説明

携帯電子機器

【課題】夜間や視界が悪い場合でも水面で発見しやすいハンディトランシーバ等の携帯電子機器を提供する。
【解決手段】自身が水中落下したことを検出する落下検出部と、筐体の内部に設けられた発光体と、落下検出部が水中落下を検出したとき発光体を発光させる発光制御回路とを備え、筐体の背面を半透明にするとともに、前面筐体、背面筐体を封止するシール部材の下部を半透明にし、この半透明部に発光体を覆うカバー部を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯電子機器に関し、特には水に落としても水に浮く携帯電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
マリン用のトランシーバ等、水に近いところで使用される携帯電子機器は多い。このような電子機器は、誤って水が掛かったり、水に落とすことも考えられるため、内部に水が入らないように防水されているものも実用化されている。また、水に落としたとき水中に沈んでしまうと回収できなくなるため、水に浮くようにすることも提案されている(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平04−135038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、夜間や視界が悪いときには、電子機器が水面に浮いていてもどこにあるかを見つけることができない可能性がある。このような場合には、電子機器が水面に浮いているにもかかわらず回収できないという問題点があった。
【0005】
この発明は、夜間や視界が悪い場合でも水面で発見しやすい携帯電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、自身が水中落下したことを検出する落下検出部と、筐体の内部に設けられた発光体と、前記落下検出部が水中落下を検出したとき、前記発光体を発光させる発光制御回路と、を備え、前記筐体の一部に半透明部を設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記筐体は、前面筐体および背面筐体を有し、前記前面筐体および背面筐体の一方または両方を半透明部としたことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記前面筐体および背面筐体は、シール部材を挟んで接合されており、該シール部材はその一部または全部に半透明部を有し、該半透明部に前記発光体を覆うカバー部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記シール部材は、前記半透明部に前記筐体内部に向けて突出する舌部を有し、該舌部に前記カバー部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1〜4の発明において、前記半透明部は、前記発光体が点灯したときその光を透過し、前記発光体が消灯している通常時は前記筐体の外側から内部が透視できない程度の透明度であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、携帯電子機器が水中に落下したとき発光部が発光するため、夜間や視界が悪い環境下であっても、ユーザが容易にその携帯電子機器を発見することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施形態であるトランシーバの外観図である。
【図2】同トランシーバのシール部材の外観図である。
【図3】同トランシーバの下部の内部構造図である。
【図4】同トランシーバのLED点灯制御回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明の実施形態であるトランシーバの外観図である。同図(A)は同トランシーバの正面図、同図(B)は同トランシーバの左側面図、同図(C)は同トランシーバの背面図である。また、図2はトランシーバのシール部材の外観図である。同図(A)は同シール部材の正面図、同図(B)は同シール部材の右側面図、同図(C)は同シール部材の背面図である。また、図3は同トランシーバの下部の内部構造図である。
【0014】
このトランシーバ1は、船舶通信用のハンディ機器である。このトランシーバ1は、電源として軽量且つ大容量のリチウムイオン電池を用いたこと等により全体の重量が軽量化され、筐体11が防水されていることと相まって、水に落下したときでも沈むことなく水面に浮き、水が掛かることにより電極35が導通する。この導通によってLED41が点滅し、夜間や視界が悪い環境下であっても落下したトランシーバ1をユーザが容易に見つけられる。
【0015】
トランシーバ1は、筐体11を含む本体10、および、筐体11の上面に設けられたアンテナ12を有する外観をなしている。筐体11は、前面筐体110、背面筐体111を有している。前面筐体110と背面筐体111は、シール部材13を挟んで接合されている。アンテナ12は、筐体11の上面に上方に向けて設けられている。アンテナ12は、コイル状のアンテナ線を樹脂パイプに収納したロッド状のアンテナである。
【0016】
前面筐体110の前面パネル20には、上からスピーカグリル16、ディスプレイ17、キー群18が設けられている。スピーカグリル16の内部には、スピーカ(不図示)が設けられている。右側板22にはPTTスイッチ19、上側板23のアンテナ12の向かって左側には防水キャップが被せられた充電用コネクタ14が設けられている。キー群18は、図3に示すように、複数のキー構造180からなっている。キー構造180は、筐体11内部の回路基板40(図3参照)の正面側に形成された一対の電極183およびキートップ181からなっている。キートップ181は、可撓性を有する半透明のゴムまたは軟質樹脂で成形されており、周囲に設けられた脚部182で回路基板40上に支持されている。キートップ181の底面には導電膜181Aが形成されている。キートップ181および脚部182は、9キー分が一体に成形され、前面筐体110の前面パネル20の開口部にはめ込まれている。キートップ181は、ユーザによって押圧されると弾性変形して導電膜181Aが一対の電極183に当接し、電極183が導通する。
【0017】
背面筐体111の中央にはクリップ15がそれぞれ設けられている。背面筐体111の下部中央にはバッテリ50(図3参照)を収容するバッテリケース111B(図3参照)が形成されており、バッテリケース111B上にはバッテリケースカバー111Cが着脱可能に設けられている。また、背面筐体111の上部左右には、トランシーバ1の水への落下を検出するための一対の電極35が設けられている。これらの電極35が水によって導通したとき、筐体11内部の回路基板40の裏面側に実装されているLED41(図3参照)が点滅する。
【0018】
前面筐体110は、不透明の樹脂で形成され、略平面の前面パネル20と、前面パネル20の周縁から略直角に後方に立ち上がる左側板21、右側板22、上側板23、底側板24を含む。これら左側板21、右側板22、上側板23、底側板24のエッジに、シール部材13が挿入される溝部110A(図3参照)が形成されている。
【0019】
左側板21から底側板24にかけての溝部110Aのさらに外側のエッジに突起21Aが形成され、右側板22から底側板24にかけての溝部110Aのさらに外側エッジに突起22Aが形成されている。前面筐体110と背面筐体111はシール部材13を挟んで組み付けられ、シール部材13が前面筐体110と背面筐体111の間に露出するが、この突起21A、22Aの部分のみシール部材13は外部から隠される。なお、図1では、同図(B)に左側板21の突起21Aのみを図示しているが、突起22Aは、右側板22の縁部に突起21Aと左右対称に現れる。
【0020】
背面筐体111は、半透明の樹脂で形成され、クリップ15が設けられた背面部から緩やかに上下左右の周縁部が前方に立ち上がる蓋状の形状を有している。さらに、背面筐体111のエッジ全周にわたって、シール部材13が挿入される溝部111A(図3参照)が形成されている。
【0021】
背面筐体111は黒に着色された半透明樹脂であり、その透明度は、筐体11の内部が暗い通常の状態では内部を見通すことができず、筐体11内部のLED41が点灯したときその光を透過する程度である。
【0022】
図2に示すように、シール部材13は、筐体11を正面から見た輪郭と略同形状のリング状に形成されており、前面筐体110、背面筐体111の溝部に嵌合するウェブ130およびウェブ130の側面中央から外側に突出する外側フランジ131、内側フランジ132を有している。外側フランジ131は、前面筐体110の左右の突起21A、22Aに嵌合する箇所が切り欠かれ、切欠部131A、131Bとなっている。また、内側フランジ132には、複数の舌部140〜148が形成されている。ウェブ130および切欠部131A,131Bを除くフランジ131、132は均一な厚みである。後述するように厚みに変化が持たせられた舌部140、147、148も内側フランジ132に相当する幅は他の内側フランジ132と同じ厚みである。シール部材13がこれらウェブ130およびフランジ131、132の構造を有することにより、組み立てられた筐体11の内部は密に防水される。
【0023】
また、シール部材13は、二点鎖線で示した仮想の境界線150付近を境界として上下で色が異なっている。境界線150は切欠部131A,131Bを通るように設定されている。この境界線150よりも下側が乳白色の半透明部13Aになっており、境界線150よりも上側が青色の不透明部13Bになっている。トランシーバ1が組み立てられたとき、境界線150は突起21A、22Aの背後に隠れ、突起21A、22Aよりも底面側に半透明部13Aが露出し、突起21A、22Aよりも上面側に不透明部13Bが露出する。これにより、半透明部13Aと不透明部13Bの境界で色が濁った箇所が突起21A、22Aの背後に隠され、シール部材13のツートンを実現しつつ美観が維持される。
【0024】
また、内側フランジ132に形成された舌部140〜148のうち、半透明部13Aの領域であるリングの下辺中央に設けられた舌部140は、緩やかな円弧状をなしており、その正面が他の内側フランジ132よりも厚みが大きくなっている(図3参照)。この正面側にさらにLEDカバー149が設けられている。LEDカバー149は、シール部材13が正面筐体110の溝部にはめ込まれたとき、回路基板40上のLED41を嵌入させる筒状に形成されている。LED41がLEDカバー149に嵌入していることにより、点光源であるLED41の光を半透明のLEDカバー149および舌部140が拡散して面光源にすることができる。また、舌部140が厚いことにより、十分な光拡散を実現することができる。この拡散した光が、半透明の背面筐体111の下部領域を広く照らして背面筐体111の下部を光らせ、シール部材13の半透明部13A全体を光らせる。なお、舌部140およびLEDカバー149の形状は図2に示したものに限定されない。
【0025】
リング内側の四隅および左右側辺上部に設けられた舌部141〜146は、前面筐体110と背面筐体111を組み付けるネジを嵌通させるネジ穴を有している。また、リング内側の左右側辺下部に設けられた舌部147、148は、先端部が内側フランジ132よりも厚みが大きく膨らんでいる。シール部材13を前面筐体110、背面筐体111に挟んでトランシーバ1を組み立てるとき、固定用のネジが舌部141〜146のネジ穴を嵌通し、舌部147、148の膨らみが筐体11の内側に突出する。これにより、トランシーバ1が組み立てられたのち、シール部材13が筐体11から外れることなく固定される。
【0026】
前面筐体110と背面筐体111が、上記形状のシール部材13を挟んで接合されることにより、前面筐体110および背面筐体111の接合部から筐体11の内部に水が侵入することが防止される。
【0027】
図3はトランシーバ1の一部の内部構造を説明する図である。この図は、トランシーバ1の内部を左側面から見た図である。筐体11内部の前面側(前面筐体110内)に、各種回路が実装されるプリント配線基板40が設けられ、その下端部にLED41が実装されている。このLED41は自己点滅型のLEDであり、図4に示す点灯制御回路によって点灯(点滅)/消灯が制御される。また、LED41にはシール部材13の舌部140上に形成されているLEDカバー149が被せられている。
【0028】
これにより、点光源であるLED41の光が拡散されて舌部140全体が面光源のように発光する。LEDカバー149および舌部140で拡散された光は、シール部材13の半透明部13A、および、半透明の背面筐体111、キートップ181により外部から視認可能になる。
【0029】
図4は、LED41の点灯制御回路を示す図である。この点灯制御回路が本発明の発光制御回路に対応する。この点灯制御回路は、一対の電極35(35A,35B)が導通することによってPchMOS電解効果トランジスタ(FET)Q1およびNPNトランジスタQ2がオンし、トランジスタQ2のコレクタと電源との間に接続されているLED41が点滅(点灯)する構成の回路である。
【0030】
電源(リチウムイオン電池)とこの回路とは電源スイッチを介さずに直接接続されており、電源がオフの状態でもトランシーバ1が水に落下したときはLED41を点滅させる。電源と接地との間に抵抗R1、抵抗R2、一対の電極35(35A,35B)が直列に接続されている。抵抗R1と抵抗R2との接続点はFETQ1のゲートに接続されている。FETQ1のソースは電源に接続され、FETQ1のドレインと接地との間には、順方向のダイオードD1およびコンデンサC1が直列に接続されている。ダイオードD1とコンデンサC1との接続点はトランジスタQ2のベースに接続されている。なお、トランジスタQ2は抵抗内蔵のデジタル動作用のトランジスタであり、ベースには直列に抵抗が接続されている。トランジスタQ2のコレクタと電源との間にLED41が接続され、トランジスタQ2のエミッタは接地されている。
【0031】
トランシーバ1が水に落下して電極35A、35B間が導通すると、FETQ1のゲートに抵抗R1,R2で分圧された電源電圧が印加される。これにより、FETQ1がオンし、ダイオードD1を介してコンデンサC1が急速に充電される。このコンデンサC1の充電によってトランジスタQ2のベース電圧が持ち上げられ、トランジスタQ2がオンする。トランジスタQ2のオンにより、LED41に電流が流れ、LED41が点滅する。
【0032】
トランシーバ1が水から取り上げられて電極35A、35B間の導通が遮断されると、FETQ1がオフするが、コンデンサC1が電源電圧近くまで充電されているため、このコンデンサC1の電荷がトランジスタQ2のベース・エミッタを介して放電されるまで、トランジスタQ2はオン状態を維持する。この電極35A,35Bの遮断後のオン時間が30〜60秒となるように、コンデンサC1の静電容量が設定される。これにより、ユーザが、暗い環境で、トランシーバ1を水面から取り上げたときでもLED41の点灯状態を維持して見失わないようにしている。
【0033】
LED41が点灯(点滅)したとき、その光は、シール部材13のLEDカバー149および舌部140によって拡散および伝搬され、シール部材13の半透明部13Aが明るく光るとともに、半透明に構成されている背面筐体111および前面筐体110のキートップ181からもその光が漏れて、ユーザに視認可能になる。
【0034】
なお、この実施形態では、LED41として自己点滅LEDを用いたが、通常のLEDを用いてもよく、点滅回路を別途外部に設けてもよい。
また、この実施形態では、背面筐体111および前面の筐体110のキー群18を半透明としたが、いずれか一方でもよく、他の箇所を半透明にしてもよい。また、背面筐体111全体を半透明にせず、LED41(発光体)に近い部分のみを半透明にしてもよい。
【0035】
また、この実施形態では、船舶通信用のハンディトランシーバを例にあげて説明したが、この発明の携帯電子機器は、ハンディトランシーバに限定されない。
【0036】
また、この実施形態のトランシーバ1は防水かつ水に浮く(水よりも比重が小さい)構成であったが、水と比重が同じまたは水よりも比重が大きい携帯電子機器に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 トランシーバ
11 筐体
12 アンテナ
13 シール部材
13A 半透明部
16 スピーカグリル
18 キー群
21A、22A (筐体の)突起
35 電極
110 前面筐体
111 背面筐体
149 LEDカバー
181 キートップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身が水中落下したことを検出する落下検出部と、
筐体の内部に設けられた発光体と、
前記落下検出部が水中落下を検出したとき、前記発光体を発光させる発光制御回路と、
を備え、前記筐体の一部に半透明部を設けたことを特徴とする携帯電子機器。
【請求項2】
前記筐体は、前面筐体および背面筐体を有し、前記前面筐体および背面筐体の一方または両方を半透明部とした請求項1に記載の携帯電子機器。
【請求項3】
前記前面筐体および背面筐体は、シール部材を挟んで接合されており、
該シール部材はその一部または全部に半透明部を有し、該半透明部に前記発光体を覆うカバー部が形成されている請求項2に記載の携帯電子機器。
【請求項4】
前記シール部材は、前記半透明部に、前記筐体内部に向けて突出する舌部を有し、該舌部に前記カバー部が形成されている請求項3に記載の携帯電子機器。
【請求項5】
前記半透明部は、前記発光体が点灯したときその光を透過し、前記発光体が消灯している通常時は前記筐体の外側から内部が透視できない程度の透明度である請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の携帯電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−156364(P2012−156364A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15223(P2011−15223)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】