摩擦撹拌接合用の高融点金属工具
摩擦撹拌接合又は摩擦撹拌成形用の工具が提供される。前記工具は、ショルダー部及び場合によりピン部を含んでなり、前記ショルダー部は、少なくとも60質量%及び100質量%までのタングステン、モリブデン、タンタル、ニオブ又はハフニウムを含んでなり、残部は、使用される場合には合金材料である。前記工具は、少なくとも1つの表面処理又はコーティングを有する。前記工具により溶接された物品も提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する分野
本発明は、鋼、チタン、銅及び一部のアルミニウム合金のような材料の摩擦撹拌接合又は摩擦撹拌成形において使用するための、タングステン基工具、モリブデン基工具、タンタル基工具、ニオブ基工具及びハフニウム基工具に関する。
【0002】
背景情報
摩擦撹拌接合(FSW)は、融解又は充填剤材料を使用することなく金属部材を接合する方法である。FSWにおいて、プロファイル(profiled)プローブ又はピンを有する円柱の形をした工具が回転して、互いに突き合わされて又は重ね合わせられて配置されているシート又はプレート材料の2つのピース間の接合線中へゆっくりと突入する(plunged)。より新しい方法において、前記プローブに角度が付けられることができるか(Skew Stirとして知られる)、又は2つの反転する(contra-rotating)プローブが、タンデムで使用されることができる(Twin Stirとして知られる)。前記部材は、必要に応じてバッキングバー(backing bar)上へ、胴付き面が外力により離れるのを防止するようにクランプ締めされる。耐摩耗性の溶接工具と前記母材の材料との間で発生した摩擦熱は、後者の材料を融点に達することなく軟化させ、かつ前記工具を溶接線に沿って移動することを可能にする。塑性化された材料は、前記工具のリーディングエッジから前記工具プローブのトレーリングエッジまで移送され、かつ前記工具ショルダー及び前記ピンプロフィールの緊密接触により鍛造される。2つのピース間に固相結合が残留する。前記プロセスは、固相キーホール溶接技術とみなされることができる、それというのも、前記プローブに合わせるためのホールが製造され、ついで溶接シーケンス中に充填されるからである。米国特許第5,460,317号明細書及び関連特許には、この方法がより詳細に記載されている。多様な幾何学的配置の大きな溶接部が、この方法により製造されることができる。また、摩擦撹拌接合法は、金属を含めた材料の摩擦撹拌プロセス(friction stir processing)を含むまでに拡大されており、その際に、回転工具は、前記材料を変形又は塑性化するための摩擦熱を提供し、それによりチャネルの導入又は前記材料の成形を可能にする。
【0003】
FSWは、旧来の溶接法に対して、充填剤の必要がないこと以外にも、多くの利点を提供する。例えば、FSWにより溶接される部材は優れている、なぜなら、前記方法は、溶接される部材中でのひずみ及び縮みがあまり生じず、接合部中で巣を生じない。前記方法は、他の溶接法よりも簡単に実施される、なぜなら、溶接準備が必要とされず、ガス遮へいが必要とされず、溶接発煙又は溶接はねがなく、かつ半熟練オペレーターのみが必要とされ;ロボット溶接の可能性もあるからである。
【0004】
摩擦撹拌接合は、常法によって溶接するのが困難であったアルミニウム合金を接合するために、The Welding Institute, Great Abington, UKにより初めて開発された。これらの相対的に軟質な材料を接合することに成功しているけれども、より硬質でより強い材料、例えば、鋼、チタン合金、銅合金、7XXX系のアルミニウム合金及び特定の他の非鉄金属にFSWの適用を拡大することは、溶接プロセスの間に工具が分解(degrade)又は破壊する傾向のために、困難であることが判明している。分解の殆どは、これらの高強度材料のFSWの間に生成する高い熱及び応力に帰因されうる。
【0005】
米国特許出願公開第2004/0238599号明細書には、鋼部材を溶接するための、FSW工具におけるタングステン基材料の使用が開示されている。米国特許第6,648,206号明細書には、超合金及び他の高強度合金の溶接用のFSW工具における、超砥粒(superabrasive)材料、例えば多結晶質の立方晶窒化ホウ素(PCBN)の使用が開示されている。FSWにより高強度材料から製造された構成要素を確実に接合することができる、溶接工具、装置及び方法を提供するという需要が引き続き存在する。
【0006】
発明の要約
故に、本発明は、摩擦撹拌接合又は摩擦撹拌成形用の工具を提供するものであり、前記工具はショルダー部及び場合によりピン部を含んでなり、前記ショルダー部は、少なくとも60質量%及び100質量%までのタングステン、モリブデン、タンタル、ニオブ又はハフニウムを含んでなり、残部は合金材料(alloying materials)であって、
前記工具の少なくとも一部が、少なくとも1つの表面コーティング又は表面処理を有している
ことにより特徴付けられる。
【0007】
本発明のこの態様及び他の態様は、以下の図面、詳細な説明及び添付された特許請求の範囲からより容易に明らかになる。
【0008】
本発明は、以下の図面によりさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の工具及び関連装置の実施態様を示す図。
【図2】本発明の工具の付加的な実施態様を示す図。
【図3】例1に記載された通りに試験された工具の写真。
【図4】例2に記載された通りに試験された工具の写真。
【図5】例3に記載された通りに試験された工具の写真。
【図6】例4に記載された通りに試験された工具の写真。
【図7】例5に記載された通りに試験された工具の写真。
【図8】例6に記載された通りに試験された工具の写真。
【図9】例8に記載された通りに製造された溶接部の写真。
【図10】例8に記載された通りの接合部ミクロ組織の断面図。
【0010】
発明の詳細な説明
ここで、実施例において使用しているものを含め、明細書及び特許請求の範囲において使用しており、かつ他に明示的に記載されていない限り、全ての数は、"約"という言葉により、前記用語が明白に現れていない場合でも、前置きされているかの如く読むことができる。また、本明細書に引用された任意の数値範囲は、その中に包含される全ての下位の範囲(sub-ranges)を含むものとする。
【0011】
図1を参照して、例示的な先行技術の摩擦撹拌接合装置10が示されている。前記装置は、本体20及びショルダー部40とピン部50とを有する溶接工具30を含んでなる。前記溶接工具は、母材60を溶接するのに使用される。認識されるように、多数の工具は、同じ基本設計を有して、形状、サイズ及び他の特徴についての多様な改善を有して(例えば前記のSkew Stir又はTwin Stir)製作されて、溶接プロセスが最適化される。一部の設計において、前記工具のショルダー部は、前記工具の主要本体又はシャンクの一体化部であるのに対し、他の設計において前記ショルダー及び/又はピンは、前記工具の上部本体とは異なる材料から製造されていてよい(本発明の場合のように)。付加的に、一部の工具において、前記ショルダー及び/又はピンは、例えば、交換可能なショルダー及び/又はピンが望ましい場合に、前記本体上へ接合されるために又は嵌め合わされるために適合された別個のピースであってよい。本発明の溶接工具において使用される材料は、当業者により理解されるように、任意の摩擦撹拌接合工具において使用するために適合されることができる。
【0012】
付加的に、当業者により理解されるように、本発明の溶接工具は、旧来の摩擦撹拌接合方法並びにより新しい方法の双方において、例えば、摩擦撹拌スポット接合(FSSW)及び摩擦撹拌プロセス(例えば、The Welding Instituteにより特許されたPro-Stirを用いる3次元の精密鍛造(near-net shape manufacturing))及び上記で言及したSkew-stir及びTwin-stir法を含めて、使用されることができる。図2は、本発明の工具の付加的な実施態様、例えば、ピンを有しない工具を示す(図2a、2c及び2e)。このタイプの工具は、Twin-Stirとして知られた摩擦撹拌接合法におけるリード工具として使用されることができる。そのような工具は、摩擦撹拌プロセスの他の方法、例えば、参照により本明細書に取り込まれる米国特許第6,655,575号明細書に記載されたミクロ構成要素の超塑性成形において使用されることもでき、ここで、プローブを有することは望ましくなく、かつ及びフラットな表面の工具が摩擦撹拌プロセスに必要である。図2b、2d及び2fは、ピンを有する付加的な実施態様を説明する。一部の実施態様において、前記ショルダーは、工具の本体と同じサイズにされる(2a、2b)のに対し、他の実施態様において前記ショルダーは、本体よりも小さい(2c、2d)か又は本体よりも大きい(2e、2f)。図2(a〜f)に図示される工具が円形で表示される一方で、工具の他の形状も、本発明により企図されており、かつ包含される。
【0013】
本明細書で使用されている、"摩擦撹拌接合又は摩擦撹拌成形"という用語は、金属又は他の材料の物品を接合又は成形する方法であって、摩擦により熱を発生する回転工具の使用を含み、前記熱が前記材料を変性又は変形させて、溶接部又は前記材料の他の変性、例えば前記金属又は他の材料のチャネル又はダイカストを生成する方法を呼ぶ。
【0014】
故に、一態様において、本発明は、摩擦撹拌接合又は摩擦撹拌成形用の工具を提供する。一実施態様において、前記工具は、ショルダー部及び場合によりピン部を含んでなり、前記ショルダー部は、少なくとも60質量%及び100質量%までのタングステン、モリブデン、タンタル、ハフニウム又はニオブを含んでなり、残部は使用される場合には合金材料である。好ましい実施態様において、前記ショルダー部は、少なくとも85質量%及び100質量%までのタングステン、モリブデン、タンタル、ハフニウム又はニオブを含んでなり、残部は使用される場合には合金材料であり;最も好ましくは、前記ショルダー部は、タングステン、モリブデン、タンタル、ハフニウム又はニオブを85〜99質量%含んでなる。合金元素に加えて、合金又は前記の元素の、金属マトリックス複合体、繊維強化金属マトリックス複合体、及び炭化物及び/又は酸化物が使用されることができる。使用される場合には、酸化物及び/又は炭化物は、0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜3質量%の量で存在している。一実施態様において、タンタル、ハフニウム又はニオブのショルダー部は、タングステン、好ましくはタングステン1〜15質量%で合金化される。前記ショルダー用の特に好ましい材料は、Ta10Wであり、すなわちASTM B364グレードR05255のタングステン10%を含有するタンタル合金であり、H.C.Starck & Co.から商業的に入手可能である。付加的な実施態様において、前記工具は、前記の材料のショルダー部のみを含んでなる。
【0015】
付加的な好ましい実施態様において、前記工具は、ショルダー部及び場合によりソリッドな(solid)(合金化されていない)モリブデン、ランタン化されたモリブデン、TZM(チタン ジルコニウム モリブデン)、MHC(炭化ハフニウムで安定化されたモリブデン)、又はこれらのいずれかの組合せを含んでなるピン部を、ショルダー又はピン上のそれらの使用の点で含んでなる。ランタン化されたモリブデンの場合に、ランタン化された成分は、典型的にはLa2O3の形である。ソリッドなモリブデンの工具(ピン及びショルダー)が、Al7075を溶接するのに使用される場合に、MP159(登録商標)工具と比較して6.7%高いトルクを有し;Mo工具上の下向きの力が、MP159(登録商標)工具よりも27%小さく;及びMo工具上の前方の横向きの力が、MP159(登録商標)工具よりも10%小さかったことが見出された(例9に記載された通り)。
【0016】
一部の実施態様において、前記工具のピン部は、ショルダーと同じ材料を含んでなる。他の実施態様において、前記工具のピン部は、化学組成、ミクロ組織及び/又は加工の点で前記工具のショルダー部が含んでなる材料とは異なる材料を含んでなる。例えば、一部の実施態様において、前記ピン部は、モリブデン、タングステン、ハフニウム、レニウム、イリジウム、バナジウム、及び金属マトリックス複合体、及びこれらの任意の合金、炭化物及び酸化物、並びにこれらの任意の組合せから選択される1つ又はそれ以上の材料を含んでなる。一部の好ましい実施態様において、前記工具のピン部は、タングステンと、ハフニウム又はジルコニウムの酸化物及び/又は炭化物、又はこれらの任意の組合せとを含んでなる。好ましくは、前記酸化物及び/又は炭化物は、0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜3質量%の量で存在しており、かつ残部はタングステンである。特に好ましい実施態様において、前記ピンは、La2O3 1〜2質量%又はRe 5〜30質量%で合金化されたタングステン、又は繊維強化金属マトリックス複合体、例えばZrO2繊維を有するTa又はWを含んでなる。
【0017】
一部の実施態様において、前記工具のピン部は、ASTM法E112により測定されるような、ASTM 5の又はより微細な、好ましくは8の又はより微細な粒度を有する。前記工具のショルダー部は、異なる材料から製造される場合に、ASTM 5の又はより微細な粒度を有していてよい。
【0018】
摩擦撹拌成形及び摩擦撹拌接合用の工具を製造する方法は、当工業界において知られた標準法である。タングステン基、モリブデン基、タンタル基、ハフニウム基又はニオブ基材料は供給原料を製造するために加工され、前記供給原料は機械加工されて、前記供給原料の断面積は少なくとも90%減少される。機械加工された供給原料は、摩擦撹拌接合装置又は摩擦撹拌成形装置中で操作するのに適合される切削加工及び/又は粉砕により工具(ショルダー及び場合によりピン)へ成形されることができる。
【0019】
出発物質を供給原料へ加工するのに適した幾つかの任意の方法が使用されることができる。例えば、液体から金属を凝固させる方法、例えば、タングステン、モリブデン、タンタル、ニオブ及びハフニウムのようなショルダー材料、又はタングステン、ハフニウム、レニウム、インジウム、バナジウム、及びこれらの金属マトリックス複合体、及び合金、炭化物及び酸化物を含むピン材料について、当工業界において知られた多様な鋳造法が使用されることができる。出発物質を供給原料へ加工する方法は、スラリー法、例えば、米国特許第4,622,068号明細書に記載された酸化物分散強化(ODS)法又は他のODS法を含めた、粉末冶金法並びに固体粉末を圧縮成形する(compacting)又は圧密にする方法、例えば焼結、ホットコンパクション、例えばホットアイソスタチックプレス、押出し、ダイ圧縮成形及び吹付け、又はコールドコンパクション、例えばコールドアイソスタチックプレス、ダイ圧縮成形、射出成形及びスリップ鋳込による方法も含みうる。これらの方法は、当工業界において十分知られており、かつ当業者は、完成した生成物中で所望の性質を生じさせるために、適切な温度、圧力及び期間を容易に決定することができる。
【0020】
最後に、固体原料が真空アーク又は電子線で溶融され、かつ形成されることによる多様なプロセスのいずれかが、前記供給原料を形成するのに使用されることができる。前記出発物質が、供給原料を形成するために加工された後に、供給原料は、機械加工されてその断面積が少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%減少される。この程度まで供給原料を機械加工することは、供給原料材料を先端部でひずみ硬化させ、そこで、それは、高強度材料のFSWの間に工具により保証される、要求の厳しい応力及び温度条件の間の分解に有利に耐える。前記供給原料は、例えば、押出し、スエージ加工、ロッド圧延及び鍛造を含めた、任意の適した金属機械加工プロセスにより機械加工されることができる。異なる金属機械加工プロセスの組合せ及びシーケンスも、前記供給原料の断面積の所望の減少を達成するのに適している。一般的に、材料は、通常、応力除去条件において供給されるが、しかしより良好な結果は、圧延されたままの、未焼鈍条件において材料を使用することにより得られることができる。付加的に、使用される材料に応じて、加工は、工具中で所望の性質を達成するために、ねじり鍛造、回転鍛造又はスエージ加工を含むことが必要でありうる。
【0021】
供給原料を所望の状態に機械加工した後に、前記供給原料は、ついで工具へ成形される。この段階は、前記のような金属加工操作の使用並びにカッティング、ターニング、タッピング、粉砕、ホーニング、ポリシング等を含めた、任意の多様な切削加工操作を含むことができる。前記工具の正確な寸法は、ショルダープロフィール及びショルダー直径対厚さの比を含め、溶接されるべき材料及び前記材料の厚さに基づいて選択される。当業者は、前記工具の材料及び溶接されるべき材料に基づいて適切な寸法を決定することができる。
【0022】
金属機械加工及び切削加工の操作に続いて、使用される場合には、本発明の工具は、少なくとも1つ又はそれ以上の表面処理又は表面コーティング、又はこれらの組合せにかけられる。前記(複数の)コーティング及び/又は前記(複数の)表面処理は、任意の順序で適用されることができる。
【0023】
表面コーティングは、一例として、電気めっき、例えばTa、Ru及びRhの電気めっき;硬質クロムめっき及びニッケルめっき;物理蒸着(PVD)、例えば、マグネトロンスパッタリング及びAlCrN、WC/C、ダイヤモンド様炭素、WC、HfC、RuC、RhC、VN、VC、TaN、TaC、MoN、MoC、NbN又はNbCのような材料を堆積させるプラズマプロセス、並びにマグネトロンスパッタリングにより生成される窒化物及び炭化物、及びTaVN等のような合金を製造する2つ又はそれ以上のコーティングの組合せ;シリサイド化を含む、化学蒸着(CVD)及び他の耐酸化性コーティング;SiO2、Ti、Pt、TiO2、Zr、Ta2O5、V、Si3N4、Rh、Hf、B、VN、B4C、Ir、Nb、NbN、Mo、SiC、ZrO2、HfO2、VC、WC、WB2、NbB2、TiB2、TiN、ZrN、Ta、TaB2、ZrB2、BN、HfB2、TiC、Re、HfN、TaN、W、NbC、ZrC、C、TaC、HfCの堆積を含む、溶射、真空プラズマ溶射又は溶融塩電着を含む。コーティングの組合せ、例えば電気めっき又はPVD又はプラズマプロセスによる多層コーティング、又は溶射、又は真空プラズマ溶射、又はこれらの組合せも使用されることができる。
【0024】
一部の好ましい実施態様において、本発明の工具のピン部及び/又はショルダー部には、耐酸化性コーティングが、例えばシリサイドでコーティングすることにより、設けられている。シリサイドコーティングの例は、当工業界において知られており、例えば、参照により本明細書に取り込まれる米国特許第6,214,474号明細書に記載されたコーティングである。好ましい実施態様において、前記工具は、四フッ化ケイ素ガス中で前記構成要素を、密閉されたレトルト中で、水素/窒素雰囲気中で、約3〜20時間、より好ましくは4〜6時間の期間にわたって、1000°〜1200℃、より好ましくは1050°〜1150℃の温度で加熱することにより、シリサイド処理にかけられる。前記SiF4は、前記物品の表面と反応して、金属二ケイ化物、例えばTaSi2又はMoSi2を形成する。高温で、前記二ケイ化物層の外面は、前記雰囲気中の酸素と反応して酸化物を形成し、これは昇華し、かつSiO2の保護層を形成し、故にさらなる酸化に対する耐性を提供する。
【0025】
表面処理は、前記基体の化学を変えるために作用させて、より硬く及びしばしばより強靱な表面層を生じさせ、かつ付加的に疲れに対する耐性を提供する処理である。前記処理に応じて、針入度は、表面を過ぎて数ミリメートルまで進みうる。表面処理は、例えば、表面硬化法、例えば窒化、浸炭(炭化としても知られている)、浸炭窒化(又は軟窒化)、火炎、放電硬化又は誘導加熱硬化、レーザー又は電子線硬化、ショットブラスト及びレーザーショックピーニングを含み、これらの用語は当工業界において知られている通りである。
【0026】
好ましい実施態様において、本発明の工具のW基、Mo基、Ta基、Hf基又はNb基のショルダー及び/又はピンは、例えば浸炭により、表面硬化されている。浸炭は、当工業界において知られた方法であり、前記方法において炭化水素、例えばアセチレンは前記金属表面と反応して原子状炭素を形成して、前記金属基体中へ拡散する。多様な形の、例えば充填プロセスによる、浸炭があり、前記プロセスにおいて、硬化されるべきピースは、鋼容器中に充填されるので、それは木炭及び糖みつのグラニュールにより完全に包囲される。前記容器はついで炉中で又はさもなければ800℃を上回る、典型的に800°〜1200℃の温度に加熱され、これは当工業界において知られている通りである。前記木炭は、二酸化炭素の形成を促進する、活性化薬品、例えば炭酸バリウムで処理される。このガスはそしてまた、前記木炭中の過剰の炭素と反応して一酸化炭素を形成し、これは処理される材料の表面と反応して、原子状炭素を形成して前記金属基体中へ拡散する。
【0027】
好ましい実施態様において、本発明のショルダー及び/又はピンは、窒素雰囲気中で浸炭される(しばしば浸炭窒化又は軟窒化と呼ばれる)。前記工具は、1000°〜2000℃、好ましくは1500°〜1800℃の温度に、炭素の富化された炎、例えばオキシ−アセチレン中で加熱され、その間に浸炭プロセスにおいて前記工具を前記のように炭素粉末中に浸漬する。前記プロセスは、窒素ブランケット下の封入された環境中で、2分〜約6時間の期間に亘って、硬化される前記材料に依存して、実施される。C及びNは双方とも、前記成分の表面中へ吸収される。
【0028】
他の浸炭法も知られている。例えば、浸炭は、オキシ−アセチレンを使用することにより達成されることができ、その際に、摩擦撹拌接合工具は、酸素を含有する炎を用いて予備加熱され、引き続き減少された酸素又は酸素ゼロを有する第二のアセチレン炎を用いて、及び場合により炭素源、例えばグラファイト粉末の添加を有するか又は有さずに、加熱される。前記アセチレン炎は、約200μmの深さまでの金属表面の浸炭を引き起こす炎を生成する。不活性なシールドガス、例えばアルゴンは、酸化を防止するのに使用され、かつ前記工具は、火炎加熱が消される前に、不活性なシールドガス中で250℃未満の温度に冷却される。この技術はより小さい構成要素及びその部材についても、例えば前記工具のピン領域のみ又はショルダーのみ、所望の通り、適合されることができる。
【0029】
真空浸炭は、真空炉中で必要な温度で、ガス、例えばメタン、アセチレン(C2H2)又は他の炭化水素をベースとするガスを導入することにより実施される他の浸炭方法である。時間及び温度は、浸炭の他の方法について前記の通りである。このプロセスは、W及びその合金(例えば、LaW又はWRe)、Mo及びその合金(例えばLaMo、TZM、MHC、及びイットリウム及び/又はセリウムの酸化物を含有する酸化物分散強化モリブデン合金);Re及びその合金、Ru及びその合金、Rh及びその合金及びOs及びその合金の表面工学にとって有用である。
【0030】
Ta又はその合金(例えばTa10W)、Hf及びその合金又はNbを真空浸炭する場合には、ついで後ガス抜きサイクルが、Hを前記材料から除去するために必要とされる。これは、さもなければ水素脆化及び早期の破損(failure)を引き起こしうる。ガス抜きは、1250℃で、前記構成要素の直径を基準とした時間にわたって実施され、例えば1/4″ロッドについては4時間を必要とし、かつ1″については約16時間が必要とされる。H含量は、有効な機能のためには<10ppmであるべきである。真空窒化は、前記の浸炭と類似の方法で実施されることもでき、かつ脆化を生じさせない利点を有する、それというのも、浸炭において存在するような、水素が存在しないからである。この方法は、例えば、Hfにとって適している、それというのも、HfNはHfCよりも僅かにのみ軟らかいからである。HfCは、Plasma Processes, Inc.により実施されるような、真空プラズマ溶射により堆積されることもできる。
【0031】
一部の実施態様において、本発明の溶接工具(ショルダー及び/又はピン)は、表面窒化処理されている。窒化は、窒素を金属の表面中へ拡散させるプロセスである。前記窒素は、タングステン、モリブデン、タンタル、ニオブ及びハフニウムのような元素と窒化物を形成する。窒化の前に、部材は清浄化され、ついで炉中で、窒素雰囲気中で10〜40時間、ニオブ及びタンタルの場合に200〜900℃で、及びタングステン及びモリブデンについては2000°〜2600°の温度で加熱される。当業者により認識されるように、前記処理の温度及び時間は、処理される材料に依存し、かつ当業者の能力の範囲内で決定されることができる。窒素は、前記金属中へ拡散し、かつ窒化物合金を、約100μm〜1mmの深さに、そしてまた、前記材料及び処理条件に応じて、形成する。窒化は、85〜99%のTa、Nb、又はHf又はそれらの合金から製造された溶接工具にとって好ましく、かつ85〜95%のW又はその合金についても有用である。
【0032】
モリブデン工具の場合に、ルテニウムめっきは、0.1〜10μm、好ましくは0.5〜5μmの厚さで施与される好ましい表面コーティングである。Ta10Wショルダー及びLaWピンを有する工具の場合に、表面コーティングの好ましいものは、シリサイドである。好ましい他の処理は、浸炭及び/又は窒化、又はコーティング及び表面処理の組合せ、例えばRuコーティングを有するピンを有する表面工学又は浸炭又は窒化、又はコーティング及び表面処理の組合せを含む。
【0033】
一部の実施態様において、溶射は、前記工具の表面、ショルダー部又はピン部のいずれか、又は双方にコーティングを施与するのに使用される。溶射は、熱による熱可融性の金属成分材料の軟化又は溶融と、コーティングされるべき表面への粒子形の軟化又は溶融された材料の推進とを含む。加熱された粒子は、前記表面に衝突し、そこでそれらは冷却され、かつそれに結合される。常用の溶射ガンは、粒子の加熱及び推進の双方の目的のために使用されることができる。
【0034】
溶射ガンは通常、燃焼又はプラズマ又はアークを利用して、粉末粒子を溶融させるための熱を発生させる。粉末タイプの燃焼溶射ガンにおいて、前記粉末を同伴させ、かつ輸送するキャリヤーガスは、典型的には不活性ガス、例えばアルゴンである。プラズマスプレーガン中で、一次プラズマガスは一般的にアルゴン又は窒素である。水素又はヘリウムは、一次プラズマガスに通常添加され、かつキャリヤーガスは一般的に、一次プラズマガスと同じである。他の溶射法も使用されることができる。溶射の良い一般的な説明は、米国特許第5,049,450号明細書に提供されている。
【0035】
適した一部の溶射技術は、しかし、これらに限定されるものではないが、自然大気中のプラズマ溶射(APS);"雰囲気制御プラズマ溶射"(CAPS)として知られる、制御された雰囲気、例えば不活性ガス中での、プラズマ溶射及び"真空プラズマ溶射"(VPS)として知られる、部分的な又は完全な真空中のプラズマ溶射を含む。常用の燃焼フレーム溶射を含めた、燃焼溶射プロセスは、高速フレーム(high velocity oxy fuel)(HVOF)溶射;及び高速オキシ空気(high velocity oxy air)(HVAF)を含む。他の溶射法は、アーク溶射法を含む。
【0036】
溶射されるコーティングにおいて使用するための適した材料は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金;無定形合金(armocor);ホウ素;炭素;MCrAlX、例えばFeCrAlY又はNiCrAlY;ハフニウム;イリジウム;六ホウ化ランタン;金属マトリックス複合体;ニオブ及びニオブ合金;ニッケル;ニッケルアルミナイド;レニウム;炭化ケイ素ステンレス鋼;ルテニウム;タンタル;タンタル−10WS;チタン;窒化チタン;炭窒化チタン;窒化チタンアルミニウム;窒化チタンクロム;タングステン;タングステンニッケル鉄;タングステン/Re;セラミック、例えばアルミナ;オキシ窒化アルミナ;アルミナ−50%AlN;アルミナ−40%チタニア;アルミナ−窒化ケイ素;窒化アルミニウム;窒化アルミニウムチタン;窒化ジルコニウム;窒化ホウ素;セラミックマトリックス複合体;コーディエライト;ホウ化ハフニウム;窒化ハフニウム;二ケイ化モリブデン−20−40%SiC;チタニア;ジルコン;ジルコン−AlN;イットリアで安定化されたジルコニア;炭化物、例えば炭化クロム;ダイヤモンド/ガラス状炭素;炭化ハフニウム;炭化タンタル;及び炭化タングステンを含む。これらの溶射コーティングの中では、炭化タングステン及び炭化ハフニウムが好ましい。
【0037】
溶射の好ましい方法は、機械加工され、切削加工され、かつさもなければ加工された後に、前記工具のピン及び/又はショルダー上に表面コーティングを堆積させるための、不活性な雰囲気、例えばアルゴン又はヘリウム中での真空プラズマ溶射又は吹付けである。当業者により認識されるように、材料、表面コーティング及び表面処理の多数の組合せが、本発明の工具を成形するのに使用されることができる、それというのも、前記工具のショルダー部及び場合によりピン部が、同じ又は異なる材料から製造されていてよく、かつ同じ又は異なる表面コーティング及び表面処理を有していてよく、その際にそれぞれの選択は他のものとは独立しているからである。本発明の表面コーティング又は処理された工具は、未処理の工具よりも2〜20倍大きい、好ましくは未処理の工具よりも4〜40倍大きい、最も好ましくは15〜20倍大きいビッカース硬さを有する。浸炭及び/又は窒化は、500〜1500Hv(300)、より好ましくは1000〜1500Hv(300)のビッカース硬さ値を有する工具を提供することができる。
【0038】
先進の表面工学は、摩擦撹拌接合又は摩擦撹拌成形用の工具を製造するために使用されることができる。例えば、施与されたコーティングを有する工具は引き続き、コーティング厚さよりも大きい深さに浸炭又は窒化されることができる。これは、前記基体への前記コーティングの付着を促進し、かつさらに、前記プローブにより経験される巨大なねじり力及び疲れの耐性にとって重要なより硬くかつ一体の下位の表面層を提供することにより、前記基体を強化するように作用し、かつこのようにして高められた工具性能を提供する。前記コーティングは、PVD(例えばマグネトロンスパッタリング又はプラズマ蒸着)、CVD(例えばシリサイドコーティング)、電気めっき、溶射又は真空プラズマ溶射、又は類似の技術により施与されることができる。前記表面コーティング及び処理は、ショルダー部、存在する場合にはピン部、又は双方ともに施与されることができる。
【0039】
好ましい特定の実施態様において、本発明の工具は、鋼から製造された溶接ピースにおいて使用される。鋼は、鉄が炭素及び他の元素と混合され、かつ軽炭素鋼、中炭素鋼又は高炭素鋼と、それらが含有する炭素の百分率に従って記載される、大きなファミリーの金属合金として定義される。一部の特殊なタイプの鋼は、炭素鋼;主成分として鉄を有する本質的には複雑な合金であるダマスカス鋼;より高い量のクロムを含有し、かつオーステナイト系鋼、フェライト系鋼及びマルテンサイト系鋼を含めたステンレス鋼;クロム10.5%の最小量を含有し、しばしばニッケルと組み合わされ、腐食(さび)に耐性のある、サージカルステンレス鋼;工具鋼;高強度低合金(HSLA)鋼;高強度鋼(advanced high strength steels);鉄超合金;及び鋳鉄を含む。本明細書で使用される、"鋼"という用語は、上記で列挙された鋼のタイプにより例示されるように、当業者により理解されるように、任意の鉄−炭素合金を表すのに使用される。ショルダーにおいてTa10Wを含んでなり、かつピンにおいてLaWを含んでなり、その際に前記ショルダー及び前記ピンは浸炭窒化されている工具は、1/2インチ厚さの12% Cr鋼(Ferritic Utilityグレードのステンレス鋼 DIN 1.4003 ASTM A240グレードUNS S41003)を、20回を上回るプランジ(plunges)で20mを上回る距離について溶接することができる。
【0040】
鋼に加えて、本発明の摩擦撹拌接合工具により溶接されることができる材料は、例えば、銅基合金、コバルト基超合金、ニッケル基超合金、鉄基超合金、ニッケル−鉄基超合金、酸化物分散強化ニッケル超合金及びチタン基合金を含む。これらの合金は当工業界において十分知られており、かつこれらの合金の多くが商業的に入手可能である。
【0041】
他の実施態様において、本発明の工具は特に、アルミニウム合金;特に、Al7075を含めた、7XXX系のアルミニウム合金、5XXX及び6XXX系の他のAl合金、例えば5083及び6082、及び2XXX系のAl合金の溶接に好適であり、それらの大部分が常用の工具鋼を用いて溶接することが不可能である。本発明の工具は、全てのアルミニウム合金を溶接するのに適している一方で、一部のこれらの合金の摩擦撹拌接合にとってあまり費用のかからない選択肢である。本発明の材料は、7XXX系の硬質アルミニウム合金により好適である。ルテニウムめっきされたモリブデン工具は、1/2インチ厚さのアルミニウム7XXX系を、20回を上回るプランジを用いて20mを上回る距離について溶接することができる。
【0042】
故に、付加的な態様において、本発明は、本発明の工具を摩擦撹拌接合又は摩擦撹拌成形することにより溶接されている物品を提供する。本発明の工具は、鋼、超合金及びアルミニウムシート又はアルミニウムプレートを一緒に、前記工具材料の破損なく、少なくとも10m、一部の場合に、少なくとも15m、及び一部の場合に、少なくとも20mについて溶接することができる。
【実施例】
【0043】
次の例は、本発明を説明するために過ぎず、かつ本発明を決して限定するものとして解釈されるものではない。
【0044】
例1〜5において、5つの1″呼び直径のタンタル10%タングステン合金の撹拌溶接工具(ピン及びショルダーの双方)を、その際1つは表面処理を有さず、かつ他の4つは多様な表面処理を有し、1/2インチ厚さの12% Cr鋼(UNS S41003)を溶接するそれらの能力について評価した。溶接速度は公称的に毎分3.5″であった。全ての試行において、商業的に入手可能なタンタル10%タングステンロッド(ASTM B364グレードR05255、H.C.Starck Inc.から入手可能)を、当業者に知られているような、炭化タングステン工具及び塩素化炭化水素潤滑剤を用いる、常用の切削加工技術、例えばターニング及びミリングを使用して、必要とされる工具プロフィールに切削加工した。必要とされるプロフィールへの切削加工後に、こうして製造された工具は、前記工具のピン及びショルダー部の双方とも、表面耐久性及び硬さを改善するために、以下により詳細に記載される多様な表面工学法により表面処理した。
【0045】
例1 − 処理なし
この工具を、他の全ての工具のための参考として評価した。パイロットホールを前記鋼中に穴あけし、かつ"溶接"を、いずれの保護雰囲気を使用せずに実施した。前記工具は、1200℃を超える温度に達したが、しかし、おそらくその場で形成される保護酸化タンタル層のために、発煙は起こらなかった。500mm後に停止した、溶接部は、極めて滑らかであったが、しかし工具摩耗は過剰であり、その際に先端部は完全に侵食された。先端部及びショルダーの双方とも摩耗が生じた。この工具は、溶接の前及び後の双方とも、図3に示されている。
【0046】
例2 − 浸炭窒化
浸炭窒化は、前記工具を約1,000℃に約10分、窒素雰囲気中で封入された容器中で加熱することにより達成された。前記工具をついで、炭素、炭酸ナトリウム及び糖みつ(Kasenit、Dacar Tools Limited, UKから入手可能)を含有する表面硬化粉末と3〜4回接触させた。前記工具を、同様に窒素雰囲気下に冷却した。前記試料の表面は、白い脆い堆積物でコーティングされ、これは容易に掻き取られた。これは、表面層を約100μmの深さで炭化タンタルに変換し、かつ硬さを約200Hv (300)(ビッカース硬さ数)から約1000Hv (300)へ増加させた。一部の酸化が生じ、かつ直径はかなり減少したが、しかし前記工具は硬く黒いコーティングを獲得した。直径の減少のために、前記工具をコレット中で中央に保持するためにシムを使用することが必要であった。極めて滑らかな溶接部が生じた。先端部の摩耗があったが、しかしショルダーは、あるにしても殆ど摩耗を示さなかった。この工具は図4に示されている。
【0047】
例3 − 窒化
工具を、管型炉中で窒素雰囲気下に、850℃で2・1/2時間加熱し、200℃で30分間冷却し、かつ室温に冷却されるまで大気に30分間さらした。このプロセスを、さらに2回繰り返したが、しかし850℃で各回ほぼ30分間保持した。それぞれ加熱/冷却サイクル後に、最大硬さが達成されるまで硬さを測定した。これは1000〜1300Hv(300)の範囲内の表面硬さを生じさせた。故に、前記工具を全部で4時間にわたり850℃で硬化させた。先端部は一部の摩耗を示したが、しかし、これは依然として一般的に無傷のままであり、かつ溶接部は極めて滑らかであった。この工具は図5に示されている。
【0048】
例4 − シリサイド化
酸化保護は、構成要素表面への二ケイ化タンタルの層の施与により達成された。そのような層を>1000℃に加熱する際に、前記層の分解は、二酸化ケイ素、石英として知られるガラスの形の遊離を生じ、これは表面を流れ、それにより表面を密閉し、かつ酸化が生じるのを防止した。前記処理は、構成要素を四フッ化ケイ素ガス中で密閉されたレトルト中で約5時間の期間にわたって約1100℃で加熱することにより達成され、それにより、二ケイ化タンタルの層が前記表面上に約125μmの深さに堆積する。このコーティングは、前記構成要素表面と一体であり、化学的に結合され、かつそれと結合される。前記コーティングプロセスの間に、前記材料は水素を吸収し、かつ1250℃で4時間、ガス抜きすることにより水素の脆化作用を除去することが必要である。前記コーティングは、50μmの全ての寸法の増加を生じさせるので、こうして処理されるべき構成要素の切削加工において考慮された。
【0049】
この工具により製造された溶接部は、適度に滑らかであったが、しかし初期溶接圧力は過剰であり、その際に前記工具は、鋼表面中へ溝掘りを引き起こした。溶接した後に、前記工具の先端部は完全に消失したが、しかし先端部の周囲にクラッキングの形跡があった。水素が、ガス抜き処理により完全に除去されていなかったことが考えられる。ガス抜き後に、残存水素は2ppm未満であるべきである。前記ショルダー及び溝(groove)は、良好な条件のままであった。この工具は図6に示されている。
【0050】
例5 − 酸窒化アルミニウムコーティング
酸窒化アルミニウムの3μmコーティングを、マグネトロンスパッタリングにより、Teer Coatings、UKで、標準装置を用いて施与した。前記工具を、アセトン中で超音波浴中で15分間清浄化し、ついで大気中で空気乾燥させた。前記工具をマグネトロンチャンバ(アルゴン雰囲気)中に置いた後に、チャンバを<3×10-5トルにポンプ排気した。初期光プラズマエッチングを、300Wで10分間実施した。酸窒化Alコーティングをついで、Alターゲットを使用し、かつ前記チャンバ中のO2及びNガスの量を制御することにより、施与した。
【0051】
この工具は、外観が明るい黒色であった。パイロットホールを、溶接する前に通常の方法で前記鋼中に穴あけしたが、しかし前記ホールは、前記工具のためには大きすぎ、故にボイドは最初に溶接部中へ引きずられた。溶接トラバース速度を落として材料によりボイドを堆積させかつ充填させ、引き続き通常の速度に増加させることにより、前記問題は解消された。シリサイドコーティングされた工具を用いて生じたように、先端部は裂けなかったけれども、摩耗は依然として著しかった。前記工具の酸化は明白であった。この工具は図7に示されている。
【0052】
全ての場合に、先端部の摩耗又は破壊は生じたが、しかし前記ショルダーは無傷のままであり、かつ材料の堆積(build up)もなかった。ショルダー領域及び溝の良好な品質は、滑らかな溶接表面を提供した。最も滑らかな溶接部は、浸炭及び窒化された工具により生じた。
【0053】
例6 − Ru 3μmで電気めっきされたソリッドなMo
商業的なグレードの粉末冶金モリブデンロッドから製造され、かつ45mmショルダー直径、14〜10mmプローブ直径のベースチップ及び12mmプローブ長さ(ほぼ1/2インチ未満)を有するソリッドなモリブデン工具を製造した。ルテニウム3μmを前記工具のバルク上へ電気めっきし、850℃で1〜2時間焼結した。
【0054】
直径10.4mmのパイロットホールを、A17075シート中に穴あけし、かつ前記工具を、回転速度に上昇させ、かつゆっくりと前記ホール中へ下ろした。機械パラメーターは次の通りであった:312rpm、1.6mm/s及び下向きの力50〜55kN。
【0055】
温度は、ショルダーのリアで520℃及びリーディングエッジで620℃に達した。約750mmの後に最初の操作の間に前記機械は不具合を起こし、かつ回転速度及び線速度の双方とも劇的に増加した。前記工具を直ちに引っ込めた。目立って、前記工具は、影響を受けていないように見え、続けて20回のプランジ後に20数メートルを溶接した。再び、著しい摩耗は観察されなかった。図8は、5回のプランジ及び溶接4.75m後の工具を示す。
【0056】
例7 − ソリッドなLaW工具
30mmショルダー直径、10.75〜7.7mmプローブ直径のベースチップ及び10mmプローブ長さ(ほぼ1/2インチ未満)を有するソリッドなLaW(La2O3 1〜2%)工具を、1/2インチ厚さの12% Cr鋼を溶接するのに使用した。機械パラメーターは625rpm、2.9mm/s及び下向きの力25〜30kNであった。ターゲット長さは1mであった。この工具は、鋼中の数メートルの距離を成功裏に溶接し、かつ見掛けの摩耗の徴候を示さなかった。溶接部の表面仕上げは、LaWで予測されたほど良くなかったが、けれども溶接部は本質的に良好であった。
【0057】
例8 − Ta10Wショルダー及びLaWピン
Ta10Wのショルダー及びLaWのピン(La2O3 1〜2%)を有する工具を、例2に記載されたように浸炭窒化し、かつ1/2インチ厚さの12% Cr鋼を溶接するのに使用した。機械パラメーターは次の通りであった:625rpmの回転速度、32kN負荷、2mm/sec(最大2.5)の溶接線速度及び12.5 パイロットホール。見かけの摩耗又はひずみは、20m及び20回のプランジ後に観察されなかった。溶接された鋼の写真は、図9及び10に提供される。図10は、接合部のミクロ組織の断面図である。溶接されるシートの下に示され、かつ溶接されない、316グレードステンレス鋼プレートを、溶接床を保護するために前記材料の真下に置いた。
【0058】
例9 アルミニウム摩耗試行
MP159(登録商標)(Timkin Latrobe Steel of Latrobe, PAから入手可能なニッケル−コバルト−クロム合金)を含んでなる工具(ショルダー及びピン)を、1/2インチ厚さのA17075のメートル試験プレートに沿って最初の試行のために使用した。接地条件が確立した後に、トラバースは1.5mm/sec、ついで2mm/secに上昇され、ついでトラバース速度が2.5mm/secに増加されたので、前記工具はもはや、プレートに沿って押し進めることはできなかった。2.4mm/secで停止し、その際に長さがほぼ500mmを上回って達していたに過ぎなかった。前記プローブは無傷のままであった。MP159(登録商標)を用いるさらなる試行は再び、約600mm長さの不完全な溶接部を生じた。前記プローブは無傷のままであった。
【0059】
ソリッドなMo工具(ショルダー及びピン)を用いる比較試行は、同じレジメを完了し、かつメートル摩耗試験の全長を、十分に前記機械の能力の範囲内で容易に完了した。表面仕上げは、通常とは異なっていたが、しかし良好に見えた。前記プローブは無傷のままであった。
【0060】
母材材料への工具材料の摩擦継手(friction coupling)が、無視できない結果を有することが発見された。ESAB機械上でのより早い試行から採用された計装チャートは、この観察された継手結果を支持するさらなる証拠を与えた。
【0061】
同じ工具ジオメトリー及び同じプロセスパラメーターを与えて、Mo工具上のトルクは、MP159(登録商標)工具と比較して6.7%高く;Mo工具上の下向きの力はMP159(登録商標)工具よりも27%小さく;かつMo工具上の前方の横向きの力は、MP159(登録商標)工具よりも10%小さかったことが確定された。
【0062】
本発明の特別な実施態様は、説明の目的のために前記で記載されており、当業者には、本発明の詳細の多数の変更が、添付された特許請求の範囲に定義されたように、本発明から逸脱することなくなされることができることは明らかである。
【符号の説明】
【0063】
10 先行技術の摩擦撹拌接合装置、 20 本体、 40 ショルダー部、 50 ピン部、 60 母材、 2a、2b 工具、 2c、2d、2e、2f ショルダー部
【技術分野】
【0001】
発明の属する分野
本発明は、鋼、チタン、銅及び一部のアルミニウム合金のような材料の摩擦撹拌接合又は摩擦撹拌成形において使用するための、タングステン基工具、モリブデン基工具、タンタル基工具、ニオブ基工具及びハフニウム基工具に関する。
【0002】
背景情報
摩擦撹拌接合(FSW)は、融解又は充填剤材料を使用することなく金属部材を接合する方法である。FSWにおいて、プロファイル(profiled)プローブ又はピンを有する円柱の形をした工具が回転して、互いに突き合わされて又は重ね合わせられて配置されているシート又はプレート材料の2つのピース間の接合線中へゆっくりと突入する(plunged)。より新しい方法において、前記プローブに角度が付けられることができるか(Skew Stirとして知られる)、又は2つの反転する(contra-rotating)プローブが、タンデムで使用されることができる(Twin Stirとして知られる)。前記部材は、必要に応じてバッキングバー(backing bar)上へ、胴付き面が外力により離れるのを防止するようにクランプ締めされる。耐摩耗性の溶接工具と前記母材の材料との間で発生した摩擦熱は、後者の材料を融点に達することなく軟化させ、かつ前記工具を溶接線に沿って移動することを可能にする。塑性化された材料は、前記工具のリーディングエッジから前記工具プローブのトレーリングエッジまで移送され、かつ前記工具ショルダー及び前記ピンプロフィールの緊密接触により鍛造される。2つのピース間に固相結合が残留する。前記プロセスは、固相キーホール溶接技術とみなされることができる、それというのも、前記プローブに合わせるためのホールが製造され、ついで溶接シーケンス中に充填されるからである。米国特許第5,460,317号明細書及び関連特許には、この方法がより詳細に記載されている。多様な幾何学的配置の大きな溶接部が、この方法により製造されることができる。また、摩擦撹拌接合法は、金属を含めた材料の摩擦撹拌プロセス(friction stir processing)を含むまでに拡大されており、その際に、回転工具は、前記材料を変形又は塑性化するための摩擦熱を提供し、それによりチャネルの導入又は前記材料の成形を可能にする。
【0003】
FSWは、旧来の溶接法に対して、充填剤の必要がないこと以外にも、多くの利点を提供する。例えば、FSWにより溶接される部材は優れている、なぜなら、前記方法は、溶接される部材中でのひずみ及び縮みがあまり生じず、接合部中で巣を生じない。前記方法は、他の溶接法よりも簡単に実施される、なぜなら、溶接準備が必要とされず、ガス遮へいが必要とされず、溶接発煙又は溶接はねがなく、かつ半熟練オペレーターのみが必要とされ;ロボット溶接の可能性もあるからである。
【0004】
摩擦撹拌接合は、常法によって溶接するのが困難であったアルミニウム合金を接合するために、The Welding Institute, Great Abington, UKにより初めて開発された。これらの相対的に軟質な材料を接合することに成功しているけれども、より硬質でより強い材料、例えば、鋼、チタン合金、銅合金、7XXX系のアルミニウム合金及び特定の他の非鉄金属にFSWの適用を拡大することは、溶接プロセスの間に工具が分解(degrade)又は破壊する傾向のために、困難であることが判明している。分解の殆どは、これらの高強度材料のFSWの間に生成する高い熱及び応力に帰因されうる。
【0005】
米国特許出願公開第2004/0238599号明細書には、鋼部材を溶接するための、FSW工具におけるタングステン基材料の使用が開示されている。米国特許第6,648,206号明細書には、超合金及び他の高強度合金の溶接用のFSW工具における、超砥粒(superabrasive)材料、例えば多結晶質の立方晶窒化ホウ素(PCBN)の使用が開示されている。FSWにより高強度材料から製造された構成要素を確実に接合することができる、溶接工具、装置及び方法を提供するという需要が引き続き存在する。
【0006】
発明の要約
故に、本発明は、摩擦撹拌接合又は摩擦撹拌成形用の工具を提供するものであり、前記工具はショルダー部及び場合によりピン部を含んでなり、前記ショルダー部は、少なくとも60質量%及び100質量%までのタングステン、モリブデン、タンタル、ニオブ又はハフニウムを含んでなり、残部は合金材料(alloying materials)であって、
前記工具の少なくとも一部が、少なくとも1つの表面コーティング又は表面処理を有している
ことにより特徴付けられる。
【0007】
本発明のこの態様及び他の態様は、以下の図面、詳細な説明及び添付された特許請求の範囲からより容易に明らかになる。
【0008】
本発明は、以下の図面によりさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の工具及び関連装置の実施態様を示す図。
【図2】本発明の工具の付加的な実施態様を示す図。
【図3】例1に記載された通りに試験された工具の写真。
【図4】例2に記載された通りに試験された工具の写真。
【図5】例3に記載された通りに試験された工具の写真。
【図6】例4に記載された通りに試験された工具の写真。
【図7】例5に記載された通りに試験された工具の写真。
【図8】例6に記載された通りに試験された工具の写真。
【図9】例8に記載された通りに製造された溶接部の写真。
【図10】例8に記載された通りの接合部ミクロ組織の断面図。
【0010】
発明の詳細な説明
ここで、実施例において使用しているものを含め、明細書及び特許請求の範囲において使用しており、かつ他に明示的に記載されていない限り、全ての数は、"約"という言葉により、前記用語が明白に現れていない場合でも、前置きされているかの如く読むことができる。また、本明細書に引用された任意の数値範囲は、その中に包含される全ての下位の範囲(sub-ranges)を含むものとする。
【0011】
図1を参照して、例示的な先行技術の摩擦撹拌接合装置10が示されている。前記装置は、本体20及びショルダー部40とピン部50とを有する溶接工具30を含んでなる。前記溶接工具は、母材60を溶接するのに使用される。認識されるように、多数の工具は、同じ基本設計を有して、形状、サイズ及び他の特徴についての多様な改善を有して(例えば前記のSkew Stir又はTwin Stir)製作されて、溶接プロセスが最適化される。一部の設計において、前記工具のショルダー部は、前記工具の主要本体又はシャンクの一体化部であるのに対し、他の設計において前記ショルダー及び/又はピンは、前記工具の上部本体とは異なる材料から製造されていてよい(本発明の場合のように)。付加的に、一部の工具において、前記ショルダー及び/又はピンは、例えば、交換可能なショルダー及び/又はピンが望ましい場合に、前記本体上へ接合されるために又は嵌め合わされるために適合された別個のピースであってよい。本発明の溶接工具において使用される材料は、当業者により理解されるように、任意の摩擦撹拌接合工具において使用するために適合されることができる。
【0012】
付加的に、当業者により理解されるように、本発明の溶接工具は、旧来の摩擦撹拌接合方法並びにより新しい方法の双方において、例えば、摩擦撹拌スポット接合(FSSW)及び摩擦撹拌プロセス(例えば、The Welding Instituteにより特許されたPro-Stirを用いる3次元の精密鍛造(near-net shape manufacturing))及び上記で言及したSkew-stir及びTwin-stir法を含めて、使用されることができる。図2は、本発明の工具の付加的な実施態様、例えば、ピンを有しない工具を示す(図2a、2c及び2e)。このタイプの工具は、Twin-Stirとして知られた摩擦撹拌接合法におけるリード工具として使用されることができる。そのような工具は、摩擦撹拌プロセスの他の方法、例えば、参照により本明細書に取り込まれる米国特許第6,655,575号明細書に記載されたミクロ構成要素の超塑性成形において使用されることもでき、ここで、プローブを有することは望ましくなく、かつ及びフラットな表面の工具が摩擦撹拌プロセスに必要である。図2b、2d及び2fは、ピンを有する付加的な実施態様を説明する。一部の実施態様において、前記ショルダーは、工具の本体と同じサイズにされる(2a、2b)のに対し、他の実施態様において前記ショルダーは、本体よりも小さい(2c、2d)か又は本体よりも大きい(2e、2f)。図2(a〜f)に図示される工具が円形で表示される一方で、工具の他の形状も、本発明により企図されており、かつ包含される。
【0013】
本明細書で使用されている、"摩擦撹拌接合又は摩擦撹拌成形"という用語は、金属又は他の材料の物品を接合又は成形する方法であって、摩擦により熱を発生する回転工具の使用を含み、前記熱が前記材料を変性又は変形させて、溶接部又は前記材料の他の変性、例えば前記金属又は他の材料のチャネル又はダイカストを生成する方法を呼ぶ。
【0014】
故に、一態様において、本発明は、摩擦撹拌接合又は摩擦撹拌成形用の工具を提供する。一実施態様において、前記工具は、ショルダー部及び場合によりピン部を含んでなり、前記ショルダー部は、少なくとも60質量%及び100質量%までのタングステン、モリブデン、タンタル、ハフニウム又はニオブを含んでなり、残部は使用される場合には合金材料である。好ましい実施態様において、前記ショルダー部は、少なくとも85質量%及び100質量%までのタングステン、モリブデン、タンタル、ハフニウム又はニオブを含んでなり、残部は使用される場合には合金材料であり;最も好ましくは、前記ショルダー部は、タングステン、モリブデン、タンタル、ハフニウム又はニオブを85〜99質量%含んでなる。合金元素に加えて、合金又は前記の元素の、金属マトリックス複合体、繊維強化金属マトリックス複合体、及び炭化物及び/又は酸化物が使用されることができる。使用される場合には、酸化物及び/又は炭化物は、0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜3質量%の量で存在している。一実施態様において、タンタル、ハフニウム又はニオブのショルダー部は、タングステン、好ましくはタングステン1〜15質量%で合金化される。前記ショルダー用の特に好ましい材料は、Ta10Wであり、すなわちASTM B364グレードR05255のタングステン10%を含有するタンタル合金であり、H.C.Starck & Co.から商業的に入手可能である。付加的な実施態様において、前記工具は、前記の材料のショルダー部のみを含んでなる。
【0015】
付加的な好ましい実施態様において、前記工具は、ショルダー部及び場合によりソリッドな(solid)(合金化されていない)モリブデン、ランタン化されたモリブデン、TZM(チタン ジルコニウム モリブデン)、MHC(炭化ハフニウムで安定化されたモリブデン)、又はこれらのいずれかの組合せを含んでなるピン部を、ショルダー又はピン上のそれらの使用の点で含んでなる。ランタン化されたモリブデンの場合に、ランタン化された成分は、典型的にはLa2O3の形である。ソリッドなモリブデンの工具(ピン及びショルダー)が、Al7075を溶接するのに使用される場合に、MP159(登録商標)工具と比較して6.7%高いトルクを有し;Mo工具上の下向きの力が、MP159(登録商標)工具よりも27%小さく;及びMo工具上の前方の横向きの力が、MP159(登録商標)工具よりも10%小さかったことが見出された(例9に記載された通り)。
【0016】
一部の実施態様において、前記工具のピン部は、ショルダーと同じ材料を含んでなる。他の実施態様において、前記工具のピン部は、化学組成、ミクロ組織及び/又は加工の点で前記工具のショルダー部が含んでなる材料とは異なる材料を含んでなる。例えば、一部の実施態様において、前記ピン部は、モリブデン、タングステン、ハフニウム、レニウム、イリジウム、バナジウム、及び金属マトリックス複合体、及びこれらの任意の合金、炭化物及び酸化物、並びにこれらの任意の組合せから選択される1つ又はそれ以上の材料を含んでなる。一部の好ましい実施態様において、前記工具のピン部は、タングステンと、ハフニウム又はジルコニウムの酸化物及び/又は炭化物、又はこれらの任意の組合せとを含んでなる。好ましくは、前記酸化物及び/又は炭化物は、0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜3質量%の量で存在しており、かつ残部はタングステンである。特に好ましい実施態様において、前記ピンは、La2O3 1〜2質量%又はRe 5〜30質量%で合金化されたタングステン、又は繊維強化金属マトリックス複合体、例えばZrO2繊維を有するTa又はWを含んでなる。
【0017】
一部の実施態様において、前記工具のピン部は、ASTM法E112により測定されるような、ASTM 5の又はより微細な、好ましくは8の又はより微細な粒度を有する。前記工具のショルダー部は、異なる材料から製造される場合に、ASTM 5の又はより微細な粒度を有していてよい。
【0018】
摩擦撹拌成形及び摩擦撹拌接合用の工具を製造する方法は、当工業界において知られた標準法である。タングステン基、モリブデン基、タンタル基、ハフニウム基又はニオブ基材料は供給原料を製造するために加工され、前記供給原料は機械加工されて、前記供給原料の断面積は少なくとも90%減少される。機械加工された供給原料は、摩擦撹拌接合装置又は摩擦撹拌成形装置中で操作するのに適合される切削加工及び/又は粉砕により工具(ショルダー及び場合によりピン)へ成形されることができる。
【0019】
出発物質を供給原料へ加工するのに適した幾つかの任意の方法が使用されることができる。例えば、液体から金属を凝固させる方法、例えば、タングステン、モリブデン、タンタル、ニオブ及びハフニウムのようなショルダー材料、又はタングステン、ハフニウム、レニウム、インジウム、バナジウム、及びこれらの金属マトリックス複合体、及び合金、炭化物及び酸化物を含むピン材料について、当工業界において知られた多様な鋳造法が使用されることができる。出発物質を供給原料へ加工する方法は、スラリー法、例えば、米国特許第4,622,068号明細書に記載された酸化物分散強化(ODS)法又は他のODS法を含めた、粉末冶金法並びに固体粉末を圧縮成形する(compacting)又は圧密にする方法、例えば焼結、ホットコンパクション、例えばホットアイソスタチックプレス、押出し、ダイ圧縮成形及び吹付け、又はコールドコンパクション、例えばコールドアイソスタチックプレス、ダイ圧縮成形、射出成形及びスリップ鋳込による方法も含みうる。これらの方法は、当工業界において十分知られており、かつ当業者は、完成した生成物中で所望の性質を生じさせるために、適切な温度、圧力及び期間を容易に決定することができる。
【0020】
最後に、固体原料が真空アーク又は電子線で溶融され、かつ形成されることによる多様なプロセスのいずれかが、前記供給原料を形成するのに使用されることができる。前記出発物質が、供給原料を形成するために加工された後に、供給原料は、機械加工されてその断面積が少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%減少される。この程度まで供給原料を機械加工することは、供給原料材料を先端部でひずみ硬化させ、そこで、それは、高強度材料のFSWの間に工具により保証される、要求の厳しい応力及び温度条件の間の分解に有利に耐える。前記供給原料は、例えば、押出し、スエージ加工、ロッド圧延及び鍛造を含めた、任意の適した金属機械加工プロセスにより機械加工されることができる。異なる金属機械加工プロセスの組合せ及びシーケンスも、前記供給原料の断面積の所望の減少を達成するのに適している。一般的に、材料は、通常、応力除去条件において供給されるが、しかしより良好な結果は、圧延されたままの、未焼鈍条件において材料を使用することにより得られることができる。付加的に、使用される材料に応じて、加工は、工具中で所望の性質を達成するために、ねじり鍛造、回転鍛造又はスエージ加工を含むことが必要でありうる。
【0021】
供給原料を所望の状態に機械加工した後に、前記供給原料は、ついで工具へ成形される。この段階は、前記のような金属加工操作の使用並びにカッティング、ターニング、タッピング、粉砕、ホーニング、ポリシング等を含めた、任意の多様な切削加工操作を含むことができる。前記工具の正確な寸法は、ショルダープロフィール及びショルダー直径対厚さの比を含め、溶接されるべき材料及び前記材料の厚さに基づいて選択される。当業者は、前記工具の材料及び溶接されるべき材料に基づいて適切な寸法を決定することができる。
【0022】
金属機械加工及び切削加工の操作に続いて、使用される場合には、本発明の工具は、少なくとも1つ又はそれ以上の表面処理又は表面コーティング、又はこれらの組合せにかけられる。前記(複数の)コーティング及び/又は前記(複数の)表面処理は、任意の順序で適用されることができる。
【0023】
表面コーティングは、一例として、電気めっき、例えばTa、Ru及びRhの電気めっき;硬質クロムめっき及びニッケルめっき;物理蒸着(PVD)、例えば、マグネトロンスパッタリング及びAlCrN、WC/C、ダイヤモンド様炭素、WC、HfC、RuC、RhC、VN、VC、TaN、TaC、MoN、MoC、NbN又はNbCのような材料を堆積させるプラズマプロセス、並びにマグネトロンスパッタリングにより生成される窒化物及び炭化物、及びTaVN等のような合金を製造する2つ又はそれ以上のコーティングの組合せ;シリサイド化を含む、化学蒸着(CVD)及び他の耐酸化性コーティング;SiO2、Ti、Pt、TiO2、Zr、Ta2O5、V、Si3N4、Rh、Hf、B、VN、B4C、Ir、Nb、NbN、Mo、SiC、ZrO2、HfO2、VC、WC、WB2、NbB2、TiB2、TiN、ZrN、Ta、TaB2、ZrB2、BN、HfB2、TiC、Re、HfN、TaN、W、NbC、ZrC、C、TaC、HfCの堆積を含む、溶射、真空プラズマ溶射又は溶融塩電着を含む。コーティングの組合せ、例えば電気めっき又はPVD又はプラズマプロセスによる多層コーティング、又は溶射、又は真空プラズマ溶射、又はこれらの組合せも使用されることができる。
【0024】
一部の好ましい実施態様において、本発明の工具のピン部及び/又はショルダー部には、耐酸化性コーティングが、例えばシリサイドでコーティングすることにより、設けられている。シリサイドコーティングの例は、当工業界において知られており、例えば、参照により本明細書に取り込まれる米国特許第6,214,474号明細書に記載されたコーティングである。好ましい実施態様において、前記工具は、四フッ化ケイ素ガス中で前記構成要素を、密閉されたレトルト中で、水素/窒素雰囲気中で、約3〜20時間、より好ましくは4〜6時間の期間にわたって、1000°〜1200℃、より好ましくは1050°〜1150℃の温度で加熱することにより、シリサイド処理にかけられる。前記SiF4は、前記物品の表面と反応して、金属二ケイ化物、例えばTaSi2又はMoSi2を形成する。高温で、前記二ケイ化物層の外面は、前記雰囲気中の酸素と反応して酸化物を形成し、これは昇華し、かつSiO2の保護層を形成し、故にさらなる酸化に対する耐性を提供する。
【0025】
表面処理は、前記基体の化学を変えるために作用させて、より硬く及びしばしばより強靱な表面層を生じさせ、かつ付加的に疲れに対する耐性を提供する処理である。前記処理に応じて、針入度は、表面を過ぎて数ミリメートルまで進みうる。表面処理は、例えば、表面硬化法、例えば窒化、浸炭(炭化としても知られている)、浸炭窒化(又は軟窒化)、火炎、放電硬化又は誘導加熱硬化、レーザー又は電子線硬化、ショットブラスト及びレーザーショックピーニングを含み、これらの用語は当工業界において知られている通りである。
【0026】
好ましい実施態様において、本発明の工具のW基、Mo基、Ta基、Hf基又はNb基のショルダー及び/又はピンは、例えば浸炭により、表面硬化されている。浸炭は、当工業界において知られた方法であり、前記方法において炭化水素、例えばアセチレンは前記金属表面と反応して原子状炭素を形成して、前記金属基体中へ拡散する。多様な形の、例えば充填プロセスによる、浸炭があり、前記プロセスにおいて、硬化されるべきピースは、鋼容器中に充填されるので、それは木炭及び糖みつのグラニュールにより完全に包囲される。前記容器はついで炉中で又はさもなければ800℃を上回る、典型的に800°〜1200℃の温度に加熱され、これは当工業界において知られている通りである。前記木炭は、二酸化炭素の形成を促進する、活性化薬品、例えば炭酸バリウムで処理される。このガスはそしてまた、前記木炭中の過剰の炭素と反応して一酸化炭素を形成し、これは処理される材料の表面と反応して、原子状炭素を形成して前記金属基体中へ拡散する。
【0027】
好ましい実施態様において、本発明のショルダー及び/又はピンは、窒素雰囲気中で浸炭される(しばしば浸炭窒化又は軟窒化と呼ばれる)。前記工具は、1000°〜2000℃、好ましくは1500°〜1800℃の温度に、炭素の富化された炎、例えばオキシ−アセチレン中で加熱され、その間に浸炭プロセスにおいて前記工具を前記のように炭素粉末中に浸漬する。前記プロセスは、窒素ブランケット下の封入された環境中で、2分〜約6時間の期間に亘って、硬化される前記材料に依存して、実施される。C及びNは双方とも、前記成分の表面中へ吸収される。
【0028】
他の浸炭法も知られている。例えば、浸炭は、オキシ−アセチレンを使用することにより達成されることができ、その際に、摩擦撹拌接合工具は、酸素を含有する炎を用いて予備加熱され、引き続き減少された酸素又は酸素ゼロを有する第二のアセチレン炎を用いて、及び場合により炭素源、例えばグラファイト粉末の添加を有するか又は有さずに、加熱される。前記アセチレン炎は、約200μmの深さまでの金属表面の浸炭を引き起こす炎を生成する。不活性なシールドガス、例えばアルゴンは、酸化を防止するのに使用され、かつ前記工具は、火炎加熱が消される前に、不活性なシールドガス中で250℃未満の温度に冷却される。この技術はより小さい構成要素及びその部材についても、例えば前記工具のピン領域のみ又はショルダーのみ、所望の通り、適合されることができる。
【0029】
真空浸炭は、真空炉中で必要な温度で、ガス、例えばメタン、アセチレン(C2H2)又は他の炭化水素をベースとするガスを導入することにより実施される他の浸炭方法である。時間及び温度は、浸炭の他の方法について前記の通りである。このプロセスは、W及びその合金(例えば、LaW又はWRe)、Mo及びその合金(例えばLaMo、TZM、MHC、及びイットリウム及び/又はセリウムの酸化物を含有する酸化物分散強化モリブデン合金);Re及びその合金、Ru及びその合金、Rh及びその合金及びOs及びその合金の表面工学にとって有用である。
【0030】
Ta又はその合金(例えばTa10W)、Hf及びその合金又はNbを真空浸炭する場合には、ついで後ガス抜きサイクルが、Hを前記材料から除去するために必要とされる。これは、さもなければ水素脆化及び早期の破損(failure)を引き起こしうる。ガス抜きは、1250℃で、前記構成要素の直径を基準とした時間にわたって実施され、例えば1/4″ロッドについては4時間を必要とし、かつ1″については約16時間が必要とされる。H含量は、有効な機能のためには<10ppmであるべきである。真空窒化は、前記の浸炭と類似の方法で実施されることもでき、かつ脆化を生じさせない利点を有する、それというのも、浸炭において存在するような、水素が存在しないからである。この方法は、例えば、Hfにとって適している、それというのも、HfNはHfCよりも僅かにのみ軟らかいからである。HfCは、Plasma Processes, Inc.により実施されるような、真空プラズマ溶射により堆積されることもできる。
【0031】
一部の実施態様において、本発明の溶接工具(ショルダー及び/又はピン)は、表面窒化処理されている。窒化は、窒素を金属の表面中へ拡散させるプロセスである。前記窒素は、タングステン、モリブデン、タンタル、ニオブ及びハフニウムのような元素と窒化物を形成する。窒化の前に、部材は清浄化され、ついで炉中で、窒素雰囲気中で10〜40時間、ニオブ及びタンタルの場合に200〜900℃で、及びタングステン及びモリブデンについては2000°〜2600°の温度で加熱される。当業者により認識されるように、前記処理の温度及び時間は、処理される材料に依存し、かつ当業者の能力の範囲内で決定されることができる。窒素は、前記金属中へ拡散し、かつ窒化物合金を、約100μm〜1mmの深さに、そしてまた、前記材料及び処理条件に応じて、形成する。窒化は、85〜99%のTa、Nb、又はHf又はそれらの合金から製造された溶接工具にとって好ましく、かつ85〜95%のW又はその合金についても有用である。
【0032】
モリブデン工具の場合に、ルテニウムめっきは、0.1〜10μm、好ましくは0.5〜5μmの厚さで施与される好ましい表面コーティングである。Ta10Wショルダー及びLaWピンを有する工具の場合に、表面コーティングの好ましいものは、シリサイドである。好ましい他の処理は、浸炭及び/又は窒化、又はコーティング及び表面処理の組合せ、例えばRuコーティングを有するピンを有する表面工学又は浸炭又は窒化、又はコーティング及び表面処理の組合せを含む。
【0033】
一部の実施態様において、溶射は、前記工具の表面、ショルダー部又はピン部のいずれか、又は双方にコーティングを施与するのに使用される。溶射は、熱による熱可融性の金属成分材料の軟化又は溶融と、コーティングされるべき表面への粒子形の軟化又は溶融された材料の推進とを含む。加熱された粒子は、前記表面に衝突し、そこでそれらは冷却され、かつそれに結合される。常用の溶射ガンは、粒子の加熱及び推進の双方の目的のために使用されることができる。
【0034】
溶射ガンは通常、燃焼又はプラズマ又はアークを利用して、粉末粒子を溶融させるための熱を発生させる。粉末タイプの燃焼溶射ガンにおいて、前記粉末を同伴させ、かつ輸送するキャリヤーガスは、典型的には不活性ガス、例えばアルゴンである。プラズマスプレーガン中で、一次プラズマガスは一般的にアルゴン又は窒素である。水素又はヘリウムは、一次プラズマガスに通常添加され、かつキャリヤーガスは一般的に、一次プラズマガスと同じである。他の溶射法も使用されることができる。溶射の良い一般的な説明は、米国特許第5,049,450号明細書に提供されている。
【0035】
適した一部の溶射技術は、しかし、これらに限定されるものではないが、自然大気中のプラズマ溶射(APS);"雰囲気制御プラズマ溶射"(CAPS)として知られる、制御された雰囲気、例えば不活性ガス中での、プラズマ溶射及び"真空プラズマ溶射"(VPS)として知られる、部分的な又は完全な真空中のプラズマ溶射を含む。常用の燃焼フレーム溶射を含めた、燃焼溶射プロセスは、高速フレーム(high velocity oxy fuel)(HVOF)溶射;及び高速オキシ空気(high velocity oxy air)(HVAF)を含む。他の溶射法は、アーク溶射法を含む。
【0036】
溶射されるコーティングにおいて使用するための適した材料は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金;無定形合金(armocor);ホウ素;炭素;MCrAlX、例えばFeCrAlY又はNiCrAlY;ハフニウム;イリジウム;六ホウ化ランタン;金属マトリックス複合体;ニオブ及びニオブ合金;ニッケル;ニッケルアルミナイド;レニウム;炭化ケイ素ステンレス鋼;ルテニウム;タンタル;タンタル−10WS;チタン;窒化チタン;炭窒化チタン;窒化チタンアルミニウム;窒化チタンクロム;タングステン;タングステンニッケル鉄;タングステン/Re;セラミック、例えばアルミナ;オキシ窒化アルミナ;アルミナ−50%AlN;アルミナ−40%チタニア;アルミナ−窒化ケイ素;窒化アルミニウム;窒化アルミニウムチタン;窒化ジルコニウム;窒化ホウ素;セラミックマトリックス複合体;コーディエライト;ホウ化ハフニウム;窒化ハフニウム;二ケイ化モリブデン−20−40%SiC;チタニア;ジルコン;ジルコン−AlN;イットリアで安定化されたジルコニア;炭化物、例えば炭化クロム;ダイヤモンド/ガラス状炭素;炭化ハフニウム;炭化タンタル;及び炭化タングステンを含む。これらの溶射コーティングの中では、炭化タングステン及び炭化ハフニウムが好ましい。
【0037】
溶射の好ましい方法は、機械加工され、切削加工され、かつさもなければ加工された後に、前記工具のピン及び/又はショルダー上に表面コーティングを堆積させるための、不活性な雰囲気、例えばアルゴン又はヘリウム中での真空プラズマ溶射又は吹付けである。当業者により認識されるように、材料、表面コーティング及び表面処理の多数の組合せが、本発明の工具を成形するのに使用されることができる、それというのも、前記工具のショルダー部及び場合によりピン部が、同じ又は異なる材料から製造されていてよく、かつ同じ又は異なる表面コーティング及び表面処理を有していてよく、その際にそれぞれの選択は他のものとは独立しているからである。本発明の表面コーティング又は処理された工具は、未処理の工具よりも2〜20倍大きい、好ましくは未処理の工具よりも4〜40倍大きい、最も好ましくは15〜20倍大きいビッカース硬さを有する。浸炭及び/又は窒化は、500〜1500Hv(300)、より好ましくは1000〜1500Hv(300)のビッカース硬さ値を有する工具を提供することができる。
【0038】
先進の表面工学は、摩擦撹拌接合又は摩擦撹拌成形用の工具を製造するために使用されることができる。例えば、施与されたコーティングを有する工具は引き続き、コーティング厚さよりも大きい深さに浸炭又は窒化されることができる。これは、前記基体への前記コーティングの付着を促進し、かつさらに、前記プローブにより経験される巨大なねじり力及び疲れの耐性にとって重要なより硬くかつ一体の下位の表面層を提供することにより、前記基体を強化するように作用し、かつこのようにして高められた工具性能を提供する。前記コーティングは、PVD(例えばマグネトロンスパッタリング又はプラズマ蒸着)、CVD(例えばシリサイドコーティング)、電気めっき、溶射又は真空プラズマ溶射、又は類似の技術により施与されることができる。前記表面コーティング及び処理は、ショルダー部、存在する場合にはピン部、又は双方ともに施与されることができる。
【0039】
好ましい特定の実施態様において、本発明の工具は、鋼から製造された溶接ピースにおいて使用される。鋼は、鉄が炭素及び他の元素と混合され、かつ軽炭素鋼、中炭素鋼又は高炭素鋼と、それらが含有する炭素の百分率に従って記載される、大きなファミリーの金属合金として定義される。一部の特殊なタイプの鋼は、炭素鋼;主成分として鉄を有する本質的には複雑な合金であるダマスカス鋼;より高い量のクロムを含有し、かつオーステナイト系鋼、フェライト系鋼及びマルテンサイト系鋼を含めたステンレス鋼;クロム10.5%の最小量を含有し、しばしばニッケルと組み合わされ、腐食(さび)に耐性のある、サージカルステンレス鋼;工具鋼;高強度低合金(HSLA)鋼;高強度鋼(advanced high strength steels);鉄超合金;及び鋳鉄を含む。本明細書で使用される、"鋼"という用語は、上記で列挙された鋼のタイプにより例示されるように、当業者により理解されるように、任意の鉄−炭素合金を表すのに使用される。ショルダーにおいてTa10Wを含んでなり、かつピンにおいてLaWを含んでなり、その際に前記ショルダー及び前記ピンは浸炭窒化されている工具は、1/2インチ厚さの12% Cr鋼(Ferritic Utilityグレードのステンレス鋼 DIN 1.4003 ASTM A240グレードUNS S41003)を、20回を上回るプランジ(plunges)で20mを上回る距離について溶接することができる。
【0040】
鋼に加えて、本発明の摩擦撹拌接合工具により溶接されることができる材料は、例えば、銅基合金、コバルト基超合金、ニッケル基超合金、鉄基超合金、ニッケル−鉄基超合金、酸化物分散強化ニッケル超合金及びチタン基合金を含む。これらの合金は当工業界において十分知られており、かつこれらの合金の多くが商業的に入手可能である。
【0041】
他の実施態様において、本発明の工具は特に、アルミニウム合金;特に、Al7075を含めた、7XXX系のアルミニウム合金、5XXX及び6XXX系の他のAl合金、例えば5083及び6082、及び2XXX系のAl合金の溶接に好適であり、それらの大部分が常用の工具鋼を用いて溶接することが不可能である。本発明の工具は、全てのアルミニウム合金を溶接するのに適している一方で、一部のこれらの合金の摩擦撹拌接合にとってあまり費用のかからない選択肢である。本発明の材料は、7XXX系の硬質アルミニウム合金により好適である。ルテニウムめっきされたモリブデン工具は、1/2インチ厚さのアルミニウム7XXX系を、20回を上回るプランジを用いて20mを上回る距離について溶接することができる。
【0042】
故に、付加的な態様において、本発明は、本発明の工具を摩擦撹拌接合又は摩擦撹拌成形することにより溶接されている物品を提供する。本発明の工具は、鋼、超合金及びアルミニウムシート又はアルミニウムプレートを一緒に、前記工具材料の破損なく、少なくとも10m、一部の場合に、少なくとも15m、及び一部の場合に、少なくとも20mについて溶接することができる。
【実施例】
【0043】
次の例は、本発明を説明するために過ぎず、かつ本発明を決して限定するものとして解釈されるものではない。
【0044】
例1〜5において、5つの1″呼び直径のタンタル10%タングステン合金の撹拌溶接工具(ピン及びショルダーの双方)を、その際1つは表面処理を有さず、かつ他の4つは多様な表面処理を有し、1/2インチ厚さの12% Cr鋼(UNS S41003)を溶接するそれらの能力について評価した。溶接速度は公称的に毎分3.5″であった。全ての試行において、商業的に入手可能なタンタル10%タングステンロッド(ASTM B364グレードR05255、H.C.Starck Inc.から入手可能)を、当業者に知られているような、炭化タングステン工具及び塩素化炭化水素潤滑剤を用いる、常用の切削加工技術、例えばターニング及びミリングを使用して、必要とされる工具プロフィールに切削加工した。必要とされるプロフィールへの切削加工後に、こうして製造された工具は、前記工具のピン及びショルダー部の双方とも、表面耐久性及び硬さを改善するために、以下により詳細に記載される多様な表面工学法により表面処理した。
【0045】
例1 − 処理なし
この工具を、他の全ての工具のための参考として評価した。パイロットホールを前記鋼中に穴あけし、かつ"溶接"を、いずれの保護雰囲気を使用せずに実施した。前記工具は、1200℃を超える温度に達したが、しかし、おそらくその場で形成される保護酸化タンタル層のために、発煙は起こらなかった。500mm後に停止した、溶接部は、極めて滑らかであったが、しかし工具摩耗は過剰であり、その際に先端部は完全に侵食された。先端部及びショルダーの双方とも摩耗が生じた。この工具は、溶接の前及び後の双方とも、図3に示されている。
【0046】
例2 − 浸炭窒化
浸炭窒化は、前記工具を約1,000℃に約10分、窒素雰囲気中で封入された容器中で加熱することにより達成された。前記工具をついで、炭素、炭酸ナトリウム及び糖みつ(Kasenit、Dacar Tools Limited, UKから入手可能)を含有する表面硬化粉末と3〜4回接触させた。前記工具を、同様に窒素雰囲気下に冷却した。前記試料の表面は、白い脆い堆積物でコーティングされ、これは容易に掻き取られた。これは、表面層を約100μmの深さで炭化タンタルに変換し、かつ硬さを約200Hv (300)(ビッカース硬さ数)から約1000Hv (300)へ増加させた。一部の酸化が生じ、かつ直径はかなり減少したが、しかし前記工具は硬く黒いコーティングを獲得した。直径の減少のために、前記工具をコレット中で中央に保持するためにシムを使用することが必要であった。極めて滑らかな溶接部が生じた。先端部の摩耗があったが、しかしショルダーは、あるにしても殆ど摩耗を示さなかった。この工具は図4に示されている。
【0047】
例3 − 窒化
工具を、管型炉中で窒素雰囲気下に、850℃で2・1/2時間加熱し、200℃で30分間冷却し、かつ室温に冷却されるまで大気に30分間さらした。このプロセスを、さらに2回繰り返したが、しかし850℃で各回ほぼ30分間保持した。それぞれ加熱/冷却サイクル後に、最大硬さが達成されるまで硬さを測定した。これは1000〜1300Hv(300)の範囲内の表面硬さを生じさせた。故に、前記工具を全部で4時間にわたり850℃で硬化させた。先端部は一部の摩耗を示したが、しかし、これは依然として一般的に無傷のままであり、かつ溶接部は極めて滑らかであった。この工具は図5に示されている。
【0048】
例4 − シリサイド化
酸化保護は、構成要素表面への二ケイ化タンタルの層の施与により達成された。そのような層を>1000℃に加熱する際に、前記層の分解は、二酸化ケイ素、石英として知られるガラスの形の遊離を生じ、これは表面を流れ、それにより表面を密閉し、かつ酸化が生じるのを防止した。前記処理は、構成要素を四フッ化ケイ素ガス中で密閉されたレトルト中で約5時間の期間にわたって約1100℃で加熱することにより達成され、それにより、二ケイ化タンタルの層が前記表面上に約125μmの深さに堆積する。このコーティングは、前記構成要素表面と一体であり、化学的に結合され、かつそれと結合される。前記コーティングプロセスの間に、前記材料は水素を吸収し、かつ1250℃で4時間、ガス抜きすることにより水素の脆化作用を除去することが必要である。前記コーティングは、50μmの全ての寸法の増加を生じさせるので、こうして処理されるべき構成要素の切削加工において考慮された。
【0049】
この工具により製造された溶接部は、適度に滑らかであったが、しかし初期溶接圧力は過剰であり、その際に前記工具は、鋼表面中へ溝掘りを引き起こした。溶接した後に、前記工具の先端部は完全に消失したが、しかし先端部の周囲にクラッキングの形跡があった。水素が、ガス抜き処理により完全に除去されていなかったことが考えられる。ガス抜き後に、残存水素は2ppm未満であるべきである。前記ショルダー及び溝(groove)は、良好な条件のままであった。この工具は図6に示されている。
【0050】
例5 − 酸窒化アルミニウムコーティング
酸窒化アルミニウムの3μmコーティングを、マグネトロンスパッタリングにより、Teer Coatings、UKで、標準装置を用いて施与した。前記工具を、アセトン中で超音波浴中で15分間清浄化し、ついで大気中で空気乾燥させた。前記工具をマグネトロンチャンバ(アルゴン雰囲気)中に置いた後に、チャンバを<3×10-5トルにポンプ排気した。初期光プラズマエッチングを、300Wで10分間実施した。酸窒化Alコーティングをついで、Alターゲットを使用し、かつ前記チャンバ中のO2及びNガスの量を制御することにより、施与した。
【0051】
この工具は、外観が明るい黒色であった。パイロットホールを、溶接する前に通常の方法で前記鋼中に穴あけしたが、しかし前記ホールは、前記工具のためには大きすぎ、故にボイドは最初に溶接部中へ引きずられた。溶接トラバース速度を落として材料によりボイドを堆積させかつ充填させ、引き続き通常の速度に増加させることにより、前記問題は解消された。シリサイドコーティングされた工具を用いて生じたように、先端部は裂けなかったけれども、摩耗は依然として著しかった。前記工具の酸化は明白であった。この工具は図7に示されている。
【0052】
全ての場合に、先端部の摩耗又は破壊は生じたが、しかし前記ショルダーは無傷のままであり、かつ材料の堆積(build up)もなかった。ショルダー領域及び溝の良好な品質は、滑らかな溶接表面を提供した。最も滑らかな溶接部は、浸炭及び窒化された工具により生じた。
【0053】
例6 − Ru 3μmで電気めっきされたソリッドなMo
商業的なグレードの粉末冶金モリブデンロッドから製造され、かつ45mmショルダー直径、14〜10mmプローブ直径のベースチップ及び12mmプローブ長さ(ほぼ1/2インチ未満)を有するソリッドなモリブデン工具を製造した。ルテニウム3μmを前記工具のバルク上へ電気めっきし、850℃で1〜2時間焼結した。
【0054】
直径10.4mmのパイロットホールを、A17075シート中に穴あけし、かつ前記工具を、回転速度に上昇させ、かつゆっくりと前記ホール中へ下ろした。機械パラメーターは次の通りであった:312rpm、1.6mm/s及び下向きの力50〜55kN。
【0055】
温度は、ショルダーのリアで520℃及びリーディングエッジで620℃に達した。約750mmの後に最初の操作の間に前記機械は不具合を起こし、かつ回転速度及び線速度の双方とも劇的に増加した。前記工具を直ちに引っ込めた。目立って、前記工具は、影響を受けていないように見え、続けて20回のプランジ後に20数メートルを溶接した。再び、著しい摩耗は観察されなかった。図8は、5回のプランジ及び溶接4.75m後の工具を示す。
【0056】
例7 − ソリッドなLaW工具
30mmショルダー直径、10.75〜7.7mmプローブ直径のベースチップ及び10mmプローブ長さ(ほぼ1/2インチ未満)を有するソリッドなLaW(La2O3 1〜2%)工具を、1/2インチ厚さの12% Cr鋼を溶接するのに使用した。機械パラメーターは625rpm、2.9mm/s及び下向きの力25〜30kNであった。ターゲット長さは1mであった。この工具は、鋼中の数メートルの距離を成功裏に溶接し、かつ見掛けの摩耗の徴候を示さなかった。溶接部の表面仕上げは、LaWで予測されたほど良くなかったが、けれども溶接部は本質的に良好であった。
【0057】
例8 − Ta10Wショルダー及びLaWピン
Ta10Wのショルダー及びLaWのピン(La2O3 1〜2%)を有する工具を、例2に記載されたように浸炭窒化し、かつ1/2インチ厚さの12% Cr鋼を溶接するのに使用した。機械パラメーターは次の通りであった:625rpmの回転速度、32kN負荷、2mm/sec(最大2.5)の溶接線速度及び12.5 パイロットホール。見かけの摩耗又はひずみは、20m及び20回のプランジ後に観察されなかった。溶接された鋼の写真は、図9及び10に提供される。図10は、接合部のミクロ組織の断面図である。溶接されるシートの下に示され、かつ溶接されない、316グレードステンレス鋼プレートを、溶接床を保護するために前記材料の真下に置いた。
【0058】
例9 アルミニウム摩耗試行
MP159(登録商標)(Timkin Latrobe Steel of Latrobe, PAから入手可能なニッケル−コバルト−クロム合金)を含んでなる工具(ショルダー及びピン)を、1/2インチ厚さのA17075のメートル試験プレートに沿って最初の試行のために使用した。接地条件が確立した後に、トラバースは1.5mm/sec、ついで2mm/secに上昇され、ついでトラバース速度が2.5mm/secに増加されたので、前記工具はもはや、プレートに沿って押し進めることはできなかった。2.4mm/secで停止し、その際に長さがほぼ500mmを上回って達していたに過ぎなかった。前記プローブは無傷のままであった。MP159(登録商標)を用いるさらなる試行は再び、約600mm長さの不完全な溶接部を生じた。前記プローブは無傷のままであった。
【0059】
ソリッドなMo工具(ショルダー及びピン)を用いる比較試行は、同じレジメを完了し、かつメートル摩耗試験の全長を、十分に前記機械の能力の範囲内で容易に完了した。表面仕上げは、通常とは異なっていたが、しかし良好に見えた。前記プローブは無傷のままであった。
【0060】
母材材料への工具材料の摩擦継手(friction coupling)が、無視できない結果を有することが発見された。ESAB機械上でのより早い試行から採用された計装チャートは、この観察された継手結果を支持するさらなる証拠を与えた。
【0061】
同じ工具ジオメトリー及び同じプロセスパラメーターを与えて、Mo工具上のトルクは、MP159(登録商標)工具と比較して6.7%高く;Mo工具上の下向きの力はMP159(登録商標)工具よりも27%小さく;かつMo工具上の前方の横向きの力は、MP159(登録商標)工具よりも10%小さかったことが確定された。
【0062】
本発明の特別な実施態様は、説明の目的のために前記で記載されており、当業者には、本発明の詳細の多数の変更が、添付された特許請求の範囲に定義されたように、本発明から逸脱することなくなされることができることは明らかである。
【符号の説明】
【0063】
10 先行技術の摩擦撹拌接合装置、 20 本体、 40 ショルダー部、 50 ピン部、 60 母材、 2a、2b 工具、 2c、2d、2e、2f ショルダー部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦撹拌接合又は摩擦撹拌成形用の工具であって、
前記工具はショルダー部及び場合によりピン部を含んでなり、前記ショルダー部は、少なくとも60質量%及び100質量%までのタングステン、モリブデン、タンタル、ニオブ又はハフニウムを含んでなり、残部は合金材料であり、
前記工具の少なくとも一部が、少なくとも1つの表面コーティング又は表面処理を有している
ことを特徴とする、摩擦撹拌接合又は摩擦撹拌成形用の工具。
【請求項2】
ショルダー部が、少なくとも85質量%及び100質量%までのタングステン、モリブデン、タンタル、ニオブ又はハフニウムを含んでなり、残部が合金材料である、請求項1記載の工具。
【請求項3】
ショルダー部が、タングステンで合金化された、タンタル、ニオブ又はハフニウムである、請求項1記載の工具。
【請求項4】
ショルダー部が、タンタル、ニオブ又はハフニウム85〜99質量%及びタングステン1〜15質量%を含んでなる、請求項3記載の工具。
【請求項5】
ショルダー部が、酸化ランタンで合金化されたタングステンである、請求項1記載の工具。
【請求項6】
溶接工具のショルダー部が含んでなる材料とは、化学組成、ミクロ組織及び/又は加工の点で異なる材料を含んでなるピン部を有している、請求項1記載の工具。
【請求項7】
ピン部が、ASTM法E112により測定される、ASTM 8の又はより微細な粒度を有する、請求項6記載の工具。
【請求項8】
ピン部が、モリブデン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、タンタル、レニウム、ニオブ、イリジウム、バナジウム、金属マトリックス複合体、これらのいずれかの合金、炭化物及び酸化物、及びそれらの組合せからなる群から選択される1つ又はそれ以上の材料を含んでなる、請求項6記載の工具。
【請求項9】
ピン部が、タングステンと、ランタン、ハフニウム、ジルコニウム、及びこれらの組合せからなる群から選択される元素の酸化物及び/又は炭化物とを含んでなる、請求項8記載の工具。
【請求項10】
ピン部が、前記酸化物及び/又は炭化物0.01〜5質量%を含んでなり、残部がタングステンである、請求項9記載の工具。
【請求項11】
ショルダー部が、タンタル、ニオブ又はハフニウム85〜99質量%及びタングステン1〜15質量%を含んでなり、かつピン部が、ランタン、ハフニウム、ジルコニウム及びそれらの組合せからなる群から選択される元素の酸化物及び/又は炭化物0.01〜5質量%を含んでなり、その際に前記ピンの残部がタングステンである、請求項1記載の工具。
【請求項12】
ショルダー部がシリサイドコーティングを有し、かつピン部が炭化ハフニウムのコーティングを有する、請求項11記載の工具。
【請求項13】
ショルダー部がシリサイドコーティングを有し、かつピンが浸炭されている、請求項11記載の工具。
【請求項14】
ショルダー部がモリブデンである、請求項1記載の工具。
【請求項15】
モリブデンのピンを有する、請求項14記載の工具。
【請求項16】
表面コーティングがルテニウムコーティングである、請求項14記載の工具。
【請求項17】
ルテニウムコーティングが、厚さ0.1〜10μmである、請求項16記載の工具。
【請求項18】
Ta10W、La2O3W、WRe又は繊維強化金属マトリックス複合体の1つを含んでなるピンを有する、請求項1記載の工具。
【請求項19】
コーティングが溶射コーティングである、請求項1記載の工具。
【請求項20】
コーティングが、複合コーティング及び/又は多層コーティングである、請求項1記載の工具。
【請求項21】
表面処理が、レーザーショックピーニングである、請求項1記載の工具。
【請求項22】
表面処理が表面硬化である、請求項1記載の工具。
【請求項23】
表面硬化処理が、浸炭、浸炭窒化又は窒化である、請求項22記載の工具。
【請求項24】
表面コーティング又は表面処理が、表面硬化、シリサイドコーティング、電気めっき及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1記載の工具。
【請求項25】
少なくとも2つの表面処理及び/又は表面コーティングをその上に有する、請求項1記載の工具。
【請求項26】
鋼の溶接における使用のための、請求項1記載の工具。
【請求項27】
アルミニウム及び/又はアルミニウム合金の溶接における使用のための、請求項1記載の工具。
【請求項28】
アルミニウム合金が、2XXX又は7XXX系のアルミニウム合金である、請求項27記載の工具。
【請求項29】
銅及び/又は銅合金の溶接における使用のための、請求項1記載の工具。
【請求項30】
チタン及び/又はチタン合金の溶接における使用のための、請求項1記載の工具。
【請求項31】
少なくとも1つの溶接された要素を含んでなる物品であって、
溶接された要素が、摩擦撹拌接合された領域を含んでなり、
前記溶接領域が、請求項1記載の工具により溶接されていることを特徴とする、物品。
【請求項32】
少なくとも1つの溶接された要素を含んでなる物品であって、
溶接された要素が、摩擦撹拌接合された領域を含んでなり、
前記溶接領域が、請求項11記載の工具により溶接されていることを特徴とする、物品。
【請求項33】
少なくとも1つの溶接された要素を含んでなる物品であって、
溶接された要素が、摩擦撹拌接合された領域を含んでなり、
前記溶接領域が、請求項12記載の工具により溶接されていることを特徴とする、物品。
【請求項34】
少なくとも1つの溶接された要素を含んでなる物品であって、
溶接された要素が、摩擦撹拌接合された領域を含んでなり、
前記溶接領域が、請求項13記載の工具により溶接されていることを特徴とする、物品。
【請求項35】
少なくとも1つの溶接された要素を含んでなる物品であって、
溶接された要素が、摩擦撹拌接合された領域を含んでなり、
前記溶接領域が、請求項16記載の工具により溶接されていることを特徴とする、物品。
【請求項36】
物品が、鋼、銅、銅基合金、コバルト基超合金、ニッケル基超合金、鉄基超合金、ニッケル−鉄基超合金、酸化物分散強化ニッケル超合金、チタン又はチタン基合金、アルミニウム及びアルミニウム合金からなる群から選択される材料を含んでなる、請求項31から35までのいずれか1項記載の物品。
【請求項1】
摩擦撹拌接合又は摩擦撹拌成形用の工具であって、
前記工具はショルダー部及び場合によりピン部を含んでなり、前記ショルダー部は、少なくとも60質量%及び100質量%までのタングステン、モリブデン、タンタル、ニオブ又はハフニウムを含んでなり、残部は合金材料であり、
前記工具の少なくとも一部が、少なくとも1つの表面コーティング又は表面処理を有している
ことを特徴とする、摩擦撹拌接合又は摩擦撹拌成形用の工具。
【請求項2】
ショルダー部が、少なくとも85質量%及び100質量%までのタングステン、モリブデン、タンタル、ニオブ又はハフニウムを含んでなり、残部が合金材料である、請求項1記載の工具。
【請求項3】
ショルダー部が、タングステンで合金化された、タンタル、ニオブ又はハフニウムである、請求項1記載の工具。
【請求項4】
ショルダー部が、タンタル、ニオブ又はハフニウム85〜99質量%及びタングステン1〜15質量%を含んでなる、請求項3記載の工具。
【請求項5】
ショルダー部が、酸化ランタンで合金化されたタングステンである、請求項1記載の工具。
【請求項6】
溶接工具のショルダー部が含んでなる材料とは、化学組成、ミクロ組織及び/又は加工の点で異なる材料を含んでなるピン部を有している、請求項1記載の工具。
【請求項7】
ピン部が、ASTM法E112により測定される、ASTM 8の又はより微細な粒度を有する、請求項6記載の工具。
【請求項8】
ピン部が、モリブデン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、タンタル、レニウム、ニオブ、イリジウム、バナジウム、金属マトリックス複合体、これらのいずれかの合金、炭化物及び酸化物、及びそれらの組合せからなる群から選択される1つ又はそれ以上の材料を含んでなる、請求項6記載の工具。
【請求項9】
ピン部が、タングステンと、ランタン、ハフニウム、ジルコニウム、及びこれらの組合せからなる群から選択される元素の酸化物及び/又は炭化物とを含んでなる、請求項8記載の工具。
【請求項10】
ピン部が、前記酸化物及び/又は炭化物0.01〜5質量%を含んでなり、残部がタングステンである、請求項9記載の工具。
【請求項11】
ショルダー部が、タンタル、ニオブ又はハフニウム85〜99質量%及びタングステン1〜15質量%を含んでなり、かつピン部が、ランタン、ハフニウム、ジルコニウム及びそれらの組合せからなる群から選択される元素の酸化物及び/又は炭化物0.01〜5質量%を含んでなり、その際に前記ピンの残部がタングステンである、請求項1記載の工具。
【請求項12】
ショルダー部がシリサイドコーティングを有し、かつピン部が炭化ハフニウムのコーティングを有する、請求項11記載の工具。
【請求項13】
ショルダー部がシリサイドコーティングを有し、かつピンが浸炭されている、請求項11記載の工具。
【請求項14】
ショルダー部がモリブデンである、請求項1記載の工具。
【請求項15】
モリブデンのピンを有する、請求項14記載の工具。
【請求項16】
表面コーティングがルテニウムコーティングである、請求項14記載の工具。
【請求項17】
ルテニウムコーティングが、厚さ0.1〜10μmである、請求項16記載の工具。
【請求項18】
Ta10W、La2O3W、WRe又は繊維強化金属マトリックス複合体の1つを含んでなるピンを有する、請求項1記載の工具。
【請求項19】
コーティングが溶射コーティングである、請求項1記載の工具。
【請求項20】
コーティングが、複合コーティング及び/又は多層コーティングである、請求項1記載の工具。
【請求項21】
表面処理が、レーザーショックピーニングである、請求項1記載の工具。
【請求項22】
表面処理が表面硬化である、請求項1記載の工具。
【請求項23】
表面硬化処理が、浸炭、浸炭窒化又は窒化である、請求項22記載の工具。
【請求項24】
表面コーティング又は表面処理が、表面硬化、シリサイドコーティング、電気めっき及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1記載の工具。
【請求項25】
少なくとも2つの表面処理及び/又は表面コーティングをその上に有する、請求項1記載の工具。
【請求項26】
鋼の溶接における使用のための、請求項1記載の工具。
【請求項27】
アルミニウム及び/又はアルミニウム合金の溶接における使用のための、請求項1記載の工具。
【請求項28】
アルミニウム合金が、2XXX又は7XXX系のアルミニウム合金である、請求項27記載の工具。
【請求項29】
銅及び/又は銅合金の溶接における使用のための、請求項1記載の工具。
【請求項30】
チタン及び/又はチタン合金の溶接における使用のための、請求項1記載の工具。
【請求項31】
少なくとも1つの溶接された要素を含んでなる物品であって、
溶接された要素が、摩擦撹拌接合された領域を含んでなり、
前記溶接領域が、請求項1記載の工具により溶接されていることを特徴とする、物品。
【請求項32】
少なくとも1つの溶接された要素を含んでなる物品であって、
溶接された要素が、摩擦撹拌接合された領域を含んでなり、
前記溶接領域が、請求項11記載の工具により溶接されていることを特徴とする、物品。
【請求項33】
少なくとも1つの溶接された要素を含んでなる物品であって、
溶接された要素が、摩擦撹拌接合された領域を含んでなり、
前記溶接領域が、請求項12記載の工具により溶接されていることを特徴とする、物品。
【請求項34】
少なくとも1つの溶接された要素を含んでなる物品であって、
溶接された要素が、摩擦撹拌接合された領域を含んでなり、
前記溶接領域が、請求項13記載の工具により溶接されていることを特徴とする、物品。
【請求項35】
少なくとも1つの溶接された要素を含んでなる物品であって、
溶接された要素が、摩擦撹拌接合された領域を含んでなり、
前記溶接領域が、請求項16記載の工具により溶接されていることを特徴とする、物品。
【請求項36】
物品が、鋼、銅、銅基合金、コバルト基超合金、ニッケル基超合金、鉄基超合金、ニッケル−鉄基超合金、酸化物分散強化ニッケル超合金、チタン又はチタン基合金、アルミニウム及びアルミニウム合金からなる群から選択される材料を含んでなる、請求項31から35までのいずれか1項記載の物品。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2010−520810(P2010−520810A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525128(P2009−525128)
【出願日】平成19年8月15日(2007.8.15)
【国際出願番号】PCT/IB2007/004537
【国際公開番号】WO2008/102209
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(509051381)ハー.ツェー.スタルク リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck Ltd.
【住所又は居所原語表記】Wiltshire, United Kingdom
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月15日(2007.8.15)
【国際出願番号】PCT/IB2007/004537
【国際公開番号】WO2008/102209
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(509051381)ハー.ツェー.スタルク リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck Ltd.
【住所又は居所原語表記】Wiltshire, United Kingdom
【Fターム(参考)】
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