説明

携帯機器のジャック固定構造

【課題】汎用のジャックを用いつつ、防水機能を持たせることができる携帯機器のジャック固定構造を提供。
【解決手段】DCジャック80は、直方体状の本体81の一面にプラグと接続されるコネクタを内包する円筒状の突起部82を形成して構成される。固定部材90は、先端が薄いくさび形に形成された2本の平行な足部90a,90aと、2本の足部の基端を接続する接続部90bとにより、ほぼコ字状に形成されている。DCジャックの突起部の外周にOリング91を装着し、突起部を取り付け穴71に対向させてジャック側溝83とケース側溝73とが一部重なるように配置する。固定部材の足部を、ジャック側溝とケース側溝73とにより形成される空間Sに挿入してゆく。足部に形成されたくさびにより、下ケーシング20に対してDCジャックがスライドし、突起部は取り付け穴に挿入されると共に、Oリングは変形して取り付け穴の周囲の下ケーシングに密着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機器に電源ケーブル等のケーブルのプラグを接続するためのジャックを固定する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器には、外部の装置に接続された信号ケーブルや、ACアダプターの電源ケーブル等を接続するため、ケーブルの先端に設けられたプラグを差し込んで電気的な接続を得るためのジャックが設けられたものがある。
【0003】
例えば、特許文献1の図1には、合成樹脂製の筐体内に基板とジャックボードとを配置し、基板にジャックを固定し、ジャックの前部をジャックボートの穴に挿入し、プラグを差し込むことができるようにした構造が開示されている。ここでは、プラグの抜き差しによるジャックのぐらつきを防ぐため、金属製のバーにより筐体とジャックボードとが補強されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−282564号公報 図1、段落0022
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構造では、防水機能を持たせることが困難である。すなわち、ジャックはジャックボードに対しては直接固定されていないため、両者の間にパッキンを挿入しても、パッキンによる反力がジャックボートとジャックとの間にて十分に作用しない。そのため、ジャックを基板に強固に固定しておかない限り、パッキンを密着させる力が作用せず、結果的にジャックボードの穴においてジャックに対する水密を保つことが困難となる。
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、汎用のジャックを用いつつ、ケース(ジャックボード)とジャックとの間にパッキンを介在させる場合に該パッキンを両者間に密着させ得、気密かつ防水機能を持たせることができる携帯機器のジャック固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成させるため、直方体状の本体の一面にプラグと接続されるコネクタを内包する突起部が形成されたジャックを、携帯機器のケースの内側から、ケースに形成された取り付け穴に突起部を挿入させて固定するジャック固定構造において、ジャックの本体の両側の側面に、突起部の挿入方向とほぼ垂直なジャック側溝を形成し、ケースの取り付け穴の内側にジャックの本体の両側の側面に沿う壁面を形成し、この壁面に、ジャックの突起部が取り付け穴に挿入された際にジャック側溝に対向するケース側溝を形成し、突起部の外周に耐水性及び弾性を持つパッキンを装着し、突起部を取り付け穴に対向させてジャック側溝とケース側溝とが一部重なるように配置し、両溝により形成される空間に先端が薄いくさび形に形成された固定部材を挿入し、この固定部材を挿入することにより、ケースに対してジャックをスライドさせ、突起部を取り付け穴に挿入させると共に、パッキンを取り付け穴の周囲のケースに密着させるようにしたことを特徴とする。
【0007】
突起部が円筒形状の場合には、パッキンとしてはOリングを利用することができる。また、固定部材は、ジャック本体の両側で両溝により形成される空間に挿入される2本の平行な足部と、これらの2本の足部の基端を接続する接続部とにより、ほぼコ字状に形成されていることが望ましい。
【0008】
携帯機器としては、可撓性のチューブを駆動部により扱くように変形させることによりチューブ内の液体を移送するチューブポンプに適用することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、固定部材のくさび形状を利用してジャックの突起部をケースの取り付け穴に挿入させつつ、パッキンをジャックとケースとの間に挟持させることができ、汎用のジャックをケースに直接強固に固定することができ、かつ、防水機能を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係るジャック固定構造を適用した携帯機器であるチューブポンプの外観を示す斜視図である。
【図2】図1のチューブポンプを示す平面図である。
【図3】図1のチューブポンプを示す背面図である。
【図4】図1のチューブポンプを示す側面図である。
【図5】図1のチューブポンプに組み付けられるチューブカセットを示す平面図である。
【図6】図1のチューブポンプの下ケーシングへのジャックの取り付け方法を示す斜視図である。
【図7】図6に示す固定部材を拡大して示す斜視図である。
【図8】図6に示す下ケーシングの一部と下ケーシングに取り付けられる前のジャックとを示す断面図である。
【図9】図8に示すジャックをパッキンがケーシング内部に当接するまで移動させた状態を示す断面図である。
【図10】図8に示す溝間の空間に固定部材を挿入して固定した状態を示す断面図である。
【図11】図1のチューブポンプのジャック取り付け後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る携帯機器のジャック固定構造を図面に基づいて説明する。本実施の形態では、携帯機器としてチューブポンプを使用している。図1は、このチューブポンプの外観を示す斜視図である。最初に、チューブポンプ100の全体構成を図1〜図4に基づいて説明する。図1〜図4は、実施の形態に係るチューブポンプ100の外観を示し、図1は斜視図、図2は平面図、図3は背面図、図4は側面図である。
【0012】
チューブポンプ100は、上ケーシング10と下ケーシング20とを組み合わせることによりほぼ直方体状に形成され、これらのケーシングにより囲まれた内部にバッテリー、制御回路、モータ等が収納されている。
【0013】
上ケーシング10の上面には、図1及び図2に示されるように、電源ボタンを含む複数の操作ボタン11が配置されると共に、中央には表示パネルとしての液晶ディスプレイ(LCD)12が取り付けられている。
【0014】
また、上ケーシング10の上面の右側には、図5に示すチューブカセット200を取り付ける取付部Aが形成されている。取付部Aには、その中心位置に、内蔵するモータの回転軸13が導出され、この回転軸13の周囲に上下スライド可能に配置され、内蔵するスプリングにより上方に付勢された円形のスプリングプレート14、後述のセンサが内蔵されたチューブ押さえブロック(以下センサブロックという)30、このセンサブロック30の近傍に取り付けられチューブカセット200を取付部Aに対し補助的に固定するためのインターロック機能を有するストッパ40が取り付けられている。
【0015】
センサブロック30は、取付部Aに取り付けられるチューブカセット200のチューブが通される第1,第2の谷部31、32を形成するよう順に配列する第1、第2,第3の突出部33、34、35を一体に形成して構成される。センサブロック30は、機械的強度、耐摩耗性,耐薬品性に優れたPEEK材等の樹脂で成形されている。
【0016】
上ケーシング10の背面には、駆動部Aに取り付けられたチューブカセット200を取り外す際に操作するイジェクトボタン15と、このイジェクトボタン15の操作をロックするためのロックレバー16とが取り付けられている。
【0017】
また、下ケーシング20の側面には、図4に示すように、後述するバッテリー用の収容部を水密にカバーする蓋体としてのバッテリーカバー50が取り付けられている。バッテリーカバー50には、このバッテリーカバー50を下ケーシング20に対してロックし、あるいは、このロックを解除するためのロック操作部材51が回転可能に設けられている。このロック操作部材51に形成された溝に図示せぬ専用のキーを差し込んで回すことにより、ロックと解除とを切り換えることができる。
【0018】
さらに、下ケーシング20の側面には、カバー50に隣接して通信コネクタ60と電源コネクタ70とが設けられている。通信コネクタ60は、例えばチューブポンプ100をPC等に接続してデータの入出力を行う際に利用され、電源コネクタ70は、チューブポンプ100をAC電源に接続されるACアダプタのプラグを差し込んで利用される。
【0019】
チューブカセット200は、図5に示されるように、円板状の底面プレート211の外周に沿って、円筒壁212を形成し、この円筒壁212の内周に沿って可撓性を持つチューブ220を配置し、このチューブ220を押しつぶすように3つのローラ230を配置し、これらのローラ230の中央に取付部Aの背面からモータの回転軸13が挿通する軸孔240を形成することにより構成されている。
【0020】
チューブカセット200をチューブポンプ100に取り付ける際には、チューブカセット200の底面に形成された鈎状突起を取付部Aに形成された溝に合わせ、底面プレート211によりスプリングプレート14を押しつけながら図示せぬロック機構により鈎状突起がロックされるまで押し下げる。これにより、回転軸13は各ローラの周面に当接し、かつ、チューブ220の一方、この例では上流側(イン側)がセンサブロック30の第1の谷部31に挿入され、チューブ220の他方、この例では下流側(アウト側)が第2の谷部32に挿入される。
【0021】
チューブカセット200をチューブポンプ100に取り付けてモータを回転させて回転軸13を図2中の時計回りに回転させると、これに係合する3つのローラ230は反時計回りに自転しながら時計回りに公転する。これにより、チューブ220は扱くように順に変形され、チューブ220内の液体を移送することができる。なお、これらのモータの回転軸13、ローラ230は、チューブ220を扱く駆動部を構成している。センサブロック30は、チューブ220が駆動部から外部に導出される位置に配置されている。
【0022】
チューブカセット200をチューブポンプ100から取り外す際には、ストッパ40によるインターロックを解除した後、ロックレバー16をスライドさせてロックを解除し、イジェクトボタン15を押す。これにより、ロック機構が解除され、図示せぬスプリングの作用でスプリングプレート14が上昇し、チューブカセット200を取付部Aから外すことができる。
【0023】
なお、本実施形態のチューブポンプ100は、チューブ220の径の縮小を検出する終了センサと、チューブの径の拡大を検出する閉塞センサと、チューブ内の気泡を検知する気泡センサを構成する送信部及び受信部とをセンサブロック30内に備えている(図示は省略する)。
【0024】
次に、上記のチューブポンプ100の電源コネクタ70を構成するDCジャック80の固定構造について、図6〜図10に基づいて詳細に説明する。図6は、図1のチューブポンプ100の下ケーシング(ケース)20へのDCジャック80の取り付け方法を示す斜視図、図7は、図6に示される固定部材90を拡大して示す斜視図、図8は、図6に示す下ケーシング20の一部と下ケーシング20に取り付けられる前のDCジャック80とを示す断面図、図9は、図8に示すDCジャック80をパッキン91が下ケーシング20の内部に当接するまで移動させた状態を示す断面図、図10は、図8に示す溝間の空間に固定部材90を挿入して固定した状態を示す断面図である。
【0025】
図6に示すように、DCジャック80は、市販の汎用品であり、直方体状の本体81の一面にプラグと接続されるコネクタを内包する円筒状の突起部82を形成して構成される。DCジャック80は、突起部82の外周に耐水性及び弾性を持つパッキンとしてのゴム製のOリング91を装着した状態で、下ケーシング20の内側から、下ケーシング20に形成された取り付け穴71に突起部82を挿入させて取り付けられ、固定部材90により下ケーシング20に固定される。
【0026】
DCジャック80の本体81の両側の側面には、突起部82の挿入方向とほぼ垂直なジャック側溝83、83が形成されている。ジャック側溝83は、この例では側面に突出して形成された2本の凸条に挟まれる空間として形成されている。
【0027】
固定部材90は、図7に示すように、2本の平行な足部90a,90aと、2本の足部の基端を接続する接続部90bとにより、ほぼコ字状に形成されている。足部90aは、先端が薄いくさび形に形成されている。
【0028】
一方、下ケーシング20には、取り付け穴71の内側にDCジャック80の本体81の両側の側面に沿う壁面72,72が形成されると共に、これらの壁面に、DCジャック80の突起部82が取り付け穴71に挿入された際にジャック側溝83に対向するケース側溝73,73が形成されている。ケース側溝73も、この例では側面に突出して形成された2本の凸条に挟まれる空間として形成されている。
【0029】
DCジャック80を下ケーシング20に装着する際には、図9に示すように、DCジャック80の突起部82の外周にOリング91を装着し、突起部82を取り付け穴71に対向させてジャック側溝83とケース側溝73とが一部重なるように配置する。なお、図9に示す状態では、Oリング91はDCジャック80の本体81と下ケーシング20との間に挟まれており、これ以上DCジャック80を図中左側に手で押しても、手を離すとOリング91の弾性により図9に示す状態に戻る。
【0030】
そして、固定部材90の足部90aを、ジャック側溝83とケース側溝73とにより形成される空間Sに挿入してゆく。足部90aに形成されたくさびにより、下ケーシング20に対してDCジャック80が図中左側にスライドし、図10に示すように、突起部82は取り付け穴71に挿入されると共に、Oリング91は変形して取り付け穴71の周囲の下ケーシング20に密着する。このとき、足部90aの先端に接着剤を塗布しておくことが望ましい。これにより、くさびの抜けを防止することができる。
【0031】
図11は、DCジャック80を取り付けた後のチューブポンプ100を示す断面図である。上ケーシング10には、制御回路が実装される主回路基板400が装着され、駆動部Aに相当する部位には、モータ306が取り付けられたモータ基板500が装着されている。DCジャック80は、これらの回路基板とは独立して、下ケーシング20に直接固定されている。
【0032】
以上説明したように、本実施の形態によれば、固定部材90を利用してOリング91をDCジャック80と下ケーシング20との間に挟み込むことにより、汎用のDCジャック80を下ケーシング20に直接強固に固定することができ、かつ、防水機能を持たせることができる。
【0033】
また、上記実施形態では、固定部材90をほぼコ字状に形成したものを示したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば、足部90aを形成する2本の直線状部材により固定部材を構成するようにしてもよく、或いは、2本の足部90aを接続部により連結してほぼU字状に形成した固定部材としてもよい。
【0034】
なお、本実施の形態では、本発明をチューブポンプのDCジャックに適用した例についてのみ説明したが、携帯機器としては、ポータブルラジオやノートパソコン等、他の電気機器にも適用でき、ジャックとしても、電源のみでなく、音声、映像等の各種の信号用のジャックに適用することもできる。
【0035】
100 チューブポンプ
10 上ケーシング
20 下ケーシング
70 電源コネクタ
71 取り付け穴
72 壁面
73 ケース側溝
80 DCジャック
81 本体
82 突起部
83 ジャック側溝
90 固定部材
90a 足部
90b 連結部
91 Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体状の本体の一面にプラグと接続されるコネクタを内包する突起部が形成されたジャックを、携帯機器のケースの内側から、前記ケースに形成された取り付け穴に前記突起部を挿入させて固定するジャック固定構造において、
前記ジャックの本体の両側の側面には、前記突起部の挿入方向とほぼ垂直なジャック側溝が形成され、
前記ケースには、前記取り付け穴の内側に前記ジャックの本体の両側の側面に沿う壁面が形成されると共に、該壁面に、前記ジャックの突起部が前記取り付け穴に挿入された際に前記ジャック側溝に対向するケース側溝が形成され、
前記突起部の外周に耐水性及び弾性を持つパッキンを装着し、前記突起部を前記取り付け穴に対向させて前記ジャック側溝と前記ケース側溝とが一部重なるように配置し、両溝により形成される空間に先端が薄いくさび形に形成された固定部材を挿入してゆくことにより、前記ケースに対して前記ジャックをスライドさせ、前記突起部を前記取り付け穴に挿入させると共に、前記パッキンを前記取り付け穴の周囲のケースに密着させるようにしたことを特徴とする携帯機器のジャック固定構造。
【請求項2】
前記突起部は円筒形状であり、前記パッキンはOリングであることを特徴とする請求項1に記載の携帯機器のジャック固定構造。
【請求項3】
前記固定部材は、前記ジャック本体の両側で前記両溝により形成される空間に挿入される2本の平行な足部と、該2本の足部の基端を接続する接続部とにより、ほぼコ字状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の携帯機器のジャック固定構造。
【請求項4】
前記携帯機器は、可撓性のチューブを駆動部により扱くように変形させることによりチューブ内の液体を移送するチューブポンプであることを特徴とする請求項1に記載の携帯機器の外部機器接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−89390(P2012−89390A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236158(P2010−236158)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000228730)日本電産サーボ株式会社 (276)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】