説明

携帯端末

【課題】 外観を構成する複数の面に表示装置を必要とする携帯端末を、小型、低コスト、高信頼性を有するものとすること。
【解決手段】 情報表示を行う表示部に有機EL表示装置を用いた携帯端末であって、有機EL表示装置は、フィルム基板上に有機EL素子が形成され、単一の有機EL表示装置を携帯端末の外観を構成する面のうち、少なくとも隣り合う2つの面に跨って配置した携帯端末とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等の携帯端末に関し、詳しくは画像や文字等の表示用に有機EL表示装置を用いた携帯端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より小型で薄型の撮像装置が、携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistant)等の小型、薄型の電子機器である携帯端末に搭載されるようになり、これにより遠隔地へ音声情報だけでなく画像情報も相互に伝送することが可能となっている。
【0003】
これら携帯端末には、情報を表示する表示部を備えたものが一般的である。近年、この表示部に、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と称す)で構成された表示装置(以下、有機EL表示装置と称す)を使用したものがある。有機EL素子は、薄膜の有機化合物の発光層を電極で挟持し、この電極間に通電すると発光する性質を有するものである。この有機EL素子を平面上に多数個配置して有機EL表示装置を構成し、選択的に発光させることにより図形、キャラクタ等の表示がおこなわれている。この有機EL表示装置は、自発光素子であるため、反射型LCDのフロントライト、透過型LCDのバックライトに相当する照明用光源を不要とできる利点がある。
【0004】
また、携帯電話機やPDA等の携帯端末では、携帯性を向上させるため、折り畳み可能としたものが多数を占めている。このようなものに対し、折り畳んだ時も露呈している面と開いたときに露呈する面とに、それぞれにLCD、DMD、PDP或いは有機EL表示装置等の表示装置を配置し、折り畳まれた場合には、露呈する面に配置された表示装置が表示を行うようになっている携帯電話機が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−300237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように有機EL表示装置は、LCDでの表示に用いられるバックライトもしくはフロントライトが不要なため、携帯端末をより薄型化することを可能とするものである。
【0006】
しかし、上述の特許文献1に記載のような表示装置構成では、複数の表示装置をそれぞれの面に対して配置するため、表示部及びこれら表示部を個々に接続するコネクタ等を複数必要とし、部品点数の増加によるスペース増、コスト増に加え信頼性を低下させる要因となる問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑み、外観を構成する複数の面に表示装置を必要とする携帯端末を、小型、低コスト、高信頼性を有するものとすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、以下の構成で解決される。
【0009】
請求項1に係わる発明は、情報表示を行う表示部に有機EL表示装置を用いた携帯端末であって、前記有機EL表示装置は、フィルム基板上に有機EL素子が形成され、単一の前記有機EL表示装置を前記携帯端末の外観を構成する面のうち、少なくとも隣り合う2つの面に跨って配置したことを特徴とする携帯端末、である。
【0010】
請求項2に係わる発明は、前記携帯端末は被写体画像を撮影する撮像部を有し、前記撮像部を使用した撮影時に、前記有機EL表示装置の一部を照明用光源として用いることを特徴とする請求項1に記載の携帯端末、である。
【0011】
請求項3に係わる発明は、前記有機EL表示装置の一部を、前記携帯端末への着信表示として用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯端末、である。
【0012】
請求項4に係わる発明は、前記有機EL表示装置は、前記携帯端末の外表面に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の携帯端末、である。
【0013】
請求項5に係わる発明は、前記有機EL表示装置は、前記携帯端末の外観を構成する筐体の内側に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の携帯端末、である。
【0014】
即ち、本発明者は、可撓性を有する有機EL表示装置を用いることにより、単一の表示装置のみで、携帯端末の外観を構成する複数の面での表示を可能とできることに着目し、本発明に至ったものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、フィルム状の単一の有機EL表示装置を、携帯端末の外観を構成する面のうち、少なくとも隣り合う2つの面に跨って配置することにより、表示部及びこれら表示部を個々に接続するコネクタ数を最少とし、低コストでありながら信頼性が向上すると共に、省スペースによる小型薄型化をも可能とした携帯端末を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、実施の形態により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0017】
図1は、本発明に係る携帯端末の一例である携帯電話機Tの外観図である。
【0018】
同図に示す携帯電話機Tは、ケースとしての上筐体1と、操作ボタンPを備えた下筐体2とがヒンジ3を介して連結されている。撮像部である撮像装置S(以下、カメラモジュールと称する場合もある)は、上筐体1内に内蔵されており、撮像装置Sが上筐体1の外表面側から光を取り込めるよう配置されている。
【0019】
また上筐体1は情報を表示する表示部を備えており、この表示部は、操作ボタンP側の表示面D1、側面の表示面D2及び撮像装置S側の表示面D3で構成されている。後述するが、本例では外観を構成する面の3つの面に跨って配置された、表示面D1、D2及びD3は、単一の有機EL表示装置を湾曲させて配置したものである。
【0020】
この表示面D1は図示のように携帯端末が開かれた状態のとき、各種情報表示をおこない、表示面D2及びD3は少なくとも携帯端末が折りたたまれた状態のとき、情報表示をおこなうようになっている。
【0021】
上筐体1の表示面D1の下方には、円弧状の開口部4とこの開口部4から操作部材5が露出するよう配置されている。この操作部材5を開口部4内で図示上方へ移動させることによりマクロ撮影時のピント位置に設定される。
【0022】
なお、この撮像装置の位置は上筐体1内の表示面D3の上方や側方、その他に配置してもよい、また携帯電話機は折りたたみ式に限るものではないのは、勿論である。
【0023】
図2は、図1に示す携帯端末の内部構成例を示す概略ブロック図である。以下の図においては、説明の重複を避けるため、同機能部材には同符号を付与して説明する。
【0024】
同図において、携帯電話機Tはアンテナ11と、無線部12と、信号処理部13と、制御部14と、音声合成処理部15と、スピーカ16と、音声合成処理部17と、マイク18と、表示制御部19と、表示面D1、D2、D3を有する表示部である有機EL表示装置20と、画像記録用メモリ21と、ROM22と、撮像部であるカメラモジュールSと、操作部Pと、から構成されている。
【0025】
無線部12は、図示せぬ基地局との間で授受される携帯電話無線信号を変復調する。信号処理部13は、無線部12で復調された信号を受信制御信号と音声信号に分離し、制御部14へ受信制御信号を出力したり、制御部14からの送信信号の処理をおこなう。また、制御部14は、ROM22に格納された携帯電話T全体の制御プログラムデータ(コンピュータで実行可能なプログラム)により携帯電話機Tの各部の動作を制御するものである。
【0026】
音声合成処理部15は、制御部14からの音声信号を合成し、スピーカ16から音声として出力する。音声合成処理部17は、マイク18から入力される音声を音声信号に変換、制御部14へ出力するものである。操作部Pは、キーパネル等で操作命令信号を制御部14へ出力する。
【0027】
撮像部Sは、レンズ群及び撮像素子とその周辺回路で構成され、撮像素子により光電変換された撮像信号をA/D変換して画素データとし、制御部14へ出力する。制御部14は、このA/D変換後の画素データに所定の画像処理及び圧縮処理を施し画像データとし、記録部である画像記録用メモリ21に格納する。この画像記録用メモリ21は、携帯電話機Tに内蔵固定されたフラッシュメモリでもよいし、挿脱可能なリムーバブルメモリで構成してもよい。
【0028】
表示制御部19は、制御部14からの表示信号を表示部である有機EL表示装置20で表示可能な信号に変換して表示面D1、D2、D3の少なくとも1つの表示面に相当する部分に出力し、表示をおこなうようになっている。
【0029】
図3は、本発明に係る携帯端末の表示部を含む断面を示す模式図である。同図は、図1に示す携帯端末TをF−F線で切断した断面を示している。
【0030】
同図に示すように、上筐体1は、遮光性の材料で形成された外観部材1Aと透光性の材料で形成された外観部材1B、1Cで構成され、この外観部材1B、1Cの内側に、表示部である有機EL表示装置20が配置されている。この有機EL表示装置20は、図示のように、外観部材1B、1Cの内側の面に沿って、単一の有機EL表示装置が湾曲して配置され、表示面D1、D2、D3を形成している。この表示部20はヒートシール31及びコネクタを介してプリント基板32上の表示制御部19(図2参照)と電気的に接続されている。なお、この接続はフレキシブルプリント基板等を用いてもよい。表示制御部19からの、画像信号に基づいた信号、詳しくは走査信号とデータ信号により発光制御をおこない、表示面D1〜D3に選択的に画像やキャラクタを表示させることができる。
【0031】
このように、携帯端末の外観を構成する筐体の内側に配置することで、有機EL表示装置を、外的な衝撃等から保護することができる。
【0032】
以下に、有機EL表示装置について簡単に説明する。
【0033】
図4は、有機EL表示装置の断面構造を示す模式図である。有機EL表示装置は、ボトムエミッションタイプとトップエミッションタイプに大別されるが、本発明への適用は、トップエミッションタイプがより好ましく、このトップエミッションタイプについて簡単に説明する。
【0034】
同図(a)に示すように、有機EL表示装置は、透光性の基板44に、陰極層43、有機層42、陽極層41を積層したものである。
【0035】
陽極層41は、例えばインジウムチンオキサイド(ITO)、インジウムジンクオキサイド(IZO)、金、酸化スズ、酸化亜鉛等の仕事関数が4eV(電子ボルト)以上で、透過率が40%以上の導電材料による透明電極が形成された層である。
【0036】
有機層42は、発光層を含む有機化合物または錯体の単層または複数層、例えば陽極層41と接する正孔輸送層、発光材料で形成された発光層、陰極層43と接する電子輸送層等からなるものである。また、フッ化リチウム層や無機金属塩の層或いはそれらを含有する層等が、任意の位置に形成されていてもよい。発光層は少なくとも一種の発光材からなるもので、蛍光発光性化合物又は燐光発光性化合物等が用いられる。
【0037】
陰極層43は、例えばアルミニウム、ナトリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、銀等の仕事関数が4eV(電子ボルト)未満で、反射率が60%以上の金属材料からなる反射電極が形成された層である。
【0038】
基板44は、基材として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネイト(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等のフレキシブルなフィルム状の基材が本発明においては用いられる。
【0039】
基板44を、これらフレキシブルなフィルム状の基材で形成することにより、同図(b)に示すように表示面を湾曲させて配置することができ、図示のように種々の方向に発光表示を行うことが可能となる。
【0040】
なお、有機EL表示装置を構成する有機化合物は、水分や大気中の酸素により劣化するため、封止して外部雰囲気から遮断して使用される。この封止部材等は図4では省略してある。
【0041】
なお、この封止部材としては、基板44及び陽極層側には透湿防止層(ガスバリア層)を設けることができる。この透湿防止層は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。また、基板には、更に必要に応じてハードコート層、アンダーコート層などを設けても良い。
【0042】
次に、フィルム状の基材を用いた有機EL表示装置の製造法の一例を簡単に説明する。
【0043】
まず、フィルム基材の裏面に無機物である窒化珪素を高周波スパッタリング法で形成して100nm厚の透湿防止層(ガスバリア層)を得る。次いで、真空蒸着法でフィルム基材の表面にマスキングを通して配線パターンが形成されるようアルミニウム100nm厚の陰極を作成し、その後、フッ化リチウム0.5nm厚のバッファ層を作成する。
【0044】
この後、真空蒸着機より取り出し、陰極、バッファ層上にポリビニルカルバゾール(PVK)30mgとPLー14を1.8mgとをジクロロベンゼン1mlに溶解した塗布液を、スピンコート法により1000rpm、5秒の条件下で塗布した後、60度で1時間真空乾燥し、100nm厚の発光層を形成する。この発光層上にITOを高周波スパッタ法で形成し、100nm厚の透明電極を形成する。以上のようにして、フィルム状の基材を用いた有機EL表示装置を作成することができる。
【0045】
図5は、有機EL表示装置を構成する有機EL素子の1画素を抜き出した等価的回路図である。同図において、50は有機EL素子、51はスイッチングトランジスタ、52は駆動トランジスタ、53はコンデンサ、55は走査線、56はデータ線、57は電源線である。
【0046】
同図に示すように、データ線56を介しスイッチングトランジスタ51のドレインに電圧が印加され、走査線55を介してスイッチングトランジスタ51のゲートに電圧が印加されるとスイッチングトランジスタ51がオンし、コンデンサ53に電荷が蓄積されると共に、駆動トランジスタ52のゲートに電圧が印加される。これにより駆動トランジスタ52がオンされ、データ線の電位に応じて、電源線57から有機EL素子50へ通電され発光することになる。この後、走査線の電圧印加が断たれても、コンデンサ53に充電した電荷により、所定の時間は駆動トランジスタ52はオンされ続け、有機EL素子50は発光し続けるようになっている。
【0047】
以上が、有機EL素子の1画素を発光させるシーケンスである。情報表示する表示部は、このような有機EL素子を2次元的に複数配置し、個々の有機EL素子に上述のようなデータ線と走査線の電圧印加制御を順次おこなうことで、画像やキャラクタの表示を可能としている。なお本例はアクティブマトリクス方式で説明したが、本発明においてはパッシブマトリクス方式であっても適用可能である。
【0048】
また、発光量即ち輝度の制御は、このデータ線56を制御することでおこなわれ、例えば高輝度で発光させようとする場合には、コンデンサ53への充電を充分におこない、コンデンサ53の両端の電圧を増加させ、有機EL素子に供給される電流量が増加するようデータ線56を制御することで発光量を増加させるようになっている。
【0049】
なお、電源線の電圧を可変として、有機EL素子に供給される電流量が増加するように構成してもよい。
【0050】
以上のような有機EL素子を2次元的に配置した表示装置を用い、通常の表示をおこなうときは、R、G、Bの3色でカラー画像やキャラクタによる情報表示をおこない、撮像部を使用しての被写体撮影に際しては、色度図の例えばCIE1931色度座標のx値を0.2〜0.45、y値を0.2〜0.42の範囲内、即ち、白色となるよう3色の発光量を制御しつつ、発光量を上げて照明用光源として使用するようになっている。以下、白色で、発光量を上げて照明用光源として使用する場合を、照明モードと称して説明する。
【0051】
以下に、上述のような単一の有機EL表示装置で表示面D1〜D3が構成された携帯端末の、撮像部を使用して撮影をおこなう際の動作概略について説明する。
【0052】
図6は、携帯端末の種々の機能のうち、撮像部を使用した撮影モードに設定したときの動作概略の例を示すフローチャートである。
【0053】
同図に示すフローチャートにおいて、まず撮影モードにセットされたかどうか判断(ステップS101)し、撮影モードにセットされたと判断した場合(ステップS101;Yes)には、撮像素子をONし、撮像部(カメラモジュール)と反対側の面の表示面D1に、撮像部で撮像しつつある被写体画像、即ちプレビュー画像を表示する(ステップS102)。
【0054】
次いで、プレビュー画像取得に際しての撮像素子の蓄積時間とゲインの関係から、被写体輝度が所定の輝度値以下かどうか判断する(ステップS103)。被写体輝度が所定の輝度値以下の場合(ステップS103;Yes)、撮像部側の表示面D3の一部又は全部を、小光量の照明モードで駆動して、発光させる(ステップS104)。この小光量の照明モード時の発光輝度としては、500cd/m2程度とするのが好ましい。
【0055】
図7は、図1に示した携帯電話機Tのプレビュー画像表示と照明モードで発光する表示面の例を示した模式図である。同図左側に示したように、ステップS102におけるプレビュー画像表示は、撮像部Sと反対側の面の表示面D1に、撮像部で撮像しつつある被写体画像を表示する。また同図右側に示したように、撮像部S側の表示面D3のハッチング部を、小光量の照明モードで駆動して、発光させ照明として使用する。
【0056】
図6に戻り、被写体輝度が所定の輝度値を越える場合(ステップS103;Yes)は、ステップS104をジャンプする。
【0057】
この後、再度、撮影モードかどうか判断(ステップS105)し、撮影モードが解除(ステップS105;No)されていればステップS101へ戻り、撮影モードであれば(ステップS105;Yes)、レリーズ機能を付与された釦(例えば、図1に示す操作ボタンPのいずれかでよい)がONされるのを待機する(ステップS106)。レリーズ機能を付与された釦がONされると(ステップS106;Yes)、再度プレビュー画像取得に際しての撮像素子の蓄積時間とゲインの関係から、被写体輝度が所定の輝度値以下かどうか判断する(ステップS107)。
【0058】
被写体輝度が所定の輝度値以下の場合(ステップS107;Yes)は、撮像部側の面に配置された表示面D3のハッチング部を、大光量の照明モードで駆動して、発光させ、露光時間を決定する(ステップS108)。この大光量の照明モード時の発光輝度としては、1000cd/m2以上とするのが好ましい。また、照明モードの小光量と大光量の切り替えは、表示面D3の発光面積の変更により行ってもよい。
【0059】
この後、撮像素子の電荷をクリアし、撮影のための電荷蓄積を開始する(ステップS109)。ステップS108で決められた露光時間(電荷蓄積時間)となると、電荷蓄積を停止(ステップS110)し、撮像部側の面の表示面D3の照明モード駆動を停止させる(ステップS111)。
【0060】
一方、ステップS107で、被写体輝度が所定の輝度値を越える場合(ステップS107;No)は、プレビュー時の撮像素子の蓄積時間とゲインの関係から撮影時の露光時間(電荷蓄積時間)を決め(ステップS112)、撮像素子の電荷をクリアした後、撮影のための電荷蓄積を開始する(ステップS113)。ステップS112で決められた露光時間(電荷蓄積時間)となると、電荷蓄積を停止(ステップS114)させる。
【0061】
即ち、被写体輝度が所定の輝度値以下の場合は、撮像部側の面の表示面D3を、照明用光源として照明モードで駆動して、発光させて撮影に供し、被写体輝度が所定の輝度値を越える場合は、周囲光による定常光撮影をおこなうものである。
【0062】
この後、撮像素子に蓄積された電荷を読み出し(ステップS120)、A/D変換後の画素データに所定の画像処理を施して画像データとした後、圧縮処理をおこなう(ステップS121)。次いで、この圧縮された画像データを画像記録用メモリ(図2参照)に格納する。
【0063】
以上で一枚の画像の撮影が終了し、ステップS101へ戻る。ステップS101で撮影モードが解除されたと判断(ステップS101;No)すると撮影モードの終了処理をおこない(ステップS130)、他のモードへ移行する。
【0064】
このように、単一の有機EL表示装置のみで、撮像部の開口部側の面の表示面をプレビュー表示として駆動し、撮像部と反対側の面の表示面を照明用光源として用いることで、複数の表示装置や駆動回路を必要とせず、小型薄型の形状を保ったまま、低輝度下での撮影が可能な携帯端末を得ることができる。なお、本例では静止画撮影で説明したが、動画撮影時にも適用可能である。
【0065】
図8は、本発明に係る携帯端末の有機EL表示装置を用いた着信表示の一例を示した図である。同図に示すように、着信表示時には、表示面D3側と側面の表示面D2側のハッチング部を、例えば点滅等で着信を表示する。このように、単一の有機EL表示装置のみで、複数の面に跨って表示を行うことで、鞄内等で他の物に挟まれて持ち歩かれている場合にも、視認性が向上し着信を認識させやすくすることができる。
【0066】
図9は、本発明に係る携帯端末の表示部を含む断面のその他の例を示す模式図である。同図は、有機EL表示装置を携帯端末の筐体の外側表面に配置した例を示しており、図1に示す携帯端末TをF−F線で切断した断面を示している。
【0067】
同図に示すように、上筐体1の外側に外観部材として有機EL表示装置である表示部20が配置されている。この表示部20は、図示のように、上筐体1の外側の面に沿って、単一の有機EL表示装置が湾曲して、接着剤或いは粘着テープ等で固着され、表示面D1、D2、D3を形成している。この表示部20はヒートシール31及びコネクタを介してプリント基板32上の表示制御部19(図2参照)と電気的に接続されている。なお、この接続はフレキシブルプリント基板等を用いてもよい。
【0068】
このように、有機EL表示装置で外観を形成し、この外観を構成する面のうち、少なくとも隣り合う2つの面に跨って配置するようにしてもよい。この場合、別工程で作成した有機EL表示装置を接着剤或いは粘着テープ等で固着する工程を追加することで、携帯端末の製造工程を大幅に変更せずに工程を組むことができる。
【0069】
図10は、携帯端末への有機EL表示装置の配置のその他の変形例を示した図である。同図(a)に示したものは、有機EL表示装置の表示面Dを携帯端末Tの両側面を含む3つの面に跨ってコの字状に配置したものである。同図(b)は、有機EL表示装置の表示面Dを携帯端末Tの上側面を含む2つの面に跨ってL字状に配置したものである。同図(c)は、有機EL表示装置の表示面Dを携帯端末Tの上側面を跨いで3つの面にコの字状に配置したものである。
【0070】
なお、同図では、有機EL表示装置で外観を形成した図で説明したが、筐体の内側で同図のような形状に有機EL表示装置を配置しても良いのは勿論である。
【0071】
以上説明したように、単一の有機EL表示装置を、携帯端末の外観を構成する面のうち、少なくとも隣り合う2つの面に跨って配置することにより、表示部及びこれら表示部を個々に接続するコネクタ数を最少とし、低コストでありながら信頼性が向上すると共に、省スペースによる小型薄型化をも可能とした携帯端末を得ることができる。
【0072】
なお、上述の実施の形態においては、本発明を折り畳み式の携帯端末を用いて説明したが、これに限るものでないのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係る携帯端末の一例である携帯電話機Tの外観図である。
【図2】図1に示す携帯端末の内部構成例を示す概略ブロック図である。
【図3】本発明に係る携帯端末の表示部を含む断面を示す模式図である。
【図4】有機EL表示装置の断面構造を示す模式図である。
【図5】有機EL表示装置を構成する有機EL素子の1画素を抜き出した等価的回路図である。
【図6】携帯端末の種々の機能のうち、撮像部を使用した撮影モードに設定したときの動作概略の例を示すフローチャートである。
【図7】図1に示した携帯電話機Tのプレビュー画像表示と照明モードで発光する表示面の例を示した模式図である。
【図8】本発明に係る携帯端末の有機EL表示装置を用いた着信表示の一例を示した図である。
【図9】本発明に係る携帯端末の表示部を含む断面のその他の例を示す模式図である。
【図10】携帯端末への有機EL表示装置の配置のその他の変形例を示した図である。
【符号の説明】
【0074】
1 上筐体
2 下筐体
3 ヒンジ
4 開口部
5 操作部材
20 有機EL表示装置
31 ヒートシール
32 プリント基板
41 陽極層
42 有機層
43 陰極層
44 基板
50 有機EL素子
51 スイッチングトランジスタ
52 駆動トランジスタ
53 コンデンサ
55 走査線
56 データ線
57 電源線
D1、D2、D3 表示面
P 操作ボタン
S 撮像装置
T 携帯電話機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報表示を行う表示部に有機EL表示装置を用いた携帯端末であって、
前記有機EL表示装置は、フィルム基板上に有機EL素子が形成され、単一の前記有機EL表示装置を前記携帯端末の外観を構成する面のうち、少なくとも隣り合う2つの面に跨って配置したことを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記携帯端末は被写体画像を撮影する撮像部を有し、
前記撮像部を使用した撮影時に、前記有機EL表示装置の一部を照明用光源として用いることを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記有機EL表示装置の一部を、前記携帯端末への着信表示として用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記有機EL表示装置は、前記携帯端末の外表面に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項5】
前記有機EL表示装置は、前記携帯端末の外観を構成する筐体の内側に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−5712(P2006−5712A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180861(P2004−180861)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】