摩擦点接合装置の回転工具処理方法およびその処理装置
【課題】 回転工具のショルダ部にワークの一部が凝着したとき、適切な処理を行って効率良く凝着物を除去する。
【解決手段】 複数の金属部材を重ね合わせ、回転工具16を回転させながら金属部材に押圧してスポット接合させる摩擦点接合装置の回転工具処理装置60であって、回転工具16を回転させながら金属部材に押圧する駆動手段と、回転工具16を接合位置に移動させる移動手段と、ショルダ部16bへの金属部材の凝着状態を検知する検知手段と、上記検知手段による検知信号が、所定値以上の凝着状態であることを示したとき、上記移動手段で回転工具16を処理用金属部材W3に対向して位置させ、上記駆動手段で回転工具16を回転させながらピン部16cおよびショルダ部16bを処理用金属部材W3に押圧して凝着物W1aを除去する動作を行わせる制御手段とを備えるように構成する。
【解決手段】 複数の金属部材を重ね合わせ、回転工具16を回転させながら金属部材に押圧してスポット接合させる摩擦点接合装置の回転工具処理装置60であって、回転工具16を回転させながら金属部材に押圧する駆動手段と、回転工具16を接合位置に移動させる移動手段と、ショルダ部16bへの金属部材の凝着状態を検知する検知手段と、上記検知手段による検知信号が、所定値以上の凝着状態であることを示したとき、上記移動手段で回転工具16を処理用金属部材W3に対向して位置させ、上記駆動手段で回転工具16を回転させながらピン部16cおよびショルダ部16bを処理用金属部材W3に押圧して凝着物W1aを除去する動作を行わせる制御手段とを備えるように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の金属部材を重ね合わせ、回転工具を用いて当該金属部材同士を摩擦熱でスポット接合させる摩擦点接合装置に関し、詳しくは、その回転工具に金属部材が凝着したときに適切に処理する回転工具処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のボディ等においては、軽量化等を目的として、アルミニウム合金材料等
が多く採用されるようになり、それに伴い、例えばアルミニウム合金材料からなる部材同士を接合させたり、アルミニウム合金材料からなる部材と鉄や鋼材料等からなる部材とを接合させたりする機会が多くなってきている。このような接合を溶接で行うことは困難であるため、通常はリベット接合が行われるが、このリベット接合ではコストが高くなる。
【0003】
そこで、このような接合を低コストで行うのに好適な方法として、摩擦点接合が知られている。この方法は、複数の金属部材を重ね合わせ、ショルダ部から突出するピン部を備えた回転工具を回転させながらピン部およびショルダ部を金属部材に押圧し、摩擦熱でこの金属部材を軟化させ、塑性流動を生じさせて当該金属部材同士をスポット接合させるものである。この接合は、ワーク(接合対象の金属部材)を融点以下の温度で固相接合(溶融を伴わない固相状態のままの接合)するものである。
【0004】
例えば特許文献1には、亜鉛メッキ鋼板とアルミニウム板とを摩擦点接合させる方法および装置が示されている。この特許文献1に示されるように、通常、回転工具は略円柱状であり、軸まわりに回転駆動させられる。そしてその略円柱の端部に形成されたショルダ部をワークに押圧するようになっている。ショルダ部の中心部には、微小突起であるピン部が形成されている。
【特許文献1】特開2005−34879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えばワークが自動車の各種パネル等である場合、その接合点は多数であるため、連続して摩擦点接合を行うことが効率的である。しかしながら、摩擦点接合を多数回繰り返すうちに、ショルダ部にワークの一部が凝着(付着)してしまう場合がある。例えば特許文献1に示されるような異種金属同士の接合の場合、ショルダ部は、ピン部を除く中央部がやや凹んだ形状である(環状凹部が形成されている)ことが好ましいが、このような場合、特にショルダ部への凝着が起こり易くなる。
【0006】
ショルダ部、特にピン部の周囲に多くの凝着物がある状態で摩擦点接合を行うと、接合時の回転工具の回転振れが大きくなる。そのため、接合品質が低下する虞がある。また、回転工具やその駆動機構、或いは周囲の治具等が損傷する虞がある。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑み、回転工具のショルダ部にワークの一部が凝着したとき、適切な処理を行って効率良く凝着物を除去することができる摩擦点接合装置の回転工具処理方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明は、複数の金属部材を重ね合わせ、ショルダ部から突出するピン部を備えた回転工具を回転させながら上記ピン部および上記ショルダ部を上記金属部材に押圧し、摩擦熱で上記金属部材を軟化させ、塑性流動を生じさせて当該金属部材同士をスポット接合させる摩擦点接合装置の回転工具処理方法であって、少なくとも1回の接合を行った後、上記ショルダ部への上記金属部材の凝着状態を検知手段で検知する凝着状態検知工程と、上記凝着状態検知工程において、上記凝着状態が所定値以上であると検知されたときに実行される凝着物除去工程とを含み、上記凝着物除去工程は、上記回転工具を回転させながら上記ピン部および上記ショルダ部を処理用金属部材に押圧して凝着物を除去するものであることを特徴とする。
【0009】
また請求項2に係る発明は、複数の金属部材を重ね合わせ、ショルダ部から突出するピン部を備えた回転工具を回転させながら上記ピン部および上記ショルダ部を上記金属部材に押圧し、摩擦熱で上記金属部材を軟化させ、塑性流動を生じさせて当該金属部材同士をスポット接合させる摩擦点接合装置の回転工具処理装置であって、上記回転工具を回転させながら上記ピン部および上記ショルダ部を上記金属部材に押圧する駆動手段と、上記回転工具と上記駆動手段とを備え、上記回転工具を接合位置に移動させる移動手段と、少なくとも1回の接合を行った後、上記ショルダ部への上記金属部材の凝着状態を検知する検知手段と、上記検知手段による検知信号が、所定値以上の凝着状態であることを示したとき、上記移動手段で上記回転工具を処理用金属部材に対向して位置させ、上記駆動手段で上記回転工具を回転させながら上記ピン部および上記ショルダ部を該処理用金属部材に押圧して凝着物を除去する凝着物除去動作を行わせる制御手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また請求項3に係る発明は、請求項2記載の摩擦点接合装置の回転工具処理装置において、上記検知手段は、上記ショルダ部と略当接可能に配置された検知プレートと、上記ショルダ部を上記検知プレートに略当接させたときの該検知プレートの変位量を検知する変位センサとを備え、上記検知プレートは、上記ショルダ部を該検知プレートに略当接させたとき、上記ショルダ部への上記金属部材の凝着状態に応じた変位量で変位するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
また請求項4に係る発明は、請求項2または3記載の摩擦点接合装置の回転工具処理装置において、上記ショルダ部には、上記ピン部を囲むような環状凹部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
また請求項5に係る発明は、請求項2乃至4の何れか1項に記載の摩擦点接合装置の回転工具処理装置において、上記移動手段はロボットであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によると、以下説明するように、回転工具のショルダ部にワークの一部が凝着したとき、適切な処理を行って効率良く凝着物を除去することができる。
【0014】
金属材料は比較的強固に凝着するため、純機械的な除去方法、例えばタガネ等を用いて除去する方法では除去が困難である。また除去できたとしても、回転工具の損傷を伴う懸念が大である。
【0015】
しかし本発明によれば、凝着物除去工程を実行することにより、凝着した金属材料(凝着物)を軟化させ、塑性流動を起こさせて、これを処理用金属部材に転写することにより、回転工具を損傷することなく容易に凝着物を除去することができる。
【0016】
また本発明によれば、凝着物除去工程を、所定値以上の凝着が検知された好適なタイミングで行うことができる。すなわち、凝着物除去工程の実行頻度を必要最小限とすることにより、効率化が図られる。
【0017】
このように本発明によれば、回転工具のショルダ部にワークの一部が凝着したとき、適切な処理を行って効率良く凝着物を除去することができる。そして常に凝着状態を所定値以下に保つことにより、接合時の回転工具の回転振れが抑制されるので、接合品質の低下や、回転工具をはじめとする各部の損傷を効果的に抑制することができる。
【0018】
請求項2の発明によると、当該摩擦点接合装置の回転工具処理装置は、請求項1について記した効果と同様の効果を奏する。
【0019】
請求項3の発明によると、検知プレートを介してショルダ部への凝着状態を検知することにより、凝着状態を検知プレートの変位に変換して変位センサに検知させることができる。従って容易に凝着状態を検知することができる。
【0020】
またショルダ部の凝着状態を適宜増幅して検知プレートが変位するように構成することが容易にできるので、簡単な構造で検知精度を高めることができる。
【0021】
請求項4の発明によると、比較的凝着の起こり易い環状凹部を有する回転工具に対して特に効果的に適用することができる。
【0022】
請求項5発明によると、移動の自由度が高いロボットを移動手段とすることにより、凝着状態を検知する動作や凝着物除去動作を容易に行わせることができる。またこれらの動作を、ワークの摩擦点接合動作の合間に適宜組み込んで、全体の動作を効率良く行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。まず、本発明に係る摩擦点接合装置1について説明する。
【0024】
図1は摩擦点接合装置1の概略構成図である。この摩擦点接合装置1は、主たる構成要素として、接合ガン10と、該接合ガン10を手首に備えるロボット40(移動手段)とを含んでいる。このロボット40としては、汎用される6軸垂直多関節型ロボットが好適に用いられる。
【0025】
ロボット40は、ハーネス51を介して制御盤50と接続されている。また接合ガン10は、ハーネス52,54.55及び中継器53を介して制御盤50と接続されている。制御盤50内には制御ユニット50a(制御手段)が内蔵されており、ロボット40を制御して、接合ガン10が予め設定された所定の位置や傾きとなるように動作させる。また制御ユニット50aは、接合ガン10に搭載された、後述する押圧用モータ14および回転用モータ15(図2参照)を制御して、回転工具16および受け具17からなる接合用工具18に、予め設定された所定の動作を行わせる。
【0026】
図2は接合ガン10の正面図であり、図3は接合ガン10の側面図である。これらの図に示すように、接合ガン10は、ロボット40への取付ボックス11と、この取付ボックス11の下面から下方に延びるL字状のアーム12と、このアーム12の上方で取付ボックス11の側面に取り付けられた本体ケース13と、ハーネス54に接続された押圧用モータ14と、ハーネス55に接続された回転用モータ15とを有している。
【0027】
本体ケース13の下端部には、接合用工具18の一方である回転工具16が設けられている。一方、アーム12の先端部には、回転工具16と該回転工具16の軸心X方向に対向して、接合用工具18の他方である受け具17が設けられている。
【0028】
摩擦点接合は、この回転工具16と受け具17とでワーク(重ね合わせた複数の金属部材)を挟むようにして行われる。詳しくは、ワークの一方の面を受け具17の先端に当接させて受け、ワークの他方の面に対し、後述の如く、軸心X回りに回転する回転ツール16の先端部を押圧することによって摩擦点接合が行われるように構成されている。
【0029】
図4は、本体ケース13の内部構造を示す断面図であり、図5は、図4のV−V線断面図である。本体ケース13の内部には、互いに平行に上下方向に延びるネジ軸(昇降軸)24及びスプライン軸(回転軸)25がそれぞれの軸心回りに回転自在に設けられている。これら両軸24,25の上端部は、上蓋部材21を貫通して上部カバー22内に至り、ここで両軸24,25に従動プーリ26,27がそれぞれ組み付けられている。上蓋部材21及び上部カバー22は、図5に示すように、本体ケース13の上部から該本体ケース13の側方に張り出しており、上蓋部材21の該張出し部の下面に押圧用モータ14及び回転用モータ15が固定されている。これら両モータ14,15の出力軸14a,15aの先端部(上端部)は、上蓋部材21を貫通して上部カバー22内に至り、ここで両出力軸14a,15aに駆動プーリ14b,15bがそれぞれ組み付けられている。そして、上記各駆動プーリ14b,15bと従動プーリ26,27との間には、駆動伝達用のベルト28.29がそれぞれ巻き掛けられており、押圧用モータ14の回転により、ネジ軸24が図5のA方向(down方向)又はB方向(up方向)に回転駆動され、回転用モータ15の回転により、スプライン軸25が図5のC方向に回転駆動されるようになっている。
【0030】
図4に戻って説明を続ける。ネジ軸24のネジ部24aには、昇降ブロック31が螺合されておりスプライン軸25のスプライン部25aには、回転筒体35がスプライン結合されている。この回転筒体35は、昇降ブロック31に結合部材32を介して一体結合された昇降筒体33の内部に回転自在に設けられている。スプライン軸25、昇降筒体33及び回転筒体35は、互いに同心状に配置されている。なお、以下、昇降ブロック31、結合部材32及び昇降筒体33の一体物を昇降体30という。
【0031】
本体ケース13の下面には、円筒状の下方突出部13aが形成されており、この下方突出部13aの下端部には下部カバー23が設けられている。上記昇降筒体33及び回転筒体35の下端部は、この下部カバー23を貫通して下方に突出している。そして、内側にある回転筒体35の方が、外側にある昇降筒体33よりも長く下方に突出して、その回転筒体35の下端部に取付部材36が固着されている。この取付部材36に対し回転ツール16の先端部と反対側の端部である基端部が着脱自在(交換自在)に取り付けられている。この取り付けられた回転工具16の軸心Xは、上記スプライン軸25の軸心の延長線上にある。なお、下部カバー23と昇降筒体33の下端部との間には、昇降筒体33の外表面を本体ケース13の外部の汚染等から保護する伸縮自在の蛇腹部材34が配設されている。
【0032】
なお、スプライン軸25と上蓋部材21との間には軸受25bが、昇降筒体33と回転筒体35との間には軸受35aが、昇降筒体33と取付部材36との間には軸受33aが、それぞれ設けられている。
【0033】
また、押圧用モータ14としては、回転角の制御及び検知が容易なサーボモータが好ましく、回転用モータ15としては、同じく回転角の制御及び検知が容易なサーボモータ、又は回転速度の制御が容易なインダクションモー夕が好ましい。これら押圧用モータ14および回転用モータ15は、回転工具16(詳しくは、図6に示す回転工具16のショルダ部16bおよびピン部16c)を回転させながらワークに押圧する駆動手段を構成している。
【0034】
図6は回転工具16の先端部の拡大図である。この回転工具16の先端部は、円柱状の胴体部16aの下端面(その輪郭は円形である)とされた、ワークと対向するショルダ部16bと、回転工具16の軸心X上に位置し、かつショルダ部16bから該ショルダ部16bよりも小径でワークに対向する側に所定長さhだけ突出するピン部16cと、該ピン部16cの周囲におけるショルダ部16bに設けられた環状凹部16dとで構成されている。当実施形態では、この環状凹部16dの底面が、径方向外側に向かって凹み量が小さくなるように傾斜しており、環状凹部16dは、回転工具16の軸心Xを中心とする円錐形状に凹んでいる。この回転工具16の具体的寸法としては、例えば、ショルダ部16bの直径D1が10mm、ピン部16cの直径D2が2mm,ピン部16cの突出長さhが0.3mm〜0.35mm、環状凹部16dの底面のショルダ部16bに対する傾斜角θが5°〜7゜とされる。
【0035】
但し、回転工具16の最適形状は一義的に決定されるものではなく、ワークの材質、厚さ、重ね合わせるワークの枚数等、用途に応じて異なる。従って、用途別に好適な複数種類の回転工具16を準備しておき、用途に応じて適宜交換して用いるようにするのが望ましい。図6に示すような環状凹部16dを有する回転工具16の形状は、特に融点の異なる異種の金属部材を接合する際に用いると好適である。
【0036】
次に、摩擦点接合装置1の摩擦点接合時の動作について説明する。
【0037】
まず、回転工具16の昇降動作および回転動作について説明する。なお、回転工具16の軸心Xの向きは、ロボット40によって自在に変化させることができるが、説明の都合上、回転工具16を受け具17に接近させる方向の動作を下降、受け具17から遠ざける方向の動作を上昇と言う。
【0038】
押圧用モータ14の回転によりネジ軸24が図5のA方向に回転駆動されたときには、昇降体30がネジ部24aとの螺合によって下降し、昇降体30における昇降筒体33に内装された回転筒体35及び該回転筒体35の下端部に取付部材36を介して取り付けられた回転工具16が一緒に下降する。逆に、押圧用モータ14の回転によりネジ軸24が図5のB方向に回転駆動されたときには、昇降体30がネジ部24aとの螺合によって上昇し、回転筒体35及び回転工具16が一緒に上昇する。このことで、押圧用モータ14は、回転工具16を、後述の如く回転工具16と受け具17との間に位置するワークに対して、該回転工具16の軸心X方向に進退移動させるように構成されていることになる。また、押圧用モータ14は、回転工具16を上記ワークに対し押圧させるように構成されているとともに、該押圧時の加圧力を、押圧用モータ14へ供給する電流により変更することができるようになっている。
【0039】
また、回転用モータ15の回転によりスプライン軸25が図5のC方向に回転駆動されたときには、上記のような昇降体30の動きとは独立して、回転筒体35がスプライン部25aとのスプライン結合によってスプライン軸25と同じC方向に回転し、回転筒体35に取り付けられた回転工具16も、該回転工具16の軸心X回りにスプライン軸25と同じC方向に回転する。また、回転用モータ15は、回転工具16の軸心X回りの回転速度を、回転用モータ15へ供給する電流により変更することができるようになっている。
【0040】
次に、上記回転工具16の昇降動作を伴うワークの接合動作について説明する。
【0041】
図7は、第1金属部材W1と第2金属部材W2とを摩擦点接合する際の概略図である。第1及び第2金属部材W1,W2は、例えば自動車のボディを構成する部材であり、ここでは第1金属部材W1がアルミニウム合金材料(アルミニウム合金板)からなり、第2金属部材W2が鋼材料(鋼板)からなるものとする。また第2金属部材W2の表面には、防錆対策として亜鉛メッキ層Z(図8参照)が施されているものとする。
【0042】
摩擦点接合装置1により第1金属部材W1と第2金属部材W2とを摩擦点接合するには、先ず図7に例示するように、第1金属部材W1と第2金属部材W2との接合部(図示の例では5箇所の接合部P)を含む部分を重ね合わせ、このワークを図示しない把持手段によって把持して固定する。
【0043】
続いて、ロボット40の作動により、接合ガン10を、上記ワークにおいて接合しようとする複数の接合部Pの1つに近接させ、回転工具16が接合部Pの第1金属部材W1側に位置し、受け具17がその接合部Pの第2金属部材W2側に位置するようにする。次いで、接合ガン10全体を第1金属部材W1側に移動させて、受け具17の先端を第2金属部材W2の下面に当接させる。
【0044】
そして、上記受け具17の先端が第2金属部材W2に当接した状態で、上記の下降動作と回転動作とにより、回転工具16を回転させつつ第1金属部材W1に押し当て、接合させる。この接合の工程は、詳しくは初期移動工程、第1押圧工程、第2押圧工程、第3押圧工程を順に行うように設定されている。
【0045】
まず初期移動工程では、回転工具16を降下させて第1金属部材W1の近接位置である初期位置に移動させる。この初期位置は、回転工具16のピン部16cの先端が第1金属部材W1に対し僅かに離れるような位置である。この初期移動工程では、回転工具16を回転させるようにしても、回転させないようにしても良いが、当実施形態では、次の第1押圧工程へ直ぐに移行できるように、続く第1押圧工程と同じ回転速度(第1回転速度)で回転させるようにしておく。
【0046】
続く第1押圧工程では、図8に示すように、回転工具16を第1回転速度で回転させながら、押圧用モータ14により、上記初期移動工程における回転工具16の移動抵抗値よりも大きい第1加圧力で、回転工具16のショルダ部16b及びピン部16cを、第1所定時間の間、第1金属部材W1に対し押圧接触させる。
【0047】
なお、回転工具16の第1金属部材W1に対する加圧力は、押圧用モータ14へ供給する電流値によって決まるため、上記制御ユニット50aは、押圧用モータ14へ供給する電流を、上記第1押圧工程では、上記第1所定時間の間、上記第1加圧力に対応する電流値になるように制御する。また、回転工具16の回転速度は、回転用モータ15へ供給する電流値によって決まるため、上記制御ユニット50aは、回転用モータ15へ供給する電流を、上記第1押圧工程(及び初期移動工程)では、上記第1回転速度に対応する電流値になるように制御する。
【0048】
上記移動抵抗値は、上記ネジ軸24や昇降体30等によって構成された、昇降筒体33(回転工具16)を移動させる機構内で生じる摩擦抵抗により決まるものであるが、この摩擦抵抗値は安定しておらず、特に可動部と固定部との間の隙間量やグリス等の影響によってばらつく。このため、上記第1加圧力が移動抵抗値以下であると、移動抵抗値の大きさによって、第1金属部材W1に第1加圧力が実際に作用するまでの時間がばらつき、第1金属部材W1に対し第1加圧力で実際に押圧する時間は、上記第1所定時間に対してかなりばらつくことになる。しかし当実施形態では、第1加圧力を上記移動抵抗値よりも大きく設定しているので、移動抵抗値の大きさに関係なく、第1押圧工程開始直後に、第1加圧力で回転工具16のショルダ部16b及びピン部16cが第1金属部材W1に対し押圧されることとなり、第1加圧力が第1金属部材W1に実際に作用する時間は上記第1所定時間と略同じになり、安定する。
【0049】
上記第1加圧力は、上記移動抵抗値のばらつき範囲の最大値よりも大きくて、2.45kN以上3.43kN以下に設定することが好ましい。また、上記第1回転速度は、1500rpm以上3500rpm以下に設定することが好ましい。さらに、上記第1所定時間は、0.2秒以上2.0秒以下に設定することが好ましい。これら第1加圧力、第1回転速度及び第1所定時間は、回転工具16が第1金属部材W1に対し、環状凹部16dの底面の一部(深さが深い軸心X側の部分)が第1金属部材W1に接触しないで、ショルダ部16bの周縁部及びピン部16cが第1金属部材W1に接触する程度に押し込まれるようにそれぞれ設定する。
【0050】
上記第1押圧工程においては、ショルダ部16bの周縁部及びピン部16cが回転ツール16の軸心X回りに回転しながら第1金属部材W1に対し押圧接触されることで、その2箇所の接触部位で摩擦熱が生じ、この摩擦熱は、ワークにおける該2箇所の接触部位の間の部分(環状凹部16dの底面が接触していない部分)、延いては接合部P全体に速やかに拡散され、第1金属部材W1におけるショルダ部16bに対向する部分(接合部P)全体が良好に軟化する。また、第2金属部材W2の表面に施されている亜鉛メッキ層Zも、接合部Pにおいて軟化する。このように、上記第1加圧力、第1回転速度及び第1所定時間を、上記好ましい範囲に設定することで、第1金属部材W1を剪断破壊させることなく良好に軟化させることができるようになる。
【0051】
またこの第1押圧工程の初期段階において、ショルダ部16bよりも所定長さhだけ突出したピン部16cが、ショルダ部16bよりも先に第1金属部材W1に当接する。このように細い径のピン部16cを最初に当接させることにより、回転工具16の位置決めが良好になされ、回転振れが効果的に抑制される(アンカー機能)。
【0052】
続く第2押圧工程では、図9に示すように、回転用モータ15により、回転工具16を第2回転速度で回転させながら、押圧用モータ14により、上記第1加圧力よりも大きい第2加圧力で、回転工具16のショルダ部16b及びピン部16cを、第2所定時間の間、第1金属部材W1に押し込む。
【0053】
この第2押圧工程では、加圧力が大きくなることで、回転工具16のショルダ部16b及びピン部16cが第1金属部材W1に対し徐々に深く入り込み、環状凹部16dの底面全体、つまりピン部16c及び環状凹部16dを含むショルダ部16b全体が第1金属部材W1に接触する。これに伴い、第1金属部材W1の軟化に加えて塑性流動が行われる(図では模式的に破線で塑性流動Qを示す)。この塑性流動Qにおいて、ショルダ部16bに環状凹部16dが設けられている(特に環状凹部16dが円錐形状をなしている)ことから、塑性流動する第1金属部材W1が、図の上下方向に流動して、回転工具16の直下部分(接合部P)から外側へ流出することが抑制される。また、環状凹部16dにより、第2加圧力が接合部Pに集中して、第1金属部材W1の塑性流動Qが促進される。さらに、上記両金属部材Wl,W2の接合境界面において、上記軟化した亜鉛メッキ層Zが接合部Pから押し出されることで、第2金属部材W2の新生面が露出するとともに、図示しないが、空気中の酸素により第1金属部材W1の表面に形成されている酸化被膜が接合部Pにおいて破壊されることで、第1金属部材W1の新生面が露出する。
【0054】
上記第2加圧力は、3.92kN以上5.88kN以下に設定することが好ましい。また、上記第2回転速度は、2000rpm以上3000rpm未満に設定することが好ましい。さらに、上記第2所定時間は、1.0秒以上2.0秒以下に設定することが好ましい。これら第2加圧力、第2回転速度及び第2所定時間は、回転工具16が第1金属部材W1に対し所定の挿入位置よりも深く押し込まれないようにそれぞれ設定する。この所定の挿入位置は、該挿入位置よりも回転工具16が深く入り込むと第1金属部材W1が過度に薄くなって引きちぎられるような位置である。
【0055】
上記第2押圧工程の終了により、接合部Pでの接合を終了するようにしてもよいが、当実施形態では、さらに第3押圧工程を行うようにしている。
【0056】
第3押圧工程では、図10に示すように、回転用モータ15により回転ツール16を第3回転速度で回転させながら、押圧用モータ14により、第2加圧力よりも小さい第3加圧力で、回転工具16のショルダ部16b及びピン部16cを、第3所定時間の間、第1金属部材W1に対し押圧接触させる。
【0057】
この第3押圧工程では、加圧力を第2押圧工程よりも小さくすることで、回転工具16が第1金属部材W1に対し上記所定の挿入位置よりも深く押し込まれず、第2押圧工程が終了したときの位置で押圧し続けることとなる。これにより、第1金属部材W1が過度に薄くなって引きちぎれるようなことがなくなるとともに、第2押圧工程時と同じ程度の温度が維持されて、良好な塑性流動が長時間に亘って行われる。この第3押圧工程の終了により、1つの接合部Pでの接合が終了することになる。
【0058】
上記第3加圧力は、上記第1加圧力よりも小さくて、0.49kN以上1.47kN以下に設定することが好ましい。また、上記第3回転速度は、1500rpm以上3500rpm以下に設定することが好ましい。さらに、上記第3所定時間は、0.5秒以上2.5秒以下に設定することが好ましい。これら第3加圧力、第3回転速度及び第3所定時間は、回転ツール16が第1金属部材W1に対し、第2押圧工程が終了したときの位置で押圧し続けかつ第1金属部材W1の塑性流動が生じるようにそれぞれ設定する。
【0059】
上記第3押圧工程においては、回転工具16で押し出された金属材料がバリRとなって第1金属部材W1の表面に隆起するとともに、亜鉛メッキ層Zが更に接合部Pから押し出され、また酸化皮膜が更に破壊されて、両金属部材Wl,W2の新生面の露出範囲が拡大する(図10中、×印で表示した範囲)。この結果、両金属部材の合わせ面部同士が、摩擦点接合によって固相接合され、その接合強度は安定的に高くなる。
【0060】
なお、亜鉛メッキ層Zにおける接合部Pの近傍部分には、第1金属部材W1の金属と、亜鉛メッキ層Zの金属との金属混合物層Yが生成される。
【0061】
上記1つの接合部Pでの接合が終了すると、押圧用モータ14により、ネジ軸24を図5のB方向に回転駆動させることで、回転工具16を上昇させるとともに、接合ガン10全体を回転工具16の下降方向に移動させることにより、接合用工具18をワークから離反させる。摩擦点接合が完了した後の接合部Pにおいては、図11に示すように、ワーク(第1金属部材Wl)の表面に、ショルダ部16b及びピン部16cの痕が残り、ショルダ部16bの周囲には、バリRが生じている。
【0062】
接合部Pでの摩擦点接合が完了すると、制御ユニット50aはロボット40によって接合ガン10を次の接合部Pへと移動させる。そして接合ガン10に上記と同様の動作を繰り返し行わせ、次の接合部Pでの接合を行わせる。こうして、複数の接合部Pにおいて摩擦点接合(固相接合)が順次行われる。
【0063】
ところで、複数の接合部Pでの摩擦点接合を繰り返すうち、図12に示すように、ショルダ部16b、特にピン部16cの周囲に凝着物W1aが生成することがある。凝着部W1aは、接合時に軟化し、塑性流動した第1金属部材W1がショルダ部16bに付着し、固まったものである。特にショルダ部16bに環状凹部16dが形成されている場合にこの凝着物W1aが生成し易い。
【0064】
凝着物W1aが大きくなると、第1押圧工程におけるピン部16cの上記アンカー機能が低下し、回転工具16の回転振れが大きくなる。そのため、接合品質が低下する虞がある。また、回転工具16や接合ガン10の駆動機構(例えば図4に示す軸受25b、軸受35aおよび軸受33aなど)、或いは周囲の治具等が損傷する虞がある。
【0065】
そこで当実施形態では、次に説明する回転工具処理装置60を設け、凝着物W1aを適切なタイミングで効率良く除去するようにしている。回転工具処理装置60は、主として凝着検知部70(図13参照)と凝着除去部80(図14参照)からなる。回転工具処理装置60は、ロボット40による接合ガン10の可動範囲内に設けられる。すなわち、以下に説明する回転工具処理装置60に対する回転工具16の動作は、回転工具16を接合ガン10に装着した状態で、ロボット40の動作によってなされるように構成されている。
【0066】
図13は、凝着検知部70を示す図であり、(a)は全体構成図、(b)はショルダ部16bへの凝着が殆どない場合の検知動作図、(c)はショルダ部16bへの凝着状態が所定値以上である場合の検知動作図である。
【0067】
図13(a)に示すように、凝着検知部70は、上下に延びる支柱61と、支柱61の上端付近に設けられて水平方向の軸線を有するヒンジピン65と、基端側がヒンジピン65に揺動自在に軸支されるとともに、先端側に上方への折曲部63aを有する鋼板製の検知プレート63と、検知プレート63の先端側を下方から支持する受け台73と、上下に延びて受け台73を支持する支柱71と、受け台73から上方に立設されたセンサ支持部75と、センサ支持部75の上端付近に固設されたレーザー変位センサ77と、このレーザー変位センサ77の検知信号を摩擦点接合装置1の制御ユニット50aに伝達するケーブル78とを備える。
【0068】
検知プレート63の比較的ヒンジピン65寄りに、通し穴67が穿設されている。通し穴67の径は、ピン部16cのピン径D2よりも所定値(例えば1mm)大きくなっている。
【0069】
検知プレート63はヒンジピン65を中心に揺動自在となっているので、受け台73の支持がなければ先端側が落下する。受け台73はその落下を防止するために検知プレート63を支持するものであり、通常の状態(図13(a)に示すように、回転工具16が検知プレート63から充分離れている状態。)で検知プレート63を略水平に支持する。
【0070】
なお検知プレート63は、通常の状態から検知プレート63の先端側(折曲部63a)が上方変位する方向には揺動可能である。その揺動によって折曲部63aが上方変位したとき、その上下方向の移動量を検知プレート63の変位量というものとする。
【0071】
レーザー変位センサ77は周知のセンサであるため詳細説明を省略するが、レーザー光の発光部と受光部とを備え、発光部から発したレーザー光の反射光を受光することにより、検知対象の変位を検知するものである。当実施形態では、検知プレート63の変位量が所定の判定閾値以上であるか否かを検知するセンサとしてレーザー変位センサ77を用いている。レーザー変位センサ77の発光部は、検知プレート63の変位量=0のとき、折曲部63aの上端よりもやや上方の空間に向けてレーザー光を発するように設定されている。
【0072】
次に、凝着検知部70での凝着状態検知工程および凝着状態検知動作について説明する。例えば所定回数の摩擦点接合を実行したとき等、所定の条件が成立すると、制御ユニット50aは次の接合部Pでの摩擦点接合を実行する前に凝着状態検知工程を実行する。すなわちロボット40および接合ガン10に凝着状態検知動作を行わせる。この凝着状態検知動作は、図13(a)に示すように、回転工具16のショルダ部16bを上向きにするとともに、検知プレート63の通し穴67とピン部16cとの位置を合わせた状態で回転工具16を検知プレート63に接近させる動作である(矢印AW1)。なお、このとき回転工具16を回転させる必要はない。
【0073】
図13(b)は、ショルダ部16bに凝着のない回転工具16を検知位置まで動作させた状態を示す。この検知位置は、ショルダ部16bが検知プレート63に略当接(ソフト接触)する位置である。予め凝着のない回転工具16を用いて、ロボット40(の制御ユニット50a)に検知位置を認識させるティーチングを行っておくと良い。
【0074】
ショルダ部16bに凝着がなければ、或いはごく僅かな凝着状態であれば、ショルダ部16bから突出したピン部16cは通し穴67に完全に嵌まり込む。従って図13(b)に示すように検知プレート63は変位しない(変位量=0)。
【0075】
図13(b)に示すように、検知プレート63の変位量=0のとき、レーザー変位センサ77の発光部から発せられたレーザー光79は折曲部63aに当たらず、受光部は折曲部63aからの反射光を受光しない。このとき、レーザー変位センサ77から制御ユニット50aに凝着検出信号が送られない(ケーブル78を介して凝着非検出信号を送るようにしても良い)。
【0076】
図13(c)は、ショルダ部16bのピン部16cの周囲に凝着物W1aがある場合を示す。凝着物W1aがある程度以上の量(大きさ)になると、回転工具16を検知位置まで動作させたとき、凝着物W1aが妨げとなってピン部16cか完全に通し穴67に嵌まり込まなくなる。そして凝着物W1aが検知プレート63を押し上げる。すると検知プレート63がヒンジピン65を中心に揺動し、変位する。凝着状態が著しいほど、すなわち凝着物W1aが多く大きいほど、検知プレート63の変位量は大となる。
【0077】
図13(c)は変位量=h1であって、h1>判定閾値である状態を示している。変位量h1が判定閾値(例えば6mm程度)を越えると、レーザー変位センサ77からのレーザー光79が折曲部63aに当たり、その反射光が受光部に受光される。このとき、レーザー変位センサ77から制御ユニット50aにケーブル78を介して凝着検出信号が送られる。
【0078】
以上説明したように、凝着検知部70では、ショルダ部16bへの凝着状態を検知プレート63の変位量に変換することにより、容易に凝着状態を検知することができる。
【0079】
なお、上記判定閾値を変更するには、折曲部63aの長さ(高さ)又はセンサ支持部75の高さ又はレーザー変位センサ77の設置角度等を調整すれば良い。そして、予め凝着状態と検知プレート63の変位量との関係をサンプリングしておき、少なくとも実害の発生しない凝着状態のときの変位量の範囲内で適宜判定閾値を設定すれば良い。
【0080】
ところで、図13(a)に示すように、ヒンジピン65と通し穴67との距離をL1、ヒンジピン65と折曲部63aとの距離をL2とすると、距離L1<距離L2である。このため、検知プレート63の変位量は、凝着物W1aによる検知プレート63の押し上げ量よりも大きくなる。すなわち凝着検知部70は、凝着状態を増幅して検知する増幅作用を有する。その増幅率Kは、K=L2/L1である。この増幅率Kが大きいほど凝着状態の検知精度が高められる。また増幅率Kを小さくすれば凝着検知部70を小型化することができる。そのバランスを考慮して適切な増幅率Kを設定すれば良い。
【0081】
次に、回転工具処理装置60の凝着除去部80について説明する。図14は、凝着除去部80を示す図であり、(a)は全体構成図、(b)は凝着除去動作中の作動図、(c)は凝着除去動作後の動作図である。凝着除去部80は、凝着検知部70においてレーザー変位センサ77から制御ユニット50aに凝着検出信号が送られたとき、回転工具16のショルダ部16bに凝着した凝着物W1aを除去するために設けられている。
【0082】
図14(a)に示すように、凝着除去部80は、上下に延びる支柱81と、支柱81の上端付近に設けられて水平方向に延びる受け台82と、支柱81の上端付近からさらに上方に立設されたアーム支持部83と、アーム支持部83の上端付近に設けられ、略水平方向の軸線を有する回動軸86と、回動軸86に支持されて略水平方向に延びるとともに、回動軸86まわりに回動自在とされたアーム85と、アーム85の一端に固定され、受け台82と対向する位置に設けられた押圧部87と、アーム85の、回動軸86を挟む押圧部87と反対側の端部と支柱81とを連結する油圧シリンダ84と、受け台82と押圧部87とによって挟持される処理用第1金属部材W3とを備える。
【0083】
処理用第1金属部材W3(処理用金属部材)は、第1金属部材W1と同じ材質の板、つまりアルミニウム合金材料からなる板である。その厚みは例えば2mm程度とされる。
【0084】
油圧シリンダ84の軸線は上下方向に延び、その可動軸84aの先端がアーム85の端部に接続されている。従って、可動軸84aを伸縮させることにより、アーム85を回動軸86まわりに回動させることができる。或いは回動する方向に押引することができる。
【0085】
図14(a)に示すように、受け台82と押圧部87とで処理用第1金属部材W3が挟持されているセッティング状態のとき、可動軸84aを延ばす方向に加圧力を加えることにより、アーム85を介して押圧部87には下向きの加圧力が作用する。この加圧力によって処理用第1金属部材W3が確実に固定される。
【0086】
また可動軸84aを縮める方向に力を加えることにより、アーム85を介して押圧部87に上向きの力が作用する。これにより処理用第1金属部材W3の固定状態が解除され、取り外しや交換が可能となる。
【0087】
次に、凝着除去部80での凝着物除去工程および凝着物除去動作について説明する。上記凝着検知工程において、レーザー変位センサ77から制御ユニット50aに凝着検知信号が送られると、制御ユニット50aは凝着物除去工程を実行する。すなわちロボット40および接合ガン10に凝着物除去動作を行わせる。
【0088】
凝着物除去動作は、図14(a)に示すように、ロボット40で回転工具16を処理用第1金属部材W3に対向して位置させ、次に図14(b)に示すように、押圧用モータ14および回転用モータ15で回転工具16を回転させながらショルダ部16bおよびピン部16cを処理用第1金属部材W3に押圧して凝着物を除去する動作である。この動作は、予めティーチングによってその動作を制御ユニット50aに記憶させておくことによってなされる。
【0089】
凝着物除去動作は、上記ワークを摩擦点接合させる動作に類似しているが、ワークを接合させるわけではなく、捨て打ちとも呼ばれる。捨て打ちの条件は、例えば加圧力を3.43kN程度、回転速度を2500rpm程度、所定時間を1.5秒程度に設定することが好ましい。
【0090】
捨て打ちを行うと、凝着物W1aと処理用第1金属部材W3が軟化し、塑性流動を起こす。そして両者の間に固相接合が起こり、接合する。つまり凝着物W1aが処理用第1金属部材W3に転写された状態となる。
【0091】
その後、処理用第1金属部材W3から回転工具16および受け具17を離反させると、図14(c)に示すように凝着物W1aが処理用第1金属部材W3に残留する。すなわち回転工具16を損傷することなく、ショルダ部16bから凝着物W1aが容易に除去される。
【0092】
当実施形態では、1回の凝着物除去工程あたり捨て打ちを2回行い、凝着物W1aの除去をより確実なものとしている。
【0093】
図15は、凝着状態検知工程および凝着物除去工程を含む摩擦点接合のフローチャートである。制御ユニット50aでこのフローチャートがスタートすると、まず接合カウンタFに0を入力する(ステップS10)。次に最初の接合部Pにおいて、上記初期移動工程から第1押圧工程、第2押圧工程を経て第3押圧工程に至る摩擦点接合を実行させる(ステップS12)。次に、全ての接合部Pにおいて接合が完了したか否かを判定し(ステップS14)、NOであれば接合カウンタFに1を追加する(ステップS16)。次に、接合カウンタFの値が、所定回数N1に達したか否かが判定される(ステップS18)。所定回数N1は予め設定される値であって、N1回の接合毎に凝着状態検知工程を実行するものとされる値である。ステップS18でNOと判定され、接合カウンタFの値が所定回数N1に達していない場合は、ステップS12に移行し、次の接合部Pにおいて摩擦点接合を繰り返す。
【0094】
そしてステップS18でYESと判定され、接合カウンタFの値が所定回数N1に達した場合は、ステップS20に移行し、凝着検知部70での上記凝着状態検知工程を実行する。ステップS20でレーザー変位センサ77から凝着検知信号が送られず、凝着なし(所定値以上の凝着状態ではない)と判定されたとき(ステップS22でNO)、ステップS10に戻り、接合カウンタFを0にリセットして接合が繰り返される。このように、所定回数N1回の接合を行った後であっても、凝着状態が所定値に達していない場合は引き続き接合を繰り返すことにより、不必要な凝着物除去工程を省略することができ、効率化が図られる。
【0095】
一方、ステップS20でレーザー変位センサ77から凝着検知信号が送られ、凝着あり(所定値以上の凝着状態である)と判定されたとき(ステップS22でYES)、凝着除去部80での上記凝着物除去工程を実行する(ステップS24)。その後、ステップS10に戻って接合カウンタFを0にリセットし、あらためて接合が繰り返される。
【0096】
遡って、ステップS14で全ての接合部Pでの接合が完了した(YES)と判定されたとき、次回の稼動に備えて凝着物除去工程を実行する(ステップS30)。そして回転工具16を、凝着物W1aが除去された状態にして終了する。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定するものではなく、特許請求の範囲内で適宜変更が可能である。
【0098】
例えば、第1金属部材W1および第2金属部材W2は、上記実施形態のような組み合わせである必要はなく、その他の金属材料の組み合わせ(同種の金属同士を含む)であっても良い。また処理用第1金属部材W3は、第1金属部材W1と同種の金属であることが望ましいが、必ずしもそうでなくても良い。
【0099】
また回転工具16のショルダ部16bの形状は、環状凹部16dが形成されたものである必要はない。環状凹部16dが形成されたものは凝着が起こり易い傾向にあるので、本発明の効果を顕著に奏するが、それ以外の形状、例えばショルダ部16bが軸心Xに垂直な平坦面である場合にも、凝着の検知及び除去に関する本発明の効果を奏することができる。
【0100】
回転工具16或いは接合ガン10は、ロボット40に搭載されていなくても良い。但し回転工具16や接合ガン10をロボット40に搭載した場合は、その移動自由度の高さを利用し、凝着状態検知工程や凝着物除去工程を容易に行わせることができるという利点がある。またこれらの動作を、ワークの摩擦点接合動作の合間に適宜組み込んで、全体の動作を効率良く行わせることができるという利点もある。
【0101】
回転工具16の形状(各部寸法)や加圧力等の各種パラメータは、用途や各種条件に応じて適宜変更しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の実施形態に係る摩擦点接合装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す接合ガンの正面図である。
【図3】図1に示す接合ガンの側面図である。
【図4】図1に示す本体ケースの内部構造を示す断面図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】図1に示す回転工具の先端部の拡大図である。
【図7】第1金属部材と第2金属部材とを摩擦点接合する際の概略図である。
【図8】摩擦点接合における第1押圧工程の説明図である。
【図9】摩擦点接合における第2押圧工程の説明図である。
【図10】摩擦点接合における第3押圧工程の説明図である。
【図11】摩擦点接合の完了後の状態を示す図である。
【図12】回転工具のショルダ部における凝着物の凝着状態を示す図である。
【図13】回転工具処理装置の一部である凝着検知部を示す図であり、(a)は全体構成図、(b)はショルダ部への凝着が殆どない場合の検知動作図、(c)はショルダ部への凝着状態が所定値以上である場合の検知動作図である。
【図14】回転工具処理装置の一部である凝着除去部を示す図であり、(a)は全体構成図、(b)は凝着除去動作中の作動図、(c)は凝着除去動作後の動作図である。
【図15】凝着状態検知工程および凝着物除去工程を含む摩擦点接合のフローチャートである。
【符号の説明】
【0103】
14 押圧用モータ(駆動手段)
15 回転用モータ(駆動手段)
16 回転工具
16b ショルダ部
16c ピン部
16d 環状凹部
50a 制御ユニット(制御手段)
60 回転工具処理装置
63 検知プレート
70 凝着検知部(検知手段)
77 レーザー変位センサ(変位センサ)
W1 第1金属部材(金属部材)
w1a 凝着物
W2 第2金属部材(金属部材)
W3 処理用第1金属部材(処理用金属部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の金属部材を重ね合わせ、回転工具を用いて当該金属部材同士を摩擦熱でスポット接合させる摩擦点接合装置に関し、詳しくは、その回転工具に金属部材が凝着したときに適切に処理する回転工具処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のボディ等においては、軽量化等を目的として、アルミニウム合金材料等
が多く採用されるようになり、それに伴い、例えばアルミニウム合金材料からなる部材同士を接合させたり、アルミニウム合金材料からなる部材と鉄や鋼材料等からなる部材とを接合させたりする機会が多くなってきている。このような接合を溶接で行うことは困難であるため、通常はリベット接合が行われるが、このリベット接合ではコストが高くなる。
【0003】
そこで、このような接合を低コストで行うのに好適な方法として、摩擦点接合が知られている。この方法は、複数の金属部材を重ね合わせ、ショルダ部から突出するピン部を備えた回転工具を回転させながらピン部およびショルダ部を金属部材に押圧し、摩擦熱でこの金属部材を軟化させ、塑性流動を生じさせて当該金属部材同士をスポット接合させるものである。この接合は、ワーク(接合対象の金属部材)を融点以下の温度で固相接合(溶融を伴わない固相状態のままの接合)するものである。
【0004】
例えば特許文献1には、亜鉛メッキ鋼板とアルミニウム板とを摩擦点接合させる方法および装置が示されている。この特許文献1に示されるように、通常、回転工具は略円柱状であり、軸まわりに回転駆動させられる。そしてその略円柱の端部に形成されたショルダ部をワークに押圧するようになっている。ショルダ部の中心部には、微小突起であるピン部が形成されている。
【特許文献1】特開2005−34879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えばワークが自動車の各種パネル等である場合、その接合点は多数であるため、連続して摩擦点接合を行うことが効率的である。しかしながら、摩擦点接合を多数回繰り返すうちに、ショルダ部にワークの一部が凝着(付着)してしまう場合がある。例えば特許文献1に示されるような異種金属同士の接合の場合、ショルダ部は、ピン部を除く中央部がやや凹んだ形状である(環状凹部が形成されている)ことが好ましいが、このような場合、特にショルダ部への凝着が起こり易くなる。
【0006】
ショルダ部、特にピン部の周囲に多くの凝着物がある状態で摩擦点接合を行うと、接合時の回転工具の回転振れが大きくなる。そのため、接合品質が低下する虞がある。また、回転工具やその駆動機構、或いは周囲の治具等が損傷する虞がある。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑み、回転工具のショルダ部にワークの一部が凝着したとき、適切な処理を行って効率良く凝着物を除去することができる摩擦点接合装置の回転工具処理方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明は、複数の金属部材を重ね合わせ、ショルダ部から突出するピン部を備えた回転工具を回転させながら上記ピン部および上記ショルダ部を上記金属部材に押圧し、摩擦熱で上記金属部材を軟化させ、塑性流動を生じさせて当該金属部材同士をスポット接合させる摩擦点接合装置の回転工具処理方法であって、少なくとも1回の接合を行った後、上記ショルダ部への上記金属部材の凝着状態を検知手段で検知する凝着状態検知工程と、上記凝着状態検知工程において、上記凝着状態が所定値以上であると検知されたときに実行される凝着物除去工程とを含み、上記凝着物除去工程は、上記回転工具を回転させながら上記ピン部および上記ショルダ部を処理用金属部材に押圧して凝着物を除去するものであることを特徴とする。
【0009】
また請求項2に係る発明は、複数の金属部材を重ね合わせ、ショルダ部から突出するピン部を備えた回転工具を回転させながら上記ピン部および上記ショルダ部を上記金属部材に押圧し、摩擦熱で上記金属部材を軟化させ、塑性流動を生じさせて当該金属部材同士をスポット接合させる摩擦点接合装置の回転工具処理装置であって、上記回転工具を回転させながら上記ピン部および上記ショルダ部を上記金属部材に押圧する駆動手段と、上記回転工具と上記駆動手段とを備え、上記回転工具を接合位置に移動させる移動手段と、少なくとも1回の接合を行った後、上記ショルダ部への上記金属部材の凝着状態を検知する検知手段と、上記検知手段による検知信号が、所定値以上の凝着状態であることを示したとき、上記移動手段で上記回転工具を処理用金属部材に対向して位置させ、上記駆動手段で上記回転工具を回転させながら上記ピン部および上記ショルダ部を該処理用金属部材に押圧して凝着物を除去する凝着物除去動作を行わせる制御手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また請求項3に係る発明は、請求項2記載の摩擦点接合装置の回転工具処理装置において、上記検知手段は、上記ショルダ部と略当接可能に配置された検知プレートと、上記ショルダ部を上記検知プレートに略当接させたときの該検知プレートの変位量を検知する変位センサとを備え、上記検知プレートは、上記ショルダ部を該検知プレートに略当接させたとき、上記ショルダ部への上記金属部材の凝着状態に応じた変位量で変位するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
また請求項4に係る発明は、請求項2または3記載の摩擦点接合装置の回転工具処理装置において、上記ショルダ部には、上記ピン部を囲むような環状凹部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
また請求項5に係る発明は、請求項2乃至4の何れか1項に記載の摩擦点接合装置の回転工具処理装置において、上記移動手段はロボットであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によると、以下説明するように、回転工具のショルダ部にワークの一部が凝着したとき、適切な処理を行って効率良く凝着物を除去することができる。
【0014】
金属材料は比較的強固に凝着するため、純機械的な除去方法、例えばタガネ等を用いて除去する方法では除去が困難である。また除去できたとしても、回転工具の損傷を伴う懸念が大である。
【0015】
しかし本発明によれば、凝着物除去工程を実行することにより、凝着した金属材料(凝着物)を軟化させ、塑性流動を起こさせて、これを処理用金属部材に転写することにより、回転工具を損傷することなく容易に凝着物を除去することができる。
【0016】
また本発明によれば、凝着物除去工程を、所定値以上の凝着が検知された好適なタイミングで行うことができる。すなわち、凝着物除去工程の実行頻度を必要最小限とすることにより、効率化が図られる。
【0017】
このように本発明によれば、回転工具のショルダ部にワークの一部が凝着したとき、適切な処理を行って効率良く凝着物を除去することができる。そして常に凝着状態を所定値以下に保つことにより、接合時の回転工具の回転振れが抑制されるので、接合品質の低下や、回転工具をはじめとする各部の損傷を効果的に抑制することができる。
【0018】
請求項2の発明によると、当該摩擦点接合装置の回転工具処理装置は、請求項1について記した効果と同様の効果を奏する。
【0019】
請求項3の発明によると、検知プレートを介してショルダ部への凝着状態を検知することにより、凝着状態を検知プレートの変位に変換して変位センサに検知させることができる。従って容易に凝着状態を検知することができる。
【0020】
またショルダ部の凝着状態を適宜増幅して検知プレートが変位するように構成することが容易にできるので、簡単な構造で検知精度を高めることができる。
【0021】
請求項4の発明によると、比較的凝着の起こり易い環状凹部を有する回転工具に対して特に効果的に適用することができる。
【0022】
請求項5発明によると、移動の自由度が高いロボットを移動手段とすることにより、凝着状態を検知する動作や凝着物除去動作を容易に行わせることができる。またこれらの動作を、ワークの摩擦点接合動作の合間に適宜組み込んで、全体の動作を効率良く行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。まず、本発明に係る摩擦点接合装置1について説明する。
【0024】
図1は摩擦点接合装置1の概略構成図である。この摩擦点接合装置1は、主たる構成要素として、接合ガン10と、該接合ガン10を手首に備えるロボット40(移動手段)とを含んでいる。このロボット40としては、汎用される6軸垂直多関節型ロボットが好適に用いられる。
【0025】
ロボット40は、ハーネス51を介して制御盤50と接続されている。また接合ガン10は、ハーネス52,54.55及び中継器53を介して制御盤50と接続されている。制御盤50内には制御ユニット50a(制御手段)が内蔵されており、ロボット40を制御して、接合ガン10が予め設定された所定の位置や傾きとなるように動作させる。また制御ユニット50aは、接合ガン10に搭載された、後述する押圧用モータ14および回転用モータ15(図2参照)を制御して、回転工具16および受け具17からなる接合用工具18に、予め設定された所定の動作を行わせる。
【0026】
図2は接合ガン10の正面図であり、図3は接合ガン10の側面図である。これらの図に示すように、接合ガン10は、ロボット40への取付ボックス11と、この取付ボックス11の下面から下方に延びるL字状のアーム12と、このアーム12の上方で取付ボックス11の側面に取り付けられた本体ケース13と、ハーネス54に接続された押圧用モータ14と、ハーネス55に接続された回転用モータ15とを有している。
【0027】
本体ケース13の下端部には、接合用工具18の一方である回転工具16が設けられている。一方、アーム12の先端部には、回転工具16と該回転工具16の軸心X方向に対向して、接合用工具18の他方である受け具17が設けられている。
【0028】
摩擦点接合は、この回転工具16と受け具17とでワーク(重ね合わせた複数の金属部材)を挟むようにして行われる。詳しくは、ワークの一方の面を受け具17の先端に当接させて受け、ワークの他方の面に対し、後述の如く、軸心X回りに回転する回転ツール16の先端部を押圧することによって摩擦点接合が行われるように構成されている。
【0029】
図4は、本体ケース13の内部構造を示す断面図であり、図5は、図4のV−V線断面図である。本体ケース13の内部には、互いに平行に上下方向に延びるネジ軸(昇降軸)24及びスプライン軸(回転軸)25がそれぞれの軸心回りに回転自在に設けられている。これら両軸24,25の上端部は、上蓋部材21を貫通して上部カバー22内に至り、ここで両軸24,25に従動プーリ26,27がそれぞれ組み付けられている。上蓋部材21及び上部カバー22は、図5に示すように、本体ケース13の上部から該本体ケース13の側方に張り出しており、上蓋部材21の該張出し部の下面に押圧用モータ14及び回転用モータ15が固定されている。これら両モータ14,15の出力軸14a,15aの先端部(上端部)は、上蓋部材21を貫通して上部カバー22内に至り、ここで両出力軸14a,15aに駆動プーリ14b,15bがそれぞれ組み付けられている。そして、上記各駆動プーリ14b,15bと従動プーリ26,27との間には、駆動伝達用のベルト28.29がそれぞれ巻き掛けられており、押圧用モータ14の回転により、ネジ軸24が図5のA方向(down方向)又はB方向(up方向)に回転駆動され、回転用モータ15の回転により、スプライン軸25が図5のC方向に回転駆動されるようになっている。
【0030】
図4に戻って説明を続ける。ネジ軸24のネジ部24aには、昇降ブロック31が螺合されておりスプライン軸25のスプライン部25aには、回転筒体35がスプライン結合されている。この回転筒体35は、昇降ブロック31に結合部材32を介して一体結合された昇降筒体33の内部に回転自在に設けられている。スプライン軸25、昇降筒体33及び回転筒体35は、互いに同心状に配置されている。なお、以下、昇降ブロック31、結合部材32及び昇降筒体33の一体物を昇降体30という。
【0031】
本体ケース13の下面には、円筒状の下方突出部13aが形成されており、この下方突出部13aの下端部には下部カバー23が設けられている。上記昇降筒体33及び回転筒体35の下端部は、この下部カバー23を貫通して下方に突出している。そして、内側にある回転筒体35の方が、外側にある昇降筒体33よりも長く下方に突出して、その回転筒体35の下端部に取付部材36が固着されている。この取付部材36に対し回転ツール16の先端部と反対側の端部である基端部が着脱自在(交換自在)に取り付けられている。この取り付けられた回転工具16の軸心Xは、上記スプライン軸25の軸心の延長線上にある。なお、下部カバー23と昇降筒体33の下端部との間には、昇降筒体33の外表面を本体ケース13の外部の汚染等から保護する伸縮自在の蛇腹部材34が配設されている。
【0032】
なお、スプライン軸25と上蓋部材21との間には軸受25bが、昇降筒体33と回転筒体35との間には軸受35aが、昇降筒体33と取付部材36との間には軸受33aが、それぞれ設けられている。
【0033】
また、押圧用モータ14としては、回転角の制御及び検知が容易なサーボモータが好ましく、回転用モータ15としては、同じく回転角の制御及び検知が容易なサーボモータ、又は回転速度の制御が容易なインダクションモー夕が好ましい。これら押圧用モータ14および回転用モータ15は、回転工具16(詳しくは、図6に示す回転工具16のショルダ部16bおよびピン部16c)を回転させながらワークに押圧する駆動手段を構成している。
【0034】
図6は回転工具16の先端部の拡大図である。この回転工具16の先端部は、円柱状の胴体部16aの下端面(その輪郭は円形である)とされた、ワークと対向するショルダ部16bと、回転工具16の軸心X上に位置し、かつショルダ部16bから該ショルダ部16bよりも小径でワークに対向する側に所定長さhだけ突出するピン部16cと、該ピン部16cの周囲におけるショルダ部16bに設けられた環状凹部16dとで構成されている。当実施形態では、この環状凹部16dの底面が、径方向外側に向かって凹み量が小さくなるように傾斜しており、環状凹部16dは、回転工具16の軸心Xを中心とする円錐形状に凹んでいる。この回転工具16の具体的寸法としては、例えば、ショルダ部16bの直径D1が10mm、ピン部16cの直径D2が2mm,ピン部16cの突出長さhが0.3mm〜0.35mm、環状凹部16dの底面のショルダ部16bに対する傾斜角θが5°〜7゜とされる。
【0035】
但し、回転工具16の最適形状は一義的に決定されるものではなく、ワークの材質、厚さ、重ね合わせるワークの枚数等、用途に応じて異なる。従って、用途別に好適な複数種類の回転工具16を準備しておき、用途に応じて適宜交換して用いるようにするのが望ましい。図6に示すような環状凹部16dを有する回転工具16の形状は、特に融点の異なる異種の金属部材を接合する際に用いると好適である。
【0036】
次に、摩擦点接合装置1の摩擦点接合時の動作について説明する。
【0037】
まず、回転工具16の昇降動作および回転動作について説明する。なお、回転工具16の軸心Xの向きは、ロボット40によって自在に変化させることができるが、説明の都合上、回転工具16を受け具17に接近させる方向の動作を下降、受け具17から遠ざける方向の動作を上昇と言う。
【0038】
押圧用モータ14の回転によりネジ軸24が図5のA方向に回転駆動されたときには、昇降体30がネジ部24aとの螺合によって下降し、昇降体30における昇降筒体33に内装された回転筒体35及び該回転筒体35の下端部に取付部材36を介して取り付けられた回転工具16が一緒に下降する。逆に、押圧用モータ14の回転によりネジ軸24が図5のB方向に回転駆動されたときには、昇降体30がネジ部24aとの螺合によって上昇し、回転筒体35及び回転工具16が一緒に上昇する。このことで、押圧用モータ14は、回転工具16を、後述の如く回転工具16と受け具17との間に位置するワークに対して、該回転工具16の軸心X方向に進退移動させるように構成されていることになる。また、押圧用モータ14は、回転工具16を上記ワークに対し押圧させるように構成されているとともに、該押圧時の加圧力を、押圧用モータ14へ供給する電流により変更することができるようになっている。
【0039】
また、回転用モータ15の回転によりスプライン軸25が図5のC方向に回転駆動されたときには、上記のような昇降体30の動きとは独立して、回転筒体35がスプライン部25aとのスプライン結合によってスプライン軸25と同じC方向に回転し、回転筒体35に取り付けられた回転工具16も、該回転工具16の軸心X回りにスプライン軸25と同じC方向に回転する。また、回転用モータ15は、回転工具16の軸心X回りの回転速度を、回転用モータ15へ供給する電流により変更することができるようになっている。
【0040】
次に、上記回転工具16の昇降動作を伴うワークの接合動作について説明する。
【0041】
図7は、第1金属部材W1と第2金属部材W2とを摩擦点接合する際の概略図である。第1及び第2金属部材W1,W2は、例えば自動車のボディを構成する部材であり、ここでは第1金属部材W1がアルミニウム合金材料(アルミニウム合金板)からなり、第2金属部材W2が鋼材料(鋼板)からなるものとする。また第2金属部材W2の表面には、防錆対策として亜鉛メッキ層Z(図8参照)が施されているものとする。
【0042】
摩擦点接合装置1により第1金属部材W1と第2金属部材W2とを摩擦点接合するには、先ず図7に例示するように、第1金属部材W1と第2金属部材W2との接合部(図示の例では5箇所の接合部P)を含む部分を重ね合わせ、このワークを図示しない把持手段によって把持して固定する。
【0043】
続いて、ロボット40の作動により、接合ガン10を、上記ワークにおいて接合しようとする複数の接合部Pの1つに近接させ、回転工具16が接合部Pの第1金属部材W1側に位置し、受け具17がその接合部Pの第2金属部材W2側に位置するようにする。次いで、接合ガン10全体を第1金属部材W1側に移動させて、受け具17の先端を第2金属部材W2の下面に当接させる。
【0044】
そして、上記受け具17の先端が第2金属部材W2に当接した状態で、上記の下降動作と回転動作とにより、回転工具16を回転させつつ第1金属部材W1に押し当て、接合させる。この接合の工程は、詳しくは初期移動工程、第1押圧工程、第2押圧工程、第3押圧工程を順に行うように設定されている。
【0045】
まず初期移動工程では、回転工具16を降下させて第1金属部材W1の近接位置である初期位置に移動させる。この初期位置は、回転工具16のピン部16cの先端が第1金属部材W1に対し僅かに離れるような位置である。この初期移動工程では、回転工具16を回転させるようにしても、回転させないようにしても良いが、当実施形態では、次の第1押圧工程へ直ぐに移行できるように、続く第1押圧工程と同じ回転速度(第1回転速度)で回転させるようにしておく。
【0046】
続く第1押圧工程では、図8に示すように、回転工具16を第1回転速度で回転させながら、押圧用モータ14により、上記初期移動工程における回転工具16の移動抵抗値よりも大きい第1加圧力で、回転工具16のショルダ部16b及びピン部16cを、第1所定時間の間、第1金属部材W1に対し押圧接触させる。
【0047】
なお、回転工具16の第1金属部材W1に対する加圧力は、押圧用モータ14へ供給する電流値によって決まるため、上記制御ユニット50aは、押圧用モータ14へ供給する電流を、上記第1押圧工程では、上記第1所定時間の間、上記第1加圧力に対応する電流値になるように制御する。また、回転工具16の回転速度は、回転用モータ15へ供給する電流値によって決まるため、上記制御ユニット50aは、回転用モータ15へ供給する電流を、上記第1押圧工程(及び初期移動工程)では、上記第1回転速度に対応する電流値になるように制御する。
【0048】
上記移動抵抗値は、上記ネジ軸24や昇降体30等によって構成された、昇降筒体33(回転工具16)を移動させる機構内で生じる摩擦抵抗により決まるものであるが、この摩擦抵抗値は安定しておらず、特に可動部と固定部との間の隙間量やグリス等の影響によってばらつく。このため、上記第1加圧力が移動抵抗値以下であると、移動抵抗値の大きさによって、第1金属部材W1に第1加圧力が実際に作用するまでの時間がばらつき、第1金属部材W1に対し第1加圧力で実際に押圧する時間は、上記第1所定時間に対してかなりばらつくことになる。しかし当実施形態では、第1加圧力を上記移動抵抗値よりも大きく設定しているので、移動抵抗値の大きさに関係なく、第1押圧工程開始直後に、第1加圧力で回転工具16のショルダ部16b及びピン部16cが第1金属部材W1に対し押圧されることとなり、第1加圧力が第1金属部材W1に実際に作用する時間は上記第1所定時間と略同じになり、安定する。
【0049】
上記第1加圧力は、上記移動抵抗値のばらつき範囲の最大値よりも大きくて、2.45kN以上3.43kN以下に設定することが好ましい。また、上記第1回転速度は、1500rpm以上3500rpm以下に設定することが好ましい。さらに、上記第1所定時間は、0.2秒以上2.0秒以下に設定することが好ましい。これら第1加圧力、第1回転速度及び第1所定時間は、回転工具16が第1金属部材W1に対し、環状凹部16dの底面の一部(深さが深い軸心X側の部分)が第1金属部材W1に接触しないで、ショルダ部16bの周縁部及びピン部16cが第1金属部材W1に接触する程度に押し込まれるようにそれぞれ設定する。
【0050】
上記第1押圧工程においては、ショルダ部16bの周縁部及びピン部16cが回転ツール16の軸心X回りに回転しながら第1金属部材W1に対し押圧接触されることで、その2箇所の接触部位で摩擦熱が生じ、この摩擦熱は、ワークにおける該2箇所の接触部位の間の部分(環状凹部16dの底面が接触していない部分)、延いては接合部P全体に速やかに拡散され、第1金属部材W1におけるショルダ部16bに対向する部分(接合部P)全体が良好に軟化する。また、第2金属部材W2の表面に施されている亜鉛メッキ層Zも、接合部Pにおいて軟化する。このように、上記第1加圧力、第1回転速度及び第1所定時間を、上記好ましい範囲に設定することで、第1金属部材W1を剪断破壊させることなく良好に軟化させることができるようになる。
【0051】
またこの第1押圧工程の初期段階において、ショルダ部16bよりも所定長さhだけ突出したピン部16cが、ショルダ部16bよりも先に第1金属部材W1に当接する。このように細い径のピン部16cを最初に当接させることにより、回転工具16の位置決めが良好になされ、回転振れが効果的に抑制される(アンカー機能)。
【0052】
続く第2押圧工程では、図9に示すように、回転用モータ15により、回転工具16を第2回転速度で回転させながら、押圧用モータ14により、上記第1加圧力よりも大きい第2加圧力で、回転工具16のショルダ部16b及びピン部16cを、第2所定時間の間、第1金属部材W1に押し込む。
【0053】
この第2押圧工程では、加圧力が大きくなることで、回転工具16のショルダ部16b及びピン部16cが第1金属部材W1に対し徐々に深く入り込み、環状凹部16dの底面全体、つまりピン部16c及び環状凹部16dを含むショルダ部16b全体が第1金属部材W1に接触する。これに伴い、第1金属部材W1の軟化に加えて塑性流動が行われる(図では模式的に破線で塑性流動Qを示す)。この塑性流動Qにおいて、ショルダ部16bに環状凹部16dが設けられている(特に環状凹部16dが円錐形状をなしている)ことから、塑性流動する第1金属部材W1が、図の上下方向に流動して、回転工具16の直下部分(接合部P)から外側へ流出することが抑制される。また、環状凹部16dにより、第2加圧力が接合部Pに集中して、第1金属部材W1の塑性流動Qが促進される。さらに、上記両金属部材Wl,W2の接合境界面において、上記軟化した亜鉛メッキ層Zが接合部Pから押し出されることで、第2金属部材W2の新生面が露出するとともに、図示しないが、空気中の酸素により第1金属部材W1の表面に形成されている酸化被膜が接合部Pにおいて破壊されることで、第1金属部材W1の新生面が露出する。
【0054】
上記第2加圧力は、3.92kN以上5.88kN以下に設定することが好ましい。また、上記第2回転速度は、2000rpm以上3000rpm未満に設定することが好ましい。さらに、上記第2所定時間は、1.0秒以上2.0秒以下に設定することが好ましい。これら第2加圧力、第2回転速度及び第2所定時間は、回転工具16が第1金属部材W1に対し所定の挿入位置よりも深く押し込まれないようにそれぞれ設定する。この所定の挿入位置は、該挿入位置よりも回転工具16が深く入り込むと第1金属部材W1が過度に薄くなって引きちぎられるような位置である。
【0055】
上記第2押圧工程の終了により、接合部Pでの接合を終了するようにしてもよいが、当実施形態では、さらに第3押圧工程を行うようにしている。
【0056】
第3押圧工程では、図10に示すように、回転用モータ15により回転ツール16を第3回転速度で回転させながら、押圧用モータ14により、第2加圧力よりも小さい第3加圧力で、回転工具16のショルダ部16b及びピン部16cを、第3所定時間の間、第1金属部材W1に対し押圧接触させる。
【0057】
この第3押圧工程では、加圧力を第2押圧工程よりも小さくすることで、回転工具16が第1金属部材W1に対し上記所定の挿入位置よりも深く押し込まれず、第2押圧工程が終了したときの位置で押圧し続けることとなる。これにより、第1金属部材W1が過度に薄くなって引きちぎれるようなことがなくなるとともに、第2押圧工程時と同じ程度の温度が維持されて、良好な塑性流動が長時間に亘って行われる。この第3押圧工程の終了により、1つの接合部Pでの接合が終了することになる。
【0058】
上記第3加圧力は、上記第1加圧力よりも小さくて、0.49kN以上1.47kN以下に設定することが好ましい。また、上記第3回転速度は、1500rpm以上3500rpm以下に設定することが好ましい。さらに、上記第3所定時間は、0.5秒以上2.5秒以下に設定することが好ましい。これら第3加圧力、第3回転速度及び第3所定時間は、回転ツール16が第1金属部材W1に対し、第2押圧工程が終了したときの位置で押圧し続けかつ第1金属部材W1の塑性流動が生じるようにそれぞれ設定する。
【0059】
上記第3押圧工程においては、回転工具16で押し出された金属材料がバリRとなって第1金属部材W1の表面に隆起するとともに、亜鉛メッキ層Zが更に接合部Pから押し出され、また酸化皮膜が更に破壊されて、両金属部材Wl,W2の新生面の露出範囲が拡大する(図10中、×印で表示した範囲)。この結果、両金属部材の合わせ面部同士が、摩擦点接合によって固相接合され、その接合強度は安定的に高くなる。
【0060】
なお、亜鉛メッキ層Zにおける接合部Pの近傍部分には、第1金属部材W1の金属と、亜鉛メッキ層Zの金属との金属混合物層Yが生成される。
【0061】
上記1つの接合部Pでの接合が終了すると、押圧用モータ14により、ネジ軸24を図5のB方向に回転駆動させることで、回転工具16を上昇させるとともに、接合ガン10全体を回転工具16の下降方向に移動させることにより、接合用工具18をワークから離反させる。摩擦点接合が完了した後の接合部Pにおいては、図11に示すように、ワーク(第1金属部材Wl)の表面に、ショルダ部16b及びピン部16cの痕が残り、ショルダ部16bの周囲には、バリRが生じている。
【0062】
接合部Pでの摩擦点接合が完了すると、制御ユニット50aはロボット40によって接合ガン10を次の接合部Pへと移動させる。そして接合ガン10に上記と同様の動作を繰り返し行わせ、次の接合部Pでの接合を行わせる。こうして、複数の接合部Pにおいて摩擦点接合(固相接合)が順次行われる。
【0063】
ところで、複数の接合部Pでの摩擦点接合を繰り返すうち、図12に示すように、ショルダ部16b、特にピン部16cの周囲に凝着物W1aが生成することがある。凝着部W1aは、接合時に軟化し、塑性流動した第1金属部材W1がショルダ部16bに付着し、固まったものである。特にショルダ部16bに環状凹部16dが形成されている場合にこの凝着物W1aが生成し易い。
【0064】
凝着物W1aが大きくなると、第1押圧工程におけるピン部16cの上記アンカー機能が低下し、回転工具16の回転振れが大きくなる。そのため、接合品質が低下する虞がある。また、回転工具16や接合ガン10の駆動機構(例えば図4に示す軸受25b、軸受35aおよび軸受33aなど)、或いは周囲の治具等が損傷する虞がある。
【0065】
そこで当実施形態では、次に説明する回転工具処理装置60を設け、凝着物W1aを適切なタイミングで効率良く除去するようにしている。回転工具処理装置60は、主として凝着検知部70(図13参照)と凝着除去部80(図14参照)からなる。回転工具処理装置60は、ロボット40による接合ガン10の可動範囲内に設けられる。すなわち、以下に説明する回転工具処理装置60に対する回転工具16の動作は、回転工具16を接合ガン10に装着した状態で、ロボット40の動作によってなされるように構成されている。
【0066】
図13は、凝着検知部70を示す図であり、(a)は全体構成図、(b)はショルダ部16bへの凝着が殆どない場合の検知動作図、(c)はショルダ部16bへの凝着状態が所定値以上である場合の検知動作図である。
【0067】
図13(a)に示すように、凝着検知部70は、上下に延びる支柱61と、支柱61の上端付近に設けられて水平方向の軸線を有するヒンジピン65と、基端側がヒンジピン65に揺動自在に軸支されるとともに、先端側に上方への折曲部63aを有する鋼板製の検知プレート63と、検知プレート63の先端側を下方から支持する受け台73と、上下に延びて受け台73を支持する支柱71と、受け台73から上方に立設されたセンサ支持部75と、センサ支持部75の上端付近に固設されたレーザー変位センサ77と、このレーザー変位センサ77の検知信号を摩擦点接合装置1の制御ユニット50aに伝達するケーブル78とを備える。
【0068】
検知プレート63の比較的ヒンジピン65寄りに、通し穴67が穿設されている。通し穴67の径は、ピン部16cのピン径D2よりも所定値(例えば1mm)大きくなっている。
【0069】
検知プレート63はヒンジピン65を中心に揺動自在となっているので、受け台73の支持がなければ先端側が落下する。受け台73はその落下を防止するために検知プレート63を支持するものであり、通常の状態(図13(a)に示すように、回転工具16が検知プレート63から充分離れている状態。)で検知プレート63を略水平に支持する。
【0070】
なお検知プレート63は、通常の状態から検知プレート63の先端側(折曲部63a)が上方変位する方向には揺動可能である。その揺動によって折曲部63aが上方変位したとき、その上下方向の移動量を検知プレート63の変位量というものとする。
【0071】
レーザー変位センサ77は周知のセンサであるため詳細説明を省略するが、レーザー光の発光部と受光部とを備え、発光部から発したレーザー光の反射光を受光することにより、検知対象の変位を検知するものである。当実施形態では、検知プレート63の変位量が所定の判定閾値以上であるか否かを検知するセンサとしてレーザー変位センサ77を用いている。レーザー変位センサ77の発光部は、検知プレート63の変位量=0のとき、折曲部63aの上端よりもやや上方の空間に向けてレーザー光を発するように設定されている。
【0072】
次に、凝着検知部70での凝着状態検知工程および凝着状態検知動作について説明する。例えば所定回数の摩擦点接合を実行したとき等、所定の条件が成立すると、制御ユニット50aは次の接合部Pでの摩擦点接合を実行する前に凝着状態検知工程を実行する。すなわちロボット40および接合ガン10に凝着状態検知動作を行わせる。この凝着状態検知動作は、図13(a)に示すように、回転工具16のショルダ部16bを上向きにするとともに、検知プレート63の通し穴67とピン部16cとの位置を合わせた状態で回転工具16を検知プレート63に接近させる動作である(矢印AW1)。なお、このとき回転工具16を回転させる必要はない。
【0073】
図13(b)は、ショルダ部16bに凝着のない回転工具16を検知位置まで動作させた状態を示す。この検知位置は、ショルダ部16bが検知プレート63に略当接(ソフト接触)する位置である。予め凝着のない回転工具16を用いて、ロボット40(の制御ユニット50a)に検知位置を認識させるティーチングを行っておくと良い。
【0074】
ショルダ部16bに凝着がなければ、或いはごく僅かな凝着状態であれば、ショルダ部16bから突出したピン部16cは通し穴67に完全に嵌まり込む。従って図13(b)に示すように検知プレート63は変位しない(変位量=0)。
【0075】
図13(b)に示すように、検知プレート63の変位量=0のとき、レーザー変位センサ77の発光部から発せられたレーザー光79は折曲部63aに当たらず、受光部は折曲部63aからの反射光を受光しない。このとき、レーザー変位センサ77から制御ユニット50aに凝着検出信号が送られない(ケーブル78を介して凝着非検出信号を送るようにしても良い)。
【0076】
図13(c)は、ショルダ部16bのピン部16cの周囲に凝着物W1aがある場合を示す。凝着物W1aがある程度以上の量(大きさ)になると、回転工具16を検知位置まで動作させたとき、凝着物W1aが妨げとなってピン部16cか完全に通し穴67に嵌まり込まなくなる。そして凝着物W1aが検知プレート63を押し上げる。すると検知プレート63がヒンジピン65を中心に揺動し、変位する。凝着状態が著しいほど、すなわち凝着物W1aが多く大きいほど、検知プレート63の変位量は大となる。
【0077】
図13(c)は変位量=h1であって、h1>判定閾値である状態を示している。変位量h1が判定閾値(例えば6mm程度)を越えると、レーザー変位センサ77からのレーザー光79が折曲部63aに当たり、その反射光が受光部に受光される。このとき、レーザー変位センサ77から制御ユニット50aにケーブル78を介して凝着検出信号が送られる。
【0078】
以上説明したように、凝着検知部70では、ショルダ部16bへの凝着状態を検知プレート63の変位量に変換することにより、容易に凝着状態を検知することができる。
【0079】
なお、上記判定閾値を変更するには、折曲部63aの長さ(高さ)又はセンサ支持部75の高さ又はレーザー変位センサ77の設置角度等を調整すれば良い。そして、予め凝着状態と検知プレート63の変位量との関係をサンプリングしておき、少なくとも実害の発生しない凝着状態のときの変位量の範囲内で適宜判定閾値を設定すれば良い。
【0080】
ところで、図13(a)に示すように、ヒンジピン65と通し穴67との距離をL1、ヒンジピン65と折曲部63aとの距離をL2とすると、距離L1<距離L2である。このため、検知プレート63の変位量は、凝着物W1aによる検知プレート63の押し上げ量よりも大きくなる。すなわち凝着検知部70は、凝着状態を増幅して検知する増幅作用を有する。その増幅率Kは、K=L2/L1である。この増幅率Kが大きいほど凝着状態の検知精度が高められる。また増幅率Kを小さくすれば凝着検知部70を小型化することができる。そのバランスを考慮して適切な増幅率Kを設定すれば良い。
【0081】
次に、回転工具処理装置60の凝着除去部80について説明する。図14は、凝着除去部80を示す図であり、(a)は全体構成図、(b)は凝着除去動作中の作動図、(c)は凝着除去動作後の動作図である。凝着除去部80は、凝着検知部70においてレーザー変位センサ77から制御ユニット50aに凝着検出信号が送られたとき、回転工具16のショルダ部16bに凝着した凝着物W1aを除去するために設けられている。
【0082】
図14(a)に示すように、凝着除去部80は、上下に延びる支柱81と、支柱81の上端付近に設けられて水平方向に延びる受け台82と、支柱81の上端付近からさらに上方に立設されたアーム支持部83と、アーム支持部83の上端付近に設けられ、略水平方向の軸線を有する回動軸86と、回動軸86に支持されて略水平方向に延びるとともに、回動軸86まわりに回動自在とされたアーム85と、アーム85の一端に固定され、受け台82と対向する位置に設けられた押圧部87と、アーム85の、回動軸86を挟む押圧部87と反対側の端部と支柱81とを連結する油圧シリンダ84と、受け台82と押圧部87とによって挟持される処理用第1金属部材W3とを備える。
【0083】
処理用第1金属部材W3(処理用金属部材)は、第1金属部材W1と同じ材質の板、つまりアルミニウム合金材料からなる板である。その厚みは例えば2mm程度とされる。
【0084】
油圧シリンダ84の軸線は上下方向に延び、その可動軸84aの先端がアーム85の端部に接続されている。従って、可動軸84aを伸縮させることにより、アーム85を回動軸86まわりに回動させることができる。或いは回動する方向に押引することができる。
【0085】
図14(a)に示すように、受け台82と押圧部87とで処理用第1金属部材W3が挟持されているセッティング状態のとき、可動軸84aを延ばす方向に加圧力を加えることにより、アーム85を介して押圧部87には下向きの加圧力が作用する。この加圧力によって処理用第1金属部材W3が確実に固定される。
【0086】
また可動軸84aを縮める方向に力を加えることにより、アーム85を介して押圧部87に上向きの力が作用する。これにより処理用第1金属部材W3の固定状態が解除され、取り外しや交換が可能となる。
【0087】
次に、凝着除去部80での凝着物除去工程および凝着物除去動作について説明する。上記凝着検知工程において、レーザー変位センサ77から制御ユニット50aに凝着検知信号が送られると、制御ユニット50aは凝着物除去工程を実行する。すなわちロボット40および接合ガン10に凝着物除去動作を行わせる。
【0088】
凝着物除去動作は、図14(a)に示すように、ロボット40で回転工具16を処理用第1金属部材W3に対向して位置させ、次に図14(b)に示すように、押圧用モータ14および回転用モータ15で回転工具16を回転させながらショルダ部16bおよびピン部16cを処理用第1金属部材W3に押圧して凝着物を除去する動作である。この動作は、予めティーチングによってその動作を制御ユニット50aに記憶させておくことによってなされる。
【0089】
凝着物除去動作は、上記ワークを摩擦点接合させる動作に類似しているが、ワークを接合させるわけではなく、捨て打ちとも呼ばれる。捨て打ちの条件は、例えば加圧力を3.43kN程度、回転速度を2500rpm程度、所定時間を1.5秒程度に設定することが好ましい。
【0090】
捨て打ちを行うと、凝着物W1aと処理用第1金属部材W3が軟化し、塑性流動を起こす。そして両者の間に固相接合が起こり、接合する。つまり凝着物W1aが処理用第1金属部材W3に転写された状態となる。
【0091】
その後、処理用第1金属部材W3から回転工具16および受け具17を離反させると、図14(c)に示すように凝着物W1aが処理用第1金属部材W3に残留する。すなわち回転工具16を損傷することなく、ショルダ部16bから凝着物W1aが容易に除去される。
【0092】
当実施形態では、1回の凝着物除去工程あたり捨て打ちを2回行い、凝着物W1aの除去をより確実なものとしている。
【0093】
図15は、凝着状態検知工程および凝着物除去工程を含む摩擦点接合のフローチャートである。制御ユニット50aでこのフローチャートがスタートすると、まず接合カウンタFに0を入力する(ステップS10)。次に最初の接合部Pにおいて、上記初期移動工程から第1押圧工程、第2押圧工程を経て第3押圧工程に至る摩擦点接合を実行させる(ステップS12)。次に、全ての接合部Pにおいて接合が完了したか否かを判定し(ステップS14)、NOであれば接合カウンタFに1を追加する(ステップS16)。次に、接合カウンタFの値が、所定回数N1に達したか否かが判定される(ステップS18)。所定回数N1は予め設定される値であって、N1回の接合毎に凝着状態検知工程を実行するものとされる値である。ステップS18でNOと判定され、接合カウンタFの値が所定回数N1に達していない場合は、ステップS12に移行し、次の接合部Pにおいて摩擦点接合を繰り返す。
【0094】
そしてステップS18でYESと判定され、接合カウンタFの値が所定回数N1に達した場合は、ステップS20に移行し、凝着検知部70での上記凝着状態検知工程を実行する。ステップS20でレーザー変位センサ77から凝着検知信号が送られず、凝着なし(所定値以上の凝着状態ではない)と判定されたとき(ステップS22でNO)、ステップS10に戻り、接合カウンタFを0にリセットして接合が繰り返される。このように、所定回数N1回の接合を行った後であっても、凝着状態が所定値に達していない場合は引き続き接合を繰り返すことにより、不必要な凝着物除去工程を省略することができ、効率化が図られる。
【0095】
一方、ステップS20でレーザー変位センサ77から凝着検知信号が送られ、凝着あり(所定値以上の凝着状態である)と判定されたとき(ステップS22でYES)、凝着除去部80での上記凝着物除去工程を実行する(ステップS24)。その後、ステップS10に戻って接合カウンタFを0にリセットし、あらためて接合が繰り返される。
【0096】
遡って、ステップS14で全ての接合部Pでの接合が完了した(YES)と判定されたとき、次回の稼動に備えて凝着物除去工程を実行する(ステップS30)。そして回転工具16を、凝着物W1aが除去された状態にして終了する。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定するものではなく、特許請求の範囲内で適宜変更が可能である。
【0098】
例えば、第1金属部材W1および第2金属部材W2は、上記実施形態のような組み合わせである必要はなく、その他の金属材料の組み合わせ(同種の金属同士を含む)であっても良い。また処理用第1金属部材W3は、第1金属部材W1と同種の金属であることが望ましいが、必ずしもそうでなくても良い。
【0099】
また回転工具16のショルダ部16bの形状は、環状凹部16dが形成されたものである必要はない。環状凹部16dが形成されたものは凝着が起こり易い傾向にあるので、本発明の効果を顕著に奏するが、それ以外の形状、例えばショルダ部16bが軸心Xに垂直な平坦面である場合にも、凝着の検知及び除去に関する本発明の効果を奏することができる。
【0100】
回転工具16或いは接合ガン10は、ロボット40に搭載されていなくても良い。但し回転工具16や接合ガン10をロボット40に搭載した場合は、その移動自由度の高さを利用し、凝着状態検知工程や凝着物除去工程を容易に行わせることができるという利点がある。またこれらの動作を、ワークの摩擦点接合動作の合間に適宜組み込んで、全体の動作を効率良く行わせることができるという利点もある。
【0101】
回転工具16の形状(各部寸法)や加圧力等の各種パラメータは、用途や各種条件に応じて適宜変更しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の実施形態に係る摩擦点接合装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す接合ガンの正面図である。
【図3】図1に示す接合ガンの側面図である。
【図4】図1に示す本体ケースの内部構造を示す断面図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】図1に示す回転工具の先端部の拡大図である。
【図7】第1金属部材と第2金属部材とを摩擦点接合する際の概略図である。
【図8】摩擦点接合における第1押圧工程の説明図である。
【図9】摩擦点接合における第2押圧工程の説明図である。
【図10】摩擦点接合における第3押圧工程の説明図である。
【図11】摩擦点接合の完了後の状態を示す図である。
【図12】回転工具のショルダ部における凝着物の凝着状態を示す図である。
【図13】回転工具処理装置の一部である凝着検知部を示す図であり、(a)は全体構成図、(b)はショルダ部への凝着が殆どない場合の検知動作図、(c)はショルダ部への凝着状態が所定値以上である場合の検知動作図である。
【図14】回転工具処理装置の一部である凝着除去部を示す図であり、(a)は全体構成図、(b)は凝着除去動作中の作動図、(c)は凝着除去動作後の動作図である。
【図15】凝着状態検知工程および凝着物除去工程を含む摩擦点接合のフローチャートである。
【符号の説明】
【0103】
14 押圧用モータ(駆動手段)
15 回転用モータ(駆動手段)
16 回転工具
16b ショルダ部
16c ピン部
16d 環状凹部
50a 制御ユニット(制御手段)
60 回転工具処理装置
63 検知プレート
70 凝着検知部(検知手段)
77 レーザー変位センサ(変位センサ)
W1 第1金属部材(金属部材)
w1a 凝着物
W2 第2金属部材(金属部材)
W3 処理用第1金属部材(処理用金属部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属部材を重ね合わせ、ショルダ部から突出するピン部を備えた回転工具を回転させながら上記ピン部および上記ショルダ部を上記金属部材に押圧し、摩擦熱で上記金属部材を軟化させ、塑性流動を生じさせて当該金属部材同士をスポット接合させる摩擦点接合装置の回転工具処理方法であって、
少なくとも1回の接合を行った後、上記ショルダ部への上記金属部材の凝着状態を検知手段で検知する凝着状態検知工程と、
上記凝着状態検知工程において、上記凝着状態が所定値以上であると検知されたときに実行される凝着物除去工程とを含み、
上記凝着物除去工程は、上記回転工具を回転させながら上記ピン部および上記ショルダ部を処理用金属部材に押圧して凝着物を除去するものであることを特徴とする摩擦点接合装置の回転工具処理方法。
【請求項2】
複数の金属部材を重ね合わせ、ショルダ部から突出するピン部を備えた回転工具を回転させながら上記ピン部および上記ショルダ部を上記金属部材に押圧し、摩擦熱で上記金属部材を軟化させ、塑性流動を生じさせて当該金属部材同士をスポット接合させる摩擦点接合装置の回転工具処理装置であって、
上記回転工具を回転させながら上記ピン部および上記ショルダ部を上記金属部材に押圧する駆動手段と、
上記回転工具と上記駆動手段とを備え、上記回転工具を接合位置に移動させる移動手段と、
少なくとも1回の接合を行った後、上記ショルダ部への上記金属部材の凝着状態を検知する検知手段と、
上記検知手段による検知信号が、所定値以上の凝着状態であることを示したとき、上記移動手段で上記回転工具を処理用金属部材に対向して位置させ、上記駆動手段で上記回転工具を回転させながら上記ピン部および上記ショルダ部を該処理用金属部材に押圧して凝着物を除去する凝着物除去動作を行わせる制御手段とを備えることを特徴とする摩擦点接合装置の回転工具処理装置。
【請求項3】
上記検知手段は、上記ショルダ部と略当接可能に配置された検知プレートと、
上記ショルダ部を上記検知プレートに略当接させたときの該検知プレートの変位量を検知する変位センサとを備え、
上記検知プレートは、上記ショルダ部を該検知プレートに略当接させたとき、上記ショルダ部への上記金属部材の凝着状態に応じた変位量で変位するように構成されていることを特徴とする請求項2記載の摩擦点接合装置の回転工具処理装置。
【請求項4】
上記ショルダ部には、上記ピン部を囲むような環状凹部が形成されていることを特徴とする請求項2または3記載の摩擦点接合装置の回転工具処理装置。
【請求項5】
上記移動手段はロボットであることを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の摩擦点接合装置の回転工具処理装置。
【請求項1】
複数の金属部材を重ね合わせ、ショルダ部から突出するピン部を備えた回転工具を回転させながら上記ピン部および上記ショルダ部を上記金属部材に押圧し、摩擦熱で上記金属部材を軟化させ、塑性流動を生じさせて当該金属部材同士をスポット接合させる摩擦点接合装置の回転工具処理方法であって、
少なくとも1回の接合を行った後、上記ショルダ部への上記金属部材の凝着状態を検知手段で検知する凝着状態検知工程と、
上記凝着状態検知工程において、上記凝着状態が所定値以上であると検知されたときに実行される凝着物除去工程とを含み、
上記凝着物除去工程は、上記回転工具を回転させながら上記ピン部および上記ショルダ部を処理用金属部材に押圧して凝着物を除去するものであることを特徴とする摩擦点接合装置の回転工具処理方法。
【請求項2】
複数の金属部材を重ね合わせ、ショルダ部から突出するピン部を備えた回転工具を回転させながら上記ピン部および上記ショルダ部を上記金属部材に押圧し、摩擦熱で上記金属部材を軟化させ、塑性流動を生じさせて当該金属部材同士をスポット接合させる摩擦点接合装置の回転工具処理装置であって、
上記回転工具を回転させながら上記ピン部および上記ショルダ部を上記金属部材に押圧する駆動手段と、
上記回転工具と上記駆動手段とを備え、上記回転工具を接合位置に移動させる移動手段と、
少なくとも1回の接合を行った後、上記ショルダ部への上記金属部材の凝着状態を検知する検知手段と、
上記検知手段による検知信号が、所定値以上の凝着状態であることを示したとき、上記移動手段で上記回転工具を処理用金属部材に対向して位置させ、上記駆動手段で上記回転工具を回転させながら上記ピン部および上記ショルダ部を該処理用金属部材に押圧して凝着物を除去する凝着物除去動作を行わせる制御手段とを備えることを特徴とする摩擦点接合装置の回転工具処理装置。
【請求項3】
上記検知手段は、上記ショルダ部と略当接可能に配置された検知プレートと、
上記ショルダ部を上記検知プレートに略当接させたときの該検知プレートの変位量を検知する変位センサとを備え、
上記検知プレートは、上記ショルダ部を該検知プレートに略当接させたとき、上記ショルダ部への上記金属部材の凝着状態に応じた変位量で変位するように構成されていることを特徴とする請求項2記載の摩擦点接合装置の回転工具処理装置。
【請求項4】
上記ショルダ部には、上記ピン部を囲むような環状凹部が形成されていることを特徴とする請求項2または3記載の摩擦点接合装置の回転工具処理装置。
【請求項5】
上記移動手段はロボットであることを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の摩擦点接合装置の回転工具処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−83295(P2007−83295A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277511(P2005−277511)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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