説明

撮像システムおよび結像位置補正方法

【課題】光学素子の偏心の影響を補正する機構を備えるとともに、製造コストを抑えた撮像システムおよび結像位置補正方法を提供する。
【解決手段】被写体光の方向と交わる2次元面内を移動することで透過被写体光の方向を変化させる可動光学素子と、可動光学素子と可動光学素子を支持する支持部材とを接続し、電圧の印加を受けて伸縮する高分子膜と、高分子膜の表面上に分割配置された複数の電極とからなる高分子アクチュエータと、画像信号を生成する画像信号生成部と、結像位置のずれを補正する結像位置補正ユニットが着脱自在に装着される接続部とを備えた撮像装置;および被写体光の結像位置のずれの量に応じた電圧を印加して可動光学素子を2次元面内で移動させて被写体光の結像位置のずれを補正するずれ補正部を備えた結像位置補正ユニット;を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体光を結像させて被写体像を表す画像信号を生成する際の被写体光の結像位置のずれを補正する撮像システムおよび結像位置補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラに代表される撮像装置や、このような撮像装置を構成する様々な要素に関する技術が発展している。こうした撮像装置の構成要素の中でも、レンズなどの光学素子が備えられている光学系や、CCDなどの撮像素子が備えられている撮像系は、被写体光を結像させて画像信号を生成する上で重要な役割を担っており、高精度の機能が要求される構成要素である。
【0003】
撮像装置の製造過程においては、こうした光学素子や撮像素子の位置が、本来取り付けられるべき位置とは、少しずれた状態で撮像装置に取り付けられてしまい、撮像素子に対する光学素子の相対的な位置にずれが生じるという、いわゆる光学素子の偏心が起きることがある。この状態では、被写体光の結像位置にずれが生じるといった不具合が生じ、この結果、撮影画像に像ずれが現れるという問題が起きる。
【0004】
最近では、このような偏心の量を、撮影で得られた画像データから算出する手法(例えば、特許文献1参照)や、光学系にミラーを組み込み、このミラーの形状を変化させる機構を備えることで偏心の影響を補正する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−49598号公報
【特許文献2】特開2003−287612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この方法では、ミラー形状を変化させる機構を撮像装置内に備えても調整後はその機構は無用になってしまい、撮像装置の製造コストの上昇を招くだけで、利点に乏しいものとなる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、光学素子の偏心の影響を補正する機構を備えるとともに、製造コストを抑えた撮像システムおよび結像位置補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の撮像システムは、
被写体光を結像させて被写体像を表す画像信号を生成する撮像装置と、該撮像装置に対して着脱自在に装着され、該撮像装置を制御して上記被写体光の結像位置のずれを補正する結像位置補正ユニットとを備えた撮像システムにおいて、
被写体光を透過させ該被写体光の方向と交わる2次元面内を移動することで透過被写体光の方向を変化させる可動光学素子と、
上記可動光学素子と、該可動光学素子から離間して配置された、該可動光学素子を支持する支持部材とを接続し、電圧の印加を受けて伸縮する高分子膜と、該高分子膜に接した状態で該高分子膜の表面上に分割配置された、該高分子膜に部分的に電圧を印加するための複数の電極とからなる高分子アクチュエータと、
上記結像位置補正ユニットが着脱自在に装着される接続部とを備えた撮像装置;および
被写体光の結像位置のずれの量を認知して、該ずれの量に応じた電圧を印加して上記可動光学素子を上記2次元面内で移動させることにより、被写体光の結像位置のずれを補正するずれ補正部を備えた結像位置補正ユニット;
を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の撮像システムは、高分子アクチュエータに対する電圧の印加だけで可動光学素子が被写体光の方向と交わる2次元面内を移動して結像位置の補正を行う。結像位置の補正の機構がこのように簡単であり、しかも高分子アクチュエータは比較的安価なので、本発明の撮像システムは、製造コストを抑えることができる。
【0009】
また、本発明の撮像システムにおいて、「上記可動光学素子がレンズである」という形態は、好ましい形態である。
【0010】
このような形態によれば、高分子アクチュエータに対する電圧の印加だけでレンズの駆動が行われて、簡単に結像位置の補正を行うことができる。
【0011】
また、本発明の撮像システム、および本発明の、可動光学素子がレンズである撮像システムにおいて、「上記可動光学素子の、被写体光が透過する透過面上に接着された、光透過性の材料からなる膜状の、上記可動光学素子に接着された部分を除く部分のうちの少なくとも一部が上記高分子膜と一体につながった光学膜を備えた」という形態も、好ましい形態である。
【0012】
このような形態によれば、可動光学素子を支持するホルダーなどを必要とすることなく、構成が簡単化される。
【0013】
また、本発明の撮像システムにおいて、「上記撮像装置が、上記可動光学素子を透過した被写体光の照射を受けて画像信号を生成する画像信号生成部を備えたものであり、この撮像システムが、上記画像信号から、被写体光の結像位置のずれの量を算出するずれ量算出部を備えたものであり、上記ずれ補正部が、上記ずれ量算出部によって算出されたずれの量を取得することで該ずれの量を認知するものである」という形態も、好ましい形態である。
【0014】
このような形態により、画像信号から被写体光の結像位置のずれの量が算出されて、
簡単に結像位置の補正を行うことができる。
【0015】
また、本発明の撮像システムにおいて、「上記ずれ補正部が、上記ずれの量に応じた大きさの電圧を印加するものである」という形態は、好ましい形態である。
【0016】
このような形態によれば、高分子アクチュエータに対して、結像位置のずれの量に応じた適切な量の電圧の印加が行われて結像位置のずれが補正される。
【0017】
また、本発明の撮像システムにおいて、「上記ずれ補正部は、上記ずれの量に応じたパルス幅のパルス電圧を印加するものである」という形態も、好ましい形態である。
【0018】
高分子アクチュエータの中には印加電圧に対する応答が遅いものも多く、このような高分子アクチュエータに対しては、応答時間よりずっと短いパルスを使うと応答時間でパルス電圧がならされ、実効的に一定電圧の印加と同様の効果を生じさせることができる。さらにパルス幅を変化させることでその実効的な一定電圧の大きさを変えることもできる。
そこで、上記の形態により、高分子アクチュエータに対して、結像位置のずれの量に応じて、実効的に適切な量の電圧の印加が行われて結像位置のずれが補正される。
【0019】
また、本発明の撮像システムにおいて、「上記撮像装置が、上記可動光学素子を、上記ずれ補正部により結像位置のずれが補正されたときの該可動光学素子の位置に固定する位置固定部を備えた」という形態も、好ましい形態である。
【0020】
このような形態によれば、高分子アクチュエータに対する電圧制御が停止された後でも、可動光学素子を結像位置のずれが補正された適切な位置に固定することができる。また、可動光学素子の位置の固定が行われた後は高分子アクチュエータは不要となるが、高分子アクチュエータは一般に弾性があるため、撮像装置が使用される際に、外部から撮像装置に衝撃が加わった場合でも、高分子アクチュエータがダンパーとして機能し、可動光学素子に対する損傷を軽減する効果がある。
【0021】
また、本発明の撮像システム、または、本発明の、パルス電圧を印加する撮像システム
において、「上記高分子膜は、変動電圧を印加された場合には、その変動電圧の平均的な電圧に応じて伸縮するものである」という形態も、好ましい形態である。
【0022】
このような形態により、変動する印加電圧であっても、その平均的な電圧を、結像位置のずれに応じた適切な量の電圧にすることで、結像位置のずれが簡単に補正される。
【0023】
また、本発明の撮像システムにおいて、「上記高分子膜が、印加されている電圧の開放を受けて伸長するものであり、上記ずれ補正部が、上記複数の電極に対する電圧印加に換えて、該複数の電極に対し電圧を印加開放により制御するものである」という形態も、好ましい形態である。
【0024】
このような形態により、結像位置のずれに応じた適切な量の電圧の印加開放を行うことで結像位置のずれが簡単に補正される。
【0025】
上記目的を達成するための本発明の結像位置補正方法は、
被写体光を結像させて被写体像を表す画像信号を生成する撮像装置における被写体光の結像位置のずれを補正する結像位置補正方法において、
上記被写体光の結像位置のずれの量を認知するずれ量認知過程と、
上記被写体光を透過させ該被写体光の方向と交わる2次元面内を移動することで透過被写体光の方向を変化させる可動光学素子と、該可動光学素子から離間して配置された、該可動光学素子を支持する支持部材とを接続し、電圧の印加を受けて伸縮する高分子膜と、該高分子膜に接した状態で該高分子膜の表面上に分割配置された、該高分子膜に部分的に電圧を印加するための複数の電極とからなる高分子アクチュエータに対して、上記複数の電極に、上記ずれ量認知過程により認知されたずれの量に応じた電圧を印加して上記可動光学素子を上記2次元面内で移動させることにより、被写体光の結像位置のずれを補正するずれ補正過程と、
上記可動光学素子を、上記ずれ補正過程により結像位置のずれが補正されたときの該可動光学素子の位置に固定する位置固定過程とを備えたことを特徴とする。
【0026】
本発明の結像位置補正方法では、高分子アクチュエータに対する電圧の印加だけで可動光学素子が被写体光の方向と交わる2次元面内を移動して結像位置の補正が行われ、補正後に可動光学素子が結像位置のずれが補正された適切な位置に固定される。結像位置の補正の機構がこのように簡単であり、しかも高分子アクチュエータは比較的安価なので、本発明の結像位置補正方法により、製造コストの低減が実現される。また、可動光学素子の位置の固定が行われた後は高分子アクチュエータは不要となるが、高分子アクチュエータは一般に弾性があるため、撮像装置が使用される際に、外部から撮像装置に衝撃が加わった場合でも、高分子アクチュエータがダンパーとして機能し、可動光学素子に対する損傷を軽減する効果がある。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、光学素子の偏心の影響を補正できるとともに、製造コストを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
【0029】
図1は、本発明の撮像システムが有する撮像装置の第1実施形態であるデジタルカメラの外観斜視図である。
【0030】
図1に示すデジタルカメラ1の正面上部には、被写体光を集光する撮影レンズ10、閃光を発光する閃光発光部12、ファインダ対物窓13が備えられており、さらにこのデジタルカメラ1の上部に、シャッタボタン14が備えられている。
【0031】
このデジタルカメラ1の、図示しない背面には、ズーム操作スイッチや十字キーなどといった各種スイッチや、画像やメニュー画面を表示するLCD(液晶ディスプレイ)が備えられている。
【0032】
図2は、図1に示すデジタルカメラ1の概略的な内部構成と、このデジタルカメラ1に接続される偏心補正装置の概略的な内部構成を表した図である。
【0033】
本実施形態のデジタルカメラ1は、すべての処理がCPU120によって制御されている。このCPU120には、デジタルカメラ1に備えられた各種スイッチ(この各種スイッチには、図1に示すシャッタボタン14や、ズーム操作スイッチ、および十字キーなどが含まれ、以下では、これらを合わせてスイッチ群101と称する)からの操作信号がそれぞれ供給されている。CPU120は、ROM110aを有しており、このROM110aには、デジタルカメラ1で各種処理を実行するために必要な各種プログラムが書き込まれている。スイッチ群101に含まれる電源スイッチ(図示しない)が投入されると、電源102からデジタルカメラ1の各種要素に電力が供給されるとともに、CPU120によって、ROM110aに書き込まれたプログラム手順に従ってデジタルカメラ1全体の動作が統括的に制御される。
【0034】
以下、画像信号の流れに沿ってデジタルカメラ1の構成を説明する。
【0035】
図に一点鎖線で示された被写体光は、複数のレンズから構成された撮影レンズ10、および絞り30を通ってCCD40上に結像され、CCD40において、被写体像を表わす画像信号が生成される。
【0036】
撮像装置の製造過程においては、レンズやCCDの位置が少しずれた状態で撮像装置に取り付けられてしまい、この結果、CCDに対するレンズの相対的な位置にずれが生じるという、いわゆるレンズの偏心が起きることがある。この撮影レンズ10の中には、そうしたレンズの偏心の影響を補正するための偏心補正用レンズ20も含まれている。レンズの偏心の影響を補正する際には、後述するように、この偏心補正用レンズ20の傍らに備えられた高分子アクチュエータ500の働きにより偏心補正用レンズ20が、被写体光の方向と垂直な平面内で移動することで、偏心の影響が補正される。この偏心の補正の作業は、図の点線内の構成要素を有する偏心補正装置520と、このデジタルカメラ1とが接続されることにより行われる。
【0037】
生成された画像信号は、A/D部131において粗く読み出され、アナログ信号がデジタル信号に変換されて、低解像度なスルー画像データが生成される。生成されたスルー画像データは、ホワイトバランス・γ処理部133において、ホワイトバランスの補正やγ補正などといった画像処理が施される。ここで、CCD40には、クロックジェネレータ132からタイミング信号が供給されており、このタイミング信号に同期して、所定の間隔ごとに、画像信号が生成される。このクロックジェネレータ132は、光学CPU120を介して伝えられるCPU120からの指示に基づいてタイミング信号を出力しており、そのタイミング信号は、CCD40の他、後段のA/D部131、およびホワイトバランス・γ処理部133にも供給されている。したがって、CCD140、A/D部131、およびホワイトバランス・γ処理部133では、クロックジェネレータ132から発せられるタイミング信号に同期して順序良く画像信号の処理が流れるように行われる。
【0038】
ホワイトバランス・γ処理部133において画像処理が施された画像データは、一旦バッファメモリ134に記憶される。バッファメモリ134に記憶された低解像度なスルー画像データは、古い時刻に記憶されたスルー画像データから先に、バス140を経由してYC/RGB変換部138に供給される。スルー画像データはRGB信号であるため、YC/RGB変換部138では処理が行われずに、そのままドライバ139を介して画像表示LCD160に伝えられ、画像表示LCD160上に、スルー画像データが表わすスルー画像が表示される。ここで、CCD140では、所定のタイミング毎に被写体光が読み取られて画像信号が生成されているため、この画像表示LCD160には、撮影レンズが向けられた方向の被写体が被写体像として常に表示され続ける。また、バッファメモリ134に記憶されたスルー画像データは、CPU120にも供給され、CPU120は、スルー画像データに基づいて、オートフォーカス処理や自動露出調節を行う。
【0039】
ここで、画像表示LCD160に表示されたスルー画像を確認しながら、撮影者が図1に示すシャッタボタン14を押下すると、シャッタボタン14が押されたことがCPU120に伝えられる。被写体が暗いときには、CPU120から閃光発光部12に発光指示が伝えられ、シャッタボタン14の押下に同期して閃光発光部12から閃光が発せられる。シャッタボタン14が押されて撮影が行われると、CPU120からの指示に従って、CCD40で生成された画像信号がA/D部131において細かく読み出され、高解像度な撮影画像データが生成される。生成された撮影画像データは、ホワイトバランス・γ処理部133で画像処理が施されて、バッファメモリ134に記憶される。バッファメモリ134に記憶された撮影画像データは、YC処理部137に供給されて、RGB信号からYC信号に変換される。YC信号に変換された撮影画像データは、圧縮・伸張部135において圧縮処理が施され、圧縮された撮影画像データがI/F136を介してメモリカード170に記憶される。また、メモリカード170に記憶された撮影画像データは、圧縮・伸張部135において伸張処理が施された後、YC/RGB変換部138においてRGB信号に変換され、ドライバ139を介して画像表示LCD160に伝えられる。画像表示LCD160には、撮影画像データが表わす撮影画像が表示される。
【0040】
また、このデジタルカメラ1には、偏心補正装置520の有する装置側コネクタ510bと接続される、カメラ側コネクタ510aが備えられており、偏心の補正作業は、これら装置側コネクタ510bとカメラ側コネクタ510aとを接続することで行われる。偏心補正装置520には、画像データから、被写体光の結像位置のずれの量を表す偏心量を演算する演算部504と、高分子アクチュエータ500に印加される電圧の調整を行う電圧調整部503と、演算部504の演算結果から高分子アクチュエータ500を駆動するために必要な電圧を求めて電圧調整部503を制御するコントローラ505が備えられている。前述のバッファメモリ134に記憶された撮影画像データは、カメラ側コネクタ510aおよび装置側コネクタ510bを介して演算部504に供給されて偏心量の演算に用いられ、その演算結果を受けてコントローラ50は、後述する機構により、偏心補正用レンズ20を被写体光の方向とと垂直な平面内で移動させることにより偏心の補正を行う。ここで、偏心補正装置520が、本発明にいう結像位置補正ユニットの一例に相当し、カメラ側コネクタ510aが、本発明にいう接続部の一例に相当する。
【0041】
デジタルカメラ1および偏心補正装置520は、以上のように構成されている。
【0042】
このデジタルカメラ1では、レンズの偏心があっても、偏心補正装置520と接続されることでこうしたレンズの偏心の補正する機構を有する。以下ではこの偏心を補正するための機構や構成について説明する。
【0043】
図3は、図2に示す偏心補正用レンズと、この偏心補正用レンズを駆動させる機構を表した図である。
【0044】
このデジタルカメラ1には、図2に示す偏心補正用レンズ20を駆動させるため、偏心補正用レンズ20を支える円形のホルダー506の周りを取り巻くように、中央に円形の穴のあいた正方形の形状を有する高分子アクチュエータ500が備えられている。さらにこの高分子アクチュエータ500の周りには、高分子アクチュエータ500の外側の端を固定する外枠507が設けられている。ここで、偏心補正用レンズ20とホルダー506を合わせたものが、本発明にいう可動光学素子の一例に相当し、外枠507が、本発明にいう支持部材の一例に相当する。
【0045】
高分子アクチュエータ500は、電極502a,502b,502c,502dと、電圧印加に応じて伸縮するタイプのポリマー材料の一種である誘電エラストマー501とをその構成要素としている。電極502a,502b,502c,502dは、いずれも誘電エラストマー501の上に導電性の高い炭素繊維が張り合わされて構成された電極であり、高分子アクチュエータ500の上側の面、および図示しない下側の面に、それぞれ4つずつ備えられている。上側の4つの電極が陽極であり、下側の4つの電極が陰極であって、陽極と陰極の組となって4組の電極を構成している。この図では、これら4組の電極502a,502b,502c,502dの陽極と陰極のうち、上側の面に備えられた、斜線で示す4つの陽極が表されている。誘電エラストマー501は、ホルダー506の周りを取り巻いた形状となっており、中央に円形の穴のあいた正方形の形状を有している。この図では、誘電エラストマー501の一部が、4つの電極502a,502b,502c,502dのうち、隣合う2つの電極の間から見えている様子が表されている。
【0046】
このような構成により、この高分子アクチュエータ500では、上側の面の電極と下側の面の電極の間に挟まれた4つの部分それぞれで、誘電エラストマー501に対して互いに異なる大きさの電圧を印加することができる。以下では、これら4つの部分に対して、互いに異なる大きさの電圧を印加するための機構について説明する。
【0047】
図4は、図3に示す高分子アクチュエータの有する4組の電極に電圧を印加するための構成を表す図である。
【0048】
図に示すように、4組の電極502a,502b,502c,502dと4つの電圧調整部503a,503b,503c,503dとが、それぞれ電極と電圧調整部のセットになって、電源102に並列接続されている。図2において説明した電圧調整部503は、これら4つの電圧調整部503a,503b,503c,503dを、図示のために1つの電圧調整部503としてまとめて表したものであって、実際には図4に示すように4つの電圧調整部が存在する。4つの電圧調整部503a,503b,503c,503dは、4組の電極502a,502b,502c,502dそれぞれに印加される電圧を調整する役割を担い、コントローラ505によって個別に制御される。このような構成により、4組の電極502a,502b,502c,502dに対して、互いに異なる大きさの電圧を印加することができる。
【0049】
本実施形態では、このように電源102から電圧を受ける形態であるが、本発明は、閃光発光部12に供給される高電圧を利用するものでもよい。
【0050】
図5は、図3に示す偏心補正用レンズおよび高分子アクチュエータの断面図である。
【0051】
図5に示すように、誘電エラストマー501の、図の左側の2つの電極502cの間に挟まれた部分は、その左側の電極502cによって電圧の印加を受け、一方、図の右側の2つの電極502aの間に挟まれた部分は、その右側の電極502aによって電圧の印加を受ける。この図では、電圧の印加を受けていないために伸張していない状態が示されている。また、この図に示す外枠507は、高分子アクチュエータ500が自在に伸縮できるように、高分子アクチュエータ500の端だけを固定する役割を担っており、以下その固定のための外枠507の構造について説明する。
【0052】
図6は、高分子アクチュエータの端を固定するための、図5および図6に示す外枠の構造を表した図である。
【0053】
この図に示すように、図5に示す外枠507は、ペアとなって高分子アクチュエータ500の端を間に挟む、第1の押さえ板507aと第2の押さえ板507b,これら第1の押さえ板507aと第2の押さえ板507bとを密着した状態に維持するためネジ507cとを構成要素としている。第2の押さえ板507bの、高分子アクチュエータ500を押さえる面には、凸部507dが備えられており、第2の押さえ板507bの、高分子アクチュエータ500を押さえる面は、この凸部507dと勘合する形状となっている。この凸部507dに高分子アクチュエータ500が引っ掛かった状態で、第1の押さえ板507aと第2の押さえ板507bが高分子アクチュエータ500を間に挟んで密着し、その状態が維持されるように、ネジ507cによって第1の押さえ板507aと第2の押さえ板507bが張り合わされている。
【0054】
このように、きわめて簡単な構成でありながら高分子アクチュエータ500の端だけががっちりと固定されることとなる。
【0055】
次に、以上説明した構成を用いて、偏心の補正が行われるときの作業の流れについて説明する。
【0056】
図7は、偏心の補正が行われるときの作業の流れを表すフローチャートである。
【0057】
まず、デジタルカメラ1のレンズの偏心の検査のために、デジタルカメラ1の有する、図2に示すカメラ側コネクタ510aと、偏心補正装置520の有する装置側コネクタ510bとが接続される。そして輝度分布がほぼ均一な発光面を有する発光体に対し、その発光面だけが被写体となるように、デジタルカメラ1を用いた撮影が行われて、撮影画像データが生成される。この撮影画像データは、一旦、図2に示すバッファメモリ134に記憶された後、カメラ側コネクタ510aおよび装置側コネクタ510bを介して偏心補正装置520内の演算部504に入力される(ステップS1)。
【0058】
一般に、図2に示すCCD40が被写体光を受光する受光面上では、光軸から離れるに従って光量が低下するので、偏心があるために撮影レンズ10の光軸がCCD40の中心位置からずれると、CCD40の受光面の周辺部(例えば受光面の四隅部など)で受光される光量に、ばらつき(アンバランス)が生じる。このため、CCD40の受光面の周辺部で受光された被写体光を表す画像データ部分を解析することで、偏心の大きさや方向の評価が可能となる。そこで、演算部504では、入力された撮影画像データから、CCD40の受光面の四隅部それぞれで受光されて生成された撮影画像データ部分を抽出して、その相対的な輝度の差に基づき、偏心の大きさや方向を表す偏心量を演算する(ステップS2)。この偏心量は、被写体光の方向に垂直な2次元平面(xy平面)でのxy座標によって被写体光の結像位置のずれを表したものであり、偏心が小さい場合は、そのx座標成分およびy座標成分ともに0に近い値となる。そして、この偏心量がコントローラ505に入力され、偏心の程度(xy平面での長さ)が所定量より大きいか否かに応じて、偏心の補正が必要か否かが判定される(ステップS3)。
【0059】
この実施形態では、このように偏心補正装置520内の演算部504が、バッファメモリ134に記憶された撮影画像データから偏心量を演算する形態が採用されているが、本発明は、デジタルカメラ1内のホワイトバランス・γ処理部133などの画像データの処理部が、上述の演算部504の機能を兼ねて偏心量を演算するものであって、その演算で得られた偏心量が、偏心補正装置520内のコントローラ505に入力されるという形態を採用してもよい。また、本発明は、演算部504が、バッファメモリ134に記憶された撮影画像データの代わりに、バッファメモリ134に記憶される前のA/D変換直後の撮影画像データ、あるいは圧縮処理が施された後の撮影画像データから偏心量を演算するという形態を採用してもよく、また、撮影画像データの代わりにスルー画像データから偏心量を演算するという形態を採用してもよい。
【0060】
偏心の補正が必要ないと判定された場合(ステップS3;No)は、ここでデジタルカメラ1のレンズの偏心の検査は終了する。偏心の補正が必要であると判定された場合(ステップS3;Yes)は、続いて、コントローラ505においてこの偏心量を補正するために、図3および図5に示す高分子アクチュエータ500の4つの電極のうち、どの電極にどのくらいの電圧が印加されるかの決定が行われる(ステップS4)。そして、コントローラ505の指示により、図2に示す電圧調整部503がステップS4で決定された電極に対して電圧の印加を行い、高分子アクチュエータ500が駆動される(ステップS5)。
このコントローラ505と4つの電圧調整部503a,503b,503c,503dを合わせたものが、本発明にいうずれ補正部の一例に相当する。
【0061】
ここで、高分子アクチュエータ500に電圧が印加されて、偏心補正用レンズ20およびホルダー506が移動する様子について詳しく説明する。以下では、例として、偏心を補正するために偏心補正用レンズ20を図5の状態より右側に移動させることが必要となり、図5に示す左側の2つの電極502cの間に電圧を印加することが決定されたものとして説明を行う。
【0062】
図8は、図5の状態で左側の電極に電圧が印加されたときの様子を表す、偏心補正用レンズおよび高分子アクチュエータの断面図である。
【0063】
一般に、誘電エラストマーは、電圧の印加を受けると、電圧を印加した電極に沿った方向に伸張し、印加される電圧が大きくなるほどその伸張量が長くなるという性質を持つ。4組の電極502a,502b,502c,502dは、印加される電圧に伴い誘電エラストマー501が伸縮すると、伸縮した誘電エラストマー501と一緒に各電極も伸縮する。
【0064】
図5に示す状態から、左側の2つの電極502cの間に電圧が印加されると、図8に示すように、左側の2つの電極502cの間に挟まれた誘電エラストマー501は図の矢印Aの方向に伸張して、偏心補正用レンズ20およびホルダー506を右側に押す駆動力を発生する。右側に押された偏心補正用レンズ20およびホルダー506は、図8の右側の2つの電極502aの間に挟まれた部分の誘電エラストマー501を、矢印Bの方向に押して圧縮しながら、全体として図5に示す状態よりも右側に移動することとなる。この結果、この電圧印加によって、偏心の補正が行われる。
【0065】
このような電圧の印加が、上側の面の電極と下側の面の電極の間に挟まれた、誘電エラストマー501の各部分に対して行われることにより、偏心補正用レンズ20およびホルダー506が、被写体光の方向とに垂直な平面内を移動して偏心の補正が行われる。
【0066】
図8に示す状態では、偏心補正用レンズは、高分子アクチュエータ500への電圧の印加によって図8の位置に留まっているだけであり、電圧の印加を停止しても偏心補正用レンズがこの位置に留まり続けるためには、偏心補正用レンズ20の位置を固定するための機構が必要となる、このため、このデジタルカメラ1には、偏心補正用レンズ20の位置を固定する固定部が備えられている。偏心補正用レンズ20を偏心の補正に必要な位置まで移動させた後には、この固定部を用いた、偏心補正用レンズ20の位置を固定するための作業が行われる(図7のステップS6)。
【0067】
図9は、図8に示す偏心補正用レンズの位置を固定するための機構を表した図である。
【0068】
この図では、ホルダー506を図の上下方向から挟み込む4つの固定部515が示されている。この4つの固定部515は、ホルダー506の、図の水平方向についての位置を固定するためのものであり、ホルダー506の、図に垂直な方向についての位置を固定するため、さらに同様の4つの固定部515(不図示)が設けられている。これらの固定部515は、偏心補正用レンズ20に沿った方向(この図では水平方向)に伸縮するアーム515aと、アーム515aの伸縮に合わせてアーム515aの一部を収容するアーム収容部515bとから構成されており、これらの固定部515は、図の上下方向に移動することができ、ホルダー506の固定が行われる際には、ホルダー506の上側に備えられた固定部515のアーム515aの折れ曲がった先端部と、ホルダー506の下側に備えられた固定部515のアーム515aの折れ曲がった先端部との間でホルダー506が図の上下方向から挟み込まれることで、ホルダー506の固定が行われる。また、アーム515aの図の水平方向への伸縮によって水平方向についてのホルダー506を挟み込む位置が自在に変わるので、偏心補正用レンズ20を、偏心の補正に必要な位置に自在に固定される。
【0069】
このような固定が行われた後は、高分子アクチュエータ500への印加が停止され、高分子アクチュエータ500は不要となるが、高分子アクチュエータ500はゴムのように弾性があるため、デジタルカメラ1が使用される際に、外部からデジタルカメラ1に衝撃が加わった場合でも、取り付けられた高分子アクチュエータ500がダンパーとして機能し、偏心補正用レンズ20に対する損傷を軽減する効果がある。
【0070】
以上が、本発明の第1実施形態についての説明である。
【0071】
以上説明したように、このデジタルカメラ1の偏心補正機構は、従来の小型モータによる機構よりも簡単な構成で偏心補正用レンズ20を駆動して偏心を補正することができ、しかも比較的安価な高分子アクチュエータを用いることで偏心補正機構のコストを抑えることができる。
【0072】
この第1実施形態では、偏心の補正の対象となる撮像装置はデジタルカメラであるが、本発明は、携帯電話などに備えられたカメラモジュールの偏心の補正を行うものであってもよい。この場合、図2に示すような偏心の補正のためにカメラ側コネクタ510aを備える代わりに、カメラモジュールの有するUSB端子などで代用する形態が可能である。
【0073】
[第2実施形態]
第1実施形態では、偏心補正用レンズ20は、ホルダー506を介して高分子アクチュエータ500と接続されていたが、透明で優れた光透過性を有する誘電エラストマーを用いることで、ホルダー506を介さずに、偏心補正用レンズと高分子アクチュエータとが直接接続されている実施形態も可能である。以下では、そのような実施形態について説明する。以下に説明する第2実施形態は、第1実施形態と異なり、偏心補正用レンズと高分子アクチュエータとが、ホルダーを介さずに直接接続されており、さらに、ホルダーの代わりに偏心補正用レンズの両端を固定する固定部が備えられている。これらの点以外の撮像装置の外観や構成、および偏心を補正する機構については、第1実施形態において説明した撮像装置の外観や構成、および偏心を補正する機構と同じである。従って、撮像装置の外観や構成、偏心装置の構成、および偏心を補正する機構についての重複説明は省略することとし、以下では、異なる点に重点を絞って説明を行う。
【0074】
図10は、偏心補正用レンズと高分子アクチュエータとが直接接続されている様子を表した断面図である。
【0075】
この実施形態の誘電エラストマー501’は、優れた光透過性を有しており、図に示すように偏心補正用レンズ20の表面に、この誘電エラストマー501’の一部が密着している。ここで、偏心補正用レンズ20の表面に密着して偏心補正用レンズ20を支えている誘電エラストマー501’が、本発明にいう光学膜の一例に相当する。このような構成により誘電エラストマー501’の伸縮とともに偏心補正用レンズ20が、偏心が補正される位置に移動する。また、この第2実施形態では、ホルダーの代わりに偏心補正用レンズの両端を固定する固定部515’が設けられており、この固定部515’が、第1実施形態と同様の機構により、偏心補正用レンズ20の両端を固定することで、偏心補正用レンズ20が、偏心が補正される位置に固定される。これらの点以外の、偏心を補正する機構については、第1実施形態と同様であり、重複説明は省略する。
【0076】
この第2実施形態は、偏心補正用レンズ20の両端を固定することで、偏心補正用レンズ20を偏心が補正される位置に固定したが、このような形態とは別の形態として、あらかじめ誘電エラストマー501’に紫外線の照射によって硬化する、UV硬化剤を混ぜておき、偏心が補正される位置に偏心補正用レンズ20を移動させた後、紫外線の照射によりUV硬化剤を硬化させて、偏心補正用レンズ20をその位置に固定する形態も可能である。
【0077】
[第3実施形態]
第1実施形態および第2実施形態では、偏心補正用レンズ20は単玉であったが、組み合わせレンズ(レンズ群)を用いて偏心を補正する実施形態も可能である。以下では、このような組み合わせレンズが偏心補正用レンズとして用いられた実施形態について説明する。以下に説明する第3実施形態が、第2実施形態と異なる点は、偏心補正用レンズが組み合わせレンズである点と、レンズの枚数が増えて重量が増したため、誘電エラストマーが密着する以外にこれらのレンズを支える機構が設けられている点にあり、これらの点以外の撮像装置の外観や構成、および偏心を補正する機構については、第2実施形態において説明した撮像装置の外観や構成、および偏心を補正する機構と同じである。従って、撮像装置の外観や構成、および偏心を補正する機構についての重複説明は省略することとし、以下では、異なる点に重点を絞って説明を行う。
【0078】
図11は、複数の偏心補正用レンズと、高分子アクチュエータとが接続されている様子を表した断面図である。
【0079】
この図に示すように、2枚のレンズ20,20’からなる、偏心補正用の組み合わせレンズに対し、誘電エラストマー501’が、図で上側にあるレンズ20の表面に密着している。さらに上側のレンズ20の周囲にツバ506Aが設けられており、このツバ506Aが、外枠507からレンズ20に向かって延びているガイド506Bと、高分子アクチュエータ500の下側の電極502a,502cとの間に挟まれた構造を備えることで、2枚のレンズ20,20’の位置が、図の下側方向にずれていくことが防がれており、レンズの枚数が増えて重量が増した分が補強されている。この第3実施形態では、組み合わせレンズの位置の固定は、組み合わせレンズの両端を固定する、第2実施形態の固定部515’と同様の機構を有する固定部によって行われる。ここでは、その図示は省略する。
【0080】
[第4実施形態]
以上説明した第1実施形態〜第3実施形態では、高分子アクチュエータが固定されている外枠507の、被写体光の方向に垂直な断面は正方形の形状をしていたが、このような形状の他に、断面が円の形状をしている実施形態も可能である。以下では、外枠の断面が円である実施形態について説明する。
【0081】
図12は、断面が円の形状をしている外枠に固定された、高分子アクチュエータおよび偏心補正用レンズを表した図である。
【0082】
この第4実施形態では、この図に示すように、図3に示す、断面が正方形の場合と同様に、陽極および陰極の組からなる電極が4組設けられており、それぞれの電極の間に挟まれた誘電エラストマー501に電圧の印加が行われる。外枠507’ の形状が異なる点以外の撮像装置の外観や構成、および偏心を補正する機構については、第1実施形態において説明した撮像装置の外観や構成、および偏心を補正する機構と同じである。従って、撮像装置の外観や構成、および偏心を補正する機構についての重複説明は省略する。
【0083】
[第5実施形態]
以上説明した第1実施形態〜第4実施形態では、高分子アクチュエータの駆動制御のために、4組の電極に印加される電圧量が調整されていたが、他の方式として、例えば、電圧印加はオンオフの2段階で、印加時間(オンにしている時間)を調整することで、偏心補正用の光学素子を駆動を制御する方式(いわゆるPWM制御方式)を採用した実施形態も可能である。以下では、そのような実施形態について説明する。
【0084】
図13は、高分子アクチュエータの4組の電極にオンオフの2段階の電圧を印加するための構成を表す図である。
【0085】
この図に示すように、図4に示す4つの電圧調整部503a,503b,503c,503dの代わりに、4つのスイッチ503a’,503b’,503c’,503d’が備えられており、これらのスイッチが、電源102と図に示すグラウンド側との間で配線の切り換えを行うことで各電極への電圧印加のオンオフが行われ、このスイッチの動作は、コントローラ505によって制御される。このようなスイッチ制御では、各電極に対する電圧の大きさそのものは、電圧ゼロと電源電圧との2値しかないが、コントローラ505はスイッチ制御により、このような2値の電圧値を切り換えることで周期的な矩形波電圧を作り出す。この矩形波電圧の周期は、電圧印加に対する誘電エラストマー501の応答時間に比べ十分短く、このため、応答時間で矩形波電圧がならされ、誘電エラストマー501に対して、実効的に、電源電圧より小さい一定値の電圧が与えられるのと同様の効果が生じることになる。このときの矩形波電圧の電圧印加時間(オンにしている時間)に応じてこの実効的な電圧の大きさが決まり、コントローラ505によるこの電圧印加時間の制御によって、各電極に印加される実効的な電圧値の制御が行われる。
【0086】
なお、この第5実施形態では、このように矩形波電圧の電圧印加時間(オンにしている時間)によって実効的な電圧値を制御する方式を採用するが、本発明では、この他にも、同一幅、同一高さの矩形波電圧の周期を制御することで実効的な電圧値の制御が行われる方式も可能である。
【0087】
また、この第5実施形態では、4つのスイッチにより高分子アクチュエータ500に印加される電圧のオンオフが行われるが、本発明は、サイリスタ,MOS型FESなどの回路素子を用いて、例えばパルス電圧を与えて回路素子を通過する電流のオンオフを通じて、高分子アクチュエータ500に印加される電圧のオンオフを行うものでもよい。
【0088】
また、第5実施形態では、このように電源102から電圧を受ける形態であるが、本発明は、閃光発光部12に供給される高電圧を利用するものでもよい。
【0089】
電圧印加がオンオフの2段階で電圧印加時間の制御によって、偏心補正用の光学素子が駆動される点を除けば、第5実施形態における撮像装置の外観や構成、および偏心を補正する機構については、第1実施形態において説明した撮像装置の外観や構成、および偏心を補正する機構と同じである。従って、撮像装置の外観や構成、および偏心を補正する機構についての重複説明は省略する。
【0090】
[第6実施形態]
以上説明した実施形態では、偏心量に応じて電圧の印加が行われて偏心の補正が行われたが、このような形態の他に、偏心量に応じて電圧の開放が行われて、偏心の補正が行われる形態も可能である。以下では、偏心量に応じた電圧の開放を行う形態を、第6実施形態として説明する。
【0091】
この第6実施形態では、撮影装置の外観や構成については、第1実施形態において説明した撮影装置の外観や構成と同じであり、重複説明は省略する。この第6実施形態では、偏心補正前から高分子アクチュエータに対して電圧の印加が行われており、偏心の補正が必要性が認知されると、偏心量に応じて、適当な電極が選択されてその電極に対する電圧の開放が行われる。この電圧の開放によって、その選択された電極の間に挟まれた誘電エラストマーは縮み、このときの縮む力によって、縮んだ誘電エラストマーの周囲の誘電エラストマーが伸長する。このような誘電エラストマーの動きによって偏心補正用レンズが駆動されて偏心が補正される。
【0092】
以上が本発明の実施形態の説明である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の撮像システムが有する撮像装置の第1実施形態であるデジタルカメラの外観斜視図である。
【図2】図1に示すデジタルカメラ1の概略的な内部構成と、このデジタルカメラ1に接続される偏心補正装置の概略的な内部構成を表した図である。
【図3】図2に示す偏心補正用レンズと、この偏心補正用レンズを駆動させる機構を表した図である。
【図4】図3に示す高分子アクチュエータの有する4組の電極に電圧を印加するための構成を表す図である。
【図5】図3に示す偏心補正用レンズおよび高分子アクチュエータの断面図である。
【図6】高分子アクチュエータの端を固定するための、図5および図6に示す外枠の構造を表した図である。
【図7】偏心の補正が行われるときの作業の流れを表すフローチャートである。
【図8】図5の状態で左側の電極に電圧が印加されたときの様子を表す、偏心補正用レンズおよび高分子アクチュエータの断面図である。
【図9】図8に示す偏心補正用レンズの位置を固定するための機構を表した図である。
【図10】偏心補正用レンズと高分子アクチュエータとが直接接続されている様子を表した断面図である。
【図11】複数の偏心補正用レンズと、高分子アクチュエータとが接続されている様子を表した断面図である。
【図12】断面が円の形状をしている外枠に固定された、高分子アクチュエータおよび偏心補正用レンズを表した図である。
【図13】高分子アクチュエータの4組の電極にオンオフの2段階の電圧を印加するための構成を表す図である。
【符号の説明】
【0094】
1 デジタルカメラ
10 撮影レンズ
12 閃光発光部
13 ファインダ対物窓
14 シャッタボタン
20,20’ レンズ
30 絞り
101 スイッチ群
110a ROM
102 電源
120 CPU
140 バス
40 CCD
131 A/D部
133 ホワイトバランス・γ処理部
132 クロックジェネレータ
134 バッファメモリ
138 YC/RGB変換部ドライバ
160 画像表示LCD
137 YC処理部
136 I/F
170 メモリカード
500 高分子アクチュエータ
501,501’ 誘電エラストマー
502a,502b,502c,502d 電極
503a,503b,503c,503d 電圧調整部
503a’,503b’,503c’,503d’ スイッチ
504 演算部
505 コントローラ
506,506’ ホルダー
506A ツバ
506B ガイド
507,507’ 外枠
507a 第1の押さえ板
507b 第2の押さえ板
507c ネジ
507d 凸部
510a カメラ側コネクタ
510b 装置側コネクタ
515,515’ 固定部
515a アーム
515b アーム収容部
520 偏心補正装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体光を結像させて被写体像を表す画像信号を生成する撮像装置と、該撮像装置に対して着脱自在に装着され、該撮像装置を制御して前記被写体光の結像位置のずれを補正する結像位置補正ユニットとを備えた撮像システムにおいて、
被写体光を透過させ該被写体光の方向と交わる2次元面内を移動することで透過被写体光の方向を変化させる可動光学素子と、
前記可動光学素子と、該可動光学素子から離間して配置された、該可動光学素子を支持する支持部材とを接続し、電圧の印加を受けて伸縮する高分子膜と、該高分子膜に接した状態で該高分子膜の表面上に分割配置された、該高分子膜に部分的に電圧を印加するための複数の電極とからなる高分子アクチュエータと、
前記結像位置補正ユニットが着脱自在に装着される接続部とを備えた撮像装置;および
被写体光の結像位置のずれの量を認知して、該ずれの量に応じた電圧を印加して前記可動光学素子を前記2次元面内で移動させることにより、被写体光の結像位置のずれを補正するずれ補正部を備えた結像位置補正ユニット;
を備えたことを特徴とする撮像システム。
【請求項2】
前記可動光学素子がレンズであることを特徴とする請求項1記載の撮像システム。
【請求項3】
前記可動光学素子の、被写体光が透過する透過面上に接着された、光透過性の材料からなる膜状の、前記可動光学素子に接着された部分を除く部分のうちの少なくとも一部が前記高分子膜と一体につながった光学膜を備えたことを特徴とする請求項1および2に記載の撮像システム。
【請求項4】
前記撮像装置が、前記可動光学素子を透過した被写体光の照射を受けて画像信号を生成する画像信号生成部を備えたものであることと、
この撮像システムが、前記画像信号から、被写体光の結像位置のずれの量を算出するずれ量算出部を備えたことと、
前記ずれ補正部が、前記ずれ量算出部によって算出されたずれの量を取得することで該ずれの量を認知するものであることとを特徴とする請求項1記載の撮像システム。
【請求項5】
前記ずれ補正部が、前記ずれの量に応じた大きさの電圧を印加するものであることを特徴とする請求項1記載の撮像システム。
【請求項6】
前記ずれ補正部は、前記ずれの量に応じたパルス幅のパルス電圧を印加するものであることを特徴とする請求項1記載の撮像システム。
【請求項7】
前記撮像装置が、前記可動光学素子を、前記ずれ補正部により結像位置のずれが補正されたときの該可動光学素子の位置に固定する位置固定部を備えたことを特徴とする請求項1記載の撮像システム。
【請求項8】
前記高分子膜は、変動電圧を印加された場合には、その変動電圧の平均的な電圧に応じて伸縮するものであることを特徴とする請求項1または6に記載の撮像システム。
【請求項9】
前記高分子膜が、印加されている電圧の開放を受けて伸長するものであり、
前記ずれ補正部が、前記複数の電極に対する電圧印加に換えて、該複数の電極に対し電圧を印加開放により制御するものであることを特徴とする請求項1記載の撮像システム。
【請求項10】
被写体光を結像させて被写体像を表す画像信号を生成する撮像装置における被写体光の結像位置のずれを補正する結像位置補正方法において、
前記被写体光の結像位置のずれの量を認知するずれ量認知過程と、
前記被写体光を透過させ該被写体光の方向と交わる2次元面内を移動することで透過被写体光の方向を変化させる可動光学素子と、該可動光学素子から離間して配置された、該可動光学素子を支持する支持部材とを接続し、電圧の印加を受けて伸縮する高分子膜と、該高分子膜に接した状態で該高分子膜の表面上に分割配置された、該高分子膜に部分的に電圧を印加するための複数の電極とからなる高分子アクチュエータに対して、前記複数の電極に、前記ずれ量認知過程により認知されたずれの量に応じた電圧を印加して前記可動光学素子を前記2次元面内で移動させることにより、被写体光の結像位置のずれを補正するずれ補正過程と、
前記可動光学素子を、前記ずれ補正過程により結像位置のずれが補正されたときの該可動光学素子の位置に固定する位置固定過程とを備えたことを特徴とする結像位置補正方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2007−158588(P2007−158588A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−349195(P2005−349195)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】