定処理が終了される。
【0075】
このように、本実施形態の第2カーブ走行判定処理によれば、一連の判定処理等を実行中に暫定的に減速させることによって、カーブC1を走行する機会を高める。これにより、高い確率で、ビークル3が新規経路に含まれるカーブC1をより安定して走行することが可能となる。
【0076】
尚、本実施形態では、図2に示すように、ビークル3は、カーブC1に向けて、速度変更開始位置Sc(言い換えれば、速度変更開始速度Vc)から減速が開始されるが、図6に示すように、最初の速度指令S1による目標速度v1、次の速度指令S2による目標速度v3、及び現在時刻N1での現在速度vnに基づいて、カーブC1に向けて又は直線に向けて加速が開始されてもよい。加速される場合でも減速される場合でも、速度変更開始位置Scにて速度変更開始速度Vcから速度変更が開始されることに変わりは無い。
【0077】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施形態に係る搬送装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】実施形態に係る搬送手段の一例を示す模式図、及び搬送手段の走行位置に対する走行速度の一例を示すグラフである。
【図3】実施形態に係る仮想速度に対応する速度情報テーブルを示す表である。
【図4】実施形態に係る搬送装置による第1カーブ走行判定処理を示すフローチャートである。
【図5】実施形態に係る搬送装置による第2カーブ走行判定処理を示すフローチャートである。
【図6】実施形態に係る搬送手段の走行位置に対する走行速度の他の例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0079】
1…軌道、3…ビークル、4…速度指令特定部、5…ポイント特定部、6…カーブ走行判定部、7…メモリ、9…制御部、10…指令部、11…搬送コントローラ、20…搬送装置、100…搬送システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道上を走行すると共に被搬送物を積載可能な搬送手段と、
前記軌道のうち前記搬送手段が走行する予定である予定経路を設定又は変更する旨を示す搬送指令を受信可能な受信手段と、
前記受信される搬送指令により示される予定経路を走行する際の目標速度を示す速度指令を特定する特定手段と、
前記特定手段により新たに特定される新規の速度指令により示される新規の目標速度に向けて速度変更を行いつつ前記受信手段により新たに受信される新規の搬送指令により示される新規の予定経路を走行するものと仮定して、前記搬送手段の現在速度及び前記特定手段により特定された今回の速度指令により示された今回の目標速度に基づいて、前記搬送手段が前記新規の予定経路に含まれる所定箇所に進入するまでに前記速度変更が完了するか否かを判定する判定手段と、
前記速度変更が完了すると判定された場合に、前記速度変更を行いつつ前記新規の予定経路を走行するように前記搬送手段を制御し、前記速度変更が完了しないと判定された場合に、前記新規の予定経路及び前記新規の目標速度を無効として前記搬送手段を制御する搬送制御手段と
を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記現在速度及び前記今回の目標速度に加えて、前記特定手段により特定された前回の目標速度に基づいて、前記速度変更が完了するか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記所定箇所は、カーブであり、
前記新規の目標速度は、前記カーブに対して予め規定される制限速度を含み、
前記判定手段は、前記現在速度及び前記今回の目標速度に基づいて、前記搬送手段が前記カーブに進入するまでに前記速度変更として前記制限速度までの減速が完了するか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記判定手段は、
前記現在速度及び前記今回の目標速度に基づいて、前記新規の予定経路を走行するものと仮定した場合に前記速度変更が開始される筈の開始時点から前記新規の搬送指令が発行された発行時点まで仮想的に遡ることで、前記開始時点における前記搬送手段の速度変更開始位置及び速度変更開始速度に対応する、前記発行時点における前記搬送手段の仮想速度指令位置及び仮想速度を、特定し、
前記特定された仮想速度から前記新規の目標速度までの前記速度変更が、前記仮想速度指令位置から前記所定箇所へ進入するまでに完了するか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記判定手段は、各種仮想速度と各種目標速度との差に対応付けて前記速度変更を完了するのに必要となる各種速度変更用距離を格納するテーブル上で、前記特定された仮想速度及び前記新規の目標速度に対応する一の速度変更用距離を抽出し、該抽出された一の速度変更用距離と前記特定された仮想速度指令位置から前記所定箇所までの距離との大小比較により、前記速度変更が完了するか否かを判定することを特徴とする請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記速度変更開始速度及び前記速度変更開始位置は、各種現在速度、前記搬送手段の各種現在加速度若しくは減速度、並びに前記新規の搬送指令が受信されてから前記搬送制御手段による前記搬送手段の制御が実際に開始されるまでの第1応答遅延期間及び前記新規の速度指令が特定され前記搬送手段が前記減速を行うように制御されてから前記減速が実際に開始されるまでの第2応答遅延期間の関数として、予め算出されており、
前記テーブルは、前記算出された速度変更開始速度及び速度変更開始位置に対応する前記各種仮想速度と各種目標速度との差に対応付けて各種速度変更用距離を格納する
ことを特徴とする請求項5に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記速度変更は、減速であり、
前記判定手段は、前記テーブル上で、前記算出された速度変更開始速度に最も近く且つ前記算出された速度変更開始速度以上の値のものを前記仮想速度として特定する
ことを特徴とする請求項6に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記搬送制御手段は、前記新規の搬送指令が受信されると、前記判定手段による判定結果を待って、前記新規の目標速度に向けて前記速度変更を行う又は行わないように前記搬送手段を制御し、
前記判定手段は、前記判定結果に応じた前記搬送制御手段による前記速度変更が行われるまでの間に、前記新規の目標速度に向けて前記速度変更が行われないことを前提として、前記速度変更が完了するか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記搬送制御手段は、前記新規の搬送指令が受信されると、前記判定手段による判定結果を待たずして、前記新規の目標速度に向けて前記速度変更を暫定的に行うように前記搬送手段を制御し、
前記判定手段は、前記判定結果に応じた前記搬送制御手段による前記速度変更が行われるまでの間に、前記速度変更が暫定的に行われていることを前提として、前記速度変更が完了するか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項10】
前記受信手段、前記特定手段、前記判定手段及び前記搬送制御手段は、前記搬送手段に搭載されており、
前記搬送指令は、前記搬送手段に搭載されていない制御装置が備える送信手段から送信される
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−295000(P2009−295000A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149299(P2008−149299)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(302059274)アシスト テクノロジーズ ジャパン株式会社 (146)
【Fターム(参考)】