説明

撮像装置およびプログラム

【課題】適切な基線長で立体画像を撮影する。
【解決手段】立体表示のための右眼用画像および左眼用画像を撮像する撮像装置であって、主要被写体までの撮影距離および焦点距離に基づき、右眼用画像の撮像位置と左眼用画像の撮像位置との間の左右方向の距離である基線長を決定する決定部と、決定部により決定された基線長分、撮像位置を左右方向にずらして右眼用画像および左眼用画像を撮像する撮像部と、を備え、決定部は、撮影距離が大きいほど基線長を大きい値とし、焦点距離が大きいほど基線長を小さい値とし、撮影距離および焦点距離によらず基線長を予め定められた最小設定距離以上とする撮像装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、1眼式のカメラにより立体視用の画像を撮像する方法が知られている。この方法では、右眼用画像および左眼用画像のうち一方の画像(第1画像)を1回目に撮像し、続いて、カメラを水平方向にスライドさせて右眼用画像および左眼用画像のうち他方の画像(第2画像)を2回目に撮像する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、第1画像の撮像時のレンズ位置から第2画像の撮像時のレンズ位置までの間の距離(基線長)によって、立体画像の印象が大きく異なる。例えば、基線長が小さければ立体感は弱いが、基線長が大きければ立体感が強くなる。従って、立体画像を撮像する場合には基線長を適切に設定しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、立体表示のための右眼用画像および左眼用画像を撮像する撮像装置であって、主要被写体までの撮影距離および焦点距離に基づき、前記右眼用画像の撮像位置と前記左眼用画像の撮像位置との間の左右方向の距離である基線長を決定する決定部と、前記決定部により決定された基線長分、撮像位置を左右方向にずらして前記右眼用画像および前記左眼用画像を撮像する撮像部と、を備え、前記決定部は、前記撮影距離が大きいほど前記基線長を大きい値とし、前記焦点距離が大きいほど前記基線長を小さい値とし、前記撮影距離および前記焦点距離によらず前記基線長を予め定められた最小設定距離以上とする撮像装置、および、このような撮像装置に実行されるプログラムを提供する。
【0005】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本実施形態に係る撮像装置10を表面側から見た外観、および、第1画像の撮像位置および第2画像の撮像位置の一例を示す。
【図2】本実施形態に係る撮像装置10の裏面側から見た外観、および、第1画像の撮像位置および第2画像の撮像位置のそれぞれにおいて表示部30に表示される画像の一例を示す。
【図3】本実施形態に係る撮像装置10の機能構成を示す。
【図4】本実施形態に係る撮像装置10の立体撮影モードの処理フローを示す。
【図5】主要被写体の撮影距離および焦点距離に対する基線長の数値を記述したテーブルの第1例を示す。
【図6】主要被写体の撮影距離および焦点距離に対する基線長の数値を記述したテーブルの第2例を示す。
【図7】奥側に位置する被写体の視差角および手前側に位置する被写体の視差角の一例を示す。
【図8】本実施形態に係る補正部36による補正処理の一例を示す。
【図9】画像シフト処理により生成される右眼用画像および左眼用画像の一例を示す。
【図10】本実施形態に係る撮像装置10の表示部30に表示される方向マーク60の一例を示す。
【図11】縦撮り状態の撮像装置10の外観、および、第1画像および第2画像の撮像位置の一例を示す。
【図12】本実施形態に係る変形例の撮像装置10の外観を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、本実施形態に係る撮像装置10を表面側から見た外観、および、第1画像の撮像位置および第2画像の撮像位置の一例を示す。本実施形態に係る撮像装置10は、立体表示のための右眼用画像および左眼用画像を撮像する。
【0009】
本実施形態に係る撮像装置10は、1つのレンズ部12を有する。撮像装置10は、右眼用画像および左眼用画像のうち一方の静止画像(第1画像)を1回目に撮像し、続いて、レンズ部12を左右方向に例えば手動により移動させて(スライドさせて)、右眼用画像および左眼用画像のうち他方の静止画像(第2画像)を2回目に撮像する。
【0010】
ここで、第1画像の撮像位置と第2画像の撮像位置との間の左右方向の距離を、基線長と呼ぶ。本実施形態に係る撮像装置10は、第1画像の撮像後であってスライド前において基線長を決定し、第2画像の撮像位置を特定する。
【0011】
図2は、本実施形態に係る撮像装置10の裏面側から見た外観、および、第1画像の撮像位置および第2画像の撮像位置のそれぞれにおいて表示部30に表示される画像の一例を示す。
【0012】
撮像装置10は、裏面側に表示部30を備える。表示部30は、通常撮影において、撮影範囲のリアルタイムの画像を表すスルー画像を表示する。ユーザは、このスルー画像を確認しながら画角および各種のカメラパラメータを設定して、静止画像を撮像する。
【0013】
ここで、撮像装置10は、立体撮影モードにおいて、まず、ユーザによるシャッタボタンの押下しの動作に応じて第1画像を撮像する。続いて、撮像装置10は、第1画像を撮像した後に、第2画像の予測画像を第1画像から予測して生成し、生成した予測画像をスルー画像に重ねて表示する。これにより、撮像装置10は、ユーザに第1画像の撮像位置を知らせて、当該撮像装置10を適切な位置へとスライドさせることができる。
【0014】
そして、撮像装置10は、ユーザが当該撮像装置10の本体をスライドさせた結果、スルー画像と予測画像とが一致したことに応じて第2画像を自動的に撮像する。このようにして、撮像装置10は、第2画像を適切な位置で撮像することができる。
【0015】
図3は、本実施形態に係る撮像装置10の機能構成を示す。撮像装置10は、撮像部20と、テーブル記憶部22と、決定部24と、一時保存部26と、予測画生成部28と、表示部30と、一致検出部32と、シャッタ指示部34と、補正部36と、シフト部38と、出力部40とを備える。
【0016】
撮像部20は、被写体を撮像して静止画像を生成する。また、撮像部20は、立体撮影モードにおいて、最初に右眼用画像および左眼用画像のうち一方の画像(第1画像)を撮像し、続いて、基線長を決定し、続いて、右眼用画像および左眼用画像のうち他方の画像(第2画像)を撮像する。これにより、撮像部20は、決定部24により決定された基線長分、撮像位置を左右方向にずらして右眼用画像および左眼用画像を撮像することができる。
【0017】
テーブル記憶部22は、撮影距離のそれぞれと焦点距離のそれぞれとの対応毎に予め定められた基線長の値が記述されたテーブルを記憶する。テーブルの内容については図5および図6を参照して説明する。
【0018】
決定部24は、第1画像を撮像したときの主要被写体までの撮影距離および焦点距離を撮像部20から取得する。決定部24は、主要被写体までの撮影距離および焦点距離に基づき基線長を決定する。より詳しくは、決定部24は、テーブル記憶部22に記憶されたテーブルを参照し、主要被写体までの撮影距離および焦点距離に対応する基線長を決定する。
【0019】
一時保存部26は、撮像部20により撮像された第1画像を一時的に保存する。即ち、一時保存部26は、第1画像を撮像してから第2画像を撮像するまでの間、第1画像を記憶する。
【0020】
予測画生成部28は、第1画像を決定部24により決定された基線長に対応するシフト量分左右方向にシフトして、第2画像の予測画像を生成する。予測画生成部28は、第2画像の予測画像を画角全体について生成するのではなく、主要被写体の部分画像のような第1画像の一部のみについて生成してもよい。
【0021】
表示部30は、第1画像を撮像してから第2画像を撮像するまでの間において、スルー画像と予測画像とを合成して表示する。そして、表示部30は、スルー画像と予測画像とを合成した合成画像を表示面に表示する。
【0022】
一致検出部32は、第1画像を撮像した後において、スルー画像が予測画像と一致したかを検出する。より詳しくは、一致検出部32は、スルー画像と予測画像とが予め定められた一致度以上で一致したかを検出する。一致検出部32は、一例として、スルー画像と予測画像とを画素単位毎に比較して、スルー画像の画素と予測画像の画素とが予め定められた割合で一致している場合には、一致したと判断する。
【0023】
シャッタ指示部34は、ユーザがシャッタボタンを押下す操作をしたことに応じて撮像部20に撮像指示を与える。これにより、シャッタ指示部34は、ユーザがシャッタボタンを押下したことに応じて撮像部20に第1画像を撮像させることができる。
【0024】
また、シャッタ指示部34は、第1画像を撮像した後において、スルー画像が予測画像と一致したことに応じて撮像部20に撮像指示を与える。これにより、シャッタ指示部34は、撮像部20にスルー画像が予測画像と一致したことに応じて撮像部20に第2画像を撮像させることができる。
【0025】
補正部36は、第2画像を撮像した後において、第1画像および第2画像のうち一方である右眼用画像、および、第1画像および第2画像のうち他方である左眼用画像を補正する。補正部36は、一例として、手動のスライド操作により生じる右眼用画像および左眼用画像の上下方向のずれおよび回転方向のずれを補正する。
【0026】
シフト部38は、補正部36により補正された右眼用画像および左眼用画像を予め定められたピクセル数分左右方向にシフトして、右眼用画像および左眼用画像を左右方向に離間させる。シフト部38は、右眼用画像および左眼用画像の画素のそれぞれを同一のピクセル数分左右方向にシフトする。
【0027】
出力部40は、シフト部38によりシフトされた右眼用画像および左眼用画像を予め定められたフォーマットの立体表示用の画像ファイルとして出力する。そして、出力部40は、ファイル化した画像データをメモリカード等に保存する。
【0028】
図4は、本実施形態に係る撮像装置10の立体撮影モードの処理フローを示す。撮像装置10は、立体撮影モードにおいて、図4に示すステップS11〜ステップS25の処理を実行する。
【0029】
まず、シャッタ指示部34は、ユーザによりシャッタボタンが押下されたか否かを判断する(ステップS11)。シャッタ指示部34は、シャッタボタンが押下されない場合には(ステップS11のNo)、スルー画像を逐次更新しながら表示して、シャッタボタンが押下されるまで処理を待機する(S12)。
【0030】
ユーザによりシャッタボタンが押下された場合には(ステップS11のYes)、撮像部20は、右眼用画像および左眼用画像のうち予め定められた一方の画像(第1画像)を撮像する(ステップS13)。続いて、一時保存部26は、撮像部20により撮像された第1画像を一時保存する(S14)。
【0031】
続いて、決定部24は、主要被写体の撮影距離および焦点距離を撮像部20から取得する(ステップS15)。決定部24は、一例として、当該撮像装置10からピントを合わせた被写体までの距離を、撮影距離として取得する。
【0032】
続いて、決定部24は、主要被写体までの撮影距離および焦点距離に基づき、テーブル記憶部22に記憶されたテーブルを参照して基線長を決定する(ステップS16)。なお、テーブルの内容については図5および図6を参照して説明する。
【0033】
続いて、予測画生成部28は、第1画像を決定された基線長に対応するピクセル数分左右方向にシフトして、第2画像の予測画像を生成する(ステップS17)。即ち、予測画生成部28は、第1画像の撮像位置から左右方向に基線長分スライドした位置から撮像した画像の予測画像を、第1画像の各画素を左右方向にシフトさせることにより生成する。
【0034】
なお、予測画生成部28は、第1画像を予め定められた方向にシフトする。予測画生成部28は、一例として、第1画像を右眼用画像とする場合には、第1画像を右側にシフトさせて予測画像を生成する。また、予測画生成部28は、一例として、第1画像を左眼用画像とする場合には、第1画像を左側にシフトさせて予測画像を生成する。また、予測画生成部28は、表示される画面全体の予測画像ではなく、画面内における一部の被写体(例えば、主要被写体)の画像を予測画像としてもよい。
【0035】
続いて、表示部30は、スルー画像と予測画像とを合成した合成画像を生成して表示する(ステップS18)。この場合において、表示部30は、予測画像に透過度を与えて、スルー画像上に上書きして表示させる。そして、表示部30は、撮像部20による撮像位置が移動しても、予測画像を表示面に対して固定した位置に表示させ続ける。これにより、表示部30は、撮像部20による撮像位置が、予測画像が撮像できる位置(即ち、第2画像の撮像位置)に近づいているか否かをユーザに認識させることができる。
【0036】
続いて、一致検出部32は、スルー画像が予測画像と一致したかを検出する(ステップS19)。より詳しくは、一致検出部32は、スルー画像と予測画像とが予め定められた一致度以上で一致したかを検出する。一致検出部32は、一例として、スルー画像と予測画像とを画素単位毎に比較して、スルー画像の画素と予測画像の画素とが予め定められた割合で一致している場合には、一致したと判断する。
【0037】
スルー画像と予測画像とが一致していると判断されない場合(ステップS19のNo)、続いて、シャッタ指示部34は、ユーザによりシャッタボタンが強制的に押下されたか否かを判断する(ステップS20)。シャッタ指示部34は、シャッタボタンが押下されない場合には(ステップS20のNo)、スルー画像を逐次更新しながら(ステップS21)、スルー画像と予測画像を合成した合成画像を表示して(ステップS18)、スルー画像と予測画像とが一致するまで処理を待機する。
【0038】
スルー画像と予測画像とが一致したと判断された場合(ステップS19のYes)には、撮像部20は、右眼用画像および左眼用画像のうち予め定められた他方の画像(第2画像)を撮像する(ステップS22)。即ち、撮像部20は、第1画像を基線長に対応するシフト量分左右方向にシフトして第2画像の予測画像と、当該撮像部20の撮像範囲のリアルタイムの画像を表すスルー画像とが一致したことに応じて第2画像を撮像する。これにより、撮像装置10は、ユーザが当該撮像装置10をスライドさせるのみで、自動的に第2画像を撮像することができる。
【0039】
また、スルー画像と予測画像とが一致しないと判断される場合であっても(ステップS19のNo)、ユーザによりシャッタボタンが強制的に押下された場合(ステップS20のYes)には、撮像部20は、第2画像を撮像する(ステップS22)。これにより、撮像装置10は、第2画像が自動的に撮像されるのを待たずに、自身の意図で強制的に第2画像を撮像することができる。
【0040】
続いて、補正部36は、第1画像および第2画像のうち一方である右眼用画像、および、第1画像および第2画像のうち他方である左眼用画像を補正する(ステップS23)。補正部36は、一例として、右眼用画像および左眼用画像の上下方向のずれおよび回転方向のずれを補正する。
【0041】
続いて、シフト部38は、補正された右眼用画像および左眼用画像の全体を予め定められたピクセル数分左右方向にシフトして、右眼用画像および左眼用画像を左右方向に離間させる(ステップS24)。シフト部38は、一例として、右眼用画像の各画素の位置を、予め定められたピクセル数の1/2分右側にシフトさせる。また、シフト部38は、一例として、左眼用画像の各画素の位置を、予め定められたピクセル数の1/2分左側にシフトさせる。
【0042】
これにより、シフト部38は、より奥行き感のある立体画像を提供することができる。なお、シフト部38は、左右にシフトさせるピクセル数を、撮影距離、焦点距離および基線長等に応じて画像毎に変更してもよい。
【0043】
続いて、出力部40は、シフト部38によりシフトされた右眼用画像および左眼用画像を予め定められたフォーマットの立体表示用の画像ファイルとして出力する(ステップS25)。出力部40は、一例として、右眼用画像および左眼用画像のそれぞれから表示範囲の画像データを切り出したり、所定の圧縮処理符号化処理等をしたりして、ファイル化する。
【0044】
この場合、出力部40は、立体画像を表示するモニタのアスペクト比を予め取得している場合には、対応するサイズで画像データを切り出してもよい。例えば、表示するモニタが4:3の比率であることを予め取得している場合には、出力部40は、アスペクト比が4:3の画像データを切り出して生成する。また、例えば、表示するモニタが16:9の比率であることを予め取得している場合には、出力部40は、アスペクト比が16:9の画像データを切り出して生成する。そして、出力部40は、このようにファイル化した画像データをメモリカード等に保存する。
【0045】
以上のように、撮像装置10によれば、1つのレンズ部12により結像される被写体像を異なるタイミングにおいて撮像して、右眼用画像および左眼用画像を生成することができる。また、撮像装置10によれば、撮影距離および焦点距離に応じて基線長が設定されるので、適切な立体感のある立体画像を撮像することができる。
【0046】
図5および図6は、主要被写体の撮影距離および焦点距離に対する基線長の数値を記述したテーブルの一例を示す。なお、図5および図6において、テーブル内の各数値は基線長を表す。図5の数値の単位はセンチメートルである。また、図6の左側の数値の単位はセンチメートルであり、右側の数値は、予め定められたサイズの表示画面上における、基線長に対応したピクセル数を表す。
【0047】
決定部24は、一例として、図5に示されるようなテーブルまたは図6に示されるようなテーブルを参照して、撮影距離(L)および焦点距離(f)に基づき基線長を決定する。
【0048】
これらのテーブルには、撮影距離が大きい程、大きい値となる基線長が記述されている。従って、決定部24は、焦点距離が同じであれば、撮影距離が大きいほど基線長を大きい値とする。これにより、決定部24は、被写体が遠い程、基線長を大きくして、遠い被写体により大きな立体感を与えるようにしている。
【0049】
また、これらのテーブルには、焦点距離が大きい程、小さい値となる基線長が記述されている。従って、決定部24は、撮影距離が同じであれば、焦点距離が大きいほど基線長を小さい値とする。これにより、決定部24は、拡大して撮影する場合には、基線長を小さくして、過度な視差を与えなくできる。
【0050】
さらに、これらのテーブルには、撮影距離および焦点距離によらず最小設定距離以上となる基線長が記述されている。従って、決定部24は、撮影距離および焦点距離によらず基線長を最小設定距離以上とする。これにより、決定部24は、手振れにより撮像装置10の本体が微小にずれて意図せずに第2画像が撮像されてしまって精度の悪い立体画像が生成されることを、回避することができる。
【0051】
なお、最小設定距離は、手振れにより生じる移動量よりも大きな距離とすることが好ましい。コンパクトデジタルカメラに適用する場合には、最小設定距離は、一例として、0.5cmである。
【0052】
また、決定部24は、撮影距離が予め定められた第1基準距離以下の場合において、焦点距離によらず基線長を最小設定距離としてもよい。第1基準距離は、手振れにより本体の微小なずれの影響が撮影した画像に大きく影響する撮影距離であり、例えば0.1mである。これにより、決定部24は、手振れにより撮像装置10の本体が微小にずれて意図せずに第2画像が撮像されてしまって精度の悪い立体画像が生成されることを、回避することができる。
【0053】
また、さらに、これらのテーブルには、撮影距離および焦点距離によらず、最大設定距離以下となる基線長が記述されている。従って、決定部24は、撮影距離および焦点距離によらず、基線長を最大設定距離以下にする。これにより、決定部24は、想定される距離以上のシフト量の被写体が撮像されてしまうことを回避することができる。コンパクトデジタルカメラに適用する場合には、最大設定距離は、一例として、3cmである。
【0054】
また、決定部24は、撮影距離が予め定められた第2基準距離以上の場合において、焦点距離によらず基線長を最大設定距離としてもよい。第2基準距離は、第1基準距離より大きく、一例として、想定される距離以上のシフト量の被写体が撮像されてしまう可能性のある撮影距離であり、例えば2mである。これにより、決定部24は、想定される距離以上のシフト量の被写体が撮像されてしまうことを回避することができる。
【0055】
また、さらに、これらのテーブルには、撮影距離および焦点距離によらず、撮像素子上または予め定められたサイズの表示画面上で、予め定められた最小ピクセル数以上となる基線長が記述されている。従って、決定部24は、撮影距離および焦点距離によらず、基線長を撮像素子上または予め定められたサイズの表示画面上で予め定められた最小ピクセル数以上とする。
【0056】
これにより、決定部24は、右眼用画像と左眼用画像との間の差異を認識させて、少なくとも立体感を感じさせることができる画像を生成させることができる。35mmフルサイズ相当の撮像素子を備えるコンパクトデジタルカメラに適用する場合、最小ピクセル数は、一例として、横サイズが640ピクセルの表示画面上において、10ピクセルである。
【0057】
これに代えて、これらのテーブルには、撮影距離および焦点距離によらず、撮像素子上で左右方向の長さに対して予め定められた割合以上の長さに相当する基線長が記述されていてもよい。この場合、決定部24は、撮影距離および焦点距離によらず、基線長を撮像素子上で左右方向の長さに対して予め定められた割合以上の長さに相当する値とする。
【0058】
これにより、決定部24は、右眼用画像と左眼用画像との間の差異を認識させて、少なくとも立体感を感じさせることができる画像を生成させることができる。35mmフルサイズ相当の撮像素子を備えるコンパクトデジタルカメラに適用する場合、予め定められた割合は、一例として3%である。
【0059】
以上のように、決定部24は、予め設定されたテーブルを参照して、撮影距離および焦点距離に基づき適切な基線長を決定する。そして、決定部24は、手振れによるずれで自動的に画像が撮像されたり、想定以上の距離の基線長で画像が撮像されたりしないように、基線長の範囲を制限している。これにより、本実施形態に係る撮像装置10によれば、適切な基線長で右眼用画像および左眼用画像を撮像することができる。
【0060】
なお、テーブル記憶部22は、当該撮像装置10の撮影モードに対応付けられた複数種類のテーブルを記憶していてもよい。テーブル記憶部22は、一例として、風景撮影モード、接写モードおよび望遠モード等の、主な撮影対象を指定するモードに応じたテーブルを記憶していてもよい。そして、決定部24は、テーブル記憶部22に記憶された複数のテーブルのうち、撮像モードに対応するテーブルを参照して基線長を決定してもよい。これにより、決定部24は、主な被写体に応じてより適切な基線長で立体撮影をすることができる。
【0061】
図7は、奥側に位置する被写体の視差角および手前側に位置する被写体の視差角の一例を示す。決定部24は、少なくとも2つの被写体を含む立体画像の撮像において、右眼用画像および左眼用画像を表示した場合における2つの被写体の視差角の差を、予め定められた範囲内とするように基線長を決定してもよい。
【0062】
例えば、撮影距離が異なる2つの被写体を含む立体画像を撮影するとする。ここで、左眼用画像の撮像位置と被写体Aとを結ぶ直線aと、右眼用画像の撮像位置と被写体Aとを結ぶ直線aとの成す角を輻輳角αとする。また、左眼用画像の撮像位置と被写体Bとを結ぶ直線bと、右眼用画像の撮像位置と被写体Bとを結ぶ直線bとの成す角を輻輳角βとする。この場合、被写体Aと被写体Bとの視差角は、β−αとなる。
【0063】
決定部24は、奥側の被写体Aと手前側の被写体Bとの視差角(β−α)が予め定められた角度の範囲内(視差角の差が±1°の範囲内)となるように、基線長を設定する。決定部24は、一例として、それぞれの被写体の撮影距離を撮像部20から取得することにより、視差角の差を算出する。
【0064】
決定部24は、テーブルを参照して決定した基線長が視差角の差が予め定められた範囲外となる場合には、この範囲内となるように基線長を小さくする。撮像装置10は、このように基線長を調整することにより、立体視に適した視差角の差の画像を撮像することができる。
【0065】
図8は、本実施形態に係る補正部36による補正処理の一例を示す。第1画像を撮像した後に左右方向に手動でスライドさせて第2画像を撮像する場合、正確に左右方向にスライドできずに、第2画像が第1画像に対して上下方向にずれてしまうことがある。また、第1画像および第2画像を撮像する場合に、手振れ等により面内において傾いてしまうことがある。
【0066】
補正部36は、右眼用画像および左眼用画像を比較して撮像位置が上下方向にずれた場合には、右眼用画像および左眼用画像を上下方向にずらす補正する。また、補正部36は、右眼用画像および左眼用画像が面内方向に傾いて撮像された場合には、右眼用画像および左眼用画像を面内において回転する方向に補正する。さらに、補正部36は、このような補正に限らず、その他の画像処理により補正をしてもよい。
【0067】
ここで、右眼用画像および左眼用画像の間に、補正処理によっては補正できない程度のずれが生じている場合がある。このような場合、補正部36は、立体視に適した画像を生成できない旨をユーザに警告する。これにより、補正部36は、ユーザに再度の撮影をさせることができる。
【0068】
また、このように補正できない程度のずれが生じている場合であっても、補正部36は、右眼用画像および左眼用画像のうちの一方のみを保存する処理をしてもよい。これにより、補正部36は、少なくとも2次元画像の記録をすることができる。この場合、補正部36は、一例として、先に撮像した画像(即ち、第1画像)を保存してもよいし、より高品質であると判定された画像を保存してもよい。
【0069】
図9は、画像シフト処理により生成される右眼用画像および左眼用画像の一例を示す。また、右眼用画像および左眼用画像の間に補正処理によっては補正できない程度のずれが生じている場合、補正部36は、右眼用画像および左眼用画像のうちの一方から、他方を生成する処理をしてもよい。
【0070】
例えば、補正部36は、図9に示されるように、左眼用画像から、左眼用画像を右方向に予め定められたシフト量分シフトさせて、右眼用画像を生成してもよい。また、補正部36は、右眼用画像から、右眼用画像を左方向に予め定められたシフト量分シフトさせて、左眼用画像を生成してもよい。この場合において、補正部36は、例えば、先に撮像した画像(即ち、第1画像)を元に他方を生成してもよいし、より高品質であると判定された画像を元に他方を生成してもよい。
【0071】
これにより、補正部36は、右眼用画像または左眼用画像の何れか一方の撮影に失敗した場合であっても、少なくとも立体視が可能な画像ファイルを生成することができる。
【0072】
図10は、本実施形態に係る撮像装置10の表示部30に表示される方向マーク60の一例を示す。表示部30は、第1画像を撮像してから第2画像を撮像するまでの間において、当該撮像装置を移動させるべき方向を示す方向マーク60を表示してもよい。
【0073】
これにより、撮像装置10は、ユーザに対して当該撮像装置10を右方向にスライドさせればよいのか、左方向にスライドさせればよいのかを理解させることができる。特に、撮像装置10は、誤って移動させすぎてしまいスルー画像に主要被写体が含まれなくなった場合であっても、ユーザがどの方向に被写体を動かせばよいのかを知らせることができる。
【0074】
また、表示部30は、予測画像を第1色の色フィルタにより画像変換して表示し、スルー画像を第1色とは補色関係にある第2色の色フィルタにより画像変換して表示してもよい。これにより、表示部30は、スルー画像が予測画像に一致したことに応じて、現実の色の被写体をユーザに見せることができる。
【0075】
図11は、縦撮り状態の撮像装置10の外観、および、第1画像および第2画像の撮像位置の一例を示す。撮像装置10は、方向センサ70を更に備えてもよい。方向センサ70は、当該撮像装置10が横撮り状態であるか、縦撮り状態であるかを検出する。さらに、方向センサ70は、縦撮り状態である場合には、右辺側が下に位置しているか、左辺側が下に位置しているかを検出する。
【0076】
そして、撮像部20は、横撮り状態、右辺側が下の縦撮り状態、または、左辺側が下の縦撮り状態の何れであるかに応じて、撮像した画像データの左右方向を切り換えて出力する。これにより、撮像装置10は、何れの状態であっても、立体画像を撮像することができる。
【0077】
更に、決定部24は、横撮り状態であるか、縦撮り状態であるかによって、基線長を切り換える。より具体的には、決定部24は、横撮り状態の場合よりも、縦撮り状態の方の基線長を短くする。通常の場合、表示モニタは横長であるので、縦撮り状態で撮像された画像は縮小して表示される。従って、決定部24は、横撮り状態の基線長よりも、縮小率に応じた割合分、縦撮り状態の基線長を短くする。
【0078】
また、予測画生成部28は、右辺側が下の縦撮り状態か、左辺側が下の縦撮り状態に応じて、予測画像を生成するための第1画像のシフト方向を切り替える。これにより、予測画生成部28は、右辺側が下の縦撮り状態か、または、左辺側が下の縦撮り状態かによらず、第1画像を右眼用画像または左眼用画像の何れか一方に固定して撮像させることができる。
【0079】
図12は、本実施形態に係る変形例の撮像装置10の外観を示す。本変形例に係る撮像装置10は、右側および左側の2個のレンズ部12(12−R,12−L)を有する。本変形例に係る撮像装置10は、右眼用画像および左眼用画像を同時に撮像できる。
【0080】
更に、本変形例に係る撮像装置10は、片方のレンズ部12(例えばレンズ部12−L)が左右方向に移動可能となっている。移動可能な片方のレンズ部12は、決定部24により決定される2つのレンズ部12の間の距離を調整する。
【0081】
そして、本変形例に係る撮像装置10は、基線長を調整した後に、右眼用画像および左眼用画像を同時に撮像する。これにより、本変形例に係る撮像装置10は、撮影距離および焦点距離に応じて適切な基線長で立体画像を撮像することができる。
【0082】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0083】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0084】
10 撮像装置、12 レンズ部、20 撮像部、22 テーブル記憶部、24 決定部、26 一時保存部、28 予測画生成部、30 表示部、32 一致検出部、34 シャッタ指示部、36 補正部、38 シフト部、40 出力部、60 方向マーク、70 方向センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体表示のための右眼用画像および左眼用画像を撮像する撮像装置であって、
主要被写体までの撮影距離および焦点距離に基づき、前記右眼用画像の撮像位置と前記左眼用画像の撮像位置との間の左右方向の距離である基線長を決定する決定部と、
前記決定部により決定された基線長分、撮像位置を左右方向にずらして前記右眼用画像および前記左眼用画像を撮像する撮像部と、
を備え、
前記決定部は、
前記撮影距離が大きいほど前記基線長を大きい値とし、前記焦点距離が大きいほど前記基線長を小さい値とし、
前記撮影距離および前記焦点距離によらず前記基線長を予め定められた最小設定距離以上とする
撮像装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記撮影距離が第1基準距離以下の場合において、前記焦点距離によらず前記基線長を前記最小設定距離とする
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記撮影距離および前記焦点距離によらず前記基線長を予め定められた最大設定距離以下とする
請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記決定部は、前記撮影距離が第2基準距離以上の場合において、前記焦点距離によらず前記基線長を予め定められた最大設定距離とする
請求項1から3の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記決定部は、前記撮影距離および前記焦点距離によらず、基線長を撮像素子上または予め定められたサイズの表示画面上で予め定められたピクセル数以上とする
請求項1から4の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記決定部は、前記撮影距離および前記焦点距離によらず、基線長を撮像素子上で左右方向の長さに対して予め定められた割合以上の長さに相当する値とする
請求項1から4の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記右眼用画像および前記左眼用画像を予め定められたピクセル数分左右方向に離間させるシフト部を更に備える
請求項1から6の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記決定部は、前記撮影距離のそれぞれと前記焦点距離のそれぞれとの対応毎に予め定められた基線長の値が記述されたテーブルを参照して前記基線長を決定する
請求項1から7の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記決定部は、当該撮像装置の撮像モード毎に対応付けられた複数のテーブルのうち、設定された撮像モードに対応するテーブルを参照して前記基線長を決定する
請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記撮像部は、
前記右眼用画像および前記左眼用画像のうちの一方である第1画像を撮像し、
前記第1画像の撮像位置から、当該撮像装置が前記基線長に対応する距離分左右方向に移動したことを検出したことに応じて、前記右眼用画像および前記左眼用画像のうちの他方である第2画像を撮像する
請求項1から9の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記撮像部は、前記第1画像を前記基線長に対応するシフト量分左右方向にシフトして生成された第2画像の予測画像と、前記撮像部の撮像範囲のリアルタイムの画像を表すスルー画像とが一致したことに応じて前記第2画像を撮像する
請求項10に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記第1画像を撮像してから前記第2画像を撮像するまでの間において、前記スルー画像と前記予測画像とを合成して表示する表示部を更に備える
請求項11に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記表示部は、前記第1画像を撮像してから前記第2画像を撮像するまでの間において、当該撮像装置を移動させるべき方向を示す方向マークを表示する
請求項12に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記表示部は、前記予測画像を第1色の色フィルタにより画像変換して表示し、前記スルー画像を前記第1色とは補色関係にある第2色の色フィルタにより画像変換して表示する
請求項12または13に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記決定部は、少なくとも2つの被写体を含む立体画像の撮像において、前記右眼用画像および前記左眼用画像を表示した場合における2つの被写体の視差角の差を、予め定められた範囲内とするように前記基線長を決定する
請求項1から14の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項16】
前記決定部は、主要被写体までの撮影距離および焦点距離に基づき決定された基線長を、前記視差角の差を予め定められた範囲内とするように更に調整する
請求項15に記載の撮像装置。
【請求項17】
前記決定部は、表示面より手前側に表示される被写体の視差角と、前記表示面より奥側に表示される被写体の視差角との差を、予め定められた範囲内とするように前記基線長を決定する
請求項15または16に記載の撮像装置。
【請求項18】
被写体を撮像する撮像装置に実行され、請求項1から17の何れか1項の撮像装置として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−38640(P2013−38640A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173882(P2011−173882)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】