説明

搬送調整方法、搬送調整システムおよび搬送調整プログラム

【課題】画像形成装置における媒体の搬送精度を高める。
【解決手段】媒体を副走査方向に搬送する搬送ローラーと前記副走査方向に並ぶ複数のノズルとを備え、前記搬送と、前記複数のノズルを主走査方向へ移動させる主走査とを繰り返す画像形成装置の前記搬送を、前記搬送ローラーの1回転を複数の角度区間に分割して前記角度区間毎に調整する方法であって、前記角度区間に対応する前記搬送を実行する度に前記主走査によって罫線を形成することによって複数の前記罫線が配列されたテストパターンを印刷する工程と、印刷された前記罫線の配列間隔を検出する工程と、同一の前記角度区間に対応する複数の前記配列間隔の平均値に基づいて当該角度区間に対応する前記搬送を調整する工程と、を含む搬送調整方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、副走査方向への媒体の搬送と主走査方向へのノズル移動を伴うインクの吐出とを繰り返す画像形成装置による媒体の搬送を調整する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットプリンター等の画像形成装置においては、搬送ローラーを駆動して紙やフィルムなどのシート状の媒体を搬送している。搬送ローラーが偏心していたり、搬送ローラーを駆動するモーターの回転軸がフレームへの取り付け誤差によって偏心していたり、搬送ローラーの周長がばらついていたり、媒体が搬送ローラーに対して滑ったりすると、搬送ローラーの回転角度から導かれる媒体の搬送距離に誤差が生ずる。一般にこのような誤差には、偏心によって周期的に表れる搬送誤差であるAC成分と、搬送ローラーの周長ばらつきや媒体の滑りに起因する搬送誤差であるDC成分とが含まれている。
【0003】
特許文献1−3には、インクジェットプリンターによって印刷したテストパターンをスキャナーによって読み取ることで搬送誤差のAC成分およびDC成分を個別に検出し、テストパターンに基づいて検出した搬送誤差に基づいて実用モードで生ずる搬送誤差を予測して媒体の搬送を調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−273956号公報
【特許文献2】特開2008−302659号公報
【特許文献3】特開2008−260168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、偏心に起因する搬送誤差のAC成分はモーターの回転角度に基準角を設定し、基準角からの360°を細かく複数の角度区間に区分し、角度区間毎に制御量を補正するための補正値を設定する必要がある。他方、媒体と搬送ローラーの滑りに起因して実用モードにおいて生ずる搬送誤差のDC成分は、実用モードでの搬送によって生ずる搬送ローラーと媒体の滑りを再現しなければ、正確に予測することができない。
【0006】
しかし、特許文献1−3に開示された方法によると、搬送誤差のAC成分を検出するパターンと搬送誤差のDC成分を検出するパターンとを同時に形成するため、それぞれのパターンは同じ搬送モードで形成されることになる。したがって、特許文献1−3に開示された方法によると、搬送誤差のAC成分とDC成分を検出する精度が低いという問題がある。
【0007】
また、一般にプリンターは高速モードや高精細モードといった複数の印刷モードを備えているが、それぞれのモードにおける間欠搬送によって生ずる媒体の滑りは一定ではない。このため、印刷モード毎に媒体の滑りを正確に予測できるテストパターンが必要である。
【0008】
本発明はこれらの問題に鑑みて創作されたものであって、画像形成装置における媒体の搬送精度を高めることを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するための搬送調整方法は、媒体を副走査方向に搬送する搬送ローラーと前記副走査方向に並ぶ複数のノズルとを備え、前記搬送と、前記複数のノズルを主走査方向へ移動させる主走査とを繰り返す画像形成装置の前記搬送を、前記搬送ローラーの1回転を複数の角度区間に分割して前記角度区間毎に調整する方法であって、前記角度区間に対応する前記搬送を実行する度に前記主走査によって罫線を形成することによって複数の前記罫線が配列されたテストパターンを印刷する工程と、印刷された前記罫線の配列間隔を検出する工程と、同一の前記角度区間に対応する複数の前記配列間隔の平均値に基づいて当該角度区間に対応する前記搬送を調整する工程と、を含む。
本発明において、搬送ローラーの偏心に起因する実用モードにおける搬送誤差のAC成分は、搬送ローラーの1回転を複数の角度区間に分割し、角度区間毎に調整される。本発明に係るテストパターンを印刷すると、角度区間の区切り毎に罫線が形成される。したがって本発明に係るテストパターンを用いると、搬送ローラーの偏心に起因する実用モードにおける搬送誤差のAC成分を、罫線の配列間隔から予測することができる。すなわち本発明によると、媒体に形成された複数の罫線の配列間隔を検出することで、搬送ローラーと媒体の滑りに起因するDC成分を除いた実用モードでの搬送誤差のAC成分を正確に予測することができる。ここで、複数の罫線を媒体に形成する際にも、搬送ローラーと媒体の滑りは発生し得る。しかし、滑り量が十分に抑制された条件下では互いに異なる角度区間に対応する間欠搬送においても一定の滑りが生ずるとみなして差し支えない。例えば、印刷された罫線の配列間隔の平均と、罫線の基準間隔(制御量としての配列間隔)との差の平均を滑り量とみなせばよい。ただし、媒体と搬送ローラーとの滑りは不規則に発生する。そこで、同一の角度区間に対応する複数の配列間隔の平均値に基づいて当該角度区間に対応する搬送を調整するのである。すなわち本発明によると、搬送誤差のAC成分を正確に予測して搬送を調整することによって画像形成装置における媒体の搬送精度を高めることができる。
【0010】
(2)上記目的を達成するための搬送調整方法において、前記テストパターンをロール紙に印刷してもよい。
カット紙を媒体としてテストパターンを形成する場合、媒体のほぼ全域にテストパターンを配置することもあり得る。またカット紙の上流端とノズルが対向している状態では、ノズルの上流に配置された搬送ローラーのみがカット紙に接し、ノズルの下流に配置された搬送ローラーはカット紙に接しない。この状態で生ずる搬送誤差は、ノズルの上流に配置された搬送ローラーの搬送誤差である。一方、カット紙の下流端とノズルが対向している状態では、ノズルの下流に配置された搬送ローラーのみがカット紙に接し、ノズルの上流に配置された搬送ローラーはカット紙に接しない。この状態で生ずる搬送誤差は、ノズルの下流に配置された搬送ローラーの搬送誤差である。仮に、テストパターンを印刷している期間中の媒体と搬送ローラーとの接触状態が実用モードと異なるとするならば、罫線の配列間隔は実用モードでの搬送誤差を正確に予測する根拠になり得ない。これに対し、ロール紙を媒体としてテストパターンを形成する場合、副走査方向に余白を長く取ることができるため、テストパターンを媒体に形成する際に媒体に接する搬送ローラーの条件を実用モードと一致させることができる。
【0011】
(3)上記目的を達成するための搬送調整方法において、前記画像形成装置は、前記テストパターンにより前記搬送を調整するためのテストモードと、前記テストモードに基づいて調整した搬送により画像を形成する実用モードとのそれぞれを有し、前記テストパターンを印刷するための間欠搬送の加速度は、前記実用モードにおける搬送よりも緩慢である。
ここで加速度が緩慢であるとは、加速度の絶対値が相対的に小さいことを意味する。また間欠搬送とは、停止している媒体の運動を開始させて再び停止させるまでの搬送ローラーの一連の運動を意味する。また間欠搬送の加速度とは、間欠搬送期間中の搬送ローラーの角速度の変化の割合を意味する。
間欠搬送において、単位時間あたりに搬送ローラーと媒体との接触点を通過する搬送ローラーの表面長さと、単位時間あたりに媒体が進む距離との差(この差を滑り量という。)は、搬送ローラーの角加速度の絶対値が大きくなるほど大きくなる。本発明によって形成されるテストパターンを用いると、搬送ローラーの偏心に起因する実用モードにおける搬送誤差のAC成分を、実用モードよりも緩慢な加速度の間欠搬送を繰り返して媒体に形成される複数の罫線の配列間隔から予測することができる。すなわち本発明によると、媒体に形成された複数の罫線の配列間隔を検出することで、搬送ローラーと媒体の滑りに起因するDC成分を除いた実用モードでの搬送誤差のAC成分を正確に予測することができる。
【0012】
なお、本発明は、搬送調整システムとしても、搬送調整プログラムとしても、搬送調整プログラムの記録媒体としても成立する。むろん、その記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態にかかるシステム構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる平面図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる時間とモーターの角速度の関係を示す折れ線グラフである。
【図4】本発明の実施形態にかかる時間とモーターの角速度の関係を示す折れ線グラフである。
【図5】本発明の実施形態にかかるフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態にかかるスキャンデータを示す模式図である。
【図7】本発明の実施形態にかかる算出方法を示す模式図である。
【図8】本発明の実施形態にかかるフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態にかかる平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。尚、各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
1.概要
本発明の一実施形態としての搬送調整システム1の構成を図1に示す。搬送調整システム1は、PC(Personal Computer)10と、PC10に接続されたプリンター2およびスキャナー5で構成されている。搬送調整システム1は、印刷媒体としての各種のシートをプリンター2が搬送する動作を調整するためのシステムである。すなわち、PC10は、テストパターンデータTをプリンター2に出力し、プリンター2によってテストパターンをロール紙99に形成させる。スキャナー5はロール紙99に形成されたテストパターンを読み取り、テストパターンを表すスキャンデータtをPC10に供給する。PC10は、ロール紙99に形成されたテストパターンのテストパターンデータTに対する副走査方向の歪みをスキャンデータtに基づいて検出し、検出した歪みに基づいてプリンター2の搬送を調整する。
【0015】
2.プリンターの構成
画像形成装置としてのプリンター2は、媒体としての各種のシートを副走査方向に移動させる搬送とノズルを主走査方向に移動させつつノズルからインクを吐出させる主走査とを交互に繰り返すことによってシートに画像を形成するインクジェットプリンターである。
【0016】
プリンター2は、搬送ローラー41、43と、搬送ローラー41、43を駆動するモーター45とを備えている。モーター45は1パルス毎に一定角度(ステップ角)だけ回転するステッピングモーターである。モーター45の回転角度は駆動パルスのパルス数で制御され、モーター45の回転速度は駆動パルスの周波数によって制御される。搬送ローラー41、43の回転軸には図示しないロータリーエンコーダーが取り付けられている。搬送ローラー41、43の回転角度および回転速度はこのロータリーエンコーダーによって検出される。従動ローラー40、44は、それぞれ搬送ローラー41、43に接触している。搬送ローラー41、43、従動ローラー40、44はそれぞれ図示しない軸受けに対して回転自在に取り付けられている。ロール紙99等のシートは、搬送ローラー41、43と従動ローラー40、44との間に供給されるため、搬送ローラー41、43との間に作用する摩擦力によって搬送ローラー41、43の回転方向に搬送される。具体的には、下流側の搬送ローラー43との摩擦力によってロール紙99がプラテン42と印刷ヘッド21との間に引き込まれ、上流側の搬送ローラー41との摩擦力によってロール紙99がプラテン42と印刷ヘッド21との間から引き出される。上流側の搬送ローラー41とロール紙99の間に作用する静摩擦力が下流側の搬送ローラー43とロール紙99の間に作用する静摩擦力を上回るとともに、上流側の搬送ローラー41の周速度が下流側の搬送ローラー43の周速度が僅かに上回る。このため、ロール紙99が搬送ローラー41、43の両方に接触している状態においては、ロール紙99の搬送距離は上流側の搬送ローラー41の回転角度によって決まる。
ここでプリンター2は、テストパターンを印刷するためのテストモードと、テストパターンに基づいて搬送が調整された状態で印刷を実行するための実用モードとで作動する。テストモードでは、1回の搬送距離がモーター45の568ステップに相当する第一間欠搬送と、1回の搬送距離がモーター45の1136ステップに相当する第二間欠搬送とのいずれかによってシートが搬送される。実用モードでは、1回の搬送距離がモーター45の1136ステップに相当する第二間欠搬送によってシートが搬送される。
【0017】
またプリンター2は、底面にノズルが開口している印刷ヘッド21と、印刷ヘッド21を主走査方向に移動させるためのモーター23とを備えている。印刷ヘッド21には、ピエゾ方式、サーマル方式といった公知の方式でノズルからインクを吐出するための吐出機構が設けられている。印刷ヘッド21およびインクカートリッジ20を搭載したキャリッジ25は、ガイドロッド24に対して摺動自在に取り付けられている。ガイドロッド24は、搬送ローラー41,43の回転軸と平行な姿勢で図示しないフレームに固定されている。キャリッジ25にはモーター23によって駆動される無端ベルト22が固定されている。このため、モーター23が回転することによって無端ベルト22に牽引されるキャリッジ25はロール紙99が搬送される方向(副走査方向)と垂直な方向(主走査方向)に移動する。
【0018】
モーター45、23および印刷ヘッド21は、プリンター2に備えられた制御部30によって制御される。制御部30は、CPU、EEPROM、RAMおよびインターフェース回路を備えている。制御部30は、PC10から供給されるテストパターンデータTなどの印刷データに基づいてモーター45、23および印刷ヘッド21を制御する。制御部30のEEPROMには、印刷データに基づいてモーター45、23および印刷ヘッド21を制御するための各種の補正値が記憶される。ロール紙99の搬送は、モーター45を制御するための補正値であるAC補正値およびDC補正値を設定することによって調整される。
【0019】
AC補正値はモーター45の基準角からの360°を等間隔に分割した角度区間毎に設定される。本実施形態においてモーター45は、24992ステップで360°回転するものとし、各角度区間の幅を568ステップに対応するものとして、44の角度区間毎にAC補正値が設定されるものする。AC補正値は、モーター45のステップ分解能よりも高い分解能を有する。具体的には、AC補正値はステップ分解能の2倍の解像度を有し、1ステップが1/5760インチ相当の搬送距離に相当するのに対してAC補正値は1/11520インチ相当の搬送距離に相当する。
【0020】
3.テストパターンの構成
図2に示すようにロール紙99に形成されるテストパターンは、PC1からプリンター2に供給されるテストパターンデータTに基づいて形成される。テストパターンは、搬送誤差のAC成分を検出するための第一パターンを構成する第一罫線a(t=0,1,2,・・・n)と、搬送誤差のDC成分を検出するための第二パターンを構成する第二罫線b11、b12、bとを有する。
【0021】
それぞれが第一パターンを構成する第一罫線aは、1ドットの線幅を有し、テストパターンデータTの第一罫線成分Aに対応する副走査方向の位置において、特定の1つのノズルから吐出されるインクによって形成される。第一罫線aを形成するためのインクを吐出するノズル(第一ノズル)21aは、印刷ヘッド21の最も下流側に位置する。第一罫線成分Aは主走査方向と平行な線分の列を構成する。また第一罫線成分Aはスキューの影響を排除するために主走査方向の中央に配列される。また第一罫線成分Aは間隔Pで等間隔に副走査方向に配列されている。間隔Pは角度区間の幅に対応し、モーター45の568ステップ相当の搬送距離に対応する。第一罫線aは傾き検出用罫線をも構成する。傾き検出用罫線aは、他の第一罫線よりも主走査方向に長い。第一罫線成分Aの間隔数は区間数の2倍に相当する88である。すなわち、89本の第一罫線aによって構成されるAC成分検出パターンPAは搬送ローラー41の2周分に相当する副走査方向長さを有し、角度区間数の2倍と等しい88の間隔を有する。
【0022】
一体として第二パターンを構成する第二罫線b11、b12と、第二パターンを構成する第二罫線bは、それぞれ1ドットの線幅を有し、それぞれ主走査方向と平行な線分を構成する。第二罫線b11、b12、bは、それぞれテストパターンデータTの第二罫線成分B11、B12、Bに対応する副走査方向の位置において、特定の1つのノズルから吐出されるインクによって形成される。第二罫線b11、b12、bを形成するためのインクを吐出するノズル(第二ノズル)21bは、印刷ヘッドの最も上流側に位置するノズルである。第二罫線成分B11、B12はスキューの影響を排除するために、主走査方向の中央線付近において、主走査方向の中央線を対称軸として線対称に配置されている。第二罫線成分B11、B12の副走査方向の位置は等しい。第二罫線成分B11、B12から第二罫線成分Bまでの副走査方向の距離Dは、搬送ローラー41の1周の長さに対応する。すなわち第二罫線b11、b12、bによって構成されるDC成分検出パターンPDは搬送ローラー41の1周分に相当する副走査方向長さを有する。
【0023】
3.テストパターンの印刷
プリンター2によるテストパターンの印刷はロール紙99の搬送を調整するためのテストモードにおいて実行される。PC10から出力されるテストパターンデータTに基づいて印刷が実行されるとき、はじめに、テストパターンデータTの第一罫線成分Aに基づいて下流端のノズル21aから吐出されるインクによって、傾き検出用罫線aがロール紙99に形成される。
【0024】
傾き検出用罫線aがロール紙99に形成されると、AC補正値ACが設定される1角度区間分の568ステップだけモーター45が回転してから、第一罫線成分Aに対応する第一罫線aが同じ下流端のノズル21aから吐出されるインクによってロール紙99に形成される。
【0025】
そして、第一罫線成分At−1に対応する第一罫線at−1が下流端の1つのノズル21aから吐出されるインクによってロール紙99に形成されると、モーター45がAC補正値ACが設定される1角度区間分の568ステップだけ回転してから、第一罫線成分Aに対応する第一罫線aが同じノズル21aから吐出されるインクによってロール紙99に形成される。このように主走査と間欠搬送とを交互に繰り返すことによって89本の第一罫線aと88の間隙からなり搬送ローラー41の2周分に相当する副走査方向長さを有するAC成分検出パターンPAがロール紙99に形成される。
【0026】
下流端の第一罫線a88が下流端のノズル21aから吐出されるインクによってロール紙99に形成される主走査において、第二罫線成分B11、B12に対応する第二罫線b11、b12が上流端のノズル21bから吐出されるインクによってロール紙99に形成される。すなわち、AC成分検出パターンPAの下流端を構成する第一罫線a88とDC成分検出パターンPDの上流端を構成する第二罫線b11、b12は、同一の主走査によって形成される。
【0027】
第一罫線a88と第二罫線b11、b12とがロール紙99に形成されるまで繰り返される間欠搬送(第一間欠搬送)では、搬送が調整された実用モードで実行される間欠搬送よりも加速度が緩慢に設定される。そして第一罫線a88と第二罫線b11、b12がロール紙99に形成されると、実用モードで実行される間欠搬送と同じ加速度が設定された第二間欠搬送によってロール紙99が搬送される。すなわち、図3に示すように、第二間欠搬送における加速および減速は、第一間欠搬送よりも急になる。具体的には、第一間欠搬送における加速区間の加速度をα、第一間欠搬送における減速区間における加速度をβ、第二間欠搬送における加速区間の加速度をα、第二間欠搬送における減速区間の加速度をβとすると、次式(1)、(2)が成り立つ。
|α|<|α|・・・(1)
|β|<|β|・・・(2)
【0028】
また1回の第一間欠搬送によってロール紙99が搬送される距離は、1回の第二間欠搬送によってロール紙99が搬送される距離よりも短い。
【0029】
第一罫線a88と第二罫線b11、b12がロール紙99に形成された後、モーター45が搬送ローラー41の1周分に相当する24992ステップだけ回転してから第二罫線成分Bに対応する第二罫線Bが上流端のノズル21bから吐出されるインクによってロール紙99に形成される。したがって、第二罫線b11、b12、BからなるDC成分検出パターンPDの副走査方向長さは、搬送ローラー41の1周分となる。
【0030】
第二罫線b11、b12から第二罫線Bまでの搬送は、図4に示すように、第二間欠搬送と停止とを交互に繰り返して実行される。具体的には、ロジカルシーキングを確実にキャンセルするために、第二罫線b11、b12の間においても、第二間欠搬送と数ドットのインク吐出とが繰り返されるように図示しないドット成分をテストパターンデータTに含める。すなわちDC成分検出パターンPDに含まれないこのようなドット成分を副走査方向に等間隔に複数配置することで、実用モードでの印刷と同じように第二間欠搬送と停止とがDC成分検出パターンPDの形成中に確実に繰り返されるように制御する。
【0031】
以上述べたとおりにロール紙99に印刷されるテストパターンにおいては、図2に示すように第一罫線aからなるAC成分検出パターンPAと第二罫線b11,b12,bからなるDC成分検出パターンPDとが副走査方向に一部重なっている。すなわち、DC成分検出パターンPDの上流側の第二罫線b11、b12とDC成分検出パターンPDの下流側の第二罫線bの間にAC成分検出パターンPAの下流端の第一罫線a88を含む複数の第一罫線が配置されている。モーター45の全角度区間についてAC補正値を取得するためには、AC成分検出パターンPAの副走査方向長さとしては搬送ローラー41の1周分の長さ以上が必要になる。また、AC成分が含まれていないDC補正値を取得しようとすれば、DC成分検出パターンPDの副走査方向長さについても搬送ローラー41の1周分の長さ以上が必要になる。AC成分検出パターンPAとDC成分検出パターンPDとを副走査方向に重ねる配置によって、AC成分検出パターンPAおよびDC成分検出パターンPDを含むテストパターン全体の副走査方向長さを短縮できる。したがって搬送ローラー41の直径が大きい場合であっても、ロール紙99のより小さな領域にAC成分検出パターンPAおよびDC成分検出パターンPDを含むテストパターンを形成することができる。例えば、搬送ローラー41の1周の長さが4.33インチあって上流端のノズル21bと下流端のノズル21aの中心間距離の2倍を超えているような場合であっても、テストパターンの副走査方向の長さは278.2mmとなりA4サイズの長辺よりも短くなる。この場合、A4サイズのカット紙にテストパターンを印刷することも可能である。
【0032】
ただし、テストパターンに対するカット紙の上下の余白が小さくなる場合には、上流側の搬送ローラー41にカット紙が接触しておらず下流側の搬送ローラー43によってカット紙が搬送されている状態でも、また、下流側の搬送ローラー43にカット紙が接触しておらず上流側の搬送ローラー41によってカット紙が搬送されている状態でも、テストパターンを印刷しなければならなくなる。この場合、両方の搬送ローラー41,43によってカット紙が搬送される実用モードとは異なる搬送誤差がテストパターンの印刷結果に表れることになるため、テストパターンの印刷結果に基づいて予測する実用モードでの搬送誤差の精度がやや低くなる。
【0033】
また、テストモードにおいてAC成分検出パターンPAを形成するための第一間欠搬送は、実用モードでの間欠搬送よりも加速度が緩慢であるため、第一間欠搬送における搬送ローラー41とロール紙99との滑り量は実用モードでの滑り量よりも小さくなる。したがって、実用モードにおける搬送誤差のAC成分をAC成分検出パターンPAに基づいて精度良く予測することができる。また、テストモードにおいてAC成分検出パターンPAを形成するための第一間欠搬送による搬送距離は実用モードでの間欠搬送による搬送距離よりも短く設定されているため、モーター45の角度区間数に対応するAC成分の補正分解能を高めることができる。一方、テストモードにおいてDC成分検出パターンPDを形成するための第二間欠搬送は実用モードでの間欠搬送と同じ加速度に設定されているため、第二間欠搬送における搬送ローラー41とロール紙99との滑り量は実用モードでの滑り量と同等になる。したがって、実用モードにおける搬送誤差のDC成分をDC成分検出パターンPDに基づいて精度良く予測することができる。また、第二間欠搬送では、ロール紙99の搬送距離が第一間欠搬送によるロール紙99の搬送距離よりも長くなり、加速度の絶対値が第一間欠搬送よりも大きくなるため、DC成分検出パターンPDを短時間に形成することができ、その結果、テストパターン全体の印刷に要する時間を短縮することができる。
【0034】
4.スキャナーの構成
ロール紙99に印刷されたテストパターンは、スキャナー5によって光学的に読み取られる。スキャナー5は、ロール紙99を載置するためのプラテンガラス50と、プラテンガラス50上においてロール紙99を位置決めするためのL字形の端面を有する原稿ガイド51とを備えている。またスキャナー5は、原稿を照明するための光源58と、照明された原稿を読み取るためのリニアイメージセンサ59と、リニアイメージセンサ59および光源58を搬送するためのキャリッジ57とを備えている。キャリッジ57は、ガイドロッド53に対して摺動自在に取り付けられている。ガイドロッド53はプラテンガラス50と平行な姿勢で図示しないフレームに固定されている。キャリッジ57にはモーター55によって駆動される無端ベルト54が固定されている。モーター55はスキャナー5に備えられる制御部56から出力されるパルスによって制御されるステッピングモーターである。制御部56は、CPU、EEPROM、RAMおよびインターフェース回路を備えている。制御部56は、PC10から受信する要求に基づいてモーター55、光源58およびリニアイメージセンサ59を制御するとともに、リニアイメージセンサ59から出力されるスキャンデータをPC10に転送する。
【0035】
テストパターンを構成している第一罫線同士の間隔と第二罫線同士の間隔は、スキャナー5によって読み取られたテストパターンデータtを構成するピクセルを単位として計測される。テストパターンデータtを構成するピクセルの副走査方向の配列間隔は、隣り合う任意の2本のラインがリニアイメージセンサ59によって読み取られる間に回転するモーター55の回転角度によって決まる。隣り合う任意の2本のラインがリニアイメージセンサ59によって読み取られる間にキャリッジ57が移動する距離には誤差によるばらつきがある。このばらつきの影響をキャンセルするため、テストパターンとともに読み取られる基準パターンが用意される。
【0036】
基準パターンは、プラテンガラス50に貼付される基準プレート52に形成される。基準プレート52には、基準パターンを構成するスリットSLが複数形成されている。スリットSLは、超高精度レーザーによって0.0353mmのピッチで描画されている。基準プレート52は、キャリッジ57が移動する方向(副走査方向)に伸びる原稿ガイド51の端面に長手方向の端面が接するようにプラテンガラス50に貼付される。このように貼付された基準プレート52のスリットSLはスキャナー5の主走査方向と平行になる。
【0037】
4.搬送調整方法
図5は上述したプリンター2の搬送を調整する手順を示すフローチャートである。以下に述べる、テストパターンの印刷と読み取りとスキャンデータの解析と補正値の設定とは、PC10において実行される搬送調整プログラムによって制御される。
【0038】
はじめにPC10はテストパターンデータTを出力し、テストモードで動作するプリンター2にテストパターンを印刷させる(S10)。テストパターンの印刷については、既に述べたとおりである。
【0039】
次にオペレーターは、テストパターンが印刷されたロール紙99をスキャナー5のプラテンガラス50に載置し、テストパターンをスキャナー5に読み取らせる。その結果、スキャナー5からPC10にテストパターンデータtが入力される(S11)。テストパターンが印刷されたロール紙99は、基準プレート52と原稿ガイド51とに2辺を当てた状態でプラテンガラス50に載置される。このようにしてプラテンガラス50にロール紙99を載置した状態でスキャナー5によってテストパターンを読み取ると、図6に示すスキャンデータtがPC10に入力される。
【0040】
次にPC10はスキャンデータtからテストパターンに対応する領域tと基準パターンに対応する領域tとを切り取る(S12)。
【0041】
次にPC10はテストパターンに対応する領域tの傾きを補正する(S13)。具体的には、傾き検出用罫線aと水平方向(スキャナーの主走査方向)がなす角度θを検出し、領域tを角度θだけ回転させる。
【0042】
次にPC10はテストパターンの印刷中に発生したスキューが許容範囲内であるか否かを検出し、許容範囲外であれば、エラーを報知して後続処理を中止する(S14)。具体的には、傾き検出用罫線aに対する第二罫線bの傾きが許容範囲内であるか否かを検出し、許容範囲外であればエラーを報知して後続処理を中止する。
【0043】
S13において領域tが回転するとテストパターンの各罫線の重心は、回転していないテストパターンデータtの座標系から見ると副走査方向に移動することになる。ところが、ロール紙99に印刷されたテストパターンの各罫線の副走査方向の位置はテストパターンデータtの座標系から見て副走査方向に移動していない領域tに読み取られている基準パターンの副走査方向の位置を基準として特定される。このため、領域tの回転による各罫線の重心の、回転していない領域tの座標系から見た副走査方向への移動を相殺する補正が必要になる。そこで、PC10は、領域tの回転による各罫線の重心の、回転していない領域tの座標系からみた副走査方向への移動量(オフセット)を導出する(S15)。
【0044】
次に領域tに表れているテストパターンの各罫線の重心と領域tに表れている基準パターンの各罫線の重心とを検出する(S16)。具体的には、領域tのうちそれぞれの第一罫線の一部を含み第一罫線の両脇の余白を含まない領域t21と、領域tのうちそれぞれの第二罫線の一部を含み第二罫線の両脇の余白を含まない領域t22、t23と、領域tのそれぞれについて、ライン毎の濃度平均を導出する。ここで濃度平均は、領域t、t21、t22、t23のライン毎に濃度(輝度)を合計した値を各領域の幅W(主走査方向長さ)で除した値である。そして濃度平均が閾値より大きな範囲で極大値をとるラインの副走査方向位置を基準として基準パターン及びテストパターンの各罫線の重心の副走査方向の位置(座標値)を検出する。
【0045】
次に、PC10は罫線の重心間の距離(配列間隔)が基準範囲内にあるかどうかを判定し、基準範囲を超えている場合には、エラーを報知して後続の処理を中止する(S17)。例えば、振動などの外乱によって、読み取られた罫線の濃度が異常に低くなったり、罫線が二重に読み取られた場合にエラーとなる。基準範囲は、想定されるプリンター2の最大搬送誤差とスキャナー5の最大読取誤差に基づいて設定される。
【0046】
次にPC10は、基準パターンの各罫線の重心の副走査方向の座標値を基準として、S15で導出したオフセットを適用し、テストパターンの各罫線の重心の副走査方向の位置(座標値)を特定する(S18)。具体的には次の通りである。テストパターンを構成する任意の罫線xは基準パターンの隣り合う2本の罫線s、su+1の間において読み取られる。ここで図7に示すように、罫線x、st−1、sの重心が検出されている副走査方向の座標値をそれぞれy,y、y(y>y>y)とし、予め測定されている罫線s、su+1の副走査方向の位置をY、Y(Y>Y)とすると、テストパターンを構成する任意の罫線xの位置Yは次式(3)によって特定される。
=(Y−Y){(y−y)/(y−y)}+Y・・・(3)
【0047】
すなわち、プラテンガラス50の表面において正確な副走査方向の位置が予め特定されている基準パターンのスリットSLがスキャンデータtに読み取られている位置を基準として、テストパターンを構成している罫線の副走査方向の位置が特定される。
【0048】
次にPC10は、特定された第一罫線の副走査方向の位置に基づいて角度区間毎にAC補正値を導出する(S20)。図8はAC補正値を導出する手順を示すフローチャートである。
【0049】
まず、隣り合う第一罫線の重心間距離を算出する(S201)。具体的には、第一罫線aの副走査方向の位置がYと特定されているとすると、第一罫線aと第一罫線at−1の重心間距離pは次式(4)によって算出される。なお、次式(4)においてt=1,2・・・,88である。
=Y−Yt−1・・・(4)
【0050】
ここでpは1回の第一間欠搬送の搬送距離の理論値と、その第一間欠搬送において生じた搬送誤差のDC成分と、その第一間欠搬送において生じた搬送誤差のAC成分との和である。
【0051】
次に同一の角度区間に対応する2つの重心間距離の平均値Ave(t)を次式(5)によって算出する(S201)。"44"は角度区間の数である。なお、次式(5)においてt=1,2・・・,44である。
Ave(t)=p+pt+44・・・(5)
【0052】
Ave(t)を求めると、角度区間毎に不規則に生じうるロール紙99と搬送ローラー41の滑りによる搬送誤差が平均化される。
【0053】
次に、同一の角度区間に対応する2つの重心間距離の平均値Ave(t)から、第一罫線の重心間距離の理論値を引いた値を第一中間値S(t)として角度区間毎に算出する。
【0054】
次に、隣り合う第一罫線の重心間距離pの平均値pと、第一中間値S(t)との差分に基づいて、角度区間毎にAC補正値Adj(t)を算出する(S202)。
【0055】
詳細には、まず、次式(6)によって隣り合う第一罫線の重心間距離pの平均値pを算出する。
=(p+p+・・・+p88)/88・・・(6)
【0056】
は全角度区間について各2回の第一間欠搬送において生じた搬送誤差のDC成分の平均値に相当する。各角度区間の第一間欠搬送による搬送距離が短いため、pは、各角度区間の第一間欠搬送において生じた搬送誤差のDC成分そのものとみなして差し支えない。
【0057】
そこで、第一中間値S(t)からpを引くことによって第一間欠搬送における搬送誤差のDC成分を除去し、さらに数値単位をピクセルからモーター45の1/2ステップに変換した値を各角度区間のAC補正値AC(t)として算出する。数値単位をピクセルから1/2ステップに変換するとき、角度区間毎にAC補正値AC(t)を四捨五入するとともに、切り捨てまたは切り上げられた端数を後続の四捨五入前のAC補正値AC'(t+1)に加算する。そして、最終の角度区間のAC補正値AC(44)は、全角度区間のAC補正値の総和が0になるように、AC補正値AC(1)からAC補正値AC(43)までの和の正負を反転させた値とする。
【0058】
このようにして全角度区間についてAC補正値AC(t)を導出すると、次にPC1はDC補正値DCを導出する(S21)。具体的には、まず、図6に示す領域t22、t23のそれぞれについて第二罫線の重心間距離d,dを算出し、さらに算出した重心間距離d,dの平均値を第二中間値Sとして算出する。次に第二中間値Sから第二罫線b11、b12と第二罫線bとの重心間距離の理論値を引いた値を算出し、さらに数値単位をピクセルからモーター45の1ステップに変換して四捨五入した値をDC補正値DCとして算出する。
【0059】
次に、PC1は、AC補正値AC(t)およびDC補正値DCをプリンター2に設定する。AC補正値AC(t)およびDC補正値DCは下表1に示すフォーマットでプリンター2の制御部30のEEPROMに書き込まれる。なお、表1において補正値解像度変換係数とは、モーター45の1/2ステップに相当するAC補正値の分解能(11520dpi)をモーター45の1ステップに対応する搬送分解能(5760dpi)で除した値である。
【表1】

【0060】
5.搬送の調整
AC補正値AC(t)およびDC補正値DCがプリンター2に設定されると、次のようにしてプリンター2の搬送が調整される。
【0061】
AC補正値AC(t)は、間欠搬送1回分の搬送距離が568/11520インチである搬送モードにおいて、間欠搬送1回につきモーター45に印加するパルス数を増減させる値を示している。またDC補正値DCは、搬送ローラー41の1回転につきモーター45に印加するパルス数を増減させる値を示している。したがってプリンター2は、実用モードにおける1回の搬送距離に応じて、その1回の搬送についてモーター45に印加するパルス数Pを設定する。さらに、その1回の搬送が対応しているモーター45の角度区間に応じて、その1回の搬送についてモーター45に印加するパルス数Pを設定する。
【0062】
目標搬送距離F(ステップ)である1回の搬送がモーター45の角度区間tのみに対応している場合、その1回の搬送についてモーター45に印加するパルス数Pは次式(7)によって算出される。
P=AC(t)×(1/μ)×F/568+DC×(F/24992)・・・(7)
【0063】
目標搬送距離F(ステップ)である1回の搬送がモーター45の角度区間t−1、tに対応し、モーター45の角度区間t−1が目標搬送距離f(ステップ)に対応し、モーター45の角度区間tが残りの目標搬送距離F−f(ステップ)に対応している場合、その1回の搬送についてモーター45に印加するパルス数Pは次式()によって算出される。
P=AC(t−1)×(1/μ)×f/568+AC(t)×(1/μ)×(F−f)/568+DC×(F/24992)・・・(8)
【0064】
目標搬送距離F(ステップ)である1回の搬送がモーター45の角度区間tからt(t−t>1)に対応し、角度区間tが目標搬送距離f(ステップ)に対応し、角度区間tが目標搬送距離f(ステップ)に対応している場合、その1回の搬送についてモーター45に印加するパルス数Pは次式(9)によって算出される。
P=AC(t)×(1/μ)×f/568+AC(t+1)+AC(t+2)・・・+AC(t)×(1/μ)×f/568+DC×(F/24992)・・・(9)
以上説明した搬送調整方法では、同一の角度区間(t)に対応する複数の配列間隔の平均値Ave(t)に基づいて当該角度区間(t)に対応する搬送を調整する。このため、角度区間毎に不規則に生じうるロール紙99と搬送ローラー41の滑りによる搬送誤差が平均化される。また、1回転分の角度区間に対応する複数のAC補正値の総和がゼロになるようにAC補正値を設定する。したがって、搬送誤差のAC成分を正確に予測して搬送を調整できるため、プリンター2におけるシートの搬送精度を高めることができる。
【0065】
6.他の実施形態
尚、本発明の技術的範囲は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、AC検出パターンPAとDC検出パターンPDを副走査方向に重ねずにテストパターンを構成することもできる。この場合、AC検出パターンPAを構成する第一罫線とDC検出パターンPDを構成する第二罫線とを同じノズルから吐出するインクによって形成しても良い。また、この場合、同一の主走査において第一罫線と第二罫線とが形成されることはない。
また上流側に形成するパターンに対応する第一ノズルとして最も下流側のノズルを用い、下流側に形成するパターンに対応する第二ノズルとして最も上流側のノズルを用いたのは、テストパターンの副走査方向長さを最大限短縮するためだが、第一ノズルが第二ノズルよりも下流側に位置するノズルであれば、第一ノズルと第二ノズルとの距離だけテストパターンの副走査方向長さを短縮することができる。
また、ノズルの特性により、ノズルによってはドットの濃度が安定しない場合もあるため、ドットの濃度が安定しているノズルを選択し、選択したノズルから吐出するインクによってAC検出パターンPAとDC検出パターンを形成してもよい。
【0066】
また図9に示すように、それぞれが同数の第一罫線aからなる2つのAC検出パターンPA、PAを副走査方向に離して配置し、上流または下流側のAC検出パターンPAの一部と重なるようにDC検出パターンPDを配置してテストパターンを構成することもできる。この場合、同一の主走査において第一罫線及び第二罫線が形成される主走査が2回実行されることになる。
【0067】
またAC検出パターンの副走査方向の長さは搬送ローラー41の1周分あればよい。例えば、図9に示す2つのAC検出パターンPA、PAの副走査方向の合計長さを搬送ローラー41の1周分としてもよい。またDC検出パターンを複数に分離し、分離された複数のDC検出パターンの副走査方向の合計長さを搬送ローラー41の1周分としても良い。
【0068】
また本発明によるテストパターンは、互いに異なる間欠搬送によって媒体が搬送される複数種類の実用モードを有する画像形成装置の搬送の調整に用いることもできる。たとえば第一罫線を高精細印刷モードにおける搬送誤差を検出するために用い、第二罫線を高速印刷モードにおける搬送誤差を検出するために用いることができる。この場合、搬送誤差のAC成分とDC成分とは分離されない。このような場合、搬送の加速度が緩慢な高精細印刷モードにおける搬送誤差を検出するための第一罫線からなるパターンの副走査方向長さも、搬送の加速度が急な高速印刷モードにおける搬送誤差を検出するための第二罫線からなるパターンの副走査方向長さも、搬送ローラーの1周分の長さよりも短くても良い。それぞれの実用モードでの搬送誤差をAC成分を分離せずに予測するのであれば、パターンの副走査方向長さがローラーの1周分以上なければ予測できないわけではないからである。
【0069】
またAC検出パターンを構成する第一パターンは線分以外のパターンであってもよいし、DC検出パターンを構成する第二パターンも線分以外のパターンであっても良い。例えば、互いに濃度が異なるパッチを副走査方向に配列してAC検出パターンを構成しても良い。
【0070】
また各パターンの配列間隔は、パターンの重心間距離に限らず、隣り合う2つのパターンの間の空隙の長さとしてもよいし、隣り合う2つのパターンの一端同士の距離としてもよい。
【符号の説明】
【0071】
T…テストパターンデータ,1…搬送調整システム,2…プリンター,5…スキャナー,20…インクカートリッジ,21…印刷ヘッド,21a…ノズル,21b…ノズル,22…無端ベルト,23…モーター,24…ガイドロッド,25…キャリッジ,30…制御部,40…従動ローラー,41…搬送ローラー,42…プラテン,43…搬送ローラー,45…モーター,50…プラテンガラス,51…原稿ガイド,52…基準プレート,53…ガイドロッド,54…無端ベルト,55…モーター,56…制御部,57…キャリッジ,58…光源,59…リニアイメージセンサ,99…ロール紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を副走査方向に搬送する搬送ローラーと前記副走査方向に並ぶ複数のノズルとを備え、前記搬送と、前記複数のノズルを主走査方向へ移動させる主走査とを繰り返す画像形成装置の前記搬送を、前記搬送ローラーの1回転を複数の角度区間に分割して前記角度区間毎に調整する方法であって、
前記角度区間に対応する前記搬送を実行する度に前記主走査によって罫線を形成することによって複数の前記罫線が配列されたテストパターンを印刷する工程と、
印刷された前記罫線の配列間隔を検出する工程と、
同一の前記角度区間に対応する複数の前記配列間隔の平均値に基づいて当該角度区間に対応する前記搬送を調整する工程と、
を含む搬送調整方法。
【請求項2】
前記テストパターンをロール紙に印刷する、
請求項1に記載の搬送調整方法。
【請求項3】
前記画像形成装置は、前記テストパターンにより前記搬送を調整するためのテストモードと、前記テストモードに基づいて調整した搬送により画像を形成する実用モードとのそれぞれを有し、
前記テストパターンを印刷するための間欠搬送の加速度は、前記実用モードにおける搬送よりも緩慢である、
請求項1または2に記載の搬送調整方法。
【請求項4】
媒体を副走査方向に搬送する搬送ローラーと前記副走査方向に並ぶ複数のノズルとを備え、前記搬送と、前記複数のノズルを主走査方向へ移動させる主走査とを繰り返す画像形成装置の搬送を調整するための搬送調整システムであって、
前記角度区間に対応する前記搬送を実行する度に前記主走査によって罫線を形成することによって複数の前記罫線が配列されたテストパターンを前記画像形成装置に印刷させる手段と、
印刷された前記罫線の配列間隔を検出する手段と、
同一の前記角度区間に対応する複数の前記配列間隔の平均値に基づいて当該角度区間に対応する前記搬送を調整する手段と、
を備える搬送調整システム。
【請求項5】
媒体を副走査方向に搬送する搬送ローラーと前記副走査方向に並ぶ複数のノズルとを備え、前記搬送と、前記複数のノズルを主走査方向へ移動させる主走査とを繰り返す画像形成装置の搬送を調整するための搬送調整プログラムであって、
前記角度区間に対応する前記搬送を実行する度に前記主走査によって罫線を形成することによって複数の前記罫線が配列されたテストパターンを前記画像形成装置によって印刷させる機能と、
印刷された前記罫線の配列間隔を検出する機能と、
同一の前記角度区間に対応する複数の前記配列間隔の平均値に基づいて当該角度区間に対応する前記搬送を調整する機能と、
をコンピュータに実現させる搬送調整プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−76245(P2012−76245A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220805(P2010−220805)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】