説明

摺動底蓋付き注出容器

【課題】 摺動底蓋付き注出容器において、その遮光性を損なうことなく容器本体内の内容物の残量が一定量以下となったことを、確実に確認できるようにすることを技術的課題とし、もって、光による品質の劣化あるいは低下を確実に防ぐと共に、使用の途中で内容物が無くなることによる不便の発生を、未然に防止することを目的とする。
【解決手段】 胴部内に摺動底蓋を軸心方向に沿って密摺動可能に嵌装した容器本体と、この容器本体の上端開口部に組付き固定され、注出口を形成するノズルヘッドを有するポンプを有する摺動底蓋付き容器において、胴部の所定高さ位置に配設される透視窓部分を除いた胴部の略全領域に遮光性を付与し、内容物の所定量の消費に伴なって所定高さ位置に上昇した摺動底蓋を透視窓から視覚可能に構成し、さらに、ノズルヘッドを覆うキャップの下端から垂下片を垂下延設し、該垂下片に遮光性を付与し、このキャップを装着した状態で、垂下片が透視窓を設けた部分を外装する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を収納した容器本体内に外気を吸い込むことなく、内容物を注出することのできる、摺動底蓋付き注出容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
嫌気性の化粧液とか歯磨き液等の内容物を収納して、ポンプに組付けられたノズルヘッドに対する押圧操作により、内容物を注出し、この注出した内容物の体積分だけ、容器本体内の内容物収納容積を減少させて、外気を吸い込むことなく、内容物の注出に伴う減圧の発生を防止して、良好な内容物注出動作を維持する注出容器がある。
【0003】
この注出容器の代表的な従来技術は、たとえば特許文献1に記載があるように、内容物の注出口を形成するノズルヘッドを有するポンプを上端に組付けた容器本体内に、軸心方向に沿って密摺動可能に摺動底蓋を嵌装組付けした構成となっており、摺動底蓋の上位の容器本体内に内容物を収納するものとなっている。
【0004】
そして、上記従来技術の注出容器は、容器の外観形状を一定に保持したまま、外気を吸い込むことなく、内容物の注出を達成することができるので、内容物の品質を劣化させることなく長期間使用できる、と云う利点がある。
【特許文献1】特開2003−212262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来技術にあっては、内容物を光から保護する等の目的から、容器本体の胴部を遮光性のフィルムにより外装したり、容器本体を黒色に着色した樹脂で成形する等の手段で遮光性を付与して容器本体を構成した場合、内容物の収納量の変化に関わりなく、容器本体の外観形状が一定不変であるので、内容物の残量を確認する手段が全くなく、このため使用の途中で内容物が無くなって、大いに不便する、と云う問題があった。
【0006】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたものであり、摺動底蓋付き注出容器において、その遮光性を損なうことなく容器本体内の内容物の残量が一定量以下となったことを、確実に確認できるようにすることを技術的課題とし、もって、光による品質の劣化あるいは低下を確実に防ぐと共に、使用の途中で内容物が無くなることによる不便の発生を、未然に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決する本発明の内、請求項1記載の発明の手段は、
胴部内に摺動底蓋を軸心方向に沿って密摺動可能に嵌装した容器本体と、この容器本体の上端開口部に組付き固定され、注出口を形成するノズルヘッドを有するポンプを有すること、
胴部の所定高さ位置に配設される透視窓部分を除いた胴部の略全領域に遮光性を付与し、内容物の所定量の消費に伴なって所定高さ位置に上昇した摺動底蓋を透視窓から視覚可能に構成すること、
さらに、ノズルヘッドを覆うキャップの下端から垂下片を垂下延設し、該垂下片に遮光性を付与し、このキャップを装着した状態で、垂下片が透視窓を設けた部分を外装する構成とすること、
にある。
【0008】
請求項1記載の上記構成により、ノズルヘッドを押圧操作して、略一定量の内容物を注出すると共に、ポンプ内に容器本体内から略一定量の内容物を吸い上げると、容器本体内に減圧が発生し、この発生した減圧に従って、摺動底蓋が容器本体内を上昇変位して、容器本体内の内容物収納空間の容積を、ポンプに吸い上げられた内容物の体積に相当する分だけ減少させ、これにより容器本体内の内容物収納空間に発生した減圧を消滅させる。
【0009】
そして、内容物を所定量使用した段階で摺動底蓋が所定高さ位置まで上昇すると、使用者は透視窓からこの摺動底部を視覚、認識することができ、それにより内容物の残存量が少ないことを確実に知ることが可能となり、残量表示機能が発揮される。
ここで、透視窓の形成は1箇所に限定されるものではなく、目的に応じて、たとえば高さ方向に複数個所に形成することもできる。
なお、ここで容器本体自体は透明性、あるいは半透明性の材料で成形しておく。
【0010】
また、製品の使用開始前はキャップを装着しておくことで、キャップの下端から垂下延設され、遮光性が付与された垂下片が透視窓を外装するので、この透視窓部分からの光線の進入を防ぐことができ、光による内容物の品質の劣化、あるいは低下を確実に防ぐことができる。
【0011】
そして、使用時にキャップを取り外せば透視窓の残量表示機能が発揮され、その後またキャップを装着して保管することもできる。
なお、垂下片はキャップの下端の一部を垂下延設してもよいし、全周に亘って垂下延設することもできる。
また、垂下片に遮光性を付与する方法としては、キャップ全体を遮光効果のある顔料、フィラーを分散した合成樹脂で成形する方法、垂下片に遮光性フィルムを貼着する方法、転写フィルムで遮光層を積層する方法、遮光性塗料で塗装する方法等がある。さらには、アルミ製等の金属製のキャップを使用することもできる。
【0012】
請求項2記載の発明の手段は、請求項1記載の発明において、キャップの下端の一部から垂下片を垂下延設すること、にある。
【0013】
請求項2記載の上記構成により、全周に亘って垂下延設する場合に比較してキャップに使用する合成樹脂の量を軽減できる。
また、この場合、キャップを装着した場合に垂下片が透視窓の位置に対向位置するように、周方向での位置決めができるようにしておくのが好ましい。
【0014】
請求項3記載の発明の手段は、請求項1または2記載の発明において、基材フィルムに、透視窓に相当する部分を除いて、蒸着層を積層した遮光性フィルムで外装して胴部に遮光性を付与する構成とすること、にある。
【0015】
請求項3記載の上記構成は胴部に遮光性を付与し、透視窓を付設するための具体的な手段に係るものであり、基材フィルムに遮光性に優れた金属系材料からなる蒸着層を積層した遮光性フィルムで外装することにより、胴部に遮光性を容易に、かつ確実に付与することができ、蒸着層を形成する際に透視窓に相当する部分をマスキングしておくことにより、透視窓も容易に形成することが可能である。
【0016】
なお、蒸着層の上に保護層となるクリア層を積層するのが好ましい。
また、遮光性を付与し、透視窓を付設するための手段は上記遮光性フィルムで外装する方法に限定されるものではなく、たとえば胴部を遮光性を有する塗料で塗装する等の手段も使用することができる。
【0017】
請求項4記載の発明の手段は、請求項1、2または3記載の発明において、摺動底蓋を有色に着色すること、にある。
【0018】
上記請求項4記載の構成により、摺動底蓋は胴部壁、透視窓を介して視覚されるが、摺動底蓋をたとえば赤色等の目立つ色に着色したものとすることにより、より明確に、確実に認識することができる。
【0019】
請求項5記載の発明の手段は、請求項1、2、3または4記載の発明において、摺動底蓋の側周部分を、上下方向に複数段に分けて異なる色で着色するようにすること、にある。
【0020】
上記請求項5記載の構成により、たとえば上下2段に分けて上を黄色、下を赤色で着色するようにしておけば、まず最初に黄色、次に赤色を透視窓から認識することができ、それにより内容物の残量を2段階に分けて認識することができる。勿論3段、4段等に色分けの数を増やすこともできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
請求項1記載の発明にあっては、内容物を所定量使用した段階で摺動底蓋が所定高さ位置まで上昇すると、使用者は透視窓からこの摺動底部を視覚、認識することができ、それにより内容物の残存量が少ないことを確実に知ることができる。
【0022】
また、製品の使用開始前はキャップを装着しておくことで、キャップの下端から垂下延設され、遮光性が付与された垂下片が透視窓を外装するので、この透視窓部分からの光線の進入を防ぐことができ、光による内容物の品質の劣化、あるいは低下を確実に防ぐことができる。
【0023】
請求項2記載の発明にあっては、キャップの下端の一部から垂下片を垂下延設することにより、全周に亘って垂下延設する場合に比較してキャップに使用する合成樹脂の量を軽減できる。
【0024】
請求項3記載の発明にあっては、基材フィルムに遮光性に優れた蒸着層を積層した遮光性フィルムで外装することにより、胴部に遮光性を容易にかつ確実に付与することができ、また、蒸着層を形成する際に透視窓に相当する部分をマスキングしておくことにより、透視窓も容易に形成することが可能である。
【0025】
請求項4記載の発明にあっては、摺動底蓋をたとえば赤色等の目立つ色に着色したものとすることにより、より明確に、確実に認識することができる。
【0026】
請求項5記載の発明にあっては、摺動底蓋の側周部分を、上下方向に複数段に分けて異なる色で着色するようにすることにより、色により内容液の残量を複数の段階で知ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施例に沿って、図面を参照しながら説明する。
図1〜図5は本発明の摺動底蓋付き注出容器の一実施例を示すものであり、内容物の注出口4aを形成するノズルヘッド4を上端に組付けたポンプ3と、このポンプ3を上端開口部に組付けた容器本体1と、この容器本体1の胴部2内に、軸心方向に沿って密摺動可能に嵌装する摺動底蓋6と、胴部2の下端開口部に嵌着する底カバー10と、ノズルヘッド4を覆うキャップ5から構成される。
【0028】
容器本体1の胴部2は円筒状であり、スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN)等の透明性の、あるいはポリプロピレン等の半透明性の合成樹脂材料で射出成形されている。胴部2の正面上端部には左右と下方を浅い段差部2sに囲われるようにして、外周面に沿って浅い凹部2aが形成されている。
【0029】
また、胴部2は下端部を除いた全高さ範囲を基材フィルム13Bに遮光性に優れた金属系材料からなる蒸着層13Vを、横長長円状の小さな透視窓14部分を除いた全領域に積層し、さらに保護層の機能を発揮するクリア層13Cを積層した遮光性フィルム13で外装されている。
この透視窓14は、遮光性フィルム13を胴部2に外装した状態で、胴部2の上記した凹部2aに位置し、この透視窓14そして、透明あるいは半透明の胴部2の壁を透して容器本体1の内部が視覚できるようにしている。(図4も参照)
【0030】
なお、遮光性フィルム13で外装方法については特に限定されるものではないが、遮光性フィルム13を円筒状にして金型内にセットした状態で容器本体1を射出成形する、所謂インサート成形法によれば、胴部2に上記したような凹部2aがあっても、その形状に沿って密着状に外装することができ、遮光性、耐久性、外観性の点から好ましい方法である。
さらにこのインサート成形方法によれば、転写フィルムを使用して、基材フィルムを除く接着層/蒸着層/保護層等で構成される遮光機能層だけで外装することもでき、一層高品位な外観性を発揮させることができる。
【0031】
摺動底蓋6は、低密度ポリエチレン等の比較的軟質な合成樹脂製で、円板状の底板9の外周縁から、外鍔状の連結部を介して、外周面の上下両端部を、胴部2内周面に密摺接させるシール筒片7を連設した構成となっている。またシール筒片7の内側には内筒片8が垂下設されており、その下端が胴部2の下端開口部に嵌入状に組付き固定する底カバー10に当接して、摺動底蓋6の下限位置が決められる。また、底カバー10の中央には通気孔11が形成されており、摺動底蓋6の上昇に従って外気が進入できるようにしている。(図1、3参照)
【0032】
また、この摺動底蓋6は底板9と内筒片8からなる部分を射出成形し、その後シール筒片7部分をさらに射出成形した、所謂2色成形品であり、たとえば底板9と内筒片8からなる部分を黄色に、シール筒片7部分赤色にと云うように異なる色で着色されている。(図2では、この色の違いを水玉模様と、クロスハッチ模様で表している。)
【0033】
キャップ5は有頂円筒状であり、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等の射出成形品で、下端の一部から垂下片5aが垂下延設されている。この垂下片5aの外表面には、胴部2を外装する遮光性フィルム13と同様な積層構造を有する遮光性フィルム15が貼着されており、これにより垂下片5aに遮光性が付与される。
【0034】
次に、上記説明した容器についてその使用態様を説明する。
図1に示した状態は、製品が販売される状態、あるいは購入後の使用開始前の状態を示すものであり、キャップ5が装着された状態で、垂下片5aが、胴部2に形成された凹部2aに嵌入した状態でこの凹部2a外周面に外接しており、この垂下片5aにより透視窓14部分からの光線の進入を防ぐことができるので、製品の使用開始前における光による内容物の品質の劣化、あるいは低下を確実に防ぐことができる。
【0035】
そして、使用時にはキャップ5を取り外すので透視窓14の残量表示機能が忘れることなく発揮され、摺動底蓋6を図2に示されるようにたとえば底板9と内筒片8からなる部分を黄色に、シール筒片7部分を赤色にしておけば、内容物の注出消費が進むに従って摺動底蓋6が上昇変位し、まず最初に黄色が認識され(図3参照)、次に赤色を認識することができ(図5参照)、内容物の残量を2段階に分けて認識することができる。
【0036】
そして、予め視覚される色と内容液の残量の関係を決めて表示しておけば、残量が予測でき、予備の製品を購入し、使用の途中で内容物が無くなって、大いに不便すると云う問題も解消することができる。
【0037】
以上、実施例に沿って本願発明の実施形態とその作用効果について説明したが、本願発明はこの実施例に限定されるものではない。
たとえば、透視窓14の形状、形成位置は外観や視覚効果を考慮して、垂下片5aの垂下延設形状と組み合わせて様々に設計することができ、摺動底蓋6の着色態様とも組み合わせて、多様な残量表示機能を発揮させることができ、透視窓14を複数個所に形成することもできる。
【0038】
また、上記実施例では摺動底蓋6を上下2色に着色した例を説明したが、勿論全体を同色としてもよいし、さらに多段に着色を変えることもできる。また、着色する替わりに、外周面に文字、記号、図案等を印刷して透視窓からそれらが視覚できるようにすることもできる。
【0039】
また、胴部、あるいは垂下片への遮光性の付与、および透視窓の形成方法は遮光性フィルムで外装する他にも、たとえば遮光性を有する塗料で塗装する等の手段を使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上説明したように、本発明の摺動底蓋付き注出容器は遮光性を損なうことなく容器本体内の内容物の残量を確認でき、使用の途中で内容物が無くなることによる不便が解消したものであり、空気や光による品質の劣化や低下がある化粧料等の用途での幅広い展開が期待される。

【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の摺動底蓋付き注出容器の一実施例を示す、部分破断正面図である。
【図2】図1に示した容器の摺動底蓋の半縦断面図である。
【図3】図1で内容物の消費が進んだ状態をキャップを取り外して示す部分破断正面図ある。
【図4】図3中のA−A線に沿って示す透視窓近傍の縦断面図である。
【図5】図3で内容物の消費がさらに進んだ状態を示す部分破断正面図ある。
【符号の説明】
【0042】
1 ;容器本体
2 ;胴部
2s;段差部
2a;凹部
3 ;ポンプ
4 ;ノズルヘッド
4a;注出口
5 ;キャップ
5a;垂下片
6 ;摺動底蓋
7 ;シール筒片
8 ;内筒片
9 ;底板
10;底カバー
11;通気孔
13;遮光性フィルム
13B;基材フィルム
13V;蒸着層
13C;クリア層
14;透視窓
15;遮光性フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部(2)内に摺動底蓋(6)を軸心方向に沿って密摺動可能に嵌装した容器本体(1)と、該容器本体(1)の上端開口部に組付き固定され、注出口を形成するノズルヘッド(4)を有するポンプ(3)を有し、前記胴部(2)の所定高さ位置に配設される透視窓(14)部分を除いた前記胴部(2)の略全領域に遮光性を付与し、内容物の所定量の消費に伴なって前記所定高さ位置に上昇した前記摺動底蓋(6)を透視窓(14)から視覚可能に構成し、さらに、前記ノズルヘッド(4)を覆うキャップ(5)の下端から垂下片(5a)を垂下延設し、該垂下片(5a)に遮光性を付与し、該キャップ(5)を装着した状態で、前記垂下片(5a)が前記透視窓(14)を設けた部分を外装する構成とした摺動底蓋付き注出容器。
【請求項2】
キャップ(5)の下端の一部から垂下片(5a)を垂下延設した請求項1記載の摺動底蓋付き注出容器。
【請求項3】
基材フィルム(13B)に、透視窓(14)に相当する部分を除いて、蒸着層(13V)を積層した遮光性フィルム(13)で外装して胴部(2)に遮光性を付与する構成とした請求項1または2記載の注出容器
【請求項4】
摺動底蓋(6)を有色に着色した請求項1、2または3記載の注出容器。
【請求項5】
摺動底蓋(6)の側周部分を、上下方向に複数段に分けて異なる色で着色するようにした請求項1、2、3または4記載の注出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−87790(P2008−87790A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−268528(P2006−268528)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】