摩擦接合構造及びポンプ装置
【課題】貯留部の大型化や厳密な公差管理を要することなく、バリのはみ出しを抑えることのできる摩擦接合構造を提供することにある。
【解決手段】モータケース5の開口端には、環状溝21が形成され、カバー8には、環状溝21に対応する円環板状の摺接突部22が形成される。そして、環状溝21の底部と摺接突部22とが摺接状態で相対回転することにより、両者の間に環状の摩擦接合部25が形成される。また、摩擦接合部25の同心位置には、環状溝21の壁部26,27が配置され、これにより、摩擦接合部25において発生したバリ30を収容する貯留部28が形成される。更に、摺接突部22には、その全周に亘り、径方向外側に突出する複数の突起29が形成される。そして、貯留部28(28a)は、これらの各突起29を区画体として、周方向に区画される。
【解決手段】モータケース5の開口端には、環状溝21が形成され、カバー8には、環状溝21に対応する円環板状の摺接突部22が形成される。そして、環状溝21の底部と摺接突部22とが摺接状態で相対回転することにより、両者の間に環状の摩擦接合部25が形成される。また、摩擦接合部25の同心位置には、環状溝21の壁部26,27が配置され、これにより、摩擦接合部25において発生したバリ30を収容する貯留部28が形成される。更に、摺接突部22には、その全周に亘り、径方向外側に突出する複数の突起29が形成される。そして、貯留部28(28a)は、これらの各突起29を区画体として、周方向に区画される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦接合構造及びポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、所謂超音波溶着やスピン溶着等、二部材間に生ずる摩擦熱を利用して両者の接触部分を接合する方法が知られている。そして、このような摩擦接合を採用することによって、その接合部に高いシール性を持たせることができる。
【0003】
しかしながら、シール性を担保すべく溶融量を多く設定することで、その接合部からはみ出る溶融生成物、即ち「バリ」の発生量も増加する。このため、多くの場合、摩擦接合部の近傍には、その発生したバリを収容するための貯留部が設けられている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−81351号公報
【特許文献2】実開平5−56424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、接合対象となる二部材が摺接状態で相対回転するスピン溶着の場合には、見かけ上、その発生したバリが貯留部内を周回することがある。そして、そのバリが一所に集まることで貯留部外にはみ出す可能性がある。
【0006】
例えば、図11及び図12に示すように、略円筒状に形成された筒体60の開口端60aに円板状の蓋体61を取着し、両者を摩擦接合する。この例においては、筒体60の開口端60aには、環状溝62が形成され、蓋体61には、その環状溝62に対応する円環板状の摺接突部63が形成されている。そして、摺接突部63の先端と環状溝62の底部64とが摺接する状態で、筒体60と蓋体61とが相対回転することにより、その摺接部分に摩擦接合部65が形成される。
【0007】
また、摩擦接合部65を構成する摺接突部63の同心位置には、環状溝62の壁部66,67が配置されており、これにより、摺接突部63と各壁部66,67との間には、環状の貯留部69が形成される。そして、摩擦接合部65において発生するバリ68は、この貯留部69内に収容されるようになっている。尚、この例では、発生するバリ68の多くが摩擦接合部65の径方向外側にはみ出すことから、外側の貯留部69aの方が幅広に設定されている。
【0008】
しかしながら、このような貯留部69には、多くの場合、摺接突部63及び環状溝62の真円度、或いは同軸度に基づいて、幅の狭い部分(幅狭部S)が形成される。そして、この幅狭部Sにバリ68が集積することによって、その貯留部69(69a)外へのバリ68のはみ出しが発生する。
【0009】
このようなバリ68のはみ出しを防ぐ方策としては、その貯留部69(69a)を大きくする、或いは溶融量を最適化してバリ68の発生を抑える等が考えられる。しかしながら、貯留部69の大型化には限りがあり、また摩擦接合による溶融量を最適化するためには、その構成要素について厳密な公差管理を行う必要がある。そのため、このような問題を解決し得る新たな摩擦接合構造が求められており、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、貯留部の大型化や厳密な公差管理を要することなく、バリのはみ出しを抑えることのできる摩擦接合構造及びポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、摺接状態で相対回転させることにより二部材間に環状の摩擦接合部を形成するとともに、前記摩擦接合部の同心位置に環状壁を配置することにより、該環状壁と前記摩擦接合部との間に貯留部を形成して該貯留部内にバリを収容する摩擦接合構造において、前記貯留部を周方向に区画して前記バリを分散させる複数の区画体を備えること、を要旨とする。
【0012】
即ち、バリのはみ出しは、貯留部内のバリが一所に集まることにより発生する。この点、上記構成によれば、摩擦接合部において発生したバリは、各区画体に付着することによって、それぞれ分散した状態で貯留部内に収容される。そして、これにより、発生したバリが貯留部内の一所に集積される状況を回避することができる。その結果、貯留部の大型化や、各部材の厳密な公差管理を行うことなく、その外部へのバリのはみ出しを抑えることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記二部材は、少なくとも摺接部分が樹脂により形成されていること、を要旨とする。
即ち、樹脂の溶融により発生するバリは、軽く嵩張るものになりやすい。このため、バリが、二部材間の相対回転により貯留部内を周回しやすく、且つその集積による貯留部外へのはみ出しも起こりやすい傾向がある。従って、上記構成に本発明を適用することで、より顕著な効果を得ることができる。また、このような樹脂部材間の摩擦接合は、その溶融温度の低さから、電子機器のケースに広く用いられる。従って、幅広い分野において、その優れた効果を享受することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記二部材は、前記環状壁を有する第1部材、及び前記環状壁と同心位置において前記第1部材に摺接する環状の摺接突部を備えた第2部材であって、前記各区画体は、前記環状壁又は前記摺接突部の少なくとも何れか一方に設けられて径方向に突出する複数の突起であること、を要旨とする。
【0015】
上記構成によれば、簡素な構成にて、各区画体を形成することができる。
請求項4に記載の発明は、前記各突起は、先端が相対回転方向に傾倒していること、を要旨とする。
【0016】
上記構成によれば、より確実に、各突起にバリを付着させることができる。
請求項5に記載の発明は、前記二部材は、一方が固定された状態で他方が回転することにより摩擦接合されるものであって、前記区画体は、回転する側に設けられること、を要旨とする。
【0017】
上記構成によれば、摩擦接合部に干渉することなく、より摩擦接合部に近接した位置に各区画体を配置することができる。これにより、その発生したバリを速やかに区画体に付着させることができる。その結果、より好適に、貯留部内のバリを分散させることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、前記環状壁の先端には、前記貯留部側に延びるフランジが形成されること、を要旨とする。
即ち、バリのはみ出しは、その貯留部内において集積したバリが、環状壁の壁面に沿ってせり上がり、当該環状壁を乗り越えることにより発生する。この点、上記構成によれば、その壁面の上方をフランジが覆うことにより、当該壁面沿いにせり上がるバリを貯留部内に抑えこむことができる。これより、効率良くバリを貯留部内に収容することができ、その結果、環状壁の高さを低くして貯留部の容積を小さく抑えることができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、前記各区画体は、前記摩擦接合部の径方向外側に形成された前記貯留部内に配置されること、を要旨とする。
即ち、摩擦接合部において発生するバリは、遠心力によって、その径方向外側にはみ出すことが多い。従って、上記構成によれば、より効果的に、そのバリのはみ出しを抑えることができる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7の何れか一項に記載の摩擦接合構造を有するポンプ装置であること、を要旨とする。
即ち、ポンプ装置では、そのシール性を確保するため、摩擦接合が用いられることが多い。更に、他の機器に隣接して配置されることから、バリのような異物を外部に出さないような構造が求められている。従って、本発明は、このようなポンプ装置に適用することが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、貯留部の大型化や厳密な公差管理を要することなく、バリのはみ出しを抑えることが可能な摩擦接合構造及びポンプ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】電動ポンプ装置の概略構成を示す断面図。
【図2】モータケース(開口端近傍)の斜視図。
【図3】カバーの斜視図。
【図4】モータケースの開口端にカバーを取着した状態を示す部分断面図。
【図5】第1の実施形態における摩擦接合構造を示す断面図(A−A断面)。
【図6】第2の実施形態における摩擦接合構造を示す部分断面図。
【図7】別例の摩擦接合構造を示す断面図(A−A断面)。
【図8】別例の摩擦接合構造を示す断面図(A−A断面)。
【図9】別例の摩擦接合構造を示す断面図(A−A断面)。
【図10】別例の摩擦接合構造を示す断面図(A−A断面)。
【図11】従来の摩擦接合構造及びバリのはみ出しを模式的に示す部分断面図。
【図12】従来の摩擦接合構造及びバリのはみ出しを模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下、本発明を電動ポンプ装置に具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、電動ポンプ装置1は、ポンプケース2内に収容されたポンプ機構(内接ギヤポンプ)3と、ポンプケース2の一端(同図中、左側の端面2a)に取着されることにより、ポンプ機構3の吸入部及び吐出部を構成するポンププレート4とを備えている。また、ポンプケース2の他端(同図中、右側の端面2b)には、略円筒状に形成されたモータケース5が固定されており、その内部には、駆動源となるモータ6及びその制御基板7が収容されている。そして、モータケース5の先端(開口端5a)には、略円板状に形成されたカバー8が取着されている。
【0024】
詳述すると、モータケース5は、樹脂モールドによりモータ6のステータ10と一体に形成されている。そして、制御基板7は、その開口端5a近傍に収容されている。また、モータケース5の筒内には、ポンプケース2の端面2bに突設された円筒状の支持部11が同軸配置されている。そして、モータ6のロータ12は、この支持部11に挿通された駆動軸13に固定されることにより、ステータ10の径方向内側に配置されている。
【0025】
具体的には、駆動軸13は、支持部11に設けられた軸受け14により回転自在に支承されている。また、ロータ12は、略有底円筒状に形成されるとともに、支持部11の径方向外側を包囲する態様でモータケース5の筒内に配置されている。そして、ロータ12は、その底部12aに駆動軸13の一端が固定されることにより、当該駆動軸13を介して、ポンプ機構3(のインナギヤ3a)に連結されている。
【0026】
ここで、本実施形態のカバー8は、モータケース5と同様、樹脂(例えば、ポリアミド等)により形成されている。そして、モータケース5は、その開口端5aにカバー8が摩擦接合されることで、その筒内の液密性が確保されている。
【0027】
詳述すると、図2に示すように、モータケース5の開口端5aには、軸方向(同図中、上側)に開口する環状溝21が形成されている。また、図3に示すように、カバー8の取着面8aには、上記環状溝21に対応する円環板状の摺接突部22が形成されている。そして、図4に示すように、カバー8は、その摺接突部22の先端を環状溝21内に挿入し、当該環状溝21の底部23に当接させる態様で、モータケース5の開口端5aに取着される。
【0028】
本実施形態では、このように摺接突部22が環状溝21の底部23に当接した状態で、カバー8を回転させる。尚、このとき、モータケース5は、回転不能に固定されている。そして、これにより両者を相対回転させることにより、そのモータケース5の開口端5aにカバー8を摩擦接合(スピン溶着)する構成になっている。
【0029】
具体的には、図3及び図4に示すように、摺接突部22の先端には、その他の部分よりも薄肉に形成された溶融部24が設定されている。そして、その摩擦熱により溶融した溶融部24及び環状溝21の底部23が溶着することにより、環状の摩擦接合部25が形成される。
【0030】
さらに、摩擦接合部25の同軸位置には、環状溝21の壁部26,27が配置されている。そして、本実施形態では、この環状壁としての壁部26,27と摩擦接合部25との間に形成される隙間を貯留部28として、その貯留部28内に、摩擦接合部25からはみ出した溶融生成物、即ち「バリ」を収容する構成になっている。
【0031】
また、図3に示すように、摺接突部22には、その全周に亘って、径方向外側に突出する複数の突起29が形成されている。具体的には、これらの各突起29は、軸方向に延びる板状に形成されている。図5に示すように、各突起29は、摩擦接合部25となる摺接突部22とともに、環状溝21内に配置される。そして、摺接突部22とその径方向外側を包囲する壁部26との間に形成される貯留部28aは、これらの各突起29によって、周方向に区画されるようになっている。
【0032】
即ち、その摩擦接合時、摩擦接合部25において発生したバリ30は、摺接突部22(カバー8)の回転(同図に示す例では、反時計回り方向)に伴って、その発生位置よりも回転方向下流側に位置する各突起29に付着する。その結果、バリ30は、その区画体としての各突起29に付着した状態で、周方向に分散して貯留部28a内に収容される。
【0033】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記構成によれば、簡素な構成にて、その発生したバリ30が貯留部28内の一所に集積される状況を回避することができる。その結果、貯留部28の大型化や、モータケース5及びカバー8の厳密な公差管理を行うことなく、その外部へのバリ30のはみ出しを抑えることができる。
【0034】
(2)モータケース5及びカバー8は、ともに樹脂により形成される。即ち、樹脂の溶融により発生するバリ30は、軽く嵩張るものになりやすい。このため、そのバリ30が、カバー8の回転により貯留部28内を周回しやすく、且つその集積による貯留部28外へのはみ出しも起こりやすい傾向がある。従って、このような構成に上記(1)の発明を適用することで、より顕著な効果を得ることができる。また、このような樹脂部材間の摩擦接合は、その溶融温度の低さから、電子機器のケースに広く用いられる。従って、幅広い分野において、その優れた効果を享受することができる。
【0035】
(3)摺接突部22に設けられた各突起29により区画体が形成される。これにより、その区画体としての各突起29が、摺接突部22と一体に回転する。即ち、各突起29が摩擦接合部25に隣接した位置にあるため、その発生したバリ30が突起29に付着しやすい。その結果、より好適に、貯留部28内のバリ30を周方向に分散させることができる。
【0036】
(4)各突起29は、摺接突部22から径方向外側に突出するように形成される。これにより、その区画体としての各突起29は、摺接突部22とその径方向外側を包囲する壁部26との間の貯留部28a内に配置される。即ち、通常、摩擦接合部25において発生するバリ30は、遠心力によって、その摩擦接合部25の径方向外側にはみ出すことが多い。従って、上記構成によれば、より効果的に、そのバリ30のはみ出しを抑えることができる。
【0037】
(第2の実施形態)
以下、本発明を電動ポンプ装置に具体化した第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、便宜上、第1の実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0038】
図6に示すように、本実施形態では、モータケース5の開口端5aに設けられた環状溝31の各壁部32,33のうち、径方向外側(同図中、右側)に位置する壁部32の先端32aには、その全周に亘って、径方向内側(同図中、左側)に延びるフランジ35が形成されている。
【0039】
即ち、バリ30のはみ出しは、その貯留部28a内において集積したバリ30が、壁部32の壁面32bに沿ってせり上がり、同壁部32を乗り越えることにより発生する。この点を踏まえ、本実施形態では、上記のように、壁部32の先端32aから貯留部28a側に突出するフランジ35を設けることで、その壁面32bの上方を覆う。そして、その壁面32b沿いにせり上がるバリ30を、フランジ35によって貯留部28a内に抑えこむ構成になっている。
【0040】
以上、本実施形態によれば、その発生するバリ30を、効率良く、貯留部28a内に収容することできる。そして、その高い収容効率を活かして、貯留部28aの容積を小さくすることができる。具体的には、上記第1の実施形態との比較において、貯留部28aを構成する環状溝31の溝深さを浅く(壁部32の高さを低く)することができる。その結果、より一層の小型化を図ることができる。
【0041】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、本発明を電動ポンプ装置1、詳しくはモータケース5とカバー8との摩擦接合構造に具体化した。しかし、その適用部位については必ずしもこれに限るものではなく、二部材間を摩擦接合するものであれば、どのようなものに適用してもよい。従って、例えば、プーリ等を介して駆動されるポンプ装置に適用してもよく、またポンプ装置以外の用途に適用してもよい。
【0042】
・上記各実施形態では、摺接突部22に複数の突起29を設け、当該各突起29を区画体として貯留部28(28a)を周方向に区画することとした。しかし、これに限らず、例えば、図7に示すように、環状溝41の壁部42,43のうち、径方向外側に位置する壁部42について、その全周に亘り、径方向内側に突出する複数の突起44を形成する。そして、これらの各突起44を区画体として、貯留部28(28a)を周方向に区画する構成としてもよい。このような構成としても、上記各実施形態と同様、貯留部28内のバリ30を周方向に分散して収容することができる。
【0043】
尚、このような構成との比較において、上記各実施形態のようにカバー8側の摺接突部22に各突起29を設ける構成には、その各突起29の形成が容易、且つ、摩擦接合部25に干渉することなく、その区画体としての各突起29を摩擦接合部25に近接した位置に配置することが可能という利点がある。
【0044】
・また、図8に示すように、区画体となる各突起47の先端を、摩擦接合する二部材間の相対回転方向に傾倒する構成としてもよい。具体的には、同図に示す例では、カバー8の摺接突部22に各突起47が設けられている。従って、これら各突起47の先端は、カバー8の回転方向(同図中、反時計回り方向)に傾倒している。このような構成とすれば、より確実に、各突起47にバリ30を付着させることができる。
【0045】
尚、回転するカバー8に対して固定状態で摺接するモータケース5側(の壁部)に、その区画体となる各突起を形成する場合には、カバー8の回転方向とは逆向きの方向が「相対回転方向」となる。従って、例えば、図7に示す例を基礎とするならば、各突起44の先端は、同図中、時計回り方向に傾倒させるとよい。
【0046】
・上記各実施形態、及び上記図7及び図8に示す例では、摩擦接合部25の径方向外側に位置する貯留部28a内に区画体となる各突起(29,44,47)を配置することとした。しかし、これに限らず、摩擦接合部25の径方向内側に、バリ30が出やすい場合には、図9に示すように、摺接突部50の全周に亘り、径方向内側に突出する複数の突起51を形成する。そして、これらの各突起51を区画体として、貯留部28bを周方向に区画する構成としてもよい。
【0047】
・さらに、摩擦接合部25の径方向外側及び内側に位置する各貯留部28a,28bの両方に区画体を配置する構成としてもよい。具体的には、図10に示すように、摺接突部52の径方向外側及び内側にそれぞれ、複数の突起53,54を形成する。そして、これらの各突起53,54を区画体として、摩擦接合部25の径方向外側及び内側に位置する各貯留部28a,28bをそれぞれ周方向に区画する構成としてもよい。尚、環状溝の壁部に設けられた複数の突起によって、外側の貯留部28aに配置される区画体、及び内側の貯留部28bに配置される区画体の少なくとも一方を構成してもよい。
【0048】
・上記各実施形態では、固定状態にあるモータケース5の開口端5aに対して回転するカバー8を摺接させることにより、その摩擦接合を行うこととした。しかし、これに限らず、摩擦接合する二部材は、摺接状態で相対回転させることができるものであれば、どのようなものであってもよい。
【0049】
・また、上記各実施形態では、モータケース5の開口端5aに環状溝21を形成することにより、同モータケース5を環状壁としての壁部26,27を有する第1部材とする。そして、第2部材としてのカバー8に摺接突部22を形成することした。しかしながら、例えば、そのカバーが重力方向下側から取着されるような場合等には、カバー側に環状溝を形成し、その壁部を環状壁とする。そして、モータケース側に摺接突部を形成する構成であってもよい。この場合、カバーが第1部材となり、モータケースが第2部材となる。
【0050】
・さらに、摩擦接合部との間にバリの貯留部を形成する環状壁が配置される構成であれば、必ずしも環状溝はなくともよい。
・上記各実施形態では、モータケース5及びカバー8は、ともに樹脂により形成されることとした。しかし、これに限らず、少なくともその摺接部分(摺接突部22先端の溶融部24及び環状溝21の底部23)が樹脂であることが望ましい。尚、ポリアミド以外の樹脂を用いてもよい。そして、その摩擦接合が可能であれば、双方ともに金属であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…電動ポンプ装置、2…ポンプケース、3…ポンプ機構、4…ポンププレート、5…モータケース、5a…開口端、6…モータ、7…制御基板、8…カバー、21…環状溝、22…摺接突部、23…底部、24…溶融部、25…摩擦接合部、26,27…壁部、28(28a,28b)…貯留部、29…突起、30…バリ、31…環状溝、32,33…壁部、32a…先端、32b…壁面、35…フランジ、41…環状溝、42,43…壁部、44…突起、47…突起、50…摺接突部、51…突起、52…摺接突部、53,54…突起。
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦接合構造及びポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、所謂超音波溶着やスピン溶着等、二部材間に生ずる摩擦熱を利用して両者の接触部分を接合する方法が知られている。そして、このような摩擦接合を採用することによって、その接合部に高いシール性を持たせることができる。
【0003】
しかしながら、シール性を担保すべく溶融量を多く設定することで、その接合部からはみ出る溶融生成物、即ち「バリ」の発生量も増加する。このため、多くの場合、摩擦接合部の近傍には、その発生したバリを収容するための貯留部が設けられている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−81351号公報
【特許文献2】実開平5−56424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、接合対象となる二部材が摺接状態で相対回転するスピン溶着の場合には、見かけ上、その発生したバリが貯留部内を周回することがある。そして、そのバリが一所に集まることで貯留部外にはみ出す可能性がある。
【0006】
例えば、図11及び図12に示すように、略円筒状に形成された筒体60の開口端60aに円板状の蓋体61を取着し、両者を摩擦接合する。この例においては、筒体60の開口端60aには、環状溝62が形成され、蓋体61には、その環状溝62に対応する円環板状の摺接突部63が形成されている。そして、摺接突部63の先端と環状溝62の底部64とが摺接する状態で、筒体60と蓋体61とが相対回転することにより、その摺接部分に摩擦接合部65が形成される。
【0007】
また、摩擦接合部65を構成する摺接突部63の同心位置には、環状溝62の壁部66,67が配置されており、これにより、摺接突部63と各壁部66,67との間には、環状の貯留部69が形成される。そして、摩擦接合部65において発生するバリ68は、この貯留部69内に収容されるようになっている。尚、この例では、発生するバリ68の多くが摩擦接合部65の径方向外側にはみ出すことから、外側の貯留部69aの方が幅広に設定されている。
【0008】
しかしながら、このような貯留部69には、多くの場合、摺接突部63及び環状溝62の真円度、或いは同軸度に基づいて、幅の狭い部分(幅狭部S)が形成される。そして、この幅狭部Sにバリ68が集積することによって、その貯留部69(69a)外へのバリ68のはみ出しが発生する。
【0009】
このようなバリ68のはみ出しを防ぐ方策としては、その貯留部69(69a)を大きくする、或いは溶融量を最適化してバリ68の発生を抑える等が考えられる。しかしながら、貯留部69の大型化には限りがあり、また摩擦接合による溶融量を最適化するためには、その構成要素について厳密な公差管理を行う必要がある。そのため、このような問題を解決し得る新たな摩擦接合構造が求められており、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、貯留部の大型化や厳密な公差管理を要することなく、バリのはみ出しを抑えることのできる摩擦接合構造及びポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、摺接状態で相対回転させることにより二部材間に環状の摩擦接合部を形成するとともに、前記摩擦接合部の同心位置に環状壁を配置することにより、該環状壁と前記摩擦接合部との間に貯留部を形成して該貯留部内にバリを収容する摩擦接合構造において、前記貯留部を周方向に区画して前記バリを分散させる複数の区画体を備えること、を要旨とする。
【0012】
即ち、バリのはみ出しは、貯留部内のバリが一所に集まることにより発生する。この点、上記構成によれば、摩擦接合部において発生したバリは、各区画体に付着することによって、それぞれ分散した状態で貯留部内に収容される。そして、これにより、発生したバリが貯留部内の一所に集積される状況を回避することができる。その結果、貯留部の大型化や、各部材の厳密な公差管理を行うことなく、その外部へのバリのはみ出しを抑えることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記二部材は、少なくとも摺接部分が樹脂により形成されていること、を要旨とする。
即ち、樹脂の溶融により発生するバリは、軽く嵩張るものになりやすい。このため、バリが、二部材間の相対回転により貯留部内を周回しやすく、且つその集積による貯留部外へのはみ出しも起こりやすい傾向がある。従って、上記構成に本発明を適用することで、より顕著な効果を得ることができる。また、このような樹脂部材間の摩擦接合は、その溶融温度の低さから、電子機器のケースに広く用いられる。従って、幅広い分野において、その優れた効果を享受することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記二部材は、前記環状壁を有する第1部材、及び前記環状壁と同心位置において前記第1部材に摺接する環状の摺接突部を備えた第2部材であって、前記各区画体は、前記環状壁又は前記摺接突部の少なくとも何れか一方に設けられて径方向に突出する複数の突起であること、を要旨とする。
【0015】
上記構成によれば、簡素な構成にて、各区画体を形成することができる。
請求項4に記載の発明は、前記各突起は、先端が相対回転方向に傾倒していること、を要旨とする。
【0016】
上記構成によれば、より確実に、各突起にバリを付着させることができる。
請求項5に記載の発明は、前記二部材は、一方が固定された状態で他方が回転することにより摩擦接合されるものであって、前記区画体は、回転する側に設けられること、を要旨とする。
【0017】
上記構成によれば、摩擦接合部に干渉することなく、より摩擦接合部に近接した位置に各区画体を配置することができる。これにより、その発生したバリを速やかに区画体に付着させることができる。その結果、より好適に、貯留部内のバリを分散させることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、前記環状壁の先端には、前記貯留部側に延びるフランジが形成されること、を要旨とする。
即ち、バリのはみ出しは、その貯留部内において集積したバリが、環状壁の壁面に沿ってせり上がり、当該環状壁を乗り越えることにより発生する。この点、上記構成によれば、その壁面の上方をフランジが覆うことにより、当該壁面沿いにせり上がるバリを貯留部内に抑えこむことができる。これより、効率良くバリを貯留部内に収容することができ、その結果、環状壁の高さを低くして貯留部の容積を小さく抑えることができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、前記各区画体は、前記摩擦接合部の径方向外側に形成された前記貯留部内に配置されること、を要旨とする。
即ち、摩擦接合部において発生するバリは、遠心力によって、その径方向外側にはみ出すことが多い。従って、上記構成によれば、より効果的に、そのバリのはみ出しを抑えることができる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7の何れか一項に記載の摩擦接合構造を有するポンプ装置であること、を要旨とする。
即ち、ポンプ装置では、そのシール性を確保するため、摩擦接合が用いられることが多い。更に、他の機器に隣接して配置されることから、バリのような異物を外部に出さないような構造が求められている。従って、本発明は、このようなポンプ装置に適用することが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、貯留部の大型化や厳密な公差管理を要することなく、バリのはみ出しを抑えることが可能な摩擦接合構造及びポンプ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】電動ポンプ装置の概略構成を示す断面図。
【図2】モータケース(開口端近傍)の斜視図。
【図3】カバーの斜視図。
【図4】モータケースの開口端にカバーを取着した状態を示す部分断面図。
【図5】第1の実施形態における摩擦接合構造を示す断面図(A−A断面)。
【図6】第2の実施形態における摩擦接合構造を示す部分断面図。
【図7】別例の摩擦接合構造を示す断面図(A−A断面)。
【図8】別例の摩擦接合構造を示す断面図(A−A断面)。
【図9】別例の摩擦接合構造を示す断面図(A−A断面)。
【図10】別例の摩擦接合構造を示す断面図(A−A断面)。
【図11】従来の摩擦接合構造及びバリのはみ出しを模式的に示す部分断面図。
【図12】従来の摩擦接合構造及びバリのはみ出しを模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下、本発明を電動ポンプ装置に具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、電動ポンプ装置1は、ポンプケース2内に収容されたポンプ機構(内接ギヤポンプ)3と、ポンプケース2の一端(同図中、左側の端面2a)に取着されることにより、ポンプ機構3の吸入部及び吐出部を構成するポンププレート4とを備えている。また、ポンプケース2の他端(同図中、右側の端面2b)には、略円筒状に形成されたモータケース5が固定されており、その内部には、駆動源となるモータ6及びその制御基板7が収容されている。そして、モータケース5の先端(開口端5a)には、略円板状に形成されたカバー8が取着されている。
【0024】
詳述すると、モータケース5は、樹脂モールドによりモータ6のステータ10と一体に形成されている。そして、制御基板7は、その開口端5a近傍に収容されている。また、モータケース5の筒内には、ポンプケース2の端面2bに突設された円筒状の支持部11が同軸配置されている。そして、モータ6のロータ12は、この支持部11に挿通された駆動軸13に固定されることにより、ステータ10の径方向内側に配置されている。
【0025】
具体的には、駆動軸13は、支持部11に設けられた軸受け14により回転自在に支承されている。また、ロータ12は、略有底円筒状に形成されるとともに、支持部11の径方向外側を包囲する態様でモータケース5の筒内に配置されている。そして、ロータ12は、その底部12aに駆動軸13の一端が固定されることにより、当該駆動軸13を介して、ポンプ機構3(のインナギヤ3a)に連結されている。
【0026】
ここで、本実施形態のカバー8は、モータケース5と同様、樹脂(例えば、ポリアミド等)により形成されている。そして、モータケース5は、その開口端5aにカバー8が摩擦接合されることで、その筒内の液密性が確保されている。
【0027】
詳述すると、図2に示すように、モータケース5の開口端5aには、軸方向(同図中、上側)に開口する環状溝21が形成されている。また、図3に示すように、カバー8の取着面8aには、上記環状溝21に対応する円環板状の摺接突部22が形成されている。そして、図4に示すように、カバー8は、その摺接突部22の先端を環状溝21内に挿入し、当該環状溝21の底部23に当接させる態様で、モータケース5の開口端5aに取着される。
【0028】
本実施形態では、このように摺接突部22が環状溝21の底部23に当接した状態で、カバー8を回転させる。尚、このとき、モータケース5は、回転不能に固定されている。そして、これにより両者を相対回転させることにより、そのモータケース5の開口端5aにカバー8を摩擦接合(スピン溶着)する構成になっている。
【0029】
具体的には、図3及び図4に示すように、摺接突部22の先端には、その他の部分よりも薄肉に形成された溶融部24が設定されている。そして、その摩擦熱により溶融した溶融部24及び環状溝21の底部23が溶着することにより、環状の摩擦接合部25が形成される。
【0030】
さらに、摩擦接合部25の同軸位置には、環状溝21の壁部26,27が配置されている。そして、本実施形態では、この環状壁としての壁部26,27と摩擦接合部25との間に形成される隙間を貯留部28として、その貯留部28内に、摩擦接合部25からはみ出した溶融生成物、即ち「バリ」を収容する構成になっている。
【0031】
また、図3に示すように、摺接突部22には、その全周に亘って、径方向外側に突出する複数の突起29が形成されている。具体的には、これらの各突起29は、軸方向に延びる板状に形成されている。図5に示すように、各突起29は、摩擦接合部25となる摺接突部22とともに、環状溝21内に配置される。そして、摺接突部22とその径方向外側を包囲する壁部26との間に形成される貯留部28aは、これらの各突起29によって、周方向に区画されるようになっている。
【0032】
即ち、その摩擦接合時、摩擦接合部25において発生したバリ30は、摺接突部22(カバー8)の回転(同図に示す例では、反時計回り方向)に伴って、その発生位置よりも回転方向下流側に位置する各突起29に付着する。その結果、バリ30は、その区画体としての各突起29に付着した状態で、周方向に分散して貯留部28a内に収容される。
【0033】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記構成によれば、簡素な構成にて、その発生したバリ30が貯留部28内の一所に集積される状況を回避することができる。その結果、貯留部28の大型化や、モータケース5及びカバー8の厳密な公差管理を行うことなく、その外部へのバリ30のはみ出しを抑えることができる。
【0034】
(2)モータケース5及びカバー8は、ともに樹脂により形成される。即ち、樹脂の溶融により発生するバリ30は、軽く嵩張るものになりやすい。このため、そのバリ30が、カバー8の回転により貯留部28内を周回しやすく、且つその集積による貯留部28外へのはみ出しも起こりやすい傾向がある。従って、このような構成に上記(1)の発明を適用することで、より顕著な効果を得ることができる。また、このような樹脂部材間の摩擦接合は、その溶融温度の低さから、電子機器のケースに広く用いられる。従って、幅広い分野において、その優れた効果を享受することができる。
【0035】
(3)摺接突部22に設けられた各突起29により区画体が形成される。これにより、その区画体としての各突起29が、摺接突部22と一体に回転する。即ち、各突起29が摩擦接合部25に隣接した位置にあるため、その発生したバリ30が突起29に付着しやすい。その結果、より好適に、貯留部28内のバリ30を周方向に分散させることができる。
【0036】
(4)各突起29は、摺接突部22から径方向外側に突出するように形成される。これにより、その区画体としての各突起29は、摺接突部22とその径方向外側を包囲する壁部26との間の貯留部28a内に配置される。即ち、通常、摩擦接合部25において発生するバリ30は、遠心力によって、その摩擦接合部25の径方向外側にはみ出すことが多い。従って、上記構成によれば、より効果的に、そのバリ30のはみ出しを抑えることができる。
【0037】
(第2の実施形態)
以下、本発明を電動ポンプ装置に具体化した第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、便宜上、第1の実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0038】
図6に示すように、本実施形態では、モータケース5の開口端5aに設けられた環状溝31の各壁部32,33のうち、径方向外側(同図中、右側)に位置する壁部32の先端32aには、その全周に亘って、径方向内側(同図中、左側)に延びるフランジ35が形成されている。
【0039】
即ち、バリ30のはみ出しは、その貯留部28a内において集積したバリ30が、壁部32の壁面32bに沿ってせり上がり、同壁部32を乗り越えることにより発生する。この点を踏まえ、本実施形態では、上記のように、壁部32の先端32aから貯留部28a側に突出するフランジ35を設けることで、その壁面32bの上方を覆う。そして、その壁面32b沿いにせり上がるバリ30を、フランジ35によって貯留部28a内に抑えこむ構成になっている。
【0040】
以上、本実施形態によれば、その発生するバリ30を、効率良く、貯留部28a内に収容することできる。そして、その高い収容効率を活かして、貯留部28aの容積を小さくすることができる。具体的には、上記第1の実施形態との比較において、貯留部28aを構成する環状溝31の溝深さを浅く(壁部32の高さを低く)することができる。その結果、より一層の小型化を図ることができる。
【0041】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、本発明を電動ポンプ装置1、詳しくはモータケース5とカバー8との摩擦接合構造に具体化した。しかし、その適用部位については必ずしもこれに限るものではなく、二部材間を摩擦接合するものであれば、どのようなものに適用してもよい。従って、例えば、プーリ等を介して駆動されるポンプ装置に適用してもよく、またポンプ装置以外の用途に適用してもよい。
【0042】
・上記各実施形態では、摺接突部22に複数の突起29を設け、当該各突起29を区画体として貯留部28(28a)を周方向に区画することとした。しかし、これに限らず、例えば、図7に示すように、環状溝41の壁部42,43のうち、径方向外側に位置する壁部42について、その全周に亘り、径方向内側に突出する複数の突起44を形成する。そして、これらの各突起44を区画体として、貯留部28(28a)を周方向に区画する構成としてもよい。このような構成としても、上記各実施形態と同様、貯留部28内のバリ30を周方向に分散して収容することができる。
【0043】
尚、このような構成との比較において、上記各実施形態のようにカバー8側の摺接突部22に各突起29を設ける構成には、その各突起29の形成が容易、且つ、摩擦接合部25に干渉することなく、その区画体としての各突起29を摩擦接合部25に近接した位置に配置することが可能という利点がある。
【0044】
・また、図8に示すように、区画体となる各突起47の先端を、摩擦接合する二部材間の相対回転方向に傾倒する構成としてもよい。具体的には、同図に示す例では、カバー8の摺接突部22に各突起47が設けられている。従って、これら各突起47の先端は、カバー8の回転方向(同図中、反時計回り方向)に傾倒している。このような構成とすれば、より確実に、各突起47にバリ30を付着させることができる。
【0045】
尚、回転するカバー8に対して固定状態で摺接するモータケース5側(の壁部)に、その区画体となる各突起を形成する場合には、カバー8の回転方向とは逆向きの方向が「相対回転方向」となる。従って、例えば、図7に示す例を基礎とするならば、各突起44の先端は、同図中、時計回り方向に傾倒させるとよい。
【0046】
・上記各実施形態、及び上記図7及び図8に示す例では、摩擦接合部25の径方向外側に位置する貯留部28a内に区画体となる各突起(29,44,47)を配置することとした。しかし、これに限らず、摩擦接合部25の径方向内側に、バリ30が出やすい場合には、図9に示すように、摺接突部50の全周に亘り、径方向内側に突出する複数の突起51を形成する。そして、これらの各突起51を区画体として、貯留部28bを周方向に区画する構成としてもよい。
【0047】
・さらに、摩擦接合部25の径方向外側及び内側に位置する各貯留部28a,28bの両方に区画体を配置する構成としてもよい。具体的には、図10に示すように、摺接突部52の径方向外側及び内側にそれぞれ、複数の突起53,54を形成する。そして、これらの各突起53,54を区画体として、摩擦接合部25の径方向外側及び内側に位置する各貯留部28a,28bをそれぞれ周方向に区画する構成としてもよい。尚、環状溝の壁部に設けられた複数の突起によって、外側の貯留部28aに配置される区画体、及び内側の貯留部28bに配置される区画体の少なくとも一方を構成してもよい。
【0048】
・上記各実施形態では、固定状態にあるモータケース5の開口端5aに対して回転するカバー8を摺接させることにより、その摩擦接合を行うこととした。しかし、これに限らず、摩擦接合する二部材は、摺接状態で相対回転させることができるものであれば、どのようなものであってもよい。
【0049】
・また、上記各実施形態では、モータケース5の開口端5aに環状溝21を形成することにより、同モータケース5を環状壁としての壁部26,27を有する第1部材とする。そして、第2部材としてのカバー8に摺接突部22を形成することした。しかしながら、例えば、そのカバーが重力方向下側から取着されるような場合等には、カバー側に環状溝を形成し、その壁部を環状壁とする。そして、モータケース側に摺接突部を形成する構成であってもよい。この場合、カバーが第1部材となり、モータケースが第2部材となる。
【0050】
・さらに、摩擦接合部との間にバリの貯留部を形成する環状壁が配置される構成であれば、必ずしも環状溝はなくともよい。
・上記各実施形態では、モータケース5及びカバー8は、ともに樹脂により形成されることとした。しかし、これに限らず、少なくともその摺接部分(摺接突部22先端の溶融部24及び環状溝21の底部23)が樹脂であることが望ましい。尚、ポリアミド以外の樹脂を用いてもよい。そして、その摩擦接合が可能であれば、双方ともに金属であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…電動ポンプ装置、2…ポンプケース、3…ポンプ機構、4…ポンププレート、5…モータケース、5a…開口端、6…モータ、7…制御基板、8…カバー、21…環状溝、22…摺接突部、23…底部、24…溶融部、25…摩擦接合部、26,27…壁部、28(28a,28b)…貯留部、29…突起、30…バリ、31…環状溝、32,33…壁部、32a…先端、32b…壁面、35…フランジ、41…環状溝、42,43…壁部、44…突起、47…突起、50…摺接突部、51…突起、52…摺接突部、53,54…突起。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摺接状態で相対回転させることにより二部材間に環状の摩擦接合部を形成するとともに、前記摩擦接合部の同心位置に環状壁を配置することにより、該環状壁と前記摩擦接合部との間に貯留部を形成して該貯留部内にバリを収容する摩擦接合構造において、
前記貯留部を周方向に区画して前記バリを分散させる複数の区画体を備えること、
を特徴とする摩擦接合構造。
【請求項2】
請求項1に記載の摩擦接合構造において、
前記二部材は、少なくとも摺接部分が樹脂により形成されていること、
を特徴とする摩擦接合構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の摩擦接合構造において、
前記二部材は、前記環状壁を有する第1部材、及び前記環状壁と同心位置において前記第1部材に摺接する環状の摺接突部を備えた第2部材であって、
前記各区画体は、前記環状壁又は前記摺接突部の少なくとも何れか一方に設けられて径方向に突出する複数の突起であること、を特徴とする摩擦接合構造。
【請求項4】
請求項3に記載の摩擦接合構造において、
前記各突起は、先端が相対回転方向に傾倒していること、
を特徴とする摩擦接合構造。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の摩擦接合構造において、
前記二部材は、一方が固定された状態で他方が回転することにより摩擦接合されるものであって、前記区画体は、回転する側に設けられること、
を特徴とする摩擦接合構造。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の摩擦接合構造において、
前記環状壁の先端には、前記貯留部側に延びるフランジが形成されること、
を特徴とする摩擦接合構造。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の摩擦接合構造において、
前記各区画体は、前記摩擦接合部の径方向外側に形成された前記貯留部内に配置されること、を特徴とする摩擦接合構造。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れか一項に記載の摩擦接合構造を有するポンプ装置。
【請求項1】
摺接状態で相対回転させることにより二部材間に環状の摩擦接合部を形成するとともに、前記摩擦接合部の同心位置に環状壁を配置することにより、該環状壁と前記摩擦接合部との間に貯留部を形成して該貯留部内にバリを収容する摩擦接合構造において、
前記貯留部を周方向に区画して前記バリを分散させる複数の区画体を備えること、
を特徴とする摩擦接合構造。
【請求項2】
請求項1に記載の摩擦接合構造において、
前記二部材は、少なくとも摺接部分が樹脂により形成されていること、
を特徴とする摩擦接合構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の摩擦接合構造において、
前記二部材は、前記環状壁を有する第1部材、及び前記環状壁と同心位置において前記第1部材に摺接する環状の摺接突部を備えた第2部材であって、
前記各区画体は、前記環状壁又は前記摺接突部の少なくとも何れか一方に設けられて径方向に突出する複数の突起であること、を特徴とする摩擦接合構造。
【請求項4】
請求項3に記載の摩擦接合構造において、
前記各突起は、先端が相対回転方向に傾倒していること、
を特徴とする摩擦接合構造。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の摩擦接合構造において、
前記二部材は、一方が固定された状態で他方が回転することにより摩擦接合されるものであって、前記区画体は、回転する側に設けられること、
を特徴とする摩擦接合構造。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の摩擦接合構造において、
前記環状壁の先端には、前記貯留部側に延びるフランジが形成されること、
を特徴とする摩擦接合構造。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の摩擦接合構造において、
前記各区画体は、前記摩擦接合部の径方向外側に形成された前記貯留部内に配置されること、を特徴とする摩擦接合構造。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れか一項に記載の摩擦接合構造を有するポンプ装置。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【公開番号】特開2013−59883(P2013−59883A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198539(P2011−198539)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
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