説明

撮像装置及び撮像方法

【課題】低輝度、低コントラスト環境にある被写体に対しても精度良く焦点を合わせることができる自動焦点機能を有する撮像装置及び撮像方法に関する。
【解決手段】撮影レンズを通過してきた被写体の光を受光する撮像素子、撮影レンズを移動させるレンズ移動手段、撮影素子から得た画像データによって焦点を決定する自動焦点検出手段を有する撮像装置において、自動焦点検出手段は、画像データを用いて算出するAF評価値を元にした平滑微分演算結果によって焦点位置を決定することを特徴とする撮像装置による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体に対して自動的に焦点を合わせる自動焦点機能を有する撮像装置及び撮像方法に関するもので、特に、低輝度、低コントラスト環境にある被写体に対しても精度良く焦点を合わせることができる撮像装置および撮像方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なデジタルスチルカメラ等の撮像装置は、被写体に対して自動的に焦点を合わせるオートフォーカス(以下「AF」という)装置を搭載している。AF装置が用いるAF制御方法の一例として、山登りAF制御方法が知られている(例えば特許文献1を参照)。この山登りAF制御方法は、撮像素子が出力する映像信号から近接画素の輝度差の積分値を求めて、この積分値を合焦度合いを示すAF評価値とする方式である。被写体が合焦状態にあるときは映像信号における被写体の輪郭部分ははっきりしているため、この映像信号における近接画素間の輝度差は大きくなる。つまり、合焦状態ではAF評価値は大きくなる。逆に、非合焦状態にあるときは被写体の輪郭部分がぼやけるため、この映像信号における近接画素間の輝度差は小さくなる。つまり、非合焦状態ではAF評価値は小さくなる。AF装置は、レンズを移動させながら所定のタイミングで、そのレンズ位置の映像信号を取得してAF評価値を算出し、AF評価値の最大値(AF評価値のピーク位置)を特定し、AF評価値が最大となる位置にレンズを移動して停止させることで、被写体に対して自動的に焦点をあわせることができる。このように、山登りAF制御方法は、AF評価値のピーク位置を検出することで被写体に対する焦点を合わせることができる。
【0003】
近年、山登りAF制御方法をより精度良くかつ高速に実効するAF制御方法が提案されている(例えば特許文献2を参照)。特許文献2に記載されているAF制御方法は、微小な間隔でAF評価値をサンプリングする第一モードと、合焦位置に近づくまでは粗い間隔でAF評価値をサンプリングし合焦位置付近では微小な間隔でAF評価値をサンプリングする第二モードとを使い分けることで、AF処理を高速化し、より素早く被写体に焦点を合わせることができる方法である。
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載のAF制御方法は、被写体が低輝度環境や低コントラスト環境にある場合、映像信号に多く含まれるノイズによってAF評価値のピーク検出までに時間がかかる。すなわち、AF評価値のピーク検出までAF処理が繰返し行なわれるため、合焦するまで多くの時間を要することになる。そこで、上記特許文献2記載の方法による課題を解決するため輝度に応じて映像信号に用いるフィルタを可変し、映像信号のノイズを除去することでAF評価値のバラツキを低減する方法が提案されている(例えば特許文献3を参照)。
【特許文献1】特公昭39−5265号公報
【特許文献2】特許第3851027号公報
【特許文献3】特開2006−145964号公報
【0005】
一方、近年の撮像装置に用いられる撮像素子(CCD)は高画素化(高密化)が進み、隣接画素間の輝度差は以前のものに比べて小さくなっているため、低輝度・低コントラスト環境における隣接画素間の輝度差は微小になる。このため上記の従来方法では、映像信号に含まれるノイズによって発生するAF評価値のバラツキにより、正しく精度良くかつ高速に合焦位置を特定することは困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであって、映像信号の隣接画素間の輝度差が微小であっても、AF評価値の最大値を精度よく特定することができ、より安定したAF制御を行なうことができる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、撮影レンズを通過してきた被写体の光を受光する撮像素子、前記撮影レンズを移動させるレンズ移動手段、前記撮影素子から得た画像データによって焦点を決定する自動焦点検出手段を有する撮像装置において、上記自動焦点検出手段は、上記画像データを用いて算出するAF評価値を用いた平滑微分演算によって焦点位置を決定することを最も主要な特徴とする。
【0008】
また本発明は、上記AF評価値は、上記画像データを構成する隣接画素の輝度差を積分した値であり、上記平滑微分演算は、隣接するAF評価値の差分に加重積算した値の総計を算出する演算であって、加重積算に用いる重み係数はAF評価値からの乖離度合いに応じて大きくなる値であることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、加重積算を求める値の範囲(演算に用いる値の個数)を、撮影時に設定されている撮影モード(例えば、通常・マクロAFモードなど)や、焦点距離・AF評価値を取得する際のレンズ位置移動量に応じて可変させることにより、背景側に合焦する状態(偽合焦)を防ぐことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、撮像装置において、被写体の画像データから算出したAF評価値を平滑微分して合焦点を検知することにより、高速かつ高精度な自動焦点機能を提供することができる。
【0011】
また、本発明によれば、撮像装置において、撮影モードや焦点距離の違いにより平滑微分演算に用いるAF評価値の範囲を可変させることができるので、偽合焦を防ぎつつ高速かつ高精度な自動焦点機能を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る撮像装置の実施形態について図を用いて説明する。図1乃至図3は本発明に係る撮像装置の外観構成例を示す図である。図1は正面図、図2は上側平面図、図3は背面図である。図1において撮像装置の筐体であるカメラボディCBの正面には、ストロボ発光部3、光学ファインダ4、リモコン受光部6および撮像レンズを含む鏡胴ユニット7が配置されており、カメラボディCBの一方の側面部には、メモリカード装填室および電池装填室の蓋2が設けられている。図2においてカメラボディCBの上面には、レリーズボタン(スイッチ)SW1、モードダイアルSW2およびサブ液晶ディスプレイ(サブLCD)(以下、「液晶ディスプレイ」を「LCD」と称する)1が配置されている。図3において、カメラボディCBの背面には、光学ファインダ4、AF用LED(「LED」は、発光ダイオード)8、ストロボLED9、LCDモニタ10、電源スイッチ13、広角方向ズームスイッチSW3、望遠方向ズームスイッチSW4、セルフタイマの設定および解除スイッチSW5、メニュースイッチSW6、上移動およびストロボセットスイッチSW7、右移動スイッチSW8、ディスプレイスイッチSW9、下移動およびマクロスイッチSW10、左移動および画像確認スイッチSW11、OKスイッチSW12、ならびにクイックアクセススイッチSW13が配置されている。
【0013】
次に、図4を用いて本発明に係る撮像装置の機能ブロックを説明する。本発明に係る撮像装置の各種動作(処理)は、ディジタル信号処理IC(集積回路)等として構成されるディジタルスティルカメラプロセッサ104(以下、単に「プロセッサ104」と称する)によって制御される。プロセッサ104は、第1のCCD(電荷結合素子)信号処理ブロック104−1,第2のCCD信号処理ブロック104−2,CPU(中央処理ユニット)ブロック104−3,ローカルSRAM(SRAM:スタティックランダムアクセスメモリ)104−4,USB(ユニバーサルシリアルバス)ブロック104−5,シリアルブロック104−6,JPEGコーデック(CODEC)ブロック104−7,リサイズ(RESIZE)ブロック104−8,TV信号表示ブロック104−9およびメモリカードコントローラブロック104−10を有してなり、これら各ブロックは相互にバスラインで接続されている。
【0014】
プロセッサ104の外部には、RAW−RGB画像データ、YUV画像データおよびJPEG画像データを保存するためのSDRAM(シンクロナスランダムアクセスメモリ)103、RAM107、内蔵メモリ120および制御プログラムが格納されたROM108が配置されており、バスラインを介してプロセッサ104に接続されている。
【0015】
鏡胴ユニット7は、ズームレンズ7−1aを有するズーム光学系7−1,フォーカスレンズ7−2aを有するフォーカス光学系7−2,絞り7−3aを有する絞りユニット7−3およびメカニカルシャッタ7−4aを有するメカシャッタユニット7−4を備えている。ズーム光学系7−1,フォーカス光学系7−2,絞りユニット7−3およびメカシャッタユニット7−4はそれぞれZOOMモータ7−1b,フォーカスレンズ移動手段としてのFOCUSモータ7−2b,絞りモータ7−3bおよびメカシャッタモータ7−4bによって駆動される。これらZOOMモータ7−1b,FOCUSモータ7−2b,絞りモータ7−3bおよびメカシャッタモータ7−4bの各モータは、プロセッサ104のCPUブロック104−3によって制御されるモータドライバ7−5によって動作が制御される。
【0016】
鏡胴ユニット7のズームレンズ7−1aおよびフォーカスレンズ7−2aは、撮像素子であるCCD101の撮像面上に被写体光学像を結像するための撮像レンズを構成し、CCD101は、前記被写体光学像を電気的な画像信号に変換してF/E−IC(フロントエンドIC)102に入力する。F/E−IC102は、CDS(相関2重サンプリング部)102−1、AGC(自動利得制御部)102−2およびA/D(アナログ−ディジタル)変換部102−3を有し、前記画像信号にそれぞれ所定の処理を施して、ディジタル信号に変換し、プロセッサ104の第1のCCD信号処理ブロック104−1に入力する。これらの信号処理動作は、プロセッサ104の第1のCCD信号処理ブロック104−1から出力されるVD・HD(垂直駆動・水平駆動)信号により、TG(タイミングジェネレータ)102−4を介して制御される。第1のCCD信号処理ブロック104−1は、CCD固体撮像素子101からF/E−IC102を経由して入力されたディジタル画像データに対してホワイトバランス調整およびγ調整等の信号処理を行うとともに、VD信号およびHD信号を出力する。
【0017】
プロセッサ104のCPUブロック104−3は、音声記録回路115−1による音声記録動作を制御する。音声記録回路115−1は、マイクロホン115−3で変換されマイクロホンアンプ115−2によって増幅した音声信号を、CPUブロック104−3の指令に応じて記録する。また、CPUブロック104−3は、音声再生回路116−1の動作も制御する。音声再生回路116−1は、CPUブロック104−3の指令により、適宜なるメモリに記録されている音声信号をオーディオアンプ116−2で増幅してスピーカ116−3に入力し、スピーカ116−3から音声を再生する。また、CPUブロック104−3は、ストロボ回路114を制御して動作させることによってストロボ発光部3から照明光を発光させる。また、CPUブロック104−3は、被写体距離を測定する測距ユニット(図示せず)の動作も制御する。
【0018】
なお、本発明に係る撮像装置は、後述するように撮像された画像データに基づいてAF制御を行うものであるので、測距ユニットによる被写体距離の測定は必ずしも行わなくて良く、測距ユニットを省いても良い。また、測距ユニットによる被写体距離の測定情報をストロボ回路114におけるストロボ発光制御に利用しても良い。測距ユニットによる被写体距離の測定情報を、撮像された画像データに基づく合焦制御に対して補助的に利用するようにしても良い。
【0019】
さらに、CPUブロック104−3は、プロセッサ104の外部に配置されたサブCPU109にも結合されており、サブCPU109は、LCDドライバ111を介してサブLCD1による表示を制御する。また、サブCPU109は、AF用LED8,ストロボLED9,リモコン受光部6,上記スイッチSW1〜SW13からなる操作部およびブザー113にもそれぞれ結合されている。
【0020】
USBブロック104−5は、USBコネクタ122に結合されており、シリアルブロック104−6は、シリアルドライバ回路123−1を介してRS−232Cコネクタに結合されている。ビデオ信号表示ブロック104−9は、LCDドライバ117を介してLCDモニタ10に結合されており、また、TV信号表示ブロック104−9は、ビデオアンプ118を介してビデオジャック119にも結合されている。メモリカードコントローラブロック104−10は、メモリカードスロット121のカード接点に結合されており、メモリカードがこのメモリカードスロット121に装填されると、メモリカードの接点に接触して電気的に接続する。
【0021】
次に、上述のように構成された撮像装置の動作について説明する。図1乃至図3に示すモードダイアルSW2を記録モードに設定することによって、当該撮像装置が記録モードで起動する。当該撮像装置は複数の記録モードを備えており、これらの記録モードをまとめて撮影モードとする。モードダイアルSW2の設定は、図4における操作keyユニット(SW1〜SW13)に含まれるモードダイアルSW2の状態が記録モード−オンになったことをサブCPU109経由でCPUブロック104−3が検知し、モータドライバ7−5を制御して、鏡胴ユニット7を撮像可能な位置に移動させる。さらにCCD101、F/E−IC102およびLCDモニタ10等の各部に電源を投入して動作を開始させる。各部の電源が投入されると、ファインダモードの動作が開始される。
【0022】
ファインダモードにおいては、鏡胴ユニット7の撮像レンズを通して撮像素子であるCCD101に入射した光は、電気信号に変換されてRGBのアナログ信号としてCDS102−1に入力し、AGC102−2を介してA/D変換器102−3に送られる。A/D変換器102−3でディジタル信号に変換されたR、G、Bの各信号は、プロセッサ104内の第2のCCD信号処理ブロック104−2によって達成されるYUV変換手段でYUV画像データに変換されて、フレームメモリとしてのSDRAM103に記録される。なお、第2のCCD信号処理ブロック104−2は、RGB画像データにフィルタリング処理等の適切な処理を施してYUV画像データへ変換する。このYUV画像データは、CPUブロック104−3により、読み出され、ビデオ信号表示ブロック104−9を介してビデオアンプ118およびビデオジャック119を介してTV(テレビジョン)に送られ、あるいはLCDドライバ117を介してLCDモニタ10へ送られて表示に供される。この処理が1/30秒間隔で行われ、1/30秒毎に更新されるファインダモードの表示となる。
【0023】
操作部のレリーズボタンSW1が押下されると、第1のCCD信号処理ブロック104−1に取り込まれたディジタルRGB画像データより、画面内の所定の少なくとも一部における合焦の度合いを示すAF評価値および露光状態を示すAE評価値が算出される。AF評価値は、特徴データとしてCPUブロック104−3に読み出されて、自動焦点検出手段としての機能するAF処理に利用される。
【0024】
合焦状態にある被写体は、そのエッジ部分が鮮明であるため、当該画像データに含まれる空間周波数の高周波成分が最も高くなる。空間周波数が高い被写体画像データを構成する画素の近接画素間の輝度差の積分値であるAF評価値はその値が大きくなる。従って、このフォーカスレンズ7−2aを移動させながら断続的に取得したAF評価値の変位量は、画像データに含まれる高周波成分を反映する値となるため、このAF評価値が極大値となる画像データを取得したフォーカスレンズ7−2aの位置が合焦位置となる。すなわち、AF評価値にピーク位置を検出することで合焦位置を特定することができる。また、AF評価値の極大点(ピーク位置)が複数あらわれることも考慮にいれ、複数の極大点(ピーク位置)があった場合には、ピーク位置におけるAF評価値の大きさおよびその周辺位置のAF評価値の下降または上昇の度合いなども考慮し、最も信頼性があると推定される極大点(ピーク位置)を合焦位置とするAF処理を行なう。
【0025】
AF評価値は、ディジタルRGB画像データ内の特定の範囲(AF処理エリア)から算出することができる。図5はファインダモード時にLCDに表示される画像面を示している。図5において、LCD10の中心部に表示されている枠内が当該撮像装置におけるAF処理エリアである。このAF処理エリアは、例えばRGB画像データの画面内の中央の水平方向の40%および垂直方向の30%の範囲を設定している。
【0026】
本発明に係る撮像装置が備える複数の撮影モードはそれぞれAF撮影範囲が異なる。例えば、通常AFモードはAF撮影範囲を1mから無限遠とし、マクロAFモードは、AF撮影範囲を1cmから無限遠としている。AFモードの設定は、モードダイアルSW2によって行なう。
【実施例1】
【0027】
本発明に係る撮像装置を用いた撮像方法の実施形態について説明する。本発明に係る撮像方法におけるAF処理は、移動するフォーカスレンズ7−2aの所定のタイミング位置においてAF評価値を取得し、取得したAF評価値を用いて平滑微分演算をし、その平滑微分演算の結果(平滑微分値)を用いて合焦状態の判定と合焦位置の特定を行なう。先ず、AF評価値の平滑微分演算処理について説明する。
【0028】
移動するフォーカスレンズ7−2aから所定のタイミングで取り込まれた被写体の画像データを元に取得したAF評価値をX[0]とし、X[0]よりもa個前に取得されたAF評価値をX[−a]、X[0]よりもa個後に取得されたAF評価値をX[a]とし、
各AF評価値に対する重み係数をb1、b2・・とした場合、平滑微分値Y[0]は、Y[0]=Σ[i=0→a](X[i]−X[−i])×biによって求めることができる。
【0029】
上記の平滑微分演算式の具体例を示す。現在のAF評価値(X[0])の前後3評価値を用いて平滑微分値Y[0]を求める場合、Y[0]=(X[1]−X[−1])×1+(X[2]−X[−2])×2+(X[3]−X[−3])×3となる。ここで、重み係数(bi=1,2,3・・・)は、現在のAF評価値X[0]に近いAF評価値(例えばX[1])を小さい係数とし、遠いAF評価値(例えばX[3])をより大きい係数とする。すなわち、現在値(X[0])との相関度合いが小さいものほど大きな値であればよく、具体的な係数値は上記の例に限るものではない。
【0030】
このように、本発明にかかる撮像方法におけるAF制御方法は、フォーカスレンズ7−2aの移動に対応して取得するAF評価値の相関性をふまえて上記の平滑微分値を求めることでAF評価値の極値を特定し、合焦位置を検出する。
【0031】
上記の演算式は、現在のAF評価値X[0]の前後3個のAF評価値を用いて平滑微分演算を行なうものであるが、平滑微分演算に用いるAF評価値の個数はこれにかぎらない。平滑微分演算を行なう範囲(以下「平滑微分範囲」とする)をパラメータとして可変できるようにし、このパラメータによって指定された個数Nを用いて前後N個のAF評価値を用いて平滑微分演算を行なうことが望ましい。
【0032】
また、平滑微分演算を行なうためには複数個のAF評価値が必要となる。このため、AF処理の開始直後やフォーカスレンズ7−2aの駆動終了範囲直前のAF評価値取得タイミングでは、平滑微分演算を行なうことができない。従って、AF処理を開始後、平滑微分演算を開始できる個数分のAF評価値が取得されるのを待ってから平滑微分演算処理を開始する。または、平滑微分演算処理に必要なAF評価値の個数を補う為に、既に取得済のAF評価値を用いて推測して補間し平滑微分演算処理を開始する。
【0033】
次に、AF処理時におけるフォーカスレンズ7−2aの駆動タイミングとAF評価値の取得タイミングの関係について説明する。フォーカスレンズ7−2aの駆動は1回のVD信号に対応して所定のフォーカス駆動量によって行なう。フォーカス駆動量は、例えばフォーカスモータ7−2bがパルスモータである場合は、駆動パルス数がそれに相当する。VD信号のパルスの立下りに対応して所定のパルスレートで所定の駆動パルス数だけフォーカスレンズ7−2aを駆動することで1回のフォーカスレンズ駆動は終了する。次にくるVD信号パルスの立下りに対応して再度、所定のフォーカス駆動を行なう。このようにフォーカス駆動をVD信号(すなわちフレーム周期)に同期させる。
【0034】
図6は120fpsのフレームレートで画像データの取り込みを行う場合のVD信号とフォーカスレンズ7−2aのフォーカス駆動タイミング、電子シャッタにおける電荷掃き出しパルス(SUB)のタイミング、及び露光タイミングを示すタイミングチャートである。図6において、1回のVD信号が発生すると、それをトリガーとしてフォーカスレンズ7−2aを駆動するパルスが所定回数発生し(図6においては2回)、この駆動パルスに対応した駆動量だけフォーカスレンズ7−2aは移動をする。また、VD信号をトリガーとして電荷掃き出しパルスが所定回数発生し、SUBの数に応じて、CCD101に帯電している電荷の掃き出し処理を行なう。また、前記電荷掃き出し処理が終了した後に露光処理が行なわれる。露光処理によって、被写体の映像を画像データとして取り込み、この画像データを用いてAF評価値を取得する。上記駆動パルス数は可変であって、焦点距離、フォーカスレンズ繰り出し量(フォーカス駆動範囲)に応じて変化する。このように本発明に係るAF処理はVD信号に同期してフォーカスレンズ7−2aの駆動範囲内において行う。
【0035】
上記平滑微分処理を用いたAF処理について図7のフローチャートを用いて説明する。図7において、各動作ステップはS71、S72・・・のように表記する。図6を用いて説明したとおりVD信号に同期してAF処理を行なうので、まず、VD信号の立ち下がりを検出するまで処理を待つ(S71)。VD信号の立ち下がりを検出した後に、所定パルス数に応じてフォーカスモータ7−2bを駆動し、フォーカスレンズ7−2aを移動する(S72)。フォーカスレンズ7−2aを移動した後に映像信号を取得し、この映像信号に基づく画像データによってAF評価値を算出する(S73)。AF評価値の取得数が平滑微分演算に足りるか否か(平滑微分範囲を満たすか否か)を判定し(S74)、AF評価値取得数が平滑微分範囲に達していなければ処理をS71に戻す(S74のNO)。
【0036】
取得したAF評価値が平滑微分範囲に達していれば(S74のYES)、上記の平滑微分演算式を用いて平滑微分値を算出する(S75)。上記の処理をフォーカスレンズ7−2aの駆動範囲終了位置に達するまで繰り返す(S76のNO)。フォーカスレンズ7−2aが終了位置に達した場合(S76のYES)、上記において算出した平滑微分値を用いた合焦位置検出処理を行ない(S77)、合焦位置検出処理の結果に基づいてNG判定処理を行なって(S78)、NG判定処理により設定された合焦位置にフォーカスレンズ7−2aを移動して当該AF処理を終了する(S79)。次に合焦位置検出処理(S77)、NG判定処理(S78)の詳細について説明する。
【0037】
図8は、合焦位置検出処理(図7のS77)の詳細な処理の流れを示したフローチャートである。まず算出した平滑微分値からゼロに近い値を検索する(S81)。平滑微分値にゼロに近い値が無い場合(S82のNO)、合焦NG(S86)として合焦位置検出処理を終了する。平滑微分値にゼロに近い値がある場合(S82のYES)は周辺値判定処理(S83)を行なう。周辺値判定処理(S83)は、ゼロに近い平滑微分値の周辺の平滑微分値が、ゼロに近い平滑微分値に対して、単調下降もしくは単調上昇しているかどうかを判定する。すなわち、ゼロに近い平滑微分値以前に取得されている平滑微分値が、ゼロに近い平滑微分値に対して単調上昇し、かつ、ゼロに近い平滑微分値以後に取得された平滑微分値が、ゼロに近い平滑微分値に対して単調下降しているか否かを判定する(S84)。判定の結果、単調下降及び単調上昇していれば(S84のYES)、合焦OKと判定し(S85)、そうでなければ(S84のNO)、合焦NG(S86)と判定して合焦位置検出処理を終了する。
【0038】
図9は、NG判定処理(図7のS78)の詳細な処理の流れを示したフローチャートである。合焦位置検出処理(図7のS77)において合焦OKであれば(S91のYES)、その平滑微分値に対応するフォーカスレンズ7−2aの位置を合焦位置として決定し(S92)、合焦NGであれば(S91のNo)、NG位置(例えば過焦点距離)を合焦位置として決定する(S93)。
【0039】
上記のAF処理において、VD信号に同期して取得されるAF評価値と、AF評価値を元にして算出される平滑微分値の例を図10、図11に示す。図10は、同一被写体に対するAF処理において、互いに光量が異なる環境において算出されたAF評価値の変位の例をグラフで示した図であって、縦軸はAF評価値の大きさを表わし、横軸はフォーカスレンズ7−2aの位置を示している。図10(a)はLV10の場合であり、図10(b)はLV8の場合である。即ち、図10(b)は図10(a)よりも、光量が少ない(暗い)環境で取得されたAF評価値に関するものである。従って、隣接画素間の輝度差が微小であるため雑音の影響が大きくAF評価値にバラツキが生じて複数のピーク位置が現われている。AF評価値のピーク位置(極大値)が図10(a)に示すように1カ所であれば、そこを合焦位置として設定すればよいが、図10(b)に示すように複数のピーク位置がある場合、どの位置を合焦位置とするかは単純に判定することはできない。
【0040】
図11は、図10で示したAF評価値の平滑微分値を示したグラフである。図11において横軸は図10と同様にフォーカスレンズ7−2aの位置を示し、縦軸は平滑微分値の大きさを示す。図11(a)は図10(a)に示したAF評価値の変位を元にした平滑微分値である。図11(b)は図10(b)に示したAF評価値の変位を元にした平滑微分値を示している。図11(a)及び図11(b)において、フォーカスレンズ7−2aの位置が「5」に至るまでは(平滑微分値が4個以上取得できるまでは)、所定数のAF評価値が取得されないのでは平滑微分値は算出されない。所定数のAF評価値が取得された後に算出される平滑微分値は、フォーカスレンズ7−2aの移動に伴って平滑微分値は増加方向に変位し、ある点で符号がマイナスからプラスに反転する。図11においてフォーカスレンズ7―2aの位置が5から平滑微分演算が開始され、7から8の間で符号が反転している。この反転する点がAF評価値の極大値に相当する。このように、先に示した演算式によって算出された平滑微分値の符号が反転する位置、即ち平滑微分値がゼロの位置がAF評価値の極大点となる。
【0041】
上記にて説明したとおり、平滑微分値の符号が反転するAF評価値の取得位置を検出することで、合焦位置を特定することができ、この合焦位置にフォーカスレンズ7―2aを移動させることでAF処理を行なうことができる。
【実施例2】
【0042】
次に本発明に係る撮像装置を用いた撮像方法の別の実施形態について説明する。本実施例におけるフォーカスレンズ7−2aの駆動方法と平滑微分値の算出方法は実施例1と同様であるので、異なる処理を重点に説明する。
【0043】
図12は実施例2に係るAF処理の流れを示すフローチャートである。各動作ステップはS121、S122・・のように表記する。まず、VD信号の立ち下がりを検出するまで信号待ち処理を行ない(S121)、VD信号の立ち下がりの検出をトリガーにして所定パルス量に応じてフォーカスモータ7−2bを駆動し、フォーカスレンズ7−2aを移動する(S122)。フォーカスレンズ7−2aを移動した後に露光処理を行なって映像信号を取得し、この映像信号に基づく画像データによってAF評価値を算出する(S123)。AF評価値の取得数が平滑微分演算に足りるか否か(平滑微分範囲を満たすか否か)を判定し(S124)、AF評価値取得数が平滑微分範囲に達していなければ処理をS121に戻す(S124のNO)。
【0044】
所定個数のAF評価値が取得されている場合(S124のYES)、既に説明した演算式を用いて平滑微分値を算出する(S125)。
【0045】
算出された平滑微分値により合焦位置検出処理を行ない、合焦位置が検出された否かを判定する(S126)。合焦位置が検出された場合(S126のYES)、NG判定処理に移行し(S128)、合焦位置が検出されない場合(S126のNO)、フォーカスレンズが駆動範囲終了位置に達しているかを判定して(S127)、フォーカスレンズが終了位置に達している場合(S127のYES)はNG判定処理(S128)に移行し、フォーカスレンズが駆動終了位置に達していなければ、VD信号待ち(S121)に移行する。
【0046】
次に上記合焦位置検出処理(S126)及びNG判定処理(S128)の詳細について説明する。図13は、合焦位置検出処理(図12のS126)の詳細な処理の流れを示したフローチャートである。まず算出した平滑微分値が略ゼロであるか否かを判定する(S131)。平滑微分値が略ゼロでは無い場合(S131のNO)、合焦NGとして(S135)当該処理は終了する。算出した平滑微分値が略ゼロであれば(S131のYES)、周辺値判定処理(S132)を行なう。周辺値判定処理(S132)は、略ゼロの平滑微分値の周辺の平滑微分値が、略ゼロの平滑微分値に対して、単調下降もしくは単調上昇しているかどうかを判定する。すなわち、略ゼロの平滑微分値以前に取得されている平滑微分値が、略ゼロの平滑微分値に対して単調上昇しているか否か、もしくは、略ゼロの平滑微分値以後に取得された平滑微分値が、略ゼロの平滑微分値に対して単調下降しているか否かを判定し、判定の結果、単調下降または単調上昇していれば(S133のYES)、合焦OKと判定し(S134)、判定の結果、単調下降または単調上昇していなければ(S133のNO)、合焦NG(S135)と判定して合焦位置検出処理を終了する。
【0047】
図14は、NG判定処理(図12のS128)の詳細な処理の流れを示したフローチャートである。合焦位置検出処理(図12のS126)において合焦OKであれば(S141のYES)、その平滑微分値に対応するフォーカスレンズ7−2aの位置を合焦位置として決定し(S142)、合焦NGであれば(S141のNO)、NG位置(例えば過焦点距離)を合焦位置として決定する(S143)。
【0048】
上記実施例2によれば、平滑微分値を算出するたびに、合焦位置検出処理を行なうので、レンズ駆動終了位置までフォーカスレンズ7−2aを駆動することなく、その途中でAF処理を終了することができる。
【実施例3】
【0049】
次に本発明に係る撮像装置を用いた撮像方法のさらに別の実施形態について説明する。本実施例は、モードダイアルSW2によって指定される撮影モードに応じて平滑微分処理を可変させることを特徴とする。上記実施例1、2と重複する部分の説明は省略し、異なる部分を重点に説明する。
【0050】
まず、本実施例に係るAF処理について図15のフローチャートを用いて説明する。各動作ステップはS150、S151・・のように表記する。まず、現在の撮影モードによって平滑微分範囲を設定する処理を行なう(S150)。平滑微分範囲を設定した後に、VD信号の立ち下がりを検出するまで待ち処理を行なう(S151)。VD信号の立ち下がりを検出した後に、所定パルス数に応じてフォーカスモータ7−2bを駆動し、フォーカスレンズ7−2aを移動する(S152)。フォーカスレンズ7−2aを移動した後に映像信号を取得し、この映像信号に基づく画像データによってAF評価値を算出する(S153)。AF評価値の取得数が平滑微分演算に足りるか否か(平滑微分範囲を満たすか否か)を判定し(S154)、AF評価値取得数が平滑微分範囲に達していなければ処理をS151に戻す(S154のNO)。
【0051】
取得したAF評価値が平滑微分範囲に達していれば(S154のYES)、この平滑微分範囲によって、実施例1において説明した平滑微分演算式を用いた平滑微分演算を行なう(S155)。上記の処理をフォーカスレンズ7−2aの駆動範囲終了位置に達するまで繰り返す(S156のNO)。フォーカスレンズ7−2aが終了位置に達した場合(S156のYES)、上記において算出した平滑微分値を用いた合焦位置検出処理を行ない(S157)、合焦位置検出処理の結果に基づいてNG判定処理を行なって(S158)、NG判定処理により設定された合焦位置にフォーカスレンズ7−2aを移動して当該AF処理を終了する(S159)。
【0052】
このように、実施例3におけるAF処理は、実施例1におけるAF処理において、AD信号待ち処理を行なう前に、当該撮像装置の撮影モードによって平滑微分範囲を設定し、設定した平滑微分範囲に応じた平滑微分処理を行なうことを特徴としている。次に、平滑微分パラメータ設定処理(S150)のより詳細な処理の流れを説明するが、合焦位置検出処理(S157)、NG判定処理(158)は、実施例1における合焦位置検出処理(S77)、NG判定処理(S78)と同様の処理となるので、詳細な説明は省略する。
【0053】
図16は、平滑微分パラメータ設定処理(図15のS150)の詳細な処理の流れを示したフローチャートである。まず、モードダイアルSW2によって指定されている現在の撮影モードを取得する(S161)。次に、取得した撮影モードが「通常AFモード」であるか否かを判定する(S162)。撮影モードが通常AFモードであれば(S162がYES)、通常AFモード用の平滑微分範囲を設定する(ここでは通常AFモード用平滑微分範囲を3とする)。撮影モードが通常AFモードでなければ(S162がNO)、当該撮像装置はマクロAFモードに設定されているので、マクロAFモード用の平滑微分範囲を設定する(ここではマクロAFモード用平滑微分範囲を2とする)。このように設定された平滑微分範囲を用いて、上記にて説明したAF処理を行なう。
【0054】
次に、上記のように異なる撮影モードにおいて平滑微分範囲を変更する効果について説明する。既に説明したとおりフォーカスレンズ7−2aは、1回のVD信号に対応するフォーカスモータ7−2bの所定駆動量に応じて移動する。ここでは、フォーカスモータ7−2bがパルスモータであるとして説明をする。
【0055】
1回のVD信号に対応する駆動パルス数(フォーカス駆動量)は、通常AFモードよりもマクロAFモードの方が多く設定される。例えば、通常AFモード時は2パルス、マクロAFモード時は6パルスである。これは、図20に示すように撮影モードによってフォーカスレンズ繰り出し量が異なるからである。図20において、通常AFモード時のフォーカスレンズ繰り出し量は30パルス、マクロAFモード時のフォーカスレンズ繰り出し量は200パルスである。このように、通常AFモード時よりも、マクロAFモード時の方が、1回のVD信号に対応してフォーカスレンズ7−2aが移動する量が大きいため、隣接するAF評価値の変位量も大きくなる。
【0056】
このような条件のもと、マクロAFモード時の平滑微分演算において、仮に、通常AFモード時の平滑微分演算と同じ平滑微分範囲を設定すると(たとえは平滑微分範囲を3とすると)前後18パルス分相当のAF評価値を用いた平滑微分演算を行なうこととなり、AF評価値間の相関が強くなりすぎて、AF評価値の変位が平均化されすぎてしまい不具合が生じる。
【0057】
この不具合について、図18及び図19を用いて説明する。図18と図19は、同一の撮影条件で撮影した画像データから取得したAF評価値の変位(a)と、このAF評価値を用いた平滑微分値の変位(b)を示すグラフであって、図18は平滑微分範囲が「3」の場合、図19は平滑微分範囲が「2」の場合である。図18及び図19において、横軸はフォーカスレンズ7−2aの位置を示し、縦軸は、AF評価値(a)と平滑微分値(b)を示している。
【0058】
被写体と背景の合焦位置が近接している場合、図18(a)及び図19(a)に示すように、AF評価値のピークが近くなる。このような状態のときに平滑微分範囲を3として平滑微分演算を行なった結果が図18(b)である。図18(b)に示すように、平滑微分値の極値(0位置)が被写体ではなく背景側で検出されてしまう。同じ画像データをAF評価値の変位を元にして、平滑微分範囲を2として平滑微分演算を行なった結果が図で図19(b)である。図19(b)に示すように、被写体に対して平滑微分値の極値(0位置)を検出することができる。
【0059】
マクロAFモードでは、既に説明したとおり、通常AFモードに比べてフォーカス駆動量が大きいため、被写体と背景によるAF評価値のピークが近接しやすい。従って、上記の通り、AF評価値の相関を弱くするための平滑微分範囲を2として、通常AFモード時の平滑微分範囲よりも狭く設定することで、偽合焦を防止することができる。
【実施例4】
【0060】
次に上記実施例3に基づいた更に別の実施形態を説明する。本実施例におけるAF処理とフォーカスレンズ7−2aの駆動方法、平滑微分値の算出方法は上記実施例3と同様である。ここでは、異なる処理について説明する。
【0061】
図17は、平滑微分パラメータ設定処理(図15のS70)の別の詳細な処理の流れを示したフローチャートである。まず、現在の撮影設定を取得する(S171)。撮影設定は、SW3、SW4によって可変することができる焦点距離であって、中立位置を「mean」、ズームインした状態を「Tele」、ズームアウトした状態を「Wide」とする。
【0062】
取得した焦点距離がMean以下であるか否かを判定する(S172)。焦点距離がMean以下である場合は(S172のYES)、Wide側平滑微分範囲を設定する(S173)。ここでは、Wide側平滑微分範囲は3とする。焦点距離がMean以下では無い場合(長焦点である場合)は(S172のNO)、Tele側平滑微分範囲を設定する(S174)。ここでは、Tele側平滑微分範囲は2とするこのように設定された平滑微分範囲を用いて、上記にて説明したAF処理を行なう。
【0063】
次に、焦点距離の違いによって平滑微分範囲を変更する効果について説明する。既に説明したとおりフォーカスレンズ7−2aは、1回のVD信号に対応して、フォーカスモータ7−2bが所定の駆動を行なうことで移動する。ここでは、フォーカスモータ7−2bがパルスモータであるとして説明をする。
【0064】
図21に示すように、焦点距離によってフォーカスレンズ繰り出し量が異なり、焦点距離がWide側からTele側の間で30パルスから350パルスの幅がある。1回のVD信号に対応する駆動パルス数(フォーカス駆動量)は、Wide側(Mean以下)よりもTele側(Meanより長焦点)の方が多く、例えば、Wide側は2パルス、Tele側は6パルスに設定される。
【0065】
このように、焦点距離がWide側の状態よりもTele側の状態の方が駆動パルス数は大きいため、1回のVD信号に対応してフォーカスレンズ7−2aが移動する量が大きいため、隣接するAF評価値の変位量も大きくなる。従って、Tele状態の場合に、仮に、mean以下の状態と同じ平滑微分範囲を設定して(たとえは平滑微分範囲を3として)、平滑微分演算を行なうと前後18パルス分相当のAF評価値を用いた平滑微分演算を行なうこととなり、AF評価値間の相関が強すぎることとなり、AF評価値の変位が平均化されすぎて平滑微分値の極値(0付近)が正しく検出できず偽合焦が生じる。
【0066】
このような偽合焦を防止するために、被写体と背景とのAF評価値ピークが近くなるTele状態では平滑微分範囲を2に設定し、AF評価値間の相関の割合を低くしている。本実施例において、平滑微分範囲の設定を可変させるための判断としてフォーカ繰り出し量により焦点状態を使用しているが、フォーカス繰り出し量を閾値として、平滑微分範囲の可変判断とすることも可能である。
【0067】
また、上記実施例1及び上記実施例4のいずれにおいても、同じ平滑微分演算式を用いていた例について説明したが、平滑微分演算式はこれに限ったものではなく、他の微分式への置き換えが可能である。また、いずれの構成においても、AF評価値から平滑微分演算を行なった結果によって、AF評価値の極値の付近を合焦位置とすることできるので、低輝度や低コントラストによる、AF評価値のバラツキに影響を受けることなく精度の高いAF処理を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、カメラ付携帯機器に搭載可能な撮像装置及びその撮像方法などにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る撮像装置の例を示す正面図である。
【図2】本発明に係る撮像装置の例を示す上面図である。
【図3】本発明に係る撮像装置の例を示す背面図である。
【図4】本発明に係る撮像装置の例を示す機能ブロック図である。
【図5】本発明に係る撮像装置におけるAF処理エリアのイメージ図である。
【図6】本発明に係る撮像装置のAF評価値取得タイミング等を示すタイミングチャートである。
【図7】本発明に係る撮像装置を用いて行うAF処理の例を示すフローチャートである。
【図8】上記AF処理の詳細な処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】上記AF処理の詳細な処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】本発明に係る撮像装置のAF処理において取得されるAF評価値の変位例を示す図である。
【図11】本発明に係る撮像装置のAF処理において算出される平滑微分値の変位例を示す図である。
【図12】本発明に係る撮像装置を用いて行うAF処理の別の例を示すフローチャートである。
【図13】上記AF処理の詳細な処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】上記AF処理の詳細な処理の流れを示すフローチャートである。
【図15】本発明に係る撮像装置を用いて行うAF処理の別の例を示すフローチャートである。
【図16】上記AF処理の詳細な処理の流れを示すフローチャートである。
【図17】上記AF処理の詳細な処理の流れを示すフローチャートである。
【図18】本発明に係る撮像装置のAF処理において取得されるAF評価値と平滑微分値の変位例を示す図である。
【図19】本発明に係る撮像装置のAF処理において算出されるAF評価値と平滑微分値の変位例を示す図である。
【図20】本発明に係る撮像装置の撮影モードとフォーカスレンズ繰り出し量の関係を示す図である。
【図21】本発明に係る撮像装置の焦点距離とフォーカスレンズ繰り出し量の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
7−2a フォーカスレンズ
7−2b フォーカスモータ
108 ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影レンズを通過してきた被写体の光を受光する撮像素子、前記撮影レンズを移動させるレンズ移動手段、前記撮影素子から得た画像データによって焦点を決定する自動焦点検出手段を有する撮像装置において、
上記自動焦点検出手段は、上記画像データを用いて算出するAF評価値を用いた平滑微分演算によって焦点位置を決定することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
上記AF評価値は、上記画像データを構成する隣接画素の輝度差を積分した値であることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
上記平滑微分演算は、AF評価値の変位量に係数を乗した値を総計する演算であることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
上記平滑微分演算に用いる係数は、平滑微分値を求める時点のAF評価値から乖離する度合いに応じて大きくなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項5】
上記平滑微分演算は、以下の式により平滑微分値を求めるものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の撮像装置。
Y[0]=Σ[i=0→a](X[i]−X[−i])×bi
ただし、Y[0]は平滑微分値、iは正数、aは総計範囲、X[i]はAF評価値、biはAF評価値からの乖離度合いに応じて大きくなる加重係数である。
【請求項6】
少なくとも一般的な被写体を撮影する通常撮影モード、近接した被写体を撮影するマクロモードを含む複数の撮影条件をを選択可能な撮影条件設定手段をさらに有し、
上記自動焦点検出手段は、上記撮影条件設定手段によって設定された撮影条件に応じて、平滑微分演算の演算対象となるAF評価値の総計範囲を決定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項7】
上記自動焦点検出手段は、上記撮影レンズの焦点距離に応じて、平滑微分演算の対象となるAF評価値の総計範囲を決定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項8】
上記自動焦点検出手段は、上記撮影条件によって可変する撮影レンズの移動ステップ量に応じて、平滑微分演算の対象となるAF評価値の総計範囲を決定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項9】
上記自動焦点検出手段は、上記AF評価値を平滑微分演算した結果により決定する焦点位置が撮影レンズ駆動範囲内である場合に、そのAF評価値取得時の撮影レンズ位置を焦点位置として決定することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項10】
上記自動焦点検出手段は、上記撮影レンズ駆動範囲内のAF評価値を取得した後に平滑微分演算を行い、焦点位置を決定することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項11】
上記自動焦点検出手段は、上記撮影レンズが駆動範囲内を移動中に平滑微分演算を行ない、焦点位置を決定することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項12】
上記自動焦点検出手段が、撮影レンズ移動範囲内で焦点位置を決定できなかった場合、撮影レンズの過焦点位置を焦点位置とすることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項13】
上記レンズ移動手段は、上記自動焦点検出手段が決定した焦点位置に撮影レンズを移動させることを特徴とする請求項12に記載の撮像装置。
【請求項14】
撮影レンズを通過してきた被写体の光を受光する撮像素子、前記撮影レンズを移動させるレンズ移動手段、前記撮影素子から得た画像データによって焦点を決定する自動焦点検出手段を有する撮像装置を用いて行なう撮像方法において、
上記自動焦点検出手段が上記画像データを用いてAF評価値を算出するステップと、
上記AF評価値を用いて平滑微分演算を行なうステップと、
上記平滑微分演算の結果によって上記撮影レンズの焦点位置を決定するステップを有することを特徴とする撮像方法。
【請求項15】
上記AF評価値は、上記画像データを構成する隣接画素の輝度差を積分した値であることを特徴とする請求項14記載の撮像方法。
【請求項16】
上記平滑微分演算は、AF評価値の変位量に係数を乗した値を総計する演算であることを特徴とする請求項14または15に記載の撮像方法。
【請求項17】
上記平滑微分演算に用いる係数は、平滑微分値を求める時点のAF評価値から乖離する度合いに応じて大きくなることを特徴とする請求項14乃至16のいずれかに記載の撮像方法。
【請求項18】
上記平滑微分演算は、以下の式により平滑微分値を求めるものであることを特徴とする請求項14乃至17のいずれかに記載の撮像方法。
Y[0]=Σ[i=0→a](X[i]−X[−i])×bi
ただし、Y[0]は平滑微分値、iは正数、aは総計範囲、X[i]はAF評価値、biはAF評価値からの乖離度合いに応じて大きくなる加重係数である。
【請求項19】
上記撮影装置は、
少なくとも一般的な被写体を撮影する通常撮影モード、近接した被写体を撮影するマクロモードを含む複数の撮影条件をを選択可能な撮影条件設定手段をさらに有し、
上記撮影条件設定手段によって撮影条件を設定するステップと、
上記自動焦点検出手段が、上記撮影条件設定手段によって設定された撮影条件を取得するステップと、
上記撮影条件に応じて、平滑微分演算の演算対象となるAF評価値の総計範囲を決定するステップを有することを特徴とする請求項14至18のいずれかに記載の撮像方法。
【請求項20】
上記自動焦点検出手段が、上記撮影レンズの焦点距離に応じて、平滑微分演算の対象となるAF評価値の総計範囲を決定するステップをさらに有することを特徴とする請求項14乃至18のいずれかに記載の撮像方法。
【請求項21】
上記自動焦点検出手段が、上記撮影条件によって可変する撮影レンズの移動ステップ量に応じて、平滑微分演算の対象となるAF評価値の総計範囲を決定するステップを有することを特徴とする請求項14乃至18のいずれかに記載の撮像方法。
【請求項22】
上記自動焦点検出手段が、上記AF評価値を平滑微分演算した結果により決定する焦点位置が撮影レンズ駆動範囲内である場合に、そのAF評価値取得時の撮影レンズ位置を焦点位置として決定するステップをさらに有することを特徴とする請求項14乃至21のいずれかに記載の撮像方法。
【請求項23】
上記自動焦点検出手段が、上記撮影レンズ駆動範囲内のAF評価値を取得した後に平滑微分演算を行い、焦点位置を決定するステップを有することを特徴とする請求項14乃至22のいずれかに記載の撮像方法。
【請求項24】
上記自動焦点検出手段は、上記撮影レンズが駆動範囲内を移動中に平滑微分演算を行ない、焦点位置を決定するステップをさらに有することを特徴とする請求項14乃至21のいずれかに記載の撮像方法。
【請求項25】
上記自動焦点検出手段が、撮影レンズ移動範囲内で焦点位置を決定できなかった場合、撮影レンズの過焦点位置を焦点位置とするステップをさらに有することを特徴とする請求項14乃至24のいずれかに記載の撮像方法。
【請求項26】
上記レンズ移動手段は、上記自動焦点検出手段が決定した焦点位置に撮影レンズを移動させるステップをさらに有することを特徴とする請求項25に記載の撮像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−31702(P2009−31702A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208446(P2007−208446)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】