説明

携帯通信端末、携帯通信システム、および基地局探索方法

【課題】 電子チケットの情報を利用してセルサーチを速やかに行うことのできる携帯通信端末、携帯通信システム、および基地局探索方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、複数の通信方式、又は複数の周波数で無線通信可能な通信部と、交通機関の行き先を読み書き可能な第1記憶手段と、接続可能な無線基地局を探索する基地局探索手段と、前記第1記憶手段に書き込まれた行き先の通信方式及び周波数に関する最新情報を受信して第2記憶手段に格納する最新情報格納手段と、行き先到着後は、前記第2記憶手段に格納された通信方式及び周波数に基づき基地局を探索するよう基地局探索手段の動作を制御する基地局探索制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線基地局を探索できる携帯通信端末、携帯通信システム、および基地局探索方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の搭乗券を購入することができる携帯電話は、特開2004−054673号公報(特許文献1)に記載されている。この携帯端末は、搭乗券情報を端末内に記憶できる記憶手段を備え、更に、空港に設置されている自動チェックイン機との間で交信して、所定のチェックイン処理するチェックイン制御手段を備える。
【0003】
また、セル探索時間を短くすることができる携帯通信端末は、特開2004−215259号公報(特許文献2)に記載されている。この携帯通信端末は、ネットワークから、各サービスベンダー別の使用周波数を獲得して格納し、この獲得した周波数でセル探索を行うことにより、セル探索時間を短くすることができる。
【0004】
また、セルサーチの処理を軽減させる携帯端末は、特開2005−277883号公報(特許文献3)に記載されている。この携帯通信端末は、駅改札において、入場/退場情報の送受信を行い、駅情報を受信して記憶する。そして、この携帯通信端末は、セルサーチの際に、現在のセルと、次の移動先候補であるセルに関して、セルサーチを行う。
【0005】
更に、セルサーチ時間の短縮を図ることのできる携帯通信端末は、特開2007−020049号公報(特許文献4)に記載されている。この携帯通信端末は、ユーザから現在位置を受け付け、この位置に基づいて予め端末内に格納されている地域情報を読み出し、セルサーチを行う。
【0006】
【特許文献1】特開2004−054673号公報
【特許文献2】特開2004−215259号公報
【特許文献3】特開2005−277883号公報
【特許文献4】特開2007−020049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1に記載の表示装置は、セルサーチに関する技術は、全く記載も示唆もされていない。
【0008】
また、特許文献2に記載の携帯通信端末は、ネットワークから、各サービスベンダー別の使用周波数を獲得しているので、圏外である場合や通信異常などの理由により使用周波数を獲得できない状況が発生すると、一般的な全バンドサーチが行われるため、サーチ時間を短縮することはできない。
【0009】
また、特許文献3に記載の携帯端末は、駅改札で入場/退場情報の送受信を行い、日本国内の鉄道に関するその移動ルートを想定した発明である。鉄道内では、電源OFFしなくてもよいため、現在のセルの確認ができるが、電源OFFの必要のある航空機の場合には、現在のセルの確認ができない。現在と次の移動先候補であるセルに関して、セルサーチを行う特許文献3に記載の技術を、航空機を利用する際に適用しても、現在のセルの確認ができないため、そのセルサーチ処理を低減できる効果を期待できない。
【0010】
更に、特許文献4に記載の携帯通信端末は、ユーザから現在位置の入力を受け付けることでセルサーチ時間を短縮する携帯通信端末であるため、ユーザが入力をし忘れた場合は、全バンドのセルサーチとなり、セルサーチ時間短縮の効果は得られない。また、ユーザが現在位置の入力を間違えた場合や、ユーザが現在位置を正確に確認できなかった場合にも、セルサーチ時間短縮の効果は得られない。更に、予め格納されている地域情報は、通信事業者のサービス変遷により、陳腐化し、かえってサーチ時間が長くなってしまう恐れもある。例えば、新規にWCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)通信方式を使用したサービスがスタートし、GSM(Global System for Mobile communications)通信方式を使用したサービスが終了する場合などが該当する。
【0011】
本発明の目的は、上記課題を解決し、セルサーチを速やかに行うことのできる携帯通信端末、携帯通信システム、および基地局探索方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記課題を解決するためのものであって、本発明の携帯通信端末は、
複数の通信方式、又は複数の周波数で無線通信可能な通信部と、
交通機関の行き先を読み書き可能な第1記憶手段と、
接続可能な無線基地局を探索する基地局探索手段と、
前記第1記憶手段に書き込まれた行き先の通信方式及び周波数に関する最新情報を受信して第2記憶手段に格納する最新情報格納手段と、
行き先到着後は、前記第2記憶手段に格納された通信方式及び周波数に基づき無線基地局を探索するよう基地局探索手段の動作を制御する基地局探索制御手段と
を備えるものである。
【0013】
また、本発明の携帯通信システムは、
前述の携帯通信端末と、
インターネットに接続され、行き先の通信方式や周波数に関する最新情報を提供する情報提供サーバと、
前記携帯通信端末と通信を行うための無線基地局と
を備えるものである。
【0014】
また、本発明の基地局探索方法は、
交通機関の行き先の通信方式、周波数に関する最新情報を記憶する記憶ステップと、
前記行き先に到着したか否かを判別する判別ステップと、
この判別ステップで行き先に到着したと判別された後は、前記通信方式や周波数に基づいて接続可能な無線基地局を探索する基地局探索ステップと
を備えるものである。
【発明の効果】
【0015】
このように構成された本発明によれば、次に記載するような効果を奏する。
【0016】
本発明によれば、行き先の通信方式及び周波数に関する最新情報を、第2記憶手段に格納し、行き先到着後は、第2記憶手段に格納された通信方式及び周波数に基づき基地局の探索をするので、行き先の通信方式及び周波数で、優先的に基地局の探索を行うことができる。このため、無線基地局の探索に要する時間を短くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の第1実施形態について、図1、図2に基づき説明する。
【0018】
図1は、第1実施形態の携帯通信端末を示す機能ブロック図である。
【0019】
携帯通信端末101は、通信部102と、制御装置109と、第1記憶手段107とを備える。
【0020】
通信部102は、アンテナ108に接続されており、複数の通信方式及び/又は複数の周波数(又は周波数帯)で無線通信が可能な無線式の通信部である。
【0021】
制御装置109は、携帯通信端末101全体の制御を行う。そして、この制御装置109は、最新情報格納手段103と、第2記憶手段104と、基地局探索手段105と、基地局探索制御手段106とを備える。
【0022】
最新情報格納手段103は、第2記憶手段104に書き込まれている交通機関の行き先の通信方式及び周波数に関する最新情報を受信して第2記憶手段104に格納する。
【0023】
基地局探索手段105は、携帯通信端末101の位置登録をするために、接続可能な無線基地局を探す基地局探索を行う。
【0024】
基地局探索制御手段106は、行き先到着後に、第2記憶手段104に格納された通信方式及び周波数に基づき基地局探索するよう基地局探索手段105の動作を制御する。尚、基地局探索は、セルサーチと呼ばれる基地局探索や、それ以外の基地局探索も含む。
【0025】
第1記憶手段107は、交通機関の行き先を読み書き可能な記憶手段である。
【0026】
尚、携帯通信端末101は通信端末であるため、音声通話をするための受話部や送話部や、電話番号を入力するための複数のキーを備えているが、図示しない。また、携帯通信端末101は携帯式のため、その給電は充電式のバッテリーで行っているが、これも図示しない。
【0027】
このように構成された携帯通信端末101の動作を、図2に基づいて説明する。この図2は、同携帯通信端末の動作を示すフローチャートである。
【0028】
最初に、ユーザは、ステップ201(以下、「ステップ」を「S」という)で、携帯通信端末101を利用して電子チケットを入手する。入手方法としては、携帯通信端末101の電子マネー機能やクレジット機能を利用して購入する方法や、各種サービスの活用による無償による入手がある。
【0029】
S201でユーザが電子チケットを入手すると、制御装置109がその行き先を第1記憶手段107に書き込む。そして、最新情報格納手段103が、第1記憶手段107に書き込まれた行き先に基づき、行き先の通信方式や周波数を受信し、第2記憶手段104に格納する(S202)。最新情報格納手段103が行き先の通信方式や周波数を受信する方法、即ち、入手方法としては、ネットワーク(インターネットやイントラネット)に接続し、情報提供サーバからダウンロードする入手方法や、電子チケットが公共交通機関の搭乗券や乗車券の場合は、その販売店での手動入力による入手方法や販売店での通信による入手方法等がある。
【0030】
次に、S203で、制御装置109は、行き先に到着したか否かを判別する。この行き先に到着したか否かは、ユーザの所定のキー入力に基づいて、行き先に到着したと判断することができる。あるいは、電子チケットが航空機の搭乗券の場合では、電源OFFから電源ONになったとき(起動完了したとき)を、その行き先に到着したと判別することもできる。
【0031】
ユーザが行き先に到着すると(S203のYES)、基地局探索制御手段106の制御に従い、基地局探索手段105が第2記憶手段104内の通信方式と周波数とに基づいて、基地局探索を行う。このとき、基地局探索手段105は、複数の通信方式や周波数で基地局探索可能であるが、その全バンドによる通常の基地局探索ではなく、第2記憶手段104内の通信方式と周波数とに基づいて、基地局探索を行う。
【0032】
基地局探索により、接続可能な基地局を発見すると(S205のYES)、S206で、制御装置109は発見した基地局に位置登録を行う。また、接続可能な基地局を発見できなかった場合は(S205のNO)、S207で、基地局探索手段105は通常の基地局探索を行う。この基地局を発見できなかった場合は、天候不順や、機体の異常により、行き先と異なる空港に航空機が着陸した場合、つまり第2記憶手段104内の行き先と、ユーザが実際に行った行き先とが一致しなかった場合が考えられる。
【0033】
S207の通常の基地局探索で、接続可能な基地局を発見できた場合は(S208のYES)、S206で、制御装置109は発見した基地局に位置登録を行う。S208で、接続可能な基地局が発見できなかった場合は(S208のNO)、制御がS204に移行する。S208で接続可能な基地局が発見できなかった場合は、基地局探索の単純な失敗や、その行き先での通信方式や周波数に携帯通信端末101が対応していない場合が考えられる。S206で、発見した基地局に位置登録すれば、ユーザは、その行き先で、携帯通信端末101を使用することができる。
【0034】
このように動作する本発明の携帯通信端末101は、交通機関の行き先の通信方式や周波数を利用して基地局探索を行う。このため、この携帯通信端末101は、行き先で、優先的に探索すべきと思われる通信方法や周波数で基地局探索を行うことができる。これにより、この携帯通信端末101は、通常の基地局探索(全バンドサーチ)を行う場合に比べて、基地局探索の時間を短縮することができ、バッテリーの消費を抑えることができる。また、この携帯通信端末101は、ユーザが、位置情報を入力する必要がないため、ユーザの手間をかけずに基地局探索の時間を短縮することができる。
【0035】
次に、本発明の第2実施形態の携帯通信システムについて、図3〜図8に基づき説明する。図3は、第2実施形態の携帯通信システムを示す説明図である。
【0036】
携帯通信システム301は、携帯通信端末401と、情報提供サーバ303と、携帯通信端末401と通信を行うための通信業者の無線基地局305とを備える。また、無線基地局305は、パケット通信網306を介してインターネット302は接続されている。更に、携帯通信システム301は、インターネット302に接続された購入サーバ304も備える。この購入サーバ304は、電子チケット購入時に携帯通信端末401が接続する。この電子チケットは、例えば、航空券(搭乗券)である。
【0037】
情報提供サーバ303は、このインターネット302に接続され、ユーザの行き先に関する最新の通信方式や周波数の情報提供をする。また、情報提供サーバ303を、海外各地に配置することもできるが、特定の国に配置することもできる。海外各地に情報提供サーバ303を配置した場合、その配置されている国の通信方式と周波数とを最低限提供できれば良い。また、無線基地局305は、携帯通信端末401と通信を行うための通信業者に複数設置される。
【0038】
更に、この携帯通信システム301は、空港に設置されている自動改札機307も備える。この自動改札機307は、搭乗券を持参しているユーザの通行を許可する。また、この自動改札機307は、その入口で携帯通信端末401の電源をOFFする信号を送信し、その出口で携帯通信端末401の起動完了を許可する信号を送信する。更に、この自動改札機307は、その入口で携帯通信端末401のICチップ107Aに搭乗している意味を表す搭乗情報を書き込み、その出口で携帯通信端末401のICチップ107A(図4参照)の搭乗情報を消去する。尚、搭乗情報の書き込みや消去は、携帯通信端末401の電源ON/OFFに関わらず、行うことができる。
【0039】
図4は、同携帯通信システムで使用される携帯通信端末を示す機能ブロック図である。
【0040】
携帯通信端末401は、通信部102と、制御装置402と、ICチップ107Aと、本体操作部404と、本体表示部405と、音声装置406とを備える。
【0041】
通信部102は、複数の通信方式及び/又は複数の周波数で無線通信が可能な無線式の通信部である。
【0042】
制御装置402は、携帯通信端末401全体の制御を行う。この制御装置402は、最新情報格納手段103Aと、第2記憶手段として機能するメモリ104Aと、セルサーチ手段105Aと、セルサーチ制御手段106Aと、電源制御手段403とを備える。
【0043】
最新情報格納手段103Aは、購入した電子チケットの行き先の空港の通信方式及び周波数、行き先の空港を含むローミング国の通信方式及び周波数に関する最新情報を、インターネットからダウンロードしてメモリ104Aに格納する。
【0044】
セルサーチ手段105Aは、携帯通信端末401の位置登録をするために、接続可能な無線基地局305を探すセルサーチを行う。尚、セルサーチは基地局探索のうちの、ひとつの探索方法である。
【0045】
セルサーチ制御手段106Aは、行き先到着後に、メモリ104Aに格納された行き先の空港の通信方式及び周波数や、行き先の空港を含むローミング国の通信方式及び周波数に基づきセルサーチするようセルサーチ手段105Aの動作を制御する。
【0046】
電源制御手段403は、空港の自動改札機307の入口の信号を受信すると携帯通信端末401の電源をOFFし、自動改札機307の出口の信号を受信すると携帯通信端末401の起動完了を許可する。
【0047】
ICチップ107Aは、第1記憶手段として機能し、空港の自動改札機307と送受信可能な機能を備える。
【0048】
本体操作部404は、具体的には複数のキーであり、電話番号の入力や、その他の機能を利用している際に、ユーザが操作する。
【0049】
本体表示部405は、入力された電話番号を表示したり、アドレス帳などのデータを表示したりする。
【0050】
音声装置406は、音声通話の際に使用される。この音声装置406は、レシーバとして機能する受話部(図示せず)と、マイクとして機能する送話部(図示せず)とを備えている。
【0051】
メモリ104Aに格納される行き先の空港の通信方式や周波数の一例をまとめたものを図5に示す。この図5には複数の行き先を表にしているが、行き先なので、ひとつ以上をメモリ104Aに格納すればよい。行き先がアメリカのJ.F.KENNEDY空港であれば、空港内の通信方式及び周波数として、GSM1900、f4、f5、f6が、ダウンロードされてメモリ104Aに格納される。また、ローミング国の通信方式及び周波数として、GSM850、f13、f14、f15、また、GSM1900、f4、f5、f6、f16、f17、f18、更にWCDMA850、f19、f20が、ダウンロードされてメモリ104Aに格納される。尚、IATA(International Air Transport Association:国際航空運送協会)コードと空港名とは対応しているので、空港名の代わりに、このIATAコードを利用することもできる。
【0052】
図6は、第2実施形態の携帯通信システムで使用される携帯通信端末において、電子チケット購入時の携帯通信端末の動作を示すフローチャートである。また、図7は、同携帯通信端末の行き先での動作を示すフローチャートである。
【0053】
尚、電子チケットは、前述したように航空機の搭乗券とし、出発国は日本国とし、行き先は、日本国とは異なる通信方式、周波数で携帯通信サービスを行っている海外の国とする。
【0054】
図6のS601において、電子チケット購入時のユーザは、搭乗者名、搭乗便名、搭乗区間(行き先を含む)、搭乗日程等を確認する。この確認は、本体表示部405の表示で確認することができる。S602で、制御装置402は、ユーザの搭乗券購入がOKであるか否かを判別する。購入サーバ304が携帯通信端末401を認証し、更に、ユーザが搭乗券の購入OKの操作をすると(S602のYES)、制御装置402は、携帯通信端末401の固有認識番号とICチップ107Aの固定認識番号とを購入サーバ304に送信し、搭乗券の情報(搭乗便名、搭乗区間等)をICチップ107Aに書き込む。
【0055】
次に、最新情報格納手段103Aは、S604で、情報提供サーバ303に接続し、行き先の国や空港に関する情報(通信方法や周波数)をダウンロードし、携帯通信端末401内のメモリ104Aに格納する。
【0056】
このように、購入時の動作が正しく行われていれば、ICチップ107Aに、購入したチケットの情報(行き先)が書き込まれており、携帯通信端末401内のメモリ104Aに購入したチケットの行き先の国や空港に関する通信方式や周波数の情報が格納されている。そして、ユーザが行き先を変更したり、悪天候により、航空機が行き先(着陸空港)を変更したりする場合を除き、ユーザが行った行き先と、ICチップ107Aに書き込まれている行き先の国や空港と、メモリ104Aに格納されている行き先の国や空港とは一致している。
【0057】
次に、図7に基づいて、行き先に到着した時の携帯通信端末401の動作について説明する。
【0058】
ユーザが航空機に搭乗するときには、自動改札機307の信号により、携帯通信端末401の電源はOFFにされる。行き先の空港に到着すると、携帯通信端末401の電源をOFFする必要がなくなるので、ユーザは、携帯通信端末401の電源をONとする。この電源をONする前に、予め、自動改札機307の出口の信号を受信するよう自動改札機307の所定の位置に携帯通信端末401を近づけて、起動完了を許可する信号を受ける必要がある。この起動完了を許可する信号を受けると、ICチップ107Aの搭乗情報が消去される。
【0059】
ユーザにより電源がONされると(S701)、携帯通信端末401は起動を開始する。起動時に、S702で、制御装置402は携帯通信端末401のICチップ107Aに搭乗中であることを示す搭乗情報が書き込まれているか否かを判別する。ICチップ107Aに搭乗情報が書き込まれていれば(S702のYES)、起動完了を許可する信号を受けていないため、制御装置402は携帯通信端末401の起動を停止する。起動を停止した携帯通信端末401は、電源OFFの状態に戻る。
【0060】
また、S702で、ICチップ107Aに搭乗情報が書き込まれていなければ(S702のNO)、空港の自動改札機307を通過した際に、起動完了を許可する信号を受けてICチップ107Aの搭乗情報が消去されているため、制御装置402は携帯通信端末401の起動を継続し、起動を完了させる。起動が完了すると、携帯通信端末401は電源ONの状態となるが、この状態では、まだ無線基地局305への位置登録はなされていない。
【0061】
次に、制御装置402は、ICチップ107A内の行き先と、メモリ104A内の行き先とが一致しているか否かを判別する。ICチップ107A内の行き先と、メモリ104A内の行き先とが一致している場合(S703でYES)、メモリ104Aに格納している空港内のセル情報(通信方式や周波数)に基づきS704で、セルサーチ手段105Aがセルサーチを実行する。
【0062】
S705で、制御装置402は接続可能なセル(基地局)を発見したか否かを判別し、接続可能なセルを発見した場合(S705のYES)、S706で、制御装置402は発見したセルに位置登録する。S705で、セルサーチ手段105Aが接続可能なセルを発見できなかったら(S705のNO)、S707で、メモリ104Aに記憶しているローミング国のセル情報(通信方式や周波数)に基づいて、セルサーチ手段105Aがセルサーチを実行する。ローミング国のセル情報は、空港内のセル情報よりも、セルサーチの通信方式や周波数が多く設定されているので、空港を対象としたセルサーチよりも範囲を広げたセルサーチとなっている。
【0063】
S708で、制御装置402が接続可能なセルを発見したか否かを判別し、接続可能なセルを発見した場合(S708のYES)、S706で、制御装置402は発見したセルに位置登録する。接続可能なセルを発見できなかった場合(S708のNO)、S709で、セルサーチ手段105Aは通常のセルサーチを行う。また、S703でICチップ107A内の行き先とメモリ104A内の行き先が一致しない場合も(703のNO)、S709で、セルサーチ手段105Aは通常のセルサーチを行う。この通常のセルサーチは、全バンドサーチであり、周波数と通信方式を順に切り替えてセルサーチを行うセルサーチである。この通常のセルサーチが行われる場合は、ユーザが行き先を変更したり、悪天候により、航空機が行き先(着陸空港)を変更したりする場合が考えられる。
【0064】
そして、S710で、制御装置402は接続可能なセルを発見できたか否かを判別し、接続可能なセルを発見した場合(S710のYES)、S706で、制御装置402は発見したセルに位置登録する。接続可能なセルを発見できなかった場合(S710のNO)、制御がS703に移行する。
【0065】
このように動作する携帯通信端末401は、最初に空港内の通信方式や周波数でのセルサーチを行い、このセルサーチで接続可能なセルを発見できなかった場合には、次に、ローミング国にサーチ範囲を広げてセルサーチする。このように、携帯通信端末401は、セルサーチに優先順位をつけて実行しているため、セルサーチ時間を短縮することができる。
【0066】
また、このような基地局探索方法を、携帯通信端末401が圏外になった際の基地局探索方法としても使用することができる。この場合の動作を図8に示す。尚、この図8は、同携帯通信端末401の行き先において圏外になったときの動作を示すフローチャートである。
【0067】
この図8に示すフローチャートは、制御S100に関する部分については、図7と同一のため、その説明を省略する。
【0068】
行き先に到着し、一旦位置登録ができた後に、ユーザがビルや地下に入るなどした場合、無線基地局305と通信できず圏外になることがある。この場合も、本発明の基地局探索方法を適用することができる。
【0069】
S801で、制御装置402は圏外か否かを判別し、圏外になった場合は(S801のYES)、制御がS703に移行する。S703からの制御は、図7で説明したとおりである。
【0070】
このように、圏外になった場合に、再びセルサーチを実行して位置登録を行うような場合(圏内復帰の場合)にも、セルサーチ時間を短縮することができる。
【0071】
尚、この実施形態では、購入した前記電子チケットの行き先の通信方式及び周波数に関する最新情報をダウンロードするタイミングを、電子チケット購入時(行き先を入手したタイミング)に実行した例で説明したが、このタイミングを、ユーザが自動改札機307の入口通過時とするように制御を設定することもできる。この場合、航空機に搭乗する直前のタイミングにおいて、行き先に関する最新の通信方式及び周波数をダウンロードし、メモリ104Aに格納することができる。つまり、航空券購入時から、実際の航空機に搭乗する時までの間に、通信方式や周波数が変更された場合においても、最新の通信方式や周波数を使用して、セルサーチを行うことができる。
【0072】
次に、第3実施形態の通信システムについて、図9、図10に基づき説明する。基本的には第2実施形態の通信システムと同じであるが、その携帯通信端末の構成や動作がやや異なる。このため、第2実施形態の構成や動作ステップと同一、あるいはほぼ同一の部分には、同一の符号や同一のステップ番号を付け、異なる部分には、異なる符号や異なるステップ番号を付ける。
【0073】
図9は、第3実施形態の通信システムで使用される携帯通信端末を示す機能ブロック図である。
【0074】
携帯通信端末401Aは、携帯通信端末401の電源制御手段403を備えておらず、表示制御手段901を備える。この表示制御手段901は、行き先到着後にユーザにより携帯通信端末401Aの電源がONされると、メモリ104A内に格納されている行き先に到着しましたかとのメッセージを本体表示部405に表示する。制御装置402Aは、これら携帯通信端末401A全体の制御を行う。
【0075】
次に、この携帯通信端末401Aの動作について、図10に基づき説明する。図10は、同通信システム利用時の携帯通信端末の動作を示すフローチャートである。
【0076】
到着する空港は、自動改札機が設置されていない空港とする。
【0077】
図10に示すS1001で、制御装置402Aは、ユーザが電源ONしたことを検知すると、携帯通信端末401Aが起動を開始し、S702で、制御装置402AはICチップ107Aに搭乗情報が書き込まれているか否かを判別する。
【0078】
ICチップ107Aに搭乗情報が書き込まれていなければ(S702のNO)、制御がS703に移行し、以降の動作は、図7の動作と同じため、その説明は省略する。
【0079】
ICチップ107Aに搭乗情報が書き込まれていれば(S702のYES)、S1002で、表示制御手段901が本体表示部405に「○○空港(メモリ内の空港)に到着しましたか?」と表示する。メモリ104A内に格納された空港が、北京首都国際空港であれば、実際の表示は「北京首都国際空港に到着しましたか?」となる。
【0080】
実際に北京首都国際空港に到着している場合、ユーザは、表示されたメッセージに対して肯定する入力を行う。肯定する入力とは、十字キーの真中の「OKキー」を押下する入力や、本体表示部405に示された肯定を示すキーを押下する入力がある。
【0081】
S1003で、ユーザから「OK」の入力(肯定する入力)があると(S1003のYES)、S1004で、制御装置402AがICチップ107Aの搭乗情報を削除し、ICチップ107Aにメモリ104Aと同じ行き先情報を書き込む。そして、制御がS702に移行すると、ICチップ107Aでの搭乗情報が削除されているので、S702での判別はNOとなり、制御がS703へ移行する。これ以降の動作についても、図7の動作と同じため、その説明は省略する。
【0082】
S1003で、ユーザから「OK」の入力がない場合や、ユーザから「NO」の入力がある場合は、S709で、セルサーチ手段105Aは通常のセルサーチを実行する。
【0083】
このように、この携帯通信端末401Aでは、空港に到着してユーザが携帯通信端末401Aの電源をONした際には、その空港に到着したかどうかを尋ねるメッセージを表示する。そして、このメッセージに対して、ユーザから肯定の入力があるか否かで、セルサーチの方法を変える基地局探索方法を採用している。このため、ユーザの入力を受けて最適な基地局探索方法を選択でき、セルサーチ時間を短縮することができる。
【0084】
この実施形態では、S1004の制御の次にS702に制御が移行する例で説明した。この場合、S1004のICチップ107Aの搭乗情報を削除する制御に失敗し、削除できなかった場合、S702でYESの判別となり、再びS1002、S1003へと制御が移行し、再びユーザの入力を促す制御が繰り返される恐れがある。このような制御を回避するために、制御がS1004からS703へ移行するように制御フローを構成することもできる(図10の丸5参照)。このように制御フローを構成すると、例えば、ICチップ107Aの搭乗情報の削除に失敗した場合でも、ユーザの入力を促す制御が繰り返される恐れはない。
【0085】
尚、これら第1〜第3実施形態の何れも、電子チケットとして、航空機の搭乗券を設定した例で説明したが、これ以外にも、電子チケットとして、船舶の搭乗券や、鉄道の乗車券等を設定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1実施形態の携帯通信端末を示す機能ブロック図である。
【図2】同の携帯通信端末の動作を示す表示装置の正面図である。
【図3】第2実施形態の通信システムを示す説明図である。
【図4】同通信システムで使用される携帯通信端末を示す機能ブロック図である。
【図5】行き先の通信方式と周波数との関係を示す説明図である。
【図6】同携帯通信端末の電子チケット購入時の動作を示すフローチャートである。
【図7】同携帯通信端末の行き先での動作を示すフローチャートである。
【図8】同携帯通信端末の行き先において圏外になったときの動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第3実施形態の通信システムで使用される携帯通信端末を示すブロック図である。
【図10】同通信システムで使用される携帯通信端末の行き先での動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0087】
101 携帯通信端末
102 通信部
103 最新情報格納手段
103A 最新情報格納手段
104 第2記憶手段
104A メモリ
105 基地局探索手段
105A セルサーチ手段
106 基地局探索制御手段
106A セルサーチ制御手段
107 第1記憶手段
107A ICチップ
108 アンテナ
301 携帯通信システム
302 インターネット
303 情報提供サーバ
304 購入サーバ
305 無線基地局
306 パケット通信網
307 自動改札機
401 携帯通信端末
401A 携帯通信端末
402 制御装置
402A 制御装置
403 電源制御手段
404 本体操作部
405 本体表示部
406 音声装置
901 表示制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信方式、又は複数の周波数で無線通信可能な通信部と、
交通機関の行き先を読み書き可能な第1記憶手段と、
接続可能な無線基地局を探索する基地局探索手段と、
前記第1記憶手段に書き込まれた行き先の通信方式及び周波数に関する最新情報を受信して第2記憶手段に格納する最新情報格納手段と、
行き先到着後は、前記第2記憶手段に格納された通信方式及び周波数に基づき無線基地局を探索するよう基地局探索手段の動作を制御する基地局探索制御手段と
を備えることを特徴とする携帯通信端末。
【請求項2】
前記第1記憶手段は、ICチップである
ことを特徴とする請求項1に記載の携帯通信端末。
【請求項3】
前記最新情報格納手段は、前記行き先の通信方式及び周波数に関する最新情報を、前記行き先が書き込まれたタイミングでネットワークからダウンロードする
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯通信端末。
【請求項4】
前記最新情報格納手段は、前記行き先の通信方式及び周波数に関する最新情報を、自動改札機の入口通過時のタイミングでネットワークからダウンロードする
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯通信端末。
【請求項5】
前記交通機関は、航空機である
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の携帯通信端末。
【請求項6】
前記行き先の通信方式及び周波数は、行き先の空港の通信方式及び周波数と、行き先の空港を含むローミング国の通信方式及び周波数とを含む
ことを特徴とする請求項5に記載の携帯通信端末。
【請求項7】
前記基地局探索制御手段は、最初に行き先の空港の通信方式及び周波数に基づき無線基地局の探索を行うよう基地局探索手段を制御し、接続可能な無線基地局を発見できなかった場合は、次に行き先の空港を含むローミング国の通信方式及び周波数に基づき無線基地局の探索を行うよう基地局探索手段を制御する
ことを特徴とする請求項6に記載の携帯通信端末。
【請求項8】
自動改札機の入口の信号を受信すると電源をOFFし、自動改札機の出口の信号を受信すると携帯通信端末の起動完了を許可する電源制御手段と、
行き先到着後に、電源ONされて携帯通信端末が起動完了すると、前記基地局探索制御手段を動作させる制御手段と
を備えることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の携帯通信端末。
【請求項9】
前記行き先で接続可能な無線基地局に登録した後、接続が不可能である圏外となった場合、前記基地局探索制御手段は、再度、前記第2記憶手段に格納された通信方式及び周波数に基づき無線基地局を探索するよう前記基地局探索手段の動作を制御する
ことを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の携帯通信端末。
【請求項10】
前記交通機関停止後、電源ONされて携帯通信端末が起動完了すると、前記停止の場所と前記第2記憶手段に格納された行き先と一致不一致を照合するメッセージを表示する表示制御手段を備え、
前記基地局探索制御手段は、この表示制御手段で表示されたメッセージに対して肯定する入力を受け付けると、前記基地局探索手段の動作を制御する
ことを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の携帯通信端末。
【請求項11】
前記基地局探索手段が前記第2記憶手段に記憶された通信方式及び周波数に基づき無線基地局を探索した結果、接続可能な無線基地局を発見できなかった場合、前記基地局探索制御手段は、前記通信方式及び周波数を順に切り替えて無線基地局を探索するよう基地局探索手段の動作を制御する
ことを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載の携帯通信端末。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れかに記載の携帯通信端末と、
インターネットに接続され、行き先の通信方式や周波数に関する最新の情報を提供する情報提供サーバと、
前記携帯通信端末と通信を行うための無線基地局と
を備えることを特徴とする携帯通信システム。
【請求項13】
交通機関への出入口に設置され、入口で前記携帯通信端末の電源をOFFする信号を送信し、出口で前記携帯通信端末の起動完了を許可する信号を送信する自動改札機を
更に備えることを特徴とする請求項12に記載の携帯通信システム。
【請求項14】
交通機関の行き先の通信方式、周波数に関する最新情報を記憶する記憶ステップと、
前記行き先に到着したか否かを判別する判別ステップと、
この判別ステップで行き先に到着したと判別された後は、前記通信方式や周波数に基づいて接続可能な無線基地局を探索する基地局探索ステップと
を備えることを特徴とする基地局探索方法。
【請求項15】
前記記憶ステップは、前記最新情報を記憶したタイミングで実行される
ことを特徴とする請求項14に記載の基地局探索方法。
【請求項16】
前記基地局探索ステップにおける無線基地局の探索は、最初に前記行き先の通信方式及び周波数に基づき行い、この探索で接続可能な無線基地局を発見できなかった場合は、次に前記行き先が所在する国の通信方式及び周波数に基づき行う
ことを特徴とする請求項14又は15に記載の基地局探索方法。
【請求項17】
前記基地局探索ステップは、行き先到着後に携帯通信端末の起動完了が許可され、この携帯通信端末が起動完了すると実行される
ことを特徴とする請求項14乃至16の何れかに記載の基地局探索方法。
【請求項18】
前記交通機関停止後、携帯通信端末の起動完了が許可され、この携帯通信端末が起動完了すると、前記停止の場所と前記記憶ステップで記憶した行き先と一致不一致を照合するメッセージを表示する表示ステップを備え、
このメッセージに対して肯定する入力を受け付けると、前記基地局探索ステップが実行される
ことを特徴とする請求項14乃至17の何れかに記載の基地局探索方法。
【請求項19】
前記基地局探索ステップで無線基地局を探索した結果、接続可能な無線基地局を発見できなかった場合、前記通信方式及び周波数を順に切り替えて、更に無線基地局を探索する第2の基地局探索ステップを備える
ことを特徴とする請求項14乃至18の何れかに記載の基地局探索方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−34640(P2010−34640A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191888(P2008−191888)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】