説明

摺動式電子部品

【課題】回転体等の移動体の規定位置への自動復帰の際の自動復帰部材による衝撃音・衝撃振動を効果的に減少できる摺動式電子部品を提供する。
【解決手段】基台80と、基台80の表面に対向して設置される回転体(移動体)50と、基台80と回転体50の間に設置され回転体50の移動に伴なって電気的出力を変化する電気的機能部(摺動子67等)と、回転体50の基台80を設置した反対側の面を押えて基台80と回転体50の離間距離を一定に保つ押え部材79とを具備し、さらに回転体50を規定位置に自動復帰させる弾発力を付与するねじりコイルバネ(自動復帰部材)73をこの回転体50に収納してなる構造の回転式電子部品(摺動式電子部品)である。押え部材79と回転体50の対向面に回転体50の回転に抵抗を付与する抵抗付与部として、グリス介在面又は摩擦摺動面又はグリス介在兼摩擦摺動面65,795を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式電子部品やスライド式電子部品等の摺動式電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば回転式電子部品は、回転側の部材(移動体)を回転することでその電気的出力を変化するように構成されている。図8はこの種従来の回転式電子部品(摺動式電子部品)180を示す図である。同図(a)に示すように回転式電子部品180は、金属板製の基台190上にフレキシブル回路基板200を載せ、その上に中立点復帰用バネ230を取り付けた成形樹脂製の回転体210を回動自在に取り付けて構成されている。ここで基台190の両側辺の下部の対向する位置には紙面手前側に折り曲げられて突出する係止片191,193が設けられ、また基台190のほぼ中央には紙面手前側に突出する円筒状の軸部195が設けられている。フレキシブル回路基板200はその表面の回転体210によって隠れている部分に、円弧状のスイッチパターン(又は抵抗体パターン)を印刷し、その下端部に金属端子板製の端子211を突出するように取り付けて構成されている。回転体210は成形樹脂製であり、略円板状の基部212の外周側面からレバー213を突出し、また基部212の中央を前記軸部195によって回動自在に軸支し、その周囲に突出部223を設け、さらにその周囲にリング状に凹むバネ収納部217を設け、バネ収納部217の下部には切り欠き218を設けてその両側を当接部219,221として構成されている。なお基部212のフレキシブル回路基板200側の面には図示しない摺動子が取り付けられており、フレキシブル回路基板200のスイッチパターン(又は抵抗体パターン)に当接している。中立点復帰用バネ230はねじりコイルバネであり、リング状に巻いたコイル部231をバネ収納部217内に収納し、両端の引出部233,235をそれぞれ回転体210の当接部219,221と、基台190の係止片191,193の両者に係止することで回転体210を中立点に位置している。
【0003】
そして例えば図8(b)に示すようにレバー213を矢印a方向に押圧すると回転体210は時計回りに回動し、図示しない摺動子がスイッチパターン(又は抵抗体パターン)上を摺動することで各端子211間の電気的出力が変化する。このとき中立点復帰用バネ230の左側の引出部233は係止片191に係止されたままであるが、右側の引出部235は当接部221に押圧されて引出部233側に移動し、このときコイル部231は絞られて強い弾発復帰力を生じ、従ってレバー213への押圧を解除すると回転体210は元の中立点位置に自動復帰する。
【0004】
しかしながら上記従来の回転式電子部品180においては、レバー213への押圧を解除した際、中立点復帰用バネ230の前記強い弾発復帰力によって回転体210が中立点位置に自動復帰する際、同時に中立点復帰用バネ230の引出部235が係止片193に強く当接し、その衝撃力で強い当接音及び/又は当接振動が発生するという問題があった。この問題を解決するため、例えば特許文献1においては、前記中立点復帰用バネ230の両引出部233,235又は係止片191,193に緩衝部材(緩衝用樹脂チューブ)を取り付ける方法が考えられている。このように構成すれば、前記衝撃音・衝撃振動をかなり緩和させることができる。しかしながら中立点復帰用バネ230の弾発復帰力が強い場合は、この方法によって前記衝撃音・衝撃振動を減衰しても、さらに衝撃音・衝撃振動が残ってしまう場合があり、さらなる衝撃音・衝撃振動の減衰が望まれていた。またこの方法の場合、別途緩衝部材(緩衝用樹脂チューブ)が必要となり、部品点数が増加し、その組み立て作業も煩雑となってしまう。
【特許文献1】特開2002−198209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、回転体等の移動体の規定位置への自動復帰の際の自動復帰部材による衝撃音・衝撃振動を効果的に減少できる摺動式電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1に記載の発明は、基台と、基台の表面に対向して設置される移動体と、前記基台と移動体の間に設置され前記移動体の移動に伴なって電気的出力を変化する電気的機能部と、移動体の前記基台を設置した反対側の面を押えて基台と移動体の離間距離を一定に保つ押え部材とを具備し、さらに前記移動体を規定位置に自動復帰させる弾発力を付与する自動復帰部材をこの移動体に収納してなる構造の摺動式電子部品において、前記押え部材と移動体の対向面に移動体の移動に抵抗を付与する抵抗付与部を設けたことを特徴とする摺動式電子部品にある。
【0007】
本願請求項2に記載の発明は、前記抵抗付与部は、前記押え部材と回転体の対向面にグリスを介在させて構成されるグリス介在面であることを特徴とする請求項1に記載の摺動式電子部品にある。
【0008】
本願請求項3に記載の発明は、前記抵抗付与部は、前記押え部材と回転体の対向面を接触させて構成される摩擦摺動面であることを特徴とする請求項1に記載の摺動式電子部品にある。
【0009】
本願請求項4に記載の発明は、前記抵抗付与部は、前記押え部材と回転体の対向面にグリスを介在させ且つ接触させて構成されるグリス介在兼摩擦摺動面であることを特徴とする請求項1に記載の摺動式電子部品にある。
【0010】
本願請求項5に記載の発明は、前記移動体は前記基台から突出する軸に回動自在に取り付けられる回転体であり、一方前記押え部材はこの軸に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2又は3又は4に記載の摺動式電子部品にある。
【0011】
本願請求項6に記載の発明は、前記自動復帰部材はねじりコイルバネであり、このねじりコイルバネは前記回転体の押え部材側の面に前記軸を囲むように形成された自動復帰部材収納部内に収納され、その両端の引出部を外部に突出してこれら引出部を回転体に隣接して設置した固定側部材の係止部に弾接させることで回転体に規定位置への自動復帰力を付与することを特徴とする請求項5に記載の摺動式電子部品にある。
【0012】
本願請求項7に記載の発明は、前記押え部材はねじりコイルバネを収納した前記自動復帰部材収納部を塞ぎ、且つこの押え部材の自動復帰部材収納部を塞いだ部分の外周部分を囲む位置に前記抵抗付与部を設けたことを特徴とする請求項6に記載の摺動式電子部品にある。
【発明の効果】
【0013】
請求項1,2,3,4に記載の発明によれば、押え部材と移動体の対向面に移動体の移動に抵抗を付与する抵抗付与部(グリス介在面,摩擦摺動面,グリス介在兼摩擦摺動面)を設けたので、回転体の回転に強い抵抗(粘性抵抗,摩擦抵抗,粘性及び摩擦抵抗)を与えることができ、従って自動復帰部材による復帰力の強さに比べて移動体の移動速度をかなり遅いものにできる。従って自動復帰部材の一部が固定側部材に当接する等の際の衝撃音・衝撃振動はほとんど生じなくなる。
【0014】
請求項5,6に記載の発明によれば、本発明に係る摺動式電子部品を容易に回転式電子部品に適用できる。
【0015】
請求項7に記載の発明によれば、前記押え部材をねじりコイルバネを収納した自動復帰部材収納部を塞ぐことに利用できる。また押え部材の自動復帰部材収納部を塞いだ部分の外周部分を囲む位置に抵抗付与部を設けたので、抵抗付与部を回転体の外周側の位置に形成でき、これによって回転体の回転トルクを効果的に強くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明を適用してなる電子部品である摺動式電子部品(以下この実施形態では「回転式電子部品」という)1を取付台120上に取り付けた状態を示す側断面図である。また図2は前記取付台120上に取り付けた回転式電子部品1の分解斜視図である。両図において回転式電子部品1は、可撓性を有する合成樹脂フイルムの表面に電気的な各種機能を有するパターンからなる機能パターン部13と端子パターン部15とを設けたフレキシブル回路基板11と、前記フレキシブル回路基板11の機能パターン部13を設けた部分を取り付ける電子部品取付部81を有する固定側部材(以下この実施形態では「基台」という)80と、前記基台80から突出する軸87に回動自在に取り付けられ前記フレキシブル回路基板11の機能パターン部13を設けた部分の表面上に設置されて機能パターン部13の出力を変化する移動体(以下この実施形態では「回転体」という)50と、前記回転体50に収納されて回転体50を規定位置に自動復帰させる弾発力を付与する自動復帰部材(以下この実施形態では「ねじりコイルバネ」という)73と、前記軸87に取り付けられ前記回転体50の軸87からの抜けを防止する押え部材79とを具備している。またこの回転式電子部品1の基台80は、前記回転式電子部品1を設置する電子部品取付部81と電子部品取付部81から屈曲して前記回転式電子部品1から離れる方向に伸びる圧接接続部85とを一体形成して構成されており、この基台80の圧接接続部85と取付台120との間に回路基板140と回転式電子部品1から引き出したフレキシブル回路基板11とを挟持することで前記回路基板140に設けた下記する端子パターン141とフレキシブル回路基板11に設けた下記する端子パターン19間を圧接接続した状態でこれら各部材を固定部材150を用いて取付台120に固定している。以下各部材について説明する。
【0017】
ここで図3に示すように、フレキシブル回路基板11の周囲と背面とには成形樹脂製の基台80がインサート成形によって取り付けられている。フレキシブル回路基板11は基台80の電子部品取付部81に保持される機能パターン部13と、基台80の電子部品取付部81の下部から突出する端子パターン部15とを具備しており、機能パターン部13の表面には円弧状の摺接パターン17が設けられ、端子パターン部15には端子パターン19が設けられ、摺接パターン17と端子パターン19間は接続パターン21によって接続されている。なお摺接パターン17はスイッチパターンであっても良く、抵抗体パターンであっても良く、さらにそれら以外の機能を有するパターンであっても良い。端子パターン部15の両側面には下記する固定部材150の取付片153を係合する凹状の係合部23,23が設けられている。フレキシブル回路基板11の中央(回転体50の回転中心軸部分)には小孔からなる貫通孔25が設けられている(図1参照)。
【0018】
基台80は成形樹脂を略半円板状に成形してなる電子部品取付部81と、電子部品取付部81を略L字状に屈曲することで回転式電子部品1(回転体50)から離れる方向(後方)に伸びる圧接接続部85とを一体成形して構成されている。電子部品取付部81は、フレキシブル回路基板11の機能パターン部13の周囲と背面とを囲むように成形されている。また電子部品取付部81の上部中央にはストッパー用の係止部83が設けられ、また電子部品取付部81の下部両側には前方(回転体50側)に向かって突出する取付部84,84が設けられている。取付部84の上面は半径方向外側に向かって下降するように傾斜する面状の係止部84aとなっている。また電子部品取付部81にはフレキシブル回路基板11の機能パターン部13に設けた貫通孔25(図1参照)を貫通して突出する円柱状の軸87が設けられ、軸87の先端には軸87よりもその外径寸法を小さくしてなる円筒状の取付部89が突設されている。一方圧接接続部85は平板状で、その両側辺に下記する固定部材150の取付片153を係合する凹状の係合部86,86が設けられている。
【0019】
回転体50は、図1に示すように、フレキシブル回路基板11の機能パターン部13に対向する側の面に摺動子67を取り付け、またその反対側の面にねじりコイルバネ73を収納し、さらに基部80の軸87からの抜けが押え部材79によって防止されている。即ち回転体50は略円板状の樹脂成形品であり、その中央に前記基台80の軸87を回動自在に挿入する貫通孔52が設けられ、その一方の面を摺動子取付面53とし、また他方の面に自動復帰部材収納部55を設けている。自動復帰部材収納部55は貫通孔52の周囲を囲むリング形状の凹部によって構成されており、その半径方向外側に向けて一対の切り欠き状の引出部挿通部58,58が設けられている。また自動復帰部材収納部55の中央は円筒状の突出部59となっており、その内部に前記貫通孔52が形成されている。引出部挿通部58,58の下側の面は当接部60,60となっている。自動復帰部材収納部55は、下記するねじりコイルバネ73のコイル部75が収納される寸法に形成されている。また回転体50の押え部材79に対向する側の面の前記自動復帰部材収納部55の周囲を囲むリング状(但し引出部挿通部58,58の部分で二ヶ所切れている)の面は、回転体50の移動に抵抗を付与する抵抗付与部(以下この実施形態では「グリス介在面」という)65となっている。このグリス介在面65は何れの部分も同一平面上(回転体50の回転軸に垂直な平面上)にあり、図1に示すように、その表面は、前記突出部59の先端面よりも少し押え部材79側に突出する位置に形成されている。一方回転体50の上部からはつまみ取付部61が突出している。また回転体50の摺動子取付面53には、図1に示すように下記する摺動子67の取付部69,69に挿入される小突起状の固定部63が突設されている。
【0020】
図1に示す摺動子67は弾性金属板を略リング状に形成して構成されており、その上下部分二ヶ所に穴からなる取付部69,69を設け、またその所定位置に摺接部71を設けている。図2に示すねじりコイルバネ73は線材をコイル状に巻き回したコイル部75の両端から引出部77,77を引き出して構成されている。このねじりコイルバネ73は両引出部77,77を上方向に移動することでコイル部75の内径が小さくなって絞られる方向になるように巻き回されている。
【0021】
図4は押え部材79を図2の反対面側から見た斜視図である。同図及び図1,図2に示すように押え部材79は、成形樹脂を略平板状(上部が半円板状、下部が矩形板状)であって前記回転体50の自動復帰部材収納部55を塞ぐ外形寸法よりも少し大きい外形寸法に形成して構成されており、その中央に前記基台80の取付部89を挿入する円形の貫通孔からなる挿入部791を設け、またその回転体50側の面にリング状に突出するバネ押え部793を設けている。バネ押え部793は回転体50の自動復帰部材収納部55に対向してコイル部75を押える位置に形成されている。また押え部材79の回転体50側の面の前記バネ押え部793の外周をリング状に囲む平面(図4に点線で示す面)は、回転体50の移動に抵抗を付与する抵抗付与部(以下この実施形態では「グリス介在面」という)795となっている。グリス介在面795は図2に示す回転体50のグリス介在面65の対向面に設けられる。
【0022】
固定部材150は金属板製であり、前記基台80の圧接接続部85の上面をほぼ覆う矩形状の押え部151と、押え部151の両側辺から二本ずつ突出して下方向に屈曲される舌片状の取付片153とを具備して構成されている。各取付片153は前記圧接接続部85の各係合部86,86に対向する位置に形成されている。回路基板140は、可撓性を有する合成樹脂フイルム上に3つの端子パターン141を設け、各端子パターン141から引き出した引出パターン143をこの回路基板140の引出部145に導出している。また回路基板140の先端側の一辺には二つの凹状の係合部147が設けられ、また各端子パターン141を形成した部分よりも引出部145を引き出す側の部分にも二つの貫通孔からなる係合部147が設けられている。取付台120はモールド樹脂を略矩形状に成形して構成されており、その前方側は電子部品設置部121、後方側は基板圧接部123となっている。基板圧接部123の略中央には矩形状で凹状の弾発手段収納部125が設けられ、また基板圧接部123の両側辺にはそれぞれ2つずつの凹状の係合部127が設けられている。また弾発手段収納部125内に収納される弾発手段130は弾性金属板製であり、略矩形状の基部131の長手方向の一側辺から三本の弾発片133を突出して上方向に折り曲げ、それぞれの先端に上方向に突出する弾発部135を形成して構成されている。
【0023】
次に回転式電子部品1の組み立て方法を説明すると、まず予め前記回転体50のグリス介在面65と押え部材79のグリス介在面795の何れか一方の面又は両者の面に、グリスを塗布しておく。また予め回転体50の摺動子取付面53に摺動子67を当接し、その際回転体50に設けた固定部63(図1参照)を摺動子67に設けた取付部69,69(図1参照)に挿入してその先端を熱カシメすることで固定しておく。次にこの回転体50を基台80に取り付けたフレキシブル回路基板11の機能パターン部13の表面上に設置し、その際基台80の軸87を回転体50の貫通孔52に回動自在に挿入する。次に回転体50の自動復帰部材収納部55内にねじりコイルバネ73のコイル部75を収納して両端の引出部77,77をそれぞれ回転体50の引出部挿通部58,58に挿入し、当接部60,60に弾接させ(このとき引出部77の先端は引出部挿通部58,58からその外方に突出し、基台80の係止部84a上に弾接している)、その上から押え部材79を被せて押え部材79の挿入部791に基台80の取付部89を挿入し、その先端を熱カシメして回転体50及びねじりコイルバネ73の軸87からの抜けを押える。このとき同時に回転体50のグリス介在面65と押え部材79のグリス介在面795とがグリスの層を介して接触する。つまりこの実施形態における抵抗付与部は、押え部材79と回転体50の対向面にグリスを介在させて構成されるグリス介在面795,65である。なおこのとき回転体50の突出部59の先端面は押え部材79の対向面に当接していない。これによって回転式電子部品1が完成する。このとき摺動子67の摺接部71は機能パターン部13の摺接パターン17上に当接する。なおフレキシブル回路基板11に設けた摺接パターン17とこれに摺接する摺動子67とによって電気的出力を変化する電気的機能部が構成される。
【0024】
以上のようにこの回転式電子部品1は、基台80と、基台80の表面に対向して設置される回転体50と、前記基台80と回転体50の間に設置され前記回転体50の移動に伴なって電気的出力を変化する電気的機能部(摺接パターン17と摺動子67)と、回転体50の前記基台80を設置した反対側の面を押えて基台80と回転体50の離間距離を一定に保つ押え部材79とを具備し、さらに前記回転体50を規定位置(中立位置)に自動復帰させる弾発力を付与するねじりコイルバネ73をこの回転体50に収納してなる構造の回転式電子部品1において、前記押え部材79と回転体50の対向面に回転体50の移動に抵抗を付与する抵抗付与部(グリス介在面)65,795を設けて構成されている。さらに具体的に言えば、前記ねじりコイルバネ73は前記回転体50の押え部材79側の面に前記軸87を囲むように形成された自動復帰部材収納部55内に収納され、その両端の引出部77,77を外部に突出してこれら引出部77,77を回転体50に隣接して設置した固定側部材(基台80の取付部84,84)の係止部84a,84aに弾接させることで回転体50に規定位置(中立位置)への自動復帰力を付与し、一方前記押え部材79はねじりコイルバネ73を収納した前記自動復帰部材収納部55を塞ぎ、且つこの押え部材79の自動復帰部材収納部55を塞いだ部分の外周部分を囲む位置に前記抵抗付与部(グリス介在面)65,795を設けている。
【0025】
以上のようにして組み立てた回転式電子部品1を取付台120上に取り付けるには、まず図2において、取付台120の弾発手段収納部125内に弾発手段収納部125の開口面より弾発部135が所定寸法外側に突出するように弾発手段130を収納した上で、その上に端子パターン141を上向きとした回路基板140を載置する。次に基台80に取り付けたフレキシブル回路基板11の端子パターン部15を図2に示すように基台80の圧接接続部85の下面側に折り曲げて、前記回路基板140上に載置する。そして前記圧接接続部85の上面に固定部材150の押え部151を載置し、その際固定部材150の各取付片153を圧接接続部85の各係合部86,86と端子パターン部15の係合部23,23と回路基板140の各係合部147と取付台120の各係合部127とに係合し、各取付片153の先端を取付台120の裏面に折り曲げ、これによって揺動式電子部品1を固定した基台80を取付台120に固定すると同時に、取付台120上に載置した回路基板140の三つの端子パターン141とフレキシブル回路基板11の三つの端子パターン19とを圧接接続部85の下面と弾発手段130の三つの弾発部135とによってそれぞれ圧接接続する。つまり基台80の圧接接続部85と取付台120との間に回路基板140と回転式電子部品1から引き出したフレキシブル回路基板11とを挟持することで弾発手段収納部125の開口面から突出している弾発手段130の三つの弾発部135が前記所定寸法押し下げられることにより、その弾発力により回路基板140に設けた端子パターン141とフレキシブル回路基板11に設けた端子パターン19間を圧接接続する。即ち電子部品取付部81に取り付けた回転式電子部品1から引き出したフレキシブル回路基板11と回路基板140との挟持を、電子部品取付部81から屈曲して揺動式電子部品1から離れる方向に伸びて回転式電子部品1の後方の位置にある圧接接続部85で行っている。
【0026】
図5は以上のようにして組み立てられた回転式電子部品1の動作説明図(但し、押え部材79の記載は省略)である。なおこの回転式電子部品1のつまみ取付部61にはつまみ160を取り付けている。そして回転体50が中立位置(規定位置)にあるときは、ねじりコイルバネ73の両引出部77,77は回転体50の当接部60,60と基台80の係止部84a,84aに弾接している。そして例えばつまみ160を矢印A方向に回動すれば、回転体50全体が矢印A方向に回動し、摺動子67の摺接部71がフレキシブル回路基板11の摺接パターン17上を摺動してその出力を変化する。その際ねじりコイルバネ73の左側の引出部77は元の位置に保持されたまま右側の引出部77が当接部60によって押し上げられて図5(b)の状態となる。このときねじりコイルバネ73のコイル部75はそのターン数を増やす方向にねじられるためその外径は小さくなり、従ってコイル部75の外周が自動復帰部材収納部55の内周面に強く当接することはなく、そのねじれがスムーズ且つ確実に行える。そしてつまみ160の揺動を解除すれば、ねじりコイルバネ73の弾発復帰力によって回転体50は元の図5(a)の状態に自動復帰する。
【0027】
ところで前述のようにつまみ160の揺動を解除してねじりコイルバネ73の弾発復帰力によって回転体50が元の中立位置に自動復帰する際、ねじりコイルバネ73の弾発復帰力の強さに比べて回転体50の回転速度はかなり遅いものとなる。何故なら前述のように固定側の部材である押え部材79と可動側の部材である回転体50の対向面に回転体50の移動に抵抗を付与するグリス介在面(抵抗付与部)65,795を設けたので、グリスの粘性によって回転体50の回転に粘性抵抗が与えられ、従ってその回転速度が大きく低下するからである。従って図5(b)に示すように、当接部60によって押し上げられた引出部77が再び係止部84aに当接する際の衝突による衝撃は非常に小さなものとなる。従ってこの当接による衝撃音・衝撃振動はほとんど生じない。このグリスによる衝撃吸収作用は、前記背景技術の欄で説明した緩衝部材(緩衝用樹脂チューブ)を用いた場合の衝撃吸収作用よりも大きなものであり、効果的である。
【0028】
なお上記実施形態において、回転体50のグリス介在面65を、自動復帰部材収納部55の中心側に位置する突出部59の先端面ではなく、自動復帰部材収納部55の外周側に位置する面を用いたのは、回転体50の中心付近よりもできるだけ外周側の位置の方が同じ粘性抵抗に対して半径が長い分、トルクを大きくできるからである。またグリス介在面65の面積も大きく取れてその分粘性抵抗を大きなものとできるからである。
【0029】
なお上記衝撃吸収作用をさらに大きく効果的なものとするため、回転体50のグリス介在面65と押え部材79のグリス介在面795の両者、或いは何れか一方の表面を多数の凹凸を設けた面(梨地処理面、シボ加工面)としてもよい。このように構成すれば、グリスによる粘性抵抗をより強く生じさせることができ、より効果的な衝撃吸収作用を発揮させることができる。
【0030】
また上記衝撃吸収作用をさらに大きく効果的なものとするため、前記回転体50と押え部材79の対向面であるグリス介在面65,795をグリスを介在させた状態で圧接することで接触させ、これによってこれら面65,795をグリス介在兼摩擦摺動面としてもよい。このように構成すれば、回転体50を回転した際のグリスによる粘性抵抗と摺動による摩擦抵抗とを同時に生じさせることができ、より強くより効果的な抵抗となり、より効果的な衝撃吸収作用を発揮させることができる。さらにこれらグリス介在兼摩擦摺動面65,795の両者或いは何れか一方の表面を多数の凹凸を設けた面(梨地処理面、シボ加工面)としてもよい。
【0031】
なお上記回転式電子部品1によれば、基台80の電子部品取付部81にフレキシブル回路基板11の機能パターン部13を貫通して突出する軸87を設け、この軸87に回転体50を回動自在に軸支したので、機能パターン部13上に回転体50を回動自在に取り付けるための部材を別途用意する必要はなく、部品点数の削減と構造の簡素化が図れる。
【0032】
図6は本発明の他の実施形態を適用してなる摺動式電子部品(以下この実施形態では「回転式電子部品」という)1−2を取付台120上に取り付けた状態を示す側断面図である。この実施形態において前記実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付す。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記実施形態と同じである。この実施形態において前記実施形態と相違する点は、押え部材79の形状と、押え部材79の形状の変更に合わせて変更した回転体50の押え部材79に対向する側の面の形状と、グリスを用いないで回転体50に所望の回転抵抗を与えるように構成した点である。
【0033】
ここで図7は押え部材79の斜視図(図4と同一角度から見たもの)である。同図に示す押え部材79において前記図4等に示す押え部材79と相違する点は、押え部材79に設ける抵抗付与部(以下この実施形態では「摩擦摺動面」という)795を、押え部材79の回転体50に対向する側の面の外周近傍にリング状に突出して設けた点である。つまり図4に示す押え部材79におけるグリス付与面795とほぼ同じ位置に、回転体側に突出するリング状の突出部797を設け、この突出部797の先端面をグリスを付与しない摩擦摺動面795とした点である。
【0034】
一方回転体50の押え部材79に対向する側の面には、前記実施形態と同様にその中央に貫通孔52を設け、その周囲に形成される円筒状の突出部59の外周側に自動復帰部材収納部55を設けて構成されている。そして前記実施形態と同様に前記自動復帰部材収納部55の周囲を囲むリング状の面(押え部材79に対向する面)が抵抗付与部(以下この実施形態では「摩擦摺動面」という)65となっている。この摩擦摺動面65は何れの部分も同一平面上(回転体50の回転軸に垂直な平面上)にあるが、この実施形態において前記実施形態と相違する点は、摩擦摺動面65の表面と、前記突出部59の先端面とを同一の面上に位置させた点のみである。
【0035】
そしてこの実施形態の場合、回転体50の摩擦摺動面65と押え部材79の摩擦摺動面795とが直接接触している。つまりこの実施形態における抵抗付与部は、押え部材79と回転体50の対向面を面接触させて構成される摩擦摺動面795,65である。このとき回転体50の突出部59の先端面は押え部材79の表面に当接していない(突出している突出部797が摩擦摺動面65に先に当接するから)。そして回転体50を回動すれば、前記実施形態と同様にその電気的機能部(摺接パターン17と摺動子67)の出力が変化する。そして前記回転体50の回動を解除すれば、ねじりコイルバネ73の弾発復帰力によって回転体50は元の中立位置に自動復帰する。ところで前述のように回転体50の回動を解除してねじりコイルバネ73の弾発復帰力によって回転体50が元の中立位置に自動復帰する際、ねじりコイルバネ73の弾発復帰力の強さに比べて回転体50の回転速度はかなり遅いものとなる。何故なら前述のように固定側の部材である押え部材79と可動側の部材である回転体50の対向面に回転体50の移動に抵抗を付与する摩擦摺動面(抵抗付与部)65,795を設けたので、両者の摩擦抵抗によって回転体50の回転に抵抗が与えられ、従ってその回転速度が大きく低下するからである。従って回転体50の回動の際に当接部60によって押し上げられた引出部77が再び係止部84aに当接する際の衝突による衝撃は非常に小さなものとなる。従ってこの当接による衝撃音・衝撃振動はほとんど生じない。この摩擦による衝撃吸収作用は、前記背景技術の欄で説明した緩衝部材(緩衝用樹脂チューブ)を用いた場合の衝撃吸収作用よりも大きなものであり、効果的である。
【0036】
なお上記実施形態において、回転体50の摩擦摺動面65を、自動復帰部材収納部55の中心側に位置する突出部59の先端面ではなく、自動復帰部材収納部55の外周側に位置する面を用いたのは、前記実施形態と同様に、回転体50の中心付近よりもできるだけ外周側の位置の方が同じ摩擦抵抗に対して半径が長い分、トルクを大きくできるからである。また摩擦摺動面65の面積も大きく取れてその分摩擦抵抗を大きなものとできるからである。
【0037】
なお上記衝撃吸収作用をさらに大きく効果的なものとするため、回転体50の摩擦摺動面65と押え部材79の摩擦摺動面795の両者、或いは何れか一方の表面を多数の凹凸を設けた面(梨地処理面、シボ加工面)としてもよい。このように構成すれば、摩擦抵抗をより強くすることができ、より効果的な衝撃吸収作用を発揮させることができる。
【0038】
なおこの実施形態では押え部材79に摩擦摺動面795用の突出部797を設けたが、その代りに回転体50側に同様の突出部を設けてその先端面を摩擦摺動面65としてもよい。また上記衝撃吸収作用をさらに大きく効果的なものとするため、この実施形態においても前記実施形態と同様に、両摩擦摺動面65,795の間にグリスを介在することで、これら両面65,795をグリス介在兼摩擦摺動面としても良い。このように構成すれば、回転体50を回転した際のグリスによる粘性抵抗と摺動による摩擦抵抗とを同時に生じさせることができ、より強くより効果的な抵抗となり、より効果的な衝撃吸収作用を発揮させることができる。さらにこれらグリス介在兼摩擦摺動面65,795の両者或いは何れか一方の表面を多数の凹凸を設けた面(梨地処理面、シボ加工面)としてもよい。一方図1乃至図5に示す実施形態のグリス介在面65,795の間にグリスを介在しないで直接当接することで、これら両グリス介在面65,795を摩擦摺動面に変更しても良い。
【0039】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば上記
実施形態では本発明を回転式電子部品に適用した例を示したが、本発明はスライド式電子部品等の他の各種摺動式電子部品に用いても良い。また電気的機能部は、摺動子とこれが摺接する摺接パターンの組み合わせに限られず、他の種々の構成の電気的機能部であっても良い。また自動復帰部材も前記実施形態で示したねじりコイルバネに限定されず、コイルスプリングや板バネ等、他の各種構造の自動復帰部材であっても良い。要は基台と、基台の表面に対向して設置される移動体(スライド、回転、揺動等を問わない)と、前記基台と移動体の間に設置され前記移動体の移動に伴なって電気的出力を変化する電気的機能部と、移動体の前記基台を設置した反対側の面を押えて基台と移動体の離間距離を一定に保つ押え部材とを具備し、さらに前記移動体を規定位置に自動復帰させる弾発力を付与する自動復帰部材をこの移動体に収納してなる構造の摺動式電子部品であれば、どのような構造の摺動式電子部品にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】取付台120上に取り付けた回転式電子部品1の側断面図である。
【図2】取付台120上に取り付けた回転式電子部品1の分解斜視図である。
【図3】基台80とフレキシブル回路基板11とを示す斜視図である。
【図4】押え部材79の斜視図である。
【図5】回転式電子部品1の動作説明図(但し、押え部材79の記載は省略)である。
【図6】取付台120上に取り付けた回転式電子部品1−2の側断面図である。
【図7】押え部材79の斜視図(図4と同一角度から見たもの)である。
【図8】従来の回転式電子部品(摺動式電子部品)180を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 回転式電子部品(摺動式電子部品)
11 フレキシブル回路基板
17 摺接パターン(電気的機能部)
50 回転体(移動体)
55 自動復帰部材収納部
65 グリス介在面又は摩擦摺動面(抵抗付与部)
67 摺動子(電気的機能部)
73 ねじりコイルバネ(自動復帰部材)
75 コイル部
77 引出部
79 押え部材
795 グリス介在面又は摩擦摺動面(抵抗付与部)
80 基台(固定側部材)
84a 係止部
87 軸
120 取付台
140 回路基板
150 固定部材
1−2 回転式電子部品(摺動式電子部品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、基台の表面に対向して設置される移動体と、前記基台と移動体の間に設置され前記移動体の移動に伴なって電気的出力を変化する電気的機能部と、移動体の前記基台を設置した反対側の面を押えて基台と移動体の離間距離を一定に保つ押え部材とを具備し、さらに前記移動体を規定位置に自動復帰させる弾発力を付与する自動復帰部材をこの移動体に収納してなる構造の摺動式電子部品において、
前記押え部材と移動体の対向面に移動体の移動に抵抗を付与する抵抗付与部を設けたことを特徴とする摺動式電子部品。
【請求項2】
前記抵抗付与部は、前記押え部材と回転体の対向面にグリスを介在させて構成されるグリス介在面であることを特徴とする請求項1に記載の摺動式電子部品。
【請求項3】
前記抵抗付与部は、前記押え部材と回転体の対向面を接触させて構成される摩擦摺動面であることを特徴とする請求項1に記載の摺動式電子部品。
【請求項4】
前記抵抗付与部は、前記押え部材と回転体の対向面にグリスを介在させ且つ接触させて構成されるグリス介在兼摩擦摺動面であることを特徴とする請求項1に記載の摺動式電子部品。
【請求項5】
前記移動体は前記基台から突出する軸に回動自在に取り付けられる回転体であり、
一方前記押え部材はこの軸に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2又は3又は4に記載の摺動式電子部品。
【請求項6】
前記自動復帰部材はねじりコイルバネであり、
このねじりコイルバネは前記回転体の押え部材側の面に前記軸を囲むように形成された自動復帰部材収納部内に収納され、その両端の引出部を外部に突出してこれら引出部を回転体に隣接して設置した固定側部材の係止部に弾接させることで回転体に規定位置への自動復帰力を付与することを特徴とする請求項5に記載の摺動式電子部品。
【請求項7】
前記押え部材はねじりコイルバネを収納した前記自動復帰部材収納部を塞ぎ、且つこの押え部材の自動復帰部材収納部を塞いだ部分の外周部分を囲む位置に前記抵抗付与部を設けたことを特徴とする請求項6に記載の摺動式電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−310654(P2006−310654A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−133392(P2005−133392)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000215833)帝国通信工業株式会社 (262)
【Fターム(参考)】