説明

携帯端末装置、2基地局同時通信方式、通信処理装置

【課題】GSM方式においてソフトハンドオーバーを可能とする技術が求められていた。
【解決手段】本発明の携帯端末装置は、TDMA方式で無線信号の送信及び受信を行う送受信手段と、複数の基地局装置より送信された無線信号の受信状態に基づいて、接続する第1の基地局装置及び並列接続する第2の基地局装置を選定する基地局選定処理手段と、第1の基地局装置より通知されたスロット構成に基づいて第2の基地局装置との並列接続に使用可能なスロットを選定する空きスロット選定処理手段と、第1の基地局装置及び第2の基地局装置のフレームタイミングの時間差と選定された並列接続に使用可能なスロットとに基づいて、第2の基地局装置より通知されたスロット構成に基づいて第2の基地局装置と並列接続可能かどうかを判定する並列接続可否判定手段と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末装置及び当該携帯端末装置が有する通信処理装置並びに当該携帯端末装置を用いる2基地局同時通信方式に関し、特にGSM(Global System for Mobile Communications)(GSMは登録商標。以下省略)方式で利用できる携帯端末装置、通信処理装置、2基地局同時通信方式に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速なモバイル通信を可能とすべく第4世代移動体通信方式に関する標準化の策定が進められている。高速通信に対する要求が高まる一方で、携帯電話においては、通話が切れにくく、かつ高い通信品質が維持されることが潜在的な要求として存在する。
【0003】
特に高速で移動中に基地局の切り替わりにより通信品質が維持されない場合は、製品としての使い勝手が悪いと判断される可能性もある。従って、ハンドオーバー時において通信品質を維持することは重要な要求事項である。
【0004】
特許文献1には、TDMA方式を採用する移動体通信システムにおいて、ハンドオーバー時の通信品質を維持するハンドオーバー方法が開示されている。図8は、当該ハンドオーバー方法を利用可能な移動体通信システムの構成図である。
【0005】
当該移動体通信システムは、少なくとも1個のセンターMSC(Mobile Services Switching Center)を含む。当該センターMSCは、例えば、電話回路網NETに接続されている。センターMSCは、ベース局のコントローラBSC1(Base Station Controller)〜BSC3と交信するように配置されており、各コントローラBSCは、1個あるいはそれ以上の数のベース局BTS(Base Transceiver Station)を備えている。
【0006】
さらに、各ベース局BTSのセルのゾーン内で、数個の移動局MSが移動している。これら複数の移動局MS相互の間で、もしくは移動局MSと回路網NETとの間で交信が行なわれる。
【0007】
移動局MSは、混信を生ずることなくハンドオーバーを可能とするために、一定の時間間隔で受信の状態、例えば現在使っているベース局BTSの信号の強度や次に使用するべき最寄りベース局の信号強度をモニターし、その結果を現在使用中のベース局BTSに通報する。データは、このベース局から、コントローラBSCへ、さらには必要に応じてセンターMSCに送られる。モニタリングの結果に応じて、今まで使用してきたベース局との交信が取れなくなってきた段階で、センターが、この移動局のための新しいベース局を特定することで、ハンドオーバーの正確なタイミングを決定することができる。
【0008】
図9は、背景技術にかかるハンドオーバーに関する制御フローチャートである。先ず携帯端末は全基地局の受信レベルを計測する(ステップS1021)。携帯端末は受信レベルの高い順に基地局31、32、33・・・とソートする(ステップS1022)。携帯端末は最も受信品質の良い基地局31に対し、基地局31の使用スロットを決定する(ステップS1023)。携帯端末は、決定した使用スロットを用いて基地局11に接続をする(ステップS1024)。次に、携帯端末は基地局32が使用出来るWindow(スロットをとりうる範囲)を基地局32に通知する(ステップS1025)。携帯端末は基地局32と接続する(ステップS1026)。
【0009】
上記の処理フローチャートでは、ベース局BTS1の使用タイムスロットを除外した携帯端末が使用出来るWindow(タイムスロット)を任意に選定し、基地局側は受動的にスロットが決定する。
【0010】
図10に、背景技術にかかるTDMAフレーム構成図を示す。例として基地局31の上り/下りスロットを図10のように下りスロットとしてスロット0、上りスロットとしてスロット3を使用すると仮定した場合、基地局32に割り当てるスロットのとりうるWindowはそれぞれ受信スロット用−Window1(下り)、送信スロット用−Window2(上り)となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平06−169485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
携帯電話の通信規格は第3世代、第3.5世代、第3.9世代、第4世代と進化し続けている。その一方で、幅広い国と地域で使用されている第2世代通信規格であるGSM方式は現在もなおユーザ数が増加しており、サービス利用者が占める割合は携帯電話使用率のおよそ8割にも上る。
【0013】
従って、GSM方式に準拠しつつ、高い通信品質を維持するために通信の瞬間的断絶を防ぎながらハンドオーバーする技術が求められている。
【0014】
一方、上記従来技術は、TDMA方式におけるソフトハンドオーバー方法に関する発明であるが、GSM方式に準拠したソフトハンドオーバー方法ではないため、直ちにGSM方式に適用することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の携帯端末装置は、TDMA方式で無線信号の送信及び受信を行う送受信手段と、複数の基地局装置より送信された無線信号の受信状態に基づいて、接続する第1の基地局装置及び並列接続する第2の基地局装置を選定する基地局選定処理手段と、前記第1の基地局装置より通知されたスロット構成に基づいて前記第2の基地局装置との並列接続に使用可能なスロットを選定する空きスロット選定処理手段と、前記第1の基地局装置及び前記第2の基地局装置のフレームタイミングの時間差と前記選定された並列接続に使用可能なスロットとに基づいて、前記第2の基地局装置より通知されたスロット構成に基づいて前記第2の基地局装置と並列接続可能かどうかを判定する並列接続可否判定手段と、を具備する。当該構成によれば、GSM方式に準拠しつつ、ハンドオーバー時に2つの基地局と同時通信を行うため、瞬間的断絶を防ぐことができ、高い通信品質を維持できる。
【0016】
また、本発明の2基地局同時通信方法は、TDMA方式で無線通信を行う携帯端末装置で用いられる2基地局同時通信方法であって、複数の基地局装置より送信された無線信号の受信状態に基づいて、接続する第1の基地局装置及び並列接続する第2の基地局装置を選定し、前記第1の基地局装置より通知されたスロット構成に基づいて前記第2の基地局装置との並列接続に使用可能なスロットを選定し、前記第1の基地局装置及び前記第2の基地局装置のフレームタイミングの時間差と前記選定された並列接続に使用可能なスロットとに基づいて、前記第2の基地局装置より通知されたスロット構成に基づいて前記第2の基地局装置と並列接続可能かどうかを判定し、前記判定の結果、並列接続可能と判定された場合に接続中の前記第1の基地局装置に加えて前記第2の基地局装置と並列接続を行う。当該構成によれば、GSM方式に準拠しつつ、ハンドオーバー時に2つの基地局と同時通信を行うため、瞬間的断絶を防ぐことができ、高い通信品質を維持できる。
【0017】
また、本発明の通信処理装置は、TDMA方式で無線通信を行う携帯端末装置で用いられる通信処理装置であって、複数の基地局装置より送信された無線信号の受信状態に基づいて、接続する第1の基地局装置及び並列接続する第2の基地局装置を選定する基地局選定処理手段と、前記第1の基地局装置より通知されたスロット構成に基づいて前記第2の基地局装置との並列接続に使用可能なスロットを選定する空きスロット選定処理手段と、
前記第1の基地局装置及び前記第2の基地局装置のフレームタイミングの時間差と前記選定された並列接続に使用可能なスロットとに基づいて、前記第2の基地局装置より通知されたスロット構成に基づいて前記第2の基地局装置と並列接続可能かどうかを判定する並列接続可否判定手段と、を具備する。当該構成によれば、GSM方式に準拠しつつ、ハンドオーバー時に2つの基地局と同時通信を行うため、瞬間的断絶を防ぐことができ、高い通信品質を維持できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、GSM方式においてソフトハンドオーバーを可能とする2基地局同時通信方法及び当該方法を利用できる携帯端末装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態1にかかる移動体通信システムのブロック図である。
【図2】実施の形態1にかかるTDMAフレームの構成図である。
【図3】実施の形態1にかかる携帯端末装置における処理の流れを示したフローチャート図である。
【図4】実施の形態1にかかる空きスロット選定処理の流れを示したフローチャート図である。
【図5】実施の形態1にかかるスロット構成決定処理の流れを示したフローチャート図である。
【図6】実施の形態1にかかるTDMAフレームの構成図である。
【図7】実施の形態1にかかるTDMAフレームの構成図である。
【図8】背景技術にかかる移動体通信システムのブロック図である。
【図9】背景技術にかかるハンドオーバーにおける処理の流れを示したフローチャート図である。
【図10】背景技術にかかるTDMAフレームの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態1に係る移動体通信システムの構成を示すブロック図である。当該システムは、MSCとBSCと基地局と携帯端末とから構成される。
【0021】
MSC101は、通信網に繋がっている携帯端末に関する携帯端末情報を管理し、伝送路の切り替えを行う。BSC201〜203は、基地局301〜30nとMSC101とのデータ中継を行う。基地局301、30nは、携帯端末400と通信を行なう。以下、携帯端末400の具体的構成について詳細に説明する。
【0022】
携帯端末400は、RF部401と、CPU(Central Processing Unit)411と、基地局選定処理部421と、空きスロット選定処理部431と、スロット構成決定処理部441と、から構成される。
【0023】
RF部401は、基地局より送信されるRF信号を受信する。RF部401は、アンテナを介して受信したRF信号にダウンコンバートやA/D変換等の受信処理を行い、処理後の受信信号をCPU411に出力する。また、RF部401は、CPU411より出力された符号化処理及び変調処理が行われた出力信号に対してD/A変換やアップコンバート等の送信処理を行い、処理後のRF信号をアンテナを介して基地局へ送信する。
【0024】
CPU411は、携帯端末400全体の制御を行う中央制御部である。また、CPU411は、RF部401より入力した受信信号に対して復調処理、復号処理を行い、処理後の受信データを後述する基地局選定処理部421、空きスロット選定処理部431、スロット構成決定処理部441に適宜出力する。また、CPU411は、これら各部より入力した送信データに対して適宜符号化処理及び変調処理を行い、処理後の送信信号をRF部401へ出力する。
【0025】
基地局選定処理部421は、各基地局より送信される送信信号の受信レベルを計測し、当該受信レベルに基づいて接続する基地局の選定を行う。基地局選定処理部421は、選定した基地局に関する情報である基地局選定情報を生成してCPU411に出力する。CPU411は、当該基地局選定情報を設定情報とし、基地局選定処理部421で選定された基地局から送信された信号に対して復調処理及び復号処理を行う。
【0026】
また、基地局選定処理部421は、上記選定処理で決定した接続先の基地局に対して接続要求を通知する。当該通知を受け取った基地局により後述するスロット構成情報が本端末400に対して通知され、通知されたスロット構成情報で示されるスロットを用いて当該基地局と本端末400との間で通信が行われる。ここでスロット構成情報とは、基地局が指定するスロット構成に関する情報であり、具体的には、上り用/下り用のスロット番号が当該スロット構成情報に含まれる。
【0027】
さらに、基地局選定処理部421は、基地局より通知されるタイミングアドバンス(以下、TAと称す)を受け取り、当該TAに基づいて当該基地局との通信における送受信タイミングの補正を行う。また、基地局選定処理部421は、当該TAをスロット構成決定処理部441へ出力する。
【0028】
空きスロット選定処理部431は、基地局301から通知されたスロット構成情報を基地局選定処理部421より入力し、当該スロット構成情報に基づいて空きスロットを選定する。当該空きスロットは第2の基地局との並列接続用に使用可能なスロットを示している。空きスロット選定処理部431は、選定した空きスロットに関する情報である空きスロット情報をスロット構成決定処理部441に出力する。具体的には、空きスロット情報は、並列接続用に使用可能なスロットのスロット番号が纏められている。
【0029】
スロット構成決定処理部441は、自端末が第1の基地局と通信中である状態において、第2の基地局と並列接続可能であるかどうかの判定を行う。具体的には、スロット構成決定処理部441は、空きスロット選定処理部431から入力した上記空きスロット情報と、並列接続を試みる第2の基地局から通知されたスロット構成情報と、第1の基地局及び第2の基地局のフレームタイミングの時間差とに基づいて、第2の基地局と並列接続可能であるかどうかの並列接続可否判定処理を行う。スロット構成決定処理部441は、判定した結果を基地局選定処理部421へ通知する。
【0030】
次に、本携帯端末400の処理動作について図3〜図5のフローチャートを用いて説明する。
【0031】
図3は、本発明の携帯端末400における制御フローチャートであり、携帯端末400が並列接続する基地局を決定するための処理の流れを示している。
【0032】
先ず携帯端末400は、全基地局の受信レベルを計測する(ステップS201)。具体的には、基地局選定処理部421は、内部に信号の受信レベルを計測する受信レベル計測部を有しており、当該受信レベル計測部がRF部で受信された各基地局からの送信信号の受信レベルを計測する。
【0033】
基地局選定処理部421は、計測された受信レベルに基づいて、受信レベルの高い順に基地局301〜30m〜30nへとソートする(ステップS202)。ここでは、上記計測の結果、基地局301から送信された送信信号の受信レベルが最も高かったとして説明する。
【0034】
基地局選定処理部421は、ステップS202におけるソート処理において最も受信レベルが高かった基地局301を接続する基地局として選定し、当該基地局のフレームタイミングを取得する(ステップS203)。
【0035】
次に、基地局選定処理部421は、当該基地局301に対して接続要求を通知する。携帯端末400より当該接続要求を受けた基地局301は、携帯端末400に対して上りに使用するスロット番号及び下りに使用するスロット番号(スロット構成情報)を通知する。基地局301より送信された上記スロット構成情報はRF部401における受信処理、CPU411における復調処理・復号処理を経て基地局選定処理部421に入力される(ステップS204)。
【0036】
基地局選定処理部421は、基地局301との同期を確立し、基地局301からのスロット構成情報で示される上り用スロット番号・下り用スロット番号のスロットを用いて基地局301と携帯端末400とを通信接続する(ステップS205)。
【0037】
次に、空きスロット選定ルーチンにより空きスロットが選定される(ステップS206)。具体的には、空きスロット選定処理部431が、所定のルーチンに従って接続中の基地局301とは異なる基地局30mが使用可能な空きスロットの選定をする。
【0038】
図4に、上記空きスロット選定処理部431において行われる空きスロット選定ルーチンに関する制御フローチャートを示す。基地局選定処理部421におけるステップ201〜ステップ205の処理によって最も通信品質のよい第1の基地局301との通信が確立された後、空きスロット選定処理部431は、第2の基地局30mに割り当てることができる空きスロットを決定する。
【0039】
空きスロット選定処理部431は、TDMA方式において1フレームに含まれる計8スロットのうち、基地局301で使用する上り/下りスロットを除外し、空きスロットを算出する。空きスロット選定処理部431は、算出した空きスロットに関する情報を次ステップに渡す(ステップS31)。
【0040】
次に、空きスロット選定処理部431は、前記算出した空きスロットが、第2の基地局である基地局30mに割り当てることが出来る連続した2スロット以上であるかを算出する。空きスロット選定処理部431は、2スロット以上の連続した空きスロットを並列接続用に使用可能なスロットとして選定し、基地局30mが使用可能なスロットに関する情報をスロット構成決定処理部441に出力する(ステップS32)。
【0041】
上記基地局30mが使用可能なスロットについてフレーム構成図を用いて説明する。図2は、本発明の移動体通信システムで動作するTDMAフレーム構成図である。
【0042】
図2で示す構成は、携帯端末400は、ステップS205の段階で最も受信レベルが高い基地局301を基準として同期している。
【0043】
携帯端末400は、基地局30mに関して、基準となる基地局301のタイミングループとは別のタイミングループで接続を管理し、通信を維持する。図2では、基地局301が上りに使用するスロット0、下りに使用するスロット3に対し、基地局30mが上り/下りに使用出来るスロットは1、2、4、5、6、7となる。
【0044】
一方、2基地局間が非同期であるため、基地局301に同期した携帯端末400のフレームタイミングと基地局30mのフレームタイミングとの間に時間差(ズレ)がある。従って、当該時間差を考慮した上で基地局30mが指定するスロットが上記使用できるスロットに含まれるかを判定する必要がある。図2の場合では、基地局30mのフレームタイミングが基地局301のフレームタイミングに対して時間差Y遅れており、1スロットの時間Zとして2Z<Y<3Zの関係を有している。並列接続に使用可能なスロットは2スロット以上の連続した空きスロットであることを考慮し、基地局30mが使用できるスロットのうち、後続のスロットも使用できるスロット1、4、5、6から2を引いたスロット7、2、3、4が基地局30mにとって並列接続可能なスロットとなる。
【0045】
上記空きスロット選定ルーチンにより並列接続用に利用可能なスロットが選定された後、基地局選定処理部421は、並列接続可能な第2の基地局を選別する選別処理を開始する(ステップS207)。具体的には、基地局選定処理部421は、ステップS202で計測した受信レベルに基づいて基地局301の次に受信レベルの高い基地局30mを特定する。なお、ここでは受信レベルの計測の結果、基地局302が基地局301の次に受信レベルの高い基地局であったとして説明する。
【0046】
次に、基地局選定処理部421はステップS207で選定した並列接続用の基地局302のフレームタイミングを取得する(ステップS208)。
【0047】
次に、基地局選定処理部421は、基地局302から上りに使用するスロット番号及び下りに使用するスロット番号(スロット構成情報)を受ける(ステップS209)。基地局302より送信された上記スロット構成情報はRF部401における受信処理、CPU411における復調処理・復号処理を経て基地局選定処理部421に入力される。基地局選定処理部421は、当該基地局302のスロット構成情報をスロット構成決定処理部441へ出力する。また、基地局選定処理部421は、ステップS203及びステップS208でそれぞれ取得した基地局301及び基地局302のフレームタイミングに関する情報をスロット構成決定処理部441に出力する。
【0048】
スロット構成決定処理部441は、基地局選定処理部421より入力した上記情報に基づいて後述するスロット構成決定ルーチンを実施し、基地局302の要求するスロットで並列接続可能か判定する(ステップS210)。
【0049】
基地局選定処理部421は、ステップS210においてスロット構成決定処理部441が行なったスロット構成決定処理の結果を受け取り、当該結果に基づいて基地局302との接続を行うかどうかを判断する(ステップS211)。
【0050】
ステップS211において基地局302に接続すると判断した場合には、基地局選定処理部421は、基地局302と携帯端末400を通信接続し、並列接続開始処理を終了する(ステップS212)。一方、ステップS211において基地局302に接続しないと判断した場合には、基地局選定処理部421は、次の基地局を判定するためmを更新して、ステップS208に戻り処理を繰り返す(ステップS213)。
【0051】
次に、上記ステップS210においてスロット構成決定処理部441が行うスロット構成決定ルーチンについて詳細に説明する。図5は、本発明のスロット構成決定処理部441の制御フローチャートであり、基地局30mの指定するスロットについて携帯端末が並列接続用に使用可能なスロットであるかどうかを判定する。実際の通信時には、スロット構成決定処理部441は、基地局と携帯端末との距離によって生じる時間差及び基地局301−基地局30mのスロットタイミングのズレを考慮した上で基地局30mが要求するスロットで接続可能かの判定を行う。
【0052】
空きスロット構成決定処理部441は、ステップS209で受け取った基地局30mが通知する上り使用スロット、下り使用スロットに関するスロット構成情報を受け取る(ステップS41)。
【0053】
空きスロット構成決定処理部441は、基地局301が通知するタイミングアドバンスであるT1[μsec]と、基地局30mが通知するTAであるTm[μsec]とを受け取る(ステップS42)。ここでTAとは携帯端末から送信された上り信号が基地局に到達するまでの時間を言う。基地局301及び基地局30mはそれぞれ携帯端末400のTAを測定し、携帯端末400にTAを通知する。
【0054】
空きスロット構成決定処理部441は、基地局選定処理部421がステップS203及びステップS208でそれぞれ取得した基地局301及び基地局30mのフレームタイミングに関する情報を入力する。ここで、携帯端末400は基地局301と同期しているため、基地局301のフレームタイミングは携帯端末400のフレームタイミングとなる。空きスロット構成決定処理部441は、上記入力した情報に基づいて携帯端末400のスロット0先頭タイミングから基地局30mのスロット0先頭タイミングの差異(フレームタイミングの時間差)Y[μsec]を算出する。さらに、空きスロット構成決定処理部441は、1スロットの時間Z[μsec]に基づいて、基地局301と基地局30mのスロット間ズレX[μsec]=Y%Zを算出する(ステップS43)。
【0055】
次に、空きスロット構成決定処理部441は、基地局301と基地局30mのスロット間ズレX[μsec]≧(Tm−T1)を判定する(ステップS44)。判定の結果、(X≧Tm−T1)であればステップS46に進み、(X≧Tm−T1)でなければステップS45に進む。
【0056】
ステップS44における判定の結果、(X≧Tm−T1)でなければ、基地局30mに割り当てられるスロットは1スロット分後のスロットが適合するスロットとして換算する(ステップS45)
【0057】
スロット構成決定処理部441は、空きスロット選定処理部431より基地局30mが使用可能なスロットに関する情報を入力し、基地局30mが指定しているスロットで接続可能か判定する(ステップS46)。具体的には、基地局30mが指定しているスロットに上記Tm−T1の時間差のタイミング補正を行った後の補正後スロットが、空きスロット選定処理部431で選定された基地局30mが使用可能なスロットに含まれている場合は、基地局30mと並列接続可能であると判定する。判定の結果、接続可能であればステップS47に進み、接続不可能であればステップS48に進む。
【0058】
ステップS46で接続可能と判定された場合、スロット構成決定処理部441は、構成決定処理の戻り値として基地局30mに接続可能を返却して処理を終了する(ステップS47)。
【0059】
ステップS46で接続不可能と判定された場合、スロット構成決定処理部441は、スロット構成決定処理の戻り値として基地局30mに接続不可能を返却して処理を終了する(ステップS48)。
【0060】
次に、図6は、本発明の移動体通信システムで動作するTDMAフレームの構成図を示す。図6のフレーム構成図は、基地局301および基地局30mのスロット間ズレの関連性について示している。
【0061】
GSM方式において基地局301と基地局30mとの間には同期がとられていないため、基地局301と基地局30mとのスロット間にはズレが存在する。従って、基地局301と同期を確立している携帯端末400において基地局30mに割り当てることが出来る空きスロットは、連続した2スロット以上となる。図6の場合において基地局301は、下りスロットとしてスロット0、上りスロットとしてスロット3を使用しているため、基地局30mがとりうる空きスロットはスロット1、2、4、5、6、7となる。
【0062】
図7は、本発明の携帯システムで動作するTDMAフレーム構成図であり、基地局301および基地局30mのスロット間ズレとTAの関連性を示すものである。図7の基地局301は、下りスロットとしてスロット0、上りスロットとしてスロット3を使用し、基地局30mは、スロット構成情報内において下りスロットとしてスロット0、上りスロットとしてスロット3を指定しているものとする。またスロット間ズレXを300[μsec]とする。
【0063】
図7(a)は、TAを加味しない場合のスロット位置関係を示す図である。基地局30mのとりうるスロットは連続した2スロット以上の開きであるため、フレームタイミングの時間差Yを考慮した上で、スロット0、3、4、5となる。
【0064】
従って、基地局30mが指定するスロット0及びスロット3は共に使用可能であるため、スロット構成決定処理部441、基地局30mは並列接続可能であると判定する。
【0065】
図7(b)は、TAを加味した場合のスロット位置関係を示す図であり、スロット間ズレXを300[μsec]、T1を0[μsec]、Tmを150[μsec]とすると、基地局(X=300)≧((Tm=150)−(T1=0))であるため、図5のステップS44はYESとなり、基地局30mのとりうるスロットは図7(a)同様、スロット0、3、4、5となる。(ステップ44がYESの場合)
【0066】
図7(c)は、異なる状況においてTAを加味した場合のスロット位置関係を示す図であり、スロット間ズレXを300[μsec]、T1を0[μsec]、Tmを400[μsec]とすると、基地局(X=300)≧((Tm=400)−(T1=0))ではないため、図5のステップS44はNOとなり、図7(a)から1スロット後のスロットが適合するスロットとして換算され、基地局30mのとりうるスロットはスロット1、4、5、6となる(ステップS45)。
【0067】
従って、この場合は基地局30mが指定するスロット0及びスロット3は共に使用不可能であるため、スロット構成決定処理部441、基地局30mは並列接続不可能であると判定する。
【0068】
以上説明したとおりに、本発明では基地局選定処理部421と空きスロット選定処理部431とスロット構成決定処理部441とを有することを特徴とする。基地局選定処理部421は、複数の基地局装置より送信された無線信号の受信レベルに基づいて、接続する第1の基地局装置及び並列接続する第2の基地局装置を選定する選定処理を行う。また、空きスロット選定処理部431は、前記第1の基地局装置より通知されたスロット構成に基づいて前記第2の基地局装置との並列接続に使用可能なスロットを選定する。そして、スロット構成決定処理部441は、前記第1の基地局装置及び前記第2の基地局装置のフレームタイミングの時間差と前記選定された並列接続に使用可能なスロットとに基づいて、前記第2の基地局装置より通知された接続用タイムスロットを用いて前記第2の基地局装置と並列接続可能かどうかを判定する。
【0069】
携帯端末装置が、上記構成を有することで基地局301、基地局30mが指定するスロット構成で2基地局間と通信が可能となり、ハードウェア構成を変えることなく、単一RFでソフトハンドオーバーが可能となり、通信品質の劣化を軽減し、かつ通信の瞬間的断絶をなくすことができる。
【0070】
また、上記説明したように、空きスロット選定処理部431は、基地局間のスロットタイミングのズレを考慮し、2スロット以上の連続した空きスロットを前記並列接続に使用可能なスロットとして選定することができる。より具体的には、空きスロット選定処理部431は、フレームに含まれる複数のスロットの中から第1の基地局より通知されたスロット構成で示されるスロット除いた残りのスロットを空きスロットとして算出し、算出した空きスロットの内、連続して2スロット以上の空のあるスロットを並列接続に使用可能なスロットとして選定することができる。
【0071】
また、上記説明したように、スロット構成決定処理部441は、基地局間のタイミングアドバンスの時間差(T2−T1)に基づくタイミング補正を第2の基地局装置のスロットタイミングに対して行う。スロット構成決定処理部441は、タイミング補正後の第2の基地局より通知されたスロット構成が並列接続に使用可能なスロットに含まれるかどうかに基づいて前記判定を行うとなお良好である。
【0072】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、上記図3〜図5で示した各種の処理をプログラムを実行することでソフトウェア的に行えるよう構成しても良い。また、基地局選定処理部、空きスロット選定処理部、スロット構成決定処理部を1つの半導体回路で携帯端末用の通信処理装置として構成しても良い。
【符号の説明】
【0073】
11 移動スイッチングセンター
21−23 基地局コントローラ
31-36 基地局
101 移動スイッチングセンター
201−203 基地局コントローラ
301-30n 基地局
400 携帯端末
401 RF部
421 基地局選定処理部
431 スロット選定処理部
441 スロット構成決定処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TDMA方式で無線信号の送信及び受信を行う送受信手段と、
複数の基地局装置より送信された無線信号の受信状態に基づいて、接続する第1の基地局装置及び並列接続する第2の基地局装置を選定する基地局選定処理手段と、
前記第1の基地局装置より通知されたスロット構成に基づいて前記第2の基地局装置との並列接続に使用可能なスロットを選定する空きスロット選定処理手段と、
前記第1の基地局装置及び前記第2の基地局装置のフレームタイミングの時間差と前記選定された並列接続に使用可能なスロットとに基づいて、前記第2の基地局装置より通知されたスロット構成に基づいて前記第2の基地局装置と並列接続可能かどうかを判定する並列接続可否判定手段と、
を具備する携帯端末装置。
【請求項2】
前記空きスロット選定処理手段は、2スロット以上の連続した空きスロットを前記並列接続に使用可能なスロットとして選定する、
請求項1に記載の携帯端末装置。
【請求項3】
前記並列接続可否判定手段は、前記第1の基地局装置と前記第2の基地局装置のタイミングアドバンスの時間差(T2−T1)に基づくタイミング補正を前記第2の基地局装置のスロットタイミングに対して行い、前記タイミング補正後の前記第2の基地局装置より通知されたスロット構成が前記並列接続に使用可能なスロットに含まれるかどうかに基づいて前記判定を行う、
請求項1又は請求項2に記載の携帯端末装置。
【請求項4】
前記並列接続可否判定手段は、前記第2の基地局装置と並列接続が不可能と判定した場合に、前記第2の基地局装置に対して並列接続が不可能である旨の通知を行い、
前記基地局選定処理手段は、並列接続する第3の基地局装置を前記受信レベルに基づいて選定する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の携帯端末装置。
【請求項5】
TDMA方式で無線通信を行う携帯端末装置で用いられる2基地局同時通信方法であって、
複数の基地局装置より送信された無線信号の受信状態に基づいて、接続する第1の基地局装置及び並列接続する第2の基地局装置を選定し、
前記第1の基地局装置より通知されたスロット構成に基づいて前記第2の基地局装置との並列接続に使用可能なスロットを選定し、
前記第1の基地局装置及び前記第2の基地局装置のフレームタイミングの時間差と前記選定された並列接続に使用可能なスロットとに基づいて、前記第2の基地局装置より通知されたスロット構成に基づいて前記第2の基地局装置と並列接続可能かどうかを判定し、
前記判定の結果、並列接続可能と判定された場合に接続中の前記第1の基地局装置に加えて前記第2の基地局装置と並列接続を行う、
2基地局同時通信方法。
【請求項6】
前記並列接続に使用可能なスロットの選定において、
フレームに含まれる複数のスロットの中から前記第1の基地局装置より通知されたスロット構成で示されるスロット除いた残りのスロットを空きスロットとして算出し、
前記算出した空きスロットの内、連続して2スロット以上の空のあるスロットを並列接続に使用可能なスロットとして選定することを特徴とする、
請求項5に記載の2基地局同時通信方式。
【請求項7】
前記並列接続可能かどうかの判定において、
前記第1の基地局装置と前記第2の基地局装置のタイミングアドバンスの時間差(T2−T1)に基づくタイミング補正を前記第2の基地局装置のスロットタイミングに対して行い、前記タイミング補正後の前記第2の基地局装置より通知されたスロット構成が前記並列接続に使用可能なスロットに含まれるかどうかに基づいて前記判定を行うことを特徴とする、
請求項5又は6に記載の2基地局同時通信方式。
【請求項8】
TDMA方式で無線通信を行う携帯端末装置で用いられる通信処理装置であって、
複数の基地局装置より送信された無線信号の受信状態に基づいて、接続する第1の基地局装置及び並列接続する第2の基地局装置を選定する基地局選定処理手段と、
前記第1の基地局装置より通知されたスロット構成に基づいて前記第2の基地局装置との並列接続に使用可能なスロットを選定する空きスロット選定処理手段と、
前記第1の基地局装置及び前記第2の基地局装置のフレームタイミングの時間差と前記選定された並列接続に使用可能なスロットとに基づいて、前記第2の基地局装置より通知されたスロット構成に基づいて前記第2の基地局装置と並列接続可能かどうかを判定する並列接続可否判定手段と、
を具備する通信処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−222644(P2012−222644A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87253(P2011−87253)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】