説明

携帯機器用電池駆動システム

【課題】携帯機器用の耐圧性能が低い燃料電池にも対応可能であり、不純物ガスの濃縮による発電効率の低下が生じにくい携帯機器用電池駆動システムを提供する。
【解決手段】水素ガスをアノード側に供給して発電を行う燃料電池10と、反応液との反応で水素ガスを発生させる水素発生剤21により燃料電池10に水素ガスを供給する水素ガス発生手段20と、水素ガス発生手段20に反応液を供給する反応液供給手段30と、前記燃料電池10への水素ガスの供給量を調節する供給側調節機構ICと、前記燃料電池10のアノード側に設けられて一次側の圧力が一定以上の場合にガスの排出量を増加させる排出側制御機構OCとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を用いてモバイルパソコン、PDAなどの携帯電子機器に電源を供給するための携帯機器用電池駆動システムに関し、より詳細には、水等の反応液との反応で発生した水素ガスを燃料電池に燃料として供給する方式の携帯機器用電池駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー電解質のような固体高分子電解質を使用した高分子型燃料電池は、高いエネルギー変換効率を持ち、薄型小型・軽量であることから、家庭用コージェネレーションシステムや自動車向けに開発が活発化している。
【0003】
また、近年のIT技術の活発化に伴い、携帯電話、ノートパソコン、デジカメなどモバイル機器が頻繁に使用される傾向があるが、これらの電源は、ほとんどリチウムイオン二次電池が用いられている。ところが、モバイル機器の高機能化に伴って消費電力がどんどん増大し、その電源用としてクリーンで高効率な燃料電池が注目されてきている。
【0004】
モバイル機器の電源として燃料電池を使用する場合、燃料であるメタノールを用いた電極反応によって直接電流を取り出すことができる直接メタノール型燃料電池が、これまで開発の主流であった(例えば非特許文献1)。直接メタノール型では、改質型のように改質器を必要とせず、また、燃料が液体のため、ガスと比べて燃料の貯留や取り扱いが簡易に行えるためである。
【0005】
しかしながら、直接メタノール型燃料電池は、メタノールのクロスオーバー(膜透過)の問題があるため、メタノールの濃度を十分高めることができず、エネルギー変換効率が悪いという問題があった。
【0006】
一方、このような理由から、自動車向けの燃料電池では、水素ガスを燃料として用いるタイプが開発の主流になっている。しかし、水素ガスの貯留の方法、水素ガスの供給インフラなど、残された問題も多い。特に、モバイル機器では、水素ガスの貯留容器を配置するためのスペースが確保しにくく、ポンプなどのガス供給・制御装置の組み込みなどについても問題が多い。
【0007】
モバイル機器に水素ガス燃料を用いる燃料電池を適用した例としては、燃料の貯蔵に水素吸蔵合金を収納したタンクを用いる方式が知られている(例えば非特許文献1)。しかし、この方式では、合金に対する水素の吸蔵量が十分でないため、合金の重量が大きくなるという問題があった。また、水素の吸蔵には高圧に耐える圧力容器が必要となり、これも重量増加の要因となり、更に、圧力制御が困難になり易いという問題もある。
【0008】
他方、下記の特許文献1には、水との反応により水素を生成する水素発生装置として、鉄等の金属を反応容器に収容し、これに水を供給して反応させる水素発生装置が開示されている(例えば、金属として鉄を用いた場合の反応式は、3Fe+4HO→Fe+4Hと表わせる)。この装置では、金属を収容した反応容器を着脱できるようにし、別途、水素ガス等で金属の加熱・還元を行うようにしている。
【0009】
しかしながら、この水素発生装置はほぼ一定量の水素ガスを供給することを目的とするものであり、水素ガスの消費量の変動を考慮した発明でない。従って、この水素発生装置を携帯電子機器へ適用しようとすると、電力の消費量が減少した場合に無駄な水素ガスが発生してしまい、その排ガス処理や発電効率の低下の問題が生じる。また、携帯電子機器への組み込みが可能な小型・薄型化された燃料電池は、一般的に耐圧性能が低く、過剰の水素ガスによって圧力上昇による電池破損の問題が生じ易い。このため、燃料電池のアノード側を閉じた系とすることができず、水素ガスの流通方式となるので、排ガス処理や発電効率の低下の問題が顕著になる。
【0010】
更に、水素ガス等の燃料ガスの消費量の変動を考慮した燃料電池システムとして、燃料ガス(反応ガス)の消費にともない、燃料ガスを貯蔵する気体貯蔵部の内圧が低下することにより、液体貯蔵部の反応溶液を反応が行われる反応部に移動する燃料電池システムが提案されている(例えば特許文献2等)。このシステムでは、燃料ガスの消費量が減って気体貯蔵部の内圧が上昇した場合に、反応溶液を反応部に移動するのを停止する制御も可能となる。
【0011】
しかしながら、反応溶液の供給に対し反応による燃料ガスの発生には通常時間遅れがあるため、このシステムの場合、反応溶液の移動を停止しても気体貯蔵部の内圧が上昇し続ける場合が多い。これによって、特に携帯機器用途の場合には、燃料電池の耐圧性能が低いため、電池破損の問題が生じる場合がある。また、上記システムでは燃料電池のアノード側からガスの排出が行われないため、アノード側に不純物ガスが濃縮され、燃料電池の発電効率の低下を招き易い構造となっていた。
【0012】
【非特許文献1】「燃料電池2004」発行日2003年10月7日、発行所:日経BP社
【特許文献1】特開2004−149394号公報
【特許文献2】特開2004−281384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明の目的は、携帯機器用の耐圧性能が低い燃料電池にも対応可能であり、不純物ガスの濃縮による発電効率の低下が生じにくい携帯機器用電池駆動システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明の携帯機器用電池駆動システムは、水素ガスをアノード側に供給して発電を行う燃料電池と、反応液との反応で水素ガスを発生させる水素発生剤により前記燃料電池に水素ガスを供給する水素ガス発生手段と、その水素ガス発生手段に反応液を供給する反応液供給手段と、前記燃料電池への水素ガスの供給量を調節する供給側調節機構と、前記燃料電池のアノード側に設けられて一次側の圧力が一定以上の場合にガスの排出量を増加させる排出側制御機構とを備えることを特徴とする。本発明において、「反応液」とは液体に限られず気相状態で供給されるものも含まれる。
【0015】
本発明の携帯機器用電池駆動システムによると、上記のような供給側調節機構と排出側制御機構とを備えるため、水素ガスの消費量の変動や反応液供給停止後の反応制御遅れ等により、水素ガスが燃料電池へ供給過剰になった場合でも、排出側制御機構によりガスの排出量を増加させることができるため、燃料電池の内部圧力を一定以下に維持することができる。また、排出側制御機構によりガスの排出が行われるため、アノード側に不純物ガスが濃縮されにくく、燃料電池の発電効率の低下が生じにくい。その結果、携帯機器用の耐圧性能が低い燃料電池にも対応可能であり、不純物ガスの濃縮による発電効率の低下が生じにくい携帯機器用電池駆動システムを提供することができる。
【0016】
上記において、前記供給側調節機構は、系内の水素ガスの圧力が設定範囲になるように制御する圧力制御機構を有することが好ましい。このように、系内の水素ガスの圧力が設定範囲になるように制御する圧力制御機構を設けることで、電力の消費量に応じて過不足なく水素ガスが供給可能なため、水素ガスをあまり排出させずに発電を行うことができ、排ガス処理や発電効率の低下の問題をより軽減することができる。
【0017】
また、前記反応液供給手段は、流動調節部を介して前記水素ガス発生手段と連通する貯液部を有し、その貯液部からの反応液の供給を前記流動調節部で調節することで、前記水素ガス発生手段における水素ガスの発生量を調節する供給側調節機構を構成してあることが好ましい。
【0018】
本発明では、上記のように排出側制御機構によって燃料電池の内部圧力を一定以下に維持することができるため、流動調節部により反応液の供給を調節する供給側調節機構を設けて、水素ガスの発生量を調節するだけでも、圧力制御及び反応制御の観点から十分な制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1〜図5は、本発明の携帯機器用電池駆動システムの第1実施形態〜第5実施形態の例を示す概略構成図である。
【0020】
本発明の携帯機器用電池駆動システムは、図1〜図5に示すように、水素ガスの供給により水素ガスをアノード側に供給して発電を行う燃料電池10と、反応液との反応で水素ガスを発生させる水素発生剤21により燃料電池10に水素ガスを供給する水素ガス発生手段20と、水素ガス発生手段20に反応液を供給する反応液供給手段30と、前記燃料電池10への水素ガスの供給量を調節する供給側調節機構ICと、前記燃料電池10のアノード側に設けられて、一次側の圧力が一定以上の場合にガスの排出量を増加させる排出側制御機構OCとを備える。
【0021】
以下、各実施形態を例にとり詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、水素発生剤21が水又は水蒸気との反応で水素ガスを発生させる場合について説明するが、反応液と水素発生剤21の組み合わせとしては、特開2004−281384号公報に記載のものも使用することができる。
【0022】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態では、図1に示すように、反応液供給手段30は水を加熱して水蒸気を発生させる加熱手段31を有すると共に、水素ガス発生手段20の上流側に設けられ、二次側の圧力に応じて流量調節を行う圧力調節手段41によって圧力制御機構40を構成してある例を示す。この圧力制御機構40は、燃料電池10への水素ガスの供給量を調節する供給側調節機構ICとして機能する。
【0023】
即ち、この例では、加熱手段31で水を加熱して水蒸気を発生させることで、圧力調節手段41の一次側に圧力を生じさせ、この圧力差によってガスを流動させることができ、その際、圧力調節手段41が二次側の圧力に応じて流量調節を行うため、系内の水素ガスの圧力が設定範囲になるように制御され、その際、燃料電池10への水素ガスの供給量が調節される。
【0024】
反応液供給手段30は、閉じた空間である貯液部32を有しており、水が貯留されている。貯液部32には、注水口33が設けられており、水の消費量に応じて、水を追加供給することができる。貯液部32には熱伝導性が良好である、金属を用いるのが好ましく、アルミニウムやステンレス、銅などが挙げられる。
【0025】
加熱手段31としては、貯液部32の水を蒸発させられればよく、フィルム状抵抗加熱器、電磁誘導加熱器などが好ましい。これらを使用する場合、発電初期には補助電池からの電力供給を行えばよい。その他、化学反応により発熱する加熱手段31などであってもよい。
【0026】
貯液部32には、繊維集合体や多孔質体を配置して、毛管現象によって所定の部分に水が保持されるようにしてもよく、これにより携帯機器の使用状態(機器の傾斜や振動)が変化しても、加熱手段31によって安定した水蒸気の発生が可能となる。
【0027】
このような反応液供給手段30によって、水分組成が略100%の水蒸気を発生させることができる。反応液供給手段30と水素ガス発生手段20とは配管34で連結されており、発生した水蒸気(GHO)が水素ガス発生手段20に供給される。
【0028】
水素ガス発生手段20は、水分(水又は水蒸気)との反応で水素ガスを発生させる水素発生剤21を反応容器22内に備え、これにより燃料電池10に水素ガスを供給することができる。水素発生剤21の反応が加熱を要する場合、加熱手段23が設けられる。
【0029】
水素発生剤21としては、水分と反応して水素を生成する金属粒子が好ましく、Fe、Al、Mg、Zn、Siなどから選ばれる1種以上の金属の粒子や、これらが部分的に酸化された金属の粒子が挙げられる。また、酸化反応を促進するための金属触媒などを添加することで、より低温で水素ガスを発生させることができる。
【0030】
水素発生剤21は、反応容器22内に金属粒子のまま充填することも可能であるが、金属粒子を結着させた多孔質体を使用することもできる。水素発生剤21は、水蒸気のパス(下流側空間へのリーク)が生じないように、水素発生剤21の充填部が反応容器22の空間を仕切るように配置することも可能である。但し、燃料電池に供給する燃料ガス中に水分を含有させるのが好ましい場合もあり、その場合、反応容器22内にバイパスを設けて、一部の水蒸気を発生した水素ガスと混合するようにするのが好ましい。
【0031】
加熱手段23としては、水素発生剤21と水分の反応に必要な加熱が行えればよく、フィルム状抵抗加熱器、電磁誘導加熱器などが好ましい。これらを使用する場合、発電初期には補助電池からの電力供給を行えばよい。その他、化学反応により発熱する加熱手段23などであってもよい。
【0032】
このような水素ガス発生手段20によって、水素組成が略100%(水分は除く)の水素ガスを発生させることができる。水素ガス発生手段20と燃料電池10とは配管24で連結されており、発生した水素ガス(H)が燃料電池10のアノード側空間11に供給される。
【0033】
本発明における燃料電池10は、水素ガスをアノード側に供給して発電を行うものである。燃料電池10は、一般的に、アノード側空間(又は流路)11、アノード側電極12、電解質膜13、カソード側電極14、カソード側空間(又は流路)15を備える。携帯機器に利用する場合、特に部品数を減らすのが好ましいため、カソード側空間15は、大気開放されて空気中の酸素を自然供給できるようにするのが好ましい。携帯機器に適した燃料電池10の構造や材料等については、後に詳述する。
【0034】
本実施形態では、上記のような燃料電池10、水素ガス発生手段20、及び反応液供給手段30を備える携帯機器用電池駆動システムにおいて、図1に示すように、二次側の圧力に応じて流量調節(開閉を含む)を行う圧力調節手段41を、水素ガス発生手段20の上流側に設け、これによって圧力制御機構40を構成してある。
【0035】
圧力調節手段41としては、一般的な減圧弁と同様な構造をとることができ、例えば、圧力調節ねじで付勢力が調節可能なバネと、そのバネで付勢されつつ逆方向から二次側流路の圧力を受けるダイヤフラムと、ダイヤフラムと連動して二次側の圧力が一定圧以上の場合に閉弁される弁部とを備える構造が挙げられる。このような構造の圧力調節手段41を採用すると、電気的な制御を必要とせずに、簡易な装置で圧力制御機構40を構成することができる。
【0036】
このような圧力制御機構40によると、燃料電池10で消費される水素ガスが減少して、系内の水素ガスの圧力が上昇した場合でも、同時に配管34の圧力調節手段41の二次側の圧力が増加して、圧力調節手段41が流量の減少又は停止を行うことによって、水蒸気の供給量が減少するため、水素ガスの発生量も減少し、その結果、系内の水素ガスの圧力が設定範囲になるように制御することができる。
【0037】
上記において、圧力調節手段41が流量の減少又は停止を行うことで、貯液部32の温度や圧力が上昇し過ぎる場合が生じる。従って、貯液部32の温度や圧力を検出して、貯液部32の温度や圧力が一定以下になるように加熱手段31を制御する制御手段を更に設けることが好ましい。
【0038】
図1に示す例では、圧力調節手段41が、それ自体が二次側の圧力に応じて流量調節を行うものであるが、別途圧力検出器を設けて、そこからの電気信号等に基づいて二次側の圧力に応じて流量調節を行うものでもよい。その場合、圧力検出器は配管24や燃料電池10に設けてもよい。
【0039】
更に本発明では、図1に示すように、排出側制御機構OCが、燃料電池10のカソード側空間(又は流路)15に対して設けられている。この排出側制御機構OCは、一次側の圧力が一定以上の場合にガスの排出量を増加させるものである。排出量を増加させる際、排出なしの状態から排出を行ってもよく、排出量自体を変化させてもよい。本発明では、燃料電池10の単位セルを1個又は複数個使用することができるが、水素ガス供給の最終段となる単位セルの排出口5dに対して、排出側制御機構OCが設けられる。
【0040】
排出側制御機構OCとなる圧力制御弁50としては、一次側の圧力が一定以上の場合にガスの排出量を増加させることができれば何れの形式でもよいが、構造を簡易化する上で、自力式の制御弁が好ましく、外部検出型より内部検出型の方がより好ましい。
【0041】
本実施形態では、図6に示すように、弁座51に弁体52を付勢する付勢手段53と、その付勢手段53の付勢力を調節する調節機構54と、弁座51を有し弁体52を収容する弁座空間55と、その弁座空間55まで連通し弁体52によって封鎖可能な導入流路56と、弁座空間55から外部に連通する排出流路57とを備える圧力制御弁50を用いる例を示す。
【0042】
圧力制御弁50は、弁座空間55を形成する筒状本体58の連結部58aを、アノード側金属板5の排出口5dに挿入して、端部のカシメを行うことで、気密に連結してある。また、筒状本体58のメネジ部58bに調節機構54のオネジ部54aを螺合してあり、螺合量によって付勢手段53であるバネの長さを調節することで、付勢手段53の付勢力を調節することができる。弁体52は、例えば金属板52bとシリコーンゴム52aとの積層体で形成されている。
【0043】
この圧力制御弁50では、導入流路56を封鎖する弁体52に対する水素ガスの圧力が一定以上になると、付勢手段53の付勢力に抗して弁体52と弁座51との間に隙間が生じて、水素ガスが弁座空間55と排出流路56とを経て外部に排出されるため、内部圧を略一定に維持することができる。また、弁体52を付勢する付勢手段53の付勢力を調節する調節機構54を備えるため、内部圧制御の設定値を変化させることができる。
【0044】
この圧力制御弁50によると、最も簡易な構成で圧力制御弁を構成できるため、圧力制御弁を小型化・薄型化でき(例えば直径4mm、高さ5mmも可能)、燃料電池全体の薄型化が容易になる。
【0045】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態では、図2に示すように、反応液供給手段30は、貯液部32と貯液部32の水を輸送する圧送手段36とを有すると共に、水蒸気又は水素ガスの流路に設けた圧力検出手段47と、その圧力検出手段47からの信号に基づいて水素ガスの圧力が設定値範囲になるように前記圧送手段36を制御する制御手段46とによって圧力制御機構40を構成してある例を示す。この場合、水素ガスの流路に設けた圧力検出手段47からの信号に基づいて圧送手段36を制御するため、輸送される水の量の変動によって、系内の水素ガスの圧力が設定範囲になるように制御することができる。
【0046】
図示した例では、水素ガス発生手段20の上流側に、水蒸気発生部37を有している。特に説明のない構成については、第1実施形態と同様である。
【0047】
圧送手段36としては、制御手段46からの操作信号に基づいて、供給量が調節可能(発動・停止を含む)ものであればよく、例えば駆動源を電気モータとするチューブ型のマイクロポンプや、圧電素子を利用したマイクロポンプ、ギヤポンプなどを使用することができる。
【0048】
圧送手段36は、一端が貯液部32に配置され、他端が水蒸気発生部37に接続された配管35に設けられている。
【0049】
水蒸気発生部37は、内蔵型のヒータ38を備えており、供給された水を蒸発させて水蒸気を発生させることができる。これが配管34を経て水素ガス発生手段20に供給される。水蒸気発生部37は、水素発生剤21が低温で水素ガスを発生する場合や、水素ガス発生手段20が十分高温である場合には、省略することも可能である。
【0050】
圧力検出手段47は、ガスの圧力を検出して出力可能なものであればよく、小型化可能なものとしては、圧電素子や差動トランスを利用した圧力センサが好ましい。なお、圧力検出手段47からの信号は、電気信号に限られるものではなく、圧力変動などによる信号でもよい。
【0051】
圧力検出手段47は、水素ガス発生手段20と燃料電池10とを接続する配管24、即ち、水素ガスの流路に設けられているが、水蒸気の流路に設けてもよい。各々の流路は、配管である必要はなく、燃料電池10の内部や水素ガス発生手段20の内部の流路(空間を含む)に圧力検出手段47の検出部を設けてもよい。
【0052】
制御手段46は、圧力検出手段47からの信号に基づいて、水素ガスの圧力が設定値範囲を超える場合には、圧送手段36を停止又は輸送量を減少させ、設定値範囲未満の場合には、圧送手段36を発動又は輸送量を増加させるものである。当該制御は、単純なオンオフ制御でもよいが、より複雑なPID制御を行うように構成してもよい。これらの制御手段46は、何れも当業者に周知慣用の技術手段である。
【0053】
一方、水素発生剤21と反応液との反応をより低温で行うことができる場合、水を蒸発させずに水素ガス発生手段20に供給することができる。その場合、加熱手段38を備えた水蒸気発生部37を省略した構成とする。また、水素発生剤21の加熱手段23を省略することも可能である。
【0054】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態では、図3に示すように、反応液供給手段30は水を加熱して水蒸気を発生させる加熱手段31を有すると共に、水素ガス発生手段20の下流側に設けられ、二次側の圧力に応じて流量調節を行う圧力調節手段41によって圧力制御機構40を構成してある例を示す。本発明の第3実施形態は、圧力調節手段41を設ける位置のみが第1実施形態と相違する。
【0055】
このような圧力制御機構40によると、燃料電池10で消費される水素ガスが減少して、系内の水素ガスの圧力が上昇した場合、圧力調節手段41が流量の減少又は停止を行うことによって、系内の水素ガスの圧力が設定範囲になるように制御することができる。その際、圧力調節手段41の一次側の圧力が上昇するが、貯液部32の水の蒸発量が少なくなるため、過剰な反応液が水素ガス発生手段20に供給されるわけではない。
【0056】
但し、貯液部32の温度や圧力が上昇し過ぎる場合が生じため、貯液部32の温度や圧力を検出して、貯液部32の温度や圧力が一定以下になるように加熱手段31を制御する制御手段を更に設けることが好ましい。
【0057】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態では、図4に示すように、前記反応液供給手段30は、貯液部32と貯液部32の水を負圧によって輸送する配管35とを有すると共に、その配管35に設けられ二次側の圧力に応じて流量調節を行う圧力調節手段41によって圧力制御機構40を構成してある例を示す。水素ガスを自然排出させずに発電を行う燃料電池では、発電によって水素ガスが消費されることで、アノード側が負圧となる。上記の反応液供給手段30によると、この負圧で貯液部32の水を輸送することができ、その際、輸送配管35に設けた圧力調節手段41が二次側の圧力に応じて流量調節を行うため、系内の水素ガスの圧力が設定範囲になるように制御することができる。
【0058】
図示した例では、水素ガス発生手段20の上流側に、水蒸気発生部37を有している。特に説明のない構成については、第1実施形態と同様である。
【0059】
貯液部32の水を負圧によって輸送するには、配管35の一端を水中に配置し、貯液部32の空間が負圧にならないように、大気開放するなどしておけばよい。その際、疎水性の多孔質膜を介して空間と大気とが連通することで、水の漏れを防止しながら、貯液部32の空間を大気圧に維持することができる。
【0060】
水素ガスの供給により、水素ガスを自然排出させずに発電を行う燃料電池10では、水素ガスが消費されると、アノード側空間11が徐々に減圧されて負圧となる。燃料電池10の上流側には、水素ガス発生手段20と水蒸気発生部37とが、配管24と配管34とを介して気密に接続されており、アノード側空間11が負圧になると、配管35により貯液部32の水が水蒸気発生部37に輸送される。水蒸気発生部37を設けない場合には、水素ガス発生手段20に貯液部32の水が輸送される。
【0061】
圧力調節手段41は、第1実施形態と同様の構造の減圧弁等が使用できるが、第4実施形態では、一次側が略大気圧であるため、より簡易な構造の弁類を使用することができる。例えば、圧力調節ねじで付勢力が調節可能なバネと、そのバネで付勢されつつ逆方向から一次側流路の圧力を受け、二次側の圧力が一定圧以下の場合に開弁する弁部とを備える構造が挙げられる。
【0062】
このような圧力制御機構40によると、燃料電池10で消費される水素ガスが増大して、系内の水素ガスの圧力が低下した場合、圧力調節手段41が開弁又は流量の増加を行うことによって、水が水蒸気発生部37に供給され、系内の水素ガスの圧力が設定範囲になるように制御することができる。その際、圧力調節手段41の二次側の圧力が一次的に上昇するが、上昇前の圧力が負圧(1気圧以下)であるため、燃料電池10の内圧の上昇は問題となりにくい。
【0063】
一方、水素発生剤21と反応液との反応をより低温で行うことができる場合、水を蒸発させずに水素ガス発生手段20に供給することができる。その場合、加熱手段39を備えた水蒸気発生部37を省略した構成とする。また、水素発生剤21の加熱手段23を省略することも可能である。
【0064】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態では、図5に示すように、反応液供給手段30が、流動調節部を介して水素ガス発生手段20と連通する貯液部32を有し、その貯液部32からの反応液の供給を前記流動調節部で調節することで、前記水素ガス発生手段20における水素ガスの発生量を調節する供給側調節機構ICを構成してある例を示す。
【0065】
図示した例では、流動調節部が毛管流動部材26とシャッター部材27とで構成されており、反応液供給手段30と水素ガス発生手段20とが一体化されている。特に説明のない構成については、第1実施形態と同様である。
【0066】
反応液供給手段30の内部には、水素ガス発生手段20の反応容器22が内蔵されており、反応容器22の外部に、反応液を貯留するための貯液部32が形成される。反応容器22の内部には水素発生剤21が充填されており、発生した水素はバブリング管28から貯液部32の反応液内にバブリング排出される。反応液が水の場合、バブリングにより水素ガスに水分を供給することができ、燃料電池10の固体電解質13の乾燥を防ぐのに有利になる。
【0067】
バブリング管28の下端は、反応容器22の下端と略同じ高さにするのが好ましく、その場合、貯液部32の反応液の高さが変化しても、反応容器22の内圧と反応液供給手段30の内圧とが略等しいため、毛管流動部材26に対して生じる反応液からの圧力は殆ど変化しない構造となる。
【0068】
従って、毛管流動部材26を反応液が浸透する速度によって、反応液の流入速度を調節することができる。このため、反応容器22の底面に毛管流動部材26を複数設けておき、シャッター部材27によって、一部の毛管流動部材26との接触を遮断することによって、反応液の流入速度を調節することができる。また、毛管流動部材26の空隙サイズや厚みなどを変えることで、個々の毛管流動部材26における反応液の流入速度を調節することができる。
【0069】
その結果、水素ガスの消費量に応じて、一定速度で水素ガスを発生させることができ、これにより、水素ガスの無駄な排出を少なくすることができる。
【0070】
毛管流動部材26としては、紙類、不織布、織布、多孔質膜、フェルト、セラミック等の多孔質体などを使用することができる。シャッター部材27には、Oリングなどのシール材を設けることによって、接触遮断時のシール性をより高めることができる。
【0071】
流動調節部としては、毛管流動部材26を使用する場合に限らず、流路の単純な絞り機構や流量調節弁などでよい。
【0072】
[燃料電池]
次に、本発明の携帯機器用電池駆動システムに好適に使用できる燃料電池10について説明する。図7は、燃料電池の単位セル(燃料電池セル)の一例を示す組み立て斜視図であり、図8は、燃料電池の単位セルの一例を示す縦断面図である。本発明に利用することができる燃料電池は、本実施形態に開示された構造に限定されるものではなく、種々の構造の燃料電池に対して利用可能である。なお、本発明では、単位セルを直列に接続し、かつ水素ガスを直列に供給するのが好ましい。
【0073】
本発明の燃料電池は、図7〜図8に示すように、板状の固体高分子電解質1と、その固体高分子電解質1の一方側に配置されたカソード側電極2と、他方側に配置されたアノード側電極板3とを備えるものである。本実施形態では、アノード側金属板5に、エッチングにより燃料の流路溝9が形成され、アノード側金属板5とカソード側金属板4の周縁部がエッチングにより他の部分より厚みを薄くしてある例を示す。
【0074】
固体高分子電解質1としては、従来の固体高分子膜型電池に用いられるものであれば何れでもよいが、化学的安定性及び導電性の点から、超強酸であるスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなる陽イオン交換膜が好適に用いられる。このような陽イオン交換膜としては、ナフィオン(登録商標)が好適に用いられる。
【0075】
その他、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂からなる多孔質膜に上記ナフィオンや他のイオン伝導性物質を含浸させたものや、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂からなる多孔質膜や不織布に上記ナフィオンや他のイオン伝導性物質を担持させたものでもよい。
【0076】
固体高分子電解質1の厚みは、薄くするほど全体の薄型化に有効であるが、イオン伝導機能、強度、ハンドリング性などを考慮すると、10〜300μmが使用可能であるが、25〜50μmが好ましい。
【0077】
電極板2,3は、ガス拡散層としての機能を発揮して、燃料ガスや、酸化ガス及び水蒸気の供給・排出を行なうと同時に、集電の機能を発揮するものが使用できる。電極板2,3としては、同一又は異なるものが使用でき、その基材には電極触媒作用を有する触媒を担持させることが好ましい。触媒は、固体高分子電解質1と接する内面2b,3bに少なくとも担持させるのが好ましい。
【0078】
電極基材としては、例えば、カーボンペーパー、カーボン繊維不織布などの繊維質カーボン、導電性高分子繊維の集合体などの電導性多孔質材が使用できる。一般に、電極板2,3は、このような電導性多孔質材にフッ素樹脂等の撥水性物質を添加して作製されるものであって、触媒を担持させる場合、白金微粒子などの触媒とフッ素樹脂等の撥水性物質とを混合し、これに溶媒を混合して、ペースト状或いはインク状とした後、これを固体高分子電解質膜と対向すべき電極基材の片面に塗布して形成される。
【0079】
一般に、電極板2,3や固体高分子電解質1は、燃料電池に供給される還元ガスと酸化ガスに応じた設計がなされる。本発明では、酸化ガスとして空気が用いられると共に、還元ガスとして水素ガスを用いるのが好ましい。また、還元ガスの代わりに、メタノールやジメチルエーテル等を用いることもできる。
【0080】
例えば、水素ガスと空気を使用する場合、空気が自然供給される側のカソード側電極2では、酸素と水素イオンの反応が生じて水が生成するため、かかる電極反応に応じた設計をするのが好ましい。特に、低作動温度、高電流密度及び高ガス利用率の運転条件では、特に水が生成する空気極において水蒸気の凝縮による電極多孔体の閉塞(フラッディング)現象が起こりやすい。したがって、長期にわたって燃料電池の安定な特性を得るためには、フラッディング現象が起こらないように電極の撥水性を確保することが有効である。
【0081】
触媒としては、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、銀、ニッケル、鉄、銅、コバルト及びモリブデンから選ばれる少なくとも1種の金属か、又はその酸化物が使用でき、これらの触媒をカーボンブラック等に予め担持させたものも使用できる。
【0082】
電極板2,3の厚みは、薄くするほど全体の薄型化に有効であるが、電極反応、強度、ハンドリング性などを考慮すると、50〜500μmが好ましい。
【0083】
電極板2,3と固体高分子電解質1とは、予め接着、融着等を行って積層一体化しておいてもよいが、単に積層配置されているだけでもよい。このような積層体は、薄膜電極組立体(Membrane Electrode Assembly:MEA)として入手することもでき、これを使用してもよい。
【0084】
カソード側電極板2の表面にはカソード側金属板4が配置され、アノード側電極板3の表面にはアノード側金属板5が配置される。アノード側金属板5には燃料の注入口5c及び排出口5dが設けられ、更に本実施形態では、アノード側金属板5に流路溝9が設けられている。
【0085】
カソード側金属板4には、空気中の酸素を供給するための開口部4cが設けられている。開口部4cは、カソード側電極板2が露出可能であれば、その個数、形状、大きさ、形成位置などは何れでもよい。但し、空気中の酸素の供給効率と、カソード側電極板2からの集電効果などを考慮すると、開口部4cの面積はカソード側電極板2の面積の10〜50%であるのが好ましく、特に20〜40%であるのが好ましい。
【0086】
カソード側金属板4の開口部4cは、例えば規則的又はランダムに複数の円孔やスリット等を設けたり、または金属メッシュによって開口部を設けてもよい。
【0087】
金属板4,5としては、電極反応に悪影響がないものであれば何れの金属も使用でき、例えばステンレス板、ニッケル、銅、銅合金などが挙げられる。但し、伸び、重量、弾性率、強度、耐腐食性、プレス加工性、エッチング加工性などの観点から、ステンレス板、ニッケルなどが好ましい。
【0088】
アノード側金属板5に設けられる流路溝9は、電極板3との接触により水素ガス等の流路が形成できるものであれば何れの平面形状や断面形状でもよい。但し、流路密度、積層時の積層密度、屈曲性などを考慮すると、金属板5の一辺に平行な縦溝9aと垂直な横溝9bを主に形成するのが好ましい。本実施形態では、複数本(図示した例では3本)の縦溝9aが横溝9bに直列接続されるようにして、流路密度と流路長のバランスを取っている。
【0089】
なお、このような金属板5の流路溝9の一部(例えば横溝9b)を電極板3の外面に形成してもよい。電極板3の外面に流路溝を形成する方法としては、加熱プレスや切削などの機械的な方法でもよいが、微細加工を好適に行う上で、レーザ照射によって溝加工を行うことが好ましい。レーザ照射を行う観点からも、電極板2,3の基材としては、繊維質カーボンの集合体が好ましい。
【0090】
金属板5の流路溝9に連通する注入口5c及び排出口5dは、それぞれ1個又は複数を形成することができる。なお、金属板4,5の厚みは、薄くするほど全体の薄型化に有効であるが、強度、伸び、重量、弾性率、ハンドリング性などを考慮すると、0.1〜1mmが好ましい。
【0091】
金属板5に流路溝9を形成する方法としては、加工の精度や容易性から、エッチングが好ましい。エッチングによる流路溝9では、幅0.1〜10mm、深さ0.05〜1mmが好ましい。また、流路溝9の断面形状は、略四角形、略台形、略半円形、V字形などが好ましい。
【0092】
金属板4への開口部4cの形成、金属板4,5の周辺部の薄肉化、金属板5への注入口5c等の形成についても、エッチングを利用するのが好ましい。
【0093】
エッチングは、例えばドライフィルムレジストなどを用いて、金属表面に所定形状のエッチングレジストを形成した後、金属板4,5の種類に応じたエッチング液を用いて行うことが可能である。また、2種以上の金属の積層板を用いて、金属ごとに選択的にエッチングを行うことで、流路溝9の断面形状をより高精度に制御することができる。
【0094】
図8に示す実施形態は、金属板4,5のカシメ部(周辺部)をエッチングにより厚みを薄くした例である。このように、カシメ部をエッチングして適切な厚さにすることで、カシメによる封止をより容易に行うことができる。この観点から、カシメ部の厚みとしては、0.05〜0.3mmが好ましい。
【0095】
本発明では、金属板4,5の周縁は、電気的に絶縁した状態でカシメにより封止されている。電気的な絶縁は、絶縁材料6や固体高分子電解質1の周縁部、又はその両者を介在させることで行うことができる。
【0096】
本発明では、カシメを行う際、図8に示すように、金属板4,5の周縁によって固体高分子電解質1を挟持する構造が好ましく、絶縁材料6を介在させつつ固体高分子電解質1を挟持する構造がより好ましい。このような構造によると、電極板2,3の一方から他方へのガス等の流入を効果的に防止することができる。絶縁材料6の厚みとしては、薄型化の観点から、0.1mm以下が好ましい。なお、絶縁材料をコーティングすることにより、更なる薄型化が可能である(例えば絶縁材料6の厚み1μmも可能)。
【0097】
絶縁材料6としては、シート状の樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマー、セラミックスなどが使用できるが、シール性を高める上で、樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマーなどが好ましく、特にポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、フッ素樹脂、ポリイミドが好ましい。絶縁材料6は、金属板4,5の周縁に直接あるいは粘着剤を介して貼着したり、塗布したりして、予め金属板4,5に一体化しておくことも可能である。
【0098】
カシメ構造としては、シール性や製造の容易性、厚み等の観点から図8に示すものが好ましい。つまり、一方の金属板5の外縁部5aを他方の外縁部4aより大きくしておき、絶縁材料6を介在させつつ、一方の金属板5の外縁部5aを他方の金属板4の外縁部4aを挟圧するように折り返したカシメ構造が好ましい。このカシメ構造では、プレス加工等によって、金属板4の外縁部4aに段差を設けておくのが好ましい。このようなカシメ構造自体は金属加工として公知であり、公知のカシメ装置によって、それを形成することができる。
【0099】
本発明では、図8に示すような単位セルを1個又は複数個使用することができるが、固体高分子電解質1、一対の電極板2,3、及び一対の金属板4,5で単位セルを構成し、この単位セルを複数積層したり、同一面に配列して使用することも可能である。このようにすると、ボルト及びナットの締結部品で相互結合して、セル部品に一定の圧力を加えなくても、高出力の燃料電池を提供することができる。
【0100】
使用の際、金属板5の燃料の注入口5c及び排出口5dには、直接、燃料供給用のパイプを接合することも可能であるが、燃料電池の薄型化を行う上で、厚みが小さく、金属板5の表面に平行なパイプを有するジョイント機構を設けるのが好ましい。図8には、注入口5cにジョイント用の金属製ピン5eが金属板5に対して取り付けられている。この取り付けは、カシメや圧入により行うことができる。このピン5eに対して、パイプ5fを圧入して取り付けることができる。
【0101】
このようなジョイント機構は、直列に接続された単位セルに対し、各々の注入口5c及び排出口5dに設けられるが、最終段の単位セルは、排出口5dに対して、前述した排出側制御機構OCが設けられる。これによって、不純物の濃縮による発電効率の低下を抑制することができる。なお、単位セルには、必要に応じて前記と同様の加熱手段を設けてもよい。
【0102】
図7〜8では、絶縁材料6(絶縁層に相当)を介してカシメを行っているが、固体高分子電解質1の周縁部を延ばし、これを介在させてカシメを行ってもよい。この場合、固体高分子電解質1が絶縁層として機能する。この場合は、絶縁材料を設ける必要がないので、構成を簡素化することができる。
【0103】
前述の実施形態では、エッチングによりアノード側金属板に流路溝を形成する例を示したが、本発明では、プレス加工、切削などの機械的な方法により、アノード側金属板に流路溝を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の携帯機器用電池駆動システムの第1実施形態の例を示す概略構成図
【図2】本発明の携帯機器用電池駆動システムの第2実施形態の例を示す概略構成図
【図3】本発明の携帯機器用電池駆動システムの第3実施形態の例を示す概略構成図
【図4】本発明の携帯機器用電池駆動システムの第4実施形態の例を示す概略構成図
【図5】本発明の携帯機器用電池駆動システムの第5実施形態の例を示す概略構成図
【図6】本発明の携帯機器用電池駆動システムの要部の一例を示す縦断面図
【図7】本発明における燃料電池の単位セルの一例を示す組み立て斜視図
【図8】本発明における燃料電池の単位セルの一例を示す縦断面図
【符号の説明】
【0105】
10 燃料電池
20 水素ガス発生手段
21 水素発生剤
30 反応液供給手段
32 貯液部
35 配管
40 圧力制御機構
41 圧力調節手段
50 圧力制御弁
IC 供給側調節機構
OC 排出側制御機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスをアノード側に供給して発電を行う燃料電池と、反応液との反応で水素ガスを発生させる水素発生剤により前記燃料電池に水素ガスを供給する水素ガス発生手段と、その水素ガス発生手段に反応液を供給する反応液供給手段と、前記燃料電池への水素ガスの供給量を調節する供給側調節機構と、前記燃料電池のアノード側に設けられて一次側の圧力が一定以上の場合にガスの排出量を増加させる排出側制御機構とを備える携帯機器用電池駆動システム。
【請求項2】
前記供給側調節機構は、系内の水素ガスの圧力が設定範囲になるように制御する圧力制御機構を有する請求項1記載の携帯機器用電池駆動システム。
【請求項3】
前記反応液供給手段は、流動調節部を介して前記水素ガス発生手段と連通する貯液部を有し、その貯液部からの反応液の供給を前記流動調節部で調節することで、前記水素ガス発生手段における水素ガスの発生量を調節する供給側調節機構を構成してある請求項1記載の携帯機器用電池駆動システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−222062(P2006−222062A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182978(P2005−182978)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】