説明

撮像装置および撮像制御方法

【課題】被写体における輝度差を適切に反映した複数回の撮像により撮像手段のダイナミックレンジの有効活用が図れて良好な合成画像を生成できる撮像装置の技術を提供する。
【解決手段】撮像装置では、例えば輝度ヒストグラムHGに基づき得られる最大・最小の輝度値Bmax、Bminから被写体の輝度差を検出する。次に、この輝度差に係数k(例えば0.5)を乗算して得られる露光段差ΔBを有した明部基準の露出制御値Budrと暗部基準の露出制御値Bovrとを通常撮影時(1回の撮像であった場合)の適正露出値Bcntを挟んで設定する。そして、各露出制御値Budr、Bovrに設定された2回の撮像を行い、撮像素子で得られた2枚の画像から抽出される画像部分を合成して合成画像を生成する。これにより、被写体における輝度差を適切に反映した複数回の撮像を行えるため、撮像素子のダイナミックレンジの有効活用が図れて良好な合成画像を生成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体に係る撮像画像を生成する撮像手段を備えた撮像装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラなどの撮像装置において、明暗の差が大きいシーンの撮影(逆光撮影や屋内外同時撮影)を行う場合には、撮像素子のダイナミックレンジ不足に起因し、露出制御を行っても明るい部分が飽和して白トビが発生し、暗い部分で黒つぶれが生じることがある。
【0003】
このような不具合を改善する技術として、異なる露光時間が設定された2回の撮像で得られる長時間露光画像と短時間露光画像とを合成しダイナミックレンジが拡張された合成画像を生成する撮像装置が例えば特許文献1に開示されている。この撮像装置では、合成画像の輝度ヒストグラムから白トビを検出し、この白トビが発生しないように短時間露光時間を決定することで白トビが抑えられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−271368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の撮像装置においては、短時間露光時間の自動調整が行われるものの、撮影シーンにおける明暗の差を適切に反映したものとも限らない。例えば、被写体の輝度差(最大輝度・最小輝度の差)を把握し、この輝度差に応じて異なる露光時間(露出制御値)を設定するようにすれば、撮像素子(撮像手段)のダイナミックレンジの有効活用が図れて良好な合成画像を生成できる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、被写体における輝度差を適切に反映した複数回の撮像により撮像手段のダイナミックレンジの有効活用が図れて良好な合成画像を生成できる撮像装置の技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの側面は、撮像装置であって、絞り機構を有する撮影光学系を通った被写体光を受光して被写体に係る撮像画像を生成する撮像手段と、所定の測光範囲を測光して前記被写体の輝度情報を取得する輝度情報取得手段と、前記輝度情報取得手段で取得される高輝度情報と低輝度情報とに基づき、前記被写体に係る輝度差を検出する検出手段と、前記検出手段で検出される輝度差に所定の係数k(ただし0<k<1)を乗算して得られた値に相当する段差を有した露出制御値の範囲を設定し、前記撮像手段を用いて前記露出制御値の範囲内で異なる各露出制御値に設定された複数回の撮像を行う撮像制御手段と、前記複数回の撮像により前記撮像手段で得られた複数の撮像画像から抽出される画像部分を合成し、合成画像を生成する画像合成手段とを備えており、前記露出制御値の範囲内には、前記複数回の撮像が1回の撮像であった場合に当該1回の撮影で設定される1の露出制御値が含まれる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被写体に係る輝度差を検出し、この輝度差に所定の係数k(ただし0<k<1)を乗算して得られた値に相当する段差を有した露出制御値の範囲を設定する。そして、撮像手段を用いて露出制御値の範囲内で異なる各露出制御値に設定された複数回の撮像を行い、複数回の撮像によって得られた複数の撮像画像から抽出される画像部分を合成して合成画像を生成する。ここで、露出制御値の範囲内には、上記の複数回の撮像が1回の撮像であった場合に当該1回の撮影で設定される1の露出制御値が含まれる。その結果、被写体における輝度差を適切に反映した複数回の撮像により撮像手段のダイナミックレンジの有効活用が図れて良好な合成画像を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係る撮像装置の外観構成を示す図である。
【図2】第1実施形態の撮像装置の外観構成を示す図である。
【図3】撮像装置の機能構成を示すブロック図である。
【図4】測光素子の構成を説明するための図である。
【図5】プログラム線図の一例を示す図である。
【図6】画像合成によるダイナミックレンジの拡張を説明するための図である。
【図7】異なる露出制御値の設定手法について説明するための図である。
【図8】第1実施形態に係る撮像装置の基本的な動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2実施形態に係る撮像装置の基本的な動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第3実施形態に係る撮像装置の基本的な動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第4実施形態に係る撮像装置の基本的な動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第5実施形態に係る撮像装置の基本的な動作を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第6実施形態に係る撮像装置の動作を説明するための図である。
【図14】本発明の第7実施形態に係る撮像装置における測光素子の構成を説明するための図である。
【図15】各測光セルからの電荷出力を処理する処理回路を示す図である。
【図16】測光限界輝度以上の測光セル数とブレンド率との関係を示すグラフである。
【図17】第7実施形態に係る撮像装置の基本的な動作を示すフローチャートである。
【図18】本発明の第8実施形態に係る撮像装置における、撮影シーンの絶対輝度と重み付け演算に用いる係数との関係を示すグラフである。
【図19】第8実施形態に係る撮像装置の基本的な動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
[撮像装置の要部構成]
図1および図2は、本発明の第1実施形態に係る撮像装置1Aの外観構成を示す図である。ここで、図1は、撮像装置1Aの正面外観図であり、図2は、撮像装置1Aの背面外観図である。この撮像装置1Aは、レンズ交換式一眼レフレックスタイプのデジタルカメラとして構成されている。
【0011】
図1に示すように、撮像装置1Aは、カメラ本体部(カメラボディ)2を備えている。このカメラ本体部2に対して、交換式の撮影レンズユニットである交換レンズ3が着脱可能である。
【0012】
交換レンズ3は、主として、鏡胴36ならびに鏡胴36の内部に設けられるレンズ群37(図3参照)及び絞り38(図3参照)等によって構成される。撮影光学系として働くレンズ群37には、光軸方向に移動することによって焦点位置を変更するフォーカスレンズ等が含まれている。
【0013】
カメラ本体部2は、交換レンズ3が装着される円環状のマウント部Mtを正面略中央に備え、交換レンズ3を着脱するための着脱ボタン89を円環状のマウント部Mt付近に備えている。
【0014】
また、カメラ本体部2は、その正面左上部に露出モード設定ダイヤル82を備え、その正面右上部に制御値設定ダイヤル86を備えている。露出モード設定ダイヤル82を操作することによって、後述する「プログラム露出モード」や「絞り優先モード」、「シャッタースピード優先モード」、「マニュアル露出モード」、「シーンセレクタモード」などの選択を行うことが可能である。また、制御値設定ダイヤル86を操作することによれば、露出モードなどにおける制御値を設定することが可能である。例えば制御値設定ダイアル86により、ユーザの操作入力に基づいて絞り38に係る絞り値や撮像素子5(図3参照)に係るシャッタースピード(露光時間)が指定できる。
【0015】
また、カメラ本体部2は、正面左端部に撮影者が把持するためのグリップ部14を備えている。グリップ部14の上面には露光開始を指示するためのレリーズボタン11が設けられており、グリップ部14の内部には電池収納室とカード収納室とが設けられている。電池収納室にはカメラの電源として、例えばニッケル水素充電池等の二次電池や、アルカリ乾電池等の一次電池などが収納され、カード収納室には撮影画像の画像データを記録するためのメモリカード90(図3参照)が着脱可能に収納されるようになっている。
【0016】
レリーズボタン11は、半押し状態(S1状態)と全押し状態(S2状態)との2つの状態を検出可能な2段階検出ボタンである。レリーズボタン11が半押しされS1状態になると、被写体に関する記録用静止画像(本撮影画像)を取得するための準備動作(例えば、AF制御動作およびAE制御動作等)が行われる。また、レリーズボタン11がさらに押し込まれてS2状態になると、当該本撮影画像の撮影動作(撮像素子5(図3)を用いて被写体像(被写体の光像)に関する露光動作を行い、その露光動作によって得られた画像信号に所定の画像処理を施す一連の動作)が行われる。
【0017】
図2において、カメラ本体部2の背面略中央上部には、ファインダ窓(接眼窓)10が設けられている。撮影者は、ファインダ窓10を覗くことによって、交換レンズ3から導かれた被写体の光像を視認して構図決定を行うことができる。
【0018】
図2において、カメラ本体部2の背面の略中央には、背面モニタ12が設けられている。背面モニタ12は、例えばカラー液晶ディスプレイ(LCD)として構成され、撮影条件等を設定するためのメニュー画面を表示したり、再生モードにおいてメモリカード90に記録された撮影画像を再生表示したりすることができる。また、背面モニタ12においては、撮像素子5で撮像される被写体をユーザが視認できるように、本撮影(画像記録用の撮影)前に撮像素子5で順次に生成される画像信号に基づき被写体を動画的態様で表示するライブビュー表示(プレビュー表示)が可能となっている。このようなライブビュー表示を背面モニタ12で実行させるライブビューモードは、全体制御部101A(図3参照)で設定されることとなる。
【0019】
背面モニタ12の左上部にはメインスイッチ81が設けられている。メインスイッチ81は2点スライドスイッチからなり、接点を左方の「OFF」位置に設定すると、電源がオフになり、接点の右方の「ON」位置に設定すると、電源がオンになる。
【0020】
背面モニタ12の右側には方向選択キー84が設けられている。この方向選択キー84は円形の操作ボタンを有し、この操作ボタンにおける上下左右の4方向の押圧操作と、右上、左上、右下及び左下の4方向の押圧操作とが、それぞれ検出されるようになっている。なお、方向選択キー84は、上記8方向の押圧操作とは別に、中央部のプッシュボタンの押圧操作も検出されるようになっている。
【0021】
背面モニタ12の左側には、メニュー画面の設定、画像の削除などを行うための複数のボタンからなる設定ボタン群83が設けられている。
【0022】
つぎに、図3を参照しながら、撮像装置1Aの機能の概要について説明する。図3は、撮像装置1Aの機能構成を示すブロック図である。
【0023】
図3に示すように、撮像装置1Aは、操作部80、全体制御部101A、レンズ制御部121、絞り制御部122、シャッタ制御部123および画像処理部50等を備える。
【0024】
操作部80は、レリーズボタン11(図1参照)を含む各種ボタンおよびスイッチ等を備えて構成される。この操作部80に対する操作者の入力操作に応答して、全体制御部101Aが各種動作を実現する。
【0025】
測光素子44は、例えば光学ファインダ内に設けられており、交換レンズ3を通った光束を受光して被写体の輝度を検出するセンサである。この測光素子44では、図4に示すように撮像素子5による撮像範囲Rs内にハニカム構造を有した複数の測光領域Eaからなる測光範囲Etが設定されており、各測光領域Eaで独立して被写体の輝度情報を検出できるようになっている。すなわち、測光素子44により、測光範囲Etを測光して被写体の輝度情報が取得できる。
【0026】
測光部45は、測光素子44からの輝度情報に基づき、被写体の測光データを生成する部位である。この測光部45により、測光素子44で取得される最大輝度情報(高輝度情報)と最小輝度情報(低輝度情報)とに基づき、後述のように被写体に係る輝度差が検出できる。そして、測光部45で生成された測光データは、露出制御部102に入力され、被写体についての適正な露出制御値が算出されることとなる。
【0027】
以上のような測光素子44および測光部45を用いて、撮像装置1Aでは、3種類の測光モード、具体的には多分割測光モード、中央重点測光モードおよびスポット測光モードを選択できるようになっている。ここで、多分割測光モードとは、図4に示す測光範囲Etにおいて各測光領域Eaを独立に測光するモードである。この多分割測光モードでは、測光領域Eaに係る被写体の輝度情報に加え距離情報を用いて適正な輝度値を算出するようにしても良い。また、中央重点測光モードとは、図4に示す測光範囲Etにおいて、中央の測光領域Eaoに向けて重み付けを増加させつつ撮像画面の中央部分を重点的に測光することで適正な輝度値を算出するモードである。一方、スポット測光モードとは、中央の測光領域Eao(図4)のみをスポット的に測光して適正な輝度値を算出するモードである。すなわち、スポット測光モードでは、図4に示す測光範囲Etのうちの特定のスポット領域Eaoが重点的に測光されることとなる。
【0028】
全体制御部101Aは、マイクロコンピュータとして構成されており、主にCPU、RAMおよびROM等を備えている。
【0029】
全体制御部101Aは、ROM内に格納されるプログラムを読み出し、当該プログラムをCPUで実行することによって、各種機能をソフトウェア的に実現する。例えば全体制御部101Aは、ソフトウェア的に実現される露出制御部102、AF制御部103および撮像制御部104を有している。
【0030】
露出制御部102は、被写体光を受光した測光素子44からの出力に基づき測光部45で得られる測光データや露出モード等の設定情報から予め定められた露出演算により撮影時の露出制御値を決定する。そして、露出制御部102は、後述する画像合成に必要な複数回の撮影時における各露出制御値(シャッタースピードおよび絞り値)を決定する。
【0031】
また、露出制御部102により、5種類の露出モード、具体的にはプログラム露出モード、シーンセレクタモード、絞り優先モード、シャッタースピード優先モードおよびマニュアル露出モードを選択することが可能である。ここで、プログラム露出モード(いわゆるPモード)とは、例えば図5に示されるようにシャッタースピードTV(TV=log2(1/T)、ここでTはシャッタースピード[sec])および絞りAVの関係が定められたプログラム線図に基づき適正露出値を導き出す露出モードである。また、シーンセレクタモードとは、上記のプログラム露出モードと同様にシャッタースピードおよび絞りの両方が定められたプログラム線図(図5)を人物用や風景用に複数準備しておき、撮影シーンに適したプログラム線図から絞り値・シャッタースピードの組み合わせを決定することで適正露出を得る露出モードである。また、絞り優先モード(いわゆるAモード)とは、ユーザによって設定される絞り値を基準に、その絞り値に応じたシャッタースピードが自動的に決定されることで適正露出を得る露出モードである。また、シャッタースピード優先モード(いわゆるSモード)とは、ユーザによって設定されるシャッタースピードを基準に、そのシャッタースピードに応じた絞り値が自動的に決定されることで適正露出を得る露出モードである。また、マニュアル露出モードとは、シャッタースピードと絞り値とを任意の値に設定でき、ユーザが所望する露出値での撮影を可能とする露出モードである。
【0032】
AF制御部103は、例えば被写体光を受光して位相差検出方式の焦点検出(位相差AF)を行うための位相差AFモジュール(不図示)を用いて、被写体の撮影範囲に設定された複数のAFエリアそれぞれにおいて、2つの被写体像の間隔から像面における合焦位置へのずれ量(デフォーカス量)を検出する。そして、各AFエリアのデフォーカス量のうち適切な1つを選択し、その合焦目標位置にフォーカスレンズが駆動される。
【0033】
撮像制御部104は、明暗の差が比較的大きな撮影シーンなどを撮影する際に、合成画像の基礎となる複数の撮像画像を取得するため、異なる各露出制御値に設定された複数の撮像を行う部位である(後で詳述)。
【0034】
レンズ制御部121は、全体制御部101Aからの入力信号に基づき制御信号を生成しモータ等のアクチュエータを駆動制御することで、交換レンズ3のレンズ群37に含まれるフォーカスレンズやズームレンズを移動させる。これにより、AF制御や焦点距離(ズーム倍率)の変更が可能となる。
【0035】
絞り制御部122は、全体制御部101Aからの入力信号に基づき制御信号を生成しモータ等のアクチュエータを駆動制御することで、絞り機構として働く絞り38の絞り径を変更する。
【0036】
シャッタ制御部123は、全体制御部101Aからの入力信号に基づき制御信号を生成しモータ等のアクチュエータを駆動することで、シャッタ4の開閉を制御する。
【0037】
撮像素子5は、例えばフォトダイオードを有して構成される複数の画素がマトリクス状に2次元配置され、各画素の受光面に、それぞれ分光特性の異なる例えばR(赤)、G(緑)、B(青)のカラーフィルタが1:2:1の比率で配設されてなるベイヤー配列のCMOSカラーエリアセンサ(CMOS型の撮像素子)が用いられる。このような構成の撮像素子5においては、光電変換作用により被写体の光像を電気的信号に変換し、本撮影画像に係る画像信号(画像記録用の画像信号)が生成される。すなわち、交換レンズ3を通った被写体光を受光して被写体に係る撮像画像が生成されることとなる。
【0038】
撮像素子5は、タイミング制御回路(不図示)を介して全体制御部101Aから入力される駆動制御信号(蓄積開始信号および蓄積終了信号)に応答して、受光面に結像された被写体像の露光(光電変換による電荷蓄積)を行い、当該被写体像に係る画像信号を生成する。また、撮像素子5は、タイミング制御回路を介して全体制御部101Aから入力される読出制御信号に応答し、当該画像信号をA/D変換部51に出力する。
【0039】
撮像素子5で取得されA/D変換部51でデジタル信号に変換された画像信号は、画像処理部50に入力される。
【0040】
画像処理部50は、A/D変換部51から入力される画像データに対してデジタル信号処理を行い、撮像画像に係る画像データを生成する。この画像処理部50は、黒レベル補正部52、ホワイトバランス(WB)補正部53、画像補間部54、階調補正カーブ決定部55、階調変換部56および記録画像生成部57とを備えている。
【0041】
黒レベル補正部52は、画像信号において最高となる濃度部を基準の黒レベルに補正する。
【0042】
WB補正部53は、撮影光源の分光による色バランスのずれを補正するためにRGB各色の画素データのレベル変換を行う。
【0043】
画素補間部54は、撮像素子5のカラーフィルタが上述したベイヤー配列であるために欠落する欠落色画素の補間を行う。
【0044】
階調補正カーブ決定部55および階調変換部56は、撮影画像に最適な補正カーブ(γ特性の補正カーブ)を決定するとともに、この補正カーブによる画像データ(RGBデータ)の階調補正を行う。
【0045】
記録画像生成部57は、画像処理された画像データに対して例えばJPEGなどの圧縮処理を施し、記録用の画像データとして画像メモリ91に保存する。
【0046】
また、画像処理部50は、位置合わせ部58と画像合成部59とを備えている。
【0047】
位置合わせ部58は、後述の画像合成のために撮像素子5で連続的に撮像されて画像メモリ91に保存されている複数の撮像画像間の位置合わせを行う。この位置合わせ部58では、例えば撮像装置1Aのブレ情報等から画像間の位置ズレを検出し、この位置ズレに基づく位置合わせが実行される。
【0048】
画像合成部59は、後述のように合成画像のダイナミックレンジが適切に拡張されるように、位置合わせ部58で位置合わせ処理が施された複数の画像を合成する処理が行われる。すなわち、画像合成部59では、複数回の撮像によって撮像素子5で得られた複数枚の撮像画像から抽出される画像部分を合成し、白トビや黒つぶれが抑えられた合成画像が生成される。そして、生成された合成画像は全体制御部101Aを介してメモリカード90に記録される。
【0049】
以上のような構成の撮像装置1Aでは、輝度差が大きい被写体を撮影する際に、異なる露出制御値で連続的に撮像して得られる複数の画像を合成することにより、ダイナミックレンジが拡張された被写体画像を得ることが可能である。この異なる露出制御値での撮像について、以下で詳しく説明する。
【0050】
[異なる露出制御値での撮像について]
本実施形態の撮像装置1Aにおいては、異なる露出制御値に設定された2回の撮像によって2枚の画像を取得してから、これらの画像合成を行うことで、撮像素子5に対して相対的にダイナミックレンジが拡張された画像を生成できるようになっている。
【0051】
撮影シーンにおいて明暗の差が大きい場合には、撮像素子5のダイナミックレンジではカバーできないため、1回の撮影では同一被写体に対しても図6(a)に示す画像Gaのように黒つぶれ部分Eaや、図6(b)に示す画像Gbのように白トビ部分Ebが発生することがある。そこで、本実施形態の撮像装置1Aでは、同一被写体に対してシャッタースピードを変更して(露出を変化させて)例えば2枚の画像Ga、Gbを撮像し、これらの画像Ga、Gbのうち黒つぶれ部分Eaや白トビ部分Eb以外の各画像部分Da、Dbを合成することで、図6(c)に示す合成画像Gcのようにダイナミックレンジが擬似的に拡張された被写体画像を作成するようにしている。
【0052】
詳しくは、同一の撮影シーンに対して被写体の明部を重視し、これを基準(以下では「明部基準」ともいう)とした露出制御値で撮像するとともに、被写体の暗部を重視し、これを基準(以下では「暗部基準」ともいう)とした露出制御値で撮像する。これにより、明部基準の露出で撮像された画像Ga(図6(a))は、ハイライトの階調が適切に再現される画像部分Daと黒つぶれ部分Eaとで構成され、暗部基準の露出で撮像された画像Gb(図6(b))は、ハイライトが白トビした白トビ部分Ebとシャドーの階調が適切に再現される画像部分Dbとで構成されることとなる。これら2枚の画像Ga、Gbにおいて、明部基準の露出で生じた黒つぶれ部分Eaと暗部基準の露出で生じた白トビ部分Ebとが、他方の画像から抽出される該当の画像部分Da、Dbで補間されることにより、ハイライトおよびシャドーの階調が再現された各画像部分Da、Dbからなる合成画像Gc(図6(c))を生成でき、ダイナミックレンジの拡張が可能となる。
【0053】
以上のように撮像装置1Aでは、異なる露出制御値に設定して撮像素子5で順次に取得される2枚の画像を合成することによりダイナミックレンジの拡張が図られているが、以下では、この異なる露出制御値の設定手法について図7を参照して説明する。
【0054】
図7は、異なる露出制御値の設定手法について説明するための図である。この図7の上部には、例えばライブビューモードで撮像素子5により取得された撮像画像の輝度分布を表した輝度ヒストグラム(以下では単に「ヒストグラム」とも称する)HGが示されている。
【0055】
まず、被写体の輝度情報が表されるヒストグラムHGにおいて、最大(最高)の輝度値Bmaxと最小(最低)の輝度値Bminとを検出する。すなわち、最大の輝度値Bmaxと最小の輝度値Bminとは、撮像素子5によって得られた画像に基づくヒストグラムHGから検出されることとなる。ここで、最大の輝度値Bmaxは、ヒストグラムHGにおいて輝度値が最も大きい画素から低輝度方向に所定数α(αは例えば数画素)の画素をカウントし、その画素が有する輝度値とする。同様に、最小の輝度値Bmaxは、ヒストグラムHGにおいて輝度値が最も小さい画素から高輝度方向に所定数α(αは例えば数画素)の画素をカウントし、その画素が有する輝度値とする。このように最大・最小の輝度値Bmax、Bminを設定すれば、例えば1つの画素だけで突発的に白トビや黒つぶれが生じても、これを誤差として排除することができ、適正な最大・最小の輝度値Bmax、Bminを得ることが可能となる。なお、最大・最小の輝度値Bmax、Bminについては、ライブビューモードで撮像素子5から得られる被写体画像に基づきヒストグラムHGを作成して検出するのは必須でなく、被写体光を受光する測光素子44において各測光領域Ea(図4)で得られる輝度値のうち最大値および最小値を検出するようにしても良い。
【0056】
次に、ヒストグラムHGから得られる被写体の適正な輝度値に基づき、ユーザが設定した測光モードで通常撮影(撮影シーンに対する1回のみの撮影)を行う場合の適正な露出制御値Bcntを算出する。
【0057】
なお、上記の露出制御値Bcntに設定して撮像する場合には、撮像素子5のダイナミックレンジをカバーに相当する輝度範囲Rdしかカバーできないため、1回の撮像では黒つぶれ部分Ea(図6(a))や白トビ部分Eb(図6(b))が発生する恐れがある。そこで、ヒストグラムHGの輝度特性を有する被写体が良好に再現されるように撮像装置1Aでは、上述のように2回の撮像で得られた2枚の画像を合成することとする。この2回の撮像で設定される各露出制御値、具体的には明部基準の露出制御値Budrおよび暗部基準の露出制御値Bovrについては、次の式(1)〜(4)を用いて算出する。
【0058】
ΔBp=(Bmax−Bcnt)×k ・・・・・・(1):
ΔBq=(Bmin−Bcnt)×k ・・・・・・(2):
Budr=Bcnt+ΔBp ・・・・・・・・・(3):
Bovr=Bcnt+ΔBq ・・・・・・・・・(4):
ここで、上式(1)、(2)中の「k」は予め定められた係数であり、0〜1の範囲内の数値、例えば0.5が設定されている。
【0059】
上記の式(1)〜(4)を用いて演算することにより、明部基準の露出制御値Budrと暗部基準の露出制御値Bovrとが算出され、これらの露出制御値の間には、次の式(5)のように露光段差ΔBが生じることとなる。
【0060】
ΔB=ΔBp−ΔBq ・・・・・・・・・(5):
なお、露光段差ΔBについては、上式(5)に上記の式(1)〜(2)を代入することにより、次の式(6)が得られる。
【0061】
ΔB=(Bmax−Bmin)×k ・・・・・・・(6):
このようにヒストグラムHGから検出される輝度差(Bmax−Bmin)に係数kを乗算して得られた値に相当する露光段差ΔBを有した露出制御値の範囲を設定し、この露出制御値の範囲内でそれぞれ異なる各露出制御値Budr、Bovrに設定された2回の撮像を行うことにより、撮像素子5のダイナミックレンジに相当する高輝度側と低輝度側との各輝度範囲Rdp、Rdq(図7)における被写体の階調再現が可能となる。ここで、露光段差ΔBを有した露出制御値の範囲内には、本実施形態で実行される2回の撮像が1回の撮像(通常の撮影)であった場合に当該1回の撮像で設定される適正な露出制御値(1の露出制御値)Bcntが含まれている。その結果、撮像素子5のダイナミックレンジを超える輝度差(Bmax−Bmin)を有した被写体を画像合成により白トビや黒つぶれを発生させず適切に再現できることとなる。
【0062】
以下では、具体例として、例えばBmax=8.0[BV]およびBmin=3.0[BV]の最大・最小輝度値を有した被写体において適正な露出制御値としてBcnt=6.0[EV]が設定されているケースについて明部基準・暗部基準の各露出制御値Budr、Bovrの算出手法を説明する。
【0063】
上記の式(1)〜(2)により、まずΔBp=(8.0-6.0)×0.5=+1.0[EV]、ΔBq=(3.0-6.0)×0.5=-1.5[EV]を算出する。そして、この算出されたΔBp、ΔBqを上記の式(3)〜(4)に代入することで、Budr=6.0+1.0=7.0[EV]、Bovr=6.0-1.5=4.5[EV]を得る。このように適正な露出制御値Bcntを挟んで設定される明部基準の露出制御値Budrおよび暗部基準の露出制御値Bovrでの2回の撮像で得られた2枚の画像を合成することで、明暗の差が大きな撮影シーンに対しても階調再現が良好な被写体画像を生成することが可能となる。
【0064】
以上のような構成を有する撮像装置1Aの具体的な動作について、以下で説明する。
【0065】
[撮像装置1Aの動作]
図8は、撮像装置1Aの基本的な動作を示すフローチャートである。この動作については、多分割測光モードが設定され、露出モードとして上述したプログラム露出モードまたはシーンセレクタモードが設定される場合の露出制御動作を示しており、全体制御部101Aによって実行される。
【0066】
ステップST1では、被写体に係る撮影シーンの輝度分布を解析する。ここでは、例えば測光素子44で検出される被写体の輝度情報に基づき、上述した最大の輝度値Bmaxと最小の輝度値Bminとが求められる。なお、測光素子44を用いず、ライブビューモードにて撮像素子5により取得される撮像画像に基づき例えば図7に示すヒストグラムHGを作成することで最大の輝度値Bmaxと最小の輝度値Bminとを求めるようにしても良い。
【0067】
ステップST2では、通常撮影時(1回の撮影であった場合)での適正な露出制御値を決定しプログラム線図から基準の絞り値を設定する。具体的には、予め定められた露出演算により上述した適正な露出制御値Bcntを算出し、図5に示すプログラム線図において露出制御値Bcntを表す右下がりのラインLe(破線)とプログラムラインLp(太実線)との交点Pkから得られる絞り値AVrが基準の絞り値として設定される。すなわち、撮像素子5に係るシャッタースピード(露光時間)と絞り4に係る絞り値との関係が規定されたプログラム線図から適正な露出制御値(1の露出制御値)Bcntに応じた絞り値AVrを求め、この絞り値AVrを2回の撮像で固定的に保持される基準の絞り値として設定する。
【0068】
ステップST3では、2回の撮像で設定される各露出制御値の差分に対応した露光段差ΔBを算出する。具体的には、ステップST1で得られた最大の輝度値Bmaxと最小の輝度値Bminとに基づき、上述の式(6)を用いて露光段差ΔBを求める。
【0069】
ステップST4では、絞りを固定して明部基準の露出制御値で撮像する場合のシャッタースピードTVpを決定する。具体的には、ステップST2で得られた適正な露出制御値Bcntに基づき上記の式(1)および式(3)を用いて明部基準の露出制御値Budrを求めるとともに、図5に示すプログラム線図において上記の絞り値AVrを変化させずに、明部基準の露出制御値Budrに応じたシャッタースピードTVpを設定する。なお、このシャッタースピードTVpと上述の交点Pkでのシャッタースピードとの差分値Tk(図5)は、上記の式(1)で求められるΔBpに相当している。
【0070】
ステップST5では、暗部基準の露出制御値で撮像する場合のシャッタースピードTVqを決定する。具体的には、ステップST2で得られた適正な露出制御値Bcntに基づき上記の式(2)および式(4)を用いて暗部基準の露出制御値Bovrを求めるとともに、図5に示すプログラム線図において上記の絞り値AVrを変化させずに、暗部基準の露出制御値Bovrに応じたシャッタースピードTVqを設定する。なお、このシャッタースピードTVqと上述の交点Pkでのシャッタースピードとの差分値Tj(図5)は、上記の式(2)で求められるΔBqに相当している。
【0071】
上記のステップST4〜ST5において明部基準・暗部基準の各露出制御値Budr、Bovrと基準の絞り値AVrとに基づき2回の撮像における各シャッタースピード(各露光時間)TVp、TVqが設定されることにより、2回の撮像で露出の異なる2枚の画像が取得されることとなる。そして、これら2枚の画像に対して画像合成部59で上述の画像合成を行い図6(c)に示す合成画像Gcを生成すれば、撮像素子5に比べてダイナミックレンジが拡張された被写体画像を得ることが可能となる。
【0072】
以上で説明した撮像装置1Aにおいては、被写体に係る最大・最小の輝度値Bmax、Bminを検出し、これを上記の式(1)〜(5)に代入して露光段差ΔBを有する明部基準・暗部基準の各露光制御値Budr、Bovrを算出する。そして、各露出制御値Budr、Bovrに設定された2回の撮像で得られる2枚の画像を図6のように合成し、ダイナミックレンジの拡張された合成画像を生成する。これにより、明暗の差が比較的大きな撮影シーンを対しても被写体における輝度差を適切に反映した複数回の撮像を行えるため、撮像素子5のダイナミックレンジの有効活用が図れて、白トビや黒つぶれが抑えられた良好な合成画像を生成できる。
【0073】
すなわち、2回の撮像では撮影シーンの輝度差に応じて設定される露光段差ΔBを適切に設定しなければ最終的な合成画像に破綻が生じる可能性が高い。特に、撮影シーンの輝度差が小さい場合、露光段差ΔBを無理に大きくとれば本来必要のないレンジまで拡張された被写体画像が生成され、再現したい階調範囲が狭くなって結果的にコントラストの低下した合成画像が得られてしまう。これに対して、本実施形態の撮像装置1Aでは、撮影シーンの輝度差に依存した各露出制御値が設定されるため、コントラストが良好な合成画像を生成できることとなる。
【0074】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る撮像装置1Bについては、第1実施形態の撮像装置1Aと類似の構成を有しているが、全体制御部の構成が異なっている。
【0075】
すなわち、第2実施形態の全体制御部101Bは、そのROMに以下で説明する動作を実行するプログラムが格納されている。
【0076】
[撮像装置1Bの動作]
図9は、撮像装置1Bの基本的な動作を示すフローチャートである。この動作については、多分割測光モードが設定され、露出モードとして上述した絞り優先モードが設定される場合の露出制御動作を示しており、全体制御部101Bによって実行される。
【0077】
ステップST11では、図8に示すフローチャートのステップST1と同様の動作を行う。
【0078】
ステップST12では、制御値設定ダイヤル86を用いユーザが指定した絞り値に設定される通常撮影時(1回の撮影であった場合)での適正な露出制御値を決定する。具体的には、予め定められた露出演算により、通常撮影時において適正となる露出制御値Bcntが算出される。
【0079】
ステップST13では、図8に示すフローチャートのステップST3と同様の動作を行う。
【0080】
ステップST14では、ユーザ指定の絞り値で明部基準の露出制御値Budrにて撮像する場合のシャッタースピードTVaを決定する。具体的には、ステップST12で得られた適正な露出制御値Bcntに基づき上記の式(1)および式(3)を用いて明部基準の露出制御値Budrを求め、この露出制御値Budrからユーザ指定の絞り値を減じてシャッタースピードTVaを導出する。
【0081】
ステップST15では、ユーザ指定の絞り値に設定し暗部基準の露出制御値で撮像する場合のシャッタースピードTVbを決定する。具体的には、ステップST12で得られた適正な露出制御値Bcntに基づき上記の式(2)および式(4)を用いて暗部基準の露出制御値Bovrを求め、この露出制御値Bovrからユーザ指定の絞り値を減じてシャッタースピードTVbを導出する。
【0082】
上記のステップST14〜ST15においてユーザにより指定される絞り値を2回の撮像で固定的に保持される基準の絞り値として設定し、この基準の絞り値と明部基準・暗部基準の各露出制御値Budr、Bovrとに基づき2回の撮像における各シャッタースピードTVa、TVbが設定されることにより、2回の撮像で露出の異なる2枚の画像が取得されることとなる。そして、これら2枚の画像に対して上述の画像合成を行い図6(c)に示す合成画像Gcを生成すれば、撮像素子5に比べてダイナミックレンジが拡張された被写体画像を得ることが可能となる。
【0083】
以上で説明した撮像装置1Bにおいては、既述した第1実施形態と同様に、明暗の差が比較的大きな撮影シーンを対しても被写体における輝度差を適切に反映した複数回の撮像を行えるため、撮像素子5のダイナミックレンジの有効活用が図れて、白トビや黒つぶれが抑えられた良好な合成画像を生成できる。
【0084】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態に係る撮像装置1Cについては、第1実施形態の撮像装置1Aと類似の構成を有しているが、全体制御部の構成が異なっている。
【0085】
すなわち、第3実施形態の全体制御部101Cは、そのROMに以下で説明する動作を実行するプログラムが格納されている。
【0086】
[撮像装置1Cの動作]
図10は、撮像装置1Cの基本的な動作を示すフローチャートである。この動作については、多分割測光モードが設定され、露出モードとして上述したシャッタースピード優先モードが設定される場合の露出制御動作を示しており、全体制御部101Cによって実行される。
【0087】
ステップST21では、図8に示すフローチャートのステップST1と同様の動作を行う。
【0088】
ステップST22では、制御値設定ダイヤル86を用いユーザが指定したシャッタースピードTVsに設定される通常撮影時(1回の撮影であった場合)での適正な露出制御値を決定する。具体的には、予め定められた露出演算により、通常撮影時において適正となる露出制御値Bcntが算出される。
【0089】
ステップST23では、図8に示すフローチャートのステップST3と同様の動作を行う。
【0090】
ステップST24では、ユーザ指定のシャッタースピードTVsで明部基準の露出制御値Budrにて撮像する場合の絞り値を決定する。具体的には、ステップST22で得られた適正な露出制御値Bcntに基づき上記の式(1)および式(3)を用いて明部基準の露出制御値Budrを求め、この露出制御値Budrからユーザ指定のシャッタースピードTVsを減じて絞り値AVsを導出する。
【0091】
ステップST25では、ステップST24で決定された絞り値AVsに設定し暗部基準の露出制御値Bovrで撮像する場合のシャッタースピードTVtを決定する。具体的には、ステップST22で得られた適正な露出制御値Bcntに基づき上記の式(2)および式(4)を用いて暗部基準の露出制御値Bovrを求め、この露出制御値Bovrに基づき、ステップST24で設定された絞り値AVsを変化させずにシャッタースピードTVtを導出する。
【0092】
上記のステップST24〜ST25では、各露出制御値Budr、Bovrのうち最も明るい撮像画像が得られる明部基準の露出制御値Budrにおいてユーザ指定のシャッタースピード(露光時間)TVsに応じた絞り値AVsを求め、この絞り値AVsを2回の撮像で固定的に保持される基準の絞り値として設定する。そして、この基準の絞り値と明部基準・暗部基準の各露出制御値Budr、Bovrとに基づき2回の撮像における各シャッタースピード(ユーザ指定のシャッタースピード)TVs、TVtが設定されることにより、2回の撮像で露出の異なる2枚の画像が取得されることとなる。そして、これら2枚の画像に対して上述の画像合成を行い図6(c)に示す合成画像Gcを生成すれば、撮像素子5に比べてダイナミックレンジが拡張された被写体画像を得ることが可能となる。
【0093】
以上で説明した撮像装置1Cにおいては、既述した各実施形態と同様に、明暗の差が比較的大きな撮影シーンを対しても被写体における輝度差を適切に反映した複数回の撮像を行えるため、撮像素子5のダイナミックレンジの有効活用が図れて、白トビや黒つぶれが抑えられた良好な合成画像を生成できる。
【0094】
<第4実施形態>
本発明の第4実施形態に係る撮像装置1Dについては、第1実施形態の撮像装置1Aと類似の構成を有しているが、全体制御部の構成が異なっている。
【0095】
すなわち、第4実施形態の全体制御部101Dは、そのROMに以下で説明する動作を実行するプログラムが格納されている。
【0096】
[撮像装置1Dの動作]
図11は、撮像装置1Dの基本的な動作を示すフローチャートである。この動作については、多分割測光モードが設定され、露出モードとして上述したマニュアル露出モードが設定される場合の露出制御動作を示しており、全体制御部101Dによって実行される。
【0097】
ステップST31〜ST32では、図8に示すフローチャートのステップST1〜ST2と同様の動作を行う。
【0098】
ステップST33では、制御値設定ダイヤル86を用いユーザが指定した絞り値とシャッタースピードとが設定される明部基準の露出制御値Budrを決定する。換言すれば、明部基準の露出制御値Budrでの撮像においては、ユーザ指定の絞り値とシャッタースピードTVmとが設定されることとなる。
【0099】
ステップST34では、ユーザ指定の絞り値に設定し暗部基準の露出制御値で撮像する場合のシャッタースピードTVnを決定する。具体的には、ステップST33で設定された明部基準の露出制御値Budrから、ステップST32で算出された露光段差ΔBを減じて暗部基準の露出制御値Bovrを求める。そして、ユーザ指定の絞り値を変化させずに、暗部基準の露出制御値Bovrに応じたシャッタースピードTVnを設定する。このシャッタースピードTVnは、ユーザ指定のシャッタースピードTVmに対して露光段差ΔBだけ長い時間となる。
【0100】
上記のステップST33〜ST34では、ユーザ指定の絞り値とシャッタースピード(露光時間)とから得られた露出制御値を、2回の撮像で設定される各露出制御値のうち最も明るい撮像画像が得られる明部基準の露出制御値Budrに設定する。一方、ユーザ指定の絞り値を2回の撮像で固定的に保持される基準の絞り値として設定し、この基準の絞り値と明部基準・暗部基準の各露出制御値Budr、Bovrとに基づき2回の撮像における各シャッタースピードTVm、TVnが設定されることにより、2回の撮像で露出の異なる2枚の画像が取得されることとなる。そして、これら2枚の画像に対して上述の画像合成を行い図6(c)に示す合成画像Gcを生成すれば、撮像素子5に比べてダイナミックレンジが拡張された被写体画像を得ることが可能となる。
【0101】
以上で説明した撮像装置1Dにおいては、既述した各実施形態と同様に、明暗の差が比較的大きな撮影シーンを対しても被写体における輝度差を適切に反映した複数回の撮像を行えるため、撮像素子5のダイナミックレンジの有効活用が図れて、白トビや黒つぶれが抑えられた良好な合成画像を生成できる。
【0102】
<第5実施形態>
本発明の第5実施形態に係る撮像装置1Eについては、第1実施形態の撮像装置1Aと類似の構成を有しているが、全体制御部の構成が異なっている。
【0103】
すなわち、第5実施形態の全体制御部101Eは、そのROMに以下で説明する動作を実行するプログラムが格納されている。
【0104】
[撮像装置1Eの動作]
図12は、撮像装置1Eの基本的な動作を示すフローチャートである。この動作については、スポット測光モードが設定され、露出モードとして上述した絞り優先モードが設定される場合の露出制御動作を示しており、全体制御部101Eによって実行される。
【0105】
ステップST41およびステップST42では、図8に示すフローチャートのステップST1およびステップST3と同様の動作を行う。
【0106】
ステップST43では、制御値設定ダイヤル86を用いユーザが指定した絞り値で測光素子44によるスポット測光を行った際の適正露出値を、明部基準の露出制御値Budrとして決定する。すなわち、スポット測光で取得された輝度情報に基づき予め定められた露出演算により算出される適正露出値が明部基準の露出制御値Budrに設定されるため、図7に示す明部基準側の露出シフト量ΔBpは「0」となる。このように設定された明部基準の露出制御値Budrからユーザ指定の絞り値を減じることで、明部基準露出での撮像時におけるシャッタースピードTVcが導出されることとなる。
【0107】
ステップST44では、ユーザ指定の絞り値に設定し暗部基準の露出制御値で撮像する場合のシャッタースピードTVbを決定する。具体的には、ステップST43で明部基準の露出制御値Budrとして設定された適正な露出制御値Bcntに基づき上記の式(2)および式(4)を用いて暗部基準の露出制御値Bovrを求め、この露出制御値Bovrからユーザ指定の絞り値を減じてシャッタースピードTVdを導出する。
【0108】
上記のステップST43〜ST44で設定される各シャッタースピードTVc、TVdでの2回の撮像を行うことにより、スポット測光の対象となる被写体部分を基準として撮影シーン(被写体の輝度差)に応じた露光段差分ΔBだけ露出が変更された2枚の画像が取得されることとなる。そして、これら2枚の画像に対して上述の画像合成を行い図6(c)に示す合成画像Gcを生成すれば、撮像素子5に比べてダイナミックレンジが拡張された被写体画像を得ることが可能となる。
【0109】
以上で説明した撮像装置1Fにおいては、既述した各実施形態と同様に、明暗の差が比較的大きな撮影シーンを対しても被写体における輝度差を適切に反映した複数回の撮像を行えるため、撮像素子5のダイナミックレンジの有効活用が図れて、白トビや黒つぶれが抑えられた良好な合成画像を生成できる。
【0110】
<第6実施形態>
本発明の第6実施形態に係る撮像装置1Fについては、第1実施形態の撮像装置1Aと類似の構成を有しているが、全体制御部の構成が異なっている。
【0111】
すなわち、第6実施形態の全体制御部101Fは、そのROMに以下で説明する動作を実行するプログラムが格納されている。
【0112】
[撮像装置1Fの動作]
図13は、撮像装置1Fの動作を説明するための図であり、特に5回の撮像で設定される各露出値について説明する図である。この図13は、図7に対応している。
【0113】
撮像装置1Fでは、上述した撮像装置1Aと同様に、ヒストグラムHGから最大の輝度値Bmaxと最小の輝度値Bminとを検出し、通常撮影時(1回の撮影であった場合)の適正な露出制御値Bcntを算出した後に、上記の式(1)〜(4)を用いて明部基準の露出制御値Budrと暗部基準の露出制御値Bovrとが求められる。
【0114】
本実施形態の撮像装置1Fでは、暗部基準の露出制御値Bovrから明部基準の露出制御値Budrまでの露光段差ΔBにおいて、それぞれ異なった露出での5回の撮像が行われることとなるが、各撮像時の露出制御値Ba〜Beの設定方法について説明する。
【0115】
まず、図13において最大・最小の露出制御値Ba、Bbは、明部基準・暗部基準の露出制御値Budr、Bovrに設定され、露出制御値Bcは、適正な露出制御値Bcntに設定される。そして、残り2つの露出制御値Bd、Beは、露出制御値Baと露出制御値Bcとを2等分する中間値と、露出制御値Bbと露出制御値Bcとを2等分する中間値とに設定される。
【0116】
このような各露出制御値Ba〜Beが設定されることにより、適正な露出制御値Bcや、その近傍の露出制御値Bd、Beによる撮像を行えるため、人物の顔などの主要被写体が良好な露出状態となる画像を取得できる。そして、5回の撮像によって得られた5枚の画像を合成してダイナミックレンジの拡張した合成画像を生成する際には、露出制御値Bcによる適正露出での撮像によって得られた画像から主要被写体(顔など)を切出し、他の撮像によって得られた画像に合成するようにする。このように5回の撮像には、被写体の輝度情報に基づき予め定められた露出演算により算出される適正露出値での撮像が含まれるため、合成画像において主要被写体が適切な露光状態で再現できる。
【0117】
なお、暗部基準の露出制御値Bovrから明部基準の露出制御値Budrまでの露光段差ΔBにおいて、上述した各露出制御値Ba〜Beを設定するのは必須でなく、次の式(7)〜(9)に従って各撮像時の露出制御値B1〜B5(図13)を設定するようにしても良い。
【0118】
n=1=(Bmax−Bcnt)×k+Bcnt ・・・・・・・・・(7):
n=2=(Bmin−Bcnt)×k+Bcnt ・・・・・・・・・(8):
n>2=(B1−B2)/(Ns−1)×(n−2)+B2 ・・・・(9):
ここで、Nsは撮像回数(本実施形態では5回)である。
【0119】
上記の式(7)〜(9)を用いて各露出制御値B1〜B5を求めると、図13に示すように暗部基準の露出制御値Bovrから明部基準の露出制御値Budrまでの露光段差ΔBにおいて、等間隔に各露出制御値B1〜B5が設定されることとなる。
【0120】
以上で説明した撮像装置1Fにおいては、既述した各実施形態と同様に、明暗の差が比較的大きな撮影シーンを対しても被写体における輝度差を適切に反映した複数回の撮像を行えるため、撮像素子5のダイナミックレンジの有効活用が図れて、白トビや黒つぶれが抑えられた良好な合成画像を生成できる。
【0121】
なお、撮像装置1Fにおいては、5回の撮像を行うのは必須でなく、それぞれ異なる露出制御値が設定された3回や4回、6回以上の撮像を行っても良い。この場合、3回の撮像では、例えば図13に示す3つの露出制御値Ba、Bb、Bcや、3つの露出制御値B1、B2、B4に設定するようにする。また、4回の撮像では、例えば図13に示す4つの露出制御値Ba〜Bdに設定するようにする。このように露出制御値が設定される複数回の撮像で得られた画像を合成すれば、ダイナミックレンジが拡張された合成画像を得ることができる。
【0122】
以上のように上記の各実施形態では、露光段差ΔBを用いることによりダイナミックレンジが適切に拡張された合成画像を生成できるが、上記の式(6)によって妥当な露光段差ΔBを求めるには被写体に係る輝度差(Bmax−Bmin)を精度良く検出する必要がある。ここで、一般に測光素子を用いた測光においては、その特性上、低輝度の被写体に対して信頼性が低下する傾向にある。このような低輝度シーンにおいても測光素子により被写体の輝度差を良好に検出できる手法を、以降の実施形態で説明する。
【0123】
<第7実施形態>
本発明の第7実施形態に係る撮像装置1Gについては、第1実施形態の撮像装置1Aと類似の構成を有しているが、測光素子と全体制御部との構成が異なっている。
【0124】
すなわち、第7実施形態の測光素子440は、第1実施形態と同様に、例えば光学ファインダ内に設けられ被写体の輝度を検出するセンサとして構成されているが、図14に示すように測光範囲Euが40の領域に分割され、それぞれ独立した測光が可能となっている。具体的には、測光素子440は、SPC(Silicon Photo Cell)を備えてなる測光セルとして、ハニカム構造を有した39個の小さい測光セル(以下では「小セル」ともいう)Efと、その周りで環状に設けられた1個の大きな測光セル(以下では「大セル」ともいう)Egとを備えている。すなわち、測光素子440は、測光範囲Euを分割して測光する39個の小セル(測光セル)Efおよび1個の大セル(測光セル)Egを備えており、被写体の輝度情報として各測光セルEf、Egから測光値の出力が可能である。なお、測光素子440の特性については、後で詳述する。
【0125】
そして、各測光セルEf、Egに電気的に接続して各測光セルEf、Egからの電荷出力を処理する処理回路450が測光部45に設けられている(図15)。この処理回路450では、例えば全体制御部101Gからの制御信号Sgに基づき各測光セルEf、Egでの測光動作(光電変換動作)を制御し、各測光セルEf、Egにおいて光電変換され蓄積された電荷(蓄積電荷)に対して対数圧縮や温度補償、ゲイン適用を実施して測光に係る計測値としての出力電圧Vpを生成する。
【0126】
また、第7実施形態の全体制御部101Gは、そのROMに後述する撮像装置1Gの動作を実行するプログラムが格納されている。
【0127】
[測光素子440を用いた被写体の輝度差の検出について]
測光素子440では、基本的には光電変換によって受光量に比例した電荷が蓄積されるが、低輝度の被写体光を受光する小セルEfでは、この比例関係(リニア特性)が成立しない。これは、受光面積が小さい小セルEfにおいて低輝度シーンでは光電変換により生じる電荷量が少なって非線形な特性となるためである。なお、小セルEfにて上記のリニア特性の精度が補償できなくなる限界の輝度(例えば2EV)を、以下では「測光限界輝度」ともいう。一方、大セルEgは、小セルEfに対して受光面積が大きいため、低輝度シーンでもリニア特性の精度を確保できる。この大セルEgの特性を利用し、測光素子440では、出力電圧Vp(図15)が小さく信頼性が低い小セルEfの測光値に代わって大セルEgの測光値を用いることで低輝度シーンでの測光精度向上を図るようにしている。
【0128】
ただし、測光限界輝度より低い輝度値(測光値)が検出される小セルEfが多くなると、これらの小セルEfの測光値が1個の大セルEgの測光値に置換されることとなるため、測光素子440において測光精度の低下を招いてしまう。
【0129】
そこで、本実施形態の撮像装置1Gでは、測光素子440における各測光セルEf、Egの測光値(最大・最小の輝度値Bmax、Bmin)に基づき測光部45で測定され得られた輝度差(以下では「測定輝度差」ともいう)に加え、予め規定されている輝度差(以下では「規定輝度差」ともいう)を考慮して、露光段差ΔBの算出に用いる被写体の最終的な輝度差(以下では「最終輝度差」ともいう)を導出することとする。上記の規定輝度差については、例えば夜景シーンでは2.0EVが設定され、人物が含まれた夜景シーンでは1.0EVが設定される。
【0130】
次に、被写体の最終輝度差を算出する手法を具体的に説明する。被写体の最終輝度差Bconは、測定輝度差をBmes、規定輝度差をBsetとして次の式(10)を用い算出される。
【0131】
Bcon=α×Bmes+β×Bset ・・・・・・・(10):
ここで、α、βは測定輝度差Bmesと規定輝度差Bsetとをブレンドする係数(ブレンド率)を示しており、図16に示すグラフに従ってα+β=1の関係を維持しつつ変化する。この図16のグラフにおいて、横軸は測光値が測光限界輝度以上となる測光セル(小セル)Efの数を示し、縦軸は上式(10)でのブレンド率α、βを示している。
【0132】
図16に示すグラフでは、上記の式(10)において測定輝度差Bmesの係数であるブレンド率αを、測光限界輝度以上の小セルEfの数に比例して小セルEfの全数(39個)で100%となるように増加させる一方、上記の式(10)において規定輝度差Bsetの係数であるブレンド率βは、測光限界輝度以上の測光セルEfの数が異なってもα+β=1の関係を保持するように変化させている。これにより、撮像装置1Gでは、図16に示すように測光限界輝度以上の測光セル(小セル)Efの数に応じて変化するブレンド率α、βを用いて測定輝度差Bmesと規定輝度差Bsetとの適切なブレンド、つまり重み付け平均演算が可能となる。この図16のグラフのようにブレンド率α、βを設定すれば、上式(10)に示す重み付け演算において、測光値が測光限界輝度以上となる測光セル(小セル)Efの数が多いほど、測光部45で検知される測定輝度差(被写体に係る輝度の差)Bmesの、規定輝度差Bsetに対する重み付けが増加される一方、測光限界輝度以上の測光セルEfの数が少ないほど、測光部45で検知される測定輝度差Bmesの、規定輝度差Bsetに対する重み付けが減少されることとなる。その結果、低輝度の被写体を測光素子440で測光する際にも、信頼性の高い被写体の輝度差(最終輝度差Bcon)を導出することが可能となる。
【0133】
このような撮像装置1Gの具体的な動作を、以下で説明する。
【0134】
[撮像装置1Gの動作]
図17は、撮像装置1Gの基本的な動作を示すフローチャートである。この動作については、特に測光素子440を用いて被写体の輝度差を検出する動作を示しており、全体制御部101Fによって実行される。
【0135】
ステップST51では、被写体に係る撮影シーンの輝度分布を解析する。ここでは、測光素子440の各測光セルEf、Egで検出される輝度情報に基づき、被写体に関する最大の輝度値Bmaxと最小の輝度値Bminとが求められる。
【0136】
ステップST52では、測光素子440で得られる測光結果(被写体の輝度情報)に基づき、測光部45にて被写体に係る輝度の差である測定輝度差Bmesを検出する。すなわち、測光素子440の各測光セルEfで得られた測光値(最大・最小の輝度値Bmax、Bmin)に基づいて、撮影シーンの輝度差を検知する。この場合、測光素子440において39個の小セルEfの測光データから測定輝度差Bmesを検出しても良いし、大セルEgを含めた全測光セルEf、Egの測光データから測定輝度差Bmesを検出しても良い。
【0137】
ステップST53では、測光素子440において測光値が測光限界輝度以上の測光セル(小セル)Efの数をカウントする。すなわち、39個の小セルEfのうち測光値が測光限界輝度(閾値)以上となる小セルEfの数を検知する。
【0138】
ステップST54では、ステップST53での検知結果から、測光限界輝度未満の測光セル(小セル)Efがあるかを判定する。すなわち、測光値が測光限界輝度未満となる小セルEfが1個以上あるか否かを判断する。ここで、測光限界輝度未満の小セルEfが検知される場合には、被写体が低輝度であるとしてステップST55に進む。一方、測光限界輝度未満の小セルEfが検知されない場合には、本フローを抜ける。この場合には、被写体が低輝度でないと判断できるため、測光素子440で検出される測光値の信頼性は低くないとして、ステップST52で検出された測定輝度値Bmesを被写体の最終輝度値Bconとして設定する。
【0139】
ステップST55では、図16のグラフを参照し、ステップST53で得られた測光限界輝度以上の測光セルEfの数に応じた測定輝度差Bmesと規定輝度差Bsetとのブレンド率α、βを決定する。
【0140】
ステップST56では、ステップST55で決定されたブレンド率α、βを、上記の式(10)に代入して被写体の最終輝度差Bconを算出する。そして、この算出された最終輝度差Bconは上記の式(6)における被写体の輝度差(Bmax−Bmin)に代入されることで、適切な露光段差ΔBが得られることとなる。
【0141】
以上のステップST54〜ST56においては、ステップST53で得られた検知結果に基づき測光値が測光限界輝度未満となる測光セルEfがある場合には、ステップST53で検知された測光限界輝度以上の測光セルEfの数に応じて設定されるブレンド率(重み付け係数)α、βにより、ステップST52で検出された測定輝度差(被写体に係る輝度の差)Bmesと予め定められた規定輝度差(所定の輝度差)Bsetとに関する上式(10)の重み付け演算を行い、この演算結果を最終輝度差(被写体に係る輝度差)Bconに設定する。これにより、低輝度の被写体を測光素子440で測光する場合にも、被写体の輝度差を精度良く導出することが可能となる。
【0142】
そして、ステップST56にて被写体の輝度差(Bmax−Bmin)として設定された最終輝度差Bconに係数kを乗算して得られた値に相当する露光段差ΔB(上式(6)参照)を有した露出制御値の範囲が設定されることにより、この露出制御値の範囲内に設定される各露出値による複数の撮像を行って合成画像を生成すれば、ダイナミックレンジが適切に拡張された合成画像を生成できることとなる。
【0143】
以上説明した撮像装置1Gでは、測光素子440の精度不足が生じる低輝度シーンにおいて測光値が測光限界輝度以上となる測光セルEfの数をカウントし、この測光セルEfの数に応じて上記の式(10)における測定輝度差Bmesと規定輝度差Bsetとのブレンド比率α、βを設定するため、信頼性の高い最終輝度差Bconを算出できる。その結果、合成画像を生成するための複数回の撮像において適切な露出制御値の設定が可能となる。
【0144】
<第8実施形態>
本発明の第8実施形態に係る撮像装置1Hについては、第7実施形態の撮像装置1Gと類似の構成を有しているが、全体制御部の構成が異なっている。
【0145】
すなわち、第8実施形態の全体制御部101Hは、そのROMに後述する撮像装置1Gの動作を実行するプログラムが格納されている。
【0146】
[測光素子440を用いた被写体の輝度差の検出について]
撮像装置1Hでは、測光限界輝度以上の測光セル(小セル)Efの数に応じて決定される上述のブレンド率α、βに加えて、撮影シーンの絶対輝度(以下では「シーン絶対輝度」とも称する)をも考慮したブレンド率の決定を行うことで、より細かなブレンド率の制御が可能となっている。ここで、シーン絶対輝度としては、例えば測光素子440の各測光セルEf、Egで得られる測光値の平均、つまり被写体の平均輝度が用いられる。
【0147】
次に、被写体の最終輝度差を算出する手法を具体的に説明する。本実施形態において被写体の最終輝度差Bconは、測定輝度差をBmes、規定輝度差をBsetとして次の式(11)を用い重み付け平均演算が行われたブレンド率γを次の式(12)に代入することで算出される。
【0148】
γ=p×α+(1−p)×β ・・・・・・・(11):
Bcon=γ×Bmes+(1−γ)×Bset ・・・・・・・(12):
上式(11)における係数pおよび(1−p)は、図18に示すグラフに従って変化する係数である。この図18のグラフにおいて、横軸は撮影シーンの絶対輝度を示し、縦軸は上式(11)における係数pを示している。
【0149】
図18に示すグラフのように、上式(11)においてブレンド率α、βの重み付け平均演算に用いる係数pは、シーン絶対輝度が低輝度の範囲Blwに属する場合には0%、高輝度の範囲Bhgに属する場合には100%に固定される。そして、これらの中間的な輝度範囲Bmdにシーン絶対輝度が属する場合には、シーン絶対輝度に比例して係数pを変化させるようにしている。これにより、撮像装置1Hでは、撮影シーンの絶対輝度をも配慮して測定輝度差Bmesと規定輝度差Bsetとに関するブレンド率γ、(1−γ)を決定できるため、より的確なブレンド率γの設定が可能となり、最適な被写体の最終輝度差Bconを算出できることとなる。
【0150】
このような撮像装置1Hの具体的な動作を、以下で説明する。
【0151】
[撮像装置1Hの動作]
図19は、撮像装置1Hの基本的な動作を示すフローチャートである。この動作については、特に測光素子440を用いて被写体の輝度差を検出する動作を示しており、全体制御部101Hによって実行される。
【0152】
ステップST61では、図17に示すフローチャートのステップST51と同様に、測光素子440を用いて被写体に係る撮影シーンの輝度分布を解析する。
【0153】
ステップST62では、撮影シーンの絶対輝度を検出する。例えば、シーン絶対輝度として、測光素子440の各測光セルEf、Egで得られた測光値の平均値が求められる。
【0154】
ステップST63〜ST65では、図17に示すフローチャートのステップST52〜ST54と同様の動作を行う。
【0155】
ステップST66では、ステップST64で検知された測光限界輝度以上の測光セルEfの数に応じた測定輝度差Bmesと規定輝度差Bsetとのブレンド率α、βを図16のグラフを参照して決定するとともに、ステップST62で検出された撮影シーンの絶対輝度に応じた係数pを図18のグラフを参照して決定し、これらのブレンド率α、βおよび係数pを上記の式(11)に代入してブレンド率γを算出する。
【0156】
ステップST67では、ステップST66で決定されたブレンド率γを、上記の式(12)に代入して被写体の最終輝度差Bconを算出する。このように上式(12)の重み付け演算において、ステップST64で検知される測光限界輝度以上の測光セルEfの数と、ステップST62で検知されるシーン絶対輝度(被写体の輝度値)とに応じたブレンド率(重み付け係数)γが設定されることで、ブレンド率γを一層細かく制御することが可能となり、測光素子440による低輝度被写体の測光時にも、その輝度差を精度良く良好に導出できることとなる。
【0157】
以上で説明した撮像装置1Hにおいては、第7実施形態と同様の効果を奏する。さらに、撮像装置1Hでは、上記の式(11)および図18のように測光限界輝度以上の測光セルEfの数に加え、シーン絶対輝度にも基づいてブレンド率γが設定されるため、合成画像を生成するための複数回の撮像において、より適切な露出制御を行える。
【0158】
なお、撮像装置1Hにおいては、上式(11)の重み付け演算で用いる係数pを図18のグラフのようにシーン絶対輝度に応じて変化させてブレンド率γを算出するのは必須でなく、シーン絶対輝度によらず例えば0.5などに係数pを固定して単純平均を求めることでブレンド率γを算出するようにしても良い。
【0159】
<変形例>
上記の実施形態においては、上記の式(1)、(2)、(6)に表される係数kを例えば0.5に固定的に設定するのは必須でなく、被写体の輝度差や最大・最小の輝度値Bmax、Bminに応じて係数kを0〜1の範囲内で変化させるようにしても良い。
【0160】
上記の実施形態においては、最大の輝度値Bmaxと最小の輝度値Bminとの差を被写体の輝度差として検出するのは必須でなく、高輝度平均(例えば最大の輝度値Bmaxから低輝度方向への所定幅(全画素数のβ%)における平均値)と低輝度平均(例えば最小の輝度値Bminから高輝度方向への所定幅(全画素数のβ%)における平均値)との差を被写体の輝度差として検出するようにしても良い。
【0161】
上記の第7・第8実施形態においては、図14に示す測光素子440のように測光範囲Euの分割数を40にするのは必須でなく、39以下や41以上に設定しても良い。
【0162】
本発明は詳細に説明されたが、以上の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0163】
1A〜1H 撮像装置
2 カメラ本体部
3 交換レンズ
5 撮像素子
44、440 測光素子
45 測光部
50 画像処理部
57 記録画像生成部
58 位置合わせ部
59 画像合成部
101A〜101H 全体制御部
102 露出制御部
103 AF制御部
104 撮像制御部
Bcnt 適正な露出制御値
Bmin 最小の輝度値
Bmax 最大の輝度値
Bovr 暗部基準の露出制御値
Budr 明部基準の露出制御値
Ef 測光セル(小セル)
Eg 測光セル(大セル)
Et、Eu 測光範囲
Gc 合成画像
HG 輝度ヒストグラム
Lp プログラムライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絞り機構を有する撮影光学系を通った被写体光を受光して被写体に係る撮像画像を生成する撮像手段と、
所定の測光範囲を測光して前記被写体の輝度情報を取得する輝度情報取得手段と、
前記輝度情報取得手段で取得される高輝度情報と低輝度情報とに基づき、前記被写体に係る輝度差を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出される輝度差に所定の係数k(ただし0<k<1)を乗算して得られた値に相当する段差を有した露出制御値の範囲を設定し、前記撮像手段を用いて前記露出制御値の範囲内で異なる各露出制御値に設定された複数回の撮像を行う撮像制御手段と、
前記複数回の撮像により前記撮像手段で得られた複数の撮像画像から抽出される画像部分を合成し、合成画像を生成する画像合成手段と、
を備えており、
前記露出制御値の範囲内には、前記複数回の撮像が1回の撮像であった場合に当該1回の撮影で設定される1の露出制御値が含まれる撮像装置。
【請求項2】
前記1の露出制御値は、前記輝度情報取得手段で取得された輝度情報に基づき所定の露出演算により算出される適正露出値であり、
前記撮像制御手段は、
前記撮像手段に係る露光時間と前記絞り機構に係る絞り値との関係が規定されたプログラム線図から前記1の露出制御値に応じた絞り値を求め、当該絞り値を前記複数回の撮像で固定的に保持される基準の絞り値として設定する絞り値設定手段と、
前記各露出制御値と前記基準の絞り値とに基づき、前記複数回の撮像においての各露光時間を設定する露光時間設定手段と、
を有する請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
操作入力を受け付ける入力手段と、
前記入力手段に対する操作入力に基づき、前記絞り機構に係る絞り値を指定する指定手段と、
をさらに備え、
前記撮像制御手段は、
前記指定手段で指定される絞り値を、前記複数回の撮像で固定的に保持される基準の絞り値として設定する絞り値設定手段と、
前記各露出制御値と前記基準の絞り値とに基づき、前記複数回の撮像においての各露光時間を設定する露光時間設定手段と、
を有する請求項1記載の撮像装置。
【請求項4】
操作入力を受け付ける入力手段と、
前記入力手段に対する操作入力に基づき、前記撮像手段に係る露光時間を指定する指定手段と、
をさらに備え、
前記撮像制御手段は、
前記各露出制御値のうち最も明るい撮像画像が得られる露出制御値において前記指定手段で指定される露光時間に応じた絞り値を求め、当該絞り値を前記複数回の撮像で固定的に保持される基準の絞り値として設定する絞り値設定手段と、
前記各露出制御値と前記基準の絞り値とに基づき、前記複数回の撮像においての各露光時間を設定する露光時間設定手段と、
を有する請求項1記載の撮像装置。
【請求項5】
操作入力を受け付ける入力手段と、
前記入力手段に対する操作入力に基づき、前記絞り機構に係る絞り値と前記撮像手段に係る露光時間とを指定する指定手段と、
をさらに備え、
前記撮像制御手段は、
前記指定手段で指定される絞り値と露光時間とから得られた露出制御値を、前記各露出制御値のうち最も明るい撮像画像が得られる露出制御値に設定する手段と、
前記指定手段で指定される絞り値を、前記複数回の撮像で固定的に保持される基準の絞り値として設定する絞り値設定手段と、
前記各露出制御値と前記基準の絞り値とに基づき、前記複数回の撮像においての各露光時間を設定する露光時間設定手段と、
を有する請求項1記載の撮像装置。
【請求項6】
前記輝度情報取得手段は、
前記所定の測光範囲のうちの特定のスポット領域を重点的に測光するスポット測光手段、
を有し、
前記撮像制御手段は、
前記スポット測光手段で取得された輝度情報に基づき所定の露出演算により算出される適正露出値を前記1の露出制御値として設定する手段、
を有する請求項1記載の撮像装置。
【請求項7】
前記複数回の撮像は、3回以上の撮像であり、
前記3回以上の撮像には、前記輝度情報取得手段で取得された輝度情報に基づき所定の露出演算により算出される適正露出値での撮像が含まれる請求項1記載の撮像装置。
【請求項8】
前記輝度情報取得手段は、
前記所定の測光範囲を分割して測光する所定数の測光セルを備え、前記被写体の輝度情報として前記所定数の測光セルそれぞれから測光値の出力が可能な測光手段、
を有するとともに、
前記検出手段は、
前記測光手段で得られる被写体の輝度情報に基づき、前記被写体に係る輝度の差を検知する輝度差検知手段と、
前記所定数の測光セルのうち前記測光値が所定の閾値以上となる測光セルの数を検知するセル数検知手段と、
前記セル数検知手段の検知結果に基づき前記測光値が前記所定の閾値未満となる測光セルがある場合には、前記セル数検知手段で検知される前記測光セルの数に応じて設定される重み付け係数により、前記輝度差検知手段で検知される前記輝度の差と所定の輝度差とに関する重み付け演算を行い、当該重み付け演算の結果を前記被写体に係る輝度差に設定する輝度差設定手段と、
を有し、
前記撮像制御手段では、前記輝度差設定手段で設定された輝度差に前記所定の係数kを乗算して得られた値に相当する段差を有した露出制御値の範囲が設定される請求項1記載の撮像装置。
【請求項9】
前記重み付け演算では、前記セル数検知手段で検知される前記測光セルの数が多いほど前記輝度差検知手段で検知される輝度の差の、前記所定の輝度差に対する重み付けを増加させる一方、前記セル数検知手段で検知される前記測光セルの数が少ないほど前記輝度差検知手段で検知される輝度の差の、前記所定の輝度差に対する重み付けを減少させる請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記重み付け演算では、前記セル数検知手段で検知される前記測光セルの数と、前記測光手段で得られる被写体の輝度値とに応じた重み付け係数が設定される請求項8に記載の撮像装置。
【請求項11】
所定の測光範囲を測光して被写体の輝度情報を取得する輝度情報取得手段で得られる高輝度情報と低輝度情報とに基づき、前記被写体に係る輝度差を検出する検出工程と、
前記検出工程で検出される輝度差に所定の係数k(ただし0<k<1)を乗算して得られた値に相当する段差を有した露出制御値の範囲を設定し、絞り機構を有する撮影光学系を通った被写体光を受光して被写体に係る撮像画像を生成する撮像手段を用いて前記露出制御値の範囲内で異なる各露出制御値に設定された複数回の撮像を行う撮像制御工程と、
を備えており、
前記複数回の撮像により前記撮像手段で得られた複数の撮像画像から抽出される画像部分を合成し、合成画像が生成されるとともに、
前記露出制御値の範囲内には、前記複数回の撮像が1回の撮像であった場合に当該1回の撮影で設定される1の露出制御値が含まれる撮像制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−15380(P2011−15380A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176202(P2009−176202)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】