説明

摺動部被覆用樹脂組成物

【課題】本発明の課題は、圧縮機やエンジン等の摺動部分に、従来よりも優れた摺動特性や、耐摩耗性、耐焼付性等を付与することにある。
【解決手段】本発明に係る摺動部被覆用樹脂組成物は、ポリアミドイミド樹脂及びポリテトラフルオロエチレン粉末を含有する。ポリアミドイミド樹脂は、全重量に対して50〜80wt%を占める。そして、このポリアミドイミド樹脂は、摂氏100度の温度条件下における引張強度が40MPa以上である。ポリテトラフルオロエチレン粉末は、全重量に対して15wt%以上を占める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺動部被覆用樹脂組成物、特に圧縮機やエンジン等の摺動部分に応用される摺動部被覆用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
過去に「圧縮機やエンジン等の摺動部分に優れた摺動特性や、耐摩耗性、耐焼付性等を付与するために、固体潤滑剤(例えば、ポリテトラフルオロエチレン等)等が含有されるポリアミドイミド(以下「PAI」と略する)樹脂でその摺動部分をコーティングする」という技術が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2004−263727号公報
【特許文献2】特開2002−53883号公報
【特許文献3】特開2005−30376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、このようなコーティング剤において、固体潤滑剤の添加量がPAI樹脂の添加量に対して少ない場合、PAI樹脂そのものにはさほど高い強度は要求されない。PAI樹脂は、骨格中にアミド基等の極性基を有し、鉄系の基材に対して水素結合等により強固に密着するためである。
【0004】
しかし、低摩擦化を実現しようとして固体潤滑剤の添加量をPAI樹脂の添加量に対して多くしていくと、その密着性はPAI樹脂の化学的構造ではなく物理的なアンカー効果に大きく依存するようになる。このため、コーティング膜に大きな応力が加えられると、そのコーティング膜では界面破壊ではなく凝集破壊が起こりやすくなる。
【0005】
本発明の課題は、圧縮機やエンジン等の摺動部分に、従来よりも優れた摺動特性や、耐摩耗性、耐焼付性等を付与するとともにコーティング膜を剥離しにくくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明に係る摺動部被覆用樹脂組成物は、ポリアミドイミド樹脂及びポリテトラフルオロエチレン粉末を含有する。ポリアミドイミド樹脂は、全重量に対して50〜80wt%を占める。また、このポリアミドイミド樹脂は、摂氏100度の温度条件下における引張強度が40MPa以上である。ポリテトラフルオロエチレン粉末は、全重量に対して15wt%以上を占める。
【0007】
本願発明者が鋭意検討した結果、ポリアミドイミド樹脂の中でも特に摂氏100度の温度条件下における引張強度が40MPa以上であるポリアミドイミド樹脂を全重量に対して50〜80wt%添加しポリテトラフルオロエチレン粉末を全重量に対して15wt%以上添加した摺動部被覆用樹脂組成物によって摺動部材をコーティングすることにより、圧縮機やエンジン等の摺動部分に従来よりも優れた摺動特性や、耐摩耗性、耐焼付性を付与することができるとともにそのコーティング膜が剥離しにくくなることが判明した(凝集破壊が起こりにくくなったことが起因しているものと考えられる)。このため、この摺動部被覆用樹脂組成物は、圧縮機やエンジン等の摺動部分に、従来よりも優れた摺動特性や、耐摩耗性、耐焼付性等を付与することができる。また、この摺動部被覆用樹脂組成物を用いればコーティング膜を剥離しにくくすることができる。
【0008】
第2発明に係る摺動部被覆用樹脂組成物は、第1発明に係る摺動部被覆用樹脂組成物であって、ポリアミドイミド樹脂は、摂氏200度の温度条件下における引張強度が30MPa以上である。
【0009】
本願発明者が鋭意検討した結果、摺動部被覆用樹脂組成物中のポリアミドイミド樹脂として摂氏100度の温度条件下における引張強度が40MPa以上であり且つ摂氏200度の温度条件下における引張強度が30MPa以上であるポリアミドイミド樹脂を利用すれば、圧縮機やエンジン等の摺動部分に従来よりも優れた摺動特性や、耐摩耗性、耐焼付性を付与することができるとともにコーティング膜がさらに剥離しにくくなることが判明した。このため、この摺動部被覆用樹脂組成物は、圧縮機やエンジン等の摺動部分に、従来よりも優れた摺動特性や、耐摩耗性、耐焼付性等を付与することができる。また、この摺動部被覆用樹脂組成物を用いればコーティング膜をさらに剥離しにくくすることができる。
【0010】
第3発明に係る摺動部被覆用樹脂組成物は、ポリアミドイミド樹脂及びポリテトラフルオロエチレン粉末を含有する。ポリアミドイミド樹脂は、全重量に対して50〜80wt%を占める。また、このポリアミドイミド樹脂は、摂氏25度の温度条件下における引張強度が110MPa以上180MPa以下である。ポリテトラフルオロエチレン粉末は、全重量に対して15wt%以上を占める。
【0011】
本願発明者が鋭意検討した結果、ポリアミドイミド樹脂の中でも特に摂氏25度の温度条件下における引張強度が110MPa以上180MPa以下であるポリアミドイミド樹脂を全重量に対して50〜80wt%添加しポリテトラフルオロエチレン粉末を全重量に対して15wt%以上添加した摺動部被覆用樹脂組成物によって摺動部材をコーティングすることにより、圧縮機やエンジン等の摺動部分に従来よりも優れた摺動特性や、耐摩耗性、耐焼付性を付与することができるとともにそのコーティング膜が剥離しにくくなることが判明した(凝集破壊が起こりにくくなったことが起因しているものと考えられる)。このため、この摺動部被覆用樹脂組成物は、圧縮機やエンジン等の摺動部分に、従来よりも優れた摺動特性や、耐摩耗性、耐焼付性等を付与することができる。また、この摺動部被覆用樹脂組成物を用いればコーティング膜を剥離しにくくすることができる。
【0012】
第4発明に係る摺動部被覆用樹脂組成物は、ポリアミドイミド樹脂及びポリテトラフルオロエチレン粉末を含有する。ポリアミドイミド樹脂は、全重量に対して50〜80wt%を占める。また、このポリアミドイミド樹脂は、摂氏25度の温度条件下における伸びが40%以上150%以下である。ポリテトラフルオロエチレン粉末は、全重量に対して15wt%以上を占める。
【0013】
本願発明者が鋭意検討した結果、ポリアミドイミド樹脂の中でも特に摂氏25度の温度条件下における伸びが40%以上150%以下であるポリアミドイミド樹脂を全重量に対して50〜80wt%添加しポリテトラフルオロエチレン粉末を全重量に対して15wt%以上添加した摺動部被覆用樹脂組成物によって摺動部材をコーティングすることにより、圧縮機やエンジン等の摺動部分に従来よりも優れた摺動特性や、耐摩耗性、耐焼付性を付与することができるとともにそのコーティング膜が剥離しにくくなることが判明した(凝集破壊が起こりにくくなったことが起因しているものと考えられる)。このため、この摺動部被覆用樹脂組成物は、圧縮機やエンジン等の摺動部分に、従来よりも優れた摺動特性や、耐摩耗性、耐焼付性等を付与することができる。また、この摺動部被覆用樹脂組成物を用いればコーティング膜を剥離しにくくすることができる。
【0014】
第5発明に係る摺動部被覆用樹脂組成物は、第1発明から第4発明のいずれかに係る摺動部被覆用樹脂組成物であって、フッ化物及び酸化アルミニウム粉末をさらに含有する。
【0015】
このため、この摺動部被覆用樹脂組成物は、摺動部材の耐摩耗性を向上させることができる。
【0016】
第6発明に係る摺動部被覆用樹脂組成物は、第5発明に係る摺動部被覆用樹脂組成物であって、フッ化物は、フッ化カルシウム(CaF2)及びフッ化ストロンチウム(SrF2)より成る群から選択される少なくとも一つのフッ化物である。
【0017】
このため、この摺動部被覆用樹脂組成物は、製造コストを低く維持しつつ摺動部材の耐摩耗性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
第1発明に係る摺動部被覆用樹脂組成物は、圧縮機やエンジン等の摺動部分に、従来よりも優れた摺動特性や、耐摩耗性、耐焼付性等を付与することができる。また、この摺動部被覆用樹脂組成物を用いればコーティング膜を剥離しにくくすることができる。
【0019】
第2発明に係る摺動部被覆用樹脂組成物は、圧縮機やエンジン等の摺動部分に、従来よりも優れた摺動特性や、耐摩耗性、耐焼付性等を付与することができる。また、この摺動部被覆用樹脂組成物を用いればコーティング膜をさらに剥離しにくくすることができる。
【0020】
第3発明に係る摺動部被覆用樹脂組成物は、圧縮機やエンジン等の摺動部分に、従来よりも優れた摺動特性や、耐摩耗性、耐焼付性等を付与することができる。また、この摺動部被覆用樹脂組成物を用いればコーティング膜をさらに剥離しにくくすることができる。
【0021】
第4発明に係る摺動部被覆用樹脂組成物は、圧縮機やエンジン等の摺動部分に、従来よりも優れた摺動特性や、耐摩耗性、耐焼付性等を付与することができる。また、この摺動部被覆用樹脂組成物を用いればコーティング膜をさらに剥離しにくくすることができる。
【0022】
第5発明に係る摺動部被覆用樹脂組成物は、摺動部材の耐摩耗性を向上させることができる。
【0023】
第6発明に係る摺動部被覆用樹脂組成物は、製造コストを低く維持しつつ摺動部材の耐摩耗性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施の形態に係る揺動式ロータリー圧縮機101は、図1に示されるように、2シリンダタイプの揺動式ロータリー圧縮機であって、主に、円筒状の密閉ドーム型のケーシング110、揺動式ロータリー圧縮機構115、駆動モータ116、吸入管119、吐出管120及びマフラー160から構成されている。なお、この揺動式ロータリー圧縮機101には、ケーシング110にアキュームレータ(気液分離器)210が取り付けられている。以下、この揺動式ロータリー圧縮機101の構成部品についてそれぞれ詳述していく。
【0025】
<揺動式ロータリー圧縮機の構成部品の詳細>
(1)ケーシング
ケーシング110は、図1に示されるように、略円筒状の胴部ケーシング部111、胴部ケーシング部111の上端部に気密状に溶接される椀状の上壁部112、及び胴部ケーシング部111の下端部に気密状に溶接される椀状の底壁部113から構成されている。そして、このケーシング110には、主に、ガス冷媒を圧縮する揺動式ロータリー圧縮機構115、及び揺動式ロータリー圧縮機構115の上方に配置される駆動モータ116が収容されている。この揺動式ロータリー圧縮機構115と駆動モータ116とは、ケーシング110内を上下方向に延びるように配置されるクランク軸117によって連結されている。
【0026】
(2)揺動式ロータリー圧縮機構
揺動式ロータリー圧縮機構115は、図1および図3に示されるように、主に、クランク軸117、ピストン121、ブッシュ122、フロントヘッド123、第1シリンダブロック124、ミドルプレート125、第2シリンダブロック126及びリアヘッド127から構成されている。なお、本実施の形態において、フロントヘッド123、第1シリンダブロック124、ミドルプレート125、第2シリンダブロック126及びリヤヘッド127は、複数本のボルト190によって一体に締結されている。また、本実施の形態において、この揺動式ロータリー圧縮機構115はケーシング110の底部に貯められている潤滑油Lに浸漬されており、揺動式ロータリー圧縮機構115には、潤滑油Lが差圧給油されるようになっている。以下、この揺動式ロータリー圧縮機構115の構成部品についてそれぞれ詳述していく。
【0027】
a)第1シリンダブロック
第1シリンダブロック124には、図2に示されるように、シリンダ孔124a、吸入孔124b、吐出路124c、ブッシュ収容孔124d及びブレード収容孔124eが形成されている。シリンダ孔124aは、図1および図2に示されるように、板厚方向に沿って貫通する円柱状の孔である。吸入孔124bは、外周壁面からシリンダ孔124aに貫通している。吐出路124cは、シリンダ孔124aを形作る円筒部の内周側の一部が切り欠かれることによって形成されている。ブッシュ収容孔124dは、板厚方向に沿って貫通する孔であって、板厚方向に沿って見た場合において吸入孔124bと吐出路124cとの間に配置されている。ブレード収容孔124eは、板厚方向に沿って貫通する孔であって、ブッシュ収容孔124dと連通している。
【0028】
そして、この第1シリンダブロック124は、シリンダ孔124aにクランク軸117の偏心軸部117aおよびピストン121のローラー部121aが収容され、ブッシュ収容孔124dにピストン121のブレード部121bおよびブッシュ122が収容され、ブレード収容孔124eにピストン121のブレード部121bが収容された状態で吐出路124cがフロントヘッド123側を向くようにしてフロントヘッド123とミドルプレート125とに嵌合される(図3参照)。この結果、揺動式ロータリー圧縮機構115には第1シリンダ室Rc1が形成され、この第1シリンダ室Rc1はピストン121によって吸入孔124bと連通する吸入室と、吐出路124cと連通する吐出室とに区画されることになる。
【0029】
b)第2シリンダブロック
第2シリンダブロック126には、第1シリンダブロック124と同様、図2に示されるように、シリンダ孔126a、吸入孔126b、吐出路126c、ブッシュ収容孔126d及びブレード収容孔126eが形成されている。シリンダ孔126aは、図1および図2に示されるように、板厚方向に沿って貫通する円柱状の孔である。吸入孔126bは、外周壁面からシリンダ孔126aに貫通している。吐出路126cは、シリンダ孔126aを形作る円筒部の内周側の一部が切り欠かれることによって形成されている。ブッシュ収容孔126dは、板厚方向に沿って貫通する孔であって、板厚方向に沿って見た場合において吸入孔126bと吐出路126cとの間に配置されている。ブレード収容孔126eは、板厚方向に沿って貫通する孔であって、ブッシュ収容孔126dと連通している。
【0030】
そして、この第2シリンダブロック126は、シリンダ孔126aにクランク軸117の偏心軸部117b及びピストン121のローラー部121aが収容され、ブッシュ収容孔126dにピストン121のブレード部121bおよびブッシュ122が収容され、ブレード収容孔126eにピストン121のブレード部121bが収容された状態で吐出路126cがリアヘッド127側を向くようにしてリアヘッド127とミドルプレート125とに嵌合される(図3参照)。この結果、揺動式ロータリー圧縮機構115には第2シリンダ室Rc2が形成され、この第2シリンダ室Rc2はピストン121によって吸入孔126bと連通する吸入室と、吐出路126cと連通する吐出室とに区画されることになる。
【0031】
c)クランク軸
クランク軸117には、一方の端部に2つの偏心軸部117a,117bが設けられている。なお、この2つの偏心軸部117a,117bは、互いの偏心軸がクランク軸117の中心軸を挟んで対向するように形成されている。また、このクランク軸117は、偏心軸部117a,117bが設けられていない側が駆動モータ116のローター152に固定されている。
【0032】
d)ピストン
ピストン121は、略円筒状のローラー部121aと、ローラー部121aの径方向外側に突出するブレード部121bとを有する。なお、ローラー部121aは、クランク軸117の偏心軸部117a,117bに嵌合された状態でシリンダブロック124,126のシリンダ孔124a,126aに挿入される。これにより、ローラー部121aは、クランク軸117が回転すると、クランク軸117の回転軸を中心とした公転運動を行う。また、ブレード部121bは、ブッシュ収容孔124d、126dおよびブレード収容孔124e,126eに収容される。これによりブレード部121bは、揺動すると同時に長手方向に沿って進退運動を行うことになる。
【0033】
なお、このピストン121は、多孔質焼結金属素材から製造されている。そして、このピストン121には、本発明に係る摺動部被覆用樹脂組成物がコーティングされている。この摺動部被覆用樹脂組成物は、ポリアミドイミド(以下「PAI」と略する)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」と略する)粉末、フッ化物(例えば、フッ化カルシウムやフッ化ストロンチウム等)及び酸化アルミ粉末から構成される。なお、ここで、PAI樹脂は、摂氏25度の温度条件下において110MPa以上180MPa以下の引張強度を有するか、摂氏100度の温度条件下において40MPa以上の引張強度を有するか、摂氏25度の温度条件下において伸びが40%以上150%以下の引張伸びを有する。なお、PAI樹脂が摂氏100度の温度条件下において40MPa以上の引張強度を有する場合、そのPAI樹脂は摂氏200度の温度条件下において30MPa以上の引張強度を有することが好ましい。また、PAI樹脂は全重量に対して50〜80wt%を占めており、PTFE粉末は全重量に対して15wt%以上を占めている。
【0034】
e)ブッシュ
ブッシュ122は、略半円柱状の部材であって、ピストン121のブレード部121bを挟み込むようにしてブッシュ収容孔124d,126dに収容される。
【0035】
なお、このブッシュ122は、多孔質焼結金属素材から製造されている。そして、このブッシュ122には、本発明に係る摺動部被覆用樹脂組成物がコーティングされている。この摺動部被覆用樹脂組成物は、上記d)欄で説明した摺動部被覆用樹脂組成物と同一である。
【0036】
f)フロントヘッド
フロントヘッド123は、第1シリンダブロック124の吐出路124c側を覆う部材であって、ケーシング110に嵌合されている。このフロントヘッド123には軸受部123aが形成されており、この軸受部123aにはクランク軸117が挿入される。また、このフロントヘッド123には、第1シリンダブロック124に形成された吐出路124cを通って流れてくる冷媒ガスを吐出管120に導くための開口123bが形成されている。そして、この開口123bは、冷媒ガスの逆流を防止するための吐出弁(図示せず)により閉塞されたり開放されたりする。
【0037】
なお、このフロントヘッド123は、多孔質焼結金属素材から製造されている。そして、このフロントヘッド123の軸受部123aには、本発明に係る摺動部被覆用樹脂組成物がコーティングされている。この摺動部被覆用樹脂組成物は、上記d)欄で説明した摺動部被覆用樹脂組成物と同一である。
【0038】
g)リアヘッド
リアヘッド127は、第2シリンダブロック126の吐出路126c側を覆う。このリアヘッド127には軸受部127aが形成されており、この軸受部127aにはクランク軸117が挿入される。また、このリアヘッド127には、第2シリンダブロック126に形成された吐出路126cを通って流れてくる冷媒ガスを吐出管120に導くための開口(図示せず)が形成されている。そして、この開口は、冷媒ガスの逆流を防止するための吐出弁(図示せず)により閉塞されたり開放されたりする。
【0039】
なお、このリアヘッド127は、多孔質焼結素材から製造されている。そして、このリアヘッド127の軸受部127aには、本発明に係る摺動部被覆用樹脂組成物がコーティングされている。この摺動部被覆用樹脂組成物は、上記d)欄で説明した摺動部被覆用樹脂組成物と同一である。
【0040】
h)ミドルプレート
ミドルプレート125は、第1シリンダブロック124と第2シリンダブロック126との間に配置され、第1シリンダ室Rc1と第2シリンダ室Rc2とを区画する。
【0041】
(3)駆動モータ
駆動モータ116は、本実施の形態において直流モータであって、主に、ケーシング110の内壁面に固定された環状のステータ151と、ステータ151の内側に僅かな隙間(エアギャップ通路)をもって回転自在に収容されたロータ152とから構成されている。
【0042】
ステータ151には、ティース部(図示せず)に銅線が巻回されており、上方および下方にコイルエンド153が形成されている。また、ステータ151の外周面には、ステータ151の上端面から下端面に亘り且つ周方向に所定間隔をおいて複数個所に切欠形成されているコアカット部(図示せず)が設けられている。
【0043】
ロータ152には、回転軸に沿うようにクランク軸117が固定されている。
【0044】
(4)吸入管
吸入管119は、ケーシング110を貫通するように設けられており、一端が第1シリンダブロック124および第2シリンダブロック126に形成される吸入孔124b,126bに嵌め込まれており、他端がアキュームレータ210に嵌め込まれている。
【0045】
(5)吐出管
吐出管120は、ケーシング110の上壁部112を貫通するように設けられている。
【0046】
(6)マフラー
マフラー160は、冷媒ガスの吐出音を消音するためのものであって、フロントヘッド123に取り付けられている。
【0047】
<揺動式ロータリー圧縮機の運転動作>
駆動モータ116が駆動されると、偏心軸部117a,117bがクランク軸117周りに偏心回転して、この偏心軸部117a,117bに嵌合されたローラー部121aが、外周面をシリンダ室Rc1,Rc2の内周面に接して公転する。そして、ローラー部121aがシリンダ室Rc1,Rc2内で公転するに伴って、ブレード部121bは両側面をブッシュ122によって保持されながら進退動する。そうすると、吸入口119から低圧の冷媒ガスが吸入室に吸入されて、吐出室で圧縮されて高圧にされた後、吐出路124c,126cから高圧の冷媒ガスが吐出される。
【0048】
<ピストン、ブッシュ、フロントヘッド及びリアヘッドのコーティング膜の評価>
以下、実施例を用いてピストン、ブッシュ、フロントヘッド及びリアヘッドを覆っているコーティング膜について詳細に評価する。
【0049】
−限界PV法によるポリアミドイミド樹脂の高温強度評価試験−
ここでは、PAI樹脂の摂氏100度における強度を評価する。なお、この試験では、PAI樹脂として日立化成株式会社製の商品名HI−600(不揮発分(固形分):25〜30wt%、溶剤組成:N−メチル−2−ピロリドン/キシレン 80/20)を用い、そのPAI樹脂を焼結基材にコーティングしたものを試験片として採用した。この試験の結果、摂氏100度において25MPaの強度を有するPAI樹脂及び摂氏100度において30MPaの強度を有するPAI樹脂は、試験中に破断し焼結基材から剥離した。一方、摂氏100度において42MPaの強度を有するPAI樹脂及び摂氏100度において45MPaの強度を有するPAI樹脂は、試験中に破断することなく多孔質焼結金属基材に密着したままであった。
【0050】
−引張試験及び限界面圧試験によるPAI樹脂の評価試験−
【実施例1】
【0051】
(1)引張試験
ガラス基板をアセトンにより脱脂した後、そのガラス基板を窒素ブローによって乾燥させた。次いで、焼成後の膜厚が15μm(マイクロメートル)前後になるように日立化成株式会社製のPAI樹脂溶液HI−600をそのガラス基板に塗布した後、そのPAI樹脂溶液を摂氏80度に設定したオーブンに10分間静置してそのPAI樹脂溶液中の溶媒を十分に除去した。その後、設定温度を摂氏280度に変更し、ガラス基板上に残ったPAI樹脂を100分間かけて十分に焼成した結果、PAI樹脂のフィルムが得られた。最後にこのフィルムを幅10mm及び長さ60mmの短冊形状にカットして引張試験用試験片を得た。
【0052】
このようにして得られた引張試験試験片を島津製作所製オートグラフAFS−5kGに装着して摂氏100度の空気雰囲気下でその引張試験片の引張破壊強度及び引張破壊伸びを計測した。
【0053】
この結果、その引張破壊強度は54Mpaであり、引張破壊伸びは8%であった(表1参照)。
【0054】
(2)限界面圧試験
日立化成株式会社製のPAI樹脂HI−600と、ダイキン工業株式会社製のPTFE粉末と、フッ化カルシウムと、酸化アルミニウム粉末とをボールミルに投入した後、12時間、これらの物質を攪拌混合した。この結果、10,000〜20,000cPの粘度を有する摺動部被覆用樹脂組成物溶液を得た。なお、このときの混合組成は、順に重量比で60/20/15/5であった。ちなみに、ここで、PAI樹脂の重量はワニスとしての重量ではなく固形分の重量である。
【0055】
次いで、外径φ44mm、内径φ32mmのディスク基材(図4参照)をアセトンにより脱脂した後、そのディスク基材を窒素ブローによって乾燥させた。なお、このディスク基材は、多孔質焼結金属であり、具体的には日立粉末冶金製のEO材から作製されている。続いて、焼成後の膜厚が50〜120μm(マイクロメートル)の範囲内に入るように摺動部被覆用樹脂組成物溶液をディスペンサ塗装装置(スプレー塗装装置等であってもよい)によってそのディスク基材に塗布した後、その摺動部被覆用樹脂組成物溶液を摂氏50度〜摂氏100度に設定したオーブンに30分間静置してその摺動部被覆用樹脂組成物中の溶媒を除去した。その後、設定温度を摂氏100度〜摂氏280度に変更し、ディスク基材上に残った摺動部被覆用樹脂組成物を30分間かけて十分に焼成した。この結果、ディスク基材上に摺動部被覆用樹脂組成物のフィルムが形成された。その後、このフィルムの膜厚が30〜50μm(マイクロメートル)の範囲内に入るようにこのフィルムを研磨して最終のディスク試験片20とした。そして、フィルムS側が上方を向くようにしてこのディスク試験片20を試験装置にセットした。
【0056】
次いで、ブレードホルダー10にブレード11を固定した後にブレード11の先端が下方を向くようにして(つまり、ブレード11の先端がディスク試験片20上のフィルムSと対向するようにして)ブレードホルダー10を試験装置にセットした。なお、このブレード11は、SKH51焼入れ焼戻し材(HV750〜850)から形成されており、図5に示されるように先端が円弧面となっている。さらに詳細には、このブレード11は、先端の円弧面の半径が6mmであり、幅が4mmであり、奥行きが5mmであり、長さが11mmである。なお、ブレード11の先端を円弧面としたのは、ヘルツ接触によりディスク試験片20に対する面圧を高くし、実際の圧縮機等における過酷な摺動状態(片当り等が発生した状態)を再現するためである。また、このブレード11は、ブレードホルダー10を軸Xに沿って見た場合において軸Xから19mm離れた円周上に均等配置される3つの固定位置に取り付けられている(つまり、ブレード固定位置は軸Xから19mm離れた円周上において120度の角度毎に設けられている)。また、このとき、ブレード11は、円弧辺がブレードホルダーの半径方向に沿って並ぶようにブレードホルダー10に取り付けられる(つまり、図5に示される矢印方向が摺動方向となる)。
【0057】
そして、ブレード11を30kgf荷重でディスク試験片20に押しつけた状態で、すべり速度が0.5m/sとなるようにディスク試験片20を軸Xを中心に回転させた。なお、このとき、ディスク試験片20は大気中に暴露され、ブレード11とディスク試験片20との間には潤滑油が注入されていなかった(つまり、ドライ状態下で試験が行われた)。そして、その後、5分経過毎に荷重を10kgfずつ増加させ、ブレード11とディスク試験片20との摩擦係数が急上昇する荷重を限界荷重とした。
【0058】
なお、本実施例において、限界荷重は70kgfであった(表1参照)。
【実施例2】
【0059】
引張試験用試験片作製用の原料を日立化成株式会社製のPAI樹脂溶液HPC−9100に変更した以外は、実施例1と同様に引張試験用試験片を作製した。また、測定温度条件を摂氏25度に変更した以外は、実施例1と同様に引張試験を行った。また、限界面圧試験用試験片作製用の原料中のポリアミドイミド樹脂を日立化成株式会社製のPAI樹脂溶液HPC−9100に変更し、さらに、限界面圧試験用試験片作製用の原料の重量比を50/30/20/0に変更した以外は、実施例1と同様にして限界面圧試験用試験片を作製し、限界面圧試験を行った。なお、このとき、引張破壊強度は150Mpaであり、引張破壊伸びは9%であり、限界荷重は65kgfであった(表1参照)。
【実施例3】
【0060】
引張試験用試験片作製用の原料を日立化成株式会社製のPAI樹脂溶液HPC−9100に変更した以外は、実施例1と同様に引張試験用試験片を作製した。また、測定温度条件を摂氏25度に変更した以外は、実施例1と同様に引張試験を行った。また、限界面圧試験用試験片作製用の原料中のポリアミドイミド樹脂を日立化成株式会社製のPAI樹脂溶液HPC−9100に変更した以外は、実施例1と同様にして限界面圧試験用試験片を作製し、限界面圧試験を行った。なお、このとき、引張破壊強度は150Mpaであり、引張破壊伸びは9%であり、限界荷重は80kgfであった(表1参照)。
【実施例4】
【0061】
引張試験用試験片作製用の原料を日立化成株式会社製のPAI樹脂溶液HPC−9100に変更した以外は、実施例1と同様に引張試験用試験片を作製した。また、測定温度条件を摂氏25度に変更した以外は、実施例1と同様に引張試験を行った。また、限界面圧試験用試験片作製用の原料中のポリアミドイミド樹脂を日立化成株式会社製のPAI樹脂溶液HPC−9100に変更し、さらに、限界面圧試験用試験片作製用の原料の重量比を70/20/8/2に変更した以外は、実施例1と同様にして限界面圧試験用試験片を作製し、限界面圧試験を行った。なお、このとき、引張破壊強度は150Mpaであり、引張破壊伸びは9%であり、限界荷重は70kgfであった(表1参照)。
【実施例5】
【0062】
引張試験用試験片作製用の原料を日立化成株式会社製のPAI樹脂溶液HPC−9200に変更した以外は、実施例1と同様に引張試験用試験片を作製した。また、測定温度条件を摂氏25度に変更した以外は、実施例1と同様に引張試験を行った。また、限界面圧試験用試験片作製用の原料中のポリアミドイミド樹脂を日立化成株式会社製のPAI樹脂溶液HPC−9200に変更した以外は、実施例1と同様にして限界面圧試験用試験片を作製し、限界面圧試験を行った。なお、このとき、引張破壊強度は115Mpaであり、引張破壊伸びは11%であり、限界荷重は60kgfであった(表1参照)。
【実施例6】
【0063】
引張試験用試験片作製用の原料を日立化成株式会社製のPAI樹脂溶液HPC−7200に変更した以外は、実施例1と同様に引張試験用試験片を作製した。また、測定温度条件を摂氏25度に変更した以外は、実施例1と同様に引張試験を行った。また、限界面圧試験用試験片作製用の原料中のポリアミドイミド樹脂を日立化成株式会社製のPAI樹脂溶液HPC−7200に変更した以外は、実施例1と同様にして限界面圧試験用試験片を作製し、限界面圧試験を行った。なお、このとき、引張破壊強度は60Mpaであり、引張破壊伸びは130%であり、限界荷重は60kgfであった(表1参照)。
【実施例7】
【0064】
測定温度条件を摂氏200度に変更した以外は、実施例1と同様に引張試験を行った。また、実施例1と同様にして限界面圧試験用試験片を作製し、限界面圧試験を行った。なお、このとき、引張破壊強度は39Mpaであり、引張破壊伸びは7%であり、限界荷重は70kgfであった(表1参照)。
【0065】
(比較例1)
引張試験用試験片作製用の原料を日立化成株式会社製のPAI樹脂溶液HPC4250に変更した以外は、実施例1と同様に引張試験用試験片を作製し、引張試験を行った。また、限界面圧試験用試験片作製用の原料中のポリアミドイミド樹脂を日立化成株式会社製のPAI樹脂溶液HPC4250に変更した以外は、実施例1と同様にして限界面圧試験用試験片を作製し、限界面圧試験を行った。なお、このとき、引張破壊強度は30Mpaであり、引張破壊伸びは10%であり、限界荷重は30kgfであった(表1参照)。
【0066】
(比較例2)
引張試験用試験片作製用の原料を日立化成株式会社製のPAI樹脂溶液HPC4250に変更した以外は、実施例1と同様に引張試験用試験片を作製した。また、測定温度条件を摂氏25度に変更した以外は、実施例1と同様に引張試験を行った。また、限界面圧試験用試験片作製用の原料中のポリアミドイミド樹脂を日立化成株式会社製のPAI樹脂溶液HPC4250に変更した以外は、実施例1と同様にして限界面圧試験用試験片を作製し、限界面圧試験を行った。なお、このとき、引張破壊強度は80Mpaであり、引張破壊伸びは10%であり、限界荷重は45kgfであった(表1参照)。
【0067】
【表1】

【0068】
−考察−
実施例1及び比較例1の記載から「摺動部被覆用樹脂組成物中のPAI樹脂成分として摂氏100度の温度条件下においてより高い引張破壊強度を示すPAI樹脂を用いると、摺動部が高温になっても摺動部被覆用樹脂組成物が破断しにくくなる」ことがわかる。したがって、摺動部被覆用樹脂組成物中のPAI樹脂成分としてこのようなPAI樹脂を用いると、摺動部被覆用樹脂組成物に、多孔質焼結金属基材に対する高い密着性を付与することができる。なお、実施例7において使用されたPAI樹脂は、実施例1において使用されたPAI樹脂と同一のPAI樹脂である。したがって、このPAI樹脂は摂氏100度の温度条件下において高い引張破壊強度を示すだけでなく、摂氏200度の温度条件下において高い引張破壊強度を示すことがわかる。
【0069】
また、実施例2〜5及び比較例2の記載から「摺動部被覆用樹脂組成物中のPAI樹脂成分として摂氏25度の温度条件下においてより高い引張破壊強度を示すPAI樹脂を用いると、摺動部が高温になっても摺動部被覆用樹脂組成物が破断しにくくなる」ことがわかる。したがって、摺動部被覆用樹脂組成物中のPAI樹脂成分としてこのようなPAI樹脂を用いると、摺動部被覆用樹脂組成物に、多孔質焼結金属に対する高い密着性を付与することができる。
【0070】
また、実施例6の記載から「摺動部被覆用樹脂組成物中のPAI樹脂成分として摂氏25度の温度条件下において引張強度は比較的低いが伸びが比較的高いPAI樹脂を用いると、摺動部が高温になっても摺動部被覆用樹脂組成物が破断しにくくなる」ことがわかる。したがって、摺動部被覆用樹脂組成物中のPAI樹脂成分としてこのようなPAI樹脂を用いると、摺動部被覆用樹脂組成物に、多孔質焼結金属基材に対する高い密着性を付与することができる。
【0071】
なお、実施例において使用したPAI樹脂は、芳香族ポリアミドイミド樹脂等であり、例えば、芳香族ジアミンに特定のアラミドジアミン類を共重合させる等してその引張破壊強度や伸びを調製することができる。
【0072】
<揺動式ロータリー圧縮機の特徴>
本実施の形態に係る揺動式ロータリー圧縮機101では、ピストン121、ブッシュ122及びヘッド部材123,127の摺動部分に、本発明に係る摺動部被覆用樹脂組成物がコーティングされた。このため、揺動式ロータリー圧縮機101では、潤滑油が供給されず摺動面温度が急上昇するような場合であっても、従来よりも優れた摺動特性や、耐摩耗性、耐焼付性等が実現される。また、このコーティング膜は剥離しにくい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る摺動部被覆用樹脂組成物は、圧縮機やエンジン等の摺動部分に従来よりも優れた摺動特性や、耐摩耗性、耐焼付性等を付与することができるとともに剥がれにくいコーティング膜を形成することができるという特徴を有しており、摺動部分を有しているあらゆる機械装置に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態に係る揺動式ロータリー圧縮機の縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るシリンダブロックの上面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る揺動式ロータリー圧縮機のシリンダ室の横断面図である。
【図4】限界面圧試験装置の概略図である。
【図5】限界面圧試験装置に採用されるブレードの斜視図である。
【符号の説明】
【0075】
101 揺動式ロータリー圧縮機
110 ケーシング
111 胴部ケーシング部
112 上壁部
113 底壁部
115 揺動式ロータリー圧縮機構
116 駆動モータ
117 クランク軸
117a,117b 偏心軸部
119 吸入管
120 吐出管
121 ピストン
121a ローラー部
121b ブレード部
122 ブッシュ
123 フロントヘッド
123a 軸受部
123b 開口
124 第1シリンダブロック
124a,126a シリンダ孔
124b,126b 吸入孔
124c,126c 吐出路
124d,126d ブッシュ収容孔
124e,126e ブレード収容孔
125 ミドルプレート
126 第2シリンダブロック
127 リアヘッド
127a 軸受部
190 ボルト
151 ステータ
152 ローター
153 コイルエンド
160 マフラー
210 アキュームレータ(気液分離器)
L 潤滑油
Rc1 第1シリンダ室
Rc2 第2シリンダ室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
摂氏100度の温度条件下における引張強度が40MPa以上であり、全重量に対して50〜80wt%を占めるポリアミドイミド樹脂と、
全重量に対して15wt%以上を占めるポリテトラフルオロエチレン粉末と、
を含有する摺動部被覆用樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリアミドイミド樹脂は、摂氏200度の温度条件下における引張強度が30MPa以上である
請求項1に記載の摺動部被覆用樹脂組成物。
【請求項3】
摂氏25度の温度条件下における引張強度が110MPa以上180MPa以下であり、全重量に対して50〜80wt%を占めるポリアミドイミド樹脂と、
全重量に対して15wt%以上を占めるポリテトラフルオロエチレン粉末と、
を含有する摺動部被覆用樹脂組成物。
【請求項4】
摂氏25度の温度条件下における伸びが40%以上150%以下であり、全重量に対して50〜80wt%を占めるポリアミドイミド樹脂と、
全重量に対して15wt%以上を占めるポリテトラフルオロエチレン粉末と、
を含有する摺動部被覆用樹脂組成物。
【請求項5】
フッ化物と、
酸化アルミニウム粉末と
をさらに含有する請求項1から4のいずれかに記載の摺動部被覆用樹脂組成物。
【請求項6】
前記フッ化物は、フッ化カルシウム(CaF2)及びフッ化ストロンチウム(SrF2)より成る群から選択される少なくとも一つのフッ化物である
請求項5に記載の摺動部被覆用樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−280485(P2008−280485A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128472(P2007−128472)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】