説明

携帯機器及び携帯時計

【課題】 押しボタンの誤動作を防止する機能が携帯中に損なわれることを抑制できる携帯機器を提供する。
【解決手段】 時計外装体(機器外装体)12、パイプ26、押しボタン35、付勢部材40、ロック部材31、回り止め部材29を具備する。パイプ26を外装体12の貫通孔25に挿入して外装体12に固定し、パイプ26の雌ねじ部28が形成された保持筒部26bを外装体12の外部に配置する。押しボタン35は、パイプ26を貫通する軸部36、パイプ26からの抜け止めをする部材38、外装体12の外部に配置される操作ヘッド37を有する。付勢部材40でボタン35を外装体12の外方に付勢する。ロック部材31は、雄ねじ部34並びにヘッド37に接離する規制凸部32aが形成された内周壁32、及び筒部26bに被嵌する外周壁33を有する。両ねじ部28、34を螺合してロック部材31を筒部26bに移動可能に取付ける。ロック部材31に回転抵抗を与える回り止め部材29を、外周壁33と筒部26bとの間に挟設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押しボタンを備えた携帯機器及び携帯時計に関する。
【背景技術】
【0002】
腕時計や懐中時計などの携帯時計、ストップウオッチ、携帯電話、携帯型情報端末機などの携帯機器の中には、例えば機器外装体内の接点等を動作させる押しボタンを機器外装体に取付けたものがある。押しボタンが押圧されることによって、例えばクォーツ式携帯時計では、時計表示をアナログ表示からデジタル表示に切換えたり、デジタル表示された日付や曜日を修正したりできるようになっている。
【0003】
従来、この種の携帯機器では、押しボタンの誤操作を防止するために、ロック部材の内周に形成した雌ねじ部を、機器外装体に取付けられたパイプの外周に形成した雄ねじ部に螺合させて、これらねじ部の螺合位置の変化によりロック部材をロック位置とロック待機位置とにわたって移動可能に設けている。ロック部材がロック待機位置に配置された状態では、パイプを貫通した押しボタンの頭部からロック部材の規制部が離れるため、その離れた距離に相当するストロークで押しボタンの押し込み操作が許容される。この逆に、ロック部材がロック位置に配置された状態では、規制部が押しボタンの頭部に接した状態となるため、押しボタンの押し込みが防止される。
【特許文献1】特開2003−7164号公報(段落0002−0006、段落0026−0038、図1−図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術ではロック部材をロック位置に保持する工夫がない。このため、押しボタンを付勢するコイルばねの付勢力がロック部材に作用する場合であっても、携帯中に加わる振動や衝撃などにより、パイプに対するロック部材の螺合位置が変化する恐れがある。したがって、携帯中に、ロック部材がロック位置からロック待機位置方向にずれ動いて、押しボタンの誤動作を防止する機能が損なわれることが考えられるから、こうしたことがないようにすることが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、押しボタンの誤動作を防止する機能が携帯中に損なわれることを抑制できる携帯機器及び携帯時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の携帯機器は、貫通孔を有した機器外装体と;挿入筒部及び保持筒部を有し、前記挿入筒部を前記貫通孔に挿入するとともに前記保持筒部を前記機器外装体の外部に配置して前記機器外装体に固定されたパイプと;このパイプを貫通する軸部、この軸部の前記パイプから抜け止めをする抜け止め部材、及び前記機器外装体の外部に配置される操作ヘッドを有した押しボタンと;この押しボタンと前記パイプとの間に挟まれて前記押しボタンを前記機器外装体の外方に付勢する付勢部材と;前記操作ヘッドが接離する規制凸部が形成された内周壁、及び前記保持筒部の外周に被嵌する外周壁を有し、前記雄ねじ部を前記保持筒部に螺合して前記保持筒部の軸方向に移動可能に取付けられたロック部材と;前記内周壁又は前記外周壁と前記保持筒部との間に挟まれて前記ロック部材に回転抵抗を与える回り止め部材と;を具備している。
【0007】
この発明で、ロック部材と保持筒部との螺合は、保持筒部に雌ねじ部を形成するとともにロック部材の内周壁に雄ねじ部を形成して、これらねじ部を螺合させることによって実現でき、或いは、保持筒部に雄ねじ部を形成するとともにロック部材の外周壁に雌ねじ部を形成して、これらねじ部を螺合させることによって実現できる。
【0008】
この発明で、回り止め部材は摩擦材好適にはゴム系又はプラスチックス系等の可撓性摩擦材で形成できる。更に、回り止め部材は、ロック部材の外周壁の内周又はパイプの保持筒部の外周の少なくとも一方に設けることができ、或いはロック部材の内周壁の外周又は保持筒部の内周の少なくとも一方に設けることができる。これとともに、回り止め部材は、前記外周又は内周に対して周方向に一回り連続してリング状に設けることが組立てなどの点で好ましいが、周方向に沿って間隔的に複数設けることも可能である。しかも、リング状の回り止め部材とする場合には防水パッキンを兼ねるとよい。
【0009】
本発明では、パイプの保持筒部とこの筒部に螺合されたロック部材との間に挟まれた回り止め部材で、ロック部材に回転抵抗を与えたので、ロック部材が押しボタンの押し込みを妨げるロック位置に配置された状態で、このロック部材が振動や衝撃により不用意に回転することを抑制できる。それにより、ロック位置等に配置されたロック部材が携帯中に不用意に動かないように保持され、携帯中に押しボタンの誤動作を防止する機能が損なわれることを抑制できる。
【0010】
本発明の携帯機器の好ましい形態では、リング状の防水パッキンを前記ロック部材の内周壁と前記操作ヘッドとの間に挟設している。この発明で、防水パッキンはロック部材の内周壁の内周又は操作ヘッドの外周の少なくとも一方に設けることができる。
【0011】
この発明の形態では、防水パッキンの摩擦力がロック部材の回転抵抗として付加されるので、ロック位置等に配置されたロック部材の不用意な回転をより確実に抑制できる。更に、既述の防水パッキンの配置により、パイプの挿入筒部に収まる押しボタンの軸部に防水パッキンを取付けるための環状の溝を形成する必要がなくなり、それに伴い軸部の強度低下がなくなるので、携帯機器の落下時の衝撃などで軸部が曲がって防水機能が低下しないようにできる点で好ましい。
【0012】
又、本発明の携帯機器の好ましい形態では、前記回り止め部材がリング状をなしていて、前記防水パッキンが前記操作ヘッドに与える摩擦力を、前記回り止め部材が前記ロック部材に与える摩擦力より小さくしている。
【0013】
この発明の形態では、押しボタンの移動操作が重くなることが抑制されて、押しボタンを円滑に移動できる点で好ましい。
【0014】
又、前記課題を解決するために、本発明の携帯時計は、前記各発明の内のいずれかの発明の携帯機器で形成されている。
【0015】
この発明の携帯時計は、前記各発明の内のいずれかの発明の携帯機器で形成されているので、携帯中に押しボタンの誤動作を防止する機能が損なわれることを抑制できる携帯時計を提供できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、押しボタンの誤動作を防止する機能が携帯中に損なわれることを抑制できる携帯機器及び携帯時計を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の第1実施形態を図1〜図4を参照して説明する。
【0018】
図1中符号11は携帯機器例えば携帯時計具体的には腕時計を示している。腕時計11は、機器外装体をなす時計外装体12内に、内蔵部材、例えば時計ムーブメント13、文字板14、及び時針・分針・秒針などの時刻表示針15などが収められている。時刻表示針15を駆動する時計ムーブメント13は板ばね等からなる接点16を有している。この接点16が後述の押しボタンで押されることによって、時計ムーブメント13の機能の切換えがなされるようになっている。
【0019】
図1に示すように時計外装体12は、ステンレス鋼やチタンなどの金属により環状に作られた胴21の厚み方向の一面に、文字板14を透視させるカバーガラス22を液密に装着するとともに、胴21の厚み方向の他面に、金属や合成樹脂などから作られた裏蓋23を液密に装着して形成されている。
【0020】
胴21には、竜頭(図示しない)が取付けられているとともに、この竜頭からずれた位置に貫通孔25が設けられている。貫通孔25の一端は、胴内、つまり、時計外装体12の内部に開口されている。貫通孔25はその他端にろう付け溝25aを有していて、ろう付け溝25aは胴外面(外装体外面)21aに開口されている。
【0021】
胴21には軸方向と直交する方向の断面が丸のパイプ26が固定されている。パイプ26は金属好適にはステンレス鋼等で作られている。このパイプ26は、挿入筒部26aと保持筒部26bとを有している。挿入筒部26aは保持筒部26bより径が小さい小径部からなり、この逆に保持筒部26bは挿入筒部26aより径が大きい大径部からなる。そのため、パイプ26は挿入筒部26aと保持筒部26bとを一体に連続させる段差部26cを有した段付きに形成されている。
【0022】
パイプ26は、その挿入筒部26aを貫通孔25に挿入するとともに、保持筒部26bを胴21の外部に配置して時計外装体12に固定されている。この固定は、ろう付け溝25aに充填された金属製ろう材27によるろう付け接合によりなされている。ろう材27は、パイプ26と胴21との間の防水を担っている。以上のように胴21に固定されたパイプ26の段差部26cはろう付け溝25aを閉じて胴外面21aに当接されている。
【0023】
保持筒部26bの内周には雌ねじ部28が形成されている。保持筒部26bにはその外周に開放する環状の溝が形成されていて、この溝にリング状の回り止め部材29が取付けられている。回り止め部材29の外周部は前記溝より突出されている。回り止め部材29は、可撓性を有するゴム系又はプラスチックス系の材料からなり、リング状の防水パッキンを好適に用いることができる。
【0024】
保持筒部26bにはリング状のロック部材31が保持筒部26bの軸方向に移動可能に取付けられている。ロック部材31は金属又は合成樹脂製であって、内周壁32及びこれよりも長い外周壁33を有していて、これら両壁間に形成された環状溝31aは胴外面21aに向けて開放されている。このロック部材31の内周壁32の外周には雄ねじ部34が形成されている。内周壁32はその内周に規制凸部32aを一体に有している。この規制凸部32aは内周壁32の胴外面21aに近い端部に形成されていて、周方向に一回り連続する円形をなしている。
【0025】
ロック部材31は、その雄ねじ部34を前記雌ねじ部28に螺合させることによって、保持筒部26bに取付けられている。この取付けにより、内周壁32と外周壁33との間の環状溝31aに保持筒部26bが配置され、相対的には外周壁33が保持筒部26bの外周に被嵌される。この被嵌は、回り止め部材29を圧縮変形させながら行なわれるので、回り止め部材29の外周面は外周壁33の内周に摺動可能に密接されている。そのため、この密接に基づく摩擦力よりも大きな操作力でロック部材31を回転させることによって、雄ねじ部34と雌ねじ部28との螺合位置(噛み合い位置)が変わり、胴外面21aに接離する方向、つまり、保持筒部26bの軸方向にロック部材31を移動させることができる。
【0026】
このロック部材31によって腕時計11の携帯時に胴内への不用意な押込みを妨げられる押しボタン35は、金属又は合成樹脂により作られていて、軸部36と、操作ヘッド37と、抜け止め部材38とを有している。押しボタン35が押込まれることにより、軸部36の先端が前記接点16を押圧移動させるようになっている。
【0027】
軸方向と直交する方向の断面が円形の軸部36は、パイプ26の挿入筒部26aを貫通す部位である。この軸部36には挿入筒部26aの内面との間の防水を図るリング状の防水パッキン39が取付けられている。この防水パッキン39は軸部36に形成したパッキン取付け溝36aに嵌合されている。軸部36の胴内に突出した先端部に抜け止め部材38が設けられている。抜け止め部材38は例えば止め輪からなり、挿入筒部26aの胴内側端面に係合することにより、押しボタン35が胴外側に抜け出ないようになっている。
【0028】
軸部36と一体の操作ヘッド37は、軸部36より大径であるとともに、ロック部材31の内周壁32の規制凸部32aを除いた部位の内径より僅かに小径である。操作ヘッド37は、押しボタン35が軸方向に移動されることにより規制凸部32aに接離する規制部37aを有している。この規制部37aは連続した円形をなしている。
【0029】
押しボタン35は、軸部36を胴外側からパイプ26の挿入筒部26aに貫通させ、その状態で、胴内で抜け止め部材38を軸部36に取付けることにより、パイプ26の軸方向に移動可能に取付けられる。この取付けによって、操作ヘッド37は時計外装体12の胴21の外側に配置されるとともに、防水パッキン39が圧縮変形されて挿入筒部26aの内周に摺動可能に密接される。
【0030】
この押しボタン35とパイプ26との間、詳しくは、パイプ26の段差部26cと押しボタン35の操作ヘッド37との間には付勢部材40が圧縮状態に挟設されている。付勢部材40は押しボタン35を胴外方向に付勢している。この付勢部材40には、コイルばねを好適に用いることができるが、皿ばね、板ばねなどでもよく、或いはウレタンゴム等のゴム状弾性体を用いることもできる。
【0031】
以上の構成を備えた腕時計11において、携帯時など押しボタン35が使用されない状態では、図2に示すようにロック部材31が、押しボタン35の押し込みを防止するロック位置に配置されている。このロック状態は、図1の状態からロック部材31を例えば時計回りに回転させることにより得ることができる。
【0032】
つまり、ロック部材31が回り止め部材29による回転抵抗に抗して指先で回転操作されることにより、その雄ねじ部34とパイプ26の雌ねじ部28との螺合位置が変えられて、ロック部材31が胴外面21aから離れる方向に移動される。この移動は、付勢部材40の付勢力で既に抜け止め部材38がパイプ26に当たって位置決めされている押しボタン35の操作ヘッド37の規制部37aに、ロック部材31の規制凸部32aが当接することにより停止される。このロック状態では、ロック部材31から操作ヘッド37が突出しないように、操作ヘッド37の外周全体にロック部材31が被さって、ロック部材31の端面と操作ヘッド37の端面の位置とが略同じとなるようにロック部材31が配置される。
【0033】
以上のロック状態では、操作ヘッド37がロック部材31に既述のように引っ掛かっている。このため、仮に、操作ヘッド37が押されることがあっても、押しボタン35が胴内方向に押し込まれることが防止されて、押しボタン35の誤動作を抑制できる。
【0034】
このロック状態においても、ロック部材31の外周壁33とパイプ26の保持筒部26bとの間には、回り止め部材29が圧縮状態に挟設されていて、外周壁33に対する回り止め部材29の摩擦力に応じた回転抵抗がロック部材31に与えられている。そのため、腕時計11の携帯時などに振動や衝撃が加わっても、それにより、ロック部材31が不用意に回転されて緩まないようにできる。言い換えれば、ロック部材31が、ロック位置から胴外面21a方向にずれ動かないように保持できる。したがって、ロック部材31による押しボタン35に対するロック機能が損なわれないようにできるので、携帯中などにおけるロック部材31の緩みを原因とする押しボタン35の誤動作を抑制できる。
【0035】
図2に示すようにロック状態では、ロック部材31は胴外面21aから離れていて、これらの間にはギャップGが形成されるので、このギャップGに水や砂塵などの異物が入り込むことがある。しかし、ロック部材31に回転抵抗を与える回り止め部材29が、リング状であって外周壁33と保持筒部26bとの間を仕切っているので、ギャップGに入り込んだ異物が、雄ねじ部34と雌ねじ部28との螺合部に到達することを、回り止め部材29によって抑制できる。
【0036】
このように時計外装体12の外に配置される雄ねじ部34と雌ねじ部28との螺合部が配置されているにも拘わらず、この螺合部に対する防水及び防塵ができる。それによって、ロック部材31を回転させる操作が異常に重くなることを抑制できる。
【0037】
更に、ロック状態では、ロック部材31が有した円形状の規制凸部32aと操作ヘッド37が有した円形の規制部37aとが当たっているので、この当接部により、ロック部材31の内周壁32と操作ヘッド37との間に侵入する水や砂塵などの異物が、前記当接部を超えてパイプ26の内側に侵入することを抑制できる。そして、仮に、異物が前記螺合部及び当接部を通過することがあっても、パイプ26と押しボタン35との間に挟設された防水パッキン39により、胴内に侵入することを抑制できる。つまり、ロック状態では二重に防水及び防塵ができる。
【0038】
押しボタン35を操作する場合には、はじめにロック部材31をロック待機位置に移動させた後に、押しボタン35の操作ヘッド37を胴21に向けて押圧すればよい。
【0039】
ロック待機位置へのロック部材31の移動は、図2の状態からロック部材31を、回り止め部材29による回転抵抗に抗して指先で例えば反時計回りに回転させることにより得ることができる。それにより、雄ねじ部34と雌ねじ部28との螺合位置が変えられて、ロック部材31が胴外面21aに近寄る方向に移動される。この移動は、ロック部材31の外周壁33が胴外面21aに当接するとともに、ロック部材31の内周壁32がパイプ26の段差部26cに当接することにより停止される。なお、この当接によるロック待機位置への位置規制は、胴外面21aへの外周壁33の当接又はこれに代えて胴外面21aへの内周壁32の当接で行なうこともできる。
【0040】
こうしてロック部材31がロック待機位置に配置されることによって、その規制凸部32aが操作ヘッド37の規制部37aから離れて、相互間に図3に示すように押しボタンの移動を許すギャップSが形成されるとともに、操作ヘッド37がロック部材31の中央部から突出された状態となる。
【0041】
次に、図4に示すように付勢部材40を圧縮させながら操作ヘッド37を押圧することによって、ギャップSをストロークとして押しボタン35が押し込まれ、この押しボタン35で胴21内の接点16を押すことができる。この後、押しボタン35の押圧が解除されるに伴い、押しボタン35は付勢部材40の付勢力で押し戻されて、図3に示すように配置される。なお、以上の後に、ロック部材31は既述のように時計回りに回転操作されて図2に示すロック位置に配置され、この状態で腕時計11は携帯される。
【0042】
図5〜図8は本発明の第2実施形態を示している。この実施形態は以下説明する事項を除いて第1実施形態と同じであるので、第1実施形態と同じ構成については同一符号を付して説明を省略する。第2実施形態は防水パッキン39の配置が第1実施形態とは異なる。
【0043】
具体的には、防水パッキン39は、押しボタン35とパイプ26との間ではなく、押しボタン35とロック部材31との間をシールして設けられている。より詳しくは、押しボタン35の操作ヘッド37とロック部材31の内周壁32との間に、リング状の防水パッキン39が圧縮状態で挟まれている。防水パッキン39は、軸36より太い操作ヘッド37に設けた環状のパッキン取付け溝37bに嵌合して取付けられているが、この逆に内周壁32にパッキン取付け溝を設けて、そこに嵌合させて防水パッキン39を設けることもでき、或いは内周壁32と操作ヘッド37の双方に防水パッキン39を取付けることも可能である。
【0044】
防水パッキン39は、可撓性を有するゴム系又はプラスチックス系の材料からリング状に形成されていて、その直径よりリング状の回り止め部材29の直径の方が大きい。これら防水パッキン39と回り止め部材29とは同じ材料で作ることが望ましい。したがって、それらの径差に応じて、防水パッキン39がロック部材31に与える摩擦力より、回り止め部材29がロック部材31に与える摩擦力の方が大きくなっている。更に、防水パッキン39は、図6に示すようにロック位置に配置されたロック部材31で押し込みができないように押しボタン35が保持された状態でも、図7及び図8に示すようにロック部材31がロック待機配置に配置されて押しボタン35の押し込みが許された状態でも、回り止め部材29の位置を境に胴外面21aとは反対側に位置されるように設けられている。以上説明した事項以外は第1実施形態と同じである。
【0045】
したがって、第2実施形態では、第1実施形態と同様な作用を得て本発明の課題を解決できる。加えて、以下の点において第2実施形態は第1実施形態よりも優れている。
【0046】
第1に、防水パッキン39はそのロック部材31に対する摩擦力に応じた回転抵抗をロック部材31に与えることができる。このように防水パッキン39の摩擦力がロック部材31の回転抵抗として付加されるので、ロック位置等に配置されたロック部材31の不用意な回転をより確実に抑制できる。
【0047】
第2に、リング状の防水パッキン39が押しボタン35の操作ヘッド37に与える摩擦力は、回り止め部材29がロック部材31に与える摩擦力より小さいので、押しボタン35の移動操作が重くなることが抑制され、押しボタン35を円滑に移動できる。そして、以上の摩擦力の差を、回り止め部材29と防水パッキン39との径の差によって得ているので、これら回り止め部材29と防水パッキン39を同一材料で形成できる点で好ましい。
【0048】
第3に、胴内への防水と防塵と担う防水パッキン39を、操作ヘッド37とロック部材31との間に配置したことにより、パイプ26の挿入筒部26aに収まる押しボタン35の軸部36に防水パッキン39を取付けるための環状のパッキン取付け溝を形成する必要がない。それに伴い、パッキン取付け溝を軸部36に設けた場合のように軸部36の一部が細くなって、この部分において軸部36の強度が低下することがなくなる。加えて、操作ヘッド37がこれを囲んでいるロック部材31に防水パッキン39を介して支持されているので、操作ヘッド37とロック部材31の内周壁32との間のギャップを原因として押しボタン35が傾くように動くことが抑制される。したがって、腕時計11の落下時などに加えられる衝撃などで軸部36が曲がって防水機能が低下しないようにできる点で好ましい。
【0049】
第4に、回り止め部材29と防水パッキン39とがロック部材31に与える摩擦力で、ロック部材31の回転操作に適度の重さを生じさせて、快適な操作感を与えることができる。これとともに、回り止め部材29と防水パッキン39とが、パイプ26及び押しボタン35の軸方向にずれた位置で、径方向から螺合部を挟むように設けられているので、操作ヘッド37とロック部材31の内周壁32との間のギャップを原因としてロック部材31が傾くように動くことが抑制される。したがって、ロック部材31のがたつきが抑制されて、その回転操作を円滑にできる。
【0050】
本発明は前記各実施形態に制約されるものではなく、携帯時計の他にも、例えばストップウオッチ、携帯電話、携帯型情報端末機などの携帯機器に適用できる。
【0051】
又、本発明は、内周壁32と外周壁33との間に環状溝31aが形成されたロック部材31を備え、その環状溝31aにパイプ26の保持筒部26bを収めた構成を採用したことによって、前記実施形態に代えて、保持筒部26bの外面に形成した雄ねじ部と外周壁33に形成した雌ねじ部とで、保持筒部26bとロック部材31とを螺合することもできる。この場合、回り止め部材29は保持筒部26bと内周壁32との間に挟んで実施すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態の腕時計の一部を示す断面図。
【図2】図1の腕時計の押しボタンの取付け部を押しボタンがロックされた状態で示す断面図。
【図3】図1の腕時計の押しボタンの取付け部を押しボタンのロックが解除された状態で示す断面図。
【図4】図1の腕時計の押しボタンの取付け部を押しボタンが押し込まれた状態で示す断面図。
【図5】本発明の第2実施形態の腕時計の一部を示す断面図。
【図6】図5の腕時計の押しボタンの取付け部を押しボタンがロックされた状態で示す断面図。
【図7】図5の腕時計の押しボタンの取付け部を押しボタンのロックが解除された状態で示す断面図。
【図8】図5の腕時計の押しボタンの取付け部を押しボタンが押し込まれた状態で示す断面図。
【符号の説明】
【0053】
11…腕時計(携帯時計・携帯機器)
12…時計外装体(機器外装体)
16…接点
21…胴
21…胴外面
25…貫通孔
26…パイプ
26a…挿入筒部
26b…保持筒部
26c…段差部
28…雌ねじ部
29…回り止め部材
31…ロック部材
32…内周壁
32a…規制凸部
33…外周壁
34…雄ねじ部
35…押しボタン
36…軸部
37…操作ヘッド
37a…規制部
38…抜け止め部材
39…防水パッキン
40…付勢部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有した機器外装体と;
挿入筒部及び保持筒部を有し、前記挿入筒部を前記貫通孔に挿入するとともに前記保持筒部を前記機器外装体の外部に配置して前記機器外装体に固定されたパイプと;
このパイプを貫通する軸部、この軸部の前記パイプから抜け止めをする抜け止め部材、及び前記機器外装体の外部に配置される操作ヘッドを有した押しボタンと;
この押しボタンと前記パイプとの間に挟まれて前記押しボタンを前記機器外装体の外方に付勢する付勢部材と;
前記操作ヘッドが接離する規制凸部が形成された内周壁、及び前記保持筒部の外周に被嵌する外周壁を有し、前記雄ねじ部を前記保持筒部に螺合して前記保持筒部の軸方向に移動可能に取付けられたロック部材と;
前記内周壁又は前記外周壁と前記保持筒部との間に挟まれて前記ロック部材に回転抵抗を与える回り止め部材と;
を具備した携帯機器。
【請求項2】
リング状の防水パッキンを前記ロック部材の内周壁と前記操作ヘッドとの間に挟設した請求項1に記載の携帯機器。
【請求項3】
前記回り止め部材がリング状をなしていて、前記防水パッキンが前記操作ヘッドに与える摩擦力を、前記回り止め部材が前記ロック部材に与える摩擦力より小さくした請求項2に記載の携帯機器。
【請求項4】
請求項1から3の内のいずれか一項の携帯機器で形成された携帯時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−101380(P2007−101380A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−292006(P2005−292006)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】