説明

携帯電子機器及びその組立方法

【課題】筐体が押出成型によって筒状に形成された携帯電子機器であって、筐体の外観意匠性を損なうことなく内部部品を筐体に固定することができる携帯電子機器及びその組立方法を提供する。
【解決手段】筐体12が押出成型によって筒状に形成されたデジタルカメラ10であって、レンズユニット18を筐体12に固定するためのねじ穴24が筐体12の前面側内壁面12Aに形成されるとともに、ねじ26を回すドライバ28を挿入するための開口部16が筐体12に形成される。レンズユニット18は、押出成型により筐体12に形成される両端の開放部13、13、又は筐体12に形成された開口部16を介して筐体12内のねじ穴24の位置に配置される。そして、開口部16から挿入されるドライバ28によってレンズユニット18はねじ止め固定される。すなわち、本発明は、押出成型に形成される筐体12の厚肉の壁面に、貫通孔ではないねじ穴24を形成し、このねじ穴24を利用してレンズユニット18をねじ止め固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯電子機器及びその組立方法に係り、特に筐体が押出成型によって筒状に形成された携帯電子機器において、筐体内に配置される内部部品を筐体にねじ止め固定することができる携帯電子機器及びその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、押出成型により形成された中空筒状体を、携帯電子機器の筐体として使用する技術が提案されている。この筐体の内壁面は、押出成型の特徴から押し出し方向にフラットな面であるため、押出成型の筐体の内壁面には、内部部品を実装させるための凹凸部が無い。このため、特許文献1には、押出成型により形成した筐体に、部品取付用の孔及び切欠部をプレス打ち抜き加工により形成し、これらの孔及び切欠部を利用して携帯電子機器の内部部品を筐体に取り付けるようにしている。
【0003】
一方、携帯電子機器ではないが、映写機のデジタル音声再生装置部の筐体を押出成型により形成することで、十分な強度で部品群を支持するようにした筐体が特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特開2006−185969号公報
【特許文献2】特開平11−112160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、携帯電子機器の筐体に内部部品を取り付けるための孔や切欠部を形成すると、押出成型で形成されたデザイン性のある筐体の外観形状を損ねることになり、また、内部部品を固定するねじが筐体の外表面に露出した場合も筐体の意匠性を損なうという問題があった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、筐体が押出成型によって筒状に形成された携帯電子機器であって、筐体の外観意匠性を損なうことなく内部部品を筐体に固定することができる携帯電子機器及びその組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の携帯電子機器の発明は、前記目的を達成するために、筐体が押出成型によって筒状に形成された携帯電子機器であって、前記筐体に内部部品を固定するためのねじ穴が筐体の内壁面に形成されるとともに、ねじを回すドライバを挿入するための開口部が前記筐体に形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、内部部品は、押出成型により筐体に形成される両端の開放部、又は筐体に形成された開口部を介して筐体内のねじ穴の位置に配置される。そして、前記開口部から挿入されるドライバによって内部部品はねじ止め固定される。本発明は、押出成型により形成される筐体の厚肉の壁面に、貫通孔ではないねじ穴を形成し、このねじ穴を利用して内部部品をねじ止め固定する。これにより、押出成型によって筒状に形成された筐体の外観意匠性を損なうことなく内部部品を筐体に固定することができる。また、前記開口部は、勿論であるが押出方向に平行な面に形成され、その開口部の投影面内にねじ穴が形成されている。これにより、押出方向に直交する方向にドライバを挿入し、ねじによる内部部品の締結作業を行うことができる。なお、ねじ穴が貫通している場合には、そのままであると筐体の外観意匠性を損なうことから、筐体の外観面に取り付けられるレンズリング、窓枠パネル等の外装部材をねじ穴の露出面に取り付けて隠すようにすることが好ましい。また、ねじ穴に代えて溶着ボスを筐体の内壁面に配置しても同様の効果を得ることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記筐体の前記開口部は、筐体に取り付けられる表示部又は操作部によって閉塞されることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、ねじ止め固定のために形成した開口部を、既存部材である表示部又は操作部によって閉塞するようにしたので、開口部を形成しても筐体の外観意匠性が損なうことはない。表示部又は操作部は、ねじを用いて筐体に固定してもよいが、ねじが露出することによる外観意匠性の悪化を防止するために、開口部に嵌合し、接着剤で固定することが好ましい。また、表示部又は操作部は、コンパクトな筐体において比較的大面積を有し、それを装着するための開口部も大きくなることから、ねじ穴の配置位置、数の自由度が広がり、これによって、複数の内部部品をねじ止めすることが可能になる。
【0010】
請求項3に記載の携帯電子機器の組立方法の発明は、前記目的を達成するために、筐体が押出成型によって筒状に形成された携帯電子機器の組立方法であって、前記筐体に形成された開口部からドライバを挿入し、筐体の内壁面に形成されたねじ穴を利用して内部部品を筐体の内壁面にねじ止め固定し、前記開口部を表示部又は操作部によって閉塞することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の携帯電子機器の組立方法の発明によれば、まず、筐体に形成された開口部からドライバを挿入し、次に、筐体の内壁面に形成されたねじ穴を利用して内部部品を筐体内にねじ止め固定し、次いで、開口部を表示部又は操作部によって閉塞する。これにより、筐体の外観意匠性を損なうことなく内部部品を筐体に固定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る携帯電子機器によれば、内部部品を筐体に固定するためのねじ穴を筐体の内壁面に形成するとともに、ねじを回すドライバを挿入するための開口部を筐体に形成したので、筐体の外観意匠性を損なうことなく内部部品を筐体に固定することができる。
【0013】
本発明に係る携帯電子機器の組立方法によれば、筐体に形成された開口部からドライバを挿入し、筐体の内壁面に形成されたねじ穴を利用して内部部品を筐体内にねじ止め固定し、開口部を表示部又は操作部によって閉塞するので、筐体の外観意匠性を損なうことなく内部部品を筐体に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面に従って本発明に係る携帯電子機器及びその組立方法の好ましい実施の形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明が適用されたデジタルカメラ10を背面側から見た組立斜視図である。なお、図1では、携帯電子機器としてデジタルカメラ10を例示するが、これに限定されるものではなく、携帯ゲーム機、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)等の携帯電子機器に適用することができる。
【0016】
同図に示すデジタルカメラ10は、いわゆる薄型のコンパクトカメラとして構成されており、そのカメラボディである筐体12は、図1上で上下方向に抜き型を有する押出成型によって扁平な矩形状の中空箱体に形成されている。よって、筐体12の上面には押出成型による開放部13が形成され、下面にも同様に開放部13が形成されている。これらの開放部13、13は樹脂製のパネル部材(不図示)によって閉塞される。また、筐体12の背面には、LCD等の表示部14を嵌め込むための矩形状開口部16が機械加工により形成されている。
【0017】
被写体の光学像を撮像素子(不図示)の受光面上に結像させるためのレンズユニット(内部部品)18は、筐体12内に実装される。また、このレンズユニット18は、沈胴式のズームレンズで構成されており、カメラの電源をONにすると、そのレンズ鏡筒が筐体12の前面開口部20から前方に繰り出される。そして、カメラの電源をOFFにすると、繰り出されたレンズ鏡胴は筐体12の内側に沈胴し、筐体12の前面がフラットになる。更に、レンズユニット18には、ズームレンズの前玉を保護するためのレンズバリア(不図示)が組み込まれており、レンズ鏡筒の沈胴、繰り出しに応じて自動で開閉される。更にまた、前記撮像素子は、レンズユニット18の後端部にハウジング22を介して取り付けられている。なお、この筐体12内には、レンズユニット18の他、基板等の電子部品、電池等の多数の内部部品が実装される。
【0018】
ところで、図1に示したレンズユニット18は、筐体12の背面に形成された前記開口部16、又は筐体12の開放部13、13のうち何方か一方の開放部13を介して筐体12内に挿入配置される。
【0019】
また、レンズユニット18を筐体12に固定するためのねじ穴24、24が筐体12の前面側内壁面12Aに形成されるとともに、ねじ26、26を回すドライバ28を挿入するための開口部として開口部16が利用されている。
【0020】
レンズユニット18には、ねじ26を通す貫通孔30、30が、ハウジング22に形成された舌状片部32、32に形成されている。
【0021】
したがって、レンズユニット18の取り付けは、まず、筐体12の開口部16、又は筐体12の開放部13、13のうち何方か一方の開放部13を介して筐体12内のねじ穴24、24の位置にレンズユニット18を配置する。そして、開口部16から挿入されるドライバ26によってレンズユニット18をねじ26、26によって筐体12の前面側内壁面12Aにねじ止め固定する。
【0022】
実施の形態のデジタルカメラ10は、押出成型により形成される筐体12の厚肉の壁面に、貫通孔ではないねじ穴24、24を形成し、このねじ穴24、24を利用してレンズユニット18をねじ止め固定する。これにより、押出成型によって筒状に形成された筐体12の外観意匠性を損なうことなくレンズユニット18を筐体12に固定することができる。
【0023】
また、開口部16は、筐体12の押出方向に平行な面(背面)に形成され、前面側内壁面12Aに対する開口部16の投影面内にねじ穴24、24が形成されている。これにより、押出方向に直交する方向にドライバ28を挿入し、ねじ26、26によるレンズユニット18の締結作業を行うことができる。
【0024】
なお、図2の如くねじ穴24A、24Aが貫通している場合には、そのままであると筐体12の外観意匠性を損なうことから、筐体12の外観面に取り付けられるレンズリング34をねじ穴24A、24Aの露出面に取り付けて隠すようにすることが好ましい。また、レンズリング34にねじ穴(貫通していないねじ穴)34A、34Aを形成し、このねじ穴34A、34Aにねじ26、26を締結することにより、レンズリング34も筐体12に同時に固定することができる。実施の形態では、ねじ穴24、24Aを例示したが、これに代えて溶着ボスを筐体12の前面側内壁面12Aに配置しても同様の効果を得ることができる。
【0025】
一方、実施の形態のデジタルカメラ10では、ねじ止め固定のために形成した開口部18が、既存部材である表示部14によって閉塞される。このため、筐体12に開口部16を形成しても筐体12の外観意匠性が損なうことはない。表示部14は、ねじを用いて筐体12に固定してもよいが、ねじが露出することによる外観意匠性の悪化を防止するために、開口部16に嵌合し、接着剤で固定することが好ましい。また、表示部14は、コンパクトな筐体12において比較的大面積を有し、それを装着するための開口部16も大きくなることから、ねじ穴24、24Aの配置位置、数の自由度が広がり、これによって、複数の内部部品(基板等)をねじ止めすることが可能になる。
【0026】
図3は、本発明が適用されたPDA50を正面側から見た組立斜視図である。
【0027】
同図に示すPDA50の筐体52は、図3上で上下方向に抜き型を有する押出成型によって扁平な矩形状の中空箱体に形成されている。よって、筐体52の上面には押出成型による開放部53が形成され、下面にも同様に開放部53が形成されている。これらの開放部53、53は樹脂製のパネル部材(不図示)によって閉塞される。また、筐体52の正面には、操作ユニット54を嵌め込むための矩形状開口部56が機械加工により形成されている。この操作ユニット54のプレート54Aには、再生、停止、選択等を指示する複数の操作ボタン54B、54B…が搭載されている。
【0028】
PDA50のマイコン、メモリ等のマイクロチップが搭載された基板58は、筐体52内に実装される。この基板58は、筐体52の正面に形成された開口部56、又は筐体52の開放部53、53のうち何方か一方の開放部53を介して筐体52内に挿入配置される。
【0029】
また、基板58を筐体52に固定するためのねじ穴60、60が筐体52の背面側内壁面52Aに形成されるとともに、ねじ26、26を回すドライバ(図1参照)を挿入するための開口部として開口部56が利用されている。更に、基板58の角部には、ねじ26を通す貫通孔62、62が形成されている。
【0030】
したがって、基板58の取り付けは、まず、筐体52の開口部56、又は筐体52の開放部53、53のうち何方か一方の開放部53を介して筐体52内のねじ穴60、60の位置に基板58を配置する。そして、開口部56から挿入されるドライバ(図1参照)によって基板58をねじ26、26によって筐体12の背面側内壁面52Aにねじ止め固定する。
【0031】
実施の形態のPDA50は、押出成型により形成される筐体52の厚肉の壁面に、貫通孔ではないねじ穴60、60を形成し、このねじ穴60、60を利用して基板58をねじ止め固定する。これにより、押出成型によって筒状に形成された筐体52の外観意匠性を損なうことなく基板58を筐体52に固定することができる。
【0032】
また、開口部56は、筐体52の押出方向に平行な面(正面)に形成され、背面側内壁面52Aに対する開口部56の投影面内にねじ穴60、60が形成されている。これにより、押出方向に直交する方向にドライバを挿入し、ねじ26、26による基板58の締結作業を行うことができる。なお、実施の形態では、ねじ穴60、60を例示したが、これに代えて溶着ボスを筐体52の背面側内壁面52Aに配置しても同様の効果を得ることができる。
【0033】
一方、実施の形態のPDA50では、ねじ止め固定のために形成した開口部56が、既存部材である操作ユニット54によって閉塞されるため、開口部56を形成しても筐体52の外観意匠性が損なうことはない。操作ユニット54は、ねじを用いて筐体52に固定してもよいが、ねじが露出することによる外観意匠性の悪化を防止するために、開口部56に嵌合し、接着剤で固定することが好ましい。また、操作ユニット54は、コンパクトな筐体52において比較的大面積を有し、それを装着するための開口部56も大きくなることから、ねじ穴60の配置位置、数の自由度が広がり、これによって、複数の内部部品をねじ止めすることが可能になる。
【0034】
なお、図3の符号64は表示部であり、この表示部64を筐体54に嵌め込むために形成した開口部を利用して他の内部部品をねじ止めするようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施の形態のデジタルカメラを背面側から見た組立斜視図
【図2】レンズリングによってねじ穴を隠すデジタルカメラの説明図
【図3】実施の形態のPDAを正面側から見た組立斜視図
【符号の説明】
【0036】
10…デジタルカメラ、12…筐体、14…表示部、16…開口部、18…レンズユニット、20…前面開口部、22…ハウジング、24…ねじ穴、26…ねじ、28…ドライバ、30…貫通孔、32…舌状片部、50…PDA、52…筐体、54…操作ユニット、56…開口部、58…基板、60…ねじ穴、62…貫通孔、64…表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体が押出成型によって筒状に形成された携帯電子機器であって、
前記筐体に内部部品を固定するためのねじ穴が筐体の内壁面に形成されるとともに、ねじを回すドライバを挿入するための開口部が筐体に形成されていることを特徴とする携帯電子機器。
【請求項2】
前記筐体の前記開口部は、筐体に取り付けられる表示部又は操作部によって閉塞されることを特徴とする請求項1に記載の携帯電子機器。
【請求項3】
筐体が押出成型によって筒状に形成された携帯電子機器の組立方法であって、
前記筐体に形成された開口部からドライバを挿入し、筐体の内壁面に形成されたねじ穴を利用して内部部品を筐体の内壁面にねじ止め固定し、
前記開口部を表示部又は操作部によって閉塞することを特徴とする携帯電子機器の組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−130178(P2009−130178A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304350(P2007−304350)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】