説明

撮像装置及びその制御方法

【課題】 動画の撮影を開始している状態から高画質な静止画を撮影しようとした場合には絞りを変更する必要があるが、所定の絞り位置まで絞りを動かすためにはある程度の時間がかかってしまい、撮影レスポンスを低下させてしまう。
【解決手段】 動画撮影時に静止画撮影に切り替えるように指示されると、動画撮影中の少なくとも絞り、シャッタ速度と、被写体の輝度、動作撮影時と静止画撮影時の感度とに基づいて静止画撮影用の露出値Evを決定し(S204)、その露出値Evと、静止画撮影用の絞りの変化量Av1とに基づいて静止画撮影用のシャッタ速度Tv1を決定し(S206)、そのシャッタ速度Tv1と静止画撮影用の絞りの変化量Av1とに基づいて、動画撮影から静止画撮影に切り替える経過時間TimeSum1を算出し、その経過時間が最小となる(S210)静止画撮影用の絞り及びシャッタ速度に基づいて静止画撮影を実行する(S214〜S218)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静止画及び動画の撮影が可能な撮像装置とその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、静止画撮影はデジタルスチルカメラで、動画撮影はビデオカメラで行うというように製品ごとに撮影するカテゴリーが分かれていた。しかし最近は、デジタルスチルカメラで動画撮影ができるものや、ビデオカメラで静止画撮影ができるものが市販されている。このような静止画撮影及び動画撮影機能を搭載し、撮像素子を一つしか持たない製品において、既に動画撮影を開始している状態で静止画を撮影しようとする場合は、一旦、動画撮影を中断して静止画を撮影した後、再び動画撮影を開始することになる。これは、高解像度が要求される静止画撮影と、解像度よりもフレームレートが要求される動画撮影では、CCDやCMOSといった撮像素子の駆動方法が全く異なるためである。従って、静止画撮影と動画撮影を同時に行うことができず、静止画撮影と動画撮影とで撮像素子を排他的に使用しなければならない。このように動画撮影を中断して静止画を撮影する場合、動画撮影の中断時間が極力短く、かつレスポンス良く、高画質な静止画が得られることが望ましい。特許文献1には、動画の撮影中に静止画の撮影に切り替えることができるカメラにおいて、静止画の撮影の時は動画の撮影時に設定された絞りを全閉にして遮光し、動画の撮影時には絞り値を小さく(開口を大きく)することで、静止画の撮影時の露光時間を短くすることが記載されている。
【特許文献1】特開平9−51481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし同一被写体を撮影する際、動画の撮影と静止画の撮影では最適な露出条件が異なってくる。例えば動画の撮影の場合、スミア現象による画質低下を嫌って絞りを絞ったほうが良い場合であっても、静止画の撮影では絞りを絞ることによる回折や、シャッタ速度の低下による手ブレを防ぐために、絞りを開くようにしたほうが良い場合がある。このような条件で、既に動画の撮影を開始している状態から高画質な静止画を撮影しようとした場合には絞りを変更する必要があるが、所定の絞り位置まで絞りを動かすためにはある程度の時間がかかってしまい、撮影レスポンスを低下させてしまう。かといって、絞りを動かさない場合、前述したように、撮影した静止画の画質の低下を招き、更にシャッタ速度の低下により、動画の撮影の中断時間が長くなるという問題が発生する。
【0004】
本発明の目的は、上記従来技術の欠点を解決することにある。
【0005】
本発明の特徴は、動画撮影状態からの静止画撮影において、静止画撮影にかかる時間を短くし、動画撮影の中断時間が極力長くならないようにする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記特徴は、独立クレームに記載の特徴の組み合わせにより達成され、従属項は発明の単なる有利な具体例を規定するものである。
【0007】
本発明の一態様に係る撮像装置は以下のような構成を備える。即ち、
撮像素子と、
絞り機構により前記撮像素子への露光量を制御する露光量制御手段と、
シャッタ機構により前記撮像素子への露光時間を制御する露光時間制御手段と、
撮像素子から読み出したデータから輝度情報を抽出する輝度情報抽出手段と、
動画撮影時に静止画撮影に切り替えるように指示する指示手段と、
前記指示手段による指示に応答して、動画撮影中の少なくとも絞り、シャッタ速度と、被写体の前記輝度情報とに基づいて静止画撮影用の露出値を決定する露出決定手段と、
前記露出決定手段により決定された前記静止画撮影用の露出値と、前記静止画撮影用の絞りの変化量とに基づいて静止画撮影用のシャッタ速度を決定するシャッタ速度決定手段と、
前記シャッタ速度決定手段により決定されたシャッタ速度と前記静止画撮影用の絞りの変化量との和に基づく経過時間を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された前記経過時間が所定の条件を満たす前記静止画撮影用の絞り及びシャッタ速度に基づいて前記露光量制御手段及び前記露光時間制御手段を制御して静止画撮影を実行するように制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の別の一態様に係る撮像装置は以下のような構成を備える。即ち、
撮像素子と、
絞り機構により前記撮像素子への露光量を制御する露光量制御手段と、
シャッタ機構により前記撮像素子への露光時間を制御する露光時間制御手段と、
撮像素子から読み出したデータから輝度情報を抽出する輝度情報抽出手段と、
動画撮影時に静止画撮影に切り替え、再び動画撮影に切り替えるように指示する指示手段と、
前記指示手段による指示に応答して、動画撮影中の少なくとも絞り、シャッタ速度と、被写体の前記輝度情報とに基づいて静止画撮影用の露出値を決定する露出決定手段と、
前記露出決定手段により決定された前記静止画撮影用の露出値と、前記静止画撮影用の絞りの変化量とに基づいて静止画撮影用のシャッタ速度を決定するシャッタ速度決定手段と、
前記シャッタ速度決定手段により決定されたシャッタ速度と前記静止画撮影用の絞りの変化量との和に基づく経過時間を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された前記経過時間が所定の条件を満たす前記静止画撮影用の絞り及びシャッタ速度に基づいて前記露光量制御手段及び前記露光時間制御手段を制御して静止画撮影を実行した後、動画撮影を実行するように制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る撮像装置の制御方法は以下のような工程を備える。即ち、
撮像素子と、絞り機構により前記撮像素子への露光量を制御する露光量制御手段と、シャッタ機構により前記撮像素子への露光時間を制御する露光時間制御手段と、撮像素子から読み出したデータから輝度情報を抽出する輝度情報抽出手段とを有する撮像装置の制御方法であって、
動画撮影時に静止画撮影に切り替えるように指示する指示工程と、
前記指示工程による指示に応答して、動画撮影中の少なくとも絞り、シャッタ速度と、被写体の輝度情報とに基づいて静止画撮影用の露出値を決定する露出決定工程と、
前記露出決定工程で決定された前記静止画撮影用の露出値と、前記静止画撮影用の絞りの変化量とに基づいて静止画撮影用のシャッタ速度を決定するシャッタ速度決定工程と、
前記シャッタ速度決定工程で決定されたシャッタ速度と前記静止画撮影用の絞りの変化量との和に基づく経過時間を算出する算出工程と、
前記算出工程で算出された前記経過時間が所定の条件を満たす前記静止画撮影用の絞り及びシャッタ速度に基づいて前記露光量制御工程及び前記露光時間制御工程を制御して静止画撮影を実行するように制御する制御工程とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明の別の一態様に係る撮像装置の制御方法は以下のような工程を備える。即ち、
撮像素子と、絞り機構により前記撮像素子への露光量を制御する露光量制御手段と、シャッタ機構により前記撮像素子への露光時間を制御する露光時間制御手段と、撮像素子から読み出したデータから輝度情報を抽出する輝度情報抽出手段とを有する撮像装置の制御方法であって、
動画撮影時に静止画撮影に切り替え、再び動画撮影に切り替えるように指示する指示工程と、
前記指示工程による指示に応答して、動画撮影中の少なくとも絞り、シャッタ速度と、被写体の輝度情報とに基づいて静止画撮影用の露出値を決定する露出決定工程と、
前記露出決定工程で決定された前記静止画撮影用の露出値と、前記静止画撮影用の絞りの変化量とに基づいて静止画撮影用のシャッタ速度を決定するシャッタ速度決定工程と、
前記シャッタ速度決定工程で決定されたシャッタ速度と前記静止画撮影用の絞りの変化量との和に基づく経過時間を算出する算出工程と、
前記算出工程で算出された前記経過時間が所定の条件を満たす前記静止画撮影用の絞り及びシャッタ速度に基づいて前記露光量制御工程及び前記露光時間制御工程を制御して静止画撮影を実行した後、動画撮影を実行するように制御する制御工程とを有することを特徴とする。
【0011】
尚、この発明の概要は、本発明に必要な特徴を全て列挙しているものでなく、よって、これら特徴群のサブコンビネーションも発明になり得る。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、動画の撮影状態から静止画の撮影に切り替える際、静止画の撮影準備に要する時間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳しく説明する。尚、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また本実施の形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る撮像装置(カメラ)の全体構成を説明するブロック図である。
【0015】
図において、レンズ10により外光を集光する。図1では、このレンズ10は1枚として表現しているが、複数枚のレンズから構成されたレンズユニットを搭載することも可能である。また、このレンズ10を光軸に沿って前後に動かすことで焦点を調節したり、画角を調節することも可能である。このレンズ10を通過した光は絞り12により、その光量が調節される。システム制御部100は、絞り制御情報を絞り駆動回路24に伝達することで、絞り12の絞り量を制御している。システム制御部100は、CPU1001、CPU1001により実行されるプログラム(図2,図3のフローチャート)や各種データを記憶しているROM1002、CPU1001による処理時に各種データを一時的に保存するRAM1003を備えている。このシステム制御部100から絞り駆動回路24への制御情報の伝達は、シリアル通信やパルス信号などがあり、絞り駆動回路24の仕様に合わせた信号の送受信形態が採用される。絞り12は、複数枚の羽から構成された虹彩絞りや、予め板を様々な径で穴を打ち抜いた丸絞りがある。システム制御部100は、これらの絞り12と絞り駆動回路24を用い、被写体の輝度が高い場合は絞り12を絞って入射する光量を落とすように制御し、被写体の輝度が低い場合は絞り12を開放にして、入射する光量を多くするように制御する。またシステム制御部100は、シャッタ制御情報をシャッタ駆動回路25に伝達することで、シャッタ11を制御する。静止画の撮影時の露光時間は、このシャッタ11の開閉時間により決定される。この開閉時間はシステム制御部100が最適な時間を判断し、シャッタ駆動回路25に指示を出すことにより決定される。
【0016】
レンズ10、シャッタ11、絞り12を通過した光は撮像素子14に受光される。ここでは、撮像素子14をCCD(Charge Coupled Devices)センサとしているが、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサを搭載しても良い。システム制御部100は、撮像素子の制御信号をタイミング発生器(TG:Timing Generator)22に伝達することで、撮像素子14を制御している。システム制御部100からTG22への制御情報の伝達は、シリアル通信やパラレルバス通信などがあり、TG22の仕様に合わせて決定される。TG22は、システム制御部100から受信した制御情報に基づいて撮像素子14を駆動している。撮像素子14は素子への露光と、露光したデータの読み出し作業を周期的に行っており、この作業はTG22からの駆動信号を基準にして行われる。またTG22は、撮像素子14の露光時間を制御することが可能である。任意のタイミングで、素子14がチャージした電荷を解放するように、TG22から撮像素子14へ駆動信号を出力することで、これを可能としている。
【0017】
こうして撮像素子14から出力された画像信号は、CDS(Correlated Double Sampler)回路16を通過する。このCDS回路16は、相関二重サンプリング方式により画像信号に含まれるノイズ成分を除去することを主な役割とする。その後、画像信号はPGA(Programmable Gain Amplifier)回路18により、その信号レベルが増幅される。システム制御部100は、この増幅レベルをPGA回路18に伝達することで、その増幅量を制御している。システム制御部100からPGA回路18への制御情報の伝達は、シリアル通信やパラレルバス通信などがあり、PGA回路18の仕様に合わせて決定される。
【0018】
通常、撮像素子14の露出を適正するには、絞り12で撮像素子14への露光量を適切に設定すると共に、TG22により撮像素子14の露光時間を適切に設定することで実現される。これと共に、PGA回路18で画像信号を増幅することにより、擬似的に画像の露出を変えることができる。例えば、被写体の輝度が極端に低い暗中の場合、絞り12を開放にして露光量が最大になるようにし、撮像素子14の露光時間を可能な限り延ばすことで、より多くの光を受光するように制御する。しかし、絞り12はある一定以上は開放できないといった機構上の制約があり、また、撮像素子14の露光時間を延ばしていくと、画像信号の更新周期が長くなるといった実用上の限界がある。この場合、画像信号の信号レベルが低くなり、露出不足として暗い画像が撮影されてしまう。この現象を改善する方法として、PGA回路18で画像信号のレベルを増幅し、画像の露出が適正になるように制御する。
【0019】
この後、画像信号はA/D(Analog/Digital Converter)回路20にてアナログ信号からデジタル信号へ変換される。カメラの種類に応じて、このデジタル信号のビット幅は10ビット、12ビット、14ビット等があり、後段の信号処理回路200は、複数種類のビット幅の画像データに対応可能である。
【0020】
尚、図1では、CDS回路14、PGA回路18、A/D回路20をそれぞれ別のブロックとして表現しているが、一つのICパッケージにこれらの機能を搭載したものを採用することも可能である。
【0021】
こうしてデジタル化された画像データは、信号処理回路200へ入力される。信号処理回路200は、主に画質を向上させることを目的とし、様々な画像処理ブロックから構成させる。その中に画像データから輝度情報Yを抽出するY分離ブロック202がある。撮像素子14は、その素子の前面に赤(R)、緑(G)及び青(B)、或はイエロー(Y),マゼンタ(M)、シアン(C)、緑(G)の色のカラーフィルタが張られており、一画素一画素が各色でフィルタリングされる。Y分離ブロック202は、これら各画素データから色情報を排除し、輝度情報Yのみを抽出する。こうして抽出された輝度情報Yは、システム制御部100から参照することができ、撮像素子14の露出を適正にするための処理のための情報として利用される。
【0022】
Y分離ブロック202では、輝度情報Yを抽出する際、画像を複数のエリアに分割し、それぞれのエリアごとに輝度情報を抽出している。
【0023】
図5〜図7は、その輝度情報の抽出の概念図である。
【0024】
図5は、画像全体を縦横それぞれ10エリアからなる計100エリアに分割し、背後が暗く、人物が明るい被写体を撮影した画像の輝度分布を示している。図5から、背後の輝度レベルが低く、人物の輝度レベルが高い様子が分かる。
【0025】
図6は、図5の輝度情報に対して重み付けを行った様子を示している。この図6では画像のほぼ中央部に対して最も大きな重み付けを行っている。
【0026】
カメラでは撮影用途に応じて様々な測光方式を提供しており、撮影対象の画像のどの部分のどのくらいの範囲で輝度を測定するのか、モードで選択できるようになっている。このモードは、操作部34のスイッチを操作することで、ユーザが任意のモードを選択できるようになっている。
【0027】
図7は、図5の輝度分布に対して図6に示す重み付けを行った後の輝度分布を示す図である。
【0028】
図5の人物の輝度分布に対し、図6のように画面中心に重みを置いた重み付けデータを掛け合わせると、人物の顔付近のエリアに、より重点を置いたものになることが分かる。この図7の重み付け後の輝度分布を画像全体で平均化し、こうして被写体輝度Yを算出する。
【0029】
尚、これら図5、図6及び図7では、画像全体を10×10=100のエリアに分割した場合を示したが、分割エリアのサイズや分割数はこの限りではなく、任意に選択することが可能である。
【0030】
こうして信号処理回路200で画像処理を行った画像データを、LCDなどの画像表示部32に出力する場合、その画像データをD/A変換器(D/A)30でアナログデータに変換する。尚、図1では、カメラ本体に搭載している画像表示部32へ表示しているが、ビデオ出力端子を搭載し、テレビなどの外部モニタとケーブル接続することで、画像をその外部モニタに表示出力することも可能である。また、この信号処理回路200で画像処理を行った画像データを、不揮発性メモリや磁気テープといった画像記憶媒体28へ記録することもできる。この画像記憶媒体28は、画像記憶媒体I/F26を介して着脱可能な形態にすることも可能である。
【0031】
操作部34は、電源オン/オフスイッチ、撮影開始/終了スイッチ、測光モード選択スイッチ、撮影モード選択スイッチ、再生モード選択スイッチ等を有し、ユーザがこれらスイッチを操作することで、システム制御部100に情報を伝達できる。尚、撮影開始/終了スイッチは、静止画用のスイッチと、動画用のスイッチとをそれぞれ別々に用意することができ、動画の撮影中であっても静止画の撮影を開始することができる。
【0032】
図1に示したカメラにおいて、動画の撮影中のコンティニュアスAE(AE:AutoExposureControl)を実現するためのシステム制御部100の処理を説明する。
【0033】
図2は、本実施の形態に係るカメラのシステム制御部100による制御処理を説明するフローチャートで、この処理を実行するプログラムはROM1002に記憶されており、CPU1001の制御の下に実行される。
【0034】
このフローチャートでは、プログラム線図(図4)で、実線400で示した「動画線図」上を辿ることを前提としている。このプログラム線図は、横軸をシャッタ速度Tv、縦軸を絞りAvとゲインΔGain、斜軸を露出値Evで表わしている。露出値Evと絞りAv、シャッタ速度Tv、ゲインΔGainの関係は、
Ev=Av+Tv−ΔGain ...式(1)
で表される。
【0035】
各露出値Evに対して取り得る絞りAv,シャッタ速度Tv,ゲインΔGainの組み合わせを予め決めて表現したのがプログラム線図である。
【0036】
また感度Sv、輝度Bvと露出値Evの関係は、
Sv+Bv=Ev ...式(2)
で表現される。
【0037】
一般的に、撮像素子(CCD)14は、様々な駆動モードを提供しており、各画素で蓄積したデータを1画素単位で出力するモードや、RGBの各同色画素同士を撮像素子14で足し合わせて出力するモードがある。このときこの画素加算の有無により、前者のモードと後者のモードではデータのレベルが異なってくるが、これを感度Svとして表現する。
【0038】
図4では、動画の撮影時の感度SvはSv=6、静止画撮影時の感度SvはSv=4で表している。これら感度の差により、同じ被写体輝度Bvであっても、動画撮影時と静止画撮影時とでは露出値Evが異なってくることが分かる。例えば輝度Bv=5の場合、動画の撮影時は露出値Ev=11であるが、静止画の撮影時はEv=9となる。図4で白丸401で表している露出値(斜軸方向)は、動画の撮影中の(Bv=5)+(Sv=6)での適正露出である。この時、静止画の撮影時の適正露出値は、(Bv=5)+(Sv=4)で、斜軸方向の破線402で表した線上のいずれかのポイントを使用すれば良いことになる。尚、この図4に動画線図のデータは、例えばROM1002に記憶されている。
【0039】
図2のフローチャートにおいて、まずステップS102で、露出値の初期値Evを決定し、このEvで図4のプログラム線図を引く。次にステップS104で、初期値Evとプログラム線図から、目標とする絞りAv,シャッタ速度Tv,ゲインΔGainを求める。仮に露出初期値Ev=10とすると、図4の動画線図から(Av=5,Tv=5,ΔGain=0)のポイントが導かれる。このステップS104で求めた目標値(Av=5,Tv=5,ΔGain=0)でもって、これ以降のステップで各デバイスを制御する(ステップS106,S108,S110)。
【0040】
こうしてデバイス制御が完了して露出が確定するとステップS112に進み、被写体の輝度Yを取得する。ここでコンティニュアスAEはフィードバック制御であり、目標とする輝度YRefとの差分を「0」に近づけていく。このため、まずステップS114で、被写体輝度Yと基準(目標)とする被写体輝度YRefとの差分ΔBv0を算出する。次にステップS116で、絞りAv、シャッタ速度Tv、ゲインΔGainの分解能によっては、差分ΔBv0を「0」にするのは困難なため、差分ΔBv0が、所定の範囲内にあるかどうかを判定し、所定範囲内にあればフィードバック制御が収束したと判断する。この所定範囲は、絞りAv、シャッタ 速度Tv、ゲインΔGainの分解能を踏まえて決定するが、これを動的に決定することも可能である。
【0041】
例えばシャッタ11は、デバイスの性格上、高速シャッタになるほど分解能が低下し、1ステップでの変化量が大きくなる。これは1ステップだけシャッタ速度Tvを変化させると、差分ΔBv0の変化量も大きくなることを意味している。よって、高速シャッタになるほど収束範囲(前述の所定範囲)を広げるなどの方法をとる。ステップS116で、差分ΔBv0が所定範囲外の場合は、まだ収束していないと判断してステップS120に進み、次のフィードバックループに進み、この差分ΔBv0に、あるフィードバックゲインをかけることで収束速度(時定数)をコントロールする。ここでは単純に、差分ΔBv0にフィードバックゲインをかけて、新たな差分ΔBv1を求める方法をとっている。しかし、これ以外にも、前回の差分ΔBv0との変化量を考慮する微分制御や、これまでの差分ΔBv0を考慮する積分制御を組み込むことも可能である。そしてステップS122で、先にステップS106,S108,S110で取得した絞りAv、シャッタ速度Tv、ゲイン値ΔGain(Av=5,Tv=5,ΔGain=0)と、ステップS120で求めた新たな差分ΔBv1とから、次の露出値Evを決定する。そして再びステップS104に進み、その露出値Evと図4のプログラム線図とから、絞りAv、シャッタ速度Tv、ゲイン値ΔGainを取得し、差分ΔBv0の収束に向けてループを形成する。
【0042】
一方ステップS116で、差分ΔBv0が収束範囲(所定範囲)内であった場合はそこで収束完了としてステップS118に進み、一定時間周期で監視を続ける状態に入る。即ち、ステップS118で一定時間待機した後、ステップS112で、被写体輝度Yを取得し、次にステップS114で差分ΔBv0を求め、ステップS116で、差分ΔBv0が所定範囲内に入っているかどうかチェックする。この監視ループで所定範囲外と判断されると、ステップS120以降のフィードバックループに進む。
【0043】
図3は、図2によるコンティニュアスAEを動作させて動画の撮影を行っている状態で、静止画の撮影を開始する場合の処理を説明するフローチャートで、この処理を実行するプログラムはROM1002に記憶されており、CPU1001の制御の下に実行される。
【0044】
まずステップS202で、現在の被写体輝度Bvを確定する。この被写体輝度Bvは、
Bv=実効絞り値Av+実効シャッタ速度Tv−実効ゲインΔGain−動画撮影中の感度SvMov(=6)+差分ΔBv0 ...式(3)
で求められる。ここで絞りAv,シャッタ速度Tv,ゲインΔGainの各実効値は、動画の撮影中に既に制御してある状態の値を使用する。ここでSvMovは、動画の撮影中の感度であり、ここでは図4において前述したようにSvMov=6とする。また差分ΔBv0は、動画の撮影中に実効Av、実効Tv、実効ΔGainで取得された適正輝度と、Y分離回路202で分離された輝度信号Yとの差分を用いる。尚、ここでカメラの仕様によっては、実効ゲインΔGainは省略しても良い。また動画の撮影時の実効シャッタ速度Tvは、静止画の撮影の場合のように、実際にシャッタ機構を動作させるのではなく、TG22によるCCD14の駆動、画像データの取り出しタイミングを変更することで実現している。
【0045】
次にステップS204で、静止画の撮影用の露出値Evを求める。これは以下の式(4)により求められる。
【0046】
Ev=Bv(被写体輝度)+SvCapt(静止画撮影時の感度) ...式(4)
ここでSvCaptは、静止画の撮影時の感度であり、ここでは図4で説明したようにSvCapt=Sv4とする。
【0047】
更に、このステップS204では、以下のステップで使用する各パラメータ値n、実効絞り値Av0、シャッタ速度Tv0(Tv0=Ev−Av0),TimeSum0(無限大)を設定する。次にステップS206で、これら露出値Evと、実効絞り値Av0(現在の絞りAv)をnステップ動かした絞り値Av1からシャッタ速度Tv1を下式(5)により求める。
【0048】
Tv1=Ev−Av1 ...式(5)
次にステップS208で、実効絞り値Av(現在の絞りAv)とnステップ動かした絞り値Av1とから、静止画の撮影のために動かさなければならない絞り量を求める。更に、その絞り量と、絞り駆動速度から絞り駆動時間を算出する。そしてシャッタ速度Tv1から露光時間を算出し、静止画の撮影のための切替に要する切替時間TimeSum1を下式(6)により求める。
【0049】
TimeSum1=絞り駆動時間+露光時間 ...式(6)
次にステップS210で、ステップS208で求めたTimeSum1とTimeSum0とを比較する。ここではTimeSum0は、初期値を無限大(∞)としているため、必ずTimeSum1のほうが小さくなる。この後ステップS212に進んでループ処理に入り、絞り12を動かす(nを加算する)ことで絞り駆動時間と露光時間の和の変化を監視し、最も時間の和が小さくなるポイントを探し出す。こうしてステップS210で、実効絞り値Avをnステップ動かしたことで、TimeSum1>TimeSum0となるとステップS214に進み、TimeSum0が最も時間の和が小さいと判断する。そして、このときの絞りAv0、シャッタ速度Tv0を、静止画の撮影用の絞り値、シャッタ速度として確定する。次にステップS216で、その確定した絞りAv0に絞り12を制御し、ステップS218で、静止画を撮影する。
【0050】
尚、静止画の撮影が終了した後、再び動画の撮影に移行する場合においても、上記のような設定を行うことにより、動画撮影時の絞り値に変更するまでの時間が最も短くなるようにできる。このときは上記の切替時間TimeSum1に代えて下式(7)により求まるTimeSum2を用いる。
【0051】
TimeSum2=絞り駆動時間+露光時間+絞り駆動時間 ...式(7)
また、静止画の撮影に切り替える直前の動画の撮影時における絞り、シャッタ速度等をシステム制御部100のメモリ(RAM1003)に記憶しておき、再び動画の撮影に移行する際に、その記憶している絞り、シャッタ速度等を読み出して絞り駆動回路24やシャッタ駆動制御に用いることにより、動画撮影時への復帰に要する時間を短縮できる。
【0052】
このように本実施の形態によれば、絞り駆動時間と露光時間の和が最も小さくなる絞りAv,シャッタ速度Tvを用いて静止画を撮影することにより、撮影タイムラグの短縮化、動画の中断時間の短縮化を実現することが可能となる。これにより、静止画の撮影においてシャッタチャンスを的確に捉えることができる。なお、絞り駆動時間と露光時間の和は必ずしも最小になるよう制御されるものではない。例えば絞り駆動時間と露光時間の和が所定値以下となる絞りAv,シャッタ速度Tvのいずれかを選択する構成であってもよい。
【0053】
更に、継続して動画撮影を行うというユーザの要求をバランスよく満たすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態に係る撮像装置(カメラ)の全体構成を説明するブロック図である。
【図2】本実施の形態に係るカメラのシステム制御部による制御処理を説明するフローチャートである。
【図3】図2によるコンティニュアスAEを動作させ動画撮影を行っている状態で、静止画を撮影する場合の処理を説明するフローチャートである。
【図4】露出値Evと絞りAv、シャッタ速度Tv、ゲインΔGainの関係を表したプログラム線図である。
【図5】画面全体を縦横それぞれ10エリアからなる計100エリアに分割し、背後が暗く、人物が明るい被写体を撮影した場合の輝度分布を示す図である。
【図6】図5の輝度情報に対して重み付けを行った様子を示す図である。
【図7】図5の輝度分布に対して図6に示す重み付けを行った後の輝度分布を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、
絞り機構により前記撮像素子への露光量を制御する露光量制御手段と、
シャッタ機構により前記撮像素子への露光時間を制御する露光時間制御手段と、
撮像素子から読み出したデータから輝度情報を抽出する輝度情報抽出手段と、
動画撮影時に静止画撮影に切り替えるように指示する指示手段と、
前記指示手段による指示に応答して、動画撮影中の少なくとも絞り、シャッタ速度と、被写体の前記輝度情報とに基づいて静止画撮影用の露出値を決定する露出決定手段と、
前記露出決定手段により決定された前記静止画撮影用の露出値と、前記静止画撮影用の絞りの変化量とに基づいて静止画撮影用のシャッタ速度を決定するシャッタ速度決定手段と、
前記シャッタ速度決定手段により決定されたシャッタ速度と前記静止画撮影用の絞りの変化量との和に基づく経過時間を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された前記経過時間が所定の条件を満たす前記静止画撮影用の絞り及びシャッタ速度に基づいて前記露光量制御手段及び前記露光時間制御手段を制御して静止画撮影を実行するように制御する制御手段と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
撮像素子と、
絞り機構により前記撮像素子への露光量を制御する露光量制御手段と、
シャッタ機構により前記撮像素子への露光時間を制御する露光時間制御手段と、
撮像素子から読み出したデータから輝度情報を抽出する輝度情報抽出手段と、
動画撮影時に静止画撮影に切り替え、再び動画撮影に切り替えるように指示する指示手段と、
前記指示手段による指示に応答して、動画撮影中の少なくとも絞り、シャッタ速度と、被写体の前記輝度情報とに基づいて静止画撮影用の露出値を決定する露出決定手段と、
前記露出決定手段により決定された前記静止画撮影用の露出値と、前記静止画撮影用の絞りの変化量とに基づいて静止画撮影用のシャッタ速度を決定するシャッタ速度決定手段と、
前記シャッタ速度決定手段により決定されたシャッタ速度と前記静止画撮影用の絞りの変化量との和に基づく経過時間を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された前記経過時間が所定の条件を満たす前記静止画撮影用の絞り及びシャッタ速度に基づいて前記露光量制御手段及び前記露光時間制御手段を制御して静止画撮影を実行した後、動画撮影を実行するように制御する制御手段と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
前記経過時間は、前記絞りの変化量に応じた前記絞り機構の駆動時間を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記経過時間は、前記シャッタ速度に応じて前記露光時間制御手段により制御される露光時間を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記露出決定手段は、絞りとシャッタ速度の加算値から露出値を引いて得られるゲインを更に用いて、前記静止画撮影用の露出値を決定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記所定の条件とは前記算出手段により算出された前記経過時間が最小となることであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
撮像素子と、絞り機構により前記撮像素子への露光量を制御する露光量制御手段と、シャッタ機構により前記撮像素子への露光時間を制御する露光時間制御手段と、撮像素子から読み出したデータから輝度情報を抽出する輝度情報抽出手段とを有する撮像装置の制御方法であって、
動画撮影時に静止画撮影に切り替えるように指示する指示工程と、
前記指示工程による指示に応答して、動画撮影中の少なくとも絞り、シャッタ速度と、被写体の輝度情報とに基づいて静止画撮影用の露出値を決定する露出決定工程と、
前記露出決定工程で決定された前記静止画撮影用の露出値と、前記静止画撮影用の絞りの変化量とに基づいて静止画撮影用のシャッタ速度を決定するシャッタ速度決定工程と、
前記シャッタ速度決定工程で決定されたシャッタ速度と前記静止画撮影用の絞りの変化量との和に基づく経過時間を算出する算出工程と、
前記算出工程で算出された前記経過時間が所定の条件を満たす前記静止画撮影用の絞り及びシャッタ速度に基づいて前記露光量制御工程及び前記露光時間制御工程を制御して静止画撮影を実行するように制御する制御工程と、
を有することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項8】
撮像素子と、絞り機構により前記撮像素子への露光量を制御する露光量制御手段と、シャッタ機構により前記撮像素子への露光時間を制御する露光時間制御手段と、撮像素子から読み出したデータから輝度情報を抽出する輝度情報抽出手段とを有する撮像装置の制御方法であって、
動画撮影時に静止画撮影に切り替え、再び動画撮影に切り替えるように指示する指示工程と、
前記指示工程による指示に応答して、動画撮影中の少なくとも絞り、シャッタ速度と、被写体の輝度情報とに基づいて静止画撮影用の露出値を決定する露出決定工程と、
前記露出決定工程で決定された前記静止画撮影用の露出値と、前記静止画撮影用の絞りの変化量とに基づいて静止画撮影用のシャッタ速度を決定するシャッタ速度決定工程と、
前記シャッタ速度決定工程で決定されたシャッタ速度と前記静止画撮影用の絞りの変化量との和に基づく経過時間を算出する算出工程と、
前記算出工程で算出された前記経過時間が所定の条件を満たす前記静止画撮影用の絞り及びシャッタ速度に基づいて前記露光量制御工程及び前記露光時間制御工程を制御して静止画撮影を実行した後、動画撮影を実行するように制御する制御工程と、
を有することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項9】
前記経過時間は、前記絞りの変化量に応じた前記絞り機構の駆動時間を含むことを特徴とする請求項7又は8に記載の撮像装置の制御方法。
【請求項10】
前記経過時間は、前記シャッタ速度に応じて前記露光時間制御手段で制御される露光時間を含むことを特徴とする請求項7又は8に記載の撮像装置の制御方法。
【請求項11】
前記露出決定工程では、絞りとシャッタ速度の加算値から露出値を引いて得られるゲインを更に用いて、前記静止画撮影用の露出値を決定することを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の撮像装置の制御方法。
【請求項12】
前記所定の条件とは前記算出手段により算出された前記経過時間が最小となることであることを特徴とする請求項7乃至11のいずれか1項に記載の撮像装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−287586(P2006−287586A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−104360(P2005−104360)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】