説明

携帯型ダクトの洗浄装置

【課題】携帯型ダクトの洗浄作業を自動化することのできる装置を提供する。
【解決手段】押上機構の大滑車を回転させながらダクト外周面に対して前進させ、小滑車をダクトの樹脂シート部に当接して内周面側へ押し込む。大滑車の回転に応じて小滑車は樹脂シートを上方へ押し上げるようになる。このようにしてダクトの樹脂シートを順送りに自動的に押し上げる。
一方、ダクト載置台の中心側と、ダクト外周面に対向する位置には洗浄ノズルが配置されている。これらの洗浄ノズルから洗浄水を噴射することにより、ダクト内周面及び外周面の洗浄が可能である。しかも、前記押上機構により、ダクトの樹脂シートが順送りに押し上げられるので、ダクトの全長に亘って自動洗浄が可能となる。更に、ダクト載置台は、揺動シリンダーによって上下動するので、洗浄ノズルがダクトに対して上下動するようになり、反復洗浄が自動的に行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉塞されたピット内の作業現場や塗装作業現場などの空気環境の悪い作業現場において、主に換気を目的として使用される携帯型のダクトを自動的に洗浄する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、ピット内や上下水道坑内等のように閉塞された空間環境で行う作業現場や、塗装作業などのように粉塵が舞う作業現場、フラックスや臭気が漂う溶接作業現場などにおいては、自然換気が十分に行えないため、空気環境が非常に悪い中での作業を強いられている。そのため、従来にあっては、携帯型のダクトを連接してブロワに接続し、強制的に換気を行うことで、作業員の安全を確保するようにしている。携帯型のダクトは、スパイラル状の芯材に、筒状樹脂シートを被覆して伸縮自在な蛇腹状に構成したものであり、縮めた状態で収納・保管、運搬等を行い、現場において引き伸ばしてブロワーに一端側を連通接続し、他端側をダクトどうしで連接して延長したり、排気口部へ連通せしめている。
このような携帯型のダクトは、塵埃や粉塵などが舞う空気を換気するものであるため、ダクトの内周面及び外周面にこれらの塵埃や粉塵などの汚れが付着堆積するので、毎回使用した直後に洗浄するか又は定期的に洗浄しなければならなかった。
【0003】
従来の携帯型ダクトの洗浄装置としては、特許文献1に記載された技術が公知である。この特許文献1の技術は、上部を開口した洗浄槽内の中心部に洗浄ノズル及びエアノズルを配設すると共に、洗浄槽内の内周面にも適宜間隔で洗浄ノズル及びエアノズルを配設している。洗浄ノズルとエアノズルとの位置関係は、エアノズルを上方に位置させている。またエアノズルは、斜め下方へエアが噴出されるようにその向きが設定されている。更に、この特許文献1の技術では、アーチ状に湾曲したアームの先端側にエア噴射口を設けて洗浄槽の上部開口側に臨ませている。
【0004】
特許文献1の技術において、携帯型エアダクトの洗浄は、洗浄槽内に使用済みの携帯型ダクトを装入し、ダクトの内周面と外周面とに向かって洗浄水を噴射して洗浄すると共に、エアノズルからエアを斜め下方へ噴射してダクトの内外周面に付着した洗浄水を吹き飛ばすようにしている。このような状態から作業員が携帯型エアダクトの上端側を把持して洗浄槽内から引き出し、アーチ状に湾曲したアームに沿って移動させてアームの反対側で折り畳むようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−320939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記特許文献1の技術にあっては、作業員が手作業で携帯型ダクトを洗浄槽内から引き出しながらダクトの洗浄を行う必要があり、水分を含んだ重たいものであるため、かなりの重労働を強いることになっていた。
しかも、汚れがひどい場合は、繰り返して洗浄しなければならないが、作業員がダクトの汚れの落ち具合を見ながら引き出す速度を調整し、同じ箇所の洗浄時間を長くなるようにしたり、ダクトを上下動させて反復洗浄することでひどい汚れを洗い落とすようにしており、作業員の負担は更に増加するものであった。
【0007】
またこのようなダクトは、一箇所の作業現場であっても多数のものが使用されるのが通常であり、一日における作業員の負担は図り知れないものがあった。
更に、作業員が絶えず、洗浄槽の傍に常駐して洗浄作業を行う必要があり、省力化の点でも問題があった。
更にまた、湾曲アームの先端側にエア噴射口を設けてダクトの内周面側から洗浄水を吹き飛ばすようにしているため、ダクトの樹脂シート部がスパイラル状芯材どうしの間で外側へ膨らむ傾向にあり、ダクトの折り畳みがスムーズにならないという欠点があった。
【0008】
本発明は従来の前記課題に鑑みてこれを改良除去したものであって、ダクトの洗浄作業を自動化することのできる携帯型ダクトの洗浄装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
而して、前記課題を解決するために本発明が採用した請求項1の手段は、ケーシング内の中央部分に揺動シリンダーを介して上下動自在に配設されたダクト載置台と、該ダクト載置台に折り畳んだ状態でセットされたダクトの外周面数箇所に対向して配置され、ケーシング側架台に取り付けられたダクトの押上機構と、前記ダクト載置台の中央に立設されたダクト内周面洗浄用のノズルと、ダクト載置台の中心から適宜離れた位置に立設された複数のダクト外周面洗浄用のノズルとより成り、前記ダクトの押上機構は、モーターにより回転する大滑車と該大滑車の外周縁複数個所に回転自在に枢着された小滑車とを有し、ダクトの外周面に対して進退自在に装着されていることを特徴とする携帯型ダクトの洗浄装置である。
【0010】
本発明が採用した請求項2の手段は、ダクト載置台上に載置されたダクトの外周面位置よりも更に外周寄りの位置にあって、下部側が大径部で上部側が小径部とされたステーをケーシング側架台から複数本立設し、前記ステーの小径部に脱着自在に嵌合装着される小孔を穿設したダクト吊下用の環状円板を準備し、前記環状円板にダクトの開口側端部を吊下げ保持する係止部材を取り付け、該係止部材によりダクトの開口側端部を係止することでダクトをケーシング内に吊下げ状態でセットするようにした請求項1に記載の携帯型ダクトの洗浄装置である。
【0011】
本発明が採用した請求項3の手段は、外周面側の洗浄ノズルが上下の位置に配置されており、下部側の洗浄ノズルは斜め下方向を向いており、洗浄水の水勢でダクトに押し下げ方向の力を与えるようになっている前記請求項1又は2に記載の携帯型ダクトの洗浄装置である。
【0012】
本発明が採用した請求項4の手段は、上部に位置する外周面側の洗浄ノズルと、内周面側の洗浄ノズルとは、外周面側の洗浄ノズルの方が僅かに高くなるように配置されており上方向へ押し上げられるダクトの外周面側ノズルによる洗浄水の水勢によって、ダクトの樹脂シート部に対して内側へ押し込む力を与え、樹脂シートの折り畳みが容易になるようになされている請求項1乃至3のいずれか一つに記載の携帯型ダクトの洗浄装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明の携帯型ダクトの洗浄装置は、ケーシング内の中央部分に揺動シリンダーを介してダクト載置台が上下動自在に配置されている。このダクト載置台には、洗浄を必要とする汚れたダクトが折り畳んだ状態でセットされる。載置台へセットされた状態のダクトの外周面に対向する数箇所の位置には、ダクト外周面に対して進退自在に配置されたダクト押上機構が設けられている。
このダクト押上機構は、モーターにより回転する大滑車と、大滑車の外周縁複数個所に回転自在に枢着された小滑車とを有している。押上機構の大滑車を回転させながらダクト外周面に対して前進させると、やがて小滑車がダクトの樹脂シート部に当接して内周面側へ押し込んだ状態となり、樹脂シートはこの小滑車に引っ掛けられた状態となる。この状態で押上機構の前進を停止させると、大滑車の回転に応じて小滑車は樹脂シートを上方へ押し上げるようになる。そして、大滑車の回転が進むと、やがて小滑車は樹脂シートから離れる回転軌道をとり、樹脂シートとの係合を解放する。更に大滑車の回転が進むと、次の小滑車が樹脂シートに当接してこれを内周面側へ押し込んで引っ掛けた状態となり、大滑車の回転に連れて順次樹脂シートを押し上げるようになる。このようにして押上機構は、ダクトの樹脂シートを順送りに自動的に押し上げるものである。
【0014】
一方、ダクト載置台の中心側と、ダクト外周面に対向する位置には洗浄ノズルが配置されている。これらの洗浄ノズルから洗浄水を噴射することにより、ダクト内周面及び外周面の洗浄が可能である。しかも、前記押上機構により、ダクトの樹脂シートが順送りに押し上げられるので、ダクトの全長に亘って自動洗浄が可能となる。
更に、ダクト載置台は、揺動シリンダーによって上下動するので、洗浄ノズルがダクトに対して上下動するようになり、反復洗浄が自動的に行えるものである。
【0015】
請求項2の発明にあっては、ダクト載置台上に載置されたダクトの外周面位置よりも更に外周寄りの位置に、ダクト吊下げ用のステーを立設している。ステーは、下部側が大径部で上部側が小径部とされており、ケーシング側架台から複数本立設されている。
そして、前記ステーの小径部に脱着自在に嵌合装着される小孔を穿設したダクト吊下用の環状円板を準備し、前記環状円板にダクトの開口側端部を吊下げ保持する係止部材を取り付け、該係止部材によりダクトの開口側端部を係止するようにしている。
従って、洗浄作業員は、環状円板の係止部材にダクトの開口側端部を係止させ、この状態で環状円板の小孔をステーの小径部へ貫通挿入することで、ダクトをケーシングの中央部分に吊下げた状態でその下端側を載置台へ載置して洗浄の準備を完了することができる。つまり、洗浄作業員の準備作業は、ダクトをセットするだけでよい。
【0016】
請求項3の発明にあっては、外周面側の洗浄ノズルが上下の位置に配置されており、下部側の洗浄ノズルは斜め下方向を向いており、洗浄水の水勢でダクトに押し下げ方向の力を与えるようになっている。そのため、請求項1に記載された押上機構がダクトの樹脂シートに対してこれを上方へ引き上げようとする力を与え、外周面下部の洗浄ノズルがダクトの樹脂シートに対してこれを下方へ押し下げようとする力を与える。その結果、洗浄ノズルから噴射された洗浄水が樹脂シートに衝突して付着した汚れを除去している洗浄領域の部分において、洗いやすくするために当該領域部分の樹脂シートを上下方向へ引き伸ばすようになり、樹脂シートは伸びた状態で洗浄されるので、付着した汚れも容易に洗い落とすことが可能である。
【0017】
請求項4の発明にあっては、上部に位置する外周面側の洗浄ノズルと、内周面側の洗浄ノズルの上下方向の位置関係を、外周面側の洗浄ノズルの方が僅かに高くなるように配置している。そのため、上方向へ順送りで押し上げられるダクトにおいて、外周面側上部の洗浄ノズルから噴射される洗浄水の水勢によって、ダクトの樹脂シート部に内側へ押し込む力を与えるようになる。これにより、洗浄を終わって上方へ押し上げられた樹脂シートは、スパイラル状の芯材どうしの間で内側へ折り込まれた状態で、芯材どうしの間隔が狭まって折り畳まれることになり、折り畳み動作が極めてスムーズになるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態に係る洗浄装置の天板を取り外した状態を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るダクト吊下げ具を示すものであり、図(A)は環状円板の平面図、図(B)は環状円板にダクトを係止部材で係止した状態を示す概略縦断面正面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るものであり、ダクトを洗浄装置へセットしている途中の状態を示す、概略右側面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るものであり、押上機構でダクトを押し上げている状態を示す概略正面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係るものであり、エアノズルの配置関係を示す平面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係るものであり、押上機構と揺動シリンダの関係を示す正面図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係るものであり、外周面側洗浄ノズルの上下位置関係を示す概略側面図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係るものであり、洗浄ノズルとエアノズルの一関係を示すものであり、図(A)は概略側面図、図(B)は平面図である。
【図9】本発明の別の実施の形態に係るものであり、エアダクト方式による乾燥機構を示すものであり、図(A)は平面図、図(B)は正面図、図(C)は右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の構成を外径が350mmで、ダクトの全長が5mのエアダクトを洗浄する装置の実施例に基づいて図面を参照して説明すると次の通りである。図1の平面図及び図6の概略正面図並びに図7の概略側面図等に示すように、この実施の形態の洗浄装置1は、スパイラル状の芯材に、筒状樹脂シート2を被覆して伸縮自在な蛇腹状に構成した携帯型ダクト3を対象とするものであり、ケーシング4内でダクト3を洗浄し、洗浄水の飛沫などが周囲に飛散しないようになされている。ケーシング4の正面側(図1を参照)には、ダクト3をセット又は取り出すための開閉扉5が取り付けられている。
【0020】
ケーシング4内の中央部分には、揺動シリンダー6を介してダクト載置台7が上下動自在に配置されている。図7に示すように、ケーシング4と揺動シリンダー6とは、固定であり、揺動シリンダー6のピストンロッド6aを延長した部分がケーシング4の洗浄室内へ貫通し、その先端部にダクト載置台7が取り付けられている。図7において、符号8は、ピストンロッド延長部分のガイドブッシュである。
【0021】
前記ダクト載置台7には、洗浄を必要とする使用済みの汚れたダクト3が折り畳んだ状態でセットされる。ダクト載置台3へセットされた状態のダクトの外周面に対向する数箇所の位置には、ダクト外周面に対して進退自在に配置されたダクト押上機構9が設けられている。この実施例では、セットされたダクト3の外周面に対して約90度ずつ離れた四箇所の位置に押上機構9が位置するように配置されている。
ダクト押上機構9は、ケーシング4の正面側と背面側の内壁面に設けられたスライダー10(図1の斜線で表した部材)どうしに架け渡されたテーブル11を左右に合計二つ有し、二つのテーブル11,11はそれぞれエアシリンダー12,12によって前進後退できるようになされている。それぞれのテーブル11,11には、正面側と背面側とに二つの大滑車13,13が回転自在に設置されている。大滑車13,13の周縁には、複数の小滑車14が回転自在に枢着されている。図4には10個の小滑車14を設置した場合が図示されている。各テーブル11,11の大滑車13,13は、回転軸15に固定されている。回転軸15は、図3に示すように、スプロケット16、チェーン17、スプロケット18を介してケーシング外部に固定されたモーター19に接続されている。
【0022】
図1及び図7、図8に示すように、ダクト載置台7の中心部にはダクト内周面用のエア配管20が立設されており、その上部側に内周面用のエアノズル21が取り付けられている。このエアノズル21の下方にあって、エア配管20の外周面にはダクト内周面洗浄用の洗浄ノズル22が取り付けられている。またダクト載置台7へセットされた状態のダクト3の外周面数箇所(図面では四箇所)の位置には、ダクト外周面用のエア配管23が立設されており、その上下部に外周面用のエアノズル24,25が取り付けられている。このエアノズル24,25の近傍にあって、エア配管23の外周面にはダクト外周面洗浄用の洗浄ノズル26,27が取り付けられている。
【0023】
ところで、これらのエア及び洗浄水ノズルの位置関係は、ダクト洗浄動作に関連して特別の機能を有するように配置されている。先ず、外周面洗浄用の上部側洗浄水ノズル26と、内周面洗浄用の洗浄水ノズル22とは、外周面用ノズル26の方が僅かに高い位置となるようになされている。これはダクト3の樹脂シート2を外周面用の洗浄水によって内側へ押し込み、樹脂シートの折り畳みが容易となるようにするためである。この位置関係は、外周面側のエアノズル24と、内周面側のエアノズル21との場合も同じである。
次に、外周面洗浄用の下部側洗浄ノズル27の噴射方向であるが、これは斜め下方を向くようになされている。洗浄水の水勢で樹脂シートに斜め下方への押し下げ力を与え、樹脂シートの洗浄部分が伸張するようにするためである。外周面用のエアノズル25の向きも同様である。
【0024】
図3及び図4に示すように、ダクト載置台7上に載置されたダクト3の外周面位置よりも更に外周寄りの位置には、ダクト吊下げ用のステー28が複数本立設されている。図面では、四本設けた場合を示している。ステー28は、下部側が大径部28aで上部側が小径部29bとされており、ケーシング側架台29に対して固定設置している。
そして、図2に示すように、前記ステー28の小径部28bに脱着自在に嵌合装着される小孔30を穿設したダクト吊下用の環状円板31を準備し、この環状円板31にダクト3の開口側端部を吊下げ保持する係止部材32を取り付けている。
【0025】
次に、このように構成された携帯型ダクト洗浄装置1の動作態様について説明する。先ず、図2の図(B)に示すように、環状円板31の係止部材32でダクト3の開口側端部を係止して洗浄を必要とするダクト3を準備する。この状態で図1に示すケーシング4の開閉扉5を開き、環状円板31の小孔30をステー28の小径部28bへ嵌め込む。手を放せば、ダクト3は自重により環状円板31が大径部28aの上端に当接する位置まで落下し、停止するようになる。このときダクト3の下端側は載置台7の上に載っている。然る後、作業員は開閉扉5を閉じ、図4に示す、操作パネル33のメインスイッチを押せばよい。
【0026】
これにより、押上機構9のモーター19が回転を始め、スプロケット18からチェーン17を経てスプロケット16へ回転駆動力が伝達され、回転軸15を回転させるようになる。そのため、回転軸15に固定された大滑車13が図4の矢符で示す方向へ回転を始める。また押上機構9を前進後退させるエアシリンダー12が突出動作をし、テーブル11,11を前進させ、大滑車13の外周縁に回転自在に枢着した小滑車14をダクト3の樹脂シート2に当接させて内周面側へ若干押し込んだ状態にする。エアシリンダー12による前進動作は、この状態で停止させる。
【0027】
これにより、大滑車13の回転に応じて小滑車14が樹脂シート2を引っ掛けた状態で上方へ押し上げるようになる。そして、大滑車13の回転が進むと、やがて小滑車14は樹脂シート2から離れる回転軌道をとり、樹脂シート2との係合が解放される。更に大滑車3の回転が進むと、次の小滑車14が樹脂シート2に当接してこれを内周面側へ押し込んで引っ掛けた状態となり、大滑車13の回転に連れて順次樹脂シート2を押し上げるようになる。このようにして押上機構9は、ダクト3の樹脂シート2を順送りに自動的に押し上げるようになる。
【0028】
一方、ダクト載置台7の中心側と、ダクト外周面に対向する位置に配置されたエア及び洗浄ノズルからは、それぞれ圧縮エアと洗浄水とが噴射される。エアは別置きのコンプレッサーから供給され、洗浄水は別置きの高圧ポンプユニットから供給される。先ず、内外周面洗浄用の洗浄ノズル22,26,27から噴射される洗浄水によってダクト3の樹脂シート2の内外周面が洗浄される。続いて、エアノズル21及び24,25から噴射される圧縮エアにより、樹脂シート2の内外周面に付着した塵埃などの汚れが洗浄される。
【0029】
この洗浄に際し、ダクト3の樹脂シート2の上部側では押上機構9により上方へ押し上げられる力が作用し、下部側では下部側洗浄ノズル27から斜め下方向へ噴射される洗浄水の水勢によって樹脂シートに斜め下方への押し下げ力が作用する。そのため、洗浄ノズルが配置された洗浄領域にあって、樹脂シート2は、その上部側が上方へ引き上げられ、下部側が下方へ押し下げされるので、洗浄部分が引き伸ばされて撓みを無くし、洗浄を行い易く且つ優れた洗浄効果が得られるようになされている。
【0030】
またこの洗浄動作中にあっては、揺動シリンダー6が例えば100〜150mmのストロークで小刻みに上下動を繰り返している。そのため、各洗浄ノズルがダクト3に対して上下動しながら洗浄水を噴射するようになり、洗浄効果に優れた反復洗浄が自動的に行えるものである。
【0031】
更に、外周面洗浄用の上部側洗浄水ノズル26と、内周面洗浄用の洗浄水ノズル22とは、外周面用ノズル26の方が僅かに高い位置となるようになされているので、ダクト3の樹脂シート2を外周面用の洗浄水によって内側へ押し込んだ状態で洗浄領域を通過するようになされている。つまり、洗浄領域を通過したダクト3の樹脂シート2は、折り畳みが容易となるように、芯材よりも内側へ押し込まれた状態で押し上げられて順次折り畳まれる。この作用については、前述したとおり、外周面側のエアノズル24と、内周面側のエアノズル21との場合も同じである。
【0032】
このようにしてダクト3の樹脂シート2の下端部が押上機構9によって押し上げられれば、ダクト3の全体の1回目の洗浄が終了したことになる。以後は、必要であれば、押上機構9を後退させて、ダクト2を自然落下させてセット状態に戻し、上述した洗浄動作を繰り返して行えばよい。なお、洗浄後の汚れた水及び塵埃などは図7に示すドレンパイプ36より装置外へ排出され、処理される。
【0033】
図9は、エアノズルを取り除いてセットした状態のダクト3の上方位置に、内周面乾燥用のエアダクト34と外周面乾燥用のエアダクト35とを分岐して設けた実施の形態を示すものである。なお、その他の洗浄装置の構成は前記図1〜図8に示す実施の形態の場合と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明はこの実施例に限定されるものではなく、適宜の変更が可能である。例えば、内周面を洗浄するための洗浄ノズル22はスプリンクラーのように全周方向への洗浄水の噴射が可能なものや自動的に回転しながら洗浄水を全周方向へ噴射するタイプのものなどを使用した場合、一個を設置するだけで目的を達成することが可能である。また各洗浄ノズルやエアノズルの噴射角の範囲は、設置数に応じて適宜の変更が可能である。
更に、ノズルはエアノズルと洗浄ノズルとを別々に設けた場合を説明したが、これを共通のものとし、切替バルブにて高圧水ポンプへ接続した場合は洗浄水を噴射できるようにし、コンプレッサーへ接続した場合は乾燥のための圧縮エアーを噴射できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…携帯型ダクトの洗浄装置
2…樹脂シート
3…携帯型ダクト
4…ケーシング
5…開閉扉
6…揺動シリンダー
7…ダクト載置台
9…押上機構
11…テーブル
12…前進後退用のエアシリンダー
13…大滑車
14…小滑車
21…内周面用のエアノズル
22…内周面用の洗浄ノズル
24…外周面側の上部エアノズル
25…外周面側の下部エアノズル
26…外周面側の上部洗浄ノズル
27…外周面側の下部洗浄ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内の中央部分に揺動シリンダーを介して上下動自在に配設されたダクト載置台と、該ダクト載置台に折り畳んだ状態でセットされたダクトの外周面数箇所に対向して配置され、ケーシング側架台に取り付けられたダクトの押上機構と、前記ダクト載置台の中央に立設されたダクト内周面洗浄用のノズルと、ダクト載置台の中心から適宜離れた位置に立設された複数のダクト外周面洗浄用のノズルとより成り、前記ダクトの押上機構は、モーターにより回転する大滑車と該大滑車の外周縁複数個所に回転自在に枢着された小滑車とを有し、ダクトの外周面に対して進退自在に装着されていることを特徴とする携帯型ダクトの洗浄装置。
【請求項2】
ダクト載置台上に載置されたダクトの外周面位置よりも更に外周寄りの位置にあって、下部側が大径部で上部側が小径部とされたステーをケーシング側架台から複数本立設し、前記ステーの小径部に脱着自在に嵌合装着される小孔を穿設したダクト吊下用の環状円板を準備し、前記環状円板にダクトの開口側端部を吊下げ保持する係止部材を取り付け、該係止部材によりダクトの開口側端部を係止することでダクトをケーシング内に吊下げ状態でセットするようにした請求項1に記載の携帯型ダクトの洗浄装置。
【請求項3】
外周面側の洗浄ノズルが上下の位置に配置されており、下部側の洗浄ノズルは斜め下方向を向いており、洗浄水の水勢でダクトに押し下げ方向の力を与えるようになっている前記請求項1又は2に記載の携帯型ダクトの洗浄装置。
【請求項4】
上部に位置する外周面側の洗浄ノズルと、内周面側の洗浄ノズルとは、外周面側の洗浄ノズルの方が僅かに高くなるように配置されており、上方向へ押し上げられるダクトの外周面側ノズルによる洗浄水の水勢によって、ダクトの樹脂シート部に対して内側へ押し込む力を与え、樹脂シートの折り畳みが容易になるようになされている請求項1乃至3のいずれか一つに記載の携帯型ダクトの洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−274253(P2010−274253A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146967(P2009−146967)
【出願日】平成21年5月30日(2009.5.30)
【特許番号】特許第4502069号(P4502069)
【特許公報発行日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(594089016)
【出願人】(301072959)松原熔工株式会社 (1)
【出願人】(509173694)
【Fターム(参考)】