説明

携帯電話端末、電子決済システム及びその方法

【課題】 モバイルマナーを遵守したユーザが経済的なメリットを享受でき、これによりモバイルマナーの定着に大きく貢献できる携帯電話端末、電子決済システムおよびその方法を提供する。
【解決手段】 端末動作モード設定部22は、起動センサ21が改札口の通過を検知すると、携帯電話端末5の動作モードをサイレントモードに設定し、音響回路24は呼び出し音および着信音の鳴動を停止させる。ポイント算出部29は動作モード判定部28の判定結果に基づいて課金状態でサイレントモードを継続した場合、割引データを情報格納部23に送る。情報格納部23は料金精算時にポイント算出部29からの割引データに基づいて精算料金に対して割引を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話端末を用いた電子決済技術に係り、特に、通信状態が制限される環境下での携帯電話端末の使用マナー(以下、モバイルマナー)を遵守したユーザが所定のメリットを享受でき、これによりモバイルマナーの定着に寄与する携帯電話端末および該携帯電話端末を利用した電子決済技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話端末の普及は著しく、それに伴って、携帯電話端末の使用時に周囲に迷惑をかけないようにするモバイルマナーが社会的な問題となっている。具体的には、鉄道、航空機などの公共交通機関を始めとして、図書館、ホールなどの公共施設、さらには劇場や映画館、レストランなど不特定多数の人が出入りする場所などでは、通話や音響鳴動の停止が望まれている。特に、航空機や鉄道の優先席付近は、航空機器やペースメーカへの影響に配慮して通信自体の停止が求められる制限の厳しいエリアが設定されている。
【0003】
そこで、特許文献1のように、通信状態が制限されるエリア内に通話モードをとる携帯電話端末が入ると、携帯電話端末にモード切り替え信号を送って携帯電話端末の動作モードを通話モードからページャモードに切り替えるといった技術が提案されている。しかし、この従来技術では、通信制限エリアに入ってモード切り替え信号を携帯電話端末が受け取ると、携帯電話端末の動作モードが自動的にページャモードに切り替わるので、ユーザは通信制限が強制的に行われたと感じることになる。つまり、自主性に立脚したモバイルマナーの遵守とは言えず、ユーザは自分の意思が無視された印象を受け、ユーザからの反発をかうおそれがあった。
【0004】
このような欠点を解消した技術として、特許文献2の無線通信システムが提案されている。この従来技術は、通信制限エリアの入口となる改札口を通過すると、改札機側のローカル送受信部が携帯電話端末に通信制限を要求し、携帯電話端末で要求受諾を行い、さらには改札機側のローカル送受信部に受諾確認を求めるようになっている。この技術によれば、ユーザが自ら納得して通信制限を行っており、ユーザの意思を尊重していることになるので、システムを利用するユーザから反発が起きる心配がない。
【特許文献1】特開平7−245782号公報
【特許文献2】特開2002−199457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の無線通信システムでは、通信制限エリアの入口である改札口を通過するたびに通信制限に関する受諾および受諾確認を行わなくてはならない。このため、乗換えが多くて改札口を頻繁に出入りする場合、ユーザは操作が煩わしくなって通信制限を怠ることになりかねない。その結果、該システムの利用率は低くなってしまい、モバイルマナーを定着させることは難しかった。
【0006】
ところで最近では、携帯電話端末を利用して料金精算を行う電子決済システムが注目を集めている。このシステムでは、携帯電話端末を所定の機器に近づけて近距離無線通信を行い、ユーザへの課金に関する決済情報を処理し、決済情報について電子決済システムの構成機器との間でやり取りするようになっている。この携帯電話端末を使った電子決済システムは、優れた利便性を発揮でき、鉄道や地下鉄、航空機での料金精算やコンサートなどへの入場決済など、様々な分野での利用が考えられている。
【0007】
ところで、以上のような決済機能付きの携帯電話端末は、料金精算による残高変化などユーザ側の状態変化を検出する機能を有している。しかし、電子決済システムに利用される携帯電話端末では、状態変化の検出機能は決済機能のみに特化しており、決済機能が他の機能と連携して動作していない。したがって、決済機能付きの携帯電話端末および電子決済システムが、モバイルマナーの向上に寄与するということはなかった。
【0008】
上述したように、携帯電話端末は社会生活に深く浸透しており、所定のエリアで通信状態を制限して使用するというモバイルマナーの徹底は急務となっている。しかし、従来技術では、ユーザの自主性が軽視されていたり、ユーザの意思を尊重するあまりに操作の煩雑さが増していたため、モバイルマナーを定着させるには至っていなかった。また、決済機能付きの携帯電話端末およびこれを用いた電子決済システムでは、モバイルマナーを定着させるための技術とは結びついていなかった。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みて提案されたものであり、その目的は、モバイルマナーを遵守したユーザが経済的なメリットを享受でき、これによりモバイルマナーの定着に大きく貢献できる携帯電話端末、電子決済システムおよびその方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために、請求項1の発明は、ユーザへの課金に関連する決済情報について処理する決済情報処理手段と、前記決済情報を電子決済システムの構成機器との間でやり取りする決済情報通信手段とを有する携帯電話端末であって、前記携帯電話端末の動作モードとして、通信を行う通信モードと、呼び出し音・着信音などの音響鳴動もしくは通信自体を停止する通信制限モードのいずれかに設定する動作モード設定手段と、通信状態が制限される通信制限エリアへの出入りを検知する通信制限エリア検知手段と、前記携帯電話端末における課金状態中の動作モードを記憶する動作モード記憶手段と、前記決済情報通信手段は、前記動作モード記憶手段が記憶した動作モードに関する情報を、前記決済情報の参照情報として前記電子決済システムに通知するように構成したことを特徴とする。
【0011】
以上の構成を有する請求項1の発明では、課金状態中の動作モードの情報を、決済情報の参照情報として電子決済システムに通知するため、ユーザが課金状態中に通信制限モードを維持していたかどうか、つまりモバイルマナーを守ったかどうかを、電子決済システム側に知らせることができる。したがって、モバイルマナーを守ったユーザに対する評価を、電子決済システム側に蓄積することが可能である。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の携帯電話端末において、課金状態中に前記通信制限モードを維持したか否かを判定する動作モード判定手段と、前記動作モード判定手段の判定結果に基づき、所定の計算式に従って通常の課金に対する割引処理を行う割引処理手段を備えたことを特徴としている。
【0013】
請求項7の発明は、前記決済情報処理手段、前記決済情報通信手段および前記動作モード設定手段を有する前記携帯電話端末を利用したシステムであって、前記決済情報に基づいて該携帯電話端末のユーザへの課金を行う電子決済システムにおいて、前記携帯電話端末における課金状態中の動作モードを記憶する動作モード記憶手段と、前記動作モード記憶手段が記憶した動作モードに関する情報を、前記決済情報の参照情報として取得し、前記携帯電話端末の動作モード状態が課金状態中に前記通信制限モードを維持したか否かを判定する動作モード判定手段と、前記動作モード判定手段の判定結果に基づき、所定の計算式に従って通常の課金に対する割引処理を行う割引処理手段を備えたことを特徴としている。
【0014】
請求項8の発明は、上記請求項7の発明を方法の観点からとらえたもので、前記決済情報処理手段、前記決済情報通信手段および前記動作モード設定手段を有する前記携帯電話端末を利用した方法であって、前記決済情報に基づいて該携帯電話端末のユーザへの課金を行う電子決済方法において、前記携帯電話端末における課金状態中の動作モードを記憶する動作モード記憶ステップと、前記動作モード記憶ステップにて記憶した動作モードに関する情報を、前記決済情報の参照情報として取得し、前記携帯電話端末の動作モード状態が課金状態中に前記通信制限モードを維持したか否かを判定する動作モード判定ステップと、前記動作モード判定ステップでの判定結果に基づき、所定の計算式に従って通常の課金に対する割引処理を行う割引処理ステップを含むことを特徴としている。
【0015】
以上の構成を有する本発明では、課金状態での携帯電話端末の動作モードの情報を、決済情報の参照情報として電子決済システムに通知した上で、この参照情報に基づいて携帯電話端末が課金状態中は通信制限モードを維持したと動作モード判定手段が判断すれば、ユーザはモバイルマナーを遵守したと認識して、割引処理手段が所定の計算式に従って通常の課金に対する割引処理を実施する。また、携帯電話端末が課金状態中に通信制限モードを維持しなかったと動作モード判定手段が判断すれば、ユーザがモバイルマナーを遵守しなかったと認識して、割引処理手段はユーザへの課金の割引を計算せず、通常の決済処理を実施することになる。
【0016】
このように、本発明によれば、携帯電話端末を利用して電子決済を行う時、モバイルマナーを守ったユーザは、課金の割引といった経済的なメリットを受けることができる。経済的なメリット享受は、ユーザにとってモバイルマナーを守ろうとする強い動機となり、モバイルマナーを確実に定着させることができる。
【0017】
また、ユーザは、メリットを得ることが主眼であるにせよ、自らの意思で通信制限を積極的に実施しているので、強制的に通信制限されているといった意識はなく、自主性を持ってモバイルマナーを遵守していると実感できる。このようなユーザの感覚は、本発明を適用した電子決済システムに対しても好意的に作用することになり、システムの利用度向上にもつながる。しかも、電子決済システムが広がりを見せる分野は、電車や航空機など、モバイルマナーが要求される分野と重なっているため、本発明に係る電子決済システムが普及すれば、モバイルマナーもより深く浸透するといった相乗効果が期待できる。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の携帯電話端末において、前記動作モード設定手段は、前記携帯電話端末の動作モードを、課金状態の開始時には前記通信モードから前記通信制限モードに切り替え、課金状態の終了時には前記通信制限モードから前記通信モードに戻すように構成したことを特徴としている。
【0019】
以上の請求項3の携帯電話端末では、課金状態になると自動的に通信制限モードに切り替わるので、ユーザはモード切り替えの受諾や受諾確認といった操作に煩わされることがない。したがって、モバイルマナーの実践が容易となる。また、課金状態が終了すると、通常の通信モードへと復帰するので携帯電話端末の使い勝手が低下することがない。
【0020】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の携帯電話端末において、前記携帯電話端末が課金状態に入ると起動するタイマを設け、前記動作モード設定手段は、前記タイマの満了に伴って前記携帯電話端末の動作モードを前記通信モードから前記通信制限モードへと切り替えるように構成したことを特徴としている。
【0021】
このような請求項4の発明では、携帯電話端末が課金状態に入るとタイマが起動し、その満了に伴って、動作モード設定手段が携帯電話端末の動作モードを通信モードから通信制限モードへと切り替える。つまり、課金の開始直後に携帯電話端末の動作モードが通信モードから通信制限モードへと切り替わるのではなく、前記タイマの満了時間分だけ遅れて、動作モードの切り替えが行われることになる。
【0022】
したがって、携帯電話端末が課金状態に入ってもタイマの満了時間だけは通常の通信モードが維持されることになり、課金状態開始時点での通話や通信を最後まで続けることができる。このため例えば、駅の改札口に入る時を課金開始時とした場合に、改札口を通過してから電車に乗るまでの間、ホームでの滞在時には通信モードが続くことになり、携帯電話端末は優れた使い勝手を確保することができる。
【0023】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の携帯電話端末において、前記携帯電話端末の移動に伴って電波強度が弱まると、より電波強度の強い無線基地局と再接続を行うハンドオーバ処理部を有しており、このハンドオーバ処理部は、前記携帯電話端末が課金状態に入るとハンドオーバ処理を停止するように構成し、前記動作モード設定手段は、前記ハンドオーバ処理部の停止により前記携帯電話端末の通信状態が強制的に切断されると、前記携帯電話端末の動作モードを前記通信モードから前記通信制限モードへと切り替えるように構成したことを特徴としている。
【0024】
以上のような請求項5の発明では、携帯電話端末が課金状態に入ると、ハンドオーバ処理部が停止し、電波強度の強い無線基地局との再接続は阻止される。したがって、携帯電話端末が移動して接続中の無線基地局からの電波が届かなくなれば、通信は強制的に切断される。このとき、動作モード設定手段は携帯電話端末の動作モードを通信モードから通信制限モードへと切り替える。
【0025】
つまり、請求項5の発明も、前記請求項4の発明と同じく、課金状態に入った直後に、携帯電話端末の動作モードが通信モードから通信制限モードに切り替わるのではなく、接続中の無線基地局からの電波が届く限りは、携帯電話端末が課金状態に入った後でも通信モードが維持されることになる。したがって例えば、駅の改札口に入る時を課金開始時とした場合に、改札口を通過してから電車に乗るまでの間、ホームでの滞在時には通信モードが続くことになり、携帯電話端末は良好な使い勝手を維持することができる。
【0026】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の携帯電話端末においてユーザの歩行などに伴う該携帯電話端末の継続的な振動を感知する移動感知手段を備え、前記動作モード設定手段は、前記移動感知手段が該携帯電話端末の継続的な振動を感知した時、前記携帯電話端末の動作モードを前記通信制限モードから前記通信モードへと切り替えるように構成したことを特徴としている。
【0027】
上述した請求項4、5の発明が課金状態開始時にある程度だけ通信モードを継続させて携帯電話端末の使い勝手を良くした発明であったのに対して、請求項6の発明は、課金状態の終了よりも少し前に通信モードを復活させて携帯電話端末の使い勝手を高めたものである。例えば、駅の改札口に出る時を課金終了時とした場合に、大きなターミナル駅では電車を降りてから改札口までの距離が長い。電車内で通信を規制されていたユーザは、電車を降りた直後に通信を再開したいという欲求が強いので、改札口を出るまでモバイルマナーを強制されると、不満が募ることになる。
【0028】
ところで、通信状態が制限されるエリアでは、建物の中は勿論のこと、乗り物の中でも(乗り物自体が動いているにせよ)、ユーザ自身は座っているか、立っているかであり、ユーザが大きく移動することはない。このように通信制限エリア内のユーザは通常、停止状態にあるため、近くの人が携帯電話端末で通話していると、自分の近くに長時間とどまることになって不快感を抱くことになり、モバイルマナーが問題となる。
【0029】
逆に、近くの人が携帯電話端末で通話していても、その人が通り過ぎていくのであれば、自分の近くにはとどまらないので不快感を覚えることが少ない。つまり、電車やホールなどの席を立って歩いている人が通常の通信モードにて携帯電話端末を使っていたとしても、周囲の人はモバイルマナーを破っていると感じることは少ない。
【0030】
そこで請求項6の発明では、ユーザが電車を降りるなどして携帯電話端末が継続的に振動したことを移動感知手段が感知すれば、たとえ課金状態が終了する前であっても通信制限モードを解除することができる。これにより、電車を降りてモバイルマナーに抵触していない状態であれば、課金の割引を失うことなく通信モードで携帯電話端末を使うことが可能である。
【発明の効果】
【0031】
以上述べたように、本発明の携帯電話端末、電子決済システムおよびその方法によれば、課金状態中の動作モードの情報を、決済情報の参照情報として、電子決済システムに送り、課金状態中にモバイルマナーを遵守したユーザだけが課金の割引を獲得できるようにしたため、ユーザはモバイルマナーを積極的に守るようになり、モバイルマナーの定着に大きく貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
〔1.第1の実施形態〕
続いて、本発明を実施するための最良の形態(以下「実施形態」という)について、図面を参照して具体的に説明する。
【0033】
〔1−1.構成〕
〔1−1−1.全体構成〕
図1は本実施形態の全体構成を示すブロック図である。この図1に示すように、第1の実施形態は、鉄道料金の精算機能を持つ携帯電話端末5を利用した電子決済システム10であって、鉄道会社のデータベース1と、社内用のネットワーク2と、料金精算のための入口側センサ3と、料金精算のための出口側センサ4と、携帯電話妨害装置6から構築されている。なお、本実施形態を採用した鉄道では、電車内および駅構内を、携帯電話端末5の通信状態を制限するエリアに設定しており、携帯電話端末5にて課金の開始と終了を行う改札口が通信制限エリアの出入り口となっている。
【0034】
データベース1は、センサ3、4からネットワーク2を経由して送られてくる携帯電話端末5の情報について内容の解析および蓄積を行うものである。また、センサ3、4は駅の改札機に設置されており、携帯電話端末5が近づくと近距離無線通信を行う部分であって、ネットワーク2との間で通信を中継する。
【0035】
また、駅の改札口を通信制限エリアの出入り口としているので、センサ3、4は、携帯電話端末5側の通信インターフェースと共に、通信制限エリアに対する携帯電話端末5の出入りを検知する通信制限エリア検知手段の役割を担うことになる。さらに、携帯電話妨害装置6は携帯電話端末5の使用を抑制する装置であって、ホーム端の電車との間に位置するゲートに取り付けられている。
【0036】
〔1−1−2.携帯電話端末5の構成〕
図2は携帯電話端末5の構成を示す機能ブロック図である。携帯電話端末5は、起動センサ21、端末動作モード設定部22、情報格納部23、音響回路24、無線部25、動作モード記憶部27、動作モード判定部28、ポイント算出部29によって構成される。
【0037】
携帯電話端末5の通信機能における動作モードとしては、通常の通信モードと、呼び出し音および着信音の音響鳴動を停止するサイレントモード、通信自体を停止する非通信モードがある。このうち、サイレントモードが通信制限エリアにて要求される通信制限モードとなる。また、携帯電話端末5は、基本的にコンピュータ装置と同様の構成であり、通信機能を停止させた状態でもPDAとして十分に利用可能な性能を有している。
【0038】
起動センサ21は、料金精算のためにセンサ3、4と近距離無線通信を行い、情報格納部23に対し課金の開始および終了など課金に関する情報を送る部分であって、改札口の通過情報や、乗車駅又は降車駅に関する情報などをやり取りするようになっている。また、起動センサ21は、改札口の通過情報を端末動作モード設定部22に送っている。
【0039】
端末動作モード設定部22は、ユーザ操作による動作モード指令、あるいは課金機能起動センサ21からの改札口の通過情報を受けて、携帯電話端末5の動作モードを変更する部分である。より詳しくは、端末動作モード設定部22は、次のような設定をとる。すなわち、端末動作モード設定部22は、ユーザ操作によりサイレントモード指令を入力した場合、および起動センサ21が入口側センサ3との通信によって改札口の通過を検知した場合、携帯電話端末5の動作モードをサイレントモードに設定して音響回路24に制御信号を送る。
【0040】
また、端末動作モード設定部22は、ユーザ操作により非通信モード指令を入力した場合には携帯電話端末5の動作モードを非通信モードに設定して無線部25に制御信号を送る。さらに、端末動作モード設定部22は、ユーザ操作により通信モード指令を入力した場合、および起動センサ21が出口側センサ4との通信によって改札口の通過を検知した場合は、携帯電話端末5の動作モードを通信モードに設定し、音響回路24および無線部25に制御信号を送る。
【0041】
音響回路24は、端末動作モード設定部22からの制御信号により呼び出し音および着信音の鳴動に関する制御を行う回路であり、呼び出し音および着信音の音響鳴動を停止させてサイレントモードを実現させる部分である。無線部25は、端末動作モード設定部22からの制御信号によって、電波の停止、送出に関する制御を行い、電波の停止によって非通信モードを実現し、電波の送出によって通信モードを実現する部分である。
【0042】
情報格納部23は、課金機能起動センサ21からの信号による課金の実行として、予め蓄積された電子マネーからの減算処理を行う部分である。具体的には、改札口を入る時に入口側センサ3と通信して初乗り料金の減算を開始し、改札口を出る時に出口側センサ4と通信して乗車距離に応じた料金精算分を減算して、課金を終了する。また、情報格納部23は、料金精算時に、後述するポイント算出部29からの割引データに基づいて、精算料金に対して割引を行う部分である。
【0043】
動作モード記憶部27は、モード識別フラグからなり、そのオンオフにより携帯電話端末5の動作モードの状態を記憶しておく部分である。動作モード判定部28は、モード識別フラグの状態を確認することで、携帯電話端末5が動作モードを維持したか否かを判定する部分である。ポイント算出部29は、動作モード判定部28の判定結果に基づいて、課金状態でサイレントモードを継続した場合には、所定の計算式に従って通常の課金に対する割引料金を計算し、割引ポイントに関するデータを情報格納部23に送る部分である。
【0044】
〔1−2.動作〕
続いて、本実施形態の動作について図3のフローチャートを用いて説明する。図3のフローチャートでは駅構内および乗車中にサイレントモードをとる場合の動作について説明している。
【0045】
携帯電話端末5のユーザが、携帯電話端末5にて料金精算が可能な鉄道を利用する際に、乗車のために改札口を通ると、入口側センサ3に携帯電話端末5を近づけることで入口側センサ3は携帯電話端末5を認識し、改札口の通過情報を課金機能の起動センサ21に通知する。起動センサ21は情報格納部23に対して課金の開始情報を送り、情報格納部23は初乗り料金の課金を開始する(ST1)。
【0046】
動作モード記憶部27ではモード識別フラグをセットする(ST2)。また、起動センサ21は改札口の通過情報を端末動作モード設定部22に中継する。起動センサ21から改札口通過情報を受けた端末動作モード設定部22は、携帯電話端末5の動作モードをサイレントモードに設定し、音響回路24に制御信号を送る。
【0047】
音響回路24は端末動作モード設定部22からの制御信号を受けて呼び出し音および着信音の音響鳴動を停止させ、サイレントモードを実現する(ST3)。したがって、課金状態にある携帯電話端末5は、ユーザが電車に乗っている間、サイレントモードをとることになる。その結果、着信等の状況が発生しても周囲の人に対して不快感を与えることはなくなり、モバイルマナーが実践されたことになる。
【0048】
携帯電話端末5のユーザが乗車している間は、携帯電話端末5における動作モードの変化を確認し(ST4)、動作モードの変化があった場合にはモード識別フラグをクリアする(ST5)。また、動作モードの変化がない場合にはモード識別フラグのセットが維持される。
【0049】
そして、携帯電話端末5のユーザが降車して再度、改札口を通る際には(ST6)、乗車時同様、出口側センサ4に携帯電話端末5を近づけることによりセンサ4は携帯電話端末5を認識し、改札口を通過した情報を起動センサ21に通知する。起動センサ21は改札口を通過した情報を端末動作モード設定部22に中継し、端末動作モード設定部22は音響回路24の停止を解除して通常の通信モードに戻す(ST7)。
【0050】
携帯電話端末5のユーザが降車のために出口側センサ4を通過する際、動作モード判定部28はモード識別フラグを確認し(ST8)、モード識別フラグがセットされたままであれば(フラグがオン)、課金状態である乗車中にはサイレントモードが継続したこと、言い換えれば乗車中において周囲の人に迷惑をかける行為を行っていないと判断する。
【0051】
この場合、ポイント算出部29は、所定の計算式に従ってユーザへの課金の割引ポイントを算出し(ST9)、割引データを情報格納部23に送る。割引データを受け取った情報格納部23は、予め蓄積された電子マネーから精算運賃分を減算する際に、割引運賃における減算を行う(ST10)。
【0052】
一方、動作モード判定部28はモード識別フラグを確認した際(ST8)、モード識別フラグがクリアされていれば(フラグがオフ)、乗車中にはサイレントモードが中断されたことになり、乗車中に呼び出し音や着信音が鳴動して周囲の人に迷惑をかける行為を行ったと判断する。この場合には、情報格納部23は、予め蓄積された電子マネーから精算運賃分を減算する際に、前記割引運賃ではなく、通常運賃に基づいて減算を行う(ST11)。
【0053】
〔1−3.作用効果〕
以上の構成を有する本実施形態の作用効果は、次の通りである。すなわち、通信制限エリア内である駅構内および電車内において、携帯電話端末5の動作モードがサイレントモードを維持したと、動作モード判定部28が判断すれば、ユーザはモバイルマナーを遵守したことになり、ポイント算出部29がユーザへの課金の割引を算出して、割引料金での料金精算がなされることになる。このような経済的なメリットは、ユーザにとってモバイルマナーを守ろうとする引き金になり、モバイルマナーの定着に寄与することができる。
【0054】
また、ユーザにとっては、たとえ経済的なメリットを受けるといった利己的なきっかけであるにせよ、自主的にモバイルマナーを遵守していることに変わりはない。そのため、強制的に通信制限がなされているといった印象を抱くことがなく、反発を原因として電子決済システムの利用度が低下することがない。
【0055】
しかも、本実施形態は、鉄道の料金精算に適用した電子決済システムなので、モバイルマナーの遵守と、ユーザが受ける経済的なメリットが直結しており、電子決済システムの普及にも貢献できる。さらには、システム利用度の向上により、モバイルマナーもいっそう深く浸透するといった相乗効果が期待できる。
【0056】
また、本実施形態では、通信制限エリアの出入り口である改札口を携帯電話端末5が通過すれば、自動的に音響回路24が停止してサイレントモードに切り替わることになる。したがって、ユーザはモード切り替えの受諾や受諾確認といった操作に煩わされることがなく、容易にモバイルマナーを実践することができる。さらに、携帯電話端末5が改札口を再度通過して通信制限エリアから出た場合には、音響回路24の停止が解除されるので、携帯電話端末5の使い勝手が低下する心配がない。
【0057】
〔2.第2の実施形態〕
〔2−1.構成〕
第2の実施形態は、航空会社のマイレージサービスを処理する電子決済システムに適用したもので、データベース1は航空会社のものである。ただし、基本的な構成に関しては、図1のブロック図に示した構成と同じであるため、これを用いて説明する。
【0058】
第2の実施形態において、入口側センサ3および出口側センサ4はマイレージ精算のためのセンサであって搭乗口に設置される。また、起動センサ21はマイレージ精算機能を起動させるためのセンサとなる。情報格納部23は、起動センサ21からの信号によるマイレージ精算の実行として、所定マイルの加算処理を行う情報格納部となる。
【0059】
さらに、ポイント算出部29は、動作モード判定部28の判定結果に基づいて、所定の計算式に従って通常のマイレージ精算に対するボーナスマイルを計算し、このボーナスマイルを情報格納部23に送るボーナスマイルの算出部となる。なお、動作モード記憶部27の構成については、第1の実施形態と全く同じである。
【0060】
本実施形態では、航空機の内部を通信制限エリアと設定するので、要求される動作モードは通信自体を停止する非通信モードとなる。したがって、端末動作モード設定部22は、センサ21が入口側センサ3との通信によって搭乗口の通過を検知した場合、携帯電話端末5の動作モードを非通信モードに設定して無線部25に制御信号を送るようになっている。
【0061】
〔2−2.動作〕
図4のフローチャートでは航空機内で非通信モードをとる場合の動作について説明している。携帯電話端末5のユーザが、携帯電話端末5にてマイレージサービスを実施する航空会社を利用する際に、搭乗のために搭乗口を通ると、入口側センサ3に携帯電話端末5を近づけることで入口側センサ3は携帯電話端末5を認識し、搭乗口の通過情報をマイレージ精算機能の起動センサ21に通知する。起動センサ21は情報格納部23に対しマイレージ精算の開始情報を送り、情報格納部23はマイレージ精算を開始する(ST21)。
【0062】
動作モード記憶部27ではモード識別フラグをセットする(ST22)。また、起動センサ21は搭乗口の通過情報を端末動作モード設定部22に中継する。起動センサ21から改札口通過情報を受けた端末動作モード設定部22は、携帯電話端末5の動作モードを非通信モードに設定し、無線部25に制御信号を送る。
【0063】
無線部25は端末動作モード設定部22からの制御信号を受けて、電波の停止に関する制御を行い、非通信モードを実現する(ST23)。したがって、携帯電話端末5は、ユーザが航空機に乗っている間、非通信モードをとることになる。その結果、航空機器に悪影響を与える心配が無く、モバイルマナーが実践されたことになる。
【0064】
携帯電話端末5のユーザが搭乗している間は、携帯電話端末5における動作モードの変化を確認し(ST24)、動作モードの変化があった場合にはモード識別フラグをクリアする(ST25)。また、動作モードの変化がない場合にはモード識別フラグのセットが維持される。
【0065】
そして、携帯電話端末5のユーザが航空機を降りて再度、搭乗口を通る際には(ST26)、出口側センサ4に携帯電話端末5を近づけることによりセンサ4は携帯電話端末5を認識し、搭乗口を通過した情報を起動センサ21に通知する。能起動センサ21は搭乗口を通過した情報を端末動作モード設定部22に中継し、端末動作モード設定部22は無線部25の電波停止を解除して通常の通信モードに戻す(ST27)。
【0066】
ユーザが出口側センサ4を通過する際、動作モード判定部28はモード識別フラグを確認し(ST28)、モード識別フラグがセットされたままであれば(フラグがオン)、航空機内で非通信モードを継続したと判断する。この場合、ポイント算出部29は、所定の計算式に従って通常のマイレージ精算に対するボーナスマイルを算出し(ST29)、ボーナスマイルデータを情報格納部23に送る。ボーナスマイルデータを受け取った情報格納部23は、ボーナスマイルを加算してマイレージ精算を行う(ST30)。
【0067】
一方、動作モード判定部28はモード識別フラグを確認した際(ST28)、モード識別フラグがクリアされていれば(フラグがオフ)、機内で非通信モードが中断されたことになり、モバイルマナーが守られなかったと判断する。この場合には、情報格納部23は通常のマイレージ精算を実施する(ST31)。
【0068】
〔2−3.作用効果〕
以上の構成を有する本実施形態によれば、通信制限エリア内である航空機内にて携帯電話端末5の動作モードが非通信モードを維持したと、動作モード判定部28が判断すれば、携帯電話端末5のユーザはモバイルマナーを遵守したことになり、ポイント算出部29がボーナスマイルを算出して、これをマイレージ精算時に加算する。すなわちボーナスマイルがモバイルマナーを守ろうとする動機となり、モバイルマナーの定着に貢献することができる。
【0069】
また、ボーナスマイルの獲得を目的としながらも、モバイルマナー遵守には自主性が働いているので、電子決済システムの利用度が低下することがない。しかも、本実施形態は、航空機利用時の電子決済システムなので、モバイルマナーの遵守が経済的なメリットに直接結びついており、システム利用度とモバイルマナーの向上に関して相乗的な効果が期待できる。
【0070】
〔3.第3の実施形態〕
〔3−1.構成〕
次に第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、鉄道料金の精算機能を持つ携帯電話端末5を利用した上記第1の実施形態の応用例であり、携帯電話端末5は図5に示すようにタイマ26を備えている。なお、その他の構成要素に関しては、図1に示した部分と同じであるため、説明は省略する。
【0071】
第3の実施形態において、タイマ26は、携帯電話端末5の動作モードを切り替えるタイミングを測定するために用いるものである。すなわち、起動センサ21からの改札口の通過情報を受けて起動するようになっている。このタイマ26の満了信号は動作モード設定部22に送られる。タイマ26の満了信号を受けとった動作モード設定部22は非通信モードをとり、無線部25に電波を停止する制御信号を送るようになっている。
【0072】
〔3−2.動作〕
図6のフローチャートでは駅構内で非通信モードをとる場合の動作について説明している。携帯電話端末5のユーザが、携帯電話端末5にて料金精算が可能な鉄道を利用する際に、乗車のために改札口を通ると、入口側センサ3に携帯電話端末5を近づけることで入口側センサ3は携帯電話端末5を認識し、改札口の通過情報を課金機能の起動センサ21に通知する。起動センサ21は情報格納部23に対して課金の開始情報を送り、情報格納部23は初乗り料金の課金を開始する(ST41)。
【0073】
動作モード記憶部27ではモード識別フラグをセットする(ST42)。また、起動センサ21からの改札口通過情報を受けてタイマ26が起動する(ST43)。タイマ26が満了になると、その信号を受けて動作モード設定部22は、携帯電話端末5の動作モードを非通信モードに設定し、無線部25に制御信号を送る。
【0074】
無線部25は端末動作モード設定部22からの制御信号を受けて、電波の停止に関する制御を行い、非通信モードを実現する(ST44)。したがって、携帯電話端末5は、ユーザが電車に乗っている間、非通信モードをとる。その結果、周囲にペースメーカを付けている人がいたとしても、機器に悪影響を及ぼす心配が無く、モラルの高いモバイルマナーを実践することができる。
【0075】
携帯電話端末5のユーザが乗車している間は、携帯電話端末5における動作モードの変化を確認し(ST45)、動作モードの変化があった場合にはモード識別フラグをクリアする(ST46)。また、動作モードの変化がない場合にはモード識別フラグのセットが維持される。
【0076】
そして、携帯電話端末5のユーザが降車して再度、改札口を通る際には(ST47)、出口側センサ4に携帯電話端末5を近づけることによりセンサ4は携帯電話端末5を認識し、改札口を通過した情報を起動センサ21に通知する。起動センサ21は改札口通過情報を端末動作モード設定部22に中継し、端末動作モード設定部22は無線部25の電波停止を解除して通常の通信モードに戻す(ST48)。
【0077】
携帯電話端末5のユーザが降車のために出口側センサ4を通過する際、動作モード判定部28はモード識別フラグを確認し(ST49)、モード識別フラグがセットされたままであれば(フラグがオン)、乗車中には非通信モードが継続したこと、言い換えれば乗車中においてモバイルマナーが守られたと判断する。
【0078】
この場合、ポイント算出部29は、所定の計算式に従ってユーザへの課金の割引ポイントを算出し(ST50)、割引データを情報格納部23に送る。割引データを受け取った情報格納部23は、予め蓄積された電子マネーから精算運賃分を減算する際に、割引運賃における減算を行う(ST51)。
【0079】
一方、動作モード判定部28はモード識別フラグを確認した際(ST49)、モード識別フラグがクリアされていれば(フラグがオフ)、乗車中には非通信が中断されたことになり、乗車中に携帯電話端末5を通信状態としたと判断する。この場合には、情報格納部23は、予め蓄積された電子マネーから精算運賃分を減算する際に、前記割引運賃ではなく、通常運賃に基づいて減算を行う(ST52)。
【0080】
〔3−3.作用効果〕
以上の構成を有する第3の実施形態は、上記第1の実施形態に加えて次のような作用効果がある。すなわち、第3の実施形態では、携帯電話端末5が改札口を通過するとタイマ26が起動し、その満了に伴って携帯電話端末5の動作モードは通信モードから非通信モードへと切り替わることになる。つまり、本実施形態によれば、携帯電話端末5のユーザが改札口に入った後、携帯電話端末5の動作モードが非通信モードへと即座に切り替わるのではなく、タイマ26の満了時間分だけは通信モードが続き、その後で非通信モードになる。
【0081】
このため、携帯電話端末5のユーザが改札口に入った時点で通信をしていた場合に、これを継続することができる。そして、通信が長くなりそうであれば、これから電車に乗る旨を相手に告げることもでき、モバイルマナーの遵守に支障がきたすことがない。また、改札口を通過してから電車に乗るまでの間、ホームでの滞在時でも、タイマ26の満了時間までは通信モードを続けることができ、携帯電話端末5は良好な使い勝手を確保できる。
【0082】
また、本実施形態の応用例として、携帯電話端末5においてタイマ26の制御部を設け、この制御部がタイマ26のカウンタ値を決めるタイマ制御信号を入口側センサ3から受け取るようにしても良い。すなわち、携帯電話端末5が改札口を通過する際、入口側センサ3は、起動センサ21に対し通過情報を通知すると同時に、タイマ26の制御部に対し制御信号を送る。そして、受け取った制御信号に基づいて、制御部がタイマ26のカウンタ値を決定する。
【0083】
以上の実施形態によれば、入口側センサ3が設置される駅の規模に応じて、タイマ26のカウンタ値をフレキシブルに変えることができる。つまり、東京や新宿といった電車の発着が頻繁なターミナルの改札口をユーザが通過した場合、改札口を通過してから電車に乗るまでの時間は短くて済むので、このようなターミナルでの入口側センサ3は、短いカウンタ値(例えば5分で満了)の制御信号を携帯電話端末5側に送るようにする。このため、ユーザが電車に乗る時点ではタイマ26が確実に満了となり、携帯電話端末5の動作モードを非通信モードにすることができる。
【0084】
また、ローカル駅での入口側センサ3は、電車の発着間隔が長いので、長いカウンタ値(例えば10分で満了)の制御信号を携帯電話端末5側に送るようにする。これにより、電車を待っている時にタイマ26が満了となって携帯電話端末5の動作モードが非通信モードに変わることを防止でき、ホームの滞在時間が長い場合でも携帯電話端末5の使い勝手を確保することができる。
【0085】
〔4.第4の実施形態〕
〔4−1.構成〕
第4の実施形態は、上記第1の実施形態の応用例であり、図7に示すようにハンドオーバ処理部30を備えている。なお、その他の構成要素に関しては、図1に示した部分と同じであるため、説明は省略する。
【0086】
第4の実施形態において、ハンドオーバ処理部30は、携帯電話端末5の移動に伴って電波強度が弱まると、より電波強度の強い無線基地局と再接続を行う部分である。このハンドオーバ処理部30は、起動センサ21から改札口通過情報を受けるとハンドオーバ処理を停止して、携帯電話端末5の移動に伴い現行基地局の情報は消失されると基地局間の移動ができず、通信が強制的に切断される。また、動作モード設定部22は、ハンドオーバ処理部30の停止によって携帯電話端末5の通信状態が強制的に切断されると、携帯電話端末の動作モードを通信モードから通信制限モードへと切り替わるようになっている。
【0087】
〔4−2.動作〕
図8のフローチャートでは携帯電話端末5が駅構内で非通信モードをとる場合の動作について説明している。携帯電話端末5のユーザが、携帯電話端末5にて料金精算が可能な鉄道を利用する際に、乗車のために改札口を通ると、入口側センサ3に携帯電話端末5を近づけることで入口側センサ3は携帯電話端末5を認識し、改札口の通過情報を課金機能の起動センサ21に通知する。起動センサ21は情報格納部23に対して課金の開始情報を送り、情報格納部23は初乗り料金の課金を開始する(ST61)。
【0088】
動作モード記憶部27ではモード識別フラグをセットする(ST62)。また、起動センサ21は改札口の通過情報をハンドオーバ処理部30に送り、これを受けてハンドオーバ処理部30はハンドオーバ機能を停止する。これにより、電波強度が弱まったとしても、より電波強度の強い無線基地局と再接続されることはない。
【0089】
つまり、現行基地局の情報が継続されているかどうかの確認がなされている状態で(ST63)、現行基地局情報が消失するとハンドオーバ機能が停止しているので基地局間の移動を行うことができず、極携帯電話端末5の通信状態が強制的に切断される。この場合、動作モード設定部22は携帯電話端末5の動作モードを通信モードから通信制限モードへと切り替え、無線部25に制御信号を送る。
【0090】
無線部25は端末動作モード設定部22からの制御信号を受けて、電波の停止に関する制御を行い、非通信モードを実現する(ST64)。したがって、携帯電話端末5は、ユーザが電車に乗っている間、非通信モードをとる。その結果、上記第3の実施形態同様、周囲にペースメーカを付けている人がいたとしても、機器に悪影響を及ぼす心配が無く、モラルの高いモバイルマナーが実現する。
【0091】
携帯電話端末5のユーザが乗車している間は、携帯電話端末5における動作モードの変化を確認し(ST65)、動作モードの変化があった場合にはモード識別フラグをクリアする(ST66)。また、動作モードの変化がない場合にはモード識別フラグのセットが維持される。
【0092】
そして、携帯電話端末5のユーザが降車して再度、改札口を通る際には(ST67)、出口側センサ4に携帯電話端末5を近づけることによりセンサ4は携帯電話端末5を認識し、改札口を通過した情報を起動センサ21に通知する。起動センサ21は改札口通過情報を端末動作モード設定部22に中継し、端末動作モード設定部22は無線部25の電波停止を解除して通常の通信モードに戻す(ST68)。
【0093】
携帯電話端末5のユーザが降車のために出口側センサ4を通過する際、動作モード判定部28はモード識別フラグを確認し(ST69)、モード識別フラグがセットされたままであれば(フラグがオン)、乗車中には非通信モードが継続したこと、言い換えれば乗車中において周囲の人に迷惑をかける行為を行っていないと判断する。
【0094】
この場合、ポイント算出部29は、所定の計算式に従ってユーザへの課金の割引ポイントを算出し(ST70)、割引データを情報格納部23に送る。割引データを受け取った情報格納部23は、予め蓄積された電子マネーから精算運賃分を減算する際に、割引運賃における減算を行う(ST71)。
【0095】
一方、動作モード判定部28はモード識別フラグを確認した際(ST69)、モード識別フラグがクリアされていれば(フラグがオフ)、乗車中にはサイレントモードが中断されたことになり、乗車中に呼び出し音や着信音が鳴動して周囲の人に迷惑をかける行為を行ったと判断する。この場合には、情報格納部23は、予め蓄積された電子マネーから精算運賃分を減算する際に、前記割引運賃ではなく、通常運賃に基づいて減算を行う(ST72)。
【0096】
〔4−3.作用効果〕
以上の第4の実施形態では、携帯電話端末5が改札口を通過するとハンドオーバ処理部30が停止するので、基地局間の移動ができずに強制的に通信が切断され、携帯電話端末5の動作モードは非通信モードになる。つまり、第4の実施形態によれば、改札口に入った直後に携帯電話端末5の動作モードが非通信モードへと切り替わる訳ではなく、現行基地局の情報を消失しない限りは通信モードを継続することができる。
【0097】
このため、上記第3の実施形態と同じく、携帯電話端末5のユーザが改札口に入った時点で通信していても、これを確実に続けることができる。そして、通信が長くなりそうであれば、これから電車に乗る旨を相手に告げることもでき、モバイルマナーの遵守に支障がきたすことがない。また、改札口を通過してから電車に乗るまでの間、ホームでの滞在時でも通信モードを続けることができ、携帯電話端末5は良好な使い勝手を確保できる。
【0098】
〔5.他の実施形態〕
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、ユーザの歩行などに伴う携帯電話端末の継続的な振動を感知する移動感知手段を備えて、この移動感知手段が携帯電話端末の継続的な振動を感知した時、動作モード設定手段が携帯電話端末の動作モードを通信制限モードから通信モードへと切り替えるように構成したものも包含される。
【0099】
移動感知手段の具体例としては、万歩計などで良く、所定時間継続して万歩計から動作信号が得られれば、携帯電話端末を持つユーザが、電車から降りた、あるいは通信制限エリアを離れたと想定することができる。電車から降りた後で携帯電話端末を通信制限モードから通信モードへと切り替えたとしても、周囲に迷惑をかけることがなく、モバイルマナーを守ったことになる。
【0100】
また、本発明は、鉄道や地下鉄、航空機での料金精算やポイント精算、コンサートやレストランでの決済など、様々な電子決済システムに適用可能である。さらに、図書館など現実的な課金が発生しない場所を含めたシステムであったとしも、モバイルマナーを守ること自体をポイントとして貯めることにより利用者のマナー意識の向上を図ることができるため、モバイルマナーの定着に寄与することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明に係る第1の実施形態における全体構成を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態のブロック図。
【図3】第1の実施形態にサイレントモード時のフローチャート。
【図4】第2の実施形態に非通信モード時のフローチャート。
【図5】第3の実施形態のブロック図。
【図6】第3の実施形態に非通信モード時のフローチャート。
【図7】第4の実施形態のブロック図。
【図8】第4の実施形態に非通信モード時のフローチャート。
【符号の説明】
【0102】
1…データベース
2…ネットワーク
3…入口側センサ
4…出口側センサ
5…携帯電話端末
6…携帯電話妨害装置
10…電子決済システム
21…起動センサ
22…端末動作モード設定部
23…情報格納部
24…音響回路
25…無線部
26…タイマ
27…動作モード記憶部
28…動作モード判定部
29…ポイント算出部
30…ハンドオーバ処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザへの課金に関連する決済情報について処理する決済情報処理手段と、前記決済情報を電子決済システムの構成機器との間でやり取りする決済情報通信手段とを有する携帯電話端末であって、
前記携帯電話端末の動作モードとして、通信を行う通信モードと、呼び出し音・着信音などの音響鳴動を停止もしくは通信自体を停止する通信制限モードのいずれかに設定する動作モード設定手段と、
前記携帯電話端末における課金状態中の動作モードを記憶する動作モード記憶手段と、
前記決済情報通信手段は、前記動作モード記憶手段が記憶した動作モードに関する情報を、前記決済情報の参照情報として前記電子決済システムに通知するように構成したことを特徴とする携帯電話端末。
【請求項2】
課金状態中に前記通信制限モードを維持したか否かを判定する動作モード判定手段と、
前記動作モード判定手段の判定結果に基づき、所定の計算式に従って通常の課金に対する割引処理を行う割引処理手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の携帯電話端末。
【請求項3】
前記動作モード設定手段は、前記携帯電話端末の動作モードを、課金状態の開始時には前記通信モードから前記通信制限モードに切り替え、課金状態の終了時には前記通信制限モードから前記通信モードに戻すように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯電話端末。
【請求項4】
前記携帯電話端末が課金状態に入ると起動するタイマを設け、
前記動作モード設定手段は、前記タイマの満了に伴って前記携帯電話端末の動作モードを前記通信モードから前記通信制限モードへと切り替えるように構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の携帯電話端末。
【請求項5】
前記携帯電話端末の移動に伴って電波強度が弱まると、より電波強度の強い無線基地局と再接続を行うハンドオーバ処理部を有しており、
このハンドオーバ処理部は、前記携帯電話端末が課金状態に入るとハンドオーバ処理を停止するように構成し、
前記動作モード設定手段は、前記ハンドオーバ処理部の停止により前記携帯電話端末の通信状態が強制的に切断されると、前記携帯電話端末の動作モードを前記通信モードから前記通信制限モードへと切り替えるように構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の携帯電話端末。
【請求項6】
ユーザの歩行などに伴う該携帯電話端末の継続的な振動を感知する移動感知手段を備え、
前記動作モード設定手段は、前記移動感知手段が該携帯電話端末の継続的な振動を感知した時、前記携帯電話端末の動作モードを前記通信制限モードから前記通信モードへと切り替えるように構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の携帯電話端末。
【請求項7】
前記決済情報処理手段、前記決済情報通信手段および前記動作モード設定手段を有する前記携帯電話端末を利用したシステムであって、前記決済情報に基づいて該携帯電話端末のユーザへの課金を行う電子決済システムにおいて、
前記携帯電話端末における課金状態中の動作モードを記憶する動作モード記憶手段と、
前記動作モード記憶手段が記憶した動作モードに関する情報を、前記決済情報の参照情報として取得し、前記携帯電話端末の動作モード状態が課金状態中に前記通信制限モードを維持したか否かを判定する動作モード判定手段と、
前記動作モード判定手段の判定結果に基づき、所定の計算式に従って通常の課金に対する割引処理を行う割引処理手段を備えたことを特徴とする電子決済システム。
【請求項8】
前記決済情報処理手段、前記決済情報通信手段および前記動作モード設定手段を有する前記携帯電話端末を利用した方法であって、前記決済情報に基づいて該携帯電話端末のユーザへの課金を行う電子決済方法において、
前記携帯電話端末における課金状態中の動作モードを記憶する動作モード記憶ステップと、
前記動作モード記憶ステップにて記憶した動作モードに関する情報を、前記決済情報の参照情報として取得し、前記携帯電話端末の動作モード状態が課金状態中に前記通信制限モードを維持したか否かを判定する動作モード判定ステップと、
前記動作モード判定ステップでの判定結果に基づき、所定の計算式に従って通常の課金に対する割引処理を行う割引処理ステップを含むことを特徴とする電子決済方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−68031(P2007−68031A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253817(P2005−253817)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.万歩計
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】