説明

携帯機器、操作検出方法および操作検出プログラム

【課題】 ユーザがタッチパネルに触れながらタッチパネルを押下する操作を検出すること。
【解決手段】 携帯電話機は、タッチパネルと、加速度を検出する加速度センサと、タッチパネルにより指示されていることが検出されている間に、加速度センサにより検出される加速度に基づいて、所定の操作を検出する操作検出部53と、を備える。このため、ユーザがタッチパネルに触れながらタッチパネルを押下する操作を検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は携帯機器、操作検出方法および操作検出プログラムに関し、特にタッチパネル5を備えた携帯機器、その携帯機器で実行される操作検出方法および操作検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置(以下「LCD」という))と、その上に重畳されたタッチパネル5とを備えた携帯電話機が登場している。液晶表示装置に複数のキーの画像を表示し、複数のキーのいずれかが指示されたかをタッチパネル5で検出し、数字または文字等の入力を受け付ける(例えば、特許文献1)。この携帯電話機において、英文字、かな文字、カタカナ文字を入力する方法は、1つのキーに複数の文字を割り当てておき、同じキーが連続して押下された回数によって、複数の文字の1つの入力を受け付ける入力方法が採用されている。
【0003】
しかしながら、タッチパネル5は指示された位置を検出することはできるが、同じ位置を複数回指示する操作をタッチパネル5で検出するためには、指をタッチパネル5に触れた後に離す2つの操作を押下する回数だけしなければならない。このため、操作が困難になるといった問題がある。
【特許文献1】特開2005−92441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は上述した問題点を解決するためになされたもので、この発明の目的の一つは、ユーザがタッチパネルに触れながらタッチパネルを押下する操作を検出することが可能な携帯機器を提供することである。
【0005】
この発明の他の目的は、ユーザがタッチパネルに触れながらタッチパネルを押下する操作を検出することが可能な操作検出方法を提供することである。
【0006】
この発明のさらに他の目的は、ユーザがタッチパネルに触れながらタッチパネルを押下する操作を検出することが可能な操作検出プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するためにこの発明のある局面によれば、携帯機器は、タッチパネルと、加速度を検出する加速度センサと、タッチパネルにより指示されていることが検出されている間に加速度センサにより検出される加速度に基づいて、所定の操作を検出する検出手段と、を備える。
【0008】
この局面に従えば、タッチパネルにより指示されていることが検出されている間に検出される加速度に基づいて、所定の操作が検出される。このため、ユーザがタッチパネルに触れながらタッチパネルを押下する操作を検出することが可能な携帯機器を提供することができる。
【0009】
好ましくは、検出手段は、加速度の微分値の極大値と極小値との差が所定のしきい値以上のときに所定の操作を検出する。
【0010】
この局面に従えば、ユーザがタッチパネルに触れながらタッチパネルを押下する操作により発生する振動の1周期で、1回の操作を検出することができる。
【0011】
好ましくは、検出手段は、加速度センサの出力の微分値を所定の時間で移動平均する移動平均手段を含み、移動平均された値で連続する極大値と極小値との差を算出する。
【0012】
この局面に従えば、検出された加速度に含まれるノイズを低減することができる。特に、ユーザがタッチパネルに触れながらタッチパネルを押下する操作により発生する振動とは異なる信号を除去することができる。
【0013】
好ましくは、タッチパネルにより検出される位置情報と、検出手段により所定の操作が検出される回数とに基づき、複数の信号のうちから1つを決定する信号決定手段と、をさらに備える。
【0014】
この局面に従えば、ユーザは同じ位置を押下する操作をするだけで、複数の信号のうちから1つを選択することができる。
【0015】
好ましくは、加速度センサは、タッチパネルのパネル面に垂直な方向の加速度を検出する。
【0016】
この局面に従えば、タッチパネルに触れながらタッチパネルを押下する操作により発生する振動を検出することができる。
【0017】
この発明の他の局面によれば、操作検出方法は、タッチパネルを備えた携帯機器で実行される操作検出方法であって、加速度を検出するステップと、タッチパネルにより指示されていることが検出されている間に検出される加速度に基づいて、所定の操作を検出するステップと、を含む。
【0018】
この局面に従えば、ユーザがタッチパネルに触れながらタッチパネルを押下する操作を検出することが可能な操作検出方法を提供することができる。
【0019】
この発明のさらに他の局面によれば、操作検出プログラムは、タッチパネルを備えた携帯機器で実行される操作検出プログラムであって、加速度を検出するステップと、タッチパネルにより指示されていることが検出されている間に検出される加速度に基づいて、所定の操作を検出するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0020】
この局面に従えば、ユーザがタッチパネルに触れながらタッチパネルを押下する操作を検出することが可能な操作検出プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下の説明では同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態の一つにおける携帯電話機の外観を示す斜視図である。図1を参照して、携帯機器としての携帯電話機1は、上面にLCD3と、LCD3の上に重畳して配置されたタッチパネル5と、レシーバを構成するスピーカ7と、マイクロフォン9と、を含む。なお、ここでは携帯電話機1がLCD3を備える例を示すが、LCD3に代えて、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイを用いてもよい。
【0023】
タッチパネル5は、圧力の変化を感知する感圧式であってもよいし、静電気による電気信号を感知する静電式であってもよい。静電式のタッチパネル5を用いる場合には、タッチパネル5をLCD3の裏側に配置することができる。ここでは静電式を用いている。タッチパネル5は、ユーザがタッチパネル5に指で触れると、ユーザが指で触れた位置を指示位置として検出する。タッチパネル5は、ユーザが指で触れている間は、検出される指示位置を制御部11に出力する。ユーザが同じ位置を指示している場合には、同じ指示位置を制御部11に継続して出力する。なお、ユーザがタッチパネル5を指で触れている間、所定時間間隔で指示位置を制御部11に出力するようにしてもよい。この場合であっても、制御部11は、ユーザが継続してタッチパネル5を指で触れていることを検出することができる。
【0024】
図2は、本実施の形態における携帯電話機の機能の一例を示す機能ブロック図である。図2を参照して、携帯電話機1は、携帯電話機1の全体を制御するための制御部11と、アンテナ13Aと接続された無線回路13と、音声データを処理するためのコーデック部21と、それぞれがコーデック部21に接続されたマイクロフォン9およびスピーカ7と、LCD3と、タッチパネル5と、制御部11の作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)15と、制御部11で実行するためのプログラム等を記憶するためのEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)17と、加速度センサ19と、振動部23と、カードインターフェース(I/F)25と、を含む。
【0025】
無線回路13は、通信網に接続された基地局装置と無線通信する。基地局装置が送信する無線信号は、アンテナ13Aにより受信される。無線回路13は、アンテナ13Aにより受信された無線信号が入力され、無線信号を復調した音声信号をコーデック部21に出力する。また、無線回路13は、コーデック部21から音声信号が入力され、音声信号を変調した無線信号をアンテナ13Aに出力する。アンテナ13Aから送信される無線信号は、基地局装置で受信される。
【0026】
コーデック部21は、無線回路13から入力される音声信号を復号し、復号したデジタルの音声信号をアナログに変換し、増幅し、スピーカ7に出力する。また、コーデック部21は、マイクロフォン9からアナログの音声信号が入力され、音声信号をデジタルに変換し、符号化し、そして符号化した音声信号を無線回路13に出力する。
【0027】
カードI/F25には、着脱可能なフラッシュメモリ27が装着される。制御部11は、カードI/F25を介して、フラッシュメモリ27にアクセスが可能である。なお、ここでは制御部11が実行するためのプログラムをEEPROM17に記憶しておく例を説明するが、プログラムをフラッシュメモリ27に記憶しておき、フラッシュメモリ27からプログラムを読み出して、制御部11が実行するようにしてもよい。プログラムを記憶する記録媒体としては、フラッシュメモリ27に限られず、フレキシブルディスク、カセットテープ、光ディスク(CD−ROM(Compact Disc−ROM)/MO(Magnetic Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc))、ICカード、光カード、マスクROM、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electronically EPROM)などの半導体メモリ等でもよい。
【0028】
また、携帯電話機1をインターネットに無線回路13を介して接続し、インターネットに接続されたコンピュータからプログラムをダウンロードして、制御部11が実行するようにしてもよい。ここでいうプログラムは、制御部11が直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む。
【0029】
加速度センサ19は、加速を検出し、検出した加速度を制御部11に出力する。加速度センサ19が検出する加速度の方向は、携帯電話機1をユーザが手に持って、タッチパネル5を押下する操作をする場合に、ユーザの手の中で携帯電話機1が移動する方向である。好ましくは、加速度センサ19が検出する加速度は、タッチパネル5の面に垂直な方向である。なお、タッチパネル5の面に垂直な方向は、製造誤差により垂直とはならない範囲内の方向を含む。
【0030】
図3は、制御部の機能の概要を示す機能ブロック図である。図3を参照して、制御部11は、タッチパネル5から指示位置を受け付ける指示位置受付部51と、所定の操作を検出する操作検出部53と、予め定められた複数の信号のうちから1つの信号を決定する信号決定部55と、LCD5の表示を制御する表示制御部57と、を含む。
【0031】
表示制御部57は、LCD7を制御して、LCD7に画像を表示する。ここでは説明のために、LCD7に複数のキーの画像を表示する例を説明する。表示制御部57は、LCD7に表示した画像に含まれる複数のキーそれぞれの名称と領域との組からなるキー情報を信号決定部55に出力する。
【0032】
指示位置受付部51は、タッチパネル5が出力する指示位置を受け付け、受け付けた指示位置を操作検出部53および信号決定部55に出力する。指示位置受付部51は、ユーザがタッチパネル5の表面を継続して触れる場合、ユーザがタッチパネル5に触れている間、指示位置を操作検出部53および信号決定部55に継続して出力する。
【0033】
操作検出部53は、ユーザが携帯電話機1を手に持った状態で、タッチパネル5に指で触れながら指をタッチパネル5に押下する操作を検出する。ユーザがタッチパネル5に指で触れながら指をタッチパネル5に押下する場合、携帯電話機1のタッチパネル5が装着された上面が押されるので、携帯電話機1はユーザの手によって空間を移動する。この移動は、タッチパネル5の面に略垂直な方向の往復運動となる。または、手首を中心にした円周軌道上を往復する往復運動となる。これらの往復運動の移動距離はきわめて短いため、携帯電話機1の移動はタッチパネル5に略垂直な方向となる。操作検出部53は、指示位置受付部51から指示位置が入力されている間に加速度センサ19から入力される加速度に基づいて、携帯電話機1の往復運動を検出することにより、タッチパネル5に指で触れながら指をタッチパネル5に押下する操作を検出する。
【0034】
このため、操作検出部53は、加速度センサ19が出力する加速度を受け付ける加速度検出部61と、加速度を微分する1次微分算出部63と、微分された加速度の移動平均を算出する移動平均算出部65と、移動平均値を微分する2次微分算出部67と、移動平均値の極大値を抽出する極大値抽出部69と、移動平均値の極小値を抽出する極小値抽出部71と、極大値と極小値との差分を算出する差分算出部73と、を含む。
【0035】
加速度検出部61は、指示位置受付部51から指示位置が入力され、加速度センサ19から加速度が入力される。加速度検出部61は、指示位置受付部51から指示位置が入力されている間、加速度センサ19が出力する加速度を所定時間間隔でサンプリングし、サンプリングして取得した加速度を1次微分算出部63に出力する。ここでは、加速度検出部61が出力する加速度をA(n)で示す。変数nは、正の整数であり、サンプリング点を示す。加速度検出部61は、指示位置受付部51から指示位置が入力されなくなると、変数nを「1」にリセットし、次に指示位置受付部51から指示位置が入力されると、サンプリングを開始し、加速度A(n)を出力する。図4に、加速度A(n)の一例を示す。
【0036】
1次微分算出部63は、加速度検出部61から入力される加速度を微分する。ここでは、加速度を1回微分した値を1次微分値B(n)という。1次微分値B(n)は、加速度A(n)の変化を示し、携帯電話機1の往復運動を検出するのに適している。具体的には、1次微分値B(n)を次式(1)を用いて算出する。
B(n)=(A(n+1)−A(n−1))/2 … (1)
1次微分算出部63は、算出した1次微分値B(n)を移動平均算出部65をに出力する。図5に、1次微分値B(n)の一例を示す。図5に示す1次微分値B(n)は、図4に示した加速度A(n)に基づき算出された1次微分値である。
【0037】
移動平均算出部65は、所定時間における1次微分値B(n)の移動平均値を算出する。移動平均値を算出するのは、ノイズを除去するためである。特に、指でタッチパネル5を押下する操作に基づく振動よりも周期の短い振動を除くことができる。具体的には、連続する6つの1次微分値の平均である移動平均値S(n)を次式(2)を用いて算出する。
S(n)=(B(n−5)+B(n−4)+B(n−3)+B(n−2)+B(n−1)+B(n))/6 … (2)
移動平均算出部65は、算出した移動平均値S(n)を2次微分算出部67、極大値抽出部69および極小値抽出部71に出力する。図6に、移動平均値S(n)の一例を示す。図6に示す移動平均値S(n)は、図5に示した1次微分地B(n)から算出された移動平均値である。
【0038】
なお、ここでは、移動平均値を連続する6つの1次微分値の平均としたが、移動平均の対象となる1次微分値の数は、タッチパネル5に指で触れながら指をタッチパネル5に押下する操作による加速度の変化を検出するために適した期間と、サンプリング周期によって定まる。タッチパネル5に指で触れながら指をタッチパネル5に押下する操作による加速度の変化を検出するために適した期間は、実験により求めることができる。
【0039】
2次微分算出部67は、移動平均値を微分する。ここでは、移動平均値を1回微分した値を2次微分値C(n)という。具体的には、2次微分値C(n)を次式(3)を用いて算出する。
C(n)=(S(n+1)−S(n−1))/2 … (3)
2次微分算出部67は、算出した2次微分値C(n)を極大値抽出部69および極小値抽出部71に出力する。図7に、2次微分値B(n)の一例を示す。図7に示す2次微分値C(n)は、図6に示した移動平均値S(n)に基づき算出された2次微分値である。2次微分値C(n)を算出するのは、移動平均値S(n)の極値を求めるためである。2次微分値C(n)が「0」に最も近い値となるサンプル点が移動平均値S(n)の極値を示す。2次微分算出部67は、2次微分値C(n)が「0」に最も近い値となるサンプル点を特定するための変数nを極大値抽出部69および極小値抽出部71に出力する。ここでは、2次微分値C(n)が「0」に最も近い値となるサンプル点をNとする。
【0040】
極大値抽出部69は、移動平均算出部65から移動平均値S(n)が入力され、2次微分算出部67からサンプル点Nが入力される。極大値抽出部69は、移動平均値S(n)のうちから最大の極値を抽出する。具体的には、2次微分算出部67から入力されるサンプル点Nにおける移動平均値S(N)が1つ前の移動平均値S(N−1)より大きければ極大値と判定する。極大値抽出部69は、サンプル点Nにおける移動平均値S(N)を極大値と判定する場合には移動平均値S(N)を極大値として差分算出部73に出力する。
【0041】
極小値抽出部71は、移動平均算出部65から移動平均値S(n)が入力され、2次微分算出部67からサンプル点Nが入力される。極小値抽出部71は、移動平均値S(n)のうちから極小値を抽出する。具体的には、2次微分算出部67から入力されるサンプル点Nにおける移動平均値S(N)が1つ前の移動平均値S(N−1)より小さければ極小値と判定する。極小値抽出部71は、サンプル点Nにおける移動平均値S(N)を極小値と判定する場合には移動平均値S(N)を極小値として差分算出部73に出力する。
【0042】
差分算出部73は、極大値抽出部69から極大値が入力され、極小値抽出部から極小値が入力される。差分算出部73は、極大値と極小値との差分を算出し、算出された差分をしきい値と比較する。差分算出部73は、算出された差分がしきい値以上であれば、指をタッチパネル5に触れながら押下する操作(以下「押下操作」という)を検出し、押下操作が入力されたことを示す信号を信号決定部55に出力する。しきい値は、予め定められた値であり、実験によって求めることができる。例えば、ユーザが携帯電話機1を手に持ってタッチパネル5の表面を指で押す操作をする場合に、携帯電話機1がユーザの手によって空間を移動し、タッチパネル5の面に略垂直な方向に往復運動するが、そのときに発生する加速度の1次微分値の絶対値の最小の値とすればよい。
【0043】
信号決定部55は、表示制御部57からキー情報が入力され、指示位置受付部51から指示位置が入力され、差分算出部73から押下操作が入力されたことを示す信号が入力される。信号決定部55は、表示制御部57から入力されるキー情報と、指示位置受付部51から入力される指示位置とに基づいて、LCD7に表示されている画像に含まれる複数のキーのいずれがユーザにより指示されたかを検出する。以下、ユーザにより指示されたキーに3つの英文字「A」、「B」および「C」が割り当てられている場合を例に説明する。
【0044】
信号決定部55は、指示位置受付部51から3つの英文字が割り当てられたキーの位置を示す指示位置が継続して入力されている間に、差分算出部73から押下操作が入力されたことを示す信号が入力される回数をカウントする。LCD3に表示される画像に含まれる複数のキーそれぞれに割り当てられた英文字と、指示回数とを関連付けたキーテーブルが予めEEPROM17に記憶されている。信号決定部55は、キーテーブルを参照して、指示位置で特定されるキーと、カウントされた回数とにより定まる文字を決定する。例えば、「ABC」が割り当てられたキーの位置を示す指示位置が継続して入力されている間に、押下操作が入力されたことを示す信号が1回入力されると文字「A」、「B」および「C」のうちから文字「A」を選択し、2回入力されると文字「B」を選択し、3回入力されると文字「C」を選択する。信号決定部55は、文字を選択する毎に、選択された文字を表示する文字に決定し、例えば、RAM15の所定の領域に格納するとともに、LCD3の所定の領域に表示する。
【0045】
図8は、操作検出処理の流れの一例を示すフローチャートである。操作検出処理は、携帯電話機1が備える制御部11が操作検出プログラムを実行することにより、制御部11により実行される処理である。図8を参照して、制御部11は、ユーザによりタッチパネル5に触れる指示を検出するまで待機状態となり(ステップS01でNO)、ユーザによるタッチパネル5に触れる指示を検出すると(ステップS01でYES)、処理をステップS02に進める。制御部11は、タッチパネル5から指示位置が入力されると、ユーザによるタッチパネル5に触れる指示を検出する。換言すれば、操作検出処理は、ユーザがタッチパネル5に触れることを条件に実行される処理である。
【0046】
ステップS02においては、変数nに「1」を設定するとともに、他の変数を初期化する。ここで初期化される変数は、停止カウンタC1,操作カウンタC2、極大値MAX、極小値MIN、加速度の配列A(n)、1次微分値の配列B(n)、移動平均値の配列S(n)、2次微分値の配列C(n)であり、それぞれ「0」が設定される。
【0047】
ステップS03においては、加速度センサ19が出力する加速度を取得し、取得された加速度を加速度の配列A(n)に設定する。
【0048】
ステップS04においては、ステップS01と同様に、ユーザによるタッチパネル5に触れる指示が検出されているか否かを判断する。ユーザによる指示が検出されていれば、処理をステップS05に進めるが、そうでなければ処理を終了する。すなわち、操作検出処理は、ユーザが指でタッチパネル5に触れてから、タッチパネル5から指が離れるまでに指でタッチパネル5を押下する操作を検出する処理である。
【0049】
ステップS05においては、変数nが「2」より大きいか否かを判断する。変数nが「2」より大きければ処理をステップS06に進めるが、そうでなければ処理をステップS22に進める。変数nが「2」より大きい場合にステップS06以降の処理を実行するのは、ステップS06において1次微分値を算出するためである。ステップS22においては、変数nをそれに「1」を加算した値に設定し、処理をステップS03に戻す。
【0050】
ステップS06においては、1次微分値を算出し、配列B(n)に算出された1次微分値を設定する。具体的には、加速度A(n−1)と加速度A(n+1)とから上述した式(1)を用いて1次微分値を算出する。
【0051】
ステップS07においては、変数nが「7」より大きいか否かを判断する。変数nが「7」より大きければ処理をステップS08に進めるが、そうでなければ処理をステップS22に進める。変数nが「7」より大きい場合にステップS08以降の処理を実行するのは、ステップS08において移動平均値を算出するためである。ステップS22においては、変数nをそれに「1」を加算した値に設定し、処理をステップS03に戻す。
【0052】
ステップS08においては、1次微分値の移動平均値を算出し、配列S(n)に算出された移動平均値を設定する。具体的には、1次微分値B(n−5)とB(n−4)と、B(n−3)と、B(n−2)と、B(n−1)と、B(n)とから上述した式(2)を用いて移動平均値を算出する。
【0053】
次のステップS09においては、算出された移動平均値S(n)の絶対値がしきい値T1以下か否かを判断する。移動平均値S(n)の絶対値がしきい値T1以下ならば処理をステップS10に進め、そうでなければ処理をステップS10に進める。ステップS10においては、停止カウンタC1をそれに「1」を加算した値に設定し、処理をステップS11に進める。ステップS11においては、停止カウンタC1がしきい値Pより大きいか否かを判断する。停止カウンタC1がしきい値Pより大きければ処理を終了し、そうでなければ処理をステップS12に進める。停止カウンタC1は、移動平均値S(n)の絶対値が連続してしきい値T1以下となる回数をカウントするためのカウンタでがある。停止カウンタC1がしきい値Pより大きくなると処理を終了するため、移動平均値S(n)の絶対値が連続してP回以上しきい値T1以下となる場合に処理を終了する。移動平均値S(n)の絶対値がしきい値T1以下となる場合は、加速度が変化しない状態であり、その状態が所定時間継続する場合には携帯電話機1に操作が入力されていないか、手から離れて机の上などに携帯電話機が置かれた状態であり、携帯電話機1を操作しない状態であると判断できる。
【0054】
ステップS12においては、変数nが「9」より大きいか否かを判断する。変数nが「9」より大きければ処理をステップS13に進めるが、そうでなければ処理をステップS22に進める。変数nが「9」より大きい場合にステップS13以降の処理を実行するのは、ステップS13において移動平均値に基づいて2次微分値を算出するためである。ステップS22においては、変数nをそれに「1」を加算した値に設定し、処理をステップS03に戻す。
【0055】
ステップS13においては、移動平均値S(n)から微分値を算出し、配列C(n)に算出された微分値を設定する。具体的には、移動平均値S(n―1)と移動平均値S(n+1)とから上述した式(3)を用いて微分値を算出する。ここでは、移動平均値S(n)を微分した微分値を2次微分値C(n)で示す。
【0056】
ステップS14においては、2次微分値C(n)が「0」か否かを判断する。なお、サンプリング点によってC(n)が「0」にならない場合があるので、その場合には、C(n)が「0」か否かの判断は、C(n)が「0」に最も近いか否かを判断するようにすればよい。2次微分値C(n)が「0」ならば処理をステップS15に進めるが、そうでなければ処理をステップS22に進める。2次微分値C(n)が「0」になる場合において、移動平均値S(n)が極大または極小になる。
【0057】
ステップS15においては、移動平均値S(n)とS(n−1)とを比較する。移動平均値S(n)が移動平均値S(n−1)より大きければ、処理をステップS16に進め、そうでなければ処理をステップS17に進める。ステップS16においては、極大値を設定するための変数である極大値MAXに移動平均値S(n)を設定し、処理をステップS18に進める。一方、ステップS17においては、極小値を設定するための変数である極小値MINに移動平均値S(n)を設定し、処理をステップS18に進める。
【0058】
ステップS18においては、極大値MAXと極小値MINとの差分を求め、その差分がしきい値T2よりも大きいか否かを判断する。差分がしきい値T2よりも大きければ処理をステップS19に進めるが、そうでなければ処理をステップS22に進める。ステップS19においては、操作カウンタC2をそれに「1」を加算した値に設定する。極大値と極小値との差分がしきい値T2以上のときに、指でタッチパネル5を押下する操作が1回されたと検出するので、指でタッチパネル5を押下する操作に基づく振動とは関係のない振動を除くことができる。そして、ステップS20において、変数であるMAX、MIN、C1それぞれに「0」を設定し、処理をステップS21に進める。
【0059】
ステップS21においては、タッチパネル5から入力される指示位置と、操作カウンタC2に設定されている値に基づき文字を決定し、処理をステップS22に進める。ステップS22においては、変数nをそれに「1」を加算した値に設定し、処理をステップS03に戻す。具体的には、LCD3に表示されている画像に含まれる複数のキーそれぞれの名称と領域との組からなるキー情報とタッチパネル5から入力される指示位置とから、ユーザにより指示されたキーを特定し、特定されたキーとキーテーブルとから特定されたキーに対して予め割り当てられている複数の文字を決定する。そして、複数の文字のうちから操作回数に対応する文字を決定する。操作回数は、操作カウンタC2に設定されている値である。
【0060】
ここで、図4に示した加速度を参照して、サンプル点が1〜8までの第1の振動と、サンプル点が8〜21までの第2の振動と、サンプル点が22〜33までの第3の振動とが表されている。第1の振動では、サンプル点が4で極大値となり、サンプル点が7で極小値となる。また、第2の振動では、サンプル点が14で極大値となり、サンプル点が20で極小値となる。また、第3の振動では、サンプル点が27で極大値となり、サンプル点が32で極小値となる。
【0061】
一方、図6を参照して、移動平均値においては、サンプル点が7〜10までの第1の振動と、サンプル点が11〜22までの第2の振動と、サンプル点が23〜35までの第3の振動とが表されている。第1の振動では、サンプル点が7で極大値となり、サンプル点が9で極小値となる。極大値と極小値との差分がしきい値T2より小さいので、指でタッチパネル5を押下する操作は検出されない。
【0062】
また、第2の振動では、サンプル点が13で極大値となり、サンプル点が19で極小値となる。極大値と極小値との差分がしきい値T2よりも大きいので、指でタッチパネル5を押下する操作が検出される。また、第3の振動では、サンプル点が26で極大値となり、サンプル点が32で極小値となる。極大値と極小値との差分がしきい値T2よりも大きいので、指でタッチパネル5を押下する操作が検出される。
【0063】
以上説明したように、本実施の形態における携帯機器としての携帯電話機1は、タッチパネル5が指示されていることが検出されている間に検出される加速度に基づいて、ユーザがタッチパネル5に触れながらタッチパネル5を押下する操作を検出するので、ユーザは、タッチパネル5の同じ位置を複数回押下する操作を入力することができる。
【0064】
また、加速度の微分値の極大値と極小値との差が所定のしきい値以上のときに所定の操作を検出するので、ユーザがタッチパネル5に触れながらタッチパネル5を押下する操作により発生する振動の1周期で、1回の操作を検出することができる。
【0065】
また、検出手段は、加速度センサ19の出力の微分値を所定の時間で移動平均し、移動平均値で連続する極大値と極小値との差を算出するので、検出された加速度に含まれるノイズを低減することができる。特に、ユーザがタッチパネル5に触れながらタッチパネル5を押下する操作により発生する振動とは異なる信号を除去することができる。
【0066】
また、タッチパネル5により検出される指示位置と、ユーザがタッチパネル5に触れながらタッチパネル5を押下する操作が検出される回数とに基づき、複数の文字のうちから1つを決定するので、ユーザは同じ位置を押下する操作をするだけで、複数の文字のうちから1つを選択することができる。
【0067】
また、加速度センサ19は、タッチパネル5のパネル面に垂直な方向の加速度を検出するように配置されるので、タッチパネル5に触れながらタッチパネル5を押下する操作により発生する振動を検出することができる。
【0068】
なお、上述した実施の形態においては、携帯機器の一例として携帯電話機1について説明したが、図8に示した操作検出処理を携帯電話機1に実行させるための操作検出方法またはその操作検出方法を携帯電話機1が備える制御部11(コンピュータ)に実行させるための操作検出プログラムとして発明を捉えることができるのは言うまでもない。
【0069】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施の形態の一つにおける携帯電話機の外観を示す斜視図である。
【図2】本実施の形態における携帯電話機の機能の一例を示す機能ブロック図である。
【図3】制御部の機能の概要を示す機能ブロック図である。
【図4】加速度A(n)の一例を示す図である。
【図5】1次微分値B(n)の一例を示す図である。
【図6】移動平均値S(n)の一例を示す図である。
【図7】2次微分値B(n)の一例を示す図である。
【図8】操作検出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0071】
1 携帯電話機、3 LCD、5 タッチパネル、7 スピーカ、9 マイクロフォン、11 制御部、13 無線回路、13A アンテナ、15 RAM、17 EEPROM、19 加速度センサ、21 コーデック部、23 振動部、25 カードI/F、27 フラッシュメモリ、51 指示位置受付部、53 操作検出部、55 信号決定部、57 表示制御部、61 加速度検出部、63 1次微分算出部、65 移動平均算出部、67 2次微分算出部、69 極大値抽出部、71 極小値抽出部、73 差分算出部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルと、
加速度を検出する加速度センサと、
前記タッチパネルにより指示されていることが検出されている間に前記加速度センサにより検出される加速度に基づいて、所定の操作を検出する検出手段と、を備えた携帯機器。
【請求項2】
前記検出手段は、加速度の微分値の極大値と極小値との差が所定のしきい値以上のときに前記所定の操作を検出する、請求項1に記載の携帯機器。
【請求項3】
前記検出手段は、前記加速度センサの出力の微分値を所定の時間で移動平均する移動平均手段を含み、前記移動平均された値で連続する極大値と極小値との差を算出する、請求項2に記載の携帯機器。
【請求項4】
前記タッチパネルにより検出される位置情報と、前記検出手段により前記所定の操作が検出される回数とに基づき、複数の信号のうちから1つを決定する信号決定手段と、をさらに備えた請求項1〜3のいずれかに記載の携帯機器。
【請求項5】
前記加速度センサは、前記タッチパネルのパネル面に垂直な方向の加速度を検出する、請求項1〜4のいずれかに記載の携帯機器。
【請求項6】
タッチパネルを備えた携帯機器で実行される操作検出方法であって、
加速度を検出するステップと、
前記タッチパネルにより指示されていることが検出されている間に検出される加速度に基づいて、所定の操作を検出するステップと、を含む操作検出方法。
【請求項7】
タッチパネルを備えた携帯機器で実行される操作検出プログラムであって、
加速度を検出するステップと、
前記タッチパネルにより指示されていることが検出されている間に検出される加速度に基づいて、所定の操作を検出するステップと、をコンピュータに実行させる操作検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−109552(P2010−109552A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278146(P2008−278146)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】