説明

摩擦ダンパー

【課題】制振対象の構造体が損傷することを有効に回避可能な摩擦ダンパーを提供する。
【解決手段】相対移動可能に重ねられた2つの部材12,14,16が振動により相対移動するときに圧接力に基づいて発生する摩擦力で振動を減衰する摩擦ダンパー20であって、板厚方向に間隔を隔てて互いに対向する一対の第1板部材12,14と、2つの部材12,14,16のうちの他方の部材として設けられる第2板部材16と、一対の第1板部材12,14及び第2板部材16に圧接力を付与する圧接力付与部材30,18,19と、を有する。一対の第1板部材12,14と第2板部材16との所定方向の相対移動量が所定値を超えたときに、圧接力が低下する。なお、一対の第1板部材12,14のうちの他方の第1板部材14と第2板部材16との間には、転動体40が介装されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物等の構造体の振動を減衰する摩擦ダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
構造体の一例としての建物は、一般に、互いに隣り合う上下の階層において水平方向に相対変位し、これが、当該建物の大きな揺れの一因となる。そのため、建物の一部の階層には、相対変位等に対する補強部としてトラス構造部が設けられている。また、当該相対変位を更に低減すべく、建物によっては、トラス構造部の例えば下弦材の一部に摩擦ダンパーが設けられていることもある。
かかる摩擦ダンパーは、層間などにおいて、互いに相対移動する一方の部材に固設された滑動板と、他方の部材に固設された摩擦板とを有し、これら滑動板と摩擦板とは、互いに所定の圧接力で圧接されている。そして、上記2つの部材が相対移動して滑動板と摩擦板とが摺動する際に、建物の層間変位の振幅によらずほぼ一定の摩擦力を生じ、この摩擦力を減衰力として用いて建物の振動を減衰する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−002118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来型の摩擦ダンパーには、次のような問題がある。
大地震時等の最大層間変位時には、建物等の制振対象の構造体自身が大きく変形していることから、当該構造体には大きな内力が生じている。このような時に、更に大きな外力が変形方向と逆向きに付与されると、その分だけ、更に内力が拡大して構造体の破壊限界強度に至り易くなる。この点につき、上記摩擦ダンパーの減衰力も、変形方向と逆向きの外力として構造体に作用し、また、層間変位の大きさによらず常にほぼ一定の減衰力を発生する。つまり、上述の従来の摩擦ダンパーによれば、構造体は、最大層間変位時の厳しい内力下においても、大きな減衰力が加えられることになり、その場合には、構造体の破壊限界強度の大きさによっては、構造体は破損してしまう。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、制振対象の構造体が損傷することを有効に回避可能な摩擦ダンパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために請求項1に示す発明は、
相対移動可能に重ねられた2つの部材に圧接力を付与し、前記2つの部材が振動により相対移動するときに前記圧接力に基づいて発生する摩擦力を減衰力として用いて、前記振動を減衰する摩擦ダンパーであって、
前記2つの部材のうちの一方の部材として設けられ、板厚方向に間隔を隔てて互いに対向する一対の第1板部材と、
前記2つの部材のうちの他方の部材として設けられる第2板部材であって、前記第2板部材の少なくとも一部の板状部分が、前記一対の第1板部材同士の間の前記間隔に、前記板厚方向と直交する所定方向に相対移動可能に介装されることにより、前記一対の第1板部材に重ねられる第2板部材と、
前記一対の第1板部材と前記第2板部材とが重ねられた状態で、これらを前記板厚方向に挟み込むことにより、前記一対の第1板部材及び前記第2板部材に前記圧接力を付与する圧接力付与部材と、を有し、
前記一対の第1板部材と前記第2板部材との前記所定方向の相対移動量が所定値を超えたときに、前記圧接力が低下し、
前記一対の第1板部材のうちの一方の第1板部材と前記第2板部材との間には、前記所定方向の相対移動に従って前記摩擦力が発生し、
前記一対の第1板部材のうちの他方の第1板部材と前記第2板部材との間には、前記他方の第1板部材及び前記第2板部材を前記所定方向に沿って転動する転動体が介装されていることを特徴とする。
【0007】
上記請求項1に示す発明によれば、相対移動量が所定値を超えたときに、圧接力は低下する。よって、制振対象の構造体に大きな内力が生じ得る相対移動が大きい時には、摩擦力たる摩擦ダンパーの減衰力は低下することになる。そして、これにより、構造体において摩擦ダンパーの前記2つの部材が取り付けられている部位の内力状態が厳しい時に、外力として作用する上記減衰力を低下させることができて、その結果、当該2つの部材が取り付けられている構造体の損傷を有効に回避可能となる。
また、上記構成によれば、摩擦力を発生すべき前記一方の第1板部材ではない方の第1板部材たる前記他方の第1板部材と第2板部材との間には、転動体が介装されていて、当該転動体の転動動作に基づき、相対移動時の当該他方の第1板部材と第2板部材との間の摩擦力の発生は有効に抑制される。よって、摩擦ダンパーは、摩擦力を発生すべき前記一方の第1板部材と第2板部材との間に専ら摩擦力を発生可能となり、その結果、計画通りの大きさの減衰力を制振対象の構造体に作用させることができる。
【0008】
請求項2に示す発明は、請求項1に記載の摩擦ダンパーであって、
前記圧接力付与部材は、
前記一対の第1板部材又は前記第2板部材に対して前記板厚方向に重ねて設けられた弾性部材と、
前記第2板部材と、前記一対の第1板部材と、前記弾性部材との前記板厚方向の重なり高さが一定になるように規制する重なり高さ規制部材と、を有し、
前記重なり高さ規制部材によって前記弾性部材は前記板厚方向に圧縮変形されており、
前記一対の第1板部材と前記第2板部材との前記相対移動量が前記所定値を超えたときに、前記第2板部材と前記一対の第1板部材とが重なってなる前記板厚方向の高さ寸法が小さくなることによって、前記圧接力が低下することを特徴とする。
【0009】
上記請求項2に示す発明によれば、第2板部材と一対の第1板部材と弾性部材とが重なってなる重なり高さが一定になるように規制する重なり高さ規制部材を有しているので、一方の第1板部材と第2板部材との間に安定した圧接力を付与可能である。よって、一方の第1板部材と第2板部材との間の摩擦力を安定して発生することができる。
また、上記構成によれば、相対移動量が所定値を超えると、重なり高さ規制部材により前記重なり高さが略一定に規制された状態の下で、一対の第1板部材及び第2板部材が重なってなる高さ寸法が小さくなる。そして、この高さ寸法が小さくなることに基づき、弾性部材の圧縮変形が緩和され、圧接力の低下を経て摩擦力が低下するが、ここで、この高さ寸法が小さくなることは、前述のように、相対移動量が所定値を超えたときに起こるように構成されている。よって、相対移動量が所定値を超えたときに、制振対象の構造体に外力として作用する上記摩擦力たる減衰力を確実に低下させることができて、その結果、構造体の損傷を有効に回避可能となる。
【0010】
請求項3に示す発明は、請求項2に記載の摩擦ダンパーであって、
前記他方の第1板部材は、前記第2板部材側に突出する第1突部を有し、
前記第1板部材と前記第2板部材との前記相対移動量が前記所定値以下のときには、前記転動体は、前記第1突部の頂部を転動し、
前記第1板部材と前記第2板部材との前記相対移動量が前記所定値を超えたときに、前記転動体は、前記頂部での前記第1突部の厚みよりも前記板厚方向の厚みが薄い第1基板部を転動することを特徴とする。
【0011】
上記請求項3に示す発明によれば、相対移動量が所定値を超えたときに発生すべき減衰力たる摩擦力の大きさを、同相対移動量が所定値以下のときよりも確実に低下させることができる。詳しくは次の通りである。
先ず、第1板部材と第2板部材との相対移動量が所定値以下のときには、転動体は、他方の第1板部材の第1突部の頂部を転動しているので、一対の第1板部材と第2板部材とが重ねられてなる高さ寸法は大きい状態にある。そのため、重なり高さ規制部材の規制に基づいて、弾性部材は大きく圧縮された状態になっており、よって、当該弾性部材は、大きな圧接力でもって第1板部材と第2板部材とを圧接し、大きな摩擦力が発生される。
これに対して、第1板部材と第2板部材との相対移動量が所定値を超えたときには、転動体は、第1基板部を転動するが、この第1基板部の厚みは、頂部での第1突部の厚みよりも薄い。そのため、一対の第1板部材と第2板部材とが重ねられてなる高さ寸法は、上述の転動体が頂部を転動する場合よりも小さくなっている。そして、これに伴って、その分だけ、重なり高さ規制部材による弾性部材の圧縮変形も緩和されて圧接力が低下するので、小さな圧接力でもって第1板部材と第2板部材とを圧接することとなり、結果、小さな摩擦力が発生される。
【0012】
請求項4に示す発明は、請求項2又は3に記載の摩擦ダンパーであって、
前記第2板部材は、前記他方の第1板部材側に突出する第2突部を有し、
前記第1板部材と前記第2板部材との前記相対移動量が前記所定値以下のときには、前記転動体は、前記第2突部の頂部を転動し、
前記第1板部材と前記第2板部材との前記相対移動量が前記所定値を超えたときに、前記転動体は、前記頂部での前記第2突部の厚みよりも前記板厚方向の厚みが薄い第2基板部を転動することを特徴とする。
【0013】
上記請求項4に示す発明によれば、相対移動量が所定値を超えたときに発生すべき減衰力たる摩擦力の大きさを、同相対移動量が所定値以下のときよりも確実に低下させることができる。詳しくは次の通りである。
先ず、第1板部材と第2板部材との相対移動量が所定値以下のときには、転動体は、第2板部材の第2突部の頂部を転動しているので、一対の第1板部材と第2板部材とが重ねられてなる高さ寸法は大きい状態にある。そのため、重なり高さ規制部材の規制に基づいて、弾性部材は大きく圧縮された状態になっており、よって、当該弾性部材は、大きな圧接力でもって第1板部材と第2板部材とを圧接し、大きな摩擦力が発生される。
これに対して、第1板部材と第2板部材との相対移動量が所定値を超えたときには、転動体は、第2基板部を転動するが、この第2基板部の厚みは、頂部での第2突部の厚みよりも薄い。そのため、一対の第1板部材と第2板部材とが重ねられてなる高さ寸法は、上述の転動体が頂部を転動する場合よりも小さくなっている。そして、これに伴って、その分だけ、重なり高さ規制部材による弾性部材の圧縮変形も緩和されて圧接力が低下するので、小さな圧接力でもって第1板部材と第2板部材とを圧接することとなり、結果、小さな摩擦力が発生される。
【0014】
請求項5に示す発明は、請求項3又は4に記載の摩擦ダンパーであって、
前記他方の第1板部材の前記第1基板部には、前記第1突部の頂部に向かって漸次前記板厚方向の厚みが厚くなる傾斜部が設けられていることを特徴とする。
上記請求項5に示す発明によれば、第1板部材と第2板部材とが所定値を超えて相対移動することにより、転動体が第1突部の頂部を転動する状態から第1基板部を転動する状態へと移行するが、その移行過程では、上記傾斜部を転動体が転動する。よって、当該移行過程たる圧接力が低下する際の衝撃を抑制可能となる。
【0015】
請求項6に示す発明は、請求項4に記載の摩擦ダンパーであって、
前記第2板部材の前記第2基板部には、前記第2突部の前記頂部に向かって漸次前記板厚方向の厚みが厚くなる傾斜部が設けられていることを特徴とする。
上記請求項6に示す発明によれば、第1板部材と第2板部材とが所定値を超えて相対移動することにより、転動体が第2突部の頂部を転動する状態から第2基板部を転動する状態へと移行するが、その移行過程では、上記傾斜部を転動体が転動する。よって、当該移行過程たる圧接力が低下する際の衝撃を抑制可能となる。
【0016】
請求項7に示す発明は、請求項1乃至6の何れかに記載の摩擦ダンパーであって、
前記一方の第1板部材と前記他方の第1板部材とを連結する連結構造を有し、
前記連結構造は、前記一方の第1板部材と前記他方の第1板部材との間の相対移動を、前記所定方向に関しては規制しつつ前記板厚方向に関しては許容することを特徴とする。
上記請求項7に示す発明によれば、連結構造によって、一方の第1板部材と他方の第1板部材との間の前記所定方向の相対移動が規制されている。そのため、これら一対の第1板部材が第2板部材に対して前記所定方向に相対移動する際には、これら一対の第1板部材の両者は、第2板部材に対して一斉に相対移動することになる。よって、相対移動量が所定値を超えた時に、一対の第1板部材と第2板部材との前記高さ寸法を確実に小さくすることができて、その結果、圧接力を確実に低下させることができる。
また、同連結構造は、一方の第1板部材と他方の第1板部材との間の前記板厚方向の相対移動を許容するので、前記所定方向の相対移動量が所定値を超えたときに起こり得る、一対の第1板部材と第2板部材との前記高さ寸法の変化を、これら一対の第1板部材と第2板部材との間の板厚方向の相対移動により速やかに吸収可能となり、その結果、圧接力の低下を円滑に行うことができる。
【0017】
請求項8に示す発明は、請求項1乃至7の何れかに記載の摩擦ダンパーであって、
前記転動体は、その周方向の位置に応じて回転半径が変化する断面非正円形状のローラーであることを特徴とする。
上記請求項8に示す発明によれば、転動体は、その周方向の位置に応じて回転半径が変化する断面非正円形状のローラーである。よって、相対移動量が所定値を超えたときの一対の第1板部材と第2板部材との前記高さ寸法の縮小を、相対移動に伴う転動体の転動に基づいて実現することができる。その結果、第1及び第2板部材の板形状の選定自由度を高めることができる。
すなわち、他方の第1板部材と第2板部材とが互いに対向する面同士を平面にすることもできるし、前記他方の第1板部材に前記第1突部を設ける場合や、第2板部材に前記第2突部を設ける場合には、これら第1及び第2突部の突出量を小さくすることも可能である。
【0018】
請求項9に示す発明は、請求項1乃至8の何れかに記載の摩擦ダンパーであって、
前記転動体は、前記所定方向に並んで複数設けられ、
前記転動体同士の互いの相対位置関係を一定に保つためのリテーナーを有していることを特徴とする。
上記請求項9に示す発明によれば、転動体の相対位置関係を略一定に維持することができるので、転動体の転動動作の安定化を通じて、一対の第1板部材と第2板部材との相対移動の安定化を図れ、結果、計画通りの摩擦力を、一方の第1板部材と第2板部材との間に発生させることができる。
【0019】
請求項10に示す発明は、請求項2乃至7の何れかに記載の摩擦ダンパーであって、
前記重なり高さ規制部材は、
前記弾性部材、前記一対の第1板部材、及び前記第2板部材の全てを前記板厚方向に沿って貫通して設けられるボルトと、
前記ボルトに螺合するナットと、を有し、
前記ボルトの頭部と前記ナットとの両者で、前記弾性部材、前記一対の第1板部材、及び前記第2板部材の全てを前記板厚方向に挟み込むことにより、前記ボルトに生じた軸力が、前記圧接力として作用し、
前記転動体は、前記ボルトを両脇から挟む各位置にそれぞれ配置されていることを特徴とする。
上記請求項10に示す発明によれば、転動体は、ボルトを両脇から挟む各位置にそれぞれ配置されている。よって、転動体は、ボルトの軸力に基づく圧接力を、ボルトの軸芯に関して偏りの無い略対称分布で、他方の第1板部材から第2板部材へと伝達可能となる。よって、圧接力の安定化を通して、計画通りの摩擦力を、一方の第1板部材と第2板部材との間に発生可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、構造体が損傷を受けることを回避することが可能な摩擦ダンパーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態の摩擦ダンパー20を柱梁架構3のブレース10に組み込んだ状態の概略正面図である。
【図2】図2Aは、図1中のII−II断面図であって、ブレース10の分断端部10a,10bに介装された摩擦ダンパー20の断面図であり、また、図2Bは、図2A中のB−B矢視図である。
【図3】一対の外板12,14を連結する連結構造のその他の例の説明図である。
【図4】皿ばね積層体30に用いられる皿ばね31のばね特性図である。
【図5】第1実施形態の摩擦ダンパー20の減衰力特性たる減衰力−変位(相対移動量)関係のグラフである。
【図6】図6A乃至図6Dは、摩擦ダンパー20の減衰力特性の説明図である。
【図7】図7A乃至図7Dは、図5の減衰力特性を有する摩擦ダンパー20が、特に低強度構造体に有効な理由を説明するための図である。
【図8】図8A乃至図8Cは、それぞれ、第1実施形態の変形例の説明図である。
【図9】図9Aは、リテーナー50を具備した摩擦ダンパー20の概略中心断面図であり、図9Bは、図9A中のB−B矢視図である。
【図10】第1実施形態の変形例の説明図である。
【図11】第2実施形態の摩擦ダンパー20aの概略側面図である。
【図12】図12A乃至図12Cは、本発明に係る摩擦ダンパーの適用例の説明図であり、図12Aは、摩擦ダンパー20aが取り付けられたブレース10の概略側面図であり、図12Bは、図12A中のB−B矢視図であり、図12Cは、図12A中のC−C矢視図である。
【図13】外板14が突部14cを複数有する場合に奏する作用効果の説明図である
【発明を実施するための形態】
【0022】
===第1実施形態===
第1実施形態の摩擦ダンパー20は、例えば、鉄骨柱と鉄骨梁とを結合してなる柱梁架構3に係るブレース10に取り付けて使用される。以下、これを例に説明する。
図1は、第1実施形態の摩擦ダンパー20を柱梁架構3のブレース10に組み込んだ状態の概略正面図である。図2Aは、図1中のII−II断面図であって、ブレース10の分断端部10a,10bに介装された摩擦ダンパー20の断面図であり、また、図2Bは、図2A中のB−B矢視図である。
【0023】
図1に示すように、ブレース10は、柱梁架構3の対角方向を架け渡し方向として配置されている。また、ブレース10は、その長手方向たる前記架け渡し方向の略中央の位置において分断されており、分断形成された各端部10a,10b(以下、分断端部10a,10bという)同士の間の隙間Gに摩擦ダンパー20が介装されている。
【0024】
具体的には、一方の分断端部10aには、互いに対向する一対の第1板部材としての一対の外板12,14が、ブレース10の架け渡し方向の他方側に延出して設けられており、他方の分断端部10bには、第2板部材の板状部分としての中板16が、ブレース10の架け渡し方向の一方側に延出して設けられている。そして、これら外板12,14のうちの一方の外板12が、一方の分断端部10aに一体に設けられ、中板16は他方の分断端部10bに一体に設けられており、中板16の大半の部分は、一対の外板12,14同士の間の間隔に介装されている。
【0025】
また、このように一対の外板12,14同士の間の間隔に中板16が介装されることによりこれら各板12,14,16が略重ねられた状態において、これら各板12,14,16のボルト挿通孔12a,14a,16aには、ボルト18が板厚方向に貫通して設けられている(図2A)。そして、このボルト18の先端部は、外板12,14よりも板厚方向の外方に突出しているとともに、同先端部は、更に外板14の外方に設けられた皿ばね積層体30をも貫通し、そして、皿ばね積層体30を圧縮すべく同先端部にはナット19が螺合されている。
【0026】
ここで、外板12,14のボルト挿通孔12a,14aは、ボルト18の外径と略同径の円孔に形成されているが、中板16のボルト挿通孔16aにあっては、図2Bに示すように、架け渡し方向に沿って長い長孔に形成されており、これにより、中板16と一対の外板12,14との架け渡し方向の相対移動が許容されるようになっている。なお、この架け渡し方向が「所定方向」に相当する。
【0027】
他方の外板14は、一方の外板12に対して板厚方向に対向して配されている。そして、これら外板12,14同士を板厚方向に近接又は離間可能にしつつ架け渡し方向には相対移動不能に連結すべく、これら外板12,14の両者に跨って連結構造13が設けられている。
具体的には連結構造13として、他方の外板14には一方の外板12側に向けて突出する突片13aが形成されており、また、一方の外板12には、他方の外板14側に突出する2つの案内片13b,13bが形成されている。そして、前者の突片13aが、後者の案内片13b,13b同士の間に挿入されており、これにより、他方の外板14は、一方の外板12に対し架け渡し方向への相対移動が略不能に規制されるが、突片13aが案内片13b,13b同士の間で挿抜方向に移動することにより、他方の外板14の一方の外板12に対する板厚方向への相対移動については許容されるようになっている。これにより、これら一対の外板12,14は、中板16に対して架け渡し方向に一斉に相対移動しながら、一方の外板12と他方の外板14との間隔は、その時の状況に応じて拡縮可能であり、このことは、後述する一対の外板12,14と中板16とを重ねてなる高さ寸法Hbの変化に関係する。
【0028】
但し、連結構造13は何等これに限るものではない。例えば、図3に示すように、外板14を外板12に接合する接合部分14jの近傍の外板14の単数あるいは複数の部位(図示例では二箇所)に、板厚方向の厚みが薄い薄厚部14mを形成して、これらの薄厚部14mを弾性屈曲部14mとして屈曲させることにより、外板14に板厚方向の可撓性を付与しても良い。そして、このような弾性屈曲部14mによれば、弾性屈曲部14mの弾性変形内の屈曲により、外板14は外板12に対して板厚方向に接離自在となるので、外板14と外板12との板厚方向の相対移動は許容される。但し、外板14と外板12との架け渡し方向の相対移動については規制される。この理由は、架け渡し方向の相対移動時には薄厚部14mには架け渡し方向の引っ張り力や圧縮力が作用するが、これによる弾性屈曲部14mの伸び変形や圧縮変形は小さいからである。
【0029】
図2Aに示すように、長孔でなるボルト挿通孔16aを有する中板16と外板12との間には、ステンレス製等の滑動板23と、複合摩擦材料等でなる摩擦板22とが摺動可能に重ね合わされて配されている。ここで、滑動板23及び摩擦板22はどちらも薄板状をなしている。そして、図示例では、滑動板23が、ビス止めや接着等の固定方法により、外板12に移動不能に固定され、摩擦板22が、同様の固定方法により、中板16に移動不能に固定されており、架け渡し方向の相対移動時には、これら摩擦板22と滑動板23とが摺動して減衰力としての摩擦力を発生する。但し、これら摩擦板22及び滑動板23の配置関係は逆でも良い。
【0030】
また、外板12に一体に固定される滑動板23には、外板12の円形のボルト挿通孔12aに対応させてこれと同径のボルト挿通孔23aが設けられており、また、中板16に一体に固定される摩擦板22には、中板16の長孔状のボルト挿通孔16aに対応させてこれと同形のボルト挿通孔22aが長孔状に形成されている。但し、これら摩擦板22及び滑動板23に設ける孔の形状は、摩擦板22と滑動板23との配置関係に応じて逆でも良い。
【0031】
なお、摩擦板22には、有機系摩擦材や無機系摩擦材等を使用し得る。有機系摩擦材は、熱硬化型樹脂を結合材として、アラミド繊維,ガラス繊維,ビニロン繊維,カーボンファイバーなどの繊維材料と、カシューダスト,鉛などの摩擦調整材と、硫酸バリュームなどの充填剤とからなる複合摩擦材料で形成される。上記熱硬化型樹脂としては、フェノール樹脂,メラミン樹脂,フラン樹脂,ポリイミド樹脂,DFK樹脂,グアナミン樹脂,エポキシ樹脂,キシレン樹脂,シリコーン樹脂,ジアリルフタレーン樹脂,不飽和ポリエステル樹脂などがある。一方、滑動板23は上述したステンレスやチタンなどの耐食性を有する材料によって形成される。
【0032】
他方の外板14と中板16とが互いに対向する各部位には、それぞれ突部14c,16cが設けられている。そして、図示例では、どちらの突部14c,16cも、それぞれ、架け渡し方向に間隔を隔てて2つずつ設けられている。これらの突部14c及び突部16cは、それぞれ、互いに対向する外板14の基板部14d及び中板16の基板部16dから板厚方向に突出して設けられ、各突部14c,16cの頂部14e,16eはそれぞれ基板部14d,16dの平面部14p,16pと平行な平面をなしている。また、外板14の頂部14e,14e同士の架け渡し方向の間隔と中板16の頂部16e,16e同士の架け渡し方向の間隔とは、ほぼ等しく設定されており、更に頂部14eと頂部16eとは、架け渡し方向の幅及び板厚方向の突出量の点でもほぼ等しく設定されている。ちなみに、外板14に設けられた突部14cの頂部14eが「第1突部の頂部」に相当し、外板14の基板部14dが「第1基板部」に相当し、中板16に設けられた突部16cの頂部16eが「第2突部の頂部」に相当し、中板16の基板部16dが「第2基板部」に相当する。
【0033】
また、同外板14の基板部14dには、突部14cの頂部14eに向かうにつれて漸次板厚方向の厚みが厚くなった傾斜部14fが設けられており、同様に、中板16の基板部16dにも、突部16cの頂部16eに向かうにつれて漸次板厚方向の厚みが厚くなった傾斜部16fが設けられている。そして、外板14の基板部14dにおいて傾斜部14fを除いた部分たる前記平面部14pの架け渡し方向の幅は、何れも中板16の頂部16eの架け渡し方向の幅より広く形成されており、同様に、中板16の基板部16dにおいて傾斜部16fを除いた部分たる前記平面部16pの架け渡し方向の幅は、何れも外板14の頂部14eの架け渡し方向の幅より広く形成されている。
【0034】
また、同他方の外板14の両面のうちの中板16側の面14sと、中板16の両面のうちの外板14側の面16sとの間には、転動体40として複数のフラットローラー40,40…が介装されている。すなわち、前者の面14sをなす外板14に係る基板部14dの平面部14p、同傾斜部14f、及び突部14cの頂部14eと、後者の面16sをなす中板16に係る基板部16dの平面部16p、同傾斜部16f、及び突部16cの頂部16eとの間には、断面正円形状の円柱体様のフラットローラー40,40…が介装されている。そして、一対の外板12,14と中板16とが架け渡し方向に相対移動する際に、これらフラットローラー40,40…が上記の面14s,16sに挟まれて圧接力を受けながらこれら面14s,16sを架け渡し方向に沿って転動することにより、当該他方の外板14と中板16との間にて発生し得る摩擦力及び圧接力からなる相対移動方向の合力の大きさが、ごく僅かとなるように構成されている。
その結果、当該合力の大きさを、一方の外板12と中板16との間に設けられた前述の滑動板23と摩擦板22との間で発生すべき摩擦力よりも格段に小さくして、つまり、当該摩擦力との比較においては上記合力を無視できるレベルにしている。そして、これにより、装置設計の際の減衰力Fの算定にあたっては、上記合力については無視しつつ上記摩擦力のみを考慮して、同算定を行えるようにしており、もって、装置設計の容易化を図っている。ちなみに、ここで言う「転動」とは、フラットローラー40と各面14s,16sとが、概ね相対滑りをすることなく、各面14s,16s上をフラットローラー40が回転して架け渡し方向に移動することを意味し、つまり、フラットローラー40は、各面14s,16sに対して転がり接触する。なお以下では、フラットローラー40のことを、転動体40と言う。
【0035】
他方、前述したことではあるが、一方の外板12と中板16との間には、上述の摩擦力を発すべき滑動板23及び摩擦板22が介装されているとともに、外板14の突部14cの頂部14eと中板16の突部16cの頂部16eとが対向するように配された状態で、それぞれに形成されたボルト挿通孔12a,14a,16aにボルト18が貫通されている。貫通したボルト18の先端部には、外板12の外側においてナット19が螺合し、また、ナット19と外板14との間には、前述の皿ばね積層体30とワッシャ32とが介在されており、更には、ナット19の螺合による締め付けによって皿ばね積層体30は圧縮変形している。
【0036】
すなわち、当該ナット19の締め付けに基づいて、ボルト18の頭部18hとナット19との両者で、皿ばね積層体30、一対の外板12,14、及び中板16の全てを板厚方向に挟み込むことにより、ボルト18には軸力Nが生じ、この軸力Nが上述の皿ばね積層体30の圧縮変形の反力になるとともに、当該軸力Nは、一対の外板12,14同士の間に伝達されて、中板16の挟み込み力として作用することとなり、中板16と一対の外板12,14とは、当該挟み込み力の作用の下、両者の相対移動が許容される。
【0037】
ここで、この中板16の挟み込み力たるボルト18の軸力Nは、摩擦板22と滑動板23とを圧接する圧接力であり、もって、皿ばね積層体30が、当該圧接力の付与に係る「弾性部材」に相当し、更には、ボルト18とナット19とが、一対の外板12,14と中板16と皿ばね積層体30との重なり高さHkを略一定に規制するための「重なり高さ規制部材」に相当する。この重なり高さHkには、ボルト18及びナット19により圧縮された皿ばね積層体30の高さH30と、一対の外板12,14及び中板16が重ねられてなる前記高さ寸法Hbと、が含まれる。そして、重なり高さHkが略一定に規制された状態下では、前記高さ寸法Hbが小さくなるにつれて、重なり高さHkに占める皿ばね積層体30の高さH30の割合は大きくなり、もって、その分だけ皿ばね積層体30の圧縮変形が緩和されてボルト18の軸力Nは低下して圧接力も低下する。
【0038】
図4は、皿ばね積層体30に用いられる皿ばね31のばね特性図である。皿ばね積層体30は、複数の皿ばね31,31…が重ね合わされてなる。そして、かかる皿ばね積層体30は、前述のボルト18の軸力Nを一対の外板12,14や中板16に伝達する経路に介装されており、また、そのばね特性が略線形となる範囲で使用される。
詳しくは、図4に示すように、一般に皿ばね31のばね特性は、ボルト18の軸方向の皿ばね31の変形量εに対して荷重たる弾発力σがほぼ変化しない非線形ばね領域Sを備えているが、この摩擦ダンパー20においては、ボルト18に所定の軸力Nを付加した状態の皿ばね31の変形量εが、当該非線形領域S内に入るようには設定されておらず、荷重に対する変形量εが略線形に変化する略線形領域R内に入るように設定されている。そして、これにより、前述の一対の外板12,14と中板16とが重ねられてなる前記高さ寸法Hbの変化に対して、皿ばね31の弾発力がほぼ比例して変化するようになっている。ちなみに、図2Aの例では、かかる皿ばね積層体30は、複数枚の皿ばね31,31…を同一方向に積層して形成されているが、何等これに限るものではなく、逆方向に積層して形成しても良い。また、皿ばね31に代えて、コイルスプリングや板ばね等の線形ばね特性を示す線形ばねを用いても良い。
【0039】
そして、以上のような構成の第1実施形態の摩擦ダンパー20によれば、図5に示すような減衰力特性を奏する。すなわち、図5の減衰力−変位(相対移動量)関係のグラフに示すように、本摩擦ダンパー20によれば、柱梁架構3における架け渡し方向の相対移動量が所定値α以下では、大きな摩擦力たる大きな減衰力Fを発生するが、所定値αを超えたときには、摩擦力たる減衰力Fは低下し始め、そして更なる相対移動量の増加とともに減衰力Fは漸減するような特性を示す。
【0040】
以下、図6A乃至図6Dを参照しながら詳説すると、先ず、柱梁架構3に振動入力が無い状態、つまり相対移動無しの状態では、図6Aに示すように、外板14の突部14cの頂部14eと中板16の突部16cの頂部16eとは、互いの中心を揃えた状態で対向している。また、転動体40も、同中心に位置しつつ、これら頂部14e,16e同士に挟まれている。よって、一対の外板12,14と中板16とが重ね合わされてなる前記高さ寸法Hbは、板厚方向に大きい状態にあり、つまり、ボルト18及びナット19により略一定に規制された重なり高さHkにおける前記高さ寸法Hbの占める割合は大きくなっている。これにより、逆に、同重なり高さHkにおける皿ばね積層体30の占める割合は小さくなっており、もって、皿ばね積層体30は、大きく圧縮された高圧縮状態にある。
【0041】
そして、振動入力により相対移動状態に移ると、図6Bに示すように、ボルト18の軸力Nに基づく圧接力により摩擦板22と滑動板23との間には、摺動による摩擦力が発生し、これが減衰力Fとなって振動減衰作用が発揮される。
【0042】
ここで、突部14c,16cの頂部14e,16eの架け渡し方向の幅は、例えば、所定値αに設定されている。よって、相対移動量が所定値α以下のときには、図6Aや図6Bに示すように、突部14cの頂部14eと突部16cの頂部16eとは、少なくとも互いの一部同士にて対向状態にあり、また、転動体40も、頂部14eと頂部16eとの両者における互いに対向する一部同士に挟まれつつこれらを転動している。よって、上述の所定値α以下の範囲で相対移動しても、上述の高さ寸法Hbに何等変化は無く、もって、皿ばね積層体30は上述の高圧縮状態に維持されて、圧接力も大きいままで変化ない。これにより、摩擦板22と滑動板23との摺動による前記摩擦力も大きな略一定値Ff1に維持されて、その結果、図5に示すように、摩擦ダンパー20は、相対移動量が所定値α以下の範囲では、大きな略一定値Ff1の減衰力Fを発生する。
【0043】
これに対して、柱梁架構3に大きな振動が入力されて、外板12,14と中板16との相対移動量が所定値αを超えたときには、先ず、図6Cに示すように、突部14cの頂部14eと突部16cの頂部16eとが、互いに一部も対向しない完全非対向状態となり、これに伴って、外板14の基板部14dの傾斜部14fと、中板16の基板部16dの傾斜部16fとが互いに略平行な状態をもって対向し始め、また、転動体40は、これら対向し始めた傾斜部14fと傾斜部16fとの両者に挟まれつつこれらを転動し始める。そして、更に相対移動量が大きくなると、転動体40は、これら傾斜部14fと傾斜部16fとの転動を経て、最終的に転動体40は、図6Dに示すように、互いに対向し始めた基板部14dの平面部14pと基板部16dの平面部16pとの両者に挟まれつつ、これらを転動することになる。
【0044】
ここで、外板14及び中板16の両者において、傾斜部14f,16fは、前述の突部14c,16cの頂部14e,16eよりも板厚方向の厚みが薄い部分である。また、その厚みは、傾斜部14f,16fの傾斜勾配に基づいて架け渡し方向たる相対移動方向に沿って徐々に薄くなっている。よって、転動体40がこれら傾斜部14f,16fを転動することにより、一対の外板14と中板16とを重ねてなる前記高さ寸法Hbは、図6Cに示すように、傾斜勾配に基づいて漸次小さくなり、そのため、ボルト18及びナット19により略一定に規制された前記重なり高さHkにおいて、皿ばね積層体30の占める割合は漸次大きくなる。これにより、ボルト18の軸力Nが漸次低下するので、圧接力も漸次低下し、図5中に線分ABで示すように、摩擦力たる減衰力Fも漸次低下することになる。
また、上記平面部14p,16pは、基板部14d,16dのなかで最も板厚方向の厚みが薄い部分である。よって、図6Dに示すように、転動体40がこれら平面部14p,16pに到達してこれらを転動することにより、一対の外板14と中板16とを重ねてなる前記高さ寸法Hbは最小となり、もって、重なり高さHkに占める皿ばね積層体30の割合は最大となる。これにより、ボルトの軸力Nが最低となるので、圧接力も最低となり、結果、図5中に点Bで示すように、摩擦力たる減衰力Fも最低値となる。
そして、以上のようにして、この摩擦ダンパー20によれば、相対移動量が所定値α以下の場合には、減衰力Fとして略一定の大きな摩擦力を発生するが、相対移動量が所定値αを超えると、減衰力Fたる摩擦力が漸減するという減衰力特性を奏することとなる。
【0045】
このような減衰力特性を有する摩擦ダンパー20は、特に制振対象の構造体が古い既存建物等の低強度構造体の場合に有効に利用される。図7A乃至図7Dは、その説明図である。なお、図7Aは、柱梁架構3において従来の摩擦ダンパーにより減衰力Fが付与される力点部位(外力が付与される部位のこと)の水平方向の変位と、力点部位に生じる内力との関係を示すグラフであり、図7Bは、従来の摩擦ダンパーの振動エネルギー吸収履歴特性のグラフである。また、図7Cは、第1実施形態の摩擦ダンパー20の振動エネルギー吸収履歴特性のグラフであり、図7Dは、第1実施形態の摩擦ダンパー20により減衰力Fが付与される力点部位の水平方向の変位と、力点部位に生じる内力との関係を示すグラフである。なお、図7Cは、前述の図5と概ね同じグラフである。
【0046】
図7A中、一点鎖線で示すように、振動の最大変位時には、建物自身が大きく変形していることから、建物の各部位には大きな内力が生じている。このような状態にて、更に外力を変形方向と逆の方向に付与すると、外力が付与される部位たる力点部位では、その内力が、外力の付与分だけ更に拡大する。すなわち、前記力点部位の内力は、図7A中一点鎖線で示す力点部位自身の変形による内力に、外力により生じる内力を足し合わせたものとなる。
【0047】
ここで、摩擦ダンパーの減衰力Fも、変形方向と逆向きの外力として作用する。また、従来の摩擦ダンパーの場合には、図7Bに示すように、その摩擦力たる減衰力Fの大きさは、振動の変位によらず略一定である。よって、従来の摩擦ダンパーでは、図7Aに一点鎖線で示す内力に対して図7Bの減衰力Fにより生じる内力を加算してなる前記力点部位の実際の内力は、図7Aの実線のようになる。つまり、従来の摩擦ダンパーの場合には、柱梁架構3の前記力点部位に対しては、振動の最大変位時の厳しい内力下においても、大きな減衰力Fによる大きな内力が更に追加で生じることになり、この場合には、内力が拡大して当該力点部位の破壊限界強度Zに至り易くなる。
【0048】
これに対して、上記第1実施形態の摩擦ダンパー20によれば、図7Cに示すように、相対移動によって水平変位が前記所定値αに相応する特定値α1を超えると、水平変位が大きくなるにつれて減衰力Fは低下する。よって、図7Dに一点鎖線で示す内力に対して図7Cの減衰力Fにより生じる内力を加算してなる実際の内力は、図7Dの実線のようになる。つまり、第1実施形態の摩擦ダンパー20によれば、水平変位が、前記所定値αに相応する特定値α1を超えた場合には、振動の最大変位に近づくに従って減衰力Fが小さくなるので、減衰力Fの入力に伴う前記力点部位の内力の拡大を、特に厳しい内力状態の最大変位時において有効に抑制できる。よって、振動により建物が大きく相対変位した場合でも、力点部位の破壊限界強度Zに至ることを有効に回避し得て、その結果、当該摩擦ダンパー20は、特に古い既存建物等の低強度構造体にその効力を発揮することができる。
【0049】
ところで、上述の第1実施形態では、突部14c,16cを外板14及び中板16の両者に設けていたが、何等これに限るものではなく、図8A及び図8Bに示すように、突部を外板14及び中板16のどちらか一方の板14(16)に対してのみを設け、他方の板16(14)には、突部16c(14c)を設けなくても良い。すなわち、当該他方の板16(14)については、一方の板14(16)と対向する面16s(14s)が平面になった、板厚方向に一定厚みの平板であっても良い。
そして、当該構成によっても、一対の外板12,14と中板16との架け渡し方向の相対移動に伴って、転動体40の転動する位置が、突部14c(16c)の頂部14e(16e)から基板部14d(16d)へと移ることになって、この移る際には、一対の外板12,14と中板16とが重なってなる前記高さ寸法Hbが変化するので、上述と同様のメカニズムに基づいて、相対移動量が大きいときの摩擦力を低下させることができる。ちなみに、この場合には、転動体40が基板部14d(16d)を転動する際にあっても、突部14c(16c)が、対向する平板の平面16s(14s)と当接しないように、転動体40の直径は、基板部14d(16d)の平面部14p(16p)からの突部14c(16c)の突出量よりも小さく設定されているのは言うまでもない。
【0050】
また、転動体40としての上述のフラットローラー40に代えて、真球等の球状部材を用いても良いし、更には、断面非正円形状のローラーを用いても良い。なお、後者の断面非正円形状のローラーというのは、その周方向の位置に応じて回転半径が変化したローラーのことであり、その一例としては、図8Cに示すような、断面形状が楕円形の円柱体様の楕円ローラー42等が挙げられる。そして、このような断面非正円形状のローラー42にあっては、同ローラー42が転動することだけで、一対の外板12,14と中板16とが重なってなる前記高さ寸法Hbを変化させることができる。よって、この場合には、外板14及び中板16の両者の突部14c,16cを省略してこれらの板14,16を、それぞれ両面が互いに平行な平板で構成することもできる。但し、上述の突部14c,16cを有した外板14や中板16に対して、当該断面非正円形状のローラー42を適用可能なのは言うまでもなく、その場合には、前記高さ寸法Hbをより大きく変化させることができて、圧接力の低下幅の拡大を通じて、摩擦力の低下幅を拡大することができる。
【0051】
また、望ましくは、図9A及び図9B(図9A中のB−B矢視図)に示すように、複数の転動体40,40…に対してリテーナー50を設けると良い。ここで、基本的には、転動体40,40…は、高い圧接力で外板14の前記面14s及び中板16の前記面16sに挟圧されているので、架け渡し方向に外板14と中板16とが相対移動する際に、転動体40は、上記の各面14s,16sに対して相対滑りを概ね起こすことなく各面14s,16sを架け渡し方向に転がる。つまり、各面14s,16sに対して転がり接触する。しかし、不測の事態により相対滑りを起こして離脱する虞もある。そのため、リテーナー50により、複数の転動体40,40…の相対位置関係を一定に保つと良く、そうすれば、ある特定の転動体40が相対滑りを起こして各面14s,16sから離脱しそうになった時に、リテーナー50を介して他の転動体40から、その離脱を阻止して留めようとする力が働くので、各転動体40の離脱を速やかに抑えることができる。
かかるリテーナー50の具体例としては、例えば、転動体40の直径よりも薄い板厚の板材を本体として用い、この板材における各転動体40に対応する位置に、転動体40の収容孔50aとして、転動体40よりも若干大きい略相似形状の貫通孔50aを形成したもの等が挙げられる。ちなみに、このリテーナー50に係る板材には、板厚方向にボルト18を挿通するためのボルト挿通孔50bが、架け渡し方向に沿った長孔状に形成されており、これにより、架け渡し方向に関するボルト18とリテーナー50との相対移動の許容を通して、ボルト18と転動体40との相対移動が架け渡し方向について許容されている。
【0052】
また、上述の第1実施形態では、外板14及び中板16の基板部14d,16dにおける平面部14p,16pと、突部14c,16cの頂部14e,16eとの間に傾斜部14f,16fを設けていたが、場合によっては、傾斜部14f,16fは無くても良い。つまり、図10に示すように、突部14c,16cの頂部14e,16eと平面部14p,16pとの間に一段の段差16jが形成されていても良いし、場合によっては、複数段の段差が階段状に形成されていても良い。図10の例では、中板16にのみ突部16cが設けられ、当該突部16cに対して一段の段差16jが形成されている。
但し、この場合の各段差16jの高さは、転動体40の半径よりも小さいことが必要であり、この条件を満たしていれば、転動体40は問題無く段差を乗り越えることができる。ただ、段差16jを乗り越える際には衝撃が生じるので、望ましくは第1実施形態のように傾斜部14f,16fを設ける方が望ましい。また、上述の第1実施形態では、傾斜部14f,16fを平面で形成していたが、曲面で形成しても良い。
【0053】
また、望ましくは、転動体40は、図2Bに示すように、ボルト18を両脇から挟む各位置に(詳しくは、架け渡し方向及び板厚方向の両者と直交する方向についてボルト18を両脇から挟む各位置に)それぞれ配置されていると良い。そして、このように配置されていれば、転動体40は、ボルト18の軸力Nに基づく圧接力を、ボルト18の軸芯に関して偏りの無い略対称分布で、他方の外板14を介して中板16へと伝達可能となる。よって、圧接力の安定化を通して、計画通りの摩擦力を、摩擦板22と滑動板23との間に発生可能となる。
【0054】
===第2実施形態===
図11は、第2実施形態の摩擦ダンパー20aの概略側面図である。
この第2実施形態の第1実施形態との相違点は、主に三つある。
一点目は、一方の外板12と他方の外板14との間に中板16が介装されているが、この中板16には、当該中板16と対向して対をなす第2中板161が一体に追設されており、この第2中板161と中板16との間に、他方の外板14が介装されていることである。
二点目は、外板14と中板16とには突部14c,16cが形成されておらず、その代わりに、第2中板161に突部16cが形成されていることである。
三点目は、他方の外板14と中板16との間には、転動体40の代わりに一対の滑動板23k,23kが介装されており、そして、転動体40は、他方の外板14と第2中板161との間に介装されていることである。
【0055】
以下、詳説する。先ず、この摩擦ダンパー20aは、中板16と対をなす第2中板161を有し、当該第2中板161は、中板16に対して板厚方向に間隔を隔てて対向配置されながら同中板16に一体に連結されている。そして、一方の外板12と他方の外板14との間の間隔に中板16が介装されながら、逆に、中板16と第2中板161との間の間隔には他方の外板14が介装され、このようにして各板12,16,14,161が板厚方向に交互に重ねられた状態において、これら全ての板12,16,14,161を板厚方向に串刺し状に貫通するボルト18及びナット19により、これら各板12,16,14,161には板厚方向の圧接力が付与されている。なお、この第2実施形態では、中板16が、「第2板部材の板状部分」に相当し、当該中板16は、第2中板161とによって「第2板部材」を構成する。つまり、第2中板161も、中板16と同様に「第2板部材」の一部をなしている。よって、「他方の第1板部材と第2板部材との間」というのは、第2中板161と他方の外板14との間のことであると、とることができる。また、前述の中板16と第2中板161との連結構造には、図3で例示した弾性屈曲部を有する連結構造が使用されている。
【0056】
ところで、上述したように、外板14や中板16には突部14c,16cが形成されておらず、中板16及び外板14として、その両面が平面の平板が使用されている。そして、外板14及び中板16に突部14c,16cが形成されない代わりに、第2中板161の両面にそれぞれ複数の突部16c,16cが形成されている。これら両面の突部16c,16cは、互いに対応する突部16c,16c同士が、架け渡し方向に関して同位置に形成されている。また、第2中板161よりも板厚方向の外方には、同外方を向いた突部16cに対向させて、ボルト18の軸力Nを受けるための受圧板15が設けられており、更には、この受圧板15と第2中板161との間には、転動体40が介装され、同様の転動体40は、第2中板161と他方の外板14との間にも介装されている。これにより、受圧板15及び転動体40を介してボルト18の軸力Nが上記圧接力として各板161,14,16,12に伝達される。ちなみに、上述の他方の外板14と第2中板161との間に介装された転動体40が、「他方の第1板部材と第2板部材との間の転動体」に相当する。
【0057】
ここで、上述の転動体40は、突部16c毎に設けられている。つまり、これら転動体40,40…は、架け渡し方向に係る突部16cの形成ピッチと同ピッチで配置されている。また、この配置関係が維持されるように、前述のリテーナー50(図11では不図示)が、受圧板15と第2中板161との間に介装される転動体40,40…の一群40G、及び、同第2中板161と他方の外板14との間に介装される転動体40,40…の一群40Gのそれぞれについて設けられている。そして、更に、これらリテーナー50,50同士は、適宜な連結部材によって連結一体化され、これにより、これら転動体40の一群40G,40G同士は、互いに対応する転動体40,40同士で架け渡し方向の位置が同じになるように規制されている。
【0058】
よって、一対の外板12,14及び受圧板15に対して、中板16や第2中板161が一体に架け渡し方向に相対移動する際には、これら転動体40,40…も、他の外板14と第2中板161との間、又は第2中板161と受圧板15との間に挟み込まれながら、一斉にこれら14,161,15を転動する。そして、ここで、各転動体40が、第2中板161における突部16c(「第2突部」に相当)を転動する状態では、一対の外板12,14と中板16と第2中板161と受圧板15との全てが重なってなる高さ寸法Hb1が大きい状態であるが、当該状態から、同転動体40が第2中板161における基板部16d、つまり突部16cよりも板厚方向の厚みが薄い部分16d(「第2基板部」に相当)を転動する状態に移行すると、同高さ寸法Hb1は小さくなる。これにより、重なり高さHkに占める皿ばね積層体30の高さH30の割合が大きくなって圧接力が低下するので、その分だけ一方の外板12と中板16との間に介装されている摩擦板22と滑動板23との間に発生する摩擦力、つまり減衰力Fも低下する。よって、この第2実施形態の摩擦ダンパー20aにおいても、相対移動量が大きい場合に減衰力Fを低下させることができる。
【0059】
ちなみに、図11の例では、受圧板15は、外板14に連結されていないが、外板14に対して相対移動不能に同外板14に連結されていても良く、この後説明する図12Aの例では、そのようになっている。
【0060】
図12A乃至図12Cは、本発明に係る摩擦ダンパーの適用例の説明図である。この例では、上述の第2実施形態の摩擦ダンパー20aを柱梁架構3のブレース10に適用している。なお、図12Aは、摩擦ダンパー20aが取り付けられたブレース10の概略側面図であり、図12Bは、図12A中のB−B矢視図であり、図12Cは、図12A中のC−C矢視図である。
【0061】
図1の例と同様、図12A乃至図12Cのブレース10も、柱梁架構3の対角方向を架け渡し方向として配置されている。このブレース10は、ウエブ10wと一対のフランジ10f,10fとを有したH形鋼である。そして、ブレース10は、架け渡し方向の適宜位置で互いに間隔Gを隔てるように分断されて、図12A及び図12Bの如き一対の分断端部10a,10bが形成されており、これにより、これらブレース分断端部10a,10b同士は、当該間隔Gにて架け渡し方向に相対移動可能になっている。
【0062】
一方、摩擦ダンパー20aは、各フランジ10fにつき、それぞれ二箇所に設けられている。すなわち、図12B及び図12Cに示すように、フランジ10fは、その幅方向の中央位置のウエブ10wから幅方向の両側に延出した一対の延出部分10fs,10fsを有しているが、各延出部分10fsに対して、それぞれ摩擦ダンパー20aが設けられている。そして、図示例のH形鋼にあっては、ウエブ10wを挟んで一対のフランジ10f,10fを有しているので、摩擦ダンパー20aは計4個設けられている。
【0063】
また、図示例では、ウエブ10wに対しては、取り付けスペースの関係上、「背景技術」のところで説明した従来型の摩擦ダンパー80が設けられている。すなわち、図12Cに示すように、この摩擦ダンパー80は、一方のブレース分断端部10aのウエブ10wに一体に固定された一対の外板82,84と、他方のブレース分断端部10bのウエブ10wが流用された中板86と、各外板82,84と中板86との間の各位置に、それぞれ介装される摩擦板及び滑動板と、これらに圧接力を付与するボルト18及びナット19と、を有しており、これにより、従来型の摩擦ダンパーが構成されている。しかし、取り付けスペースを確保できるのであれば、このウエブ10wに対して、第2実施形態の摩擦ダンパー20aを適用しても良いのは言うまでもない。
【0064】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変形が可能である。例として以下に示すような実施形態が挙げられる。
【0065】
上述の第1実施形態では、他方の外板14及び中板16に、それぞれ2つの突部14c,14c及び突部16c,16cを設けていたが、他方の外板14の突部14c及び中板16の突部16cの数は、それぞれ1つであっても良いし、3つ以上であっても良い。
ちなみに、図2A、図8A、図8B、図10、及び図11の各実施形態のように、突部14c(16c)を複数有していれば、図13のような減衰力特性を奏することができて、制振対象の構造体が想定外の相対変位をした場合に、当該相対変位を有効に抑制することができる。
【0066】
詳説すると、基本的には、前述の突部14c(16c)の頂部14e(16e)と基板部14d(16d)との架け渡し方向の長さの和は、構造体の想定最大変位時の相対移動量よりも大きく設定されている。よって、例えば、外板14の突部14cを転動する転動体40が、その隣の突部14cを転動することは、基本的にはあり得ない。しかしながら、万一この想定最大変位を超えるような振動が入力された場合には、上述のようなことが起こり得て、その場合、つまり転動体40が上記隣の突部14cまで達してこれを転動する場合には、これにより、相対移動により一旦小さくなった前記高さ寸法Hbが、反転して大きくなる。これに伴い、圧接力の反転漸増を来たし、摩擦力たる減衰力Fも反転漸増し、つまり、その減衰力特性は、図13中に線分AB及び線分BCで示すように、相対移動の増加とともに一旦漸減した減衰力Fが、反転漸増するカーブを描く。そして、この反転漸増した減衰力Fは、想定最大変位を超える変位を止める方向に有効に働くので、結果、構造体の想定外の相対変位を有効に抑制可能となる。
【符号の説明】
【0067】
3 柱梁架構、10 ブレース、10a 分断端部、10b 分断端部、
10f フランジ、10fs 延出部分、10w ウエブ、
12 外板(一方の第1板部材)、12a ボルト挿通孔、
13 連結構造、13a 突片、13b 案内片、
14 外板(他方の第1板部材)、14a ボルト挿通孔、
14c 突部(第1突部)、14e 頂部、
14d 基板部(第1基板部)、14f 傾斜部、14p 平面部、14s 面、
14j 接合部分、14m 薄厚部(弾性屈曲部)、
15 受圧板、
16 中板(第2板部材、第2板部材の板状部分)、16a ボルト挿通孔、
16c 突部(第2突部)、16e 頂部、
16d 基板部(第2基板部)、16f 傾斜部、16p 平面部、
16s 面、16j 段差、
18 ボルト(重なり高さ規制部材)、18h 頭部、
19 ナット(重なり高さ規制部材)、
20 摩擦ダンパー、20a 摩擦ダンパー、
22 摩擦板、22a ボルト挿通孔、23 滑動板、23a ボルト挿通孔、
23k 滑動板、
30 皿ばね積層体(弾性部材)、31 皿ばね、32 ワッシャ
40 フラットローラー(転動体)、40G 一群のフラットローラー、
42 楕円ローラー(断面非正円形状のローラー、転動体)、
50 リテーナー、50a 貫通孔、50a 収容孔、50b ボルト挿通孔、
80 摩擦ダンパー、82 外板、84 外板、86 中板、
161 第2中板(第2板部材)、
G 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対移動可能に重ねられた2つの部材に圧接力を付与し、前記2つの部材が振動により相対移動するときに前記圧接力に基づいて発生する摩擦力を減衰力として用いて、前記振動を減衰する摩擦ダンパーであって、
前記2つの部材のうちの一方の部材として設けられ、板厚方向に間隔を隔てて互いに対向する一対の第1板部材と、
前記2つの部材のうちの他方の部材として設けられる第2板部材であって、前記第2板部材の少なくとも一部の板状部分が、前記一対の第1板部材同士の間の前記間隔に、前記板厚方向と直交する所定方向に相対移動可能に介装されることにより、前記一対の第1板部材に重ねられる第2板部材と、
前記一対の第1板部材と前記第2板部材とが重ねられた状態で、これらを前記板厚方向に挟み込むことにより、前記一対の第1板部材及び前記第2板部材に前記圧接力を付与する圧接力付与部材と、を有し、
前記一対の第1板部材と前記第2板部材との前記所定方向の相対移動量が所定値を超えたときに、前記圧接力が低下し、
前記一対の第1板部材のうちの一方の第1板部材と前記第2板部材との間には、前記所定方向の相対移動に従って前記摩擦力が発生し、
前記一対の第1板部材のうちの他方の第1板部材と前記第2板部材との間には、前記他方の第1板部材及び前記第2板部材を前記所定方向に沿って転動する転動体が介装されていることを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項2】
請求項1に記載の摩擦ダンパーであって、
前記圧接力付与部材は、
前記一対の第1板部材又は前記第2板部材に対して前記板厚方向に重ねて設けられた弾性部材と、
前記第2板部材と、前記一対の第1板部材と、前記弾性部材との前記板厚方向の重なり高さが一定になるように規制する重なり高さ規制部材と、を有し、
前記重なり高さ規制部材によって前記弾性部材は前記板厚方向に圧縮変形されており、
前記一対の第1板部材と前記第2板部材との前記相対移動量が前記所定値を超えたときに、前記第2板部材と前記一対の第1板部材とが重なってなる前記板厚方向の高さ寸法が小さくなることによって、前記圧接力が低下することを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項3】
請求項2に記載の摩擦ダンパーであって、
前記他方の第1板部材は、前記第2板部材側に突出する第1突部を有し、
前記第1板部材と前記第2板部材との前記相対移動量が前記所定値以下のときには、前記転動体は、前記第1突部の頂部を転動し、
前記第1板部材と前記第2板部材との前記相対移動量が前記所定値を超えたときに、前記転動体は、前記頂部での前記第1突部の厚みよりも前記板厚方向の厚みが薄い第1基板部を転動することを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の摩擦ダンパーであって、
前記第2板部材は、前記他方の第1板部材側に突出する第2突部を有し、
前記第1板部材と前記第2板部材との前記相対移動量が前記所定値以下のときには、前記転動体は、前記第2突部の頂部を転動し、
前記第1板部材と前記第2板部材との前記相対移動量が前記所定値を超えたときに、前記転動体は、前記頂部での前記第2突部の厚みよりも前記板厚方向の厚みが薄い第2基板部を転動することを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の摩擦ダンパーであって、
前記他方の第1板部材の前記第1基板部には、前記第1突部の頂部に向かって漸次前記板厚方向の厚みが厚くなる傾斜部が設けられていることを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項6】
請求項4に記載の摩擦ダンパーであって、
前記第2板部材の前記第2基板部には、前記第2突部の前記頂部に向かって漸次前記板厚方向の厚みが厚くなる傾斜部が設けられていることを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の摩擦ダンパーであって、
前記一方の第1板部材と前記他方の第1板部材とを連結する連結構造を有し、
前記連結構造は、前記一方の第1板部材と前記他方の第1板部材との間の相対移動を、前記所定方向に関しては規制しつつ前記板厚方向に関しては許容することを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の摩擦ダンパーであって、
前記転動体は、その周方向の位置に応じて回転半径が変化する断面非正円形状のローラーであることを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載の摩擦ダンパーであって、
前記転動体は、前記所定方向に並んで複数設けられ、
前記転動体同士の互いの相対位置関係を一定に保つためのリテーナーを有していることを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項10】
請求項2乃至7の何れかに記載の摩擦ダンパーであって、
前記重なり高さ規制部材は、
前記弾性部材、前記一対の第1板部材、及び前記第2板部材の全てを前記板厚方向に沿って貫通して設けられるボルトと、
前記ボルトに螺合するナットと、を有し、
前記ボルトの頭部と前記ナットとの両者で、前記弾性部材、前記一対の第1板部材、及び前記第2板部材の全てを前記板厚方向に挟み込むことにより、前記ボルトに生じた軸力が、前記圧接力として作用し、
前記転動体は、前記ボルトを両脇から挟む各位置にそれぞれ配置されていることを特徴とする摩擦ダンパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−102793(P2012−102793A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251106(P2010−251106)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】