搬送装置
【課題】より小型で、且つ複数種のリアサスペンションを搬送することができる搬送装置を提供する。
【解決手段】キャリア20は、2方向に摺動自在に作動する摺動機構28と、回転可能な4個の突出部材29と、これらの突出部材29に下向きに設けられる4本のピン31と、リアサスペンションを支持する4個のストッパ32と、3個のピン移動レバーと、4個のピン回転レバー34とを備える。
【効果】搬送対象のリアサスペンションの種類が複数であって、リアサスペンションの大きさや形状が種類によって異なる場合でも、即座にピンの位置を変更することができる。また、シリンダを用いる必要がないので、より小型な搬送装置を実現することができる。よって、より小型で、且つ複数種のリアサスペンションを搬送することができる搬送装置を提供できる。
【解決手段】キャリア20は、2方向に摺動自在に作動する摺動機構28と、回転可能な4個の突出部材29と、これらの突出部材29に下向きに設けられる4本のピン31と、リアサスペンションを支持する4個のストッパ32と、3個のピン移動レバーと、4個のピン回転レバー34とを備える。
【効果】搬送対象のリアサスペンションの種類が複数であって、リアサスペンションの大きさや形状が種類によって異なる場合でも、即座にピンの位置を変更することができる。また、シリンダを用いる必要がないので、より小型な搬送装置を実現することができる。よって、より小型で、且つ複数種のリアサスペンションを搬送することができる搬送装置を提供できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井に設けたレールに移動自在に支持されるキャリアでワーク(リアサスペンション)を吊り下げた状態で搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来ワークを搬送する手段として各種の搬送装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−157674号公報(図3)
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図19は従来の技術の基本原理を説明する図であり、搬送装置200は、床に設けた2本のレール201に沿って移動する台車202と、この台車202の上面に設けられる2つの第1受け具203と、台車202の上面に図表裏方向に移動するように設けられる2つの第2受け具204と、台車202の上面に2本の縦軸205で揺動可能に留められ2つのストッパ206に接触している2本の揺動部材207と、これらの揺動部材207の中間部に設けられる2つの第3受け具208と、2本の揺動部材207の先端に設けられる2つの第4受け具209と、2本の揺動部材207の縦軸205側に設けられ互いに噛み合っている2枚のギヤ211と、2本の揺動部材207を互いに向き合うように付勢している引張りばね212からなり、第1受け具203、203と第2受け具204、204と第3受け具208、208とでワーク213を支持する搬送装置である。
【0004】
また、搬送装置200では、シリンダを用いて揺動部材207、207の先端を縦軸205、205を回転中心として図上に揺動させることで、例えば大きさや形状の異なるワークを第1受け具203、203と第2受け具204、204と第4受け具209、209とで支持することができる。
【0005】
ところで、特許文献1の搬送装置200は、揺動部材207、207を揺動させるためにシリンダを用いるが、このようなシリンダは図下方向に出っ張ることになる。このシリンダの出っ張りによって搬送装置200が大型になるので、搬送ライン用スペースの大型化を招く。
【0006】
そのため、より小型で、且つ複数種のワークを搬送することができる搬送装置の開発が求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、より小型で、且つ複数種のワークを搬送することができる搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、レールに移動自在に支持されるキャリアでワークを吊り下げた状態で搬送する搬送装置において、前記キャリアは、前記レール上を走行する走行部から下方に延ばした支持部で支持され2方向に摺動自在に作動する摺動機構と、この摺動機構に回転可能に取り付けられ前記摺動機構を上方から見て摺動機構から外方に突出している突出部材と、この突出部材に設けられ前記ワークに備えた組立穴又は締結穴に挿入されるワーク固定ピンと、前記突出部材に移動可能に設けられ前記ワークを支持するストッパとを備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、摺動機構は、支持部に複数組設けられ、これらはお互いに独立して2方向で作動するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、キャリアは、2方向に摺動自在に作動する摺動機構と、回転可能な突出部材と、この突出部材に設けられるワーク固定ピンと、ワークを支持するストッパとを備えているので、ワークの組立穴又は締結穴にワーク固定ピンを挿入する前に、摺動機構でワーク固定ピンの位置を簡単に調整することができる。そのため、搬送対象のワークの種類が複数であって、ワークの大きさや形状が種類によって異なる場合でも、即座にワーク固定ピンの位置を変更することができる。
【0011】
また、特許文献1のように複数種のワークを搬送する場合にシリンダを用いる必要がないので、より小型な搬送装置を実現することができる。請求項1によれば、より小型で、且つ複数種のワークを搬送することができる搬送装置を提供することができる。
【0012】
加えて、請求項1に係る発明では、上記のように搬送対象が複数種のワークであってもワーク固定ピンの位置調整が即座に行えるので、ワークをキャリアに支持させる作業も円滑に行うことができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、摺動機構は、支持部に複数組設けられ、これらはお互いに独立して2方向で作動するように構成されているので、大きさや形状の異なる複数種のワークの支持に対して1台で対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。また、ワークはリアサスペンションを適用して説明する。
【0015】
図1は本発明の搬送装置の斜視図であり、搬送装置10は、天井に複数個の支持部材11を介して設けられ水平方向に延びている2本のレール12と、レール12とレール12とに渡した連結部材13に下向きに回転可能に設けられている2個の案内ローラ14と、2本のレール12に移動自在に支持されリアサスペンション15を保持しているキャリア20(詳細後述)とで構成され、上流側でキャリア20の上部に備えた移動部材21を駆動ローラで押し出すことで複数のキャリア20を白抜き矢印のように前進させる装置である。22は走行部、23、24は走行ローラ、25は支持部、26は吊り下げ用治具である。
【0016】
図2は本発明のキャリアの斜視図であり、キャリア20は、支持部25の下端で支持され水平方向に延びているベース27と、このベース27に設けられ2方向に摺動自在に作動する摺動機構28(詳細後述)と、この摺動機構28に回転可能に取り付けられ摺動機構28を上方から見て摺動機構28から外方に突出している例えば4個の突出部材29(詳細後述)と、これらの突出部材29に下向きに設けられリアサスペンション(図1の符号15)に備えた組立穴又は締結穴に挿入される例えば4本のリアサスペンション固定ピン31(詳細後述)と、4個の突出部材29の各々に移動可能に設けられリアサスペンションを支持する例えば4個のストッパ32(詳細後述)と、摺動機構28に駆動機構33(詳細後述)を介して連結され複数本のリアサスペンション固定ピン31を任意の位置に移動させる3個のピン移動レバー(詳細後述)と、4個の突出部材29の各々に連結され4本のリアサスペンション固定ピン31を回転させる例えば4個のピン回転レバー34(詳細後述)とを備えている。
【0017】
なお、突出部材29、リアサスペンション固定ピン31、ストッパ32、ピン回転レバー34は、実施例では各々4個設けたが、4個以上設けてもよい。
【0018】
図3は本発明に係る摺動機構の斜視図であり、摺動機構28は、ベース27と図手前側の第1テーブル35と奥側の第2テーブル36を連結し第1テーブル35及び第2テーブル36を図右斜め方向に摺動させる左上側の第1摺動機構37及び右下側の第2摺動機構38と、第1テーブル35に設けられている第3摺動機構39と、第2テーブル36に設けられている第4摺動機構41とで構成される。
【0019】
また、駆動機構33は、ベース27に回転可能に設けられている第1ピニオン42と、この第1ピニオン42に噛み合い第1テーブル35に連結されている第1ラック43と、第1ピニオン42に噛み合い第2テーブル36に連結されている第2ラック44と、第1テーブル35に回転可能に設けられている第2ピニオン45と、この第2ピニオン45に噛み合い第1スライダ46に連結されている第3ラック47と、第2ピニオン45に噛み合い第2スライダ48に連結されている第4ラック49と、第2テーブル36に回転可能に設けられている第3ピニオン51と、この第3ピニオン51に噛み合い第3スライダ52に連結されている第5ラック53と、第3ピニオン51に噛み合い第4スライダ54に連結されている第6ラック55とで構成される。
【0020】
図4は第1摺動機構及び第2摺動機構の斜視図であり、第1ピン移動機構104は、ベース27に設けられている支持部材105と、この支持部材105に回転可能に取り付けられている第1ピン移動レバー57と、この第1ピン移動レバー57と一体の軸に取り付けられている第1押し部材106と、この第1押し部材106の長穴に嵌り第2ラック44に設けられているピン107とで構成される。
【0021】
第1ピン移動レバー57を矢印(1)のように操作すると、ピン107が矢印(2)のように移動するので、第2ラック44、第1ピニオン42、第1ラック43が作動して第1テーブル35及び第2テーブル36を矢印(3)、(3)のように移動させることができる。
【0022】
図5は第3摺動機構の斜視図であり、第2ピン移動機構108は、第1テーブル35に設けられている支持部材105と、この支持部材105に回転可能に取り付けられている第2ピン移動レバー59と、この第2ピン移動レバー59と一体の軸に取り付けられている第2押し部材109と、この第2押し部材109の長穴に嵌り第4ラック49に設けられているピン111とで構成される。
【0023】
第2ピン移動レバー59を矢印(4)のように操作すると、ピン111が矢印(5)のように移動するので、第4ラック49、第2ピニオン45、第3ラック47が作動して第1スライダ46及び第2スライダ48を矢印(6)、(6)のように移動させることができる。
【0024】
図6は第4摺動機構の斜視図であり、第3ピン移動機構112は、第2テーブル36に設けられている支持部材105と、この支持部材105に回転可能に取り付けられている第3ピン移動レバー62と、この第3ピン移動レバー62と一体の軸に取り付けられている第3押し部材113と、この第3押し部材113の長穴に嵌り第5ラック53に設けられているピン114とで構成される。
【0025】
第3ピン移動レバー62を矢印(7)のように操作すると、ピン114が矢印(8)のように移動するので、第5ラック53、第3ピニオン51、第6ラック55が作動して第3スライダ52及び第4スライダ54を矢印(9)、(9)のように移動させることができる。
【0026】
このように、第1ピン移動レバー(図4の符号57)を操作することで、テーブル35、36を移動させることができ、第2ピン移動レバー(図5の符号59)を操作することで、スライダ46、48を移動させることができ、第3ピン移動レバー62を操作することで、スライダ52、54を移動させることができる。
【0027】
図3において、スライダ46、48、52、54には各々連結部材63を介して突出部材(図2の符号29)及びリアサスペンション固定ピン(図2の符号31)が取り付けられているので、第1ピン移動レバー57、第2ピン移動レバー59、第3ピン移動レバー62の操作によって、4本のリアサスペンション固定ピンを任意の位置に移動させることができる。
【0028】
すなわち、摺動機構28は、ベース27に例えば3組設けられ、これらはお互いに独立して2方向で作動するように構成されているので、大きさや形状の異なる複数種のワークの支持に対して1台で対応することができる。
【0029】
なお、摺動機構28は、実施例では3組で構成したが、数量は任意である。
【0030】
図7は図2の7部拡大図であり、突出部材29は、第2スライダ48に取り付けた連結部材63にピン回転機構64(詳細後述)を介して設けられているL字形の部材である。また、突出部材29の先端部の下面には、リアサスペンション(図1の符号15)に備えた組立穴又は締結穴に挿入されるように下向きのリアサスペンション固定ピン31が設けられ、突出部材29の中間部の上面には、ストッパ動作機構65(詳細後述)が設けられている。
【0031】
ストッパ動作機構65は、突出部材29の上面に立てられている2つの軸受台66と、これらの軸受台66で回転可能に支持されている軸67と、この軸67の一端に連結されている中間折り曲げ式のストッパレバー68とで構成される。また、軸67には、ストッパ32が取り付けられている。69はストッパ支持穴、71はレバー受け台である。
【0032】
ストッパレバー68を実線の位置から矢印(7)のように二点鎖線の位置まで引き上げると、ストッパ32が実線の位置から矢印(8)のように二点鎖線で示したようにリアサスペンション固定ピン31の真下に移動する。リアサスペンションの組立穴又は締結穴にリアサスペンション固定ピン31を挿入していた場合には、上記動作でリアサスペンションをストッパ32で下方から支持することができる。
【0033】
次に、ストッパレバー68を矢印(9)のように折り曲げて、二点鎖線で示すようにレバー受け台71の上面に載せる。これにより、ストッパ32の動作をロックすることができる。
【0034】
図8は図7の8−8線断面図であり、ストッパ支持穴69は、くさび状に形成されているロック部72と、直線状に形成されている支持部73とからなり、ロック部72にストッパ32が嵌っている。この状態は、リアサスペンション固定ピン(図4の符号31)からストッパ32が離れている状態である。ここからストッパ32を矢印(10)のように二点鎖線で示したように支持部73に載せると、ストッパ32がリアサスペンション固定ピンの真下に移動した状態になる。
【0035】
すなわち、ストッパ32でリアサスペンションを支持していないときには、ストッパ32はロック部72に嵌ることで動作がロックされ、ストッパ32でリアサスペンションを支持しているときには、ストッパ32は支持部73で支持されるので、作業途中にストッパ32が不意に動作することを防ぐことができる。
【0036】
図9は図7の9−9線断面図であり、ストッパレバー68がレバー受け台71に載っている状態を示す。レバー受け台71は、支持部材74の上面に設けた例えば弾性体としてのゴム製のレバー受け部75を備え、レバー受け部75は図左側から嵌合面76、突起77、案内面78を有する。
【0037】
なお、レバー受け部75は、ゴム製で説明したが、この他に樹脂製やばねを用いた構造を採用してもよい。
【0038】
ストッパレバー68を折り曲げるとき、二点鎖線で示したストッパレバー68は、先ず案内面78を摺るように移動し、次に突起77を高さHだけ押し潰し、嵌合面76に嵌る。このように、レバー受け部75を弾性体で構成したので、ストッパレバー68を折り曲げるときにレバー受け部75が移動の邪魔になることがない。
【0039】
加えて、レバー受け部75は、嵌合面76でストッパレバー68を保持するので、前述したストッパ(図4の符号32)が受けるリアサスペンション(図1の符号15)の荷重を支持することができる。
【0040】
さらに、レバー受け部75は、ストッパレバー68の移動を嵌合面76で制止するので、ストッパでリアサスペンションを支持しているときにストッパレバー68がレバー受け部75から外れることを防ぐことができる。
【0041】
図10は本発明のピン回転レバーの断面図であり、ピン回転レバー34は、ピン回転機構64の上端に取り付けられ、ピン回転機構64は、連結部材63に取り付けられている軸ユニット79と、この軸ユニット79に嵌められている軸受81と、この軸受81に接触し軸ユニット79に回転自在に嵌められている回転部材82と、この回転部材82の上面から上方に延ばされピン回転レバー34を備えている軸83とで構成される。84は押さえ部材である。
【0042】
図11は本発明のピン回転レバーの作用図であり、ピン回転レバー34を矢印(11)のように図上に移動させると、回転部材82に取り付けられている突出部材29は左に回転するので、二点鎖線で示した(12)の位置に移動する。また、ピン回転レバー34を矢印(13)のように右に移動させると、突出部材29は上に回転するので、二点鎖線で示した(14)の位置に移動する。
【0043】
このように、ピン回転レバー34を操作することで、突出部材29に設けたリアサスペンション固定ピン(図4の符号31)の位置を簡単に移動させることができる。また、前述の摺動機構(図3の符号28)でリアサスペンション固定ピンの位置を大まかに決定しておき、上記ピン回転レバー34でリアサスペンション固定ピンの位置を微調整することができる。
以上の構成からなるキャリア20の作用を次に説明する。
【0044】
図12は本発明のキャリアの準備状態からリアサスペンション固定ピンの挿入までの作用図であり、摺動機構(図3の符号28)及びピン回転レバー(図2の符号34)でリアサスペンション固定ピンの位置決めは事前に終了しているものとして説明する。
【0045】
(a)において、位置決めパレット85上に載せたリアサスペンション15の組立穴86、86がキャリア20に備えたリアサスペンション固定ピン31、31に嵌るように、リアサスペンション15を矢印(15)のようにリフタで上昇させる。
【0046】
(b)において、リアサスペンション固定ピン31、31がリアサスペンション15の組立穴86、86に嵌ったので、ストッパレバー68を矢印(16)、(17)のように引き上げる。
【0047】
なお、リアサスペンション固定ピン31の挿入対象は、実施例ではリアサスペンション15の組立穴86で説明したが、締結穴であってもよい。
【0048】
図13は本発明のキャリアのストッパ作動からストッパロックまでの作用図であり、(a)において、ストッパ32、32がリアサスペンション15に接触したので、ストッパレバー68、68を矢印(18)、(19)のように折り曲げる。
【0049】
(b)において、ストッパレバー68がレバー受け台71に載り、ストッパ32の動作がロックされたので、キャリア20はリアサスペンション15を支持できる状態になる。最後に、リアサスペンション15から位置決めパレット85を矢印(20)のようにリフタを下降させて取り外す。
【0050】
図2において、キャリア20は、2方向に摺動自在に作動する摺動機構28と、回転可能な4個の突出部材29と、これらの突出部材29に下向きに設けられる4本のリアサスペンション固定ピン31と、リアサスペンションを支持する4個のストッパ32と、3個のピン移動レバー57、59、62と、4個のピン回転レバー34とを備えているので、リアサスペンションの組立穴又は締結穴に4本のリアサスペンション固定ピン31を挿入する前に、ピン移動レバー57、59、62及び4個のピン回転レバー34を操作することで4本のリアサスペンション固定ピン31の位置を簡単に調整することができる。そのため、搬送対象のリアサスペンションの種類が複数であって、リアサスペンションの大きさや形状が種類によって異なる場合でも、即座にリアサスペンション固定ピン31の位置を変更することができる。
【0051】
また、特許文献1のように複数種のリアサスペンションを搬送する場合にシリンダを用いる必要がないので、より小型な搬送装置を実現することができる。よって、より小型で、且つ複数種のリアサスペンションを搬送することができる搬送装置10を提供することができる。
【0052】
さらに、上記のように搬送対象が複数種のリアサスペンションであってもリアサスペンション固定ピン31の位置調整が即座に行えるので、図9及び図10で説明したようにリアサスペンションをキャリアに支持させる作業も円滑に行うことができる。
【0053】
これまでに説明してきたキャリア20のストッパは、突出部材に移動可能に設けたが、製作に手間がかかるものであった。次にストッパの製作がより容易である実施例を説明する。
【0054】
図14は本発明の別のキャリアの斜視図であり、図2と共通の構造については符号を流用して説明を省略する。主たる変更点は、ストッパを突出部材に回転可能に設けたことである。
【0055】
キャリア90は、支持部25の下端で支持され水平方向に延びているベース27と、このベース27に設けられ2方向に摺動自在に作動する摺動機構28と、この摺動機構28に回転可能に取り付けられ摺動機構28を上方から見て摺動機構28から外方に突出している例えば4個の突出部材91と、これらの突出部材91に下向きに設けられリアサスペンションに備えた組立穴又は締結穴に挿入される例えば4本のリアサスペンション固定ピン92と、4個の突出部材91の各々に回転可能に設けられリアサスペンションを支持する例えば4個のストッパ93(詳細後述)と、摺動機構28に駆動機構33を介して連結され複数本のリアサスペンション固定ピン92を任意の位置に移動させる3個のピン移動レバー57、59、62と、4個の突出部材91の各々に連結され4本のリアサスペンション固定ピン92を回転させる例えば4個のピン回転レバー34とを備えている。
【0056】
なお、突出部材91、リアサスペンション固定ピン92、ストッパ93、ピン回転レバー34は、実施例では各々4個設けたが、4個以上設けてもよい。
【0057】
図15は図14の15矢視図であり、ストッパ93は、突出部材91の回転中心軸94と同軸で回転するように突出部材91に設けられている。また、ストッパ93は、ロック機構95を備え、このロック機構95は、ストッパ93を支持している軸96と、この軸96に設けられている突起97と、この突起97を案内する逆L字形の穴98を備え突出部材91に支持されている筒部材99とで構成される。
【0058】
ストッパ93を矢印(21)のように押し上げると、突起97は矢印(22)のように穴98に沿って上昇して穴98の上端で止まる。これにより、ストッパ93は二点鎖線で示した(23)の位置に上昇する。次に、ストッパ93を矢印(24)のように回転させると、突起97は矢印(25)のように穴98に沿って移動して穴98の右端で止まる。これでストッパ93は二点鎖線で示した(26)の位置に移動するので、ストッパ93がリアサスペンション固定ピン(図11の符号92)の真下に移動したことになる。
【0059】
このようにキャリア(図11の符号90)では、ストッパ93を上昇させた後に回転させることで、ストッパ93をリアサスペンション固定ピン92の真下に円滑に移動させることができる。
【0060】
図16は本発明の別のキャリアの準備状態からリアサスペンション固定ピンの挿入までの作用図であり、摺動機構(図11の符号28)及びピン回転レバー(図11の符号34)でリアサスペンション固定ピンの位置決めは事前に終了しているものとして説明する。
【0061】
(a)において、位置決めパレット101上に載せたリアサスペンション102の組立穴103、103がキャリア90に備えたリアサスペンション固定ピン92、92に嵌るように、リアサスペンション102を矢印(27)のようにリフタで上昇させる。
【0062】
(b)において、リアサスペンション固定ピン92、92がリアサスペンション102の組立穴103、103に嵌ったので、ストッパ93、93を矢印(28)、(29)のように押し上げる。
【0063】
なお、リアサスペンション固定ピン92の挿入対象は、実施例ではリアサスペンション102の組立穴103で説明したが、締結穴であってもよい。
【0064】
図17は本発明の別のキャリアのストッパ作動からストッパロックまでの作用図であり、(a)において、ストッパ93、93を矢印(30)、(31)のように回転させる。
【0065】
(b)において、ストッパ93、93がリアサスペンション102に接触したので、キャリア90はリアサスペンション102を支持できる状態になる。最後に、リアサスペンション102から位置決めパレット101を矢印(32)のようにリフタで下降させて取り外す。
【0066】
図12において、キャリア90は、突出部材91の回転中心軸94と同軸で回転するように突出部材91に設けられリアサスペンションを支持するストッパ93を備えているので、突出部材91とストッパ93の回転中心軸94を一致させることができる。そのため、ストッパの構造をより簡単にすることができるので、製作しやすい搬送装置を実現することができる。
【0067】
図18は図6の変更実施例図であり、図6と共通の構造については符号を流用して説明を省略する。ピン移動機構115は、第2テーブル36に設けられているモータ116と、このモータ116の出力軸に連結されている送りねじ117と、この送りねじ117に移動可能に取り付けられ第6ラック55に連結されているナット118とで構成され、モータ116を起動させて第3スライダ52及び第4スライダ54を移動させることができる機構である。
【0068】
このピン移動機構115を用いれば、作業者は手動でレバーを操作する必要がないので、省力化に寄与する。なお、ピン移動機構115は、第4摺動機構41に適用したが、第1摺動機構(図4の符号37)、第2摺動機構(図4の符号38)、第3摺動機構(図5の符号39)にも適用してもよい。
【0069】
尚、本発明に係るワークは、実施の形態ではリアサスペンションを適用して説明したが、この他にエンジン本体やトランスミッション本体を適用してもよい。
また、本発明に係る摺動機構の駆動部は、実施の形態ではラックとピニオンで構成したが、送りねじ方式でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の搬送装置は、リアサスペンションの搬送に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の搬送装置の斜視図である。
【図2】本発明のキャリアの斜視図である。
【図3】本発明に係る摺動機構の斜視図である。
【図4】第1摺動機構及び第2摺動機構の斜視図である。
【図5】第3摺動機構の斜視図である。
【図6】第4摺動機構の斜視図である。
【図7】図2の7部拡大図である。
【図8】図7の8−8線断面図である。
【図9】図7の9−9線断面図である。
【図10】本発明のピン回転レバーの断面図である。
【図11】本発明のピン回転レバーの作用図である。
【図12】本発明のキャリアの準備状態からリアサスペンション固定ピンの挿入までの作用図である。
【図13】本発明のキャリアのストッパ作動からストッパロックまでの作用図である。
【図14】本発明の別のキャリアの斜視図である。
【図15】図14の15矢視図である。
【図16】本発明の別のキャリアの準備状態からリアサスペンション固定ピンの挿入までの作用図である。
【図17】本発明の別のキャリアのストッパ作動からストッパロックまでの作用図である。
【図18】図6の変更実施例図である。
【図19】従来の技術の基本原理を説明する図である。
【符号の説明】
【0072】
10…搬送装置、12…レール、15、102…リアサスペンション、20、90…キャリア、28…摺動機構、29、91…突出部材、31、92…リアサスペンション固定ピン、32、93…ストッパ、33…駆動機構、34…ピン回転レバー、64…ピン回転機構、65…ストッパ動作機構、86、103…組立穴、94…回転中心軸。
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井に設けたレールに移動自在に支持されるキャリアでワーク(リアサスペンション)を吊り下げた状態で搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来ワークを搬送する手段として各種の搬送装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−157674号公報(図3)
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図19は従来の技術の基本原理を説明する図であり、搬送装置200は、床に設けた2本のレール201に沿って移動する台車202と、この台車202の上面に設けられる2つの第1受け具203と、台車202の上面に図表裏方向に移動するように設けられる2つの第2受け具204と、台車202の上面に2本の縦軸205で揺動可能に留められ2つのストッパ206に接触している2本の揺動部材207と、これらの揺動部材207の中間部に設けられる2つの第3受け具208と、2本の揺動部材207の先端に設けられる2つの第4受け具209と、2本の揺動部材207の縦軸205側に設けられ互いに噛み合っている2枚のギヤ211と、2本の揺動部材207を互いに向き合うように付勢している引張りばね212からなり、第1受け具203、203と第2受け具204、204と第3受け具208、208とでワーク213を支持する搬送装置である。
【0004】
また、搬送装置200では、シリンダを用いて揺動部材207、207の先端を縦軸205、205を回転中心として図上に揺動させることで、例えば大きさや形状の異なるワークを第1受け具203、203と第2受け具204、204と第4受け具209、209とで支持することができる。
【0005】
ところで、特許文献1の搬送装置200は、揺動部材207、207を揺動させるためにシリンダを用いるが、このようなシリンダは図下方向に出っ張ることになる。このシリンダの出っ張りによって搬送装置200が大型になるので、搬送ライン用スペースの大型化を招く。
【0006】
そのため、より小型で、且つ複数種のワークを搬送することができる搬送装置の開発が求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、より小型で、且つ複数種のワークを搬送することができる搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、レールに移動自在に支持されるキャリアでワークを吊り下げた状態で搬送する搬送装置において、前記キャリアは、前記レール上を走行する走行部から下方に延ばした支持部で支持され2方向に摺動自在に作動する摺動機構と、この摺動機構に回転可能に取り付けられ前記摺動機構を上方から見て摺動機構から外方に突出している突出部材と、この突出部材に設けられ前記ワークに備えた組立穴又は締結穴に挿入されるワーク固定ピンと、前記突出部材に移動可能に設けられ前記ワークを支持するストッパとを備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、摺動機構は、支持部に複数組設けられ、これらはお互いに独立して2方向で作動するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、キャリアは、2方向に摺動自在に作動する摺動機構と、回転可能な突出部材と、この突出部材に設けられるワーク固定ピンと、ワークを支持するストッパとを備えているので、ワークの組立穴又は締結穴にワーク固定ピンを挿入する前に、摺動機構でワーク固定ピンの位置を簡単に調整することができる。そのため、搬送対象のワークの種類が複数であって、ワークの大きさや形状が種類によって異なる場合でも、即座にワーク固定ピンの位置を変更することができる。
【0011】
また、特許文献1のように複数種のワークを搬送する場合にシリンダを用いる必要がないので、より小型な搬送装置を実現することができる。請求項1によれば、より小型で、且つ複数種のワークを搬送することができる搬送装置を提供することができる。
【0012】
加えて、請求項1に係る発明では、上記のように搬送対象が複数種のワークであってもワーク固定ピンの位置調整が即座に行えるので、ワークをキャリアに支持させる作業も円滑に行うことができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、摺動機構は、支持部に複数組設けられ、これらはお互いに独立して2方向で作動するように構成されているので、大きさや形状の異なる複数種のワークの支持に対して1台で対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。また、ワークはリアサスペンションを適用して説明する。
【0015】
図1は本発明の搬送装置の斜視図であり、搬送装置10は、天井に複数個の支持部材11を介して設けられ水平方向に延びている2本のレール12と、レール12とレール12とに渡した連結部材13に下向きに回転可能に設けられている2個の案内ローラ14と、2本のレール12に移動自在に支持されリアサスペンション15を保持しているキャリア20(詳細後述)とで構成され、上流側でキャリア20の上部に備えた移動部材21を駆動ローラで押し出すことで複数のキャリア20を白抜き矢印のように前進させる装置である。22は走行部、23、24は走行ローラ、25は支持部、26は吊り下げ用治具である。
【0016】
図2は本発明のキャリアの斜視図であり、キャリア20は、支持部25の下端で支持され水平方向に延びているベース27と、このベース27に設けられ2方向に摺動自在に作動する摺動機構28(詳細後述)と、この摺動機構28に回転可能に取り付けられ摺動機構28を上方から見て摺動機構28から外方に突出している例えば4個の突出部材29(詳細後述)と、これらの突出部材29に下向きに設けられリアサスペンション(図1の符号15)に備えた組立穴又は締結穴に挿入される例えば4本のリアサスペンション固定ピン31(詳細後述)と、4個の突出部材29の各々に移動可能に設けられリアサスペンションを支持する例えば4個のストッパ32(詳細後述)と、摺動機構28に駆動機構33(詳細後述)を介して連結され複数本のリアサスペンション固定ピン31を任意の位置に移動させる3個のピン移動レバー(詳細後述)と、4個の突出部材29の各々に連結され4本のリアサスペンション固定ピン31を回転させる例えば4個のピン回転レバー34(詳細後述)とを備えている。
【0017】
なお、突出部材29、リアサスペンション固定ピン31、ストッパ32、ピン回転レバー34は、実施例では各々4個設けたが、4個以上設けてもよい。
【0018】
図3は本発明に係る摺動機構の斜視図であり、摺動機構28は、ベース27と図手前側の第1テーブル35と奥側の第2テーブル36を連結し第1テーブル35及び第2テーブル36を図右斜め方向に摺動させる左上側の第1摺動機構37及び右下側の第2摺動機構38と、第1テーブル35に設けられている第3摺動機構39と、第2テーブル36に設けられている第4摺動機構41とで構成される。
【0019】
また、駆動機構33は、ベース27に回転可能に設けられている第1ピニオン42と、この第1ピニオン42に噛み合い第1テーブル35に連結されている第1ラック43と、第1ピニオン42に噛み合い第2テーブル36に連結されている第2ラック44と、第1テーブル35に回転可能に設けられている第2ピニオン45と、この第2ピニオン45に噛み合い第1スライダ46に連結されている第3ラック47と、第2ピニオン45に噛み合い第2スライダ48に連結されている第4ラック49と、第2テーブル36に回転可能に設けられている第3ピニオン51と、この第3ピニオン51に噛み合い第3スライダ52に連結されている第5ラック53と、第3ピニオン51に噛み合い第4スライダ54に連結されている第6ラック55とで構成される。
【0020】
図4は第1摺動機構及び第2摺動機構の斜視図であり、第1ピン移動機構104は、ベース27に設けられている支持部材105と、この支持部材105に回転可能に取り付けられている第1ピン移動レバー57と、この第1ピン移動レバー57と一体の軸に取り付けられている第1押し部材106と、この第1押し部材106の長穴に嵌り第2ラック44に設けられているピン107とで構成される。
【0021】
第1ピン移動レバー57を矢印(1)のように操作すると、ピン107が矢印(2)のように移動するので、第2ラック44、第1ピニオン42、第1ラック43が作動して第1テーブル35及び第2テーブル36を矢印(3)、(3)のように移動させることができる。
【0022】
図5は第3摺動機構の斜視図であり、第2ピン移動機構108は、第1テーブル35に設けられている支持部材105と、この支持部材105に回転可能に取り付けられている第2ピン移動レバー59と、この第2ピン移動レバー59と一体の軸に取り付けられている第2押し部材109と、この第2押し部材109の長穴に嵌り第4ラック49に設けられているピン111とで構成される。
【0023】
第2ピン移動レバー59を矢印(4)のように操作すると、ピン111が矢印(5)のように移動するので、第4ラック49、第2ピニオン45、第3ラック47が作動して第1スライダ46及び第2スライダ48を矢印(6)、(6)のように移動させることができる。
【0024】
図6は第4摺動機構の斜視図であり、第3ピン移動機構112は、第2テーブル36に設けられている支持部材105と、この支持部材105に回転可能に取り付けられている第3ピン移動レバー62と、この第3ピン移動レバー62と一体の軸に取り付けられている第3押し部材113と、この第3押し部材113の長穴に嵌り第5ラック53に設けられているピン114とで構成される。
【0025】
第3ピン移動レバー62を矢印(7)のように操作すると、ピン114が矢印(8)のように移動するので、第5ラック53、第3ピニオン51、第6ラック55が作動して第3スライダ52及び第4スライダ54を矢印(9)、(9)のように移動させることができる。
【0026】
このように、第1ピン移動レバー(図4の符号57)を操作することで、テーブル35、36を移動させることができ、第2ピン移動レバー(図5の符号59)を操作することで、スライダ46、48を移動させることができ、第3ピン移動レバー62を操作することで、スライダ52、54を移動させることができる。
【0027】
図3において、スライダ46、48、52、54には各々連結部材63を介して突出部材(図2の符号29)及びリアサスペンション固定ピン(図2の符号31)が取り付けられているので、第1ピン移動レバー57、第2ピン移動レバー59、第3ピン移動レバー62の操作によって、4本のリアサスペンション固定ピンを任意の位置に移動させることができる。
【0028】
すなわち、摺動機構28は、ベース27に例えば3組設けられ、これらはお互いに独立して2方向で作動するように構成されているので、大きさや形状の異なる複数種のワークの支持に対して1台で対応することができる。
【0029】
なお、摺動機構28は、実施例では3組で構成したが、数量は任意である。
【0030】
図7は図2の7部拡大図であり、突出部材29は、第2スライダ48に取り付けた連結部材63にピン回転機構64(詳細後述)を介して設けられているL字形の部材である。また、突出部材29の先端部の下面には、リアサスペンション(図1の符号15)に備えた組立穴又は締結穴に挿入されるように下向きのリアサスペンション固定ピン31が設けられ、突出部材29の中間部の上面には、ストッパ動作機構65(詳細後述)が設けられている。
【0031】
ストッパ動作機構65は、突出部材29の上面に立てられている2つの軸受台66と、これらの軸受台66で回転可能に支持されている軸67と、この軸67の一端に連結されている中間折り曲げ式のストッパレバー68とで構成される。また、軸67には、ストッパ32が取り付けられている。69はストッパ支持穴、71はレバー受け台である。
【0032】
ストッパレバー68を実線の位置から矢印(7)のように二点鎖線の位置まで引き上げると、ストッパ32が実線の位置から矢印(8)のように二点鎖線で示したようにリアサスペンション固定ピン31の真下に移動する。リアサスペンションの組立穴又は締結穴にリアサスペンション固定ピン31を挿入していた場合には、上記動作でリアサスペンションをストッパ32で下方から支持することができる。
【0033】
次に、ストッパレバー68を矢印(9)のように折り曲げて、二点鎖線で示すようにレバー受け台71の上面に載せる。これにより、ストッパ32の動作をロックすることができる。
【0034】
図8は図7の8−8線断面図であり、ストッパ支持穴69は、くさび状に形成されているロック部72と、直線状に形成されている支持部73とからなり、ロック部72にストッパ32が嵌っている。この状態は、リアサスペンション固定ピン(図4の符号31)からストッパ32が離れている状態である。ここからストッパ32を矢印(10)のように二点鎖線で示したように支持部73に載せると、ストッパ32がリアサスペンション固定ピンの真下に移動した状態になる。
【0035】
すなわち、ストッパ32でリアサスペンションを支持していないときには、ストッパ32はロック部72に嵌ることで動作がロックされ、ストッパ32でリアサスペンションを支持しているときには、ストッパ32は支持部73で支持されるので、作業途中にストッパ32が不意に動作することを防ぐことができる。
【0036】
図9は図7の9−9線断面図であり、ストッパレバー68がレバー受け台71に載っている状態を示す。レバー受け台71は、支持部材74の上面に設けた例えば弾性体としてのゴム製のレバー受け部75を備え、レバー受け部75は図左側から嵌合面76、突起77、案内面78を有する。
【0037】
なお、レバー受け部75は、ゴム製で説明したが、この他に樹脂製やばねを用いた構造を採用してもよい。
【0038】
ストッパレバー68を折り曲げるとき、二点鎖線で示したストッパレバー68は、先ず案内面78を摺るように移動し、次に突起77を高さHだけ押し潰し、嵌合面76に嵌る。このように、レバー受け部75を弾性体で構成したので、ストッパレバー68を折り曲げるときにレバー受け部75が移動の邪魔になることがない。
【0039】
加えて、レバー受け部75は、嵌合面76でストッパレバー68を保持するので、前述したストッパ(図4の符号32)が受けるリアサスペンション(図1の符号15)の荷重を支持することができる。
【0040】
さらに、レバー受け部75は、ストッパレバー68の移動を嵌合面76で制止するので、ストッパでリアサスペンションを支持しているときにストッパレバー68がレバー受け部75から外れることを防ぐことができる。
【0041】
図10は本発明のピン回転レバーの断面図であり、ピン回転レバー34は、ピン回転機構64の上端に取り付けられ、ピン回転機構64は、連結部材63に取り付けられている軸ユニット79と、この軸ユニット79に嵌められている軸受81と、この軸受81に接触し軸ユニット79に回転自在に嵌められている回転部材82と、この回転部材82の上面から上方に延ばされピン回転レバー34を備えている軸83とで構成される。84は押さえ部材である。
【0042】
図11は本発明のピン回転レバーの作用図であり、ピン回転レバー34を矢印(11)のように図上に移動させると、回転部材82に取り付けられている突出部材29は左に回転するので、二点鎖線で示した(12)の位置に移動する。また、ピン回転レバー34を矢印(13)のように右に移動させると、突出部材29は上に回転するので、二点鎖線で示した(14)の位置に移動する。
【0043】
このように、ピン回転レバー34を操作することで、突出部材29に設けたリアサスペンション固定ピン(図4の符号31)の位置を簡単に移動させることができる。また、前述の摺動機構(図3の符号28)でリアサスペンション固定ピンの位置を大まかに決定しておき、上記ピン回転レバー34でリアサスペンション固定ピンの位置を微調整することができる。
以上の構成からなるキャリア20の作用を次に説明する。
【0044】
図12は本発明のキャリアの準備状態からリアサスペンション固定ピンの挿入までの作用図であり、摺動機構(図3の符号28)及びピン回転レバー(図2の符号34)でリアサスペンション固定ピンの位置決めは事前に終了しているものとして説明する。
【0045】
(a)において、位置決めパレット85上に載せたリアサスペンション15の組立穴86、86がキャリア20に備えたリアサスペンション固定ピン31、31に嵌るように、リアサスペンション15を矢印(15)のようにリフタで上昇させる。
【0046】
(b)において、リアサスペンション固定ピン31、31がリアサスペンション15の組立穴86、86に嵌ったので、ストッパレバー68を矢印(16)、(17)のように引き上げる。
【0047】
なお、リアサスペンション固定ピン31の挿入対象は、実施例ではリアサスペンション15の組立穴86で説明したが、締結穴であってもよい。
【0048】
図13は本発明のキャリアのストッパ作動からストッパロックまでの作用図であり、(a)において、ストッパ32、32がリアサスペンション15に接触したので、ストッパレバー68、68を矢印(18)、(19)のように折り曲げる。
【0049】
(b)において、ストッパレバー68がレバー受け台71に載り、ストッパ32の動作がロックされたので、キャリア20はリアサスペンション15を支持できる状態になる。最後に、リアサスペンション15から位置決めパレット85を矢印(20)のようにリフタを下降させて取り外す。
【0050】
図2において、キャリア20は、2方向に摺動自在に作動する摺動機構28と、回転可能な4個の突出部材29と、これらの突出部材29に下向きに設けられる4本のリアサスペンション固定ピン31と、リアサスペンションを支持する4個のストッパ32と、3個のピン移動レバー57、59、62と、4個のピン回転レバー34とを備えているので、リアサスペンションの組立穴又は締結穴に4本のリアサスペンション固定ピン31を挿入する前に、ピン移動レバー57、59、62及び4個のピン回転レバー34を操作することで4本のリアサスペンション固定ピン31の位置を簡単に調整することができる。そのため、搬送対象のリアサスペンションの種類が複数であって、リアサスペンションの大きさや形状が種類によって異なる場合でも、即座にリアサスペンション固定ピン31の位置を変更することができる。
【0051】
また、特許文献1のように複数種のリアサスペンションを搬送する場合にシリンダを用いる必要がないので、より小型な搬送装置を実現することができる。よって、より小型で、且つ複数種のリアサスペンションを搬送することができる搬送装置10を提供することができる。
【0052】
さらに、上記のように搬送対象が複数種のリアサスペンションであってもリアサスペンション固定ピン31の位置調整が即座に行えるので、図9及び図10で説明したようにリアサスペンションをキャリアに支持させる作業も円滑に行うことができる。
【0053】
これまでに説明してきたキャリア20のストッパは、突出部材に移動可能に設けたが、製作に手間がかかるものであった。次にストッパの製作がより容易である実施例を説明する。
【0054】
図14は本発明の別のキャリアの斜視図であり、図2と共通の構造については符号を流用して説明を省略する。主たる変更点は、ストッパを突出部材に回転可能に設けたことである。
【0055】
キャリア90は、支持部25の下端で支持され水平方向に延びているベース27と、このベース27に設けられ2方向に摺動自在に作動する摺動機構28と、この摺動機構28に回転可能に取り付けられ摺動機構28を上方から見て摺動機構28から外方に突出している例えば4個の突出部材91と、これらの突出部材91に下向きに設けられリアサスペンションに備えた組立穴又は締結穴に挿入される例えば4本のリアサスペンション固定ピン92と、4個の突出部材91の各々に回転可能に設けられリアサスペンションを支持する例えば4個のストッパ93(詳細後述)と、摺動機構28に駆動機構33を介して連結され複数本のリアサスペンション固定ピン92を任意の位置に移動させる3個のピン移動レバー57、59、62と、4個の突出部材91の各々に連結され4本のリアサスペンション固定ピン92を回転させる例えば4個のピン回転レバー34とを備えている。
【0056】
なお、突出部材91、リアサスペンション固定ピン92、ストッパ93、ピン回転レバー34は、実施例では各々4個設けたが、4個以上設けてもよい。
【0057】
図15は図14の15矢視図であり、ストッパ93は、突出部材91の回転中心軸94と同軸で回転するように突出部材91に設けられている。また、ストッパ93は、ロック機構95を備え、このロック機構95は、ストッパ93を支持している軸96と、この軸96に設けられている突起97と、この突起97を案内する逆L字形の穴98を備え突出部材91に支持されている筒部材99とで構成される。
【0058】
ストッパ93を矢印(21)のように押し上げると、突起97は矢印(22)のように穴98に沿って上昇して穴98の上端で止まる。これにより、ストッパ93は二点鎖線で示した(23)の位置に上昇する。次に、ストッパ93を矢印(24)のように回転させると、突起97は矢印(25)のように穴98に沿って移動して穴98の右端で止まる。これでストッパ93は二点鎖線で示した(26)の位置に移動するので、ストッパ93がリアサスペンション固定ピン(図11の符号92)の真下に移動したことになる。
【0059】
このようにキャリア(図11の符号90)では、ストッパ93を上昇させた後に回転させることで、ストッパ93をリアサスペンション固定ピン92の真下に円滑に移動させることができる。
【0060】
図16は本発明の別のキャリアの準備状態からリアサスペンション固定ピンの挿入までの作用図であり、摺動機構(図11の符号28)及びピン回転レバー(図11の符号34)でリアサスペンション固定ピンの位置決めは事前に終了しているものとして説明する。
【0061】
(a)において、位置決めパレット101上に載せたリアサスペンション102の組立穴103、103がキャリア90に備えたリアサスペンション固定ピン92、92に嵌るように、リアサスペンション102を矢印(27)のようにリフタで上昇させる。
【0062】
(b)において、リアサスペンション固定ピン92、92がリアサスペンション102の組立穴103、103に嵌ったので、ストッパ93、93を矢印(28)、(29)のように押し上げる。
【0063】
なお、リアサスペンション固定ピン92の挿入対象は、実施例ではリアサスペンション102の組立穴103で説明したが、締結穴であってもよい。
【0064】
図17は本発明の別のキャリアのストッパ作動からストッパロックまでの作用図であり、(a)において、ストッパ93、93を矢印(30)、(31)のように回転させる。
【0065】
(b)において、ストッパ93、93がリアサスペンション102に接触したので、キャリア90はリアサスペンション102を支持できる状態になる。最後に、リアサスペンション102から位置決めパレット101を矢印(32)のようにリフタで下降させて取り外す。
【0066】
図12において、キャリア90は、突出部材91の回転中心軸94と同軸で回転するように突出部材91に設けられリアサスペンションを支持するストッパ93を備えているので、突出部材91とストッパ93の回転中心軸94を一致させることができる。そのため、ストッパの構造をより簡単にすることができるので、製作しやすい搬送装置を実現することができる。
【0067】
図18は図6の変更実施例図であり、図6と共通の構造については符号を流用して説明を省略する。ピン移動機構115は、第2テーブル36に設けられているモータ116と、このモータ116の出力軸に連結されている送りねじ117と、この送りねじ117に移動可能に取り付けられ第6ラック55に連結されているナット118とで構成され、モータ116を起動させて第3スライダ52及び第4スライダ54を移動させることができる機構である。
【0068】
このピン移動機構115を用いれば、作業者は手動でレバーを操作する必要がないので、省力化に寄与する。なお、ピン移動機構115は、第4摺動機構41に適用したが、第1摺動機構(図4の符号37)、第2摺動機構(図4の符号38)、第3摺動機構(図5の符号39)にも適用してもよい。
【0069】
尚、本発明に係るワークは、実施の形態ではリアサスペンションを適用して説明したが、この他にエンジン本体やトランスミッション本体を適用してもよい。
また、本発明に係る摺動機構の駆動部は、実施の形態ではラックとピニオンで構成したが、送りねじ方式でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の搬送装置は、リアサスペンションの搬送に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の搬送装置の斜視図である。
【図2】本発明のキャリアの斜視図である。
【図3】本発明に係る摺動機構の斜視図である。
【図4】第1摺動機構及び第2摺動機構の斜視図である。
【図5】第3摺動機構の斜視図である。
【図6】第4摺動機構の斜視図である。
【図7】図2の7部拡大図である。
【図8】図7の8−8線断面図である。
【図9】図7の9−9線断面図である。
【図10】本発明のピン回転レバーの断面図である。
【図11】本発明のピン回転レバーの作用図である。
【図12】本発明のキャリアの準備状態からリアサスペンション固定ピンの挿入までの作用図である。
【図13】本発明のキャリアのストッパ作動からストッパロックまでの作用図である。
【図14】本発明の別のキャリアの斜視図である。
【図15】図14の15矢視図である。
【図16】本発明の別のキャリアの準備状態からリアサスペンション固定ピンの挿入までの作用図である。
【図17】本発明の別のキャリアのストッパ作動からストッパロックまでの作用図である。
【図18】図6の変更実施例図である。
【図19】従来の技術の基本原理を説明する図である。
【符号の説明】
【0072】
10…搬送装置、12…レール、15、102…リアサスペンション、20、90…キャリア、28…摺動機構、29、91…突出部材、31、92…リアサスペンション固定ピン、32、93…ストッパ、33…駆動機構、34…ピン回転レバー、64…ピン回転機構、65…ストッパ動作機構、86、103…組立穴、94…回転中心軸。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールに移動自在に支持されるキャリアでワークを吊り下げた状態で搬送する搬送装置において、
前記キャリアは、前記レール上を走行する走行部から下方に延ばした支持部で支持され2方向に摺動自在に作動する摺動機構と、この摺動機構に回転可能に取り付けられ前記摺動機構を上方から見て摺動機構から外方に突出している突出部材と、この突出部材に設けられ前記ワークに備えた組立穴又は締結穴に挿入されるワーク固定ピンと、前記突出部材に移動可能に設けられ前記ワークを支持するストッパとを備えていることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記摺動機構は、前記支持部に複数組設けられ、これらはお互いに独立して2方向で作動するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項1】
レールに移動自在に支持されるキャリアでワークを吊り下げた状態で搬送する搬送装置において、
前記キャリアは、前記レール上を走行する走行部から下方に延ばした支持部で支持され2方向に摺動自在に作動する摺動機構と、この摺動機構に回転可能に取り付けられ前記摺動機構を上方から見て摺動機構から外方に突出している突出部材と、この突出部材に設けられ前記ワークに備えた組立穴又は締結穴に挿入されるワーク固定ピンと、前記突出部材に移動可能に設けられ前記ワークを支持するストッパとを備えていることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記摺動機構は、前記支持部に複数組設けられ、これらはお互いに独立して2方向で作動するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−83667(P2010−83667A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257899(P2008−257899)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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