説明

携帯型送信器

【課題】不正な電子認証用素子の取り出し操作が行われた場合、ハウジングを分解することなく確実に知ることのできる携帯型送信器の提供を目的とする。
【解決手段】上下カバー1、2を分離可能に連結したハウジング3内に電子認証用素子4を固定した携帯型送信器であって、
前記電子認証用素子4は、上下いずれかのカバー1、2の内壁面に浮島状で、かつ、揺動破壊操作による破断面がカバー表面にまで進行可能に形成された筒部5により形成される収容空間6内に収容されて固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型送信器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハウジング内に操作対象装置に対する操作権限を認証するための電子認証用素子を格納した携帯型送信器としては、従来例1に記載のものが知られている。この従来例において、ハウジングはロアハウジングとアッパーハウジングとを積層、連結して形成され、IDコード発生回路(電子認証用素子)は、ロアハウジングの周縁部に形成された有底孔に収納、固定される。
【0003】
有底孔は、ロアハウジングの側壁面に開口されており、アッパーハウジングを組み付けた状態でアッパーハウジングから突設された蓋体により閉塞される。
【0004】
蓋体による有底孔の閉塞は、有底孔の開口縁二辺縁が蓋体との境界となって閉塞後においても外部に露出する姿勢でなされており、当該辺縁部に与えられた変形は、閉塞後においても外部から視認できる。この結果、ハウジングを分解した後、不正に電子認証用素子を取り出そうとして上記辺縁部を変形させてしまうと、ハウジングを組み立てた後でも取り出し操作が行われたことが知られてしまうために、間接的に電子認証用素子の取り出し操作を規制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-140513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来例において、有底孔の他の二辺縁からのアクセスによる電子認証用素子の取り出し操作が行われた場合にはハウジングを分解して見ない限り電子認証用素子が取り外されたことを知ることができないという問題がある。とりわけ、有底孔は、ロアハウジングの周縁部に形成される肉質部をさらに膨隆させて形成されるために、周縁の強度が高く、破壊ターゲットに設定された上記二辺縁以外の箇所への破壊操作によって他の箇所がダメージを受けることがない。
【0007】
このため、当該ターゲット箇所に破壊操作力を集中させることによって外部への痕跡を残すことなく電子認証用素子を取り出すことが可能になるという問題がある。
【0008】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、不正な電子認証用素子の取り出し操作が行われた場合、ハウジングを分解することなく確実に知ることのできる携帯型送信器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
携帯型送信器は、ハウジング3内にトランスポンダ等の電子認証用素子4を収容して形成される。電子認証用素子4は、携帯型送信器が例えば車両の所定位置に装着されると、車両側に設置されたリーダからの要求に応じて素子固有のID信号を出力し、イグニッションの始動権限等、自動車の操作権限を判定するために使用される。
【0010】
ハウジング3は、製造工順上の都合、あるいは、バッテリ駆動部品への給電バッテリの交換等に対する配慮のために上下カバー1、2を分離可能に連結して形成され、上記電子認証用素子4は、上下いずれか一方のカバーに形成される筒部5により形成される収容空間6に挿入され、接着剤等により固定される。
【0011】
上記筒部5は、基端部がカバー周縁に形成されるリブ等に連結されることのない浮島状にカバー裏面に突設されており、電子認証用素子4を不正に取り外すために筒部5に加えられた操作力は、カバー裏面に伝えられる。カバーの板厚等は電子認証用素子4の取り外し操作時に筒部5が破壊された際、すなわち、筒部5に大きな揺動操作力が負荷された場合の破壊モードが、カバー表面に至るまでの破断面の進行を伴うように設定されており、不正に電子認証用素子4が取り外された際の破壊痕が表面に現れる。
【0012】
この結果、電子認証用素子4が取り外されたか否かは外観の破壊痕を確認するだけで判定することが可能になり、その上、筒部5の破壊は外観への破壊痕発生を伴うことを示すことによって、取り外し操作に対する牽制作用も発揮され、不正取り外し操作による電子認証用素子4の悪用を防止できる。
【0013】
筒部5は上述した従来例1に示されるように、開放端をハウジング3の側縁に向けて配置することも可能であるが、カバーが底壁となるように、カバー裏面に矩形枠を立設して形成すると、金型の構造が簡単になる。この場合、筒部5により形成される収容空間6の最大面積面以外の面がカバーによる底壁となる姿勢、すなわち、収容空間6の最大面積面が矩形枠に位置する姿勢で筒部5を配置すると、筒部5内へのアクセスによる筒部5の破断が発生しやすくなり、電子認証用素子4の取り外し操作がより困難になる。
【0014】
さらに、筒部5のカバーとの境界(基端)に薄肉部7を設けて筒部5へのアクセスによる破断を促進することもできる。薄肉部7の形成は、カバーの表裏面いずれか、あるいは双方に凹溝を設けて行われる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電子認証用素子が不正に取り外された場合、痕跡がハウジング外観に残るために、電子認証用素子が抜き取られたことを容易に知ることができ、電子認証素子の悪用を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を示す図で、(a)は正面図、(b)は裏面図、(c)は(a)の1C-1C線断面図である。
【図2】上カバーを示す図で、(a)は裏面図、(b)は(a)の2B-2B線断面図、(c)は(a)の2C-2C線断面図、(d)は(a)の2D線断面図である。
【図3】本発明の作用を示す図で、(a)は断面図、(b)はハウジングを組み付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に自動車の始動制御装置に対するID送信器として構成された本発明の実施の形態を示す。この実施例に係る携帯型送信器は、上記ID送信機としての機能に加え、車両のドア等に配置されたロック装置に対する施解錠操作機能を有しており、キーブレード8の一端にハウジング3を固定して形成される。
【0018】
キーブレード8には、ドアロック装置、トランクリッドロック装置、あるいはイグニッション用ロック装置等に配置されるキーシリンダに適合した解錠コード(図示せず)が形成される。
【0019】
ハウジング3は中空部内に施解錠操作ユニット9と、トランスポンダ(電子認証用素子4)とを収容して形成される。施解錠操作ユニット9には、操作ボタン9aへの操作によりユニット毎に設定された固有のID情報を車両側に設置された施解錠コントローラに出力する送信回路、およびこの送信回路を駆動するためのバッテリが組み込まれており、施解錠コントローラにおけるID情報の認証が成立すると、施解錠コントローラは適宜のアクチュエータを施解錠駆動する。
【0020】
図1(a)に示すように、この実施の形態において、施解錠操作ユニット9には、ドアロック解錠操作ボタン9a1、ドアロック施錠操作ボタン9a2、トランクリッド解錠操作ボタン9a3が配置されているが、必要ならば、例えば、非常時に警笛を吹鳴させるためのパニック操作ボタン等、適宜の操作ボタン9aを配置することができる。また、施解錠操作ユニット9には、施解錠コントローラから出力されるコード出力要求信号に応答して上記ID情報信号を送信するパッシブ送信回路を組み込むことができる。
【0021】
上記ハウジング3は、合成樹脂材を射出成形して形成される上下カバー1、2を連結して形成される。上下カバー1、2は、連結状態において施解錠操作ユニット9を収容するための中空部を形成するために、周縁を立ち上げたトレイ形状に形成され、下カバー2との接合境界を形成する上カバー1の立ち上がり縁1aの内周縁には、下カバー2との連結時に下カバー2に嵌合する嵌合突条1bが立設される。
【0022】
また、上カバー1には上記キーブレード8の先端部がアウトサート成形され、さらに、上記施解錠操作ユニット9の操作ボタン9aをハウジング3外部に露出させるためのボタン露出開口1cが開設される。
【0023】
これら上下カバー1、2は、ハウジング3に形成されるリング装着開口3aの上縁部に形成される一対のフック片10を相互に噛合させるとともに、上カバー1の対向二側縁に形成される係止突条11を下カバー2の側縁部に形成される係止凹溝12に弾発嵌合させ、さらに、下端縁部を止着して連結される(図1(c)、図2(d)参照)。上カバー1には、止着用ビス13を止着するための雌ねじ1dが形成される。
【0024】
さらに、上カバー1には裏面から下カバー2側に向けて矩形枠形状の筒部5が突設され、トランスポンダ4の収容空間6が形成される。収容空間6はほぼ直方体形状のトランスポンダ4に対応して一側面が開放された直方体形状を有しており、トランスポンダ4の最長辺と最短辺とにより形成される面がカバー裏面に沿う姿勢で収容されるように配置される。
【0025】
トランスポンダ4は、上記収容空間6内に収容された後、接着剤6aを使用して固定され、引き抜き操作等を困難にするために、収容空間6は、トランスポンダ4が完全に埋没して外部に突出しない十分な深さに形成される。
【0026】
図2に示すように、筒部5は周縁の立ち上がり縁1a、および嵌合突条1bからの膨隆部として形成されることなく、上カバー1の裏面から浮島状に突設され、筒部5に加えた負荷の立ち上がり縁1a等への伝達が規制される。
【0027】
また、筒部5の上カバー1裏面には筒部5を囲むように凹溝が設けられて薄肉部7が形成されており、筒部5に大きな負荷が加えられた際の破断ガイドとして機能する。
【0028】
したがってこの実施の形態において、ドアロック装置を解錠した車両に乗り込んだ後、イグニッション用キーシリンダにキーブレード8を挿入し、あるいはキーシリンダを回転操作すると、イグニッションに装着されたリーダから出力されるID出力要求信号に応答してトランスポンダ4からID信号が送信され、リーダにおいて認証されると車両が始動される。
【0029】
一方、この携帯型送信器のハウジング3を分解して上カバー1からトランスポンダ4を取り出すには、図3(a)に示すように、筒部5全体を揺動(図3(a)におけるα方向)させて破損させたり、あるいは筒部5の内壁に沿って先端鋭利な工具14を差し込んでこじる(図3(a)におけるβ方向)ようにしてトランスポンダ4のみを引き出す必要がある。このとき、筒部5全体を揺動させて筒部5ごとトランスポンダ4を取り出す場合はもちろん、工具14による引き出し操作においても、図3(a)に示すように、筒部5への揺動操作力の負荷が発生し、この揺動操作力は、立ち上がり縁1a、および嵌合突条1bにおいて負担されることなく上カバー1裏面との境界部に作用し、大きな操作力が負荷されると破断する。
【0030】
筒部5の基端が全長にわたって薄肉とされているために、筒部5の破断面は、容易に上カバー1表面に至るために、図3(b)に示すように、ハウジング3を組み立てても穴が明いたり、あるいは、破断に至らなくても当該領域の樹脂が白化するために、トランスポンダ4に対する抜き取り操作が行われたことを確実に識別することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 上カバー
2 下カバー
3 ハウジング
4 電子認証用素子
5 筒部
6 収容空間
7 薄肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下カバーを分離可能に連結したハウジング内に電子認証用素子を固定した携帯型送信器であって、
前記電子認証用素子は、上下いずれかのカバーの内壁面に浮島状で、かつ、揺動破壊操作による破断面がカバー表面にまで進行可能に形成された筒部により形成される収容空間内に収容されて固定される携帯型送信器。
【請求項2】
前記筒部は、収容空間の最大面積側面以外の面をカバーによる底壁面としてカバー裏面上に立設される矩形枠として形成される請求項1記載の携帯型送信器。
【請求項3】
前記カバー内壁面には、筒部の基端を囲んで薄肉部が形成される請求項1または2記載の携帯型送信器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−26837(P2011−26837A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173460(P2009−173460)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000170598)株式会社アルファ (433)
【Fターム(参考)】