説明

撮像装置、撮像装置の制御方法及びプログラム

【課題】赤外線カットフィルタを光路上から外し、赤外線を被写体に照射するナイトモードにおいて、画像のS/N比を向上させることが可能な撮像装置、撮像装置の制御方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】赤外線カットフィルタが光路上に設置されて撮影するデイモードと、赤外線カットフィルタが光路上から外れて撮影するナイトモードとを切り替え、デイモードからナイトモードへ移行した直後から、ナイトモードでは、入射光量が減少するにつれて、ゲインを第1ゲイン値で一定のまま赤外線照射部の照射強度をゼロから上昇させ、照射強度が最大になった後、更に入射光量が減少したときは、ゲインを第1ゲイン値から上昇させる制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、撮像装置の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等の撮像装置には、赤外線を撮影できるものがある。赤外線を撮影できる撮像装置を使用して撮影する場合、撮影環境が明るい昼間時は、CCDイメージセンサーの前段に赤外線カットフィルタを装着して撮影を行う。一方、撮影環境が暗い夜間時は、赤外線カットフィルタを光路上から外して撮影を行う。赤外線カットフィルタを外したり装着したりして撮影することによって、CCDイメージセンサーに入射する入射光量が増加したり減少したりする。
【0003】
特許文献1では、赤外線カットフィルタを装着して撮影するデイモードと、赤外線カットフィルタを外して撮影するナイトモードの二つの撮影モードを切り替える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−120202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
撮像装置には、撮影環境の明るさに応じて、ゲインを制御して撮影することで、得られる被写体像が適切な明るさになるように調整するものがある。そして、赤外線を撮影できる撮像装置は、ゲイン値や検出された輝度値を基準に、赤外線カットフィルタを装着して撮影するデイモードと、赤外線カットフィルタを外して撮影するナイトモードを切り替える。
【0006】
画像が目標の明るさレベルになるようにゲインのみを調整する場合、デイモードでもナイトモードでも撮影環境が暗くなるにつれてゲインが上昇する。その結果、撮影環境が暗くなると撮影によって得られる画像のS/N比が悪化するという問題がある。
【0007】
ところで、撮像装置には、赤外線を被写体に向けて照射する赤外線照射機能を有し、赤外線を反射した被写体を撮影するものがある。赤外線を照射することによって、夜間時に被写体をより確実に撮影できる。赤外線照射機能を有する撮像装置は、撮影環境の明るさに応じて、ゲインと赤外線照射強度を制御して撮影することで、得られる被写体像が適切な明るさになるように調整する。
【0008】
しかし、ナイトモードにおけるゲインと赤外線照射強度の制御において、ゲインを優先して上昇させて撮影すると、撮影によって得られる画像のS/N比が悪化するという問題がある。一方、ナイトモードでゲインより赤外線照射強度を優先して上昇させて撮影すると、ナイトモードに遷移した後、人が撮像装置の前に立ったときに、被写体からの反射光量の増加によってデイモードに戻り、人が去ったのち再びナイトモードに遷移することがある。このようにデイモードとナイトモードが繰り返され、撮像装置の動作が不安定になるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、赤外線カットフィルタを光路上から外し、赤外線を被写体に照射するナイトモードにおいて、画像のS/N比を向上させることが可能な、新規かつ改良された撮像装置、撮像装置の制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、被写体からの光を受けて光を電気信号に変換する撮像素子と、被写体と撮像素子を結ぶ光路側に取り外し可能に設けられ、撮像素子に入射する光のうち赤外線領域を除去する赤外線カットフィルタと、被写体に向けて赤外線を照射する赤外線照射部と、撮像素子に入射した入射光量に基づいて画像が目標とする明るさになるようにゲインを制御するゲイン制御部と、赤外線カットフィルタが光路上に設置されて撮影するデイモードと、赤外線カットフィルタが光路上から外れて撮影するナイトモードとを切り替え、デイモードからナイトモードへ移行した直後から、ナイトモードでは、入射光量が減少するにつれて、ゲインを第1ゲイン値で一定のまま赤外線照射部の照射強度をゼロから上昇させ、照射強度が最大になった後、更に入射光量が減少したときは、ゲインを第1ゲイン値から上昇させる制御部とを備える撮像装置が提供される。
【0011】
上記制御部は、ナイトモードでは、入射光量が増加するにつれて、赤外線照射部の照射強度を最大のままゲインを低下させ、ゲインが第1ゲイン値になった後、更に入射光量が増加したときは、ゲインを第1ゲイン値で一定のまま照射強度を最大からゼロへ低下させてもよい。
【0012】
上記制御部は、ナイトモードでは、照射強度がゼロになった後、更に入射光量が増加したときは、第1ゲイン値からヒステリシスを減算した値までゲインを低下させてもよい。
【0013】
上記制御部は、ゲインが飽和したときと、入射光量が予め決められた値より低いときの二つの条件を満たした時にデイモードからナイトモードへ切り替えてもよい。
【0014】
上記制御部は、ゲインが第1ゲイン値からヒステリシスを減算した値より低下した時にナイトモードからデイモードへ切り替えてもよい。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、被写体と撮像素子を結ぶ光路側に取り外し可能に設けられ、撮像素子に入射する光のうち赤外線領域を除去する赤外線カットフィルタが、撮像素子と被写体を結ぶ光路上に設置されて撮影するデイモードと、赤外線カットフィルタが光路上から外れて撮影するナイトモードとを切り替えるステップと、デイモードからナイトモードへ移行した直後から、ナイトモードでは、撮像素子に入射した入射光量が減少するにつれて、入射光量に基づいて画像の明るさを制御するゲインを第1ゲイン値で一定のまま、被写体に向けて赤外線を照射する赤外線照射部の照射強度をゼロから上昇させるステップと、照射強度が最大になった後、更に入射光量が減少したときは、ゲインを第1ゲイン値から上昇させるステップとを備える撮像装置の制御方法が提供される。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、被写体と撮像素子を結ぶ光路側に取り外し可能に設けられ、撮像素子に入射する光のうち赤外線領域を除去する赤外線カットフィルタが、撮像素子と被写体を結ぶ光路上に設置されて撮影するデイモードと、赤外線カットフィルタが光路上から外れて撮影するナイトモードとを切り替える手段、デイモードからナイトモードへ移行した直後から、ナイトモードでは、撮像素子に入射した入射光量が減少するにつれて、入射光量に基づいて画像の明るさを制御するゲインを第1ゲイン値で一定のまま、被写体に向けて赤外線を照射する赤外線照射部の照射強度をゼロから上昇させる手段、照射強度が最大になった後、更に入射光量が減少したときは、ゲインを第1ゲイン値から上昇させる手段としてコンピュータを機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、赤外線カットフィルタを光路上から外し、赤外線を被写体に照射するナイトモードにおいて、画像のS/N比を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る撮像装置100を示すブロック図である。
【図2】ゲイン、赤外線LED114及び絞り106と、輝度との関係を示すグラフである。
【図3】撮像装置100のデイモードからナイトモードへの移行の判別動作を示すフローチャートである。
【図4】撮像装置100のナイトモードからデイモードへの移行の判別動作を示すフローチャートである。
【図5】デイモードからナイトモードに移行するときの絞り106、ゲイン及び赤外線LED114の動作を示すフローチャートである。
【図6】ナイトモードからデイモードに移行するときのゲイン及び赤外線LEDの動作を示すフローチャートである。
【図7】デイモードからナイトモードに移行した後のゲイン制御を示すフローチャートである。
【図8】ゲイン及び絞りと、輝度との関係を示すグラフである。
【図9】ゲイン、赤外線LED及び絞りと、輝度との関係を示すグラフである。
【図10】ゲイン、赤外線LED及び絞りと、輝度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.一実施形態の構成
2.一実施形態の動作
3.一実施形態の効果
【0021】
<1.一実施形態の構成>
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る撮像装置100の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る撮像装置100を示すブロック図である。
【0022】
撮像装置100は、例えば動画像を撮影するビデオカメラ等であり、デイモード(Day
Mode)とナイトモード(Night Mode)の二つのモードで被写体を撮影する。デイモードでは、赤外線カットフィルタ104が光路上に設置されて、主に昼間時に可視光線領域を撮影する。ナイトモードでは、赤外線カットフィルタ104が光路上から外れて、主に夜間時に赤外線領域を撮影する。
【0023】
撮像装置100は、例えばズームレンズ102と、赤外線カットフィルタ104と、絞り106と、フォーカスレンズ108と、CCDイメージセンサー112と、赤外線LED114と、赤外線カットフィルタ駆動部122と、赤外線LED駆動部124と、ゲイン制御・A/D変換部132と、カメラ信号処理部134と、制御部136などを有する。
【0024】
ズームレンズ102は、レンズの焦点距離を変化させ、画角を拡大したり縮小したりする。赤外線カットフィルタ104は、入射する光から赤外線を除去し、赤外線が除去された光を出射する。絞り106は、光量を変化させて、明るさを調整する。フォーカスレンズ108は、CCDイメージセンサー112上に被写体像を結像させて、画像のピントが合うように調整する。
【0025】
赤外線カットフィルタ104は、赤外線カットフィルタ駆動部122によって、被写体とCCDイメージセンサー112を結ぶ光路上に設置されたり、光路上から外されたりする。赤外線カットフィルタ駆動部122は、制御部136によって制御される。
【0026】
撮像装置100では、ズームレンズ102、赤外線カットフィルタ104、絞り106及びフォーカスレンズ108を介して、被写体からの光がCCDイメージセンサー112へ照射される。CCDイメージセンサー112は、可視光線領域及び赤外線領域の撮影が可能である。CCDイメージセンサー112は、照射された入射光を電気信号へ変換し、電気信号をゲイン制御・A/D変換部132へ出力する。CCDイメージセンサー112は、赤外線領域の感度があるため、撮像装置100は暗い場所でも撮影できる。
【0027】
ゲイン制御・A/D変換部132は、CCDイメージセンサー112からの画像信号を増幅し、デジタル化する。そして、ゲイン制御・A/D変換部132は、ゲイン制御及びデジタル化した画像信号をカメラ信号処理部134へ出力する。
【0028】
カメラ信号処理部134は、入力された画像信号に対して信号処理、例えば色分離、輪郭補正等を行う。色分離は、画像信号から輝度信号及び色差信号を生成し、生成した輝度信号及び色差信号から原色のR、G、B信号を分離する。輪郭補正は、被写体の輪郭の強調を行う。また、カメラ信号処理部134は、画像信号の明るさを検波し、その結果を制御部136に出力する。
【0029】
赤外線LED114は、赤外線の照射を行う。赤外線LED114は、赤外線LED駆動部124によって、オンオフ制御及び照射強度制御され、赤外線の照射を開始、終了したり、照射強度を変更したりする。赤外線LED114が被写体に赤外線を照射することによって、夜間などの暗い撮影環境において、明るく撮影でき、赤外線領域の撮影をより確実に行うことができる。
【0030】
制御部136は、例えばマイクロコンピュータであり、演算処理及び各種構成要素の制御を行う。制御部136は、例えば赤外線カットフィルタ104、赤外線LED114、絞り106などを制御する。また、制御部136は、ゲイン制御信号によってゲイン制御・A/D変換部132を制御する。更に、制御部136は、カメラ信号処理部134と通信し、カメラ信号処理部134を制御する。制御部136は、カメラ信号処理部134から受けた検波値に基づいて、デイモード及びナイトモードの切り替え等を行う。
【0031】
<2.一実施形態の動作>
次に、本実施形態に係る撮像装置100の動作について説明する。
【0032】
[デイモードからナイトモードへの移行]
まず、図2及び図5を参照して、デイモードからナイトモードに移行するときの絞り106、ゲイン及び赤外線LED114の動作について説明する。図2は、ゲイン、赤外線LED114及び絞り106と、輝度との関係を示すグラフであり、図2(A)はデイモードからナイトモードの切り替えを示す。図5は、デイモードからナイトモードに移行するときの絞り106、ゲイン及び赤外線LED114の動作を示すフローチャートである。
【0033】
撮影環境が暗くなるにつれて、画像が目標の明るさレベルになるように、まず絞り106を閉の状態から開の状態へ移行させる(ステップS31)。絞り106による制御は、絞り106が最大に開放されるまで継続する(ステップS32)。
【0034】
絞り106が最大に開放されたのちは、画像の明るさは、ゲインによって調整される。撮影環境が暗くなると、撮像装置100はゲインを上昇させる(ステップS33)。ゲインが飽和して、一定時間経過すると、デイモードからナイトモードへ移行する(ステップS34)。
【0035】
ナイトモードへ移行してゲインが安定したときの値が、第1ゲイン値G1として記憶される。そして、撮影環境が更に暗くなったとき、ゲインを第1ゲイン値G1で固定したまま(ステップS35)、赤外線LED114の照射強度を0から上昇させる(ステップS36)。赤外線LED114の照射強度は、照射強度が最大になるまで上昇させていく(ステップS37)。ゲインを上昇させず、赤外線LED114の照射によって被写体を撮影することによって、画像のS/N比を向上できる。
【0036】
赤外線LEDの照射強度が最大になったとき、撮影環境がまだ暗い場合は、ゲインを第1ゲイン値G1から上昇させる(ステップS38)。ゲインは、ゲインが飽和して最大になるまで上昇させていく。
【0037】
[ナイトモード移行時のゲイン制御について]
ここで、図7を参照して、デイモードからナイトモードに移行した時のゲイン制御について説明する。図7は、デイモードからナイトモードに移行した後のゲイン制御を示すフローチャートである。
【0038】
上述した通り、デイモードで撮影環境が暗くなり、ゲインが飽和して一定時間が経過すると、デイモードからナイトモードに移行する。ナイトモードでは、赤外線カットフィルタ104が光路上から外れる。
【0039】
そして、ナイトモードに移行した時点で、一旦ゲインを0に低下させる(ステップS51)。次に、ゲインを0から増加させて(ステップS52)、画像が目標の明るさレベルになるようにゲインを調整する(ステップS53)。ナイトモードでは、CCDイメージセンサー112に赤外線が入射するため、デイモードに比べて入射光量が増加し、ゲインがその分低くなる。
【0040】
画像が目標の明るさレベルになって、ゲインが安定したときの現在のゲインを第1ゲイン値G1に設定する(ステップS54)。そして、第1ゲイン値G1を記憶しておく(ステップS55)。
【0041】
[ナイトモードからデイモードへの移行]
次に、図2及び図6を参照して、ナイトモードからデイモードに移行するときのゲイン及び赤外線LED114の動作について説明する。図2(B)はナイトモードからデイモードの切り替えを示す。図6は、ナイトモードからデイモードに移行するときのゲイン及び赤外線LEDの動作を示すフローチャートである。
【0042】
ナイトモードにおいて、撮影環境が暗く、検波値(輝度)が低い時点では、赤外線LED114の照射強度は最大になっており、ゲインも飽和している。そして、検波値が上昇するにつれて、まず、赤外線LED114の照射強度を低下させるのでなく、赤外線LED114の照射強度を最大に固定したまま(ステップS41)、撮影環境の明るさに応じてゲインを低下させていく(ステップS42)。ゲインを低下させて、赤外線LED114の照射によって被写体を撮影することによって、画像のS/N比を向上できる。
【0043】
次に、ゲインの低下によって、現在のゲインがナイトモード移行時に記憶した第1ゲイン値G1まで低下したか否かを判断する(ステップS43)。ゲインが第1ゲイン値G1まで低下したとき、赤外線LED114の照射強度を最大から次第に低下させていく(ステップS44)。このとき、ゲインは第1ゲイン値G1に固定されている。そして、赤外線の照射強度が0に到達するまで、撮影環境の明るさに応じて赤外線LED114の照射強度を低下させていく(ステップS45)。
【0044】
赤外線LED114の照射強度が0に到達して、撮影環境がまだ明るい場合は、ゲインを低下させていく(ステップS46)。そして、現在のゲインが、保存していた収束時のゲイン(即ちナイトモードへ移行した時の第1ゲイン値G1)からヒステリシスを減算した値(=ゲインのN→D閾値)まで低下したか否かを判断する(ステップS47)。現在のゲインがN→D閾値より低下して一定時間経過したとき、ナイトモードからデイモードに移行する(ステップS48)。
【0045】
デイモードに移行することによって、撮像装置100の光路上に赤外線カットフィルタ104が設置される。その結果、デイモードに切り替わる直前のナイトモードの時よりも入射光量が減少するため、ゲインはその分高くなる。そして、デイモードでは、撮影環境の明るさに応じてゲインを調整する(ステップS49)。例えば、撮影環境が明るくなるにつれて、ゲインを低下させていく。ゲインが0に到達した後は、図2(B)に示すように、検波値に応じて絞り106を閉鎖していく。
【0046】
[デイモードからナイトモードへの移行の判別動作について]
次に、図3を参照して、撮像装置100のデイモードからナイトモードへの移行の判別動作について詳細に説明する。図3は、撮像装置100のデイモードからナイトモードへの移行の判別動作を示すフローチャートである。図3の開始から終了までは1フレームを示し、1フレームの間に検波値とゲインが1回取得され、状態の更新が行われる。
【0047】
まず、画像信号から検波値(輝度値)とゲインが取得される(ステップS1)。ゲインは、例えばアナログゲイン(Again)と、デジタルゲイン(Dgain)の両方が取得される。次に、現在の状態(State)がRunningであるか、Waitであるか、Checkであるかが判断される(ステップS2)。
【0048】
現在の状態がデイモードからナイトモードへの判定を実行しているRunningであれば、ゲインが飽和しているか否かが判断される(ステップS6)。ゲインが飽和していない場合は、D→Nカウントは0のままとする(ステップS13)。D→Nカウントは、検波値が閾値以下になったとき、ゲイン(Again、Dgain)が最大値に達しているときの2条件を満たしている時間を計測するための積算値であり、設定値以上になったときナイトモードに移行する。
【0049】
ゲインが飽和している場合は、検波値のD→N判定閾値を読み出して(ステップS7)、検波値がD→N判定閾値以下であるか否かが判断される(ステップS8)。D→N判定閾値は、デイモードからナイトモードへの移行を判断するための検波値に関する閾値である。検波値がD→N判定閾値より大きい場合は、D→Nカウントは0のままとする(ステップS13)。一方、検波値がD→N判定閾値以下である場合は、D→Nカウントに1を加算(インクリメント)する(ステップS9)。
【0050】
そして、現在のD→Nカウントを読み出して(ステップS10)、現在のD→Nカウントが設定値以上であるか否かが判断される(ステップS11)。現在のD→Nカウントが設定値より小さい場合は、現在実行しているRunning状態を維持する。一方、D→Nカウントが設定値以上である場合は、ナイトモードに移行し、状態をWaitに遷移させる(ステップS12)。即ち、検波値が閾値以下になったとき、ゲイン(Again、Dgain)が最大値に達しているときの2条件を指定時間満たすと、ナイトモードに移行する。
【0051】
Wait状態は、ナイトモードに移行した直後にCheck状態に遷移するまで数秒間(例えば2秒間)待つ状態である。Check状態は、ナイトモードにおいて検波値が安定しているか否かを判断する状態である。Check状態で、検波値が安定していると判断された場合はナイトモードからデイモードへの判定を実行するRunning状態に遷移する。
【0052】
ステップS2で、現在の状態がWaitと判断されると、Waitカウントに1を加算(インクリメント)する(ステップS3)。Waitカウントは、Wait状態を継続している時間を計測するための積算値であり、設定値以上になったときCheck状態に遷移する。
【0053】
そして、現在のWaitカウントが設定値以上であるか否かが判断される(ステップS4)。現在のWaitカウントが設定値より小さい場合は、現在実行しているWait状態を維持する。一方、Waitカウントが設定値以上である場合は、状態(State)をCheckに遷移させる(ステップS5)。即ち、Wait状態に遷移するとWait状態が数秒間維持され、その後Check状態に遷移される。
【0054】
ステップS2で、現在の状態がCheckと判断されると、ステップS1で取得された現フレームの検波値と、前フレームの検波値との差分を算出する(ステップS14)。そして、算出された差分が閾値以下であるか否かが判断される(ステップS15)。ここでの閾値は、検波値が1フレーム間で大きく変化しているか又は安定しているかを判断するための値である。
【0055】
差分が閾値以下である場合は、安定カウントに1を加算(インクリメント)する(ステップS16)。安定カウントは、ナイトモードに移行した後、検波値が安定しているか否かを判断するための値であり、設定値以上になったときナイトモードからデイモードへの判定を実行するRunning状態に遷移する。
【0056】
差分が閾値より大きい場合は、検波値が安定していないため、安定カウントの加算を行わない。そして、現在の安定カウントが設定値以上であるか否かが判断される(ステップS17)。現在の安定カウントが設定値以上である場合は、現在のゲインを第1ゲイン値G1として保存する(ステップS18)。その後、状態(State)をナイトモードからデイモードへの判定を実行するRunning状態に遷移させる(ステップS19)。一方、現在の安定カウントが設定値より小さい場合は、現在実行しているCheck状態を維持する。Check状態では、ナイトモードに移行した後、検波値が安定しているかどうかが判断でき、検波値が安定している場合はナイトモードからデイモードへの判定を開始する。一方、検波値が安定していない状態では、ナイトモードからデイモードへの判定を開始しないため、ナイトモードからデイモードに戻りにくくなりハンチングが生じづらくなる。
【0057】
[ナイトモードからデイモードへの移行の判別動作について]
次に、図4を参照して、撮像装置100のナイトモードからデイモードへの移行の判別動作について説明する。図4は、撮像装置100のナイトモードからデイモードへの移行の判別動作を示すフローチャートである。図4の開始から終了までは1フレームを示し、1フレームの間に検波値とゲインが1回取得され、N→Dカウントの更新が行われる。N→Dカウントは、ゲインがN→D閾値以下になっている時間を計測するための積算値であり、設定値以上になったときデイモードに移行する。
【0058】
まず、画像信号から輝度値(検波値)とゲインが取得される(ステップS21)。そして、デイモードからナイトモードへ移行した時に保存した第1ゲイン値G1を読み出す(ステップS22)。
【0059】
次に、現在のゲインが収束時のゲイン、即ちナイトモードへ移行した時に保存した第1ゲイン値G1からヒステリシスを減算した値(=ゲインのN→D閾値)以下であるか否かが判断される(ステップS23)。
【0060】
現在のゲインがN→D閾値より大きい場合は、N→Dカウントはゼロのままとする(ステップS28)。一方、現在のゲインがN→D閾値以下である場合は、N→Dカウントに1を加算(インクリメント)する(ステップS24)。そして、現在のN→Dカウントを読み出して(ステップS25)、現在のN→Dカウントが設定値以上であるか否かが判断される(ステップS26)。
【0061】
現在のN→Dカウントが設定値より小さい場合は、現在実行しているナイトモードを維持する。一方、N→Dカウントが設定値以上である場合は、デイモードに移行させる(ステップS27)。このように、ナイトモードからデイモードへの移行は、ゲインで判別する。
【0062】
<3.本実施形態の効果>
以上、本実施形態によれば、ナイトモードに移行した後、ゲインを最大にする前に赤外線LED114の照射強度を制御するため、ゲインが最大になってから赤外線LEDの照射強度を制御する方法に比べて、S/N比が良くなる。
【0063】
また、ナイトモードからデイモードへの移行は、ゲインで判別するため、赤外線LED114から照射されて被写体で反射する反射光が著しく増加したときに、誤ってデイモードに戻ることがない。
【0064】
次に、デイモードとナイトモードの二つのモードを有する撮像装置について、本実施形態と異なる方法で二つのモードを切り替える方法について説明する。
【0065】
図8に、デイモードとナイトモードの切り替えの一例を示す。図8は、ゲイン及び絞りと、輝度との関係を示すグラフであり、図8(A)はデイモードからナイトモードの切り替えを示し、図8(B)はナイトモードからデイモードの切り替えを示す。
【0066】
図8に示す例では、デイモードからナイトモードへの切り替えは、例えば検波値(検出され輝度値)とゲインの両方を条件とする。撮像装置は、デイモードにおいて、撮影環境が次第に暗くなるとゲインを上昇させて、画像が目標の明るさレベルになるように明るさを調整する。そして、撮影環境がある程度暗くなるとゲインが飽和する。ゲインが飽和して、かつ輝度値が閾値を低下したときに、撮像装置は、デイモードからナイトモードへ切り替える。
【0067】
ナイトモードでは、赤外線カットフィルタが外れて赤外線がCCDイメージセンサーに入射する。従って、ナイトモードに切り替わる直前のデイモードの時よりも入射光量が増加するため、図8(A)に示すようにゲインはその分低くなる。撮像装置は、画像が目標の明るさレベルになってゲインが安定したときのゲインを第1ゲイン値G1として記憶する。
【0068】
図8に示す例は、ゲインのみで画像の明るさを調整する場合であり、ナイトモードに移行した後は、図8(A)に示すようにゲインを上昇させて、画像の明るさを調整する。この方法では、赤外線LED等の赤外線照射機能を使用しないで、ゲインのみで画像の明るさを調整するため、明るさを制御できる範囲が狭い。また、ゲインを上げるため、画像のS/N比が悪化するという問題がある。一方、本実施形態によれば、赤外線照射機能を使用するため、ゲインのみで画像の明るさを調整する必要がなく、明るさを制御できる範囲が広くなる。また、画像のS/N比の悪化を防止できる。
【0069】
図8(B)に示すように、ナイトモードからデイモードへの移行は、ゲインで判別する。即ち、デイモードからナイトモード移行したときに記憶した第1ゲイン値G1にヒステリシスを持たせて、第1ゲイン値G1からヒステリシス幅を減算した値をナイトモードからデイモードへの閾値(N→D閾値)に設定する。ゲインがN→D閾値より低下したとき、ナイトモードからデイモードへ移行する。
【0070】
次に、図9に、デイモードとナイトモードの切り替えの他の一例を示す。図9は、ゲイン、赤外線LED及び絞りと、輝度との関係を示すグラフであり、図9(A)はデイモードからナイトモードの切り替えを示し、図9(B)はナイトモードからデイモードの切り替えを示す。
【0071】
図9に示す例は、ナイトモードで、図8で説明したゲインのみで画像の明るさを調整する方法に加えて、赤外線LEDを使用して、画像の明るさを調整する方法である。
【0072】
図9に示す例では、ナイトモードに移行した後、まず、赤外線LEDの照射強度ではなく、撮影環境の明るさに応じてゲインを制御する。そして、ゲインが飽和した後に、赤外線LEDの照射強度を制御する。この方法では、ナイトモードにおいて赤外線LEDが動作している間は、常に最大限のゲインがかかることになる。そのため、赤外線LEDによって赤外線を被写体に照射している場合でも、画像のS/N比が悪化するという問題がある。
【0073】
一方、本実施形態によれば、ナイトモードに移行した後は、赤外線LEDの照射強度を制御して、画像が目標の明るさになるように調整する。従って、ナイトモードに移行してからゲインを制御する場合に比べて、画像のS/N比を向上させることができる。
【0074】
次に、図10に、デイモードとナイトモードの切り替えの他の一例を示す。図10は、ゲイン、赤外線LED及び絞りと、輝度との関係を示すグラフであり、図10(A)はデイモードからナイトモードの切り替えを示し、図10(B)はナイトモードからデイモードの切り替えを示す。
【0075】
図10に示す例も、ナイトモードで、ゲインと赤外線LEDを使用して、画像の明るさを調整する例である。図10に示す例では、ナイトモードに移行した後、まずゲインは0に設定し、赤外線LEDの照射強度のみの制御で画像の明るさを調整する。
【0076】
ナイトモードに切り替わると、赤外線カットフィルタが光路上から外れる。デイモードからナイトモードに移行した後、画像が目標の明るさレベルになって、赤外線LEDの照射強度が安定したときの照射強度を第1照射強度G2として記憶する。そして、図10に示す例では、赤外線LEDの照射強度が最大になるとゲインを制御する。
【0077】
図10(B)に示すように、ナイトモードからデイモードへの移行は、赤外線LEDの照射強度で判別する。即ち、デイモードからナイトモードに移行したときに記憶したときに記憶した第1照射強度G2にヒステリシスを持たせて、第1照射強度G2からヒステリシス幅を減算した値をナイトモードがデイモードへの閾値(N→D閾値)に設定する。ゲインがN→D閾値より低下したとき、ナイトモードからデイモードへ移行する。
【0078】
ところで、赤外線LEDの照射強度と撮影環境の明るさは、CCDイメージセンサーに入射する光量を使用して判別される。しかし、CCDイメージセンサーは可視光線と赤外線を区別できない。そのため、ナイトモードで、例えば、撮像装置の前に人が立ったり、物体が横切ったりして、赤外線LEDの反射光量が著しく増加すると、撮影環境が明るくなったものと誤って判断してしまう。その結果、撮影環境は暗いにもかかわらず、ナイトモードからデイモードに移行する場合がある。しかし、撮像装置の前から人や物体が去った後では、デイモードでは撮影環境が暗いため、再びナイトモードに戻る。このように、図10に示す方法では、被写体によって撮像装置がハンチングを起こすという問題がある。
【0079】
上記問題を回避するため、ナイトモードからデイモードへの移行において、CCDイメージセンサーとは別に可視光センサー等を使用して、撮影環境の明るさを判別する方法が考えられる。しかし、撮像装置にナイトモードからデイモードへの移行判別のために新たに別のセンサーを設ける必要があり、撮像装置のコストが上昇するという問題がある。
【0080】
一方、本実施形態は、ナイトモードからデイモードへの移行は、CCDイメージセンサー入射する光量ではなく、ゲインで判別する。従って、赤外線LED114から照射されて被写体で反射する反射光が著しく増加したときに、誤ってデイモードに戻ることがない。
【0081】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0082】
100 撮像装置
102 ズームレンズ
104 赤外線カットフィルタ
106 絞り
108 フォーカスレンズ
112 CCDイメージセンサー
114 赤外線LED
122 赤外線カットフィルタ駆動部
124 赤外線LED駆動部
132 ゲイン制御・A/D変換部
134 カメラ信号処理部
136 制御部
G1 第1ゲイン値
G2 第1照射強度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの光を受けて前記光を電気信号に変換する撮像素子と、
前記被写体と前記撮像素子を結ぶ光路側に取り外し可能に設けられ、前記撮像素子に入射する光のうち赤外線領域を除去する赤外線カットフィルタと、
前記被写体に向けて赤外線を照射する赤外線照射部と、
前記撮像素子に入射した入射光量に基づいて画像が目標とする明るさになるようにゲインを制御するゲイン制御部と、
前記赤外線カットフィルタが前記光路上に設置されて撮影するデイモードと、前記赤外線カットフィルタが前記光路上から外れて撮影するナイトモードとを切り替え、前記デイモードから前記ナイトモードへ移行した直後から、前記ナイトモードでは、前記入射光量が減少するにつれて、前記ゲインを第1ゲイン値で一定のまま前記赤外線照射部の照射強度をゼロから上昇させ、前記照射強度が最大になった後、更に前記入射光量が減少したときは、前記ゲインを前記第1ゲイン値から上昇させる制御部と、
を備える、撮像装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ナイトモードでは、前記入射光量が増加するにつれて、前記赤外線照射部の前記照射強度を最大のまま前記ゲインを低下させ、前記ゲインが前記第1ゲイン値になった後、更に前記入射光量が増加したときは、前記ゲインを前記第1ゲイン値で一定のまま前記照射強度を最大からゼロへ低下させる、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ナイトモードでは、前記照射強度がゼロになった後、更に前記入射光量が増加したときは、前記第1ゲイン値からヒステリシスを減算した値まで前記ゲインを低下させる、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ゲインが飽和したときと、前記入射光量が予め決められた値より低いときの二つの条件を満たした時に前記デイモードから前記ナイトモードへ切り替える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ゲインが前記第1ゲイン値からヒステリシスを減算した値より低下した時に前記ナイトモードから前記デイモードへ切り替える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
被写体と撮像素子を結ぶ光路側に取り外し可能に設けられ、前記撮像素子に入射する光のうち赤外線領域を除去する赤外線カットフィルタが、前記撮像素子と前記被写体を結ぶ光路上に設置されて撮影するデイモードと、前記赤外線カットフィルタが前記光路上から外れて撮影するナイトモードとを切り替えるステップと、
前記デイモードから前記ナイトモードへ移行した直後から、前記ナイトモードでは、前記撮像素子に入射した入射光量が減少するにつれて、前記入射光量に基づいて画像の明るさを制御するゲインを第1ゲイン値で一定のまま、前記被写体に向けて赤外線を照射する赤外線照射部の照射強度をゼロから上昇させるステップと、
前記照射強度が最大になった後、更に前記入射光量が減少したときは、前記ゲインを前記第1ゲイン値から上昇させるステップと、
を備える、撮像装置の制御方法。
【請求項7】
被写体と撮像素子を結ぶ光路側に取り外し可能に設けられ、前記撮像素子に入射する光のうち赤外線領域を除去する赤外線カットフィルタが、前記撮像素子と前記被写体を結ぶ光路上に設置されて撮影するデイモードと、前記赤外線カットフィルタが前記光路上から外れて撮影するナイトモードとを切り替える手段、
前記デイモードから前記ナイトモードへ移行した直後から、前記ナイトモードでは、前記撮像素子に入射した入射光量が減少するにつれて、前記入射光量に基づいて画像の明るさを制御するゲインを第1ゲイン値で一定のまま、前記被写体に向けて赤外線を照射する赤外線照射部の照射強度をゼロから上昇させる手段、
前記照射強度が最大になった後、更に前記入射光量が減少したときは、前記ゲインを前記第1ゲイン値から上昇させる手段、
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−166523(P2011−166523A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28041(P2010−28041)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】