説明

摺動装置並びに工作機械

【課題】たとえグリースなどの粘度の高い潤滑剤が付与されている案内面であってもこの案内面上の潤滑剤を常に回収保持し、この油自己保持機能が発揮されることで、油切れすることなく潤滑剤が保持され、油膜厚も常に均一に保持できる画期的な摺動装置を提供すること。
【解決手段】移動体2の移動方向側に、案内面1に接地しこの移動体2の移動に伴って転動し、且つこの案内面1上に付与されている潤滑剤3がまとわり付く潤滑剤保持ローラ4と、油膜厚を更に均一にする膜厚調整ローラ5とを設けた摺動装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば工作機械のすべり案内機構に用いる摺動装置に関するもので、案内面(摺動面)に付与した潤滑剤を保持する潤滑剤保持機構を備えたものに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、工作機械においては、平坦な案内面(摺動面)上を移動体が移動する構成、即ち例えば移動体の底部あるいは移動体のガイド部を案内面上を往復摺動するように設けた摺動装置を用いてすべり案内機構を備えることで、ベアリングなどを用いた転がり案内機構のみを備える場合に比べて加工時の振動が抑制できる。
【0003】
具体的には、例えばコラムベッド上に移動自在にテーブル台を設け、このテーブル台上にターニングテーブルを設け、このターニングテーブル上にワークを芯出し、このターニングテーブル上のワークの位置を移動制御あるいはワーク交換時に移動させるために、このテーブル台を移動体とし、コラムベッド上面を案内面とした前記摺動装置によるすべり案内機構を設けて加工時の振動を抑制する。
【0004】
このようなすべり案内機構に用いる摺動装置の摺動抵抗(摩擦抵抗)を極力抑えるために、案内面の滑面度を上げると共に、この案内面に潤滑剤を供給している。
【0005】
一般的には、低粘度(液状)の潤滑剤(単に潤滑油ともいう)を用いた全損式又は循環式給油がなされる構成としているが、近年の資源の枯渇化対策として、例えば液状潤滑油に増稠剤を拡散させた液状潤滑油より粘度の高いグリースを用いる場合がある。
【0006】
このようなグリースを強制給油するようにすれば、潤滑油を過剰に供給する場合に比して給油量も廃油量も大幅に削減できるが、粘度が高いためグリース切れも懸念されるために、一定時間毎に給油する必要があり、また給油量が増えると粘度が高いため自動回収が困難なために頻繁にメンテナンスが必要となってしまう。
【0007】
言い換えれば、単に潤滑剤としてグリースを使用すると、粘度が高いため、給油量も廃油量も少なくできるが、案内面にこのグリースが効率良く常に均一に油膜が維持されるように管理することは容易ではなく、また必要以上に給油量を増やせば潤滑油とは異なり自動回収が困難なためメンテナンスの頻度が上がり管理コストも上がってしまう。
【0008】
また、グリース供給口に含油性樹脂ローラを設けて、膜厚を均一にしつつグリースを案内面に効率良く供給できるようにすることも提案されているが、このローラによりグリースをならして膜厚を均一化できても、油がまとわり付く油捕捉性はほとんどなく、また単なる潤滑油に比べて粘度の高いグリースを常に均一に案内面に保持できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−130268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような現状を打破するもので、たとえグリースなどの粘度の高い潤滑剤が付与されている案内面であってもこの案内面上の潤滑剤を常に回収保持し、この油自己保持機能が発揮されることで、たとえ最初に付与されたままで追加の給油がされなくてもあるいは給油量が少なくても、油切れすることなく潤滑剤が保持され、油膜厚も常に均一に保持でき、常に摩擦抵抗を下げることができるため、給油量や廃油量を削減でき、メンテナンスも軽減でき、省資源化も図れる画期的な摺動装置並びにこの摺動装置を用いたすべり案内機構を備えた工作機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0012】
平坦な案内面1に移動体2を摺動自在に設け、この案内面1に摩擦抵抗を小さくする潤滑剤3を付与する構成とした摺動装置において、前記移動体2の移動方向側に、前記案内面1に接地しこの移動体2の移動に伴って転動し、且つこの案内面1上に付与されている潤滑剤3がまとわり付く潤滑剤保持ローラ4を設け、少なくともこの潤滑剤保持ローラ4の表面は、前記案内面1上の潤滑剤3がまとわり付く油捕捉性の高い布製若しくはフェルト製であることを特徴とする摺動装置に係るものである。
【0013】
また、平坦な案内面1に移動体2を摺動自在に設け、この案内面1に摩擦抵抗を小さくする潤滑剤3を付与する構成とした摺動装置において、前記移動体2の移動方向側に、前記案内面1に接地しこの移動体2の移動に伴って転動し、且つこの案内面1上に付与されている潤滑剤3がまとわり付く潤滑剤保持ローラ4を設け、前記移動体2の移動方向側で前記潤滑剤保持ローラ4の内側に、前記案内面1に接地し潤滑剤3の油膜厚を均一にする膜厚調整ローラ5を設けたことを特徴とする摺動装置に係るものである。
【0014】
また、少なくとも前記潤滑剤保持ローラ4の表面は、前記案内面1上の潤滑剤3がまとわり付く油捕捉性の高い布製若しくはフェルト製であることを特徴とする請求項2記載の摺動装置に係るものである。
【0015】
また、前記潤滑剤保持ローラ4を前記案内面1に押圧接地させる押圧接地用付勢機構6を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の摺動装置に係るものである。
【0016】
また、前記膜厚調整ローラ5は、金属製ローラとし、この膜厚調整ローラ5を前記案内面1に押圧接地させる押圧接地用付勢機構6を備えて、前記案内面1上の前記潤滑剤3の油膜厚を均一にするように構成したことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の摺動装置に係るものである。
【0017】
また、前記移動体2を前記案内面1に往復摺動自在に設け、双方の移動方向側に夫々前記潤滑剤保持ローラ4を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の摺動装置に係るものである。
【0018】
また、前記潤滑剤3はグリースであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の摺動装置に係るものである。
【0019】
また、前記潤滑剤3は、前記油捕捉性を高めるための親油性ポリマーを配合したグリースであることを特徴とする請求項7記載の摺動装置に係るものである。
【0020】
また、前記請求項1〜8のいずれか1項に記載の摺動装置を、加工時の振動を抑制するすべり案内機構として用いたことを特徴とするすべり案内機構を備えた工作機械に係るものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上述のように構成したから、たとえグリースなどの粘度の高い潤滑剤が付与されている案内面であってもこの案内面上の潤滑剤を常に回収保持し、この油自己保持機能が発揮されることで、たとえ最初に付与されたままで追加の給油がされなくてもあるいは給油量が少なくても、油切れすることなく潤滑剤が保持され、油膜厚も常に均一に保持でき、常に摩擦抵抗を下げることができるため、給油量や廃油量を削減でき、メンテナンスも軽減でき、省資源化も図れる画期的な摺動装置となる。
【0022】
特に本発明は、潤滑剤保持ローラの表面を布製若しくはフェルト製とすることで、案内面に付与されている潤滑剤がまとわり付く油捕捉性が高まることで、油自己保持機能が良好に発揮され、追加供給される給油量がわずかでもあるいは当初に給油されたままでも案内面上に付与されている潤滑剤は常に移動体の移動と共にこのローラにまとわり付いて回収保持され、たとえ少ない給油量でもたとえ粘度の高いグリースでもこの油自己保持機能により油切れを防止でき油膜厚も常に均一に保持され、摩擦抵抗が小さく、そのため給油量・廃油量も少なくて済み、またメンテナンスの軽減も図られ、省資源化も図れるなど優れた摺動装置となる。
【0023】
また、請求項2記載の発明においては、たとえグリースなどの粘度の高い潤滑剤が付与されている案内面であってもこの案内面上の潤滑剤を常に回収保持し、この油自己保持機能が発揮されることで、たとえ最初に付与されたままで追加の給油がされなくてもあるいは給油量が少なくても、油切れすることなく潤滑剤が保持され、油膜厚も常に均一に保持でき、常に摩擦抵抗を下げることができるため、給油量や廃油量を削減でき、メンテナンスも軽減でき、省資源化も図れる画期的な摺動装置となる。
【0024】
特に本発明は、油自己保持機能を果たす潤滑剤保持ローラの内側に更に膜厚調整ローラを設けることで、移動体が移動する直前の案内面上の潤滑剤の油膜厚を一層均一に保持できることになる優れた摺動装置となる。
【0025】
また、請求項3記載の発明においては、前記請求項2記載の発明における潤滑剤保持ローラの表面を布製若しくはフェルト製とすることで、案内面に付与されている潤滑剤がまとわり付く油捕捉性が高まることで、油自己保持機能が良好に発揮され、追加供給される給油量がわずかでもあるいは当初に給油されたままでも案内面上に付与されている潤滑剤は常に移動体の移動と共にこのローラにまとわり付いて回収保持され、たとえ少ない給油量でもたとえ粘度の高いグリースでもこの油自己保持機能により油切れを防止でき油膜厚も常に均一に保持され、摩擦抵抗が小さく、そのため給油量・廃油量も少なくて済み、またメンテナンスの軽減も図られ、省資源化も図れるなど優れた摺動装置となる。
【0026】
また、請求項4記載の発明においては、油自己保持機能を果たしつつ一層油膜厚を均一化でき、更に請求項5記載の発明においては、膜厚調整ローラによる油膜厚の均一化が更に一層良好となり、一層本発明の作用・効果が良好に発揮される極めて優れた摺動装置となる。
【0027】
また、請求項6記載の発明においては、往復摺動する摺動装置における双方の移動側での案内面に常に前記油自己保持機能を果たす潤滑剤保持ローラを設けたから、往復摺動させる場合も前記作用・効果が良好に発揮される一層実用性に優れた摺動装置となる。
【0028】
また、請求項7記載の発明においては、前記作用・効果が一層有効に発揮される。
【0029】
また、請求項8記載の発明においては、前記潤滑剤保持ローラの油自己保持機能が一層良好となり、本発明の前記作用・効果が一層良好に発揮される。
【0030】
また、請求項9記載の発明においては、本発明の前記作用・効果を発揮するすべり案内機構となり、極めて実用性に優れた工作機械となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施例の工作機械の説明斜視図である。
【図2】本実施例の説明斜視図である。
【図3】本実施例の正断面図である。
【図4】本実施例の図3に示すa−a線側断面図である。
【図5】本実施例の作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0033】
平坦(平滑)な案内面1上に移動体2を移動自在に設けた摺動装置を、例えば旋盤などの工作機械のワーク位置制御機構やワーク交換に際してのスライド移動機構として設けるすべり案内機構に採用する。
【0034】
ベアリングなどによる転がり案内機構と異なり、この摺動装置を用いたすべり案内機構によってワークの位置をスライド制御する場合は、加工時の振動が抑制できることとなる。
【0035】
このような工作機械に用いる場合に限らず、摺動装置は様々な用途に用いられるが、転がり案内機構と異なり平坦な案内面1に移動体2を摺動させる構成のため、この案内面1に摩擦抵抗を下げるための潤滑剤を給油する。
【0036】
本発明は、たとえ粘度の高いグリースを潤滑剤3として、給油量を少なくし廃油量を少なくして省資源化を図る場合でも、油切れ(グリース切れ)を防止できる。即ち、給油量が少なくて良いので、省資源化が図られ、たとえ自動回収が困難なグリースを使用してもメンテナンスも軽減できる。例えば追加給油量がわずかであったり、あるいは当初に給油したままで追加給油をしなくても、案内面1に付与された潤滑剤3が効率良く保持され常に油膜が保持される。
【0037】
即ち、本発明は、案内面1上を摺動する移動体2の移動側に潤滑剤保持ローラ4を設け、この潤滑剤保持ローラ4は、移動体2の移動に際して常に移動体2と共に移動しながら案内面1に接地して転動し、移動体2の前方でその案内面1上の潤滑剤3をまとわり付かせて回収しつつその後方の案内面1上に油膜を保持させる油自己保持機能が発揮される。
【0038】
言い換えると、移動体2の前側で潤滑剤保持ローラ4が転動し、常に移動体2が摺動しようとする案内面1上の潤滑剤3が、この潤滑剤保持ローラ4にまとわり付いて捕捉されることで、この潤滑剤保持ローラ4の後方の案内面1上には余分な潤滑剤3は回収されつつも常に油膜が略均一に保持されることになり、移動体2は常にこの油切れすることなく、油膜が均一に保持されている案内面1上を移動できることになる。
【0039】
特にこの潤滑剤保持ローラ4の表面を、布製若しくはフェルト製とすることで、案内面1上に付与されている潤滑剤3がまとわり付く油捕捉性が高まることで、油自己保持機能が良好に発揮され、追加供給される給油量がわずかでもあるいは当初に給油されたままでも案内面1上に付与されている潤滑剤3は、常に移動体2の移動と共にこのローラ4にまとわり付いて回収保持され、たとえ少ない給油量でもたとえ粘度の高いグリースでもこの油自己保持機能により油切れを防止でき油膜厚も常に効率良く均一に保持され、摩擦抵抗が小さく、そのため給油量・廃油量も少なくて済み、またメンテナンスの軽減も図られ、省資源化も図れるなど優れた摺動装置となる。
【0040】
また、この油自己保持機能を果たす潤滑剤保持ローラ4の内側に更に膜厚調整ローラ5を設けるダブルローラ構成とすれば、移動体1が移動しようとすると直前の案内面1上には潤滑剤3が常に油切れすることなく均一に保持され、更にこれが二つのローラ、特に膜厚調整ローラ5により更に均一化されることとなり、常に移動直前の案内面1の油膜厚を一層確実にして均一に保持できることになる。
【0041】
従って、たとえグリースなどの粘度の高い潤滑剤3が付与されている案内面1であってもこの案内面1上の潤滑剤3を常に移動と共に回収保持し、この油自己保持機能が発揮されることで、たとえ最初に付与されたままで追加の給油がされなくてもあるいは給油量が少なくとも、油切れすることなく潤滑剤3は保持され、油膜厚も常に均一に保持でき、常に摩擦抵抗を下げることができると共に、給油量や廃油量を削減でき、メンテナンスも軽減でき、省資源化も図れることとなる。
【実施例】
【0042】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0043】
平坦な案内面1に摺動自在に設けた移動体2の移動方向側に、案内面1に接地しこの移動体2の移動に伴って転動し、且つこの案内面1上に付与されている潤滑剤3がまとわり付く潤滑剤保持ローラ4を設けている。
【0044】
この潤滑剤保持ローラ4は、移動体2に取付部7を設け、この取付部7に案内面1に接地するように垂設している。
【0045】
具体的には、この潤滑剤保持ローラ4を取り付けた取付部7を、移動体2の側部にユニットとして後付けできる構成としていて、詳述すればコ字状部10に回転軸11を架設し、この回転軸11に潤滑剤保持ローラ4を遊転自在に設け、このコ字状部10を取付部7の下部突設部12に上下動自在に設けると共に、このコ字状部10に立設したガイド軸13を取付部7の上部突設部14の受筒部15内に可動自在に設け、この受筒部15内に前記ガイド軸13を弾圧する付勢バネ8を内装した構成としている。
【0046】
また、この潤滑剤保持ローラ4は、球状のローラ(ボール)でも幅を有する筒状のローラでも良いが、本実施例では筒状ローラとし、このローラ接地幅が前記移動体2の案内面1上に摺動当接する幅と合致あるいはこれより広くすることが望ましい。
【0047】
本実施例では移動体2の底面の両端部を案内面1に当接する摺動当接部とし、この当接幅と合致する幅を有する筒状ローラで構成している。
【0048】
また、この潤滑剤保持ローラ4を前記案内面1に押圧接地させる押圧接地用付勢機構6を備えている。具体的には前述のようにして前記取付部7に潤滑剤保持ローラ4を案内面1に押圧付勢する前記付勢バネ8を設け、この取付部7に垂設した潤滑剤保持ローラ4がこのバネ8で付勢されて案内面1に弾圧当接する構成とし、またこのバネ8による押圧付勢の強さをバネ8を押さえ付ける調整ネジ9を前記受筒部15の上部に進退調整自在に設け、この調整ネジ9を螺動させて付勢バネ8を押圧伸縮させることで可変調整できるように構成している。
【0049】
また、この潤滑剤保持ローラ4の表面は、前記案内面1上の潤滑剤3がまとわり付く油捕捉性の高い布製若しくはフェルト製としている。
【0050】
具体的には例えば回転軸や芯材部に布製あるいはフェルト製のリング体を被設した構成としても良いし、表面部のみに布製材やフェルト製材を巻き付け付設しても良い。
【0051】
本実施例では、このように金属製や樹脂製など単に表面に油が付着したり含有するにすぎない材質でなく、フェルト製とすることで、回転によって油がまとわり付いて自動回収される構成となり、単に油膜が均一化するにすぎない金属製ローラなどに比べて数倍以上の油捕捉性を発揮し、例えば追加給油せずに40時間使用しても、グリースを常に0.05g〜0.01gの最適量を保持できる(金属製ローラならば0.01g程度しか保持できない)ことが確認されたし、グリース膜厚も40時間使用しても後述する膜厚調整ローラ5を併用したダブルローラ構成とすることで、当初から常に5〜10μm程度の膜厚に均一に保持できることも確認できた。
【0052】
また、本実施例では、このように移動体2の移動方向側で前記潤滑剤保持ローラ4の内側に、案内面1に接地し潤滑剤3の油膜厚を均一にする膜厚調整ローラ5を設けてダブルローラ構成としている。具体的には、この膜厚調整ローラ5は、金属製ローラとし、この膜厚調整ローラ5を前記案内面1に押圧接地させる押圧接地用付勢機構6を備えて、前記案内面1上の前記潤滑剤3の油膜厚を均一にするように構成としている。
【0053】
この押圧接地用付勢機構6は、前記潤滑剤保持ローラ4の取付部7を利用して前記潤滑剤保持ローラ4の押圧接地用付勢機構6と全く同様に、膜厚調整ローラ5を上下動自在に取付部7に設け、同様な構成とした付勢バネ8で弾圧して案内面1に弾圧当接させる構成としている。
【0054】
また、本実施例では、工作機械、例えば図1に示すような立型旋盤における加工時の振動を抑制するすべり案内機構に本装置を適用したものであり、前述したようにコラムベッド16の上面を案内面1とし、移動体2としてのテーブル台2を水平移動自在に設け、このテーブル台2上のターニングテーブル17上のワーク18の位置を移動制御したり、ワーク交換に際して移動させる移動機構として用いるすべり案内機構に採用している。
【0055】
また、このようなすべり案内機構に採用するため、移動体2は左右方向(刃物台20を移動制御に設けて工具21を複合移動制御するコラム19を正面と見れば前後方向)に往復摺動自在に設け、双方の移動方向側に夫々前記潤滑剤保持ローラ4と前記膜厚調整ローラ5とからなる前記ダブルローラ機構を設けた構成としている。
【0056】
そして、前記潤滑剤3は、潤滑油3よりも粘度の高いグリースを用い、これにより給油量を少なくして廃油量を少なくし省資源化を図ると共に、たとえ追加給油しない構成としても、例えば、常時給油し続ける構成とせずとも、最初に付与されたグリースが前述のように長時間油切れせずに保持され、メンテナンスの頻度も少なく、長時間効率良く均一に薄いグリース膜が確保され摩擦抵抗の小さい摺動装置を実現できる。
【0057】
即ち、往復摺動の双方において、ダブルローラ機構が備えられており、潤滑剤保持ローラ4による油自己保持機能と膜厚調整ローラ5の押圧による膜厚調整によって薄膜均一化が図られる。言い換えると、潤滑剤保持ローラ4によってグリースを自動回収保持しつつ膜厚調整5により薄膜均一化されることで効率良く長時間油膜が自己保持される潤滑剤保持機能を果たす画期的な摺動装置となる。
【0058】
尚、本発明は、実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るもので、様々な用途に用いられるものである。
【符号の説明】
【0059】
1 案内面
2 移動体
3 潤滑剤
4 潤滑保持ローラ
5 膜厚調整ローラ
6 押圧接地用付勢機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な案内面に移動体を摺動自在に設け、この案内面に摩擦抵抗を小さくする潤滑剤を付与する構成とした摺動装置において、前記移動体の移動方向側に、前記案内面に接地しこの移動体の移動に伴って転動し、且つこの案内面上に付与されている潤滑剤がまとわり付く潤滑剤保持ローラを設け、少なくともこの潤滑剤保持ローラの表面は、前記案内面上の潤滑剤がまとわり付く油捕捉性の高い布製若しくはフェルト製であることを特徴とする摺動装置。
【請求項2】
平坦な案内面に移動体を摺動自在に設け、この案内面に摩擦抵抗を小さくする潤滑剤を付与する構成とした摺動装置において、前記移動体の移動方向側に、前記案内面に接地しこの移動体の移動に伴って転動し、且つこの案内面上に付与されている潤滑剤がまとわり付く潤滑剤保持ローラを設け、前記移動体の移動方向側で前記潤滑剤保持ローラの内側に、前記案内面に接地し潤滑剤の油膜厚を均一にする膜厚調整ローラを設けたことを特徴とする摺動装置。
【請求項3】
少なくとも前記潤滑剤保持ローラの表面は、前記案内面上の潤滑剤がまとわり付く油捕捉性の高い布製若しくはフェルト製であることを特徴とする請求項2記載の摺動装置。
【請求項4】
前記潤滑剤保持ローラを前記案内面に押圧接地させる押圧接地用付勢機構を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の摺動装置。
【請求項5】
前記膜厚調整ローラは、金属製ローラとし、この膜厚調整ローラを前記案内面に押圧接地させる押圧接地用付勢機構を備えて、前記案内面上の前記潤滑剤の油膜厚を均一にするように構成したことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の摺動装置。
【請求項6】
前記移動体を前記案内面に往復摺動自在に設け、双方の移動方向側に夫々前記潤滑剤保持ローラを設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の摺動装置。
【請求項7】
前記潤滑剤はグリースであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の摺動装置。
【請求項8】
前記潤滑剤は、前記油捕捉性を高めるための親油性ポリマーを配合したグリースであることを特徴とする請求項7記載の摺動装置。
【請求項9】
前記請求項1〜8のいずれか1項に記載の摺動装置を、加工時の振動を抑制するすべり案内機構として用いたことを特徴とするすべり案内機構を備えた工作機械。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−254497(P2012−254497A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129331(P2011−129331)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(391029819)株式会社オーエム製作所 (34)
【Fターム(参考)】