説明

携帯端末装置

【課題】二つの筐体がギアを介して安定的に回転移動することが可能な携帯端末装置を提供すること。
【解決手段】平面状の第一の筐体102と、第一の筐体に重ね合わせ可能な平面状の第二の筐体104と、第一の筐体の側面部に固定された第一のギア112と、第二の筐体の側面部に固定された第二のギア114と、第一のギアと第二のギアとの間に設けられ、第一のギアと第二のギアと噛合し回転する第三のギア116と、を備え、第三のギアが回転しつつ、第三のギアと噛合する第一のギアの歯の位相と、第三のギアと噛合する第二のギアの歯の位相を同一に維持して、第一の筐体と第二の筐体は、第三のギアを中心にして回転移動することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、PDA等の携帯端末装置は、画像を表示する表示部やボタンなどの操作部等を備える。そして、携帯端末装置には、携帯時にコンパクトな形状に変形され、使用時に広げられて携帯時より大きな形状で使用されるものがある。例えば、携帯端末装置をコンパクトな形状とするため、携帯端末装置の二つの筐体がスライドしたり、互いを結合するヒンジを中心にして二つの筐体が回転して折り畳まれたりする。
【0003】
特許文献1及び2には、携帯情報端末の二つの筐体がスライドすることで、携帯情報端末を開閉する技術が開示されている。そして、特許文献1及び2の技術では、携帯情報端末の操作面や表示面の拡大を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−59102号公報
【特許文献2】特開2009−60292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図15に示すように、特許文献1及び2のような二つの筐体12,14と、ヒンジ16を有する従来の携帯情報端末は、開閉動作が不安定である。図15は、従来の携帯情報端末の動作を示す説明図であり、携帯情報端末の側面を模式的に示した図である。
【0006】
即ち、図15(A)に示すような二つの筐体12,14が重なり合った状態から、図15(D)に示すような二つの筐体12,14が同一平面に配置された状態に移行するときに、開閉動作が不安定になる。これは、ヒンジ16の二つの軸において、ヒンジ16と二つの筐体12,14のなす角度が一意に決定されないためである。例えば、図15(B)に示すように筐体14とヒンジ16が同一平面になってから、図15(D)に示す状態に移行することもあるし、図15(C)に示すように筐体12とヒンジ16が同一平面になってから、図15(D)に示す状態に移行することもある。従って、特許文献1及び2のような従来の携帯情報端末は、いろいろな動作ができてしまい、不安定であるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、二つの筐体がギアを介して安定的に回転移動することが可能な、新規かつ改良された携帯端末装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、平面状の第一の筐体と、第一の筐体に重ね合わせ可能な平面状の第二の筐体と、第一の筐体の側面部に固定された第一のギアと、第二の筐体の側面部に固定された第二のギアと、第一のギアと第二のギアとの間に設けられ、第一のギアと第二のギアと噛合し回転する第三のギアと、を備え、第三のギアが回転しつつ、第三のギアと噛合する第一のギアの歯の位相と、第三のギアと噛合する第二のギアの歯の位相を同一に維持して、第一の筐体と第二の筐体は、第三のギアを中心にして回転移動する、携帯端末装置が提供される。
【0009】
上記第一のギアは、第一の筐体の互いに対向する両側面部に一つずつ固定され、第二のギアは、第二の筐体の互いに対向する両側面部に一つずつ固定され、第三のギアが第一のギアと第二のギアの間に一つずつ設けられて、第三のギアが回転するとき、二つの第三のギアと噛合する二つの第一のギアの歯の両者の位相、又は二つの第三のギアと噛合する二つの第二のギアの歯の両者の位相が同一であってもよい。
【0010】
上記二つの第三のギアを連結し、第一の筐体と第二の筐体の移動方向に対して垂直方向に設置された連結軸を更に備えてもよい。
【0011】
上記第一の筐体は、画像データに基づいて画像を表示する第一の表示部を有し、第二の筐体は、画像データに基づいて画像を表示する第一の表示部と異なる第二の表示部を有し、第一の筐体と第二の筐体が同一平面上に配置されたとき、第一の表示部と第二の表示部が接触又は近接するように、第一の筐体の端部と第二の筐体の端部が互いに接触する形状を有してもよい。
【0012】
上記第一のギアの側面に、第一の筐体と第二の筐体の移動方向に対して平行に、凹状に形成された第一の溝部と、第二のギアの側面に、第一の筐体と第二の筐体の移動方向に対して平行に、凹状に形成された第二の溝部と、第一の溝部内で摺動する第一の突起部と、第二の溝部内で摺動する第二の突起部とが突出形成されたスライダーとを更に備えてもよい。
【0013】
上記第一の突起部は、対向する二つの面が平面形状であり第一の溝部と接触しながら摺動し、第二の突起部は、対向する二つの面が平面形状であり第二の溝部と接触しながら摺動し、第一の筐体と第二の筐体が重なっているとき、第一の突起部の対向する二つの面と、第二の突起部の対向する二つの面は、第一の筐体及び第二の筐体に対して垂直方向に一列に配置されてもよい。
【0014】
上記第一の溝部の端部に形成され、第一の突起部が内部で回転可能な第一の回転孔と、第二の溝部の端部に形成され、第二の突起部が内部で回転可能な第二の回転孔と、を更に備え、第一の回転孔には、第一の突起部の回転を制止する第一の制止部が形成され、第二の回転孔には、第二の突起部の回転を制止する第二の制止部が形成されてもよい。
【0015】
上記第一の筐体と第二の筐体を電気的に接続する導線を更に備え、導線は、第三のギアの回動によって連結軸の周囲に巻き取ったり、第一の筐体及び第二の筐体に格納したりできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、二つの筐体がギアを介して安定的に回転移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る携帯端末装置100を示す断面図である。
【図2】同実施形態に係る携帯端末装置100を示す断面図である。
【図3】同実施形態に係る携帯端末装置100を示す斜視図である。
【図4】同実施形態に係る携帯端末装置100を示す斜視図である。
【図5】同実施形態に係る携帯端末装置100を示す斜視図である。
【図6】同実施形態に係る携帯端末装置100を示す斜視図である。
【図7】同実施形態に係る携帯端末装置100を示す斜視図である。
【図8】同実施形態に係る携帯端末装置100の下パネル102などを示す斜視図である。
【図9】同実施形態に係る携帯端末装置100の動作を示す説明図である。
【図10】同実施形態に係る携帯端末装置100を示す切断斜視図である。
【図11】同実施形態に係る携帯端末装置100のスライダー120及びガイド部132,134を示す斜視図である。
【図12】同実施形態に係る携帯端末装置100のスライダー120及びガイド部132を示す斜視図である。
【図13】同実施形態に係る携帯端末装置100のスライダー120及びガイド部132,134を示す側面図である。
【図14】同実施形態に係る携帯端末装置100の下パネル102及び上パネル104と、連結軸118と、導線162,164を示す概略図である。
【図15】従来の携帯情報端末の動作を示す説明図である。
【図16】従来の携帯情報端末の動作を示す説明図である。
【図17】従来の携帯端末装置の筐体の構成を示す側面図である。
【図18】本発明の一実施形態に係る携帯端末装置100に対する比較例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.携帯端末装置100の構成
2.携帯端末装置100の動作
3.携帯端末装置100の構成及び動作の詳細
【0020】
<1.携帯端末装置100の構成>
まず、本発明の一実施形態に係る携帯端末装置100の構成について説明する。図1及び図2は、本実施形態に係る携帯端末装置100を示す断面図であり、ラックギア112,114の長手方向に沿って切断した断面図である。図3〜図7は、本実施形態に係る携帯端末装置100を示す斜視図である。図8は、本実施形態に係る携帯端末装置100の下パネル102などを示す斜視図であり、上パネル104など上側の部材を省略した図である。
【0021】
携帯端末装置100は、例えば携帯電話、PDA(personal digital assistant)、ゲーム機器等である。携帯端末装置100は、例えば下パネル102と、上パネル104と、ラックギア112,114と、ピニオンギア116と、スライダー120と、ガイド部132,134と、導線格納部170などからなる。携帯端末装置100の下パネル102と上パネル104は、互いに平行関係を保ちながら移動する。そして、下パネル102と上パネル104は、図3に示す状態で互いに重なり合ったり(以下、「重畳状態」という。)、図7に示す状態で同一平面に配置されたり(以下、「フラット状態」という。)する。
【0022】
下パネル102と、上パネル104は、平面状の筐体である。下パネル102はディスプレイ106を一面側に備え、上パネル104はディスプレイ108を一面側に備える。下パネル102、上パネル104は、CPU、メモリ、ディスプレイ駆動回路等を内蔵する。
【0023】
ディスプレイ106,108は、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等であり、画像データに基づいて画面に画像等を表示する。また、ディスプレイ106,108にはタッチパネルが設けられて、ユーザーによる入力を受け付け、画面に表示された画像に合致した操作信号を生成する。ディスプレイ106は、第一の表示部の一例であり、ディスプレイ108は、第二の表示部の一例である。下パネル102の端部と上パネル104の端部は、下パネル102と上パネル104が同一平面上に配置されたとき、ディスプレイ106とディスプレイ108が接触又は近接するように、互いに接触又は近接する形状を有する。
【0024】
なお、本実施形態では、重畳状態でディスプレイ106,108の画面を上に向けたときに、下側にあるパネルを下パネル102といい、上側にあるパネルを上パネル104という。下パネル102は第一の筐体の一例であり、上パネル104は第二の筐体の一例である。また、本実施形態では、下パネル102と上パネル104共にディスプレイが設けられる場合について示したが、いずれか片方にのみディスプレイが設置されるとしてもよい。
【0025】
ラックギア112は、下パネル102の互いに対向する両側面部に一つずつ固定される。ラックギア114は、上パネル104の互いに対向する両側面部に一つずつ固定される。ここで、下パネル102、上パネル104の両側面部とは、ディスプレイ106,108が設けられた面の両側に位置し、上パネル104がスライドする方向と平行な面をいう。ラックギア112,114は、長手方向が、下パネル102、上パネル104の側面部の長手方向に沿うように固定される。
【0026】
ラックギア112,114の複数の歯は、通常のラックギアと同様に平面部分に設けられた歯(平面部歯)と、平面部歯の一端部に連続した半円部分に設けられた歯(半円部歯)からなる。ラックギア112は、第一のギアの一例であり、ラックギア114は、第二のギアの一例である。
【0027】
ラックギア112,114は、下パネル102及び上パネル104が重畳状態にあるとき、ラックギア112の平面部歯とラックギア114の平面部歯がピニオンギア116を挟んで互いに対向するように設けられる。また、ラックギア112,114は、下パネル102及び上パネル104がフラット状態にあるとき、ラックギア112の半円部歯とラックギア114の半円部歯がピニオンギア116を挟んで対称形になるように設けられる。
【0028】
ピニオンギア116は、円板状の歯車であり、ラックギア112とラックギア114の間に設けられる。ピニオンギア116は、ラックギア112とラックギア114と噛合して、下パネル102と上パネル104が移動するときラックギア112,114上で回転する。ピニオンギア116は、下パネル102と上パネル104の両側面に一つずつ設けられ、二つのピニオンギア116は、中心が連結軸118を介して連結されている。ピニオンギア116は、第三のギアの一例である。
【0029】
連結軸118は、両端部で、ピニオンギア116と連結され、スライダー120によって支持されている。下パネル102及び上パネル104に対して、スライダー120はピニオンギア116より外側に位置する。また、連結軸118は、下パネル102又は上パネル104の移動方向に対して垂直な方向に設けられる。更に、連結軸118は、ピニオンギア116の中心で回転しないようにピニオンギア116と固定されている。これにより、ピニオンギア116が回転することで、後述する導線162,164を連結軸118の周囲に巻き取ることができる。連結軸118は、スライダー120と固定されず、スライダー120内で回転可能である。
【0030】
スライダー120は、下パネル102と上パネル104の両側面部の外側に、互いに対向する位置に一つずつ設置される。二つのスライダー120は連結軸118を介して互いに連結されている。スライダー120は、例えば、下パネル102の下面から上パネル104の上面までの高さを有し、下パネル102又は上パネル104の厚みと同じくらいの幅を有する。スライダー120は、図8に示すように、中心で連結軸118を支持する。スライダー120の一面側には、突起部122,124が設けられ、スライダー120の一面側の中間部には突起部126が設けられる。
【0031】
突起部122,124は、スライダー120の一面の上下に一つずつ設けられる。図11は、本実施形態に係る携帯端末装置100のスライダー120及びガイド部132,134を示す斜視図である。図12は、本実施形態に係る携帯端末装置100のスライダー120及びガイド部132を示す斜視図である。突起部122は、図11及び図12に示すように、ガイド部132のスライド溝136内に挿入され、スライド溝136内で移動する。また、突起部124は、図11に示すように、ガイド部134のスライド溝138内に挿入され、スライド溝138内で移動する。突起部122は、第一の突起部の一例であり、突起部124は、第二の突起部の一例である。
【0032】
突起部122,124は、それぞれスライド溝136,138の上下の内壁に接触する高さであって、回転孔142,144の内壁に接触する幅を有する。また、突起部122,124の外形の一部は、回転孔142,144の内壁に接触するように円形の一部の形状を有する。
【0033】
また、下パネル102及び上パネル104が重畳状態のとき、突起部122と突起部124は、下パネル102、上パネル104のディスプレイ面に対して垂直方向に一列に配置されている。そして、突起部122,124の上面及び下面は、スライド溝136,138の上下の内壁に接触し、平面形状である。これにより、スライド溝136,138の内壁は下パネル102、上パネル104のディスプレイ面と平行であるため、スライダー120が下パネル102と上パネル104に対して垂直を維持できる。
【0034】
更に、スライダー120が回転して下パネル102と上パネル104がフラット状態になるとき、突起部122,124の上面及び下面は、回転孔142,144内に形成された制止壁152,154に当接する。これにより、スライダー120の必要以上の回転を防止できる。
【0035】
突起部126は、スライダー120の中間部分に設けられる。突起部126は、ガイド部132の外壁とガイド部134の外壁の間に挿入され、ガイド部132,134の外壁に接触しながら移動する。突起部126は、ガイド部132の外壁とガイド部134の外壁の間の距離に対応する高さを有する。また、突起部126の上面及び下面は、スライド溝136,138の外壁に接触し、平面形状である。これにより、ガイド部132,134の外壁は下パネル102、上パネル104のディスプレイ面と平行であるため、スライダー120が下パネル102と上パネル104に対して垂直を維持できる。
【0036】
また、突起部122と突起部126がガイド部132を挟み込み、突起部124と突起部126がガイド部134を挟み込むような構成になるため、スライダー120がスライドする際安定的な移動が可能となる。
【0037】
ガイド部132,134は、直線状部材である。ガイド部132は、下パネル102に対して、ラックギア112の外側、かつスライダー120の内側に設けられ、下パネル102の側面部に沿って固定される。ガイド部132は、スライド溝136と回転孔142を有する。同様に、ガイド部134は、上パネル104に対して、ラックギア114の外側、かつスライダー120の内側に設けられ、上パネル104の側面部に沿って固定される。ガイド部134は、スライド溝138と回転孔144を有する。ガイド部132とガイド部134の互いに対向する外壁は下パネル102、上パネル104のディスプレイ面と平行であり、突起部126と接触する。
【0038】
スライド溝136,138は、下パネル102及び上パネル104の移動方向と平行方向に形成された凹部である。スライド溝136は、第一の溝部の一例であり、スライド溝138は、第二の溝部の一例である。スライド溝136,138は、それぞれ下パネル102及び上パネル104が重畳状態にあるときのスライダー120が位置する場所から、回転孔142,144が設けられる位置まで形成される。
【0039】
スライド溝136,138の内壁は下パネル102、上パネル104のディスプレイ面と平行であり、それぞれ突起部122,124と接触する。下パネル102及び上パネル104が重畳状態にあるとき、突起部122,124は、スライド溝136,138の端部と当接する。これにより、スライダー120が必要以上にスライドすることを防止でき、下パネル102と上パネル104が同じ位置で重なるように移動を制止できる。
【0040】
回転孔142は、第一の回転孔の一例であり、スライド溝136の端部に形成される。回転孔144は、第二の回転孔の一例であり、スライド溝138の端部に形成される。回転孔142,144は、下パネル102及び上パネル104がフラット状態に移行するときのスライダー120が位置する場所に形成される。
【0041】
回転孔142,144では、互いに対向する二つの突起部122によって成立する軸と、互いに対向する二つの突起部124によって成立する軸を中心にして、スライダー120が回転可能である。回転孔142,144は、突起部122,124と接触する、おおよそ円形状の開口からなる。回転孔142には、制止壁152,154が形成され、回転孔144には、制止壁156,158が形成される。
【0042】
制止壁152,154は、回転孔142内において、下パネル102のディスプレイ面に対して垂直な平面を有して形成されている。また、制止壁156,158は、回転孔144内において、上パネル104のディスプレイ面に対して垂直な平面を有して形成されている。突起部122が回転孔142を回転し、下パネル102と上パネル104がフラット状態になるとき、突起部122が回転孔142の制止壁152,154に当たる。突起部124が回転孔144を回転し、下パネル102と上パネル104がフラット状態になるとき、突起部124が回転孔144の制止壁156,158に当たる。制止壁152,154は、第一の制止部の一例であり、制止壁156,158は第二の制止部の一例である。
【0043】
導線162,164は、互いに接続され、下パネル102と上パネル104を電気的に接続する。導線162,164は、導線格納部170に格納可能であり、後述するとおり、ピニオンギア116の回転に合わせて、連結軸118の周囲で、巻き取られたり、巻き取りが解除されたりする。
【0044】
導線格納部170は、例えば下パネル102のラックギア112の内側にラックギア112に沿って形成される。同様に、図示しないが、上パネル104側にも、下パネル102及び上パネル104の重畳状態において、下パネル102の導線格納部170と対向する位置に導線格納部が形成される。
【0045】
<2.携帯端末装置100の動作>
次に、本発明の一実施形態に係る携帯端末装置100の動作について説明する。
【0046】
携帯端末装置100は、図3に示すように、下パネル102と上パネル104が重なり合った状態(重畳状態)から、図7に示すように、下パネル102と上パネル104が同一平面に配置された状態(フラット状態)に移行する。また、反対に、携帯端末装置100はフラット状態から重畳状態に移行する。
【0047】
移行過程は、スライド過程と回転過程に分けることができる。スライド過程は、ピニオンギア116がラックギア112,114の平面部歯上を移動し、スライダー120がガイド部132,134を摺動する。回転過程は、スライド過程の後の連続的な動作であり、ピニオンギア116がラックギア112,114の半円部歯上を移動し、下パネル102及び上パネル104が回転孔142,144を中心にして回転する。
【0048】
[2−1.スライド過程]
スライド過程は、図2(A)に示すように下パネル102及び上パネル104の重畳状態から開始する。そして、スライド過程は、下パネル102と上パネル104が平行関係を維持しながら、図2(B)に示す位置を経て、図1(A)に示す位置まで継続する。なお、反対の動作も可能である。
【0049】
スライド過程では、図2(A)、図2(B)及び図1(A)に示すように、ピニオンギア116がラックギア112,114の平面部歯上を移動する。また、図3〜図5や図13(A)及び図13(B)に示すように、スライダー120の突起部122,124が、ガイド部132,134のスライド溝136,138を摺動する。また、突起部126がガイド部132,134の外壁を摺動する。
【0050】
[2−2.回転過程]
回転過程は、下パネル102と上パネル104が平行関係を維持しながら、下パネル102及び上パネル104が図1(A)に示す位置から、図1(B)に示す位置を経て、図1(C)に示すフラット状態まで継続する。なお、反対の動作も可能である。
【0051】
回転過程では、図1(A)〜図1(C)に示すように、ピニオンギア116がラックギア112,114の半円部歯上を移動する。また、図5〜図7や図13(B)及び図13(C)に示すように、突起部122,124が回転孔142,144内で回転し、スライダー120や下パネル102及び上パネル104が、回転孔142,144を中心にして回転する。その結果、ピニオンギア116を中心にして、下パネル102と上パネル104が回転移動する。
【0052】
<3.携帯端末装置100の構成及び動作の詳細>
[3−1.フラット状態への移行について]
特許文献1及び2の携帯情報端末は、図15に示すように、二つの筐体12,14と、ヒンジ16を有する。図15は、従来の携帯情報端末の動作を示す説明図であり、携帯情報端末の側面を模式的に示した図である。図示しないが、ヒンジ16は、ピンを中心に回転し、リング状の円板に形成された複数の半球状の凸部と、対応する別のリング状の円板に形成された複数の凹部によって回転が制御される。
【0053】
図15(A)に示すような二つの筐体12,14が重なり合った状態から、図15(D)に示すような二つの筐体12,14が同一平面に配置された状態に移行するとき、従来の携帯情報端末は、開閉動作が不安定になる。これは、ヒンジ16の二つの軸において、ヒンジ16と二つの筐体12,14のなす角度が一意に決定されないためである。例えば、図15(B)に示すように筐体14とヒンジ16が同一平面になってから、図15(D)に示す状態に移行することもあるし、図15(C)に示すように筐体12とヒンジ16が同一平面になってから、図15(D)に示す状態に移行することもある。従って、特許文献1及び2のような従来の携帯情報端末は、いろいろな動作ができてしまい、不安定であった。
【0054】
一方、本実施形態の携帯端末装置100によれば、下パネル102と上パネル104が重畳状態からフラット状態に移行する過程では、ピニオンギア116がピニオンギア116の軸を中心に回転しながら移動する。このとき、ピニオンギア116と噛合するラックギア112の歯の位相と、ピニオンギア116と噛合するラックギア114の歯の位相が同一に維持されている。その結果、下パネル102と上パネル104がフラット状態に移行する過程では、下パネル102と上パネル104は常に平行関係を保ちながら、下パネル102と上パネル104がピニオンギア116を中心にして回転移動する。
【0055】
即ち、下パネル102とスライダー120がなす角度と、上パネル104とスライダー120がなす角度は、常に同じであり、一意に決定される。そのため、下パネル102と上パネル104がフラット状態に移行する過程において、下パネル102又は上パネル104が自由に動くことなく、安定的な動作をすることができる。
【0056】
[3−2.スライド動作について]
図9は、本実施形態に係る携帯端末装置100の動作を示す説明図であり、携帯端末装置100の平面を模式的に示した図である。携帯端末装置100の下パネル102と上パネル104を連結している二つのスライダー120は、図9(A)に示すように、上パネル104のスライド方向に対して垂直方向の直線上であって、互いに対向する位置に配置されている。また、二つのスライダー120は連結軸118を介して互いに連結されている。そして、携帯端末装置100は、下パネル102、上パネル104の両側面部(左右の側面)に一つずつラックギア112,114と、ピニオンギア116を備えている。
【0057】
図16は、従来の携帯情報端末の動作を示す説明図であり、携帯情報端末の平面を模式的に示した図である。特許文献1及び2の携帯情報端末では、図16に示すように、筐体22と筐体24がヒンジ26,28によって連結されている。しかし、ギアは設置されておらず、また、左右のヒンジ26,28が互いに連結されていない。
【0058】
特許文献1及び2の携帯情報端末は、図16(A)に示すように筐体22と筐体24が重なり合っている状態では、ヒンジ26,28が筐体22と筐体24の対角線上に位置している。従って、筐体22と筐体24が重なり合っている状態では、図16(B)に示すように、筐体24が一点鎖線で示す位置、即ち斜め方向にずれにくい。しかし、筐体24がスライドするにつれて、ヒンジ26,28が進行方向に対して垂直な直線上に並ぶようになり、またギアを有していないため、筐体24は進行方向に対して垂直な方向の力に弱くなる。その結果、図16(C)に示すような、特にスライド完了付近では、筐体24が斜め方向にずれやすくなる。
【0059】
これに対して、本実施形態の携帯端末装置100は、スライド過程の途中、上パネル104に進行方向に対して垂直方向に力がかかったとしても、ラックギア112,114と、ピニオンギア116によって、上パネル104が斜めにずれることはない。例えば、図9(B)に示す位置で上パネル104に進行方向と異なる力がかかったとしても、上パネル104が斜め方向にずれて、図9(B)中のAの位置にずれる可能性がない。
【0060】
また、図9(A)に示す位置から図9(C)に示す位置に移行が完了するまで、ピニオンギア116と噛合するラックギア112及びラックギア114の両側面の位相が、左右で保たれている。従って、ラックギア112,114とピニオンギア116によって、下パネル102と上パネル104は、左右で同じ量だけ動くように制御され、スライド過程における進行方向が直線上に制御される。その結果、上パネル104に進行方向と異なる力がかかったとしても、上パネル104が斜め方向に進行してしまうこともない。
【0061】
[3−3.ディスプレイ106,108の配置]
本実施形態の携帯端末装置100は、下パネル102のディスプレイ106と、上パネル104のディスプレイ108が互いに近接するように配置できる。
【0062】
図17は、従来の携帯端末装置の筐体の構成を示す側面図である。従来の携帯端末装置において、二つの筐体が折り畳み可能な構成を有しているとき、二つの筐体の回転軸側の形状は、筐体が回転できる空間を確保できる形状とする必要がある。そのため、図17(A)に示すように、ヒンジ36で連結されている二つの筐体32,34が回転して折り畳み可能なとき、回転軸側の端部32aと端部34aは、両者が曲面形状を有する。または、図17(B)に示すように、ヒンジ46で連結されている二つの筐体42,44が回転して折り畳み可能なとき、回転軸側の一方の端部44aを平面状にすることができたとしても、他方の端部44aは曲面形状にする必要がある。そのため、二つの筐体に設置されるディスプレイを互いに近接して設置することはできなかった。これは、図15(A)〜図15(D)に示したような動作をする特許文献1及び2の携帯情報端末においても同様である。
【0063】
これに対して、本実施形態の携帯端末装置100によれば、下パネル102と上パネル104がフラット状態に移行する過程で、下パネル102と上パネル104は、回転動作をせずに、常に平行関係を維持している。そのため、図10に示すように、上パネル104の端部104aが下パネル102の端部102aを覆う形状とすることができる。また、下パネル102と上パネル104がフラット状態となったとき、上パネル104の端部104aと近接するように、下パネル102の表面端部102bの形状を決定することができる。その結果、本実施形態の携帯端末装置100は、下パネル102のディスプレイ106と、上パネル104のディスプレイ108が互いに近接するように配置できる。そして、二つのディスプレイ106,108を使用して一つのディスプレイであるような表示をすることも可能となる。図10は、本実施形態に係る携帯端末装置100を示す切断斜視図である。
【0064】
[3−4.スライド過程における下パネル102及び上パネル104とスライダー120の関係]
図13は、本実施形態に係る携帯端末装置100のスライダー120及びガイド部132,134を示す側面図である。本実施形態の携帯端末装置100は、スライド過程において、図13(A)に示すように、下パネル102と上パネル104は、スライダー120に対して垂直な関係を維持している。
【0065】
これに対して、二つの筐体が、スライド過程において、ヒンジに対して垂直な関係を維持できない場合は、筐体が適切に摺動できなくなる。図18は、本発明の一実施形態に係る携帯端末装置100に対する比較例を示す側面図である。例えば、図18(A)に示すように、筐体52,54がスライダー56に対して傾くと、二つの筐体52,54が接近してギアが噛み込んでしまう。または、二つの筐体62,64の間隔が必要以上に開いて、ギアが浮いてしまった結果、図18(B)に示すように、スライダー66が左右異なる位置に移動してしまう。
【0066】
一方、スライダー120に設けられた突起部122,124は、それぞれスライド溝136,138の内壁に接触しながら、かつ下パネル102と上パネル104のスライダー120に対する垂直関係を維持させながら、スライド溝136,138に沿って摺動する。また、スライダー120に設けられた突起部126は、ガイド部132の外壁とガイド部134の外壁に接触しながら、かつ下パネル102と上パネル104のスライダー120に対する垂直関係を維持させながら、ガイド部132,134に沿って摺動する。その結果、スライド過程において、図13(A)に示すように、下パネル102と上パネル104は、スライダー120に対して垂直な関係を維持し、かつスムーズに下パネル102と上パネル104をスライドさせることができる。
【0067】
[3−5.回転過程における下パネル102及び上パネル104とスライダー120の関係]
スライダー120が回転孔142,144を回転する回転過程では、図13(B)及び図13(C)に示すように、突起部122が回転孔142の内壁に沿って回転し、突起部124が回転孔144の内壁に沿って回転する。その結果、ピニオンギア116がラックギア112,114に沿って回転するとき、突起部122,124が回転孔142,144に接触しているため、下パネル102と上パネル104は、重畳状態からフラット状態に安定的に移行できる。
【0068】
また、回転孔142には、下パネル102のディスプレイ面に対して垂直な平面を有する制止壁152,154が形成されている。また、同様に回転孔144には、上パネル104のディスプレイ面に対して垂直な平面を有する制止壁156,158が形成されている。突起部122,124が回転孔142,144を回転し、下パネル102と上パネル104が同一平面内に収まるとき、突起部122,124が回転孔142,144の制止壁152,154,156,158に当たる。その結果、下パネル102と上パネル104のフラット状態を超えて、突起部122,124が回転孔142,144を回転することがなく、ピニオンギア116がフラット状態を超えてラックギア112,114に沿って回転することを防止できる。
【0069】
[3−6.配線方法]
下パネル102と上パネル104は、互いに連結されているものの、それぞれ構造的に独立した筐体である。そのため、互いを電気的に接続するため二つの筐体を結ぶ配線が必要である。
本実施形態の携帯端末装置100では、スライド過程及び回転過程において、ピニオンギア116がラックギア112,114に沿って回転する。そこで、ピニオンギア116の回転を利用して、連結軸118が、図14に示すように、導線162,164をそれぞれ下パネル102、上パネル104に格納するようにしてもよい。図14では示されていないが、導線162、164は互いに接続されているものとする。
【0070】
図14(A)では、下パネル102と上パネル104が重畳状態にあり、導線162,164が連結軸118の周囲に巻き取られる。そして、図14(B)では、下パネル102と上パネル104がスライド過程にあり、重畳状態からフラット状態に移行する場合は、導線162,164の巻き取りが解除されていく。反対に、フラット状態から重畳状態に移行する場合は、導線162,164が巻き取られていく。図14(C)は、下パネル102と上パネル104がフラット状態にあるときの導線162,164の状態を示す。導線162,164は、図4〜図8に示す導線格納部170の位置に格納される。導線格納部170は、上パネル104のスライドに合わせてシャッターが開閉するように構成されてもよく、図14(C)に示す状態では、シャッターが完全に閉じて導線が隠れるようにしてもよい。
【0071】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0072】
100 携帯端末装置
102 下パネル
102a、102b、104a 端部
104 上パネル
106,108 ディスプレイ
112,114 ラックギア
116 ピニオンギア
118 連結軸
120 スライダー
122,124,126 突起部
132,134 ガイド部
136,138 スライド溝
142,144 回転孔
152,154,156,158 制止壁
162,164 導線
170 導線格納部
12,14,22,24,32,34,42,44,52,54,62,64 筐体
16,26,28,36,46 ヒンジ
32a,34a,42a,44a 端部
56,66 スライダー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状の第一の筐体と、
前記第一の筐体に重ね合わせ可能な平面状の第二の筐体と、
前記第一の筐体の側面部に固定された第一のギアと、
前記第二の筐体の側面部に固定された第二のギアと、
前記第一のギアと前記第二のギアとの間に設けられ、前記第一のギアと前記第二のギアと噛合し回転する第三のギアと、
を備え、
前記第三のギアが回転しつつ、前記第三のギアと噛合する前記第一のギアの歯の位相と、前記第三のギアと噛合する前記第二のギアの歯の位相を同一に維持して、前記第一の筐体と前記第二の筐体は、前記第三のギアを中心にして回転移動する、携帯端末装置。
【請求項2】
前記第一のギアは、前記第一の筐体の互いに対向する両側面部に一つずつ固定され、
前記第二のギアは、前記第二の筐体の互いに対向する両側面部に一つずつ固定され、
前記第三のギアが前記第一のギアと前記第二のギアの間に一つずつ設けられて、
前記第三のギアが回転するとき、前記二つの第三のギアと噛合する前記二つの第一のギアの歯の両者の位相、又は前記二つの第三のギアと噛合する前記二つの第二のギアの歯の両者の位相が同一である、請求項1に記載の携帯端末装置。
【請求項3】
前記二つの第三のギアを連結し、前記第一の筐体と前記第二の筐体の移動方向に対して垂直方向に設置された連結軸を更に備える、請求項1又は2に記載の携帯端末装置。
【請求項4】
前記第一の筐体は、画像データに基づいて画像を表示する第一の表示部を有し、
前記第二の筐体は、画像データに基づいて画像を表示する前記第一の表示部と異なる第二の表示部を有し、
前記第一の筐体と前記第二の筐体が同一平面上に配置されたとき、前記第一の表示部と前記第二の表示部が接触又は近接するように、前記第一の筐体の端部と前記第二の筐体の端部が互いに接触する形状を有する、請求項1に記載の携帯端末装置。
【請求項5】
前記第一のギアの側面に、前記第一の筐体と前記第二の筐体の移動方向に対して平行に、凹状に形成された第一の溝部と、
前記第二のギアの側面に、前記第一の筐体と前記第二の筐体の移動方向に対して平行に、凹状に形成された第二の溝部と、
前記第一の溝部内で摺動する第一の突起部と、前記第二の溝部内で摺動する第二の突起部とが突出形成されたスライダーと
を更に備える、請求項1に記載の携帯端末装置。
【請求項6】
前記第一の突起部は、対向する二つの面が平面形状であり前記第一の溝部と接触しながら摺動し、
前記第二の突起部は、対向する二つの面が平面形状であり前記第二の溝部と接触しながら摺動し、
前記第一の筐体と前記第二の筐体が重なっているとき、前記第一の突起部の対向する二つの面と、前記第二の突起部の対向する二つの面は、前記第一の筐体及び前記第二の筐体に対して垂直方向に一列に配置されている、請求項5に記載の携帯端末装置。
【請求項7】
前記第一の溝部の端部に形成され、前記第一の突起部が内部で回転可能な第一の回転孔と、
前記第二の溝部の端部に形成され、前記第二の突起部が内部で回転可能な第二の回転孔と、
を更に備え、
前記第一の回転孔には、前記第一の突起部の回転を制止する第一の制止部が形成され、
前記第二の回転孔には、前記第二の突起部の回転を制止する第二の制止部が形成された、請求項6に記載の携帯端末装置。
【請求項8】
前記第一の筐体と前記第二の筐体を電気的に接続する導線を更に備え、
前記導線は、前記第三のギアの回動によって前記連結軸の周囲に巻き取ったり、前記第一の筐体及び前記第二の筐体に格納したりできる、請求項3に記載の携帯端末装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−58593(P2011−58593A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210986(P2009−210986)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】