説明

撮像装置及びその制御方法

【課題】 焦点距離の変化に応じて絞りの開口径の大きさを制御する、NDフィルタを用いた撮像装置においても、焦点距離の変更前後で露出を一定に保てるようにすること。
【解決手段】 変倍レンズを含むレンズ群(1、10)と、絞り(4)と、撮像素子(16)と、NDフィルタ(7)とを有する撮像装置において、被写体の輝度に応じて絞りの開口径を含む露出値を決定し、露出値を決定した後に変倍レンズのレンズ位置が変更された場合に、決定された露出値で制御される露出の状態で撮像素子に入射する被写体像の光量が、変倍レンズのレンズ位置の変更前後で変化しないように変倍レンズの変更前後のレンズ位置に応じて、絞りの開口径を補正すると共に(S103、S104)、絞りの開口径が補正された場合に、変倍レンズの変更前後のレンズ位置に応じて、NDフィルタの位置を補正する(S106、S107)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及びその制御方法に関し、更に詳しくは、NDフィルタを用いて露出の制御を行うと共に、変倍機能を有する撮像装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ズーム機能を搭載したデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどの撮像装置では、レンズユニット内のズーム倍率制御に関連するレンズ、または、そのレンズを含む群を前後に制御することによりズーム倍率を変化させる制御を行っている。しかし、通常、ズーム倍率の変更により焦点距離が変化することで入射光量の減衰の発生により最小F値が変化し、露出が変わってしまう。例えば、レンズ仕様が「F1.8〜F2.8」の場合、ズーム倍率を最大(テレ端)に制御すると、絞りの開口径が開放、すなわち、一番開いた状態に設定してあっても入射光量の減衰が発生し、露出が暗くなって最小F値が大きくなってしまう。このような仕様の場合、絞りの開口径が開放であっても最小F値がF1.8に設定できずに、ズーム倍率の変更による露出変化で最大F2.8まで最小F値が大きくなる。
【0003】
多くの撮像装置のズームレンズでは、絞りの前の群(絞りよりも被写体側の群)を光軸上を前後に移動させることでズーム倍率の制御を行っている。そのため、ズーム倍率がテレ端で決められた最小F値(例えば、上述した仕様例ではF2.8)より大きなF値をとる開口径に絞りを制御した場合、F値を一定に保ちながらズーム操作を行うことが可能である。すなわち、テレ端の最小F値以上のF値に対応する絞りの開口径ではズーム倍率が変化しても露出を保持することが可能である。しかし、テレ端で決められた最小F値に対応する絞りの開口径よりも大きな開口径では、絞りの開口径が同じであってもズーム倍率によってF値は変化する。
【0004】
一方、撮像装置の小型化、また、広角化の要望が大きくなり、絞りの前の群だけでなく、後ろの群(絞りよりも撮像装置側の群)を光軸上を前後に制御することでズーム制御を行うズームレンズが考えらている。このようなズームレンズを用いる場合、絞りの前の群のみの制御と異なり、絞りの開口径に対して絞りの後ろの焦点距離が変化するため、絞りの開口径全域でズーム倍率に応じてF値が変化してしまう問題が発生する。
【0005】
そこで、第1の方法として、ズーム制御による焦点距離の変化に対するF値の変化分を絞りの開口径の大きさを制御することにより、F値を補正し露出を保つ方法が提案されている。例えば、ズームレンズのズーム制御により取り得る焦点距離毎にF値に対する絞りの開口径の大きさを定義したテーブルを持ち、このテーブルを用いて補正する方法が提案されている。この方法では、ズーム制御を行った場合、ズーム倍率と現在のF値とからテーブルに定義した絞りの開口径の大きさを算出し、その後、算出した開口径に制御することで露出を保持した状態でのズーム制御を可能にする(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、第2の方法として、ゲイン回路、電子シャッター回路などを用いる方法が提案されている。この方法では、ズーム制御を行った場合、ズーム制御による焦点距離の変化に応じて、露出変化を打ち消すようにゲイン回路によりゲイン値で補正を行う。また同様に、電子シャッター回路により撮像素子の蓄積を制御し露出制御状態を補正する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8‐279957号公報
【特許文献2】特開平9‐51473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のNDフィルタを用いる撮像装置に、上述した第1の方法を適用した場合、図5に示すように、開口径を覆うNDフィルタの面積、位置、濃度などの状態変化が発生することが考えられる。特に、透過率あるいは濃度がグラデーション状に変化するNDフィルタを用いる場合や、NDフィルタが開口径を全覆いしていない半がかりの状態の場合に発生し、その場合、NDフィルタの状態変化に起因する露出変化が顕著になってしまう。
【0009】
また、第2の方法では、絞りの開口径の大きさを制御せずに焦点距離の変化で生じる露出変化を補正するため、第1の方法のように開口径を覆うNDフィルタの面積、位置、濃度などの状態変化が生じない。そのため、NDフィルタによる露出変化は発生しない。しかし、ゲイン回路を用いる場合、露出変化分をゲイン値を大きくすることで電気的に補正を行うため、撮像画像にノイズが発生してしまう。また、電子シャッター回路を用いる場合、補正により低速側に制御され、スローシャッター領域に入り易いため、動解像度が低下してしまう。そのため、良好な画像を得ることが困難となる。
【0010】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、焦点距離の変化に応じて絞りの開口径の大きさを制御する、NDフィルタを用いた撮像装置において、焦点距離の変更前後で露出を一定に保てるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、変倍レンズを含むレンズ群と、絞りと、前記レンズ群及び前記絞りを介して入射する、被写体の被写体像を画像信号に変換する撮像手段と、前記被写体像の光路に対して挿入及び退避可能な、前記撮像手段に入射する被写体像の光量を調整するフィルタと、前記被写体の輝度に応じて、前記絞りの開口径を含む露出値を決定する決定手段と、前記決定手段により前記露出値を決定した後に前記変倍レンズのレンズ位置が変更された場合に、前記変倍レンズの変更前後のレンズ位置に応じて、前記絞りの開口径を補正する絞り補正手段と、前記絞り補正手段により前記絞りの開口径が補正された場合に、前記変倍レンズの変更前後のレンズ位置に応じて、前記フィルタの位置を補正するフィルタ補正手段とを有し、前記絞り補正手段及び前記フィルタ補正手段は、前記決定手段で決定された前記露出値で制御される露出の状態で前記撮像手段に入射する被写体像の光量が、前記変倍レンズのレンズ位置の変更前後で変化しないように補正する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、焦点距離の変化に応じて絞りの開口径の大きさを制御する、NDフィルタを用いた撮像装置において、焦点距離の変更前後で露出を一定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像装置の概略構成の一例を示すブロック図。
【図2】本発明の実施形態に係る撮像装置の制御方法を示すフローチャート。
【図3】本発明の実施形態に係る絞り補正テーブルと、補正前後の開口径の一例を示す図。
【図4】本発明の実施形態に係るNDフィルタ補正テーブルと、補正前後のNDフィルタの位置の一例を示す図。
【図5】焦点距離の変化に伴う絞りの開口径の変化と、NDフィルタ位置との関係を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置100の概略構成の一例を示すブロック図である。撮像装置100は、例えば、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどを含む。
【0016】
図1において、1は絞り4に対して被写体側に位置する第1レンズ群、10は絞り4に対して撮像素子16側(撮像装置の本体側)に配置された第2レンズ群を示している。すなわち、第1レンズ群1には、絞り4の開口を通過する前の光が入射し、第2のレンズ群には、絞り4の開口を通過した後の光が入射する。第1レンズ群1及び第2レンズ群10は、ズーム制御のためレンズ光軸上を前後に制御される。なお、図1では簡略化して1枚のレンズを図示しているが、通常、第1レンズ群1、第2レンズ群10は、それぞれ複数枚のレンズから構成される。また、第1レンズ群1、第2レンズ群10はズーム制御の他に、フォーカス制御、防振制御の機能を有する場合もある。なお、第1レンズ群1や第2レンズ群10は1枚のレンズから構成されていてもよく、本実施形態では、1枚のレンズから構成されている場合も含めてレンズ群と称する。
【0017】
レンズ駆動モータ2は、ズーム駆動部13から供給される駆動電力に応じて、第1レンズ群1を光軸上を前後に駆動する。同様に、レンズ駆動モータ11もズーム駆動部13から供給される駆動電力に応じて、第2レンズ群10を光軸上を前後に駆動する。レンズ状態検出回路3は第1レンズ群1の駆動状態を検出し、その検出結果をマイクロコンピュータ20に出力する。同様に、レンズ状態検出回路12も第2レンズ群10の駆動状態を検出し、その検出結果をマイクロコンピュータ20に出力する。
【0018】
絞り4は、撮像装置100の外部から入射する光量を調整する絞り羽根などである。絞り駆動モータ5は、絞り駆動部14より供給される駆動電力に応じて絞り4を駆動する。絞り状態検出回路6は、絞り4の駆動状態を検出し、その検出結果をマイクロコンピュータ20に出力する。第1レンズ群1、第2レンズ群10の移動により焦点距離が変化した場合、マイクロコンピュータ20から算出された絞りの開口径となるように、絞り駆動モータ5、絞り状態検出回路6により絞り4の制御を行う。
【0019】
ND(Neutral Density)フィルタ7は、撮像素子16への入射光路に対して挿入及び退避可能に構成され、挿入することで第1レンズ群1から入射する光を減少させる。NDフィルタ駆動モータ8は、NDフィルタ駆動部15により供給される駆動電力に応じてNDフィルタ7を駆動する。NDフィルタ駆動検出回路9は、NDフィルタ7の駆動状態を検出し、その検出結果をマイクロコンピュータ20に出力する。また、後述するように、絞り4が補正され開口径が変化した場合、マイクロコンピュータ20は、出力された検出結果からNDフィルタ7の位置を算出し、露出を保つためにNDフィルタ駆動モータ8、NDフィルタ駆動検出回路9によりNDフィルタ7の制御を行う。なお、本実施形態では、NDフィルタ7として透過率あるいは濃度がグラデーション状に変化するNDフィルタを例にとって説明するが、単濃度のものであってもよい。また、図1では簡略化して1枚のNDフィルタを図示しているが、NDフィルタ7は、複数枚で構成されていても構わない。
【0020】
16は、CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサなどの撮像素子であり、第1レンズ群1から第2レンズ群10までを介して入射する被写体の光学像を光電変換し、得られた電荷を蓄積する。撮像素子16の各画素に蓄えられた電荷(画像信号)は、後述する撮像素子駆動部27の駆動パルスに応じてCDS/AGC回路17に出力される。CDS/AGC回路17は、出力された画像信号をサンプリング及び増幅する。なお、サンプリングでは相関二重サンプリング(CDS:Correlated Double Sampling)が、増幅では自動利得調整(AGC:Auto Gain Control)が行われる。そして、CDS/AGC回路17により処理された画像信号(アナログ信号)は、A/D変換器18において、デジタル画像信号に変換される。デジタル信号処理回路19は、A/D変換器18から出力されたデジタル画像信号に対して種々の信号処理を行う。
【0021】
記録部25は、デジタル信号処理回路19で生成された画像をメモリカードなどの外部メモリに書き出す。
【0022】
マイクロコンピュータ20は、マイクロコントローラや単にコントローラと称される回路であり、撮像装置100の動作を統括的に制御する。例えば、マイクロコンピュータ20は、デジタル信号処理回路19からの輝度や色等の情報を受けて、各種の演算処理を行う。
【0023】
マイクロコンピュータ20が行う制御の1つとして、撮像素子16に入射する被写体像の光量を適正に調節するために、次の制御を行う。まず、撮像された画像の測光値(輝度値)から、適正露出にするための絞り4、NDフィルタ7などのパラメータを含む露出値を決定する。そして、絞り駆動部14、NDフィルタ駆動部15は、この算出結果を基に、絞り4、NDフィルタ7を駆動制御する。なお、本実施形態では絞り4及びNDフィルタ7は自動露出(AE)制御される例を示すが、ユーザがマニュアルで操作できる形態であっても構わない。
【0024】
また、マイクロコンピュータ20は、後述する外部キー23によりユーザが指示したズーム倍率となるように、第1レンズ群1、第2レンズ群10を駆動する。また、外部キー23によりズーム倍率の変更が指示された場合には、露出状態を維持するために、露出補正回路21により算出された、絞り4の開口径及びNDフィルタ7の位置を調整するための補正値に基づいて、絞り4、NDフィルタ7を調整する。なお、ズーム倍率が変更された場合の露出補正回路21及びマイクロコンピュータ20が行う制御の詳細については後述する。
【0025】
絞り駆動部14は、マイクロコンピュータ20による制御に基づき、絞り駆動モータ5へ駆動電力を供給する。例えば、絞り駆動部14は、撮像素子16が撮像した画像の測光値(輝度値)に応じてマイクロコンピュータ20により求められた露出値に基づく制御により、絞り4を絞る、または、開くための駆動電力を供給する。これにより、撮像装置100では、撮像素子16に適正な光量が入射するように絞り調整を行うことが可能となる。なお、測光センサを別に設け、測光センサから得られた測光値を用いて絞り4を制御しても構わない。
【0026】
NDフィルタ駆動部15は、マイクロコンピュータ20による制御に基づき、NDフィルタ駆動モータ8へ駆動電力を供給する。例えば、NDフィルタ駆動部15は、撮像素子16が撮像した画像の測光値(輝度値)に応じてマイクロコンピュータ20により求められた露出値に基づく制御により、NDフィルタ7の挿入位置を変えるための駆動電力を供給する。これにより、撮像装置では、撮像された画像の測光値に応じて撮像素子16に入射する光の光量を調整することが可能となる。
【0027】
撮像素子駆動部27は、マイクロコンピュータ20による制御に基づき、撮像素子16を駆動するための駆動パルス等を撮像素子16へ供給し、撮像素子16で撮像した画像の読み出しや露光時間の調整を行う。例えば、撮像素子駆動部27は、撮像素子16により撮像された画像の測光値に応じたマイクロコンピュータ20の制御により、所定の露光時間で撮像素子16の露光を行うための駆動パルスを供給する。これにより、撮像装置100では、撮像された画像の測光値に応じて撮像素子16の露光時間を調整し、その画像を読み出すことが可能となる。
【0028】
メモリ22は、RAM(Random Access Memory)などであり、一時的にデータを保存する。例えば、メモリ22は、撮像素子16で撮像されてデジタル信号処理回路19で処理された後の画像データなどを一時的に保存する。また、撮像装置100を駆動するためのプログラムもメモリ22に保存され、マイクロコンピュータ20で逐次呼び出され実行される。また、事前にシミュレーションによる絞り4、NDフィルタ7の補正位置を使用する場合は、補正位置データを保存するものとする。
【0029】
外部キー23は、撮像装置100のズーム倍率の変更や各種設定を行うために使用する。このとき、外部キーの操作をユーザに知らせるために表示装置24にアイコンやメッセージを表示する。
【0030】
次に、図2のフローチャートを参照して、ズーム倍率が変更された場合に、露出補正回路21及びマイクロコンピュータ20が行う制御方法について説明する。なお、図2に示す処理は、外部キー23によるズーム倍率の変更が指示された場合に、通常のAEが行われるよりも短い所定周期で実行されるものとする。
【0031】
まず、S101において、マイクロコンピュータ20は、レンズ状態検出回路3及び12により検出された第1レンズ群1、第2レンズ群10の制御位置を取得してズーム位置を算出し、算出したズーム位置を示す情報を露出補正回路21に伝える。
【0032】
S102において、マイクロコンピュータ20は、絞り状態検出回路6により検出された絞り4の制御位置を取得して、取得した制御位置を示す情報を露出補正回路21に伝える。また、マイクロコンピュータ20は、NDフィルタ駆動検出回路9により検出されたNDフィルタ7の制御位置を取得して、取得した制御位置を示す情報を露出補正回路21に伝える。
【0033】
次に、S103において、露出補正回路21は、S101で取得したズーム位置と、ズーム倍率変更前のズーム位置と(変更前後の変倍レンズ位置)、S102で取得した絞り4の制御位置とから、露出を維持するための絞り4の制御位置を求める。そして、求めた制御位置をマイクロコンピュータ20に出力する。制御位置は、ズーム倍率の変更のたびに露出補正回路21が算出しても良いが、ここでは実行速度を高速化するために、S101で求めたズーム位置とS102で求めた絞り4の制御位置とから、変更すべき絞りの制御位置を記した絞り補正テーブルを用いて求める。以上のようにして、ズーム倍率の変更による露出変化量を補償するために、ズーム倍率の変更前よりもズーム倍率の変更後の絞り4の開口径を小さくまたは大きくする。
【0034】
図3(a)は、このような絞り補正テーブルの一例を示す。図3(a)において、「ズーム位置」は、テレ端を1倍、ワイド端を0倍として正規化した値を示しており、表中の数字は、絞り駆動部14に与えられるエンコーダの値を示している。なお、図3(a)におけるズーム位置の値は、第1レンズ群1及び第2レンズ群10のズーム位置に基づいて算出される値であり、テレ端に近いほど撮像装置100の焦点距離が長く、ワイド端に近いほど焦点距離が短い。この例では、絞り4の開口径が狭いほどエンコーダの値が小さく、開口径が広くなるほど値が大きくなっている。例えば、ズーム位置が0.1から0.4に変化し、絞り4の現在の制御位置がエンコーダの値で200である場合、230が補正後の制御位置となる。すなわち、ズーム位置がテレ側に変化するのに対応させて、絞り4の開口径を大きくする必要があることを示している。図3(b)は、このときの絞り4の開口径の変化を示した図であり、点線が変化前の制御位置を示している。なお、図3(a)の絞り補正テーブルはシミュレーション結果から算出された、ズーム位置に対する絞りの制御位置を記したものである。また、これらの値は一例であって、ズーム位置に対する絞りの制御位置を表す値が保持されていればよい。絞り補正テーブルはメモリ22に保存されており、使用する場合、マイクロコンピュータ20を介して露出補正回路21が読み出すことができる。なお、絞り補正テーブルは、メモリ22に限らず、マイクロコンピュータ20内の不図示のメモリに保存しておくなど、マイクロコンピュータ20がアクセス可能な他のメモリに保存しておいても良い。
【0035】
次に、S104において、S103により算出された絞りの制御位置に絞り4を駆動する。ここでは、マイクロコンピュータ20の命令により絞り駆動部14から絞り駆動モータ5を駆動させ、絞り4を駆動させる。
【0036】
その後、露出補正回路21は、S105において、S104により制御された絞りの制御位置と、S102で取得したNDフィルタ7の位置とから、露出を維持するために、NDフィルタ7の位置の補正制御が必要か否かを判定する。ここでは、S104による補正制御後の絞り4の開口径の少なくとも一部をNDフィルタ7が覆っているか否かを判定し、絞り4の開口径をNDフィルタ7が覆っていると判定された場合はS106に進む。一方、絞り4の開口径にNDフィルタ7がかかっていないと判定された場合は、処理を終了する。
【0037】
S106において露出補正回路21は、S101で取得したズーム位置と、変更前のズーム位置と(変更前後の変倍レンズ位置)、S102で取得したNDフィルタ7の制御位置とから、露出を維持するためのNDフィルタ7の制御位置を求める。そして、求めた制御位置を、マイクロコンピュータ20に出力する。制御位置はズーム倍率の変更の度に露出補正回路21が算出しても良いが、実行速度を高速化するため、S101で求めたズーム位置とS102で求めたNDフィルタ7の位置とから、NDフィルタ7の制御位置を記したNDフィルタ補正テーブルを用いて求める。ここで用いるNDフィルタ補正テーブルの一例を図4(a)に示す。図4(a)において、「ズーム位置」は、テレ端を1倍、ワイド端を0倍として正規化した値を示しており、表中の数字は、NDフィルタ駆動部15に与えられるエンコーダの値を示している。なお、図4(a)におけるズーム位置の値は、第1レンズ群1及び第2レンズ群10のズーム位置に基づいて算出される値である。この例では、NDフィルタ7を完全に挿入した場合の値が0で、退避する方向に移動するほど、値が大きくなっている。例えば、ズーム位置が0.1から0.4に変化し、現在のNDフィルタ7の制御位置がエンコーダの値で80である場合、86が制御位置となる。すなわち、ズーム位置がテレ側に変化するのに対応させて、NDフィルタ7を退避側に移動させる必要があることを示している。これは、ズーム位置の変化に対応させて絞り4の開口径を大きくすることで、ズーム位置の変化前よりも多くNDフィルタ7の透過率の低い部分が開口径にかかるためである。そのような状態では、撮像素子16に入射する光量を必要以上に減少させてしまうので、上述したようにNDフィルタ7を退避側に移動させることで、ズーム位置の変化前と同程度 NDフィルタ7の透過率の低い部分が開口径にかかるようにする。
【0038】
図4(b)は、このときのNDフィルタ7の変化を示した図であり、点線が変化前の制御位置を示している。
【0039】
なお、ズーム位置が0.1から0.4に変化し、現在のNDフィルタ7の制御位置がエンコーダの値で20である場合、14が制御位置となる。この場合は、ズーム位置がテレ側に変化するのに対応させて、NDフィルタ7を挿入側に移動させる必要があることを示している。これは、ズーム位置の変化に対応させて絞り4の開口径を大きくすることで、ズーム位置の変化前よりも多くNDフィルタ7の透過率の高い部分が開口径にかかるためである。そのような状態では、撮像素子16に入射する光量を必要以上に透過させてしまうので、上述したようにNDフィルタ7を挿入側に移動させることで、ズーム位置の変化前と同程度 NDフィルタ7の透過率の低い部分が開口径にかかるようにする。
【0040】
また、現在のNDフィルタ7の制御位置がエンコーダの値で60である場合、どのズーム位置でも60が制御位置となる。この場合は、ズーム位置が変化してもNDフィルタ7を移動させる必要がないことを示している。これは、ズーム位置の変化に対応させて絞り4の開口径を大きくしても開口径を通過する光の減少量に変化がないためである。
【0041】
以上のように、同様のズーム変化があっても、ズーム変化前のNDフィルタ7の挿入位置に応じて挿入側及び退避側のどちらにNDフィルタ7を移動させるかが変わってくる。すなわち、ズーム変化前のNDフィルタ7の挿入位置が予め決められた所定位置より挿入側である場合と退避側である場合とで、ズーム変化に応じてNDフィルタ7を移動させる方向が異なる。
【0042】
なお、図4(a)のNDフィルタ補正テーブルはシミュレーション結果から算出された、ズーム位置に対するNDフィルタ7の制御位置を記したものである。
【0043】
ここで、NDフィルタ補正テーブル内に絞りの要素を含んでいないのは、図2における制御では、NDフィルタ7と絞り4とは同時に制御を行わないためである。なお、図4(a)に例示した値は一例であって、ズーム位置に対するNDフィルタの制御位置と表す値が保持されていればよい。例えば、本実施形態では、NDフィルタ7がグラデーション状のNDフィルタである場合について説明している。これに対し、NDフィルタ7が単濃度の場合には、図5(a)に示すような絞りの開口径への半がかり状態とならないように、開口径全体を完全に覆うか、または開口径から完全に退避するような制御位置を表す値を保持していればよい。
【0044】
NDフィルタ補正テーブルはメモリ22に保存されており、使用する場合、マイクロコンピュータ20を介して露出補正回路21が読み出すことができる。なお、NDフィルタ補正テーブルは、メモリ22に限らず、マイクロコンピュータ20内の不図示のメモリに保存しておくなど、マイクロコンピュータ20がアクセス可能な他のメモリに保存しておいても良い。
【0045】
最後に、S107において、S106で算出されたNDフィルタの制御位置にNDフィルタ7を駆動する。ここでは、マイクロコンピュータ20の命令によりNDフィルタ駆動部15からNDフィルタ駆動モータ8を駆動させ、NDフィルタ7を駆動させる。
【0046】
このNDフィルタ位置制御により、ズーム位置の変更に伴う絞りの開口径の変化に対して、開口径を覆うNDフィルタの面積、位置、濃度などの状態変化による露出変化を生じてしまうことなく、焦点距離の変更前後で露出を一定に保つことが可能となる。
【0047】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
【0048】
例えば、本実施形態では、図1に示すように、全て独立した回路部の構成を示しているが、全ての構成又はその一部はマイクロコンピュータ20内に構成するようにする形態であってもよい。また、図2に示す処理は、露出補正回路21とマイクロコンピュータ20とにより行われるものとして説明したが、露出補正回路21の構成をマイクロコンピュータ20内に構成し、図2の処理を全てマイクロコンピュータ20が行うようにしても構わない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変倍レンズを含むレンズ群と、
絞りと、
前記レンズ群及び前記絞りを介して入射する、被写体の被写体像を画像信号に変換する撮像手段と、
前記被写体像の光路に対して挿入及び退避可能な、前記撮像手段に入射する被写体像の光量を調整するフィルタと、
前記被写体の輝度に応じて、前記絞りの開口径を含む露出値を決定する決定手段と、
前記決定手段により前記露出値を決定した後に前記変倍レンズのレンズ位置が変更された場合に、前記変倍レンズの変更前後のレンズ位置に応じて、前記絞りの開口径を補正する絞り補正手段と、
前記絞り補正手段により前記絞りの開口径が補正された場合に、前記変倍レンズの変更前後のレンズ位置に応じて、前記フィルタの位置を補正するフィルタ補正手段とを有し、
前記絞り補正手段及び前記フィルタ補正手段は、前記決定手段で決定された前記露出値で制御される露出の状態で前記撮像手段に入射する被写体像の光量が、前記変倍レンズのレンズ位置の変更前後で変化しないように補正することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記フィルタ補正手段は、前記絞りの開口径が補正される前に、前記フィルタが前記開口径の少なくとも一部を覆っているかどうかを判定し、覆っていると判定すると、前記フィルタの位置を補正する処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記変倍レンズは、前記絞りの開口を通過した後の光が入射するレンズを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記フィルタは、透過率がグラデーション状に変化するフィルタであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記フィルタは、単濃度のフィルタであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記絞り補正手段は、露出値が変化しない変倍レンズのレンズ位置と絞りの開口径との組み合わせを示す絞り補正テーブルを有し、前記変倍レンズの変更前後のレンズ位置と前記絞りの開口径とを用いて、前記絞り補正テーブルから、前記変更後の変倍レンズのレンズ位置における前記絞りの開口径を読み出して、該開口径となるように補正することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記フィルタ補正手段は、露出値が変化しない変倍レンズのレンズ位置とフィルタの位置との組み合わせを示すフィルタ補正テーブルを有し、前記変倍レンズの変更前後のレンズ位置と前記フィルタの位置とを用いて、前記フィルタ補正テーブルから、前記変更後の変倍レンズのレンズ位置における前記フィルタの位置を読み出して、該位置となるように補正することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
変倍レンズを含むレンズ群と、絞りと、前記レンズ群及び前記絞りを介して入射する、被写体の被写体像を画像信号に変換する撮像手段と、前記被写体像の光路に対して挿入及び退避可能な、前記撮像手段に入射する被写体像の光量を調整するフィルタとを有する撮像装置の制御方法であって、
決定手段が、前記被写体の輝度に応じて、前記絞りの開口径を含む露出値を決定する決定工程と、
絞り補正手段が、前記決定工程において前記露出値を決定した後に前記変倍レンズのレンズ位置が変更された場合に、前記変倍レンズの変更前後のレンズ位置に応じて、前記絞りの開口径を補正する絞り補正工程と、
フィルタ補正手段が、前記絞り補正工程で前記絞りの開口径が補正された場合に、前記変倍レンズの変更前後のレンズ位置に応じて、前記フィルタの位置を補正するフィルタ補正工程とを有し、
前記絞り補正工程及び前記フィルタ補正工程では、前記決定手段により決定された前記露出値で制御される露出の状態で前記撮像手段に入射する被写体像の光量が、前記変倍レンズのレンズ位置の変更前後で変化しないように補正することを特徴とする撮像装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−50010(P2012−50010A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192705(P2010−192705)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】