説明

撮像装置、撮像装置の制御方法、撮像装置の制御方法のプログラム及び撮像装置の制御方法のプログラムを記録した記録媒体

【課題】 本発明は、撮像装置、撮像装置の制御方法、撮像装置の制御方法のプログラム及び撮像装置の制御方法のプログラムを記録した記録媒体に関し、例えば監視装置に適用して、インナーフォーカス方式によるレンズ等を用いた撮像装置に関して、従来に比してフォーカス調整機構の信頼性を格段的に向上する。
【解決手段】 本発明は、ズームレンズの位置により検出される焦点深度と、このズームレンズの位置における主たる撮像範囲との比較により、評価値を用いたオートフォーカス制御と、カムカーブによるフォーカス制御とを切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、撮像装置の制御方法、撮像装置の制御方法のプログラム及び撮像装置の制御方法のプログラムを記録した記録媒体に関し、例えば監視装置に適用することができる。本発明は、ズームレンズの位置により検出される焦点深度と、このズームレンズの位置における合焦による撮像を保証する撮像範囲との比較により、評価値を用いたオートフォーカス制御と、カムカーブによるフォーカス制御とを切り換えることにより、インナーフォーカス方式によるレンズ等を用いた撮像装置に関して、従来に比してフォーカス調整機構の信頼性を格段的に向上する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビデオカメラ等の撮像装置は、オートフォーカス制御の機能が設けられている。ここでオートフォーカス制御は、例えば特許2966458号明細書に開示されているように、撮像結果から周波数の高い信号成分を抽出して積分することにより、合焦の程度を示す評価値を計算し、この評価値を用いたいわゆる山登り方式によりフォーカスレンズを可動して合焦状態を形成する。
【0003】
またこのような撮像装置は、インナーフォーカス方式のレンズが使用されて形状が小型に形成される。またインナーフォーカス方式のレンズは、ズームアップ、ズームダウンの際に、被写体までの距離である被写体距離に応じて、ズームレンズに対してフォーカスレンズを正しい位置に保持することが必要なことにより、インナーフォーカス方式の撮像装置では、オートフォーカス制御との組み合わせにより、ズームレンズに対してフォーカスレンズを正しい位置関係に保持し、これにより所望する被写体を倍率により撮像できるように形成されている。
【0004】
ところでこの種の撮像装置は、監視装置に用いられる場合がある。この場合、撮像装置は、長時間、連続して使用され、必要に応じて遠隔制御によりズームアップ、ズームダウンして使用される。
【0005】
このような場合に、いわゆる山登り方式によるオートフォーカス制御を実行すると、フォーカス調整機構を極めて長時間、連続して可動して酷使することになり、フォーカス調整機構に過大な負担がかかり、フォーカス調整機構の信頼性が急激に低下する問題がある。
【特許文献1】特許2966458号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、インナーフォーカス方式によるレンズ等を用いた撮像装置に関して、従来に比してフォーカス調整機構の信頼性を格段的に向上することができる撮像装置、撮像装置の制御方法、撮像装置の制御方法のプログラム及び撮像装置の制御方法のプログラムを記録した記録媒体を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため請求項1の発明においては、撮像装置に適用して、レンズにより形成された光学像の撮像結果を出力する撮像素子と、前記撮像結果を処理して映像信号を出力する信号処理手段と、前記映像信号の処理により合焦の程度を示す評価値を出力する検波手段と、前記レンズのカムカーブにより合焦による撮像を保証する撮像範囲のデータを保持するメモリと、前記レンズのズームレンズと連動させて、前記レンズのフォーカスレンズを可動させる制御手段とを備え、前記制御手段は、前記ズームレンズの位置により検出される焦点深度が、前記ズームレンズの位置における前記撮像範囲より小さい場合に、前記評価値を用いたオートフォーカス制御により前記フォーカスレンズを可動し、前記ズームレンズの位置により検出される焦点深度が、前記ズームレンズの位置における前記撮像範囲より大きい場合に、前記撮像範囲のデータにおける前記カムカーブにより前記フォーカスレンズを可動する。
【0008】
また請求項3の発明においては、レンズにより形成された光学像の撮像結果を出力する撮像素子と、前記撮像結果を処理して映像信号を出力する信号処理手段と、前記レンズのカムカーブにより合焦による撮像を保証する撮像範囲のデータを保持するメモリと、前記レンズのズームレンズと連動させて、前記レンズのフォーカスレンズを可動させる制御手段とを備えた撮像装置の制御方法に適用して、前記ズームレンズの位置により焦点深度を計算する焦点深度の計算ステップと、前記焦点深度の計算ステップで得られる焦点深度と、前記ズームレンズの位置における前記撮像範囲とを比較する比較のステップと、前記比較のステップによる比較結果に基づいて、前記焦点深度が前記撮像範囲より小さい場合に、前記撮像結果の合焦の程度を示す評価値を用いたオートフォーカス制御により前記フォーカスレンズを可動するオートフォーカス制御のステップと、前記焦点深度が前記撮像範囲より大きい場合に、前記撮像範囲のデータにおける前記カムカーブにより前記フォーカスレンズを可動するカムカーブによるフォーカス制御のステップとを有するようにする。
【0009】
また請求項4の発明においては、撮像装置に設けられた制御手段に所定の処理手順を実行させる撮像装置の制御プログラムに適用して、前記撮像装置は、レンズにより形成された光学像の撮像結果を出力する撮像素子と、前記撮像結果を処理して映像信号を出力する信号処理手段と、前記レンズのカムカーブにより合焦による撮像を保証する撮像範囲のデータを保持するメモリと、前記レンズのズームレンズと連動させて、前記レンズのフォーカスレンズを可動させる前記制御手段とを備え、前記処理手順は、前記ズームレンズの位置により焦点深度を計算する焦点深度の計算ステップと、前記焦点深度の計算ステップで得られる焦点深度と、前記ズームレンズの位置における前記撮像範囲とを比較する比較のステップと、前記比較のステップによる比較結果に基づいて、前記焦点深度が前記撮像範囲より小さい場合に、前記撮像結果の合焦の程度を示す評価値を用いたオートフォーカス制御により前記フォーカスレンズを可動するオートフォーカス制御のステップと、前記焦点深度が前記撮像範囲より大きい場合に、前記撮像範囲のデータにおける前記カムカーブにより前記フォーカスレンズを可動するカムカーブによるフォーカス制御のステップとを有するようにする。
【0010】
また請求項5の発明においては、撮像装置に設けられた制御手段に所定の処理手順を実行させる撮像装置の制御プログラムを記録した記録媒体に適用して、前記撮像装置は、レンズにより形成された光学像の撮像結果を出力する撮像素子と、前記撮像結果を処理して映像信号を出力する信号処理手段と、前記レンズのカムカーブにより合焦による撮像を保証する撮像範囲のデータを保持するメモリと、前記レンズのズームレンズと連動させて、前記レンズのフォーカスレンズを可動させる前記制御手段とを備え、前記処理手順は、前記ズームレンズの位置により焦点深度を計算する焦点深度の計算ステップと、前記焦点深度の計算ステップで得られる焦点深度と、前記ズームレンズの位置における前記撮像範囲とを比較する比較のステップと、前記比較のステップによる比較結果に基づいて、前記焦点深度が前記撮像範囲より小さい場合に、前記撮像結果の合焦の程度を示す評価値を用いたオートフォーカス制御により前記フォーカスレンズを可動するオートフォーカス制御のステップと、前記焦点深度が前記撮像範囲より大きい場合に、前記撮像範囲のデータにおける前記カムカーブにより前記フォーカスレンズを可動するカムカーブによるフォーカス制御のステップとを有するようにする。
【0011】
請求項1の構成により、前記ズームレンズの位置により検出される焦点深度が、前記ズームレンズの位置における前記撮像範囲より小さい場合に、前記評価値を用いたオートフォーカス制御により前記フォーカスレンズを可動し、前記ズームレンズの位置により検出される焦点深度が、前記ズームレンズの位置における前記撮像範囲より大きい場合に、前記撮像範囲のデータにおける前記カムカーブにより前記フォーカスレンズを可動すれば、カムカーブによりフォーカス制御する分、オートフォーカス制御の時間を短くすることができ、その分、従来に比してフォーカス調整機構の信頼性を格段的に向上することができる。またこのようなカムカーブによりフォーカス制御する場合が、ズームレンズの位置により検出される焦点深度が、ズームレンズの位置における撮像範囲より大きい場合であることにより、必要とされる撮像範囲については、ぼけを防止することができ、これにより実用上十分にフォーカス制御することができる。
【0012】
これにより請求項3、請求項4、請求項5の構成によれば、インナーフォーカス方式によるレンズ等を用いた撮像装置に関して、従来に比してフォーカス調整機構の信頼性を格段的に向上することができる撮像装置、撮像装置の制御方法、撮像装置の制御方法のプログラム及び撮像装置の制御方法のプログラムを記録した記録媒体を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、インナーフォーカス方式によるレンズ等を用いた撮像装置に関して、従来に比してフォーカス調整機構の信頼性を格段的に向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施例を詳述する。
【実施例1】
【0015】
(1)実施例の構成
図2は、本発明の実施例に係る撮像装置を示すブロック図である。この撮像装置1は、監視装置を構成し、オペレータの操作に応動して図示しない遠隔制御装置から入力される遠隔制御信号SCに応動してレンズ2を駆動して撮像結果を得、この撮像結果によるビデオ信号SVを送出する。
【0016】
ここで撮像装置1において、レンズ2は、入射光を続く撮像素子3の撮像面に集光する。ここでレンズ2は、インナーフォーカス方式のズームレンズであり、ズームレンズ2aの撮像素子3側にフォーカスレンズ2bが設けられ、これらズームレンズ2a、フォーカスレンズ2bがそれぞれモータ5a及び5bにより前後に可動するように保持され、これらモータ5a及び5bがコントローラ7の制御によりモータドライバ4により駆動される。またレンズ2は、ズームレンズ2a、フォーカスレンズ2bの位置を位置検出センサ6a及び6bにより検出できるように形成され、この位置検出センサ6a及び6bによる位置検出結果がコントローラ7に通知される。これらによりレンズ2は、コントローラ7の制御により倍率を可変し、また被写体距離を可変するように作成される。またレンズ2は、図示しない絞りが同様のコントローラ7の制御により可変するように形成される。
【0017】
撮像素子3は、例えばCCD(Charge Coupled Device )固体撮像素子により形成され、撮像結果による撮像信号S1を出力する。
【0018】
信号処理回路8は、この撮像素子3から出力される撮像信号S1を処理してビデオ信号SVを出力する。すなわち信号処理回路8において、AGC回路8aは、撮像信号S1の信号レベルを補正して出力し、続くアナログディジタル変換回路(ADC)8bは、このAGC回路8aから出力される撮像信号をアナログディジタル変換処理し、これにより画像データを生成する。信号処理部8cは、この画像データをニー処理、ガンマ補正処理、ホワイトバランス調整処理等してビデオ信号SVを生成する。これらによりこの撮像装置1では、コントローラ7によりレンズ2を駆動して設定される撮影の条件により、所望の被写体を撮像してビデオ信号SVを出力する。
【0019】
検波回路9は、このビデオ信号SVを処理して合焦の程度を示す評価値S2を出力する。すなわち検波回路9において、ハイパスフィルタ回路(HPF)9aは、ビデオ信号SVより周波数の高い信号成分を抽出して出力し、積分回路9bは、このハイパスフィルタ回路9aの出力信号を積分して評価値S2を出力する。
【0020】
コントローラ7は、この撮像装置1の動作を制御するマイクロコンピュータであり、図示しないメモリに記録された制御プログラムの実行により、信号処理回路8から出力されるビデオ信号SVの輝度レベルに基づいてレンズ2の絞りを制御し、また遠隔制御装置から入力される遠隔制御信号SCによりレンズ2を可動する。この一連の処理において、コントローラ7は、検波回路9から出力される評価値S2を用いた山登り法によるオートフォーカス制御により、又はカムカーブにより、フォーカスレンズ2bを可動する。このためコントローラ7は、図3に特性曲線により示すように、カムカーブによりレンズ2を可動可能にカムカーブデータをメモリ10に保持する。
【0021】
なおこの実施例において、このコントローラ7の処理に供する制御プログラムは、この撮像装置1に事前にインストールされて提供されるものの、このような事前のインストールによる提供に代えて、インターネット等のネットワークを介したダウンロードにより提供するようにしてもよく、また記録媒体を介してインストールするようにしてもよい。なおこのような記録媒体にあっては、光ディスク、磁気ディスク、メモリカード等、種々の記録媒体を広く適用することができる。
【0022】
ここでカムカーブは、一定の被写体距離で合焦し続けることを拘束条件とした、ズームレンズ2aとフォーカスレンズ2bとの位置関係を示す特性曲線であり、フォーカスカーブとも呼ばれる。インナーフォーカス方式のレンズでは、このカムカーブが被写体距離に応じて変化する特徴がある。撮像装置1は、このカムカーブに従ってズームレンズ2aとフォーカスレンズ2bとを連動して可動させることにより、所望の被写体距離に対して合焦した状態で、ズームイン、ズームアウトすることができ、これによりズームトラッキングすることができる。
【0023】
コントローラ7は、所定の被写体距離毎に、カムカーブデータがメモリ10に記録される。これによりこの図3の例では、被写体距離1〔cm〕〜無限大までの間の12本のカムカーブについて、カムカーブデータがメモリ10に記録される。なお、カムカーブデータは、ズームレンズ2aの可動範囲を所定ピッチによりサンプリングして、ズームレンズ2aの位置に対するフォーカスレンズ2bの位置を記録した離散的なデータにより形成される。
【0024】
さらにコントローラ7は、設置時における設定により、又は工場出荷時における仕向け地用の設定により、この撮像装置1において、合焦した撮像を保証する範囲(以下、撮像範囲と呼ぶ)がカムカーブによりメモリ10に記録される。ここでこの図3の例では、この撮像範囲が被写体距離12〔cm〕〜2〔m〕の範囲に設定されて、被写体距離12〔cm〕のカムカーブと被写体距離2〔m〕のカムカーブとをそれぞれ特定するデータが、この撮像範囲のデータとしてメモリ10に記録される。なお以下において、この撮像範囲を特定するカムカーブのうちの、遠距離側のカムカーブを遠距離側制限のカムカーブ(FAR LIMITカーブ)と呼び、近距離側のカムカーブを近距離側制限のカムカーブ(NEAR LIMITカーブ)と呼ぶ。
【0025】
コントローラ7は、電源が立ち上げられると、山登り法によるオートフォーカス制御により、レンズ2の駆動を開始してビデオ信号SVの出力を開始する。すなわちコントローラ7は、検波回路9から得られる評価値S2をフレーム毎に取得してフレーム間差分を検出し、このフレーム差分により評価値S2が増大する方向に、フォーカスレンズ2bを可動する。
【0026】
またこのようにしてオートフォーカス制御によりフォーカスレンズ2bを可動して、図1に示す処理手順を一定の時間間隔により実行し、これによりオートフォーカス制御によるフォーカスレンズ2bの可動を、カムカーブに従った可動に切り換える。
【0027】
すなわちコントローラ7は、この処理手順を開始すると、ステップSP1からステップSP2に移り、ここで合焦状態が維持されているか否か判断する。ここでコントローラ7は、検波回路9から得られる評価値S2を基準にした山登り法によるオートフォーカス制御において、評価値S2のピークを跨いでズームレンズ2aを可動している状態を検出することにより、合焦状態を検出する。なおこのような合焦状態の判定にあっては、例えばズームレンズ2aを可動した際の評価値S2の変化により判定する場合等、実用上十分な特性を確保することができる範囲で、種々の判定方法を広く適用することができる。
【0028】
ここで否定結果が得られると、コントローラ7は、ステップSP2を繰り返し、これによりオートフォーカス制御による合焦状態の形成を待機する。またステップSP2で肯定結果が得られると、ステップSP2からステップSP3に移り、ここで焦点深度を計算する。
【0029】
ここでレンズにより像を形成する場合、図4に示すように、正確な合焦位置は、ただ一点しか存在しないが、この合焦位置の前後、所定範囲内ではボケ量が小さく、実用上、合焦していると見なすことができる。このような範囲は、合焦位置を中心にした焦点深度δにより表され、この焦点深度δは、許容される最大のボケ量を許容錯乱円により表して、F値×許容錯乱円径εにより表される。またこの許容錯乱円εは、レンズにより形成される像を撮像結果として出力する処理系の解像度により決まり、より具体的には撮像素子3の画素ピッチにより一義的に決定する。
【0030】
これによりコントローラ7は、位置検出センサ6aにより検出されるズームレンズ2aの位置、絞りの制御量によりレンズ2のF値を計算し、この計算したF値と、撮像素子3の画素ピッチにより事前に設定された許容錯乱円径εとにより焦点深度δを計算する。
【0031】
続いてコントローラ7は、ステップSP4に移り、この計算した焦点深度δによる範囲が、撮像範囲をカバーしているか否か判断する。より具体的には、遠距離側制限のカムカーブ(FAR LIMITカーブ)と近距離側制限のカムカーブ(NEAR LIMITカーブ)とからズームレンズ2aの現在位置に対応するフォーカスレンズ2bの位置をそれぞれ検出し、このフォーカスレンズ2bの位置の差分値が焦点深度δ以下か否か判断する。
【0032】
ここでインナーフォーカス方式によるレンズにおいては、図5に示すように、ズームインによりカムカーブの間隔が開き、合焦のためのフォーカスレンズ2bの可動距離が大きくなることにより、この場合、一定倍率以上ズームインしている場合には、否定結果が得られることになる。これによりコントローラ7は、このステップSP4で否定結果が得られると、ステップSP4からステップSP5に移り、この処理手順を終了し、これにより引き続いて山登り法によるオートフォーカス制御によりレンズ2を駆動する。
【0033】
これに対してステップSP4で肯定結果が得られると、コントローラ7は、ステップSP4からステップSP6に移り、メモリ10に格納したカムカーブデータより、遠距離側制限のカムカーブ(FAR LIMITカーブ)に係る各サンプリング点をそれぞれ対応する片側焦点深度(焦点深度の1/2)に相当する分だけ近距離側制限のカムカーブ(NEAR LIMITカーブ)側に変位させた位置データを計算により求め、この計算した位置データの補間演算処理により駆動用カムカーブを求める。
【0034】
またオートフォーカス制御を停止し、駆動用カムカーブによりフォーカスレンズ2bを駆動するように全体の動作を切り換える。これによりこの場合、図5に示すように、コントローラ7は、遠距離側制限のカムカーブ(FAR LIMITカーブ)に沿って焦点深度を確保してフォーカスレンズ2bを可動するように全体の動作を切り換え、ステップSP5に移ってこの処理手順を終了する。
【0035】
これによりこの撮像装置1においては、この倍率の低い側の一定の範囲については、山登り法によるオートフォーカス制御を停止してカムカーブによりフォーカス制御し、その分、常時、オートフォーカス制御する場合に比して、フォーカス調整機構の負担を軽減して信頼性を向上する。
【0036】
またコントローラ7は、このようにカムカーブによりフォーカス制御するように全体の動作を切り換えた場合、図1について上述した処理手順に代えて、図6に示す処理手順を一定の時間間隔により繰り返し実行し、これにより必要に応じてカムカーブによるフォーカス制御を中止してオートフォーカス制御を再開する。
【0037】
すなわちコントローラ7は、この処理手順を開始すると、ステップSP11からステップSP12に移り、ステップSP3について上述したと同様にして焦点深度を計算する。また続くステップSP12において、ステップSP4について上述したと同様に、この計算した焦点深度δによる範囲が、撮像範囲をカバーしているか否か判断する。
【0038】
ここで肯定結果が得られると、コントローラ7は、ステップSP13からステップSP14に移り、引き続きカムカーブによりフォーカスレンズ2bを可動するようにしてこの処理手順を終了する。
【0039】
これに対してステップSP13で否定結果が得られると、コントローラ7は、ステップSP13からステップSP15に移り、カムカーブによるフォーカスレンズ2bの可動を中止すると共に、オートフォーカス制御を再開した後、ステップSP14に移ってこの処理手順を終了する。
【0040】
(2)実施例の動作
以上の構成において、この撮像装置1では(図1)、インナーフォーカス方式のレンズ2による光学像が撮像素子3により光電変換処理されて撮像信号S1により撮像結果が得られ、この撮像信号S1が信号処理回路8により処理されてビデオ信号SVが生成される。撮像装置1では、このビデオ信号SVが遠隔地に送出され、これにより所望する被写体が遠隔地で監視される。またこの遠隔地に設けられた遠隔制御装置からの遠隔制御信号SCに応じて、コントローラ7によりレンズ2のズームレンズ2aが可動され、これによりレンズ2の倍率が遠隔地により制御されて、撮像結果が遠隔地に送出される。
【0041】
この一連の処理において、この撮像装置1では、検波回路9によりビデオ信号SVを処理して合焦の程度を示す評価値S2が検出され、この評価値S2がコントローラ7に入力される。またコントローラ7において、この評価値S2が増大するように、山登り方式によるオートフォーカス制御によりレンズ2のフォーカスレンズ2bが可動される。これによりこの撮像装置1では、インナーフォーカス方式のレンズ2を適用して全体形状を小型化し、かつズームレンズ2aとフォーカスレンズ2bとの位置関係を正しい関係に保持してズームアップ、ズームダウンすることができる。
【0042】
しかしながらこのような山登り方式によるオートフォーカス制御では、常にフォーカスレンズ2bを可動していることにより、このような監視装置においては、フォーカスレンズ2bの可動に係るフォーカス調整機構への負担が著しく、フォーカス調整機構の信頼性が極端に低下する。
【0043】
これによりこの撮像装置1では、このようにしてオートフォーカス制御して合焦状態が形成されると、現在のレンズ2のF値が求められ、このF値を用いて現在の焦点深度δが求められる(図1及び図4)。ここでこの焦点深度δの範囲内では、ぼけが観察されないことにより、この撮像装置1では、この焦点深度δと事前に設定された撮像範囲とが比較され、これによりぼけを生じさせることなく、現在のズームレンズ2a、フォーカスレンズ2bの位置でこの撮像範囲を撮影できるか否か判定される。
【0044】
ここでこの焦点深度が撮像範囲より小さい場合、ぼけを生じさせることなく、現在のズームレンズ2a、フォーカスレンズ2bの位置でこの撮像範囲を撮影できないことにより、この場合は、評価値を用いたオートフォーカス制御の処理が引き続き実行される。
【0045】
しかしながら焦点深度δが撮像範囲より大きい場合、ぼけを生じさせることなく、現在のズームレンズ2a、フォーカスレンズ2bの位置でこの撮像範囲を撮影できることにより、この場合は、評価値を用いたオートフォーカス制御を中止し、カムカーブによりフォーカスレンズ2bが可動される。またこのようにオートフォーカス制御を中止してカムカーブによりフォーカスレンズ2bを可動するようにして、焦点深度が撮像範囲より小さくなると、カムカーブによるフォーカスレンズ2bの可動を中止し、オートフォーカス制御によるフォーカスレンズ2bの可動が再開される。
【0046】
これによりこの撮像装置1では、カムカーブによりフォーカスレンズ2bを可動する分、オートフォーカス制御の時間を短くすることができ、その分、フォーカス調整機構への負担を軽減し、フォーカス調整機構の信頼性を向上することができる。また消費電力も低減することができる。
【0047】
またこのようにカムカーブによりフォーカスレンズ2bを可動する場合にあっては、焦点深度が撮像範囲より大きい場合であり、撮像範囲ではぼけが発生しない場合であり、これにより必要とされる撮像範囲についてはぼけを防止して、実用上十分にフォーカス制御することができる。
【0048】
撮像装置1では、この撮像範囲がカムカーブにより定義され、この撮像範囲の遠距離側のカムカーブを基準にして、遠距離側のカムカーブを片側焦点深度だけ近距離側に特性を変化させて駆動用カムカーブが生成され、この駆動用カムカーブに従ってズームレンズ2aの可動に連動してフォーカスレンズ2bが可動される。これによりこの撮像装置1では、撮像範囲の遠距離側のカムカーブに基づいたフォーカスレンズ2bの可動によりフォーカス制御の処理が実行される。これにより例えばこのような遠距離側のカムカーブに無限遠側のカムカーブを割り当てて、不必要に無限遠側に焦点深度を確保しないようにしてフォーカス制御することができ、その分、広い範囲で合焦の状態が得られるようにすることができ、これにより高画質の撮像結果を出力することができる。
【0049】
(3)実施例の効果
以上の構成によれば、ズームレンズの位置による焦点深度と、このズームレンズの位置における撮像範囲との比較により、評価値を用いたオートフォーカス制御と、カムカーブによるフォーカス制御とを切り換えることにより、インナーフォーカス方式によるレンズ等を用いた撮像装置に関して、従来に比してフォーカス調整機構の信頼性を格段的に向上することができる。
【0050】
またこのようなカムカーブによるフォーカス制御を、撮像範囲の遠距離側のカムカーブに基づいて実行することにより、広い範囲で合焦の状態が得られるようにして、高画質の撮像結果を出力することができる。
【実施例2】
【0051】
なお上述の実施例においては、メモリに12本のカムカーブのデータを設ける場合について述べたが、本発明はこれに限らず、撮像範囲の両端のカムカーブについてだけ、カムカーブのデータを設けるようにしてもよい。このようにすれば、その分、メモリの容量を低減することができる。
【0052】
また上述の実施例においては、単にオートフォーカス制御とカムカーブによるフォーカス制御とを切り換える場合について述べたが、本発明はこれに限らず、さらにオートフォーカス制御において、合焦状態が得られた場合に、オートフォーカス制御を停止するようにしてもよい。このようすればさらに一段とフォーカス調整機構の負担を軽減して、信頼性を向上し、さらには消費電力を低減することができる。
【0053】
また上述の実施例においては、オートフォーカス制御とカムカーブによるフォーカス制御とを切り換える場合について述べたが、本発明はこれに限らず、このような切り換えに係る動作モードの他に、オートフォーカス制御のみを実行する動作モードを設けるようにして、これらの動作モードを遠隔制御信号により切り換えるようにしてもよい。このようにすれば、ズームダウンした状態で、撮像範囲以外の範囲についても、ぼけの無い撮像結果を得ることができる。
【0054】
また上述の実施例においては、撮像範囲を事前に設定する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、遠隔制御により撮像範囲を可変するようにしてもよい。
【0055】
また上述の実施例においては、遠距離側制限のカムカーブより駆動用のカムカーブを生成してフォーカスレンズを可動する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、必要に応じて近距離側制限のカムカーブより駆動用のカムカーブを生成するようにしてもよく、遠距離側制限のカムカーブと近距離側制限のカムカーブとの平均値により駆動用のカムカーブを生成するようにしてもよい。また実用上十分にぼけを防止できる場合には、撮像範囲に含まれるカムカーブによりフォーカスレンズを可動させるようにしてもよい。
【0056】
また上述の実施例においては、監視装置を構成する撮像装置に本発明を適用する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、種々の撮像装置に広く適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、撮像装置の制御方法、撮像装置の制御方法のプログラム及び撮像装置の制御方法のプログラムを記録した記録媒体に関し、例えば監視装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施例1に係る撮像装置におけるコントローラの処理手順を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施例1に係る撮像装置を示すブロック図である。
【図3】カムカーブを示す特性曲線図である。
【図4】焦点深度の説明に供する略線図である。
【図5】フォーカス制御の切り換えの説明に供する特性曲線図である。
【図6】図1の続きの処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
1……撮像装置、2……レンズ、2a……ズームレンズ、2b……フォーカスレンズ、3……撮像素子、7……コントローラ、8……信号処理回路、9……検波回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズにより形成された光学像の撮像結果を出力する撮像素子と、
前記撮像結果を処理して映像信号を出力する信号処理手段と、
前記映像信号の処理により合焦の程度を示す評価値を出力する検波手段と、
前記レンズのカムカーブにより合焦による撮像を保証する撮像範囲のデータを保持するメモリと、
前記レンズのズームレンズと連動させて、前記レンズのフォーカスレンズを可動させる制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記ズームレンズの位置により検出される焦点深度が、前記ズームレンズの位置における前記撮像範囲より小さい場合に、前記評価値を用いたオートフォーカス制御により前記フォーカスレンズを可動し、
前記ズームレンズの位置により検出される焦点深度が、前記ズームレンズの位置における前記撮像範囲より大きい場合に、前記撮像範囲のデータにおける前記カムカーブにより前記フォーカスレンズを可動する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記カムカーブによる前記フォーカスレンズの可動が、前記撮像範囲の遠距離側のカムカーブに基づいた可動である
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
レンズにより形成された光学像の撮像結果を出力する撮像素子と、
前記撮像結果を処理して映像信号を出力する信号処理手段と、
前記レンズのカムカーブにより合焦による撮像を保証する撮像範囲のデータを保持するメモリと、
前記レンズのズームレンズと連動させて、前記レンズのフォーカスレンズを可動させる制御手段とを備えた撮像装置の制御方法であって、
前記ズームレンズの位置により焦点深度を計算する焦点深度の計算ステップと、
前記焦点深度の計算ステップで得られる焦点深度と、前記ズームレンズの位置における前記撮像範囲とを比較する比較のステップと、
前記比較のステップによる比較結果に基づいて、前記焦点深度が前記撮像範囲より小さい場合に、前記撮像結果の合焦の程度を示す評価値を用いたオートフォーカス制御により前記フォーカスレンズを可動するオートフォーカス制御のステップと、
前記焦点深度が前記撮像範囲より大きい場合に、前記撮像範囲のデータにおける前記カムカーブにより前記フォーカスレンズを可動するカムカーブによるフォーカス制御のステップとを有する
ことを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項4】
撮像装置に設けられた制御手段に所定の処理手順を実行させる撮像装置の制御プログラムにおいて、
前記撮像装置は、
レンズにより形成された光学像の撮像結果を出力する撮像素子と、
前記撮像結果を処理して映像信号を出力する信号処理手段と、
前記レンズのカムカーブにより合焦による撮像を保証する撮像範囲のデータを保持するメモリと、
前記レンズのズームレンズと連動させて、前記レンズのフォーカスレンズを可動させる前記制御手段とを備え、
前記処理手順は、
前記ズームレンズの位置により焦点深度を計算する焦点深度の計算ステップと、
前記焦点深度の計算ステップで得られる焦点深度と、前記ズームレンズの位置における前記撮像範囲とを比較する比較のステップと、
前記比較のステップによる比較結果に基づいて、前記焦点深度が前記撮像範囲より小さい場合に、前記撮像結果の合焦の程度を示す評価値を用いたオートフォーカス制御により前記フォーカスレンズを可動するオートフォーカス制御のステップと、
前記焦点深度が前記撮像範囲より大きい場合に、前記撮像範囲のデータにおける前記カムカーブにより前記フォーカスレンズを可動するカムカーブによるフォーカス制御のステップとを有する
ことを特徴とする撮像装置の制御方法のプログラム。
【請求項5】
撮像装置に設けられた制御手段に所定の処理手順を実行させる撮像装置の制御プログラムを記録した記録媒体において、
前記撮像装置は、
レンズにより形成された光学像の撮像結果を出力する撮像素子と、
前記撮像結果を処理して映像信号を出力する信号処理手段と、
前記レンズのカムカーブにより合焦による撮像を保証する撮像範囲のデータを保持するメモリと、
前記レンズのズームレンズと連動させて、前記レンズのフォーカスレンズを可動させる前記制御手段とを備え、
前記処理手順は、
前記ズームレンズの位置により焦点深度を計算する焦点深度の計算ステップと、
前記焦点深度の計算ステップで得られる焦点深度と、前記ズームレンズの位置における前記撮像範囲とを比較する比較のステップと、
前記比較のステップによる比較結果に基づいて、前記焦点深度が前記撮像範囲より小さい場合に、前記撮像結果の合焦の程度を示す評価値を用いたオートフォーカス制御により前記フォーカスレンズを可動するオートフォーカス制御のステップと、
前記焦点深度が前記撮像範囲より大きい場合に、前記撮像範囲のデータにおける前記カムカーブにより前記フォーカスレンズを可動するカムカーブによるフォーカス制御のステップとを有する
ことを特徴とする撮像装置の制御方法のプログラムを記録した記録媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−162821(P2006−162821A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−352170(P2004−352170)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】