説明

撮像レンズ、撮像ユニットおよびそれを備えた携帯型情報端末

【課題】レンズ保持機構を設ける必要のあるレンズの枚数を減らしつつ、レンズの偏芯ずれおよび傾きによる性能の劣化を抑制した撮像レンズを提供する。
【解決手段】本発明に係る撮像レンズ1aは、被写体側に配置された、正の屈折力を有するレンズ群16aと、撮像素子15の被写体側の面に直接または間接的に形成された、曲面形状を有する第3レンズ13aと、を備えていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルスチルカメラなどの小型カメラに用いられる撮像レンズに関し、特には携帯型情報端末および携帯電話に内蔵する小型カメラに好適なレンズ全長の短い撮像レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CCD(Charge Coupled Device)およびCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)に代表される固体撮像素子を用いたデジタルスチルカメラの普及が急速に進み、多種多様なデジタルスチルカメラが開発されている。デジタルスチルカメラの小型化は、固体撮像素子における技術の進歩と共に年々進んでいる。その中でも、携帯型情報端末または携帯電話に搭載されるカメラは、その筐体における大きさの制限などにより、特に小型化および軽量化(以下、小型・軽量化とも称する)を求められている。
【0003】
また、近年では、CCDおよびCMOSに代表される固体撮像素子の画素数が飛躍的に大きくなっている。これによって、上述の携帯電話などに搭載されるカメラにおいても100万画素を超える画素数であることが多くなっており、製品によっては300万〜500万画素のカメラが搭載されている。一方で、小型・軽量化を優先する携帯電話などでは、依然100万画素以下の低画素のカメラが搭載されている。しかし、高画素のカメラに対しても小型・軽量化が強く要求されており、重く大きいレンズを多数枚使用することなく、カメラの性能を向上させる必要がある。
【0004】
そこで、従来においては、小型のプラスチックレンズを使用すると共に、高次の非球面レンズを用いることにより小型・軽量化を図る試みがなされている。
【0005】
例えば、特許文献1においては、3枚のレンズを用いて、各レンズの屈折力を最適にすることで、小型化および性能の向上を図っている。また、全長に対してバックフォーカスを長くしている。
【0006】
また、特許文献2においては、2枚のプラスチック非球面レンズを用いて小型化および低コスト化を図っている。
【特許文献1】特許第3770493号公報(2006年2月17日登録)
【特許文献2】特開2001−183578号公報(2001年7月6日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、近年では小型・軽量であり、かつ高解像度を有する撮像レンズ(レンズ光学系)が求められている。また、撮像レンズのさらなる性能向上として広角化を実現するためには、特に光軸外の光束の収差の劣化を抑制しなければならない。
【0008】
しかし、特許文献1に記載の結像レンズは、レンズを多数枚使用しており、さらなる小型化を図ることは困難である。特に、第3レンズG3においては、正の屈折力を有するために被写体側に向かって凸形状を有しており、光軸中心において一定の物理的厚みが必要である。また、レンズを多数枚使用することによりレンズ保持部の機構(以下、レンズ保持機構とも称する)が複雑化するため、量産性に劣るという問題も有している。また、バックフォーカスを確保する必要があるために、光学長が長くなってしまう。
【0009】
特許文献2に記載の撮像レンズは、レンズの枚数を減らすことによって、2枚のレンズによって光軸外の光束を含めた全ての光束の収差を補正しなければならず、高次の非球面係数を有するレンズを多用しなければならない。そのため、レンズの偏芯ずれおよび傾きによって、撮像レンズの性能に劣化が生じる問題を有している。
【0010】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、主として、レンズ保持機構を設ける必要のあるレンズの枚数を減らしつつ、レンズの偏芯ずれおよび傾きによる性能の劣化を抑制した撮像レンズを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る撮像レンズは、上記課題を解決するために、撮像素子に対して被写体像を結像する撮像レンズであって、上記被写体側に配置された、正の屈折力を有する第1のレンズ群と、上記撮像素子の上記被写体側の面に直接または間接的に形成された、曲面形状を有する第2のレンズ群と、を備えていることを特徴としている。
【0012】
上記の構成によれば、撮像レンズを2群構成とすることによって、第1レンズ群において補正しきれない収差を、第2レンズ群において良好に補正できる。より具体的には、撮像素子に入射する光束に対して、収差の補正および撮像素子に対する入射角の補正を行うことができる。すなわち、第1のレンズ群において補正することができない収差を第2レンズ群によって良好に補正できる。
【0013】
これによって、第1レンズ群のみで光軸外の光束を含めた全ての光束の収差を補正する必要がなくなり、第1レンズ群における高次の非球面係数の多用を避けることができると共に、第1レンズ群を構成するレンズ枚数の増加を抑制できる。
【0014】
また、第2のレンズ群は、撮像素子の被写体側の面に直接または間接的に形成されているため、レンズを保持する鏡筒に新たなレンズ保持機構を設ける必要がない。
【0015】
すなわち、本発明に係る撮像レンズでは、レンズ保持機構を設ける必要のあるレンズの枚数を減らすことができ、撮像レンズの小型・軽量を実現できる効果を奏する。
【0016】
また、上記の構成によれば、バックフォーカスをゼロもしくは非常に小さくできるため、撮像レンズ(光学系)を小型化できる効果を奏する。
【0017】
上記の構成によれば、さらに、第2レンズ群と撮像素子とを一体として取り扱うことができるため、撮像素子に対する第2のレンズ群の傾きの影響および偏芯ずれを抑えることができる効果を奏する。
【0018】
本発明に係る撮像レンズでは、さらに、上記第2のレンズ群は、上記被写体側の面上に形成された平面板上に形成されていることが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、平面板を撮像レンズの光軸に対する位置決め部とした場合、第2レンズ群の傾きの影響および偏芯ずれを抑えることができる効果を奏する。
【0020】
また、上記の構成によれば、第2レンズ群を平面板に接して形成させるため、第2レンズの厚さを薄くできる。つまり、第2レンズ群を2P(Photoreplication Process)成形などにより平面板上に形成することによって、単体では保持が不可能な薄い第2レンズ群を平面板上に形成できる。例えば、中心厚が0であり、かつ軸外部だけに厚みを有するようなレンズ形状とすることができる。これによって、光学長の伸びを最小限に抑え、光学特性を向上することができる効果を奏する。
【0021】
上記の構成によれば、さらに、軸外部の厚みが極めて薄く中心部だけに厚みを有するようなレンズ形状とすることもできる。これによって、光学長の伸びを最小限に抑え、光学特性を向上することができる効果を奏する。
【0022】
本発明に係る撮像レンズでは、さらに、上記第2のレンズ群は、上記被写体側の面上に直接形成されていることが好ましい。
【0023】
上記構成とすることによって、第2レンズ群を撮像素子の損傷を防ぐためのカバーとすることができる効果を奏する。
【0024】
また、上記の構成によれば、第2レンズ群を撮像素子上に直接形成させるため、第2レンズの厚さを薄くできる。つまり、第2レンズ群を2P(Photoreplication Process)成形などにより撮像素子上に形成することによって、単体では保持が不可能な薄い第2レンズ群を撮像素子上に形成できる。例えば、中心厚が0であり、かつ軸外部だけに厚みを有するようなレンズ形状とすることができる。これによって、光学長の伸びを最小限に抑え、光学特性を向上することができる効果を奏する。
【0025】
上記の構成によれば、さらに、軸外部の厚みが極めて薄く中心部だけに厚みを有するようなレンズ形状とすることもできる。これによって、光学長の伸びを最小限に抑え、光学特性を向上することができる効果も併せて奏する。
【0026】
本発明に係る撮像レンズでは、さらに、上記第2のレンズ群の撮像素子側の面が、平面形状を有していることが好ましい。
【0027】
上記の構成によれば、撮像レンズ系の組立時において組立基準面としての利用も可能であり、組立の簡素化ができ量産効率を上げることができる効果を奏する。
【0028】
また、上記の構成によれば、第2のレンズ群に各種光学コーティング膜を容易に形成できるため、その他の光学素子または部品(例えば、絞り、シャッタ、各種フィルタ、光学フィルムおよびプリズムなど)を容易に取り付けることができる効果を奏する。
【0029】
また、上記の構成によれば、第2レンズ群の中心厚を小さくすることができ、レンズ系の小型化に寄与することができる効果を奏する。
【0030】
上記の構成によれば、さらに、軸外部の厚みを薄くすることもでき、撮像レンズの小型化に寄与することができる効果も併せて奏する。
【0031】
本発明に係る撮像レンズでは、さらに、上記撮像レンズは、下記の条件式(1)を満たすように構成されていることが好ましい。
【0032】
d/f < 1.5・・・(1)
ただし、
d:最も上記被写体側の面から像面までの距離(光学長)
f:レンズ全系の合成焦点距離
上記条件式(1)を満たすことにより、レンズ全長を短縮できる。これによって、より一層の小型・軽量化した撮像レンズを実現することができる効果を奏する。
【0033】
本発明に係る撮像レンズでは、さらに、上記撮像レンズは、下記の条件式(2)を満たすように構成されていることが好ましい。
【0034】
−2.0 < f1/f2 < 0.5・・・(2)
ただし、
f1:第1レンズ群の合成焦点距離
f2:第2のレンズ群の合成焦点距離
上記条件式(2)を満たすことにより、球面収差、非点収差、および歪曲収差などの各種収差をより一層良好に補正できる撮像レンズを実現することができる効果を奏する。
【0035】
本発明に係る撮像レンズでは、さらに、上記第2レンズ群の被写体側の曲面形状が、周辺部において正の屈折力を有するような非球面形状であることが好ましい。
【0036】
上記の構成によれば、光軸外における光束の収差を良好に補正できる。これによって、光軸外の光束の収差の劣化をより一層抑制することができる効果を奏する。
【0037】
本発明に係る撮像レンズでは、さらに、上記第1のレンズ群の最も像面側のレンズが、上記像面側に凸形状を有しており、上記第2のレンズ群の最も被写体側のレンズが、上記被写体側に凹形状を有していることが好ましい。
【0038】
なお、撮像レンズでは、さらに、上記第1のレンズ群の最も像面側のレンズが、上記像面側に凹形状を有しており、上記第2のレンズ群の最も被写体側のレンズが、上記被写体側に凸形状を有していてもよい。
【0039】
上記の構成によれば、第1のレンズ群と第2のレンズ群とを入れ子構造にすることができ、光学長を短縮することができる効果を奏する。
【0040】
本発明に係る撮像レンズでは、さらに、上記平面板は、光学コーティング膜を有するガラスからなることが好ましい。
【0041】
上記の構成によれば、上記平面板は撮像素子を保護するカバーガラスとしての効果を奏する。
【0042】
本発明に係る撮像レンズでは、さらに、第2のレンズ群が、樹脂材料からなることが好ましい。
【0043】
上記の構成によれば、平面板上または撮像素子上に第2のレンズ群を容易に形成できる。これによって、第2のレンズ群の形成の際に平面板または撮像素子が損傷することを防ぐことができる効果を奏する。
【0044】
本発明に係る撮像レンズでは、さらに、上記第2のレンズ群の厚さの最大値が、下記の条件式を満たしていることが好ましい。
【0045】
0 < d < d1・・・(3)
ただし、
d:第2のレンズ群の厚さの最大値
d1:平面板の厚さ
上記条件式(3)を満たすことによって、平面板上に厚い第2のレンズ群を形成することによる平面板の損傷などを抑制できる効果を奏する。また、第2のレンズ群厚みが厚くなることによる光学長の延長を抑制できる効果を奏する。
【0046】
また、撮像レンズを通過した光線を電気信号に変換する電気変換部を備えた撮像素子と、上記撮像素子の電気変換部に対して被写体像を結像させる本発明の撮像レンズと、被写体側に光を入射するための開口部を有し、遮光性部材からなる筐体と、を備えていることを特徴とする撮像ユニット、および上記撮像ユニットを備えている携帯型情報端末もまた、本発明に含まれる。
【0047】
これによって、レンズ保持機構を設ける必要のあるレンズの枚数を減らしつつ、レンズの偏芯ずれおよび傾きによる性能の劣化を抑制できる撮像ユニット、およびそれを搭載した携帯型情報端末を実現できる効果を奏する。
【発明の効果】
【0048】
本発明に係る撮像レンズは、以上のように、上記撮像素子の上記被写体側の面に直接または間接的に形成された、曲面形状を有する第2のレンズ群を備えていることを特徴としている。
【0049】
上記の構成によれば、第1レンズ群において補正することができない収差などを、上記被写体側の面に直接または間接的に形成された第2のレンズ群により良好に補正できる。すなわち、平面板上または撮像素子上に形成された第2のレンズ群により、光軸外の光束の収差の補正を効果的に行うことができる。
【0050】
したがって、第1レンズ群において高次の非球面係数を有するレンズを多用することなく、撮像レンズを構成できるため、レンズの偏芯ずれおよび傾きによる撮像レンズの性能劣化を抑制できる。
【0051】
また、上記の構成によれば、第2のレンズ群は、平面板上または撮像素子上に形成されているため、レンズを保持する鏡筒に新たな保持機構を設ける必要がなく、レンズ保持機構を設ける必要があるレンズの枚数を減らすことができる。したがって、撮像レンズを小型・軽量化できる。
【0052】
これによって、レンズ保持機構を設ける必要のあるレンズの枚数を減らしつつ、レンズの偏芯ずれおよび傾きによる性能の劣化を抑制できる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
〔実施形態1〕
本発明の撮像レンズに係る一実施形態について、図1を参照して以下に説明する。
【0054】
(撮像レンズ1aの構成)
撮像レンズ1a構成について、図1を参照して以下に説明する。図1は、撮像レンズ1aの断面図である。
【0055】
図1に示すように、撮像レンズ1aは、被写体側(図1においては左手側)から順に、レンズ群16a(第1のレンズ群)、第3レンズ13a(第2のレンズ群)および平面板14によって構成されている。以下に、第3のレンズ13および平面板14およびレンズ群16aについて詳述する。
【0056】
なお、撮像素子15は、撮像レンズ1aを構成する構成要素ではないが、撮像レンズ1aを構成する構成要素の位置関係を明確にするために便宜上、図1中に図示している。撮像素子15については、参考形態3において詳述する。
【0057】
(第3レンズ13a)
第3レンズ13aは、平面板14の被写体側側面部に接するように形成されている曲面形状を有するレンズである。第3レンズ13aが平面板14の被写体側側面部に形成されていることによって、第3レンズ13aを保持するためのレンズ保持機構を設ける必要がない。したがって、レンズ保持機構設ける必要があるレンズの枚数を減らすことができる。
【0058】
第3レンズ13aの形状については、曲面形状であれば特に限定されるものではないが、非球面形状であることが好ましく、光軸中心部が凹形状を有する非球面形状であることがより好ましい。また、周辺部において正の屈折力を有するような非球面形状であることが好ましい。
【0059】
第3レンズ13aの形状を光軸中心部が凹形状を有する非球面形状とすることによって、光軸中心部の厚さを薄くし、光軸外部の厚さを厚くできる。これによって、光学長を長くすることなく光軸外の光束を効果的に補正できる。なお、第3レンズ13aの形状において、光軸中心の厚さは0であってもよい。これは、光軸中心については、収差を補正する必要がほとんどないためである。
【0060】
以下、第3レンズ13aが、光軸中心部が凹形状を有する非球面形状である場合を例に挙げて説明する。
【0061】
上述のように第3レンズ13aが、光軸中心部が凹形状を有する非球面形状である場合、下記の条件式(3)を満たすことが好ましい。
【0062】
0 < d < d1・・・(3)
ただし、
d:第3レンズ13aの厚さの最大値
d1:平面板14の厚さ
上記条件式(3)を満たすことにより、光学長への影響を最小限とすると共に、第3レンズ13aを形成する際の平面板14への損傷を抑制できる。上記条件式(3)を満たさない場合、すなわち、第3レンズ13aの厚みが厚い場合には、成形時の収縮による形状変化の絶対値が大きくなる。さらに、第3レンズ13aの材質が樹脂の場合には、カバーガラスとの膨張係数差が大きいので歪みが生じやすくなる。また、第3レンズ13aの厚みが厚くなることにより複屈折が起こりやすくなり、撮像レンズ1aの光学特性が安定しにくくなる。
【0063】
第3レンズ13aの材質は、上述した曲面形状を有するように第3レンズ13aを形成できるものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、第3レンズ13aの材質としては、樹脂、ガラスであることが好ましく、樹脂であることがより好ましい。また、液体や液晶をレンズとして用いることも可能である。さらに、本発明は可視領域に限定されないため、第3レンズ13aの材質として、シリコンなどの半導体を用いることもできる。
【0064】
第3レンズ13aの材質を樹脂とすることによって、平面板14上に第3レンズ13aを容易に形成することができ、第3レンズ13aの形成の際に平面板14が損傷することを防ぐことができる。
【0065】
なお、第3レンズ13aを平面板14上に形成するための形成方法としては、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、第3レンズ13aが樹脂からなる場合には、2P(Photoreplication Process)法を用いた成形を挙げることができる。
【0066】
(平面板14)
平面板14は、本実施形態においては撮像素子15の損傷を防止するために備えられており、その被写体側側面部には第3レンズ13aが形成されている。
【0067】
平面板14の材質は、特に限定されるものではないが、光学コーティング膜を有するガラスからなることが好ましい。すなわち、撮像素子15を保護するためのカバーガラスであることが好ましい。
【0068】
なお、平面板14自体は、撮像レンズ1aに入射した光線に対して何ら影響を及ぼさない。すなわち、本実施形態において、平面板14は、撮像素子15のカバーとしての役割を担う。
【0069】
(レンズ群16aの構成)
レンズ群16aの構成について、図1を参照して以下に説明する。レンズ群16aは、被写体側から入射した光束に対して正の屈折力を有しており、被写体側から順に、第1レンズ11a、開口絞り10および第2レンズ12aによって構成されている。なお、第1レンズ群16aを構成するレンズの枚数は、少なくとも1枚以上であれば、特に限定されるものではない。しかし、撮像レンズ1aの小型・軽量化および球面収差、非点収差および歪曲収差などの各種収差の補正を良好に行えるという観点から、2枚程度であることが好ましい。
【0070】
(第1レンズ11a、第2レンズ12a)
第1レンズ11aの形状は、被写体側が凸形状であり、像面側が凹形状であると共に、被写体側面が球面形状であり、像面側面が低次の非球面形状を有するレンズである。
【0071】
第1レンズ11aの材質は、特に限定されるものではない。第1レンズ11aの材質としては、具体的に、プラスチック、ガラス、半導体、液晶、液体などを用いることができる。これらの中でも、量産性およびコストの観点からプラスチックであることが好ましく、光学系の安定性および特性(例えば、屈折率、分散特性、耐熱性など)の観点からは、ガラスであることが好ましい。
【0072】
第2レンズ12aの形状は、被写体側が凹形状であり、像面側が凸形状であると共に、被写体側面および像面側面の両面とも非球面形状を有するレンズである。第2レンズ12aの材質としては、具体的に、プラスチック、ガラス、半導体、液晶、液体などを用いることができる。これらの中でも、量産性およびコストの観点からプラスチックであることが好ましく、光学系の安定性および特性(例えば、屈折率、分散特性、耐熱性など)の観点からは、ガラスであることが好ましい。
【0073】
第1レンズ11aおよび第2レンズ12aの形成方法としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、第1レンズ11aおよび第2レンズ12aがプラスチックからなる場合には、射出成形により形成することが好ましい。
【0074】
(開口絞り10)
開口絞り10は、撮像レンズ1aを通過する光量を調節するための装置である。開口絞り10を備える位置については、特に限定されるものではない。図1においては、第1レンズ11aと第2レンズ12aとの間に備えられている場合を図示しているが、第1レンズ11aよりも被写体側に備えられていてもよいし、また第2レンズ12aよりも第3レンズ13a側に備えられていてもよい。
【0075】
(撮像レンズ1aの構成条件)
次に、撮像レンズ1aの構成条件について説明する。撮像レンズ1aは、下記の条件式(1)および(2)を満たすように構成されていることが好ましい。
【0076】
d/f < 1.5・・・(1)
−2.0 < f1/f2 < 0.5・・・(2)
ただし、
d:最も被写体側の面から像面までの距離(光学長)
f:レンズ群16aと第3レンズ13aとの合成焦点距離(レンズ全系の合成焦点距離)
f1:レンズ群16aの合成焦点距離
f2:第3レンズ13aと平面板14との合成焦点距離
上記条件式(1)は、撮像レンズ1aにおける最大光学長を規定するための式である。上記条件式(1)を満たすことによって、撮像レンズ1aのレンズ全長を短縮することができ、撮像レンズ1aを小型・軽量化をより一層実現できる。
【0077】
また、上記条件式(2)は、光学系のペッツバール和を規定するための式である。レンズ群16aと、第3レンズ13aおよび平面板14とのパワー関係が上記条件式(2)を満たすことによって、各収差をより一層良好に補正できる。
【0078】
また、f1/f2が正になる場合においても上記条件式(2)の範囲内であることによって、各収差が大きくなることを抑制する。
【0079】
(付記事項)
本実施の形態においては、第3レンズ13aを平面板14上に形成した場合について説明したが、第3レンズ13aは、撮像素子15上に直接形成されていてもよい。
【0080】
〔実施形態2〕
本発明に係る撮像レンズの他の実施形態について、図2を参照して以下に説明する。図2は、撮像レンズ1bの断面図である。
【0081】
なお、実施の形態1と同様の部材に関しては、同一の符号を付し、その説明を省略する。したがって、本実施の形態においては、レンズ群16b(正の屈折力を有するレンズ)についてのみ以下に説明する。
【0082】
また、図2においても図1と同様に、撮像レンズ1bを構成する構成要素の位置関係を明確にするために、便宜上、撮像素子15を図2中に図示している。
【0083】
(レンズ群16bの構成)
レンズ群16bの構成について、図2を参照して以下に説明する。レンズ群16bは、被写体側(図2においては左手側)から順に、開口絞り10、第1レンズ11bおよび第2レンズ12bによって構成されている。なお、レンズ群16bを構成するレンズの数は、少なくとも1枚以上であれば、特に限定されるものではない。しかし、撮像レンズ1bの小型・軽量化および球面収差、非点収差および歪曲収差などの各種収差の補正を良好に行えるという観点から、2枚程度であることが好ましい。
【0084】
(第1レンズ11b、第2レンズ12b)
第1レンズ11bの形状は、被写体側が凸形状であり、像面側が凹形状であると共に、被写体側面が球面形状であり、像面側面が低次の非球面形状を有するレンズである。
【0085】
第1レンズ11bの材質は、特に限定されるものではない。第1レンズ11bの材質としては、具体的に、プラスチック、ガラス、半導体、液晶、液体などを用いることができる。これらの中でも、量産性およびコストの観点からプラスチックであることが好ましく、光学系の安定性および特性(例えば、屈折率、分散特性、耐熱性など)の観点からは、ガラスであることが好ましい。
【0086】
第2レンズ12bの形状は、被写体側が凹形状であり、像面側が凸形状であると共に。被写体側面および像面側面の両面とも非球面形状を有するレンズである。第2レンズ12aの材質としては、具体的に、プラスチック、ガラス、半導体、液晶、液体などを用いることができる。これらの中でも、量産性およびコストの観点からプラスチックであることが好ましく、光学系の安定性および特性(例えば、屈折率、分散特性、耐熱性など)の観点からは、ガラスであることが好ましい。
【0087】
第1レンズ11bおよび第2レンズ12bの形成方法としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、第1レンズ11bおよび第2レンズ12bがプラスチックからなる場合には、射出成形により形成することが好ましい。
【0088】
(開口絞り10)
開口絞り10は、実施形態1において詳述しているため、本実施の形態ではその説明を省略する。図2においては、第1レンズ11bよりも被写体側に備えられて第1レンズ11bと第2レンズ12bとの間に備えられている場合を例に挙げている。
【0089】
(撮像レンズ1bの条件)
次に、撮像レンズ1bの構成条件について説明する。撮像レンズ1bもまた、下記の条件式(1)および(2)を満たすように構成されていることが好ましい。
【0090】
d/f < 1.5・・・(1)
−1.4 < f1/f2 < 0.5・・・(2)
ただし、
d:最も被写体側の面から像面までの距離(光学長)
f:レンズ群16bと第3レンズ13aとの合成焦点距離
f1:レンズ群16bの合成焦点距離
f2:第3レンズ13aと平面板14との合成焦点距離
上記条件式(1)は、撮像レンズ1bにおける最大光学長を規定するための式である。上記条件式(1)を満たすことによって、撮像レンズ1bのレンズ全長を短縮することができ、撮像レンズ1bを小型・軽量化より一層実現できる。
【0091】
また、上記条件式(2)は、光学系のペッツバール和を規定するための式である。レンズ群16bと、第3レンズ13aおよび平面板14とのパワー関係が上記条件式(2)を満たすことによって、各種収差をより一層良好に補正できる。
【0092】
(付記事項)
本実施の形態においては、第3レンズ13bを平面板14上に形成した場合について説明したが、第3レンズ13bは、撮像素子15上に直接形成されていてもよい。
【0093】
〔参考形態3〕
本発明に係る撮像レンズの他の実施形態について、図3を参照して以下に説明する。図3は、撮像レンズ1cの断面図である。
【0094】
なお、実施の形態1および2と同様の部材に関しては、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0095】
また、図3においても図1と同様に、撮像レンズ1cを構成する構成要素の位置関係を明確にするために、便宜上、撮像素子15を図3中に図示している。
【0096】
(レンズ群16cの構成)
レンズ群16cの構成について、図3を参照して以下に説明する。レンズ群16cは、被写体側(図3においては左手側)から順に、開口絞り10、第1レンズ11cおよび第2レンズ12cによって構成されている。なお、レンズ群16cを構成するレンズの数は、少なくとも1枚以上であれば、特に限定されるものではない。しかし、撮像レンズ1bの小型・軽量化および球面収差、非点収差および歪曲収差などの各種収差の補正を良好に行えるという観点から、2枚程度であることが好ましい。
【0097】
(第1レンズ11c、第2レンズ12c)
第1レンズ11cの形状は、被写体側が凸形状であり、像面側が凹形状であると共に、被写体側面および像面側面の両面がともに非球面形状を有するレンズである。
【0098】
第1レンズ11cの材質は、特に限定されるものではない。第1レンズ11cの材質としては、具体的に、プラスチック、ガラス、半導体、液晶、液体などを用いることができる。これらの中でも、量産性およびコストの観点からプラスチックであることが好ましく、光学系の安定性および特性(例えば、屈折率、分散特性、耐熱性など)の観点からは、ガラスであることが好ましい。
【0099】
第2レンズ12cの形状は、被写体側が凸形状であり、像面側が凹形状であると共に、被写体側面および像面側面の両面とも非球面形状を有するレンズである。第2レンズ12cの材質としては、具体的に、プラスチック、ガラス、半導体、液晶、液体などを用いることができる。これらの中でも、量産性およびコストの観点からプラスチックであることが好ましく、光学系の安定性および特性(例えば、屈折率、分散特性、耐熱性など)の観点からは、ガラスであることが好ましい。
【0100】
第1レンズ11cおよび第2レンズ12cの形成方法としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、第1レンズ11cおよび第2レンズ12cがプラスチックからなる場合には、射出成形により形成することが好ましい。
【0101】
(第3レンズ13b)
本参考形態において、第3レンズ13bは、被写体側に凸形状をもつ球面形状を有する曲面形状のレンズである。しかし、下記の条件式(2)および(3)を満たすのであれば、第3レンズ13bの形状が非球面形状を有していてもよい。
【0102】
−2.0 < f1/f2 < 0.5・・・(2)
0 < d < d1・・・(3)
ただし、
f1:レンズ群16cの合成焦点距離
f2:第3レンズ13bと上記平面板の合成焦点距離
d:第3レンズ13bの厚さの最大値
d1:平面板14の厚さ
(付記事項)
本参考形態においては、第3レンズ13cを平面板14上に形成した場合について説明したが、第3レンズ13cは、撮像素子15上に直接形成されていてもよい。
【0103】
〔実施形態4〕
実施形態1〜2および参考形態3に係る撮像レンズを備えている撮像ユニットについて、実施形態4として以下に説明する。なお、実施形態1〜2および参考形態3と同様の部材に関しては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0104】
(撮像ユニット100の構成)
撮像ユニット100の構成について、図4を参照して、以下に説明する。図4は、撮像ユニット100の断面図である。なお、図4では、撮像レンズを便宜上、撮像レンズ1aとしているが、もちろんこれに限定されるものではなく、本発明において取り得る範囲で適宜変更することが可能である。
【0105】
図4に示すように、撮像ユニット100は、撮像レンズ1a、撮像素子15、筐体21、支持基板22、フレキシブルプリント基板23、赤外光カットフィルタ24およびレンズ保持部25によって構成されている。
【0106】
(撮像素子15)
撮像素子15は、撮像レンズ1aを通過した光線を電気信号に変換するための電気変換部を備えた電子部品である。一般的に、撮像素子15には、その受光側の面の中央部に画素が2次元的に配置された電気変換部が形成され、その周囲に信号処理回路が形成されている。信号処理回路は、各画素を順次駆動し信号電荷を得る駆動回路部と、各信号電荷をデジタル信号に変換するA/D変換部と、このデジタル信号を用いて画像信号出力を形成する信号処理部などから構成されている。
【0107】
また、本実施の形態における撮像素子15の受光側の面の外縁近傍には、多数のパッド(図示しない)が設けられており、ボンディングワイヤWを介して支持基板22に接続されている。
【0108】
なお、撮像素子15の種類は、特に限定されるものではない。具体的には、CCDおよびCMOSなどを用いることができる。
【0109】
(支持基板22)
支持基板22は、その一方の面において撮像素子15および筐体21を支持する硬質の基板である。また、支持基板22の他方の面(撮像素子15が支持されている面と反対側の面)には、その一端部が接続されたフレキシブルプリント基板23が備えられている。支持基板22には、表裏両面に多数の信号伝達用パッドが設けられており、一方の面ではボンディングワイヤWを介して撮像素子15と接続され、他方の面ではフレキシブルプリント基板23と接続されている。
【0110】
(フレキシブルプリント基板23)
フレキシブルプリント基板23は、外部の回路(例えば、撮像ユニット100を搭載した装置が有する制御回路)から撮像素子15を駆動するための電圧およびクロック信号の供給を受けたり、また、デジタルYUV信号を外部へ出力したりすることを可能にする基板である。
【0111】
なお、Yは輝度信号を、Uは赤と輝度信号との色差信号、Vは青と輝度信号との色差信号である。
【0112】
(筐体21およびレンズ保持部25)
筐体21は、支持基板22の撮像素子15側の面に撮像素子15を覆うように固定配置された遮光性のものである。具体的には、筐体21は、撮像素子15側においては撮像素子15を囲むように広く開口されて支持基板22に当接されており、他端側においては小開口を有するフランジ付きの筒状に形成されている。
【0113】
筐体21は、その内部にレンズ保持部25を備えている。レンズ保持部25は、第1レンズ11a、第2レンズ12aおよび開口絞り10を保持するための部材である。
【0114】
また、筐体21の上部には、赤外光カットフィルタ24が固定配置されている。なお赤外光カットフィルタ24は、撮像レンズ1aと撮像素子15との間に固定配置されていてもよい。なお、カバーガラスに赤外光カット機能を付加していてもよい。
【0115】
〔実施形態5〕
実施形態4に係る撮像ユニットを搭載した携帯型情報端末について、実施形態5として以下に説明する。なお、実施形態1、2、4および参考形態3と同様の部材に関しては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0116】
(携帯型情報端末200の構成)
撮像ユニット100を搭載した携帯型情報端末の構成について、図5(a)〜(c)を参照して以下に説明する。図5(a)〜(c)は、携帯型情報端末200の外観を示した外観図であり、特に、(a)は正面図であり、(b)は背面図であり、(c)は、側面図である。
【0117】
図5(a)〜(c)に示すように、携帯型情報端末200は、撮像ユニット100、スピーカ部101、マイク部102、入力部103、モニター部104、ライト部106、およびシャッターボタン108により構成されている。スピーカ部101およびマイク部102は、音声情報を入出力するために用いられる。モニター部104は、映像情報を出力するために用いられ、本実施形態においては、撮像ユニットから得られた情報を表示するためにも用いられる。ライト部106は、被写体を照らすためのライトとして用いられる。本実施形態において、撮像ユニット100は、モニター部104の裏面に配置されているが、配置方法および撮像ユニット100の向きについては、これに限定されるわけではない。
【0118】
シャッターボタン108または入力部103を操作することによって、撮像ユニット100による撮像を行うことができる。撮像された画像は、携帯型情報端末200内において信号処理されモニター部104に表示される。また、撮像した画像は、電子データとして携帯型情報端末200内に保存、または外部記録装置へ保存することができる。
【0119】
なお、本実施形態においては、上部の筐体部と下部の筐体部とがヒンジを介して接続されている、いわゆる折りたたみ式の携帯型情報端末を例として挙げているが、撮像ユニット100を搭載できる携帯型情報端末は、もちろん折りたたみ式に限るものではない。
【0120】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0121】
次に、上述した実施形態1、2および参考形態3に係る撮像レンズの具体的な数値実施例について説明する。
【0122】
(実施例1)
実施例1では、実施形態1において説明した撮像レンズ1aにおける数値実施例について説明する。表1および表2は、図1に示した撮像レンズ1aの構成に対する具体的なレンズデータを示したものである。表1には、撮像レンズ1aにおける基本的なデータ部分を示し、表2には表1のレンズデータのうち非球面形状に関するデータを示す。
【0123】
ここで、本明細書等における「非球面形状」について説明する。本明細書等における非球面形状は、光軸方向にZ軸、光軸と直交する方向にY軸をとるとき、下記の非球面式(数1)を用いて表すことができる。
【0124】
【数1】

【0125】
ただし、Kは円錐定数、Rは曲率半径、A、B、CおよびDはそれぞれ第4次、第6次、第8次および第10次の非球面係数、Zは光軸から高さYの位置にある非球面上の点から、非球面の頂点の接平面(光軸に垂直な平面)に下ろした垂線の長さを示す。
【0126】
【表1】

【0127】
【表2】

【0128】
表1において示している「f」は撮像レンズ1a全体の合成焦点距離であり、「FNO」は撮像レンズ1aのFナンバー(F値)であり、「ω」は撮像レンズ1aの半画角である。本実施例においては、光学長d=3.1であり、かつf=2.3であるため、d/f=1.3となり、上記条件式(1)を満たしている。また、本実施例においては、第1レンズ群16aの焦点距離f1=2.0、第3レンズ13aおよび平面板14の合成焦点距離f2=−2.2であることから、f1/f2=−0.91となり、上記条件式(2)を満たしている。
【0129】
また、本明細書等における各非球面データの数値は、10のべき乗数を「E」を用いて表すものとする。すなわち、例えば、2.5×10−02は、2.5E−02と表すものとする。
【0130】
表1および2に示したレンズデータにおける面番号Siの欄には、最も被写体側の構成要素の面を1番目として、像側に向かうに従って順次増加するように番号を付したi番目(i=1〜8)の面の番号を示している。曲率半径Riの欄には、被写体側からi番目の面の曲率半径の値を示している。面間隔Diの欄には、被写体側からi番目の面Siとi+1番目の面Si+1との光軸上の間隔を示している。RiおよびDiの値の単位はmm(ミリメートル)である。屈折率およびアッベ数の欄には、平面板14も含めたレンズ要素(第1レンズ11a、第2レンズ12a、第3レンズ13aおよび平面板14)のd線(587.6nm)に対する屈折率およびアッベ数の値を示している。
【0131】
表1に示すように、本実施例においては、第1レンズ11aの像面側の面S2と、第2レンズ12aの両面S4およびS5とが非球面形状となっている。基本レンズデータには、これらの非球面の曲率半径として、光軸近傍の曲率半径の数値を示している。
【0132】
また、撮像レンズ1aにおける球面収差、非点収差および歪曲収差を図5に示す。図5は、撮像レンズ1aの球面収差、非点収差および歪曲収差を示す収差図である。
【0133】
なお、各収差図には、550nmを基準波長とした収差を示すが、球面収差図においては、440nmおよび660nmについての収差も示す。非点収差図において、実線はサジタル方向の収差を示し、点線はタンジェンシャル(メリディオナル)方向の収差を示している。
【0134】
以上の表1、表2から分かるように、撮像レンズ1aにおいては、第1レンズ11aにおいて被写体側の面に球面レンズを用いており、かつそれ以外の非球面形状においても低次の非球面係数によって非球面を形成している。これによって、偏芯ずれおよび傾きの許容量を大きくすることが可能となり、撮像レンズ1aの性能の劣化を抑制できる。したがって、組み立てが容易であり、量産性に優れた撮像レンズ1aを提供できる。
【0135】
また、図7から分かるように、平面板14上に第3レンズ13aを形成することによって、撮像レンズ1a全体のパワー配置を最適化することが可能であり、十分に収差補正がなされた撮像レンズ1aを実現できる。
【0136】
(実施例2)
実施例2では、実施形態2において説明した撮像レンズ1bにおける数値実施例について説明する。表3および表4は、図2に示した撮像レンズ1bの構成に対する具体的なレンズデータを示したものである。表3には、撮像レンズ1bにおける基本的なデータ部分を示し、表4には表3のレンズデータのうち非球面形状に関するデータを示す。
【0137】
なお、本実施例において、実施例1と同一の用語は実施例1と同一の意味で用いているため、本実施例においては、その説明を省略する。
【0138】
【表3】

【0139】
【表4】

【0140】
表3および表4から分かるように、撮像レンズ1bにおいては、第1レンズ11bにおいて被写体側の面に球面レンズを用いており、かつそれ以外の非球面形状においても低次の非球面係数によって非球面を形成している。これによって、偏芯ずれおよび傾きの許容量を大きくすることが可能となり、撮像レンズ1bの性能の劣化を抑制できる。したがって、組み立てが容易であり、量産性に優れた撮像レンズ1bを提供できる。
【0141】
また、撮像レンズ1bにおける球面収差、非点収差および歪曲収差を図7に示す。図7は、撮像レンズ1bの球面収差、非点収差および歪曲収差を示す収差図である。
【0142】
図7から分かるように、平面板14上に第3レンズ13aを形成することによって、撮像レンズ1b全体のパワー配置を最適化することが可能であり、十分に収差補正がなされた撮像レンズ1bを実現できる。
【0143】
なお、本実施例においては、実施例1と異なり、開口絞り10を最も被写体側、すなわち第1レンズ10bよりも被写体側に配設している。つまり、像面に対して開口絞り10の位置を離しているので、光軸外の光束の収差低減を最小限に抑えつつ、より一層の広角化を実現することが可能である。
【0144】
(参考例3)
参考例3では、参考形態3において説明した撮像レンズ1cにおける数値実施例について説明する。表5および表6は、図3に示した撮像レンズ1cの構成に対する具体的なレンズデータを示したものである。表5には、撮像レンズ1cにおける基本的なデータ部分を示し、表6には表5のレンズデータのうち非球面形状に関するデータを示す。
【0145】
なお、本参考例において、実施例1および2と同一の用語は実施例1および2と同一の意味で用いているため、本参考例においては、その説明を省略する。
【0146】
【表5】

【0147】
【表6】

【0148】
表5および表6から分かるように、撮像レンズ1bにおいては、第1レンズ11cおよび12cにおいて両側の面に比較的低次の非球面レンズを用いている。これにより、光学系の性能維持を実現するとともに、低次の非球面であるために、偏芯ずれおよび傾きの許容値を大きくとることが可能になっている。したがって、性能を維持した状態で組立が容易であり、量産性に優れた撮像レンズ1cを提供できる。
【0149】
本参考例においては、光学長d=3.0であり、かつf=2.5であるため、d/f=1.2となり、上記条件式(1)を満たしている。また、本実施例においては、第1レンズ群16cの焦点距離f1=2.6、第3レンズ13bおよび平面板14の合成焦点距離f2=12.3であることから、f1/f2=0.21となり、上記条件式(2)を満たしている。
【0150】
また、撮像レンズ1cにおける球面収差、非点収差および歪曲収差を図8に示す。図8は、撮像レンズ1cの球面収差、非点収差および歪曲収差を示す収差図である。
【0151】
図8から分かるように、平面板14上に被写体側に凸面を有する球面形状の第3レンズ13bを形成することによって、特に軸外光線の撮像素子15への入射角を撮像素子に対して垂直に近づけることが可能になっている。
【0152】
なお、本参考例においては、実施例2と同じく、開口絞り10を最も被写体側、すなわち第1レンズ11cよりも被写体側に配設している。つまり、像面に対して開口絞り10の位置を離しているので、光軸外の光束の収差低減を最小限に抑えつつ、より一層の広角化を実現することが可能である。しかし、開口絞りの位置についてはこの限りではない。
【0153】
以上、実施例1〜2、参考例3により本発明の具体的な実施例を示したが、本発明は、先に示した実施例の具体的形状および数値に限定されるものではなく、所望の光学特性および光学長を得るために、各パラメータを適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明に係る撮像レンズは、デジタルスチルカメラなどの撮像機器に好適に用いることができる。また、携帯用途に適した小型の撮像機器に対して特に好適に用いることができる。具体的には、携帯型情報端末または携帯電話に搭載されるデジタルカメラを挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】第1の実施形態に係る撮像レンズの断面図である。
【図2】第2の実施形態に係る撮像レンズの断面図である。
【図3】第3の参考形態に係る撮像レンズの断面図である。
【図4】第4の実施形態に係る撮像ユニットの断面図である。
【図5】第5の実施形態に係る携帯型情報端末の外観図であり、(a)は正面図であり、(b)は背面図であり、(c)は側面図である。
【図6】第1の実施例における撮像レンズの球面収差、非点収差および歪曲収差を示す収差図である。
【図7】第2の実施例における撮像レンズの球面収差、非点収差および歪曲収差を示す収差図である。
【図8】第3の参考例における撮像レンズの球面収差、非点収差および歪曲収差を示す収差図である。
【符号の説明】
【0156】
1a、1b、1c 撮像レンズ
10 開口絞り
11a、11b、11c 第1レンズ
12a、12b、12c 第2レンズ
13a、13b、13c 第3レンズ(第2のレンズ群)
14 平面板
15 撮像素子
16a、16b、16c レンズ群(第1のレンズ群)
21 筐体
100 撮像ユニット
101 スピーカ部
102 マイク部
103 入力部
104 モニター部
106 ライト部
108 シャッターボタン
200 携帯型情報端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子に対して被写体像を結像する撮像レンズであって、
上記被写体側に配置された、正の屈折力を有する第1のレンズ群と、
上記撮像素子の上記被写体側の面に直接または間接的に形成された、曲面形状を有する第2のレンズ群と、を備えており、
上記第1のレンズ群の最も像面側に配置されたレンズが、上記像面側に凸形状を有し、かつ、上記第2のレンズ群の最も被写体側に配置されたレンズが、上記被写体側に凹形状を有していることを特徴とする撮像レンズ。
【請求項2】
上記第2のレンズ群は、上記被写体側の面上に形成された平面板上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項3】
上記第2のレンズ群は、上記被写体側の面上に直接形成されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項4】
上記第2のレンズ群の撮像素子側の面が、平面形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項5】
上記撮像レンズは、下記の条件式(1)を満たすように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
d/f < 1.5・・・(1)
ただし、
d:最も上記被写体側の面から像面までの距離(光学長)
f:レンズ全系の合成焦点距離
【請求項6】
上記撮像レンズは、下記の条件式(2)を満たすように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
−2.0 < f1/f2 < 0.5・・・(2)
ただし、
f1:上記第1のレンズ群の合成焦点距離
f2:上記第2のレンズ群の合成焦点距離
【請求項7】
上記第2レンズ群の被写体側の曲面形状が、周辺部において正の屈折力を有するような非球面形状であることを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項8】
上記平面板は、光学コーティング膜を有するガラスからなることを特徴とする請求項2に記載の撮像レンズ。
【請求項9】
上記第2のレンズ群は、樹脂材料からなることを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項10】
上記第2のレンズ群の厚さの最大値が、下記の条件式(3)を満たしていることを特徴とする請求項2に記載の撮像レンズ。
0 < d < d1・・・(3)
ただし、
d:上記第2のレンズ群の厚さの最大値
d1:上記平面板の厚さ
【請求項11】
撮像レンズを通過した光線を電気信号に変換する電気変換部を備えた撮像素子と、
上記撮像素子の電気変換部に対して被写体像を結像させる請求項1に記載の撮像レンズと、
被写体側に光を入射するための開口部を有する、遮光性部材からなる筐体と、を備えていることを特徴とする撮像ユニット。
【請求項12】
請求項11に記載の撮像ユニットを備えていることを特徴とする携帯型情報端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−217039(P2008−217039A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136922(P2008−136922)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【分割の表示】特願2007−56266(P2007−56266)の分割
【原出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】