説明

撓み振動型エキサイタとその製造方法

【課題】従来の圧電型撓み振動型エキサイタは、シムに貼り付けた圧電素子の上面電極表面に対し垂直方向に給電端子を引き出す構造となっていたため、エキサイタの厚みを薄くすることができなかった。
【解決手段】ビーム10を構成するシム端部16を分割して給電端子17a、17bを設け、さらにシムに搭載する第1圧電素子12の電極パターンを、給電端子に対応するような形状の第1電極13a、第2電極13bを形成する。このシム11と第1圧電素子12を異方性導接着剤14で接着することにより、シム端部16の給電端子と圧電素子の電極が導電接続され、シム端部16の給電端子から圧電素子へ給電を行うことが出来る。したがって薄型のエキサイタを構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パソコン、PDA、または携帯電話機等や小型端末機器用の平面スピーカ装置に用いられる、あるいは小型端末機器の筐体を機械的に励振させるための撓み振動型エキサイタとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の小型端末機器等に適した音響変換器として、小型端末機器の筐体を直接圧電型エキサイタで励振する撓み振動型エキサイタが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
まず、特許文献1に開示されている撓み振動型エキサイタの構造例を図9に基づいて説明する。図9(a)は、従来の撓み振動型エキサイタの構成を示す断面図であり、図9(b)は、同図(a)に示す振動板(以下ビームと記す)の上部平面図であり、図9(c)は、同図(b)に示すB1−B2断面図である。なお、図9(b)、図9(c)は、ビーム60aを示している。
【0004】
図9(a)に示す様に、従来の撓み振動型エキサイタは、シム61aの両主面に同じ構造の圧電素子62a、62bを貼り付けて構成されたビーム60a、60bが、筐体68内の一端の保持領域69で固定され、他端は自由端となる様に配置されている。なお、図9(b)に示す様に、圧電素子62aは、シム61aの一主面のほぼ全域に渡って形成されている。また、本図に示す開口64を介して、シム61aの裏側に配した圧電素子62bの上面電極63a(同図(c)参照)と、圧電素子62aの上面電極63a(同図(c)参照)とが、図示しない導電ペーストで接続されている。
【0005】
また、図9(a)に示す様に、このビーム60a、60bに設けられた圧電素子62a、62bには、それぞれ外部から給電できる様に、筐体68に設けた孔に装填された信号入力端子65aと、シム61aと一体に形成された接地電極65bが接続されて、信号入力端子65aと接地端子65bとから給電を行って、ビーム60a、60bに撓み振動を起こすことができる様になっている。
【0006】
なお、図9(a)に示す保持領域69は、ビーム60a、60bを筐体68で保持する領域で、かつ開口64や信号入力端子65aを設けるために必要な領域である。この保持領域69は、エキサイタとしてのビーム60a、60bの撓み振動に寄与しない領域となる。
【0007】
次に、上記撓み振動型エキサイタにおけるビーム構成について詳細に説明する。
図9(c)に示す様に、従来の撓み振動型エキサイタに用いるビーム60aは、シム61aの両主面に圧電素子62a、62bをそれぞれ貼り付けたバイモルフ構造となっている。また、この圧電素子62a、62bは、複数枚の圧電層を積層した構造となっており、各圧電素子62a、62b内部で各圧電層を挟持する上面電極63aと下面電極63bとが、圧電素子62a、62bの厚み方向に順に積層配置されている。そして、下部電極63b同士は、ビーム60aの先端側(本図面における右側)で、上部電極63a同士は、基部側(本図面における左側)の側面でそれぞれ共通に束ねられている。この様に構成すれば、ビーム60a、60bの給電箇所を、圧電素子62a、62bの上面電極63aとシム61aとすることができる。
【0008】
次に、特許文献2に開示された、従来の他の撓み振動型エキサイタの構成例について説
明する。図10は、従来の撓み振動型エキサイタの他の構成例を示す断面図である。
【0009】
図10に示す様に、この従来の撓み振動型エキサイタは、筐体(図示せず)内に、特許文献2に記載された圧電素子72a、72bをシム71の両主面に配したビーム70の構成を有する。
【0010】
また、本図面に示す圧電素子72a、72bにおける各下面電極73bは、導電性の接着層74を介してシム71に貼り付けて導電接着されて接地電極75bに接続される。そして、各上面電極73aは、スプリングコネクタ75aにより1つに束ねられて、接地電極75bとスプリングコネクタ75aから導線76a、76bを介して外部から給電できる様になっている。
【0011】
なお、図10に示す様に、ビーム70の保持領域79は、スプリングコネクタ75aで各圧電素子72a、72bにおける上面電極73aを挟持する領域となる。したがって、この保持領域79は、エキサイタの筐体(図示せず)に固着する領域となり、エキサイタとしての撓み振動には寄与しない領域となる。
【0012】
【特許文献1】特開2005−160028号(第4−5頁、第1−4図)
【特許文献2】特開2005−66500号(第4−5頁、第1−4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
一般的にパソコン、PDA、または携帯電話機等の小型端末機器に用いる平面スピーカ装置の撓み振動型エキサイタ、あるいは小型端末機器の筐体を機械的に励振する撓み振動型エキサイタは、所定の音圧を発振でき、かつ小型薄型であることが望まれている。
【0014】
しかしながら、特許文献1に記載の撓み振動型エキサイタでは、図9(a)に示すビーム60a、60bを駆動するための一方の給電端子が、シム61aに接続された接地端子65bとなる。また、他方の給電端子は、シム61aに貼り付けた圧電素子62a、62bの上面電極63aに、シム61aの主面に対する垂直方向、すなわちシム61aの厚み方向に配した信号入力端子65aとなる。したがって、特許文献1に記載の撓み振動型エキサイタは、この信号入力端子65aがあるために、筐体68の厚み、ひいてはエキサイタの厚みを薄くできない。
【0015】
また、特許文献2に記載の撓み振動型エキサイタは、図10に示すシム71の表裏両主面に圧電素子72a、72bを配し、圧電素子72a、72bにおける各上面電極73aをスプリングコネクタ75aで挟持する構成となっているので、これも同様に、エキサイタの厚みを薄くできない。
【0016】
また、特許文献1に記載の撓み振動型エキサイタは、ビーム60a、60bを確実に保持するとともに、開口64を介して各圧電素子62a、62bにおける上面電極63a同士を接続するとともに、各上面電極63aと信号入力端子65aとで、確実に導電接続を取らなければならない構造となっている。したがって、特許文献1に記載の構成例では、エキサイタの信頼性を確保するために、保持領域69をむやみに小さくすることはできない。したがって、この従来の撓み振動型エキサイタを小型化することは難しいとされていた。
【0017】
また、特許文献2に記載の撓み振動型エキサイタにおいても、保持領域79が大きいため、エキサイタを小型化することが難しいという問題がある。
【0018】
また、特許文献1における撓み振動型エキサイタは、圧電素子62a、62bにおける第1、第2電極63a、63bとシム61a、61bを導電接続するために銀ペーストを使用している。そのため、圧電素子63a、63bをシム61a、61bに貼り付ける工程とは別に銀ペーストを塗布する工程が必要となる。したがって、これら各部材の組み立て工程が、上記工程の分だけ多くなり、エキサイタの製造コスト高の要因にもなっている。なお、この問題は、特許文献2におけるエキサイタにおいても同様である。
【0019】
そこで、本発明の目的は上記課題を解決し、小型薄型で組み立て工程の少ない高性能な撓み振動型エキサイタおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記改題を解決するために、本発明の撓み振動型エキサイタは、基本的に下記記載の構成要件を採用する。
【0021】
本発明の撓み振動型エキサイタは、シムと、当該シムに貼り付けた、第1電極と第2電極で圧電層を挟持した第1圧電素子と、当該第1圧電素子に給電を行うための給電端子とを有するビームを備え、この給電端子から給電を行うことで、シムを励振させる撓み振動型エキサイタにおいて、給電端子が、シムから分割して形成された分割片からなる、前記第1電極に接続する第1給電端子と、シムと一体形成されて第2電極と接続する第2給電端子を有し、第1電極と第1給電端子との接続と、第2電極とシムとの接続を、ともに異方性導電接着剤によって行うことを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明の撓み振動型エキサイタは、前述したビームが、第3電極と第4電極で圧電層を挟持した第2圧電素子をさらに備えた、第1圧電素子における第2電極と、第2圧電素子における第3電極とをシムの表裏両主面と対面させて貼り付けたバイモルフ型ビームであり、前述した給電端子が、第1給電端子と、第2電極とともに第3電極に接続する第2給電端子と、シムの端部で分割して形成された他の分割片からなり、第4電極に接続する第3給電端子と、を有し、第3の電極とシムとの接続と、第4電極と第3給電端子との接続を、前述した異方性導電接着剤で行い、第1と第2給電端子の端子対と、第2と第3給電端子の端子対とを個別に制御して、第1と第2圧電素子に、異なる給電を行える様にしたことを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明の撓み振動型エキサイタは、前述した第1と第4電極の電極構造と、第2と第3電極の電極構造をそれぞれ同じ形状とし、第2給電端子の両側に第1と第3給電端子を対象配置し、さらに、第1と第2圧電素子の向きを変えて、シムの両面に配置することを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明の撓み振動型エキサイタは、前述した給電端子を筐体内から突出させて、他の部材を前記筐体内に収容することで、ビームの一端を固定して、ビームの他端を自由端とする構成としたことを特徴とするものである。
【0025】
本発明の撓み振動型エキサイタの製造方法は、シムと、当該シムに貼り付けた、第1電極と第2電極で圧電層を挟持した第1圧電素子と、当該第1圧電素子に給電を行うための給電端子とを有するビームとを備え、この給電端子から給電を行うことで、シムを励振させる撓み振動型エキサイタの製造方法において、所定の間隙で配置された2つのフレーム基部間に支持するリードフレームから、シムの端部で分割して形成された分割片からなる、第1電極に接続する第1給電端子と、第2給電端子が一体に形成されたシムとをそれぞれ形成するシム形成工程と、 第1給電端子と第1電極とを対応させて異方性導電接着剤で導電接着するとともに、第1圧電素子とシムの一方の主面を異方性導電接着剤で導電接着してビームを形成する圧電素子接着工程と、フレーム基部からビームを分離する切断分
離工程とを有することを特徴とするものである。
【0026】
また、本発明の撓み振動型エキサイタの製造方法は、前述したシム形成工程で分離形成される、第1給電端子と、第2給電端子が一体に形成されたシムが、それぞれ反対側のフレーム基部で支持する様に配置されていることを特徴とするものである。
【0027】
また、本発明の撓み振動型エキサイタの製造方法は、前述した圧電素子接着工程の後に、第1圧電素子における圧電層を分極する分極処理工程を有することを特徴とするものである。
【0028】
また、本発明の撓み振動型エキサイタは、前述したビームが、第3電極と第4電極で圧電層を挟持した第2圧電素子をさらに備え、第1圧電素子における第2電極と、第2圧電素子における第3電極とをシムの表裏両主面と対面させて貼り付けたバイモルフ型ビームであり、前述したシム形成工程が、第1と第2給電端子とともに、シムの端部で分割して形成された他の分割片からなる第3給電端子を形成する工程を含み、前述した圧電素子形成工程が、第1給電端子と第1電極とともに、第3給電端子と第4電極とをそれぞれ対応させて異方性導電接着剤で導電接着し、第1圧電素子とシムの一方の主面と、第2圧電素子とシムの他方の主面をそれぞれ異方性導電接着剤で導電接着してビームを形成する工程であることを特徴とするものである。
【0029】
また、本発明の撓み振動型エキサイタの製造方法は、前述した第1と第3給電端子と、第2給電端子が一体に形成されたシムとが、それぞれ反対側のフレーム基部で支持する様に配置されていることを特徴とするものである。
【0030】
また、本発明の撓み振動型エキサイタの製造方法は、前述した圧電素子接着工程の後に、第1圧電素子とともに第2圧電素子における圧電層を同時に分極する分極処理工程を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明の撓み振動型エキサイタの構成を採用することにより、このエキサイタを構成する第1、第2圧電素子への給電路を2次元配置とすることができる。したがって、薄型の圧電型撓み振動型エキサイタを提供することができる。
【0032】
また、シムと圧電素子の接着に異方性導電接着剤を用いるため、シムと圧電素子の接着と電極の導電接続を1つの工程で行うことができ、組み立て工程の削減が可能になる。さらに、シムの一部を給電端子として利用しているため、組み立て工程後に圧電素子の分極処理を行うことができる。そのため、圧電素子の性能を落とさずにエキサイタを製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、この本発明の撓み振動型エキサイタの構成について、図面を用いて説明する。
【0034】
まず、本実施例における撓み振動型エキサイタの構成例について説明する。
図1は、第1の実施例として本発明の撓み振動型エキサイタのビーム構成を示す図面であり、図1(a)は、このビームの構成を示す断面図、図1(b)は、圧電素子の電極パターンを示した平面図であり、図1(c)は、図1(b)で示す圧電素子の電極パターンと対応して分割されたシムの平面図を示している。
【0035】
図1(a)に示すように、ビームの第1圧電素子12は、圧電層を第1電極13aと第2電極13bで挟持した構成となっており、この第1圧電素子12とシム11を異方性導
電接着剤14を用いて接着した構造となっている。第1圧電素子12に形成される第1電極13aと第2電極13bは、図1(b)に示すようにシム11側の電極と対向するために同一平面上に形成されている。また、シム11を分割して形成する電極は、図1(c)に示すように、図1(b)に示す圧電素子12に形成された第1、第2電極13a、13bと対応する形状の第1給電端子17aと第2給電端子17bに分割されている。
【0036】
本実施例に場合の電気的接続形態は、第1圧電素子12の第1電極13aと第2電極13bは異方性導電接着剤14中の導電粒子15により、シム11を分割して形成した第1給電端子17aと第2給電端子17bとにそれぞれ接続している。エキサイタを駆動する場合は、シム11の第1給電端子17aと第2給電端子17bにそれぞれ駆動信号を印加することで第1圧電素子12を駆動することができる。
【0037】
次に、第2の実施例としてシムの両面に第1、第2圧電素子を貼り付けたバイモルフ型ビームについて図2を用いて説明する。図2(a)は、このバイモルフ型ビームの構成を示す断面図である。図2(b)は、この構成の場合における第1、第2圧電素子の電極パターンを示した平面図であり、図2(c)は、図2(b)で示す第1、第2圧電素子の電極パターンと対応して電極を形成したバイモルフ用シムの平面図を示している。
【0038】
図2(a)に示すように、本発明のバイモルフ型ビーム20の第1圧電素子12は、圧電層を第1電極13aと第2電極13bで挟持した構成となっており、第2圧電素子22は、圧電層を第3電極23aと第4電極23bで挟持した構成となっている。このように構成された第1圧電素子12と第2圧電素子22をバイモルフ用シム21の両面に異方性導電接着剤14を用いて接着した構造となっている。バイモルフ用シム21と第1、第2圧電素子12、22に形成されたそれぞれの電極は、異方性導電接着剤14中の導電粒子15によってバイモルフ用シム21の給電端子とそれぞれ導電接続される構造になっている。導電接続の構造については後述する。
【0039】
また、第1、第2圧電素子12、22は、図2(b)に示すようにシム側の電極と対向するために同一平面上に形成されている。第1圧電素子12と第2圧電素子22はバイモルフ用シム21に反転させて貼り付けるため、電極パターンが重ならないために同じ電極パターンを形成しておけば良く、第1圧電素子12、第2圧電素子22ともに同じ形状の圧電素子を用いることができる。
【0040】
さらに、バイモルフ用シム21に形成する給電端子は、図2(c)に示すように、図2(b)に示す第1、第2圧電素子12、22に形成された第1、第2電極13a、13b、23a、23bと対応する形状に第1給電端子24a、第2給電端子24b、第3給電端子24cの3つの給電端子に分割されている。
【0041】
次に、このバイモルフ型ビーム20の構成における電気的接続形態について説明する。
図2(a)に示すように、第1圧電素子12の第1電極13aは、バイモルフ用シム21を分割して形成された第1給電端子24aに接続され、第1圧電素子12の第2電極17bはバイモルフ用シム21に形成された第2給電端子24bに接続されている。また第2圧電素子22に形成されている第3電極23aは、バイモルフ用シム21の第3給電端子24cに接続され、第4電極23bはバイモルフ用シム21の第2給電端子24bに接続されている。以下にさらに詳しく導電接続形態について説明する。
【0042】
本発明の撓み振動型エキサイタにおけるビーム構成および導電接続形態について説明する。図3は、前記バイモルフ型ビーム20およびそれを備えた電極構造を更に分かりやすく図解したもので、図3(a)は、本発明の撓み振動型エキサイタに用いるバイモルフ型ビーム20の構成を示す斜視図であり、図3(b)は、このバイモルフ型ビーム20の第
1、第2圧電素子12、22の電極パターンを示した斜視図である。またここでは圧電素子をシム両面に搭載したバイモルフ型ビームについて説明するが、図1に示した1つの圧電素子をシムの片面にのみ貼り付けたビームの場合についても同様であり、その場合は図3で示した片面側の構造と同じである。
【0043】
図3(a)図3(b)に示す様に、シム端部25には、先に示した第1から第3給電端子24a〜24cが一線に並べて配置してある。そして、バイモルフ用シム21上面の第1圧電素子12における複数枚の第1電極13aは、図に示すA位置で束ねられて、第1給電端子24aと接続している。バイモルフ用シム21下面の第2圧電素子22における複数枚の第3電極23bも、第1圧電素子12と同様にA位置で束ねられて、第3給電端子24cと接続している。また、第1圧電素子12の第2電極13bと第2圧電素子22の第4電極23bは、図3(b)では一部分しか見えないが、B位置でそれぞれ束ねられて、第2給電端子24bと接続している。
【0044】
上記説明の様に接続することによって、第1給電端子24aからは第1電極13aに導通し、第3給電端子24cからは第3電極23aに導通する個別の端子として機能させることができる。それに加えて、第2給電端子24bは、第1圧電素子12と第2圧電素子22の第2電極13b、第4電極23bと接続し、共通端子として機能させることができる。
【0045】
次に前記構成で形成されたビームを筐体に固定し、撓み振動型エキサイタとした場合の構造について説明する。図4は本発明の撓み振動型エキサイタの構造を示す断面図である。この図ではシムの両面に圧電素子を貼り付けたバイモルフ型ビームを2本用いた場合について記載しているが、圧電素子をシムに片面だけに貼り付けた場合のビームやビームを1本だけ用いた場合にも適応できる。以下図4を用いてバイモルフ型ビームを2本用いた場合について説明する。
【0046】
図4に示すように、本実施例の撓み振動型エキサイタは、電気絶縁特性を有する樹脂製の筐体30内に、圧電型の撓み振動型エキサイタの振動梁として機能する様に、2本のバイモルフ型ビーム20が保持領域31でシム端部25を保持固定する構成となっている。
【0047】
この撓み振動型エキサイタは、筐体30の片側の保持領域31から筐体30の外へ図3(a)に示すように同一平面上に第1から第3給電端子24a〜24cが露出している状態となる。この第1から第3給電端子24a〜24cに外部信号源からの電気信号を接続し、第1、第2圧電素子12、22に給電する。
【0048】
このように、外部信号源との接続部を筐体30の保持領域31の外側で行うことが出来るため、バイモルフ型ビーム20を、非常に狭い範囲の保持領域31で支持することができ、従来例と比べて撓み振動型エキサイタの外形を小さく、かつ薄くすることができる。
【0049】
以上に詳述したように、本発明の撓み振動型エキサイタは、圧電素子を駆動するための給電端子が、シムの一部分を分割してシム端部に一線上にまとめて配置しているので、エキサイタ自体の厚みを薄型にできる。
【0050】
したがって、ビームを固定する筐体の保持領域は、狭い領域で十分となる。したがってビーム有効長を極力大きくでき、エキサイタの固有振動の1次共振周波数を低くすることができ、音域の広い撓み振動型エキサイタを提供できる。
【0051】
なお、本発明は単層圧電素子を用いた撓み振動型エキサイタであっても適用できる。
【0052】
次に、本発明の撓み振動型エキサイタのビームの製造方法を図面に基づいて説明する。図5(a)〜図5(d)は、エキサイタにおけるビームの製造工程を示す工程図である。また、図6は、図5(a)〜図5(d)で製造されたバイモルフ型ビームのシム端部の構成を示す上部平面図である。
【0053】
まず、図5(a)に示すように、目的の形状のシムを作製するための原型40を作成する。この原型40は、1枚の金属板材あるいはX方向に長いロール状の金属板材をプレス抜き等の手段を用いて、シム形成部42の上下に第1基部41aと第2基部41bを有するリードフレームを成型して得ることができる。
【0054】
次いで、図5(b)に示す様に、シム部43と給電端子部44とに区分して図に示す所望の形状を得る。なお、本工程では、シム部43側は第2基部41bと繋がり、給電端子部44側を、第1基部41aと繋がるリードフレームとする。また、本工程で、給電端子部44は、プレス抜き等でシムから分割して形成する。
【0055】
次いで、図5(c)に示す様に、シム部43の両面に第1、第2圧電素子12、22(本図では、第1圧電素子12のみを示している)を異方性導電接着剤を用いて接着する。異方性導電接着剤による接合方法については、後述する。
【0056】
次いで、図5(d)に示す様に、第1基部41aと第2基部41bを切り離し、図6に示す第1から第3給電端子24a〜24cを有する、図5(d)に示す複数個のビームを同時に得ることができる。
【0057】
次に、図5(c)におけるシム部43と第1、第2圧電素子12、22との導電接着方法を図7を用いて説明する。図7(a)〜図7(d)は、バイモルフ型ビームにおけるバイモルフ用シム21と第1圧電素子12、第2圧電素子22の導電接着工程を示す工程図である。なお、本図面は、図5で示すリードフレームの1つのシム形成部42から得られるバイモルフ用シム21のみを示している。
【0058】
まず、図5(b)の工程で得られたリードフレームのシム部43に、フィルムまたはペースト状の異方性導電接着剤14をシム部43両面に配設する。ここでは、導電粒子15が混入された異方性導電接着剤14を、シルクスクリーン印刷もしくはディスペンサーでシム部43に塗布する。
【0059】
次に、図7(b)に示す様に、図7(a)で得た構成体における異方性導電接着剤14の上面に第1圧電素子12、下面に第2圧電素子22を搭載する。このとき、第1、第2圧電素子12、22に設けた各第1〜第4電極13a、13b、23a、23bとバイモルフ用シム21に設けた第1〜第3給電端子23a〜23cをそれぞれ位置合わせして搭載する。
【0060】
次に、図7(c)に示すように、図7(b)で得られた構成体を圧着テーブル51上に置き、加熱加圧機50により第1圧電素子12と第2圧電素子22および異方性導電接着剤14を同時に熱圧着する。
【0061】
上記工程を経て、図7(d)に示すようなバイモルフ用シム21の両面に第1圧電素子12と第2圧電素子22が熱圧着されたバイモルフ型ビーム20を得る。同時に、異方性導電接着剤14に混入した導電粒子15が、第1〜第3給電端子23a〜23cと第1、第2圧電素子12、22における第1〜第4電極13a、13b、23a、23bとを接続して、給電端子と電極との導通を取ることができるようになる。
【0062】
この様にして、バイモルフ用シム21と第1、第2圧電素子12、22の接合と、第1〜第3給電端子23a〜23cと第1、第2圧電素子12、22における第1〜第4電極13a、13b、23a、23b(図2参照)との導通接続を同時に行うことが出来るため、本実施例によれば、エキサイタの製造工数を低減することができる。
【0063】
上記説明においては、異方性導電接着剤14を介して、バイモルフ用シム21の両面に第1、第2圧電素子12、22を載置するバイモルフ型ビーム20の製造方法を示したが、図1に示すようなシム11の片面にのみ第1圧電素子12を搭載するビーム10についても同様の工程で製造することができる。
【0064】
次に、本発明の撓み振動型エキサイタの分極処理工程とエキサイタの駆動形態について説明する。図8は本発明による圧電型撓み振動型エキサイタの分極処理方法を示す図面である。なお、本図に示す、52は分極用電源、53は分極電圧印加時の突入過電流制限抵抗を示している。
【0065】
まず、本発明の撓み振動型エキサイタの分極処理工程について説明する。
図8に示す様に、第2給電端子24bに正極、第1給電端子24aに負極を繋ぎ電圧を印加し、同時に第3給電端子24cに正極、第2給電端子24bに負極を繋ぎ電圧を印加する。この様な回路で接続し圧電素子に電圧を印加することによって、第1圧電素子12と第2圧電素子22を逆方向に分極することができる。本発明の撓み振動型エキサイタは、これら各端子対に異なる給電を行える様になっているからこそ、上記分極処理工程を行うことができるのである。
【0066】
次に、本願発明の撓み振動型エキサイタにおける分極処理工程が、従来の構成に比べて優位に作用する理由について説明する。
従来の撓み振動型エキサイタでは、各ビームに対する給電端子が2つであったため、分極処理工程により各第1、第2圧電素子を分極した後に、シムにこの第1、第2圧電素子を貼り合わせなくてはならなかった。
【0067】
この様にして構成された従来の撓み振動型エキサイタは、第1、第2圧電素子の貼り合わせ工程で、例えば熱圧着により両部材を貼り合わせようとした場合、この工程における熱によってせっかく分極させた第1、第2圧電素子の分極性能が低下、または消失してしまうという不具合が生じる。
【0068】
それに対し、本発明の撓み振動型エキサイタは、3つの第1から第3給電端子24a〜24c(図3(a)参照)を有するので、図8に基づき説明したように、第1、第2圧電素子12、22を熱圧着により接着した後に、分極処理することができる。したがって、本発明の構成によれば、従来の撓み振動型エキサイタの製造の際に問題となる、熱圧着における分極消失の虞がなくなり、信頼性の高いエキサイタを製造することができる。
【0069】
また、このバイモルフ型ビームを駆動する場合には、図3(a)に示す第1給電端子24aと第3給電端子24cを共通接続し、これらと第2給電端子24bに撓み振動型エキサイタの駆動信号を印加することで、第1、第2圧電素子12、22を同相駆動させてバイモルフ型ビーム20を振動させることができる。
【0070】
以上の説明からも明白なように、本発明の撓み振動型エキサイタと従来構成との相違点は、第1、第2圧電素子12、22における一対の電極に接続された第1から第3給電端子24a〜24cの引き出し構成にある。
【0071】
さらに第1、第2圧電素子12、22の接着に異方性導電接着剤14を用いることで、
バイモルフ用シム21への貼り付け工程時に同時に各第1から第4電極13a、13b、23a、23bと第1から第3給電端子24a〜24cを電気的接続も行うことができ、製造工程を少なくすることが出来る。
【0072】
さらに、第1から第3給電端子24a〜24cをバイモルフ用シム21の端部から取り出すことが出来るため、厚み方向の寸法が少なくて済み、バイモルフ型ビーム20を収納する筐体を含めて薄型のエキサイタを提供することができる。
【0073】
さらに第1、第2圧電素子12、22の第1から第4電極13a、13b、23a、23bをバイモルフ用シム21の第1から第3給電端子24a〜24cによってそれぞれ独立して取り出せるために、組み立て工程後に第1、第2圧電素子12,22の分極工程を行うことができるため、貼り付け工程時の加熱などでの分極の消失があっても第1、第2圧電素子12、22の圧電特性を損なわずにエキサイタを製造することが可能になる。したがって品質およびコストに優れた極めて薄型の撓み振動型エキサイタを提供することができる。
【0074】
以上に示したバイモルフ型撓み振動エキサイタの本願発明の特有の効果は、図1に示した撓み振動型エキサイタも同様である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の撓み振動型エキサイタのビームの構造を示す断面図と、圧電素子とシムの構成を示す平面図である。
【図2】本発明の撓み振動型エキサイタのバイモルフ型ビームの構造を示す断面図と、圧電素子とシムの構成を示す平面図である。
【図3】本発明の撓み振動型エキサイタのバイモルフ型ビームの斜視図と、このビームの電極配置形態を示す斜視図である。
【図4】本発明の撓み振動型エキサイタの構造を示す断面図である。
【図5】本発明の撓み振動型エキサイタのビームの製造工程を示す工程図である。
【図6】図5の工程で完成したビームのシム端部の詳細平面図である。
【図7】本発明の撓み振動型エキサイタのビームにおけるシムと圧電素子の導電接着工程を示す工程図である。
【図8】本発明の撓み振動型エキサイタのビームにおけるビームの分極処理工程を示す図面である。
【図9】従来の撓み振動型エキサイタの構成を示す断面図、ビームの上部平面図、およびビームの断面図である。
【図10】従来の撓み振動型エキサイタの他の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0076】
10 ビーム
11 シム
12 第1圧電素子
13a 第1電極
13b 第2電極
14 異方性導電接着剤
15 導電粒子
16 シム端部
17a 第1給電端子
17b 第2給電端子
20 バイモルフ型ビーム
21 バイモルフ用シム
22 第2圧電素子
23a 第3電極
23b 第4電極
24a 第1給電端子
24b 第2給電端子
24c 第3給電端子
25 シム端部
30 筐体
31 保持領域
40 原型
41a 第1基部
41b 第2基部
42 シム形成部
43 シム部
44 給電端子部
50 加熱加圧機
51 圧着テーブル
52 分極用電源
53 突入過電流制限抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シムと、当該シムに貼り付けた、第1電極と第2電極で圧電層を挟持した第1圧電素子と、当該第1圧電素子に給電を行うための給電端子とを有するビームを備え、前記給電端子から給電を行うことで、前記シムを励振させる撓み振動型エキサイタにおいて、
前記給電端子は、前記シムから分割して形成された分割片からなる、前記第1電極に接続する第1給電端子と、前記シムと一体形成されて前記第2電極と接続する第2給電端子を有し、
前記第1電極と前記第1給電端子との接続と、前記第2電極と前記シムとの接続を、ともに異方性導電接着剤によって行うことを特徴とする撓み振動型エキサイタ。
【請求項2】
前記ビームは、第3電極と第4電極で圧電層を挟持した第2圧電素子をさらに備えた、前記第1圧電素子における前記第2電極と、前記第2圧電素子における前記第3電極とを前記シムの表裏両主面と対面させて貼り付けたバイモルフ型ビームであり、
前記給電端子は、前記第1給電端子と、前記第2電極とともに第3電極に接続する前記第2給電端子と、前記シムの端部で分割して形成された他の分割片からなり、前記第4電極に接続する第3給電端子と、を有し、
前記第3電極と前記シムとの接続と、前記第4電極と前記第3給電端子との接続を、前記異方性導電接着剤で行い、
前記第1と第2給電端子の端子対と、前記第2と第3給電端子の端子対とを個別に制御して、前記第1と第2圧電素子に、異なる給電を行える様にしたことを特徴とする請求項1に記載の撓み振動型エキサイタ。
【請求項3】
前記第1と第4電極の電極構造と、前記第2と第3電極の電極構造は、それぞれ同じ形状であり、
前記第2給電端子の両側に前記第1と第3給電端子を対象配置し、
前記第1と第2圧電素子の向きを変えて、前記シムの両面に配置することを特徴とする請求項2に記載の撓み振動型エキサイタ。
【請求項4】
前記給電端子を筐体内から突出させ、他の部材を前記筐体内に収容することで、前記ビームの一端を固定して、前記ビームの他端を自由端とする構成としたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の撓み振動型エキサイタ。
【請求項5】
シムと、当該シムに貼り付けた、第1電極と第2電極で圧電層を挟持した第1圧電素子と、当該第1圧電素子に給電を行うための給電端子とを有するビームとを備え、前記給電端子から給電を行うことで、前記シムを励振させる撓み振動型エキサイタの製造方法において、
所定の間隙で配置された2つのフレーム基部間に支持するリードフレームから、前記シムの端部で分割して形成された分割片からなる、前記第1電極に接続する第1給電端子と、第2給電端子が一体に形成された前記シムとをそれぞれ形成するシム形成工程と、
前記第1給電端子と前記第1電極とを対応させて異方性導電接着剤で導電接着するとともに、前記第1圧電素子と前記シムの一方の主面を前記異方性導電接着剤で導電接着してビームを形成する圧電素子接着工程と、
前記フレーム基部から前記ビームを分離する切断分離工程と、を有することを特徴とする撓み振動型エキサイタの製造方法。
【請求項6】
前記シム形成工程で分離形成される、前記第1給電端子と、前記第2給電端子が一体に形成された前記シムとは、それぞれ反対側のフレーム基部で支持する様に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の撓み振動型エキサイタの製造方法。
【請求項7】
前記圧電素子接着工程の後に、前記第1圧電素子における前記圧電層を分極する分極処理工程を有することを特徴とする請求項5または6に記載の撓み振動型エキサイタの製造方法。
【請求項8】
前記ビームは、第3電極と第4電極で圧電層を挟持した第2圧電素子をさらに備えた、前記第1圧電素子における前記第2電極と、前記第2圧電素子における前記第3電極とを前記シムの表裏両主面と対面させて貼り付けたバイモルフ型ビームであり、
前記シム形成工程は、前記第1と第2給電端子とともに、前記シムの端部で分割して形成された他の分割片からなる第3給電端子を形成する工程を含み、
前記圧電素子形成工程は、前記第1給電端子と前記第1電極とともに、前記第3給電端子と前記第4電極とをそれぞれ対応させて前記異方性導電接着剤で導電接着し、前記第1圧電素子と前記シムの一方の主面と、前記第2圧電素子と前記シムの他方の主面をそれぞれ前記異方性導電接着剤で導電接着してビームを形成する工程である、ことを特徴とする請求項5に記載の撓み振動型エキサイタの製造方法。
【請求項9】
前記第1と第3給電端子と、前記第2給電端子が一体に形成された前記シムとは、それぞれ反対側のフレーム基部で支持する様に配置されていることを特徴とする請求項8に記載の撓み振動型エキサイタの製造方法。
【請求項10】
前記圧電素子接着工程の後に、前記第1圧電素子とともに前記第2圧電素子における前記圧電層を同時に分極する分極処理工程を有することを特徴とする請求項8または9に記載の撓み振動型エキサイタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−243781(P2007−243781A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−65567(P2006−65567)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】