説明

撥水性ブレードラバーおよびその製造方法、撥水性ブレードの製造方法、撥水性ブレードを備えたワイパ装置

【課題】シリコーン系の撥水剤をブレードラバー6に効率よくしかも均一に含浸させて撥水性能に優れたブレードラバーを製造する。
【解決手段】汎用ゴム(天然ゴム)からなるブレードラバー6を、撥水剤の一つである両末端型アミノ変性シリコーンに浸漬した状態で複数回、真空雰囲気下にすることを繰り返し、これによって前記撥水剤である両末端型アミノ変性シリコーンをブレードラバー6に含浸させ、優れた撥水性能を発揮するブレードラバー6にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の窓面を払拭するための撥水ブレードラバーおよびその製造方法、撥水性ブレードの製造方法、撥水性ブレードを備えたワイパ装置の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、降雨時において窓面の透視性を向上するため、窓表面(外面)に撥水剤を塗布することが試みられている。ところがこの場合、撥水剤の塗布が面倒かつ煩雑であるだけでなく、使用によって塗布した撥水剤膜が剥れて撥水効果が低減し、再度、撥水剤を塗布しなければならないという問題がある。そこでブレードラバーに撥水剤を含浸させ、窓面を払拭するたびに撥水コーティングできるようにしたものが知られている。ところが、前記撥水剤をブレードラバーに含浸させる場合、撥水剤としてはシリコーン系のコーティング材を用いることが多く、この場合、ブレードラバーはコーティング材と馴染みやすいシリコーン樹脂が用いられるが、シリコーン樹脂は、通常用いられる天然ゴムやネオプレンゴム等の汎用ゴムに比して高価であるばかりでなく、耐摩耗性に劣り払拭性が悪いという問題がある。そこで前述した天然ゴムのような汎用ゴムに撥水成分を含浸させようとする試みがある。
ところが撥水剤と汎用ゴムとは相溶性が悪く、撥水剤を必要量を含浸させることが難しい。これに対し、汎用ゴムを形成するときの原材料配合時に撥水剤を添加した状態で混錬し、加硫することが提唱される(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−50974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが撥水剤は汎用ゴムの原材料とも相溶性が悪い結果、撥水剤が単離(分離)してしまい、撥水剤を含む状態で均一に混錬することが難しいだけでなく、撥水剤の混錬にバラツキができ、均一な撥水性能を確保することが困難であるという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、撥水剤である両末端型アミノ変性シリコーンにブレードラバーを浸漬した状態で真空雰囲気にすることで前記撥水剤をブレードラバーに含浸させることを特徴とする撥水性ブレードラバーの製造方法である。
請求項2の発明は、真空雰囲気で複数回含浸を繰り返されるものであることを特徴とする請求項1記載の撥水性ブレードラバーの製造方法である。
請求項3の発明は、撥水剤である両末端型アミノ変性シリコーンが真空雰囲気下でブレードラバーに含浸されていることを特徴とする撥水性ブレードラバーである。
請求項4の発明は、ガラス面を払拭するリップ部とラバー保持部とを有するブレードラバーを成形する工程と、前記ブレードラバーに撥水剤である両末端型アミノ変性シリコーンを真空雰囲気下で含浸させる工程とを備えた撥水性ブレードの製造方法である。
請求項5の発明は、ワイパアームと、該ワイパアームに連結されるブレードホルダと、ガラス面に接触するリップ部および該リップ部に一体に形成され、前記ブレードホルダに保持される保持部を備えたブレードラバーとを備えたワイパ装置において、前記ブレードラバーのガラス接触面には、撥水剤である両末端型アミノ変性シリコーンを真空雰囲気下で含浸されていることを特徴とする撥水性ブレードを備えたワイパ装置である。
【発明の効果】
【0005】
そしてこれらの発明とすることにより、安価で入手しやすく、しかも払拭性能に優れた汎用ゴムを用いて撥水機能が高いブレードラバー、ワイパブレード、ワイパ装置を簡単に提供できることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次ぎに、本発明の実施の形態について説明する。図中、1は真空室であって、該真空室1は、開閉自在な蓋体2を備え、該蓋体2で覆蓋した状態で真空ポンプ3を駆動させて真空室1内の空気を吸引(排気)することで該真空室1内を真空にできるようになっている。真空室1内には含浸浴4が設けられており、該含浸浴4に撥水剤5が供給されている。そして該含浸浴4に汎用ゴムで形成されたブレード6を浸漬した状態で真空室1を真空にすることで該ブレードラバー6に撥水剤を含浸させるようになっている。
【0007】
一方、7はワイパアームであって、該ワイパアーム7の先端にはブレードホルダ8が連結され、該ブレードホルダ8に、前記ブレードラバー6に設けられた保持部6aが着脱自在に保持され、かかるものによってワイパ装置が構成されている。さらにブレードラバー6は、ガラス面に接触(払拭)するリップ部6b、リップ部6bに一体形成され、前記保持部6aを備えてワイパブレードを構成している。
【0008】
次に、具体的にブレードラバー6に撥水剤を含浸させることについて説明する。撥水剤として、図3に示すものを用い、真空含浸条件として、室温下、含浸時間15分、含浸回数1、2、3回として、各含浸量(重量%)の推移を観測した。その結果を図4に示す。これによると、撥水剤の中には、汎用ラバーに含浸しやすいものとしづらいものとがあり、含浸しやすいものとして、環状ジメチルシリコーンと両末端型アミノ変性シリコーンがあることが確認された。
【0009】
次に、汎用ゴム(本実施の形態では天然ゴムを採用)で形成したブレードラバー6について、何も含浸させないものA、前記2種類の含浸しやすい撥水剤を3回真空含浸させたものB、C、市販の撥水剤を含浸させた2種類のブレードラバーD、Eについて、摩擦試験機を用いてガラスとのドライ摩擦を行い、5分間経過後のガラス摺動部の水接触角(みずはじき程度)θを測定し、撥水効果を確認した。
測定器としては、キーエンス社製マイクロスコープを50倍の倍率にして使用した。また測定条件は、
水滴下量:5μl(マイクロリットル)
測定時間:滴下直後および3秒後
測定個所:摩擦摺動面上
接触角θの求め方:図5参照
ガラス洗浄方法:エタノールで拭いた後、アルカリ性洗剤に浸して5分間放置し、水でよく洗い流す
とした。
【0010】
この結果を図6に示す。この結果から、Cの両末端型アミノ変性シリコーンを真空含浸させたものが大きい水接触角θを呈していることが確認され、これは市販のものよりも優れた撥水効果があるといえる。
【0011】
このように、撥水剤として両末端型アミノ変性シリコーンを採用し、これを汎用ゴムで形成したブレードラバー6に真空条件下で含浸させたものは、撥水性ワイパブレードとして高い撥水機能を呈することになるが、この撥水剤の含浸は、真空条件下であるため、従来の配合時の充填のように、撥水剤が単離するようなことがなく、この結果、均一な撥水性能を発揮できることになる。そしてこのブレードラバーを用いたワイパブレードやワイパ装置にした場合に、安定した撥水性能を発揮できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】真空室の概略説明図である。
【図2】ワイパ装置の概略斜視図である。
【図3】撥水剤とその動粘度および比重を記載した表図である。
【図4】撥水剤の含浸状態を示すグラフ図である。
【図5】接触角θの測定状態を示す説明図である。
【図6】摩擦試験機で試験したブレードラバーの水接触角の値を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0013】
1 真空室
6 ブレードラバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥水剤である両末端型アミノ変性シリコーンにブレードラバーを浸漬した状態で真空雰囲気にすることで前記撥水剤をブレードラバーに含浸させることを特徴とする撥水性ブレードラバーの製造方法。
【請求項2】
真空雰囲気で複数回含浸を繰り返されるものであることを特徴とする請求項1記載の撥水性ブレードラバーの製造方法。
【請求項3】
撥水剤である両末端型アミノ変性シリコーンが真空雰囲気下でブレードラバーに含浸されていることを特徴とする撥水性ブレードラバー。
【請求項4】
ガラス面を払拭するリップ部とラバー保持部とを有するブレードラバーを成形する工程と、前記ブレードラバーに撥水剤である両末端型アミノ変性シリコーンを真空雰囲気下で含浸させる工程とを備えた撥水性ブレードの製造方法。
【請求項5】
ワイパアームと、該ワイパアームに連結されるブレードホルダと、ガラス面に接触するリップ部および該リップ部に一体に形成され、前記ブレードホルダに保持される保持部を備えたブレードラバーとを備えたワイパ装置において、前記ブレードラバーのガラス接触面には、撥水剤である両末端型アミノ変性シリコーンを真空雰囲気下で含浸されていることを特徴とする撥水性ブレードを備えたワイパ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−222960(P2008−222960A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66794(P2007−66794)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】