説明

撮像装置及び画像生成方法

【課題】 簡素な処理で低解像動画から高解像画像を取得できる撮像装置及び画像生成方法等を提供すること。
【解決手段】撮像装置は、画像取得部と、加算画像生成部と、圧縮処理部と、伸張処理部と、推定演算部と、画像出力部を含む。加算画像生成部は、撮像画像fxにおいて加算単位を順次画素シフトさせ、加算単位に含まれる画素値を重み付け加算して加算画像A〜Aを取得する。圧縮処理部は、加算画像A〜Aの平均を平均画像Mとして求め、その平均画像Mと、加算画像Aの差分を差分画像Dとして求め、求めた平均画像Mと差分画像Dを圧縮する。伸張処理部は、圧縮された平均画像Mと差分画像Dを伸張して加算画像A〜Aを求める。推定演算部は、加算画像A〜Aに基づいて撮像画像fxの画素値vijを推定する。画像出力部は、画素値vijに基づく高解像画像を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及び画像生成方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今のデジタルカメラやビデオカメラには、静止画撮影モードと動画撮影モードを切り替えて使用できるものがある。例えば、動画撮影中にユーザーがボタン操作をすることで、動画よりも高解像の静止画を撮影できるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−124621号公報
【特許文献2】特開2008−243037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、静止画撮影モードと動画撮影モードを切り替える手法では、ユーザーがシャッターチャンスに気付いたときには既に決定的瞬間を逃していることが多いという課題がある。
【0005】
本発明者は、この決定的瞬間の撮影を実現するために、低解像動画から任意タイミングの高解像静止画を生成することを考えている。例えば、特許文献1、2には、画素シフトにより取得された低解像画像から高解像画像を合成する手法が開示されている。しかしながら、この手法では、画素シフトによる撮像が必要となるためカメラの構成が複雑となってしまう。また、高解像化処理の負荷が大きいことや、画素値の推定が困難な場合があるという課題がある。
【0006】
本発明の幾つかの態様によれば、簡素な処理で低解像動画から高解像画像を取得できる撮像装置及び画像生成方法等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、撮像画像を取得する画像取得部と、加算画素値を取得する単位である加算単位を前記撮像画像の複数の画素毎に設定し、前記加算単位に含まれる画素値を重み付け加算して前記加算画素値を求め、求めた前記加算画素値による加算画像を取得する加算画像生成部と、前記加算画像を圧縮する圧縮処理部と、圧縮された前記加算画像を伸張する伸張処理部と、伸張された前記加算画像に基づいて前記撮像画像の画素値を推定する推定演算部と、前記推定演算部により推定された画素値に基づく高解像画像を出力する画像出力部と、を含み、前記加算画像生成部は、前記加算単位を順次画素シフトさせて第1〜第nの加算画像(nは2以上の自然数)を前記加算画像として取得し、前記圧縮処理部は、前記第1〜第nの加算画像の平均を平均画像として求め、前記平均画像と、前記第1〜第nの加算画像のうちの第mの加算画像(mはn以下の自然数)との差分を、第mの差分画像として求め、求めた前記平均画像と前記第mの差分画像を圧縮し、前記伸張処理部は、圧縮された前記平均画像と前記第mの差分画像を伸張して前記第1〜第nの加算画像を求める撮像装置に関係する。
【0008】
本発明の一態様によれば、加算単位が順次画素シフトされて第1〜第nの加算画像が取得され、その第1〜第nの加算画像の平均画像が求められる。そして、その平均画像と第mの加算画像の差分である第mの差分画像が求められ、その平均画像と第mの差分画像が圧縮される。そして、それらの圧縮された画像が伸張されて第1〜第nの加算画像が求められ、その第1〜第nの加算画像に基づいて撮像画像が推定される。
【0009】
これにより、例えば後述する推定処理を適用することで、簡素な処理で低解像の加算画像から高解像な撮像画像を復元することが可能になる。動画撮影と静止画撮影を切り換えないため、動画データから任意タイミングの高解像静止画を取得できる。また、差分画像を求めることで、高圧縮率で画像データを圧縮できる。
【0010】
また本発明の一態様では、前記加算画像生成部は、前記加算単位を、水平又は垂直に1画素ずつ順次シフトさせて第1〜第nのポジションに設定し、前記第1〜第nのポジションにおいてそれぞれ前記第1〜第nの加算画像を取得し、前記第1〜第nのポジションのうちの第mのポジションと第m+1のポジションの前記加算単位は、共通の画素を含んでもよい。
【0011】
このようにすれば、共通の画素を含みながら加算単位を順次画素シフトして加算画素値を求め、その加算画素値により第1〜第nの加算画像を構成できる。
【0012】
また本発明の一態様では、前記圧縮処理部は、前記第1〜第nのポジションの前記加算画素値の平均値を、前記平均画像の画素値として求める平均画像生成部と、前記平均画像の画素値と、前記第mのポジションの前記加算画素値の差分値を、前記第mの差分画像の画素値として求める差分画像生成部と、を有してもよい。
【0013】
このようにすれば、第1〜第nの加算画像の画素値を平均することで、平均画像の画素値を求めることができる。また、平均画像の画素値と、第mの加算画像の画素値の差分値により、第mの差分画像の画素値を求めることができる。
【0014】
また本発明の一態様では、低解像動画を生成する低解像動画生成部を含み、前記撮像画像がRGBベイヤー配列の画像であり、前記加算単位が、隣接する4画素である場合に、前記加算画像生成部は、第1〜第4のポジション(n=4)において、前記重み付け加算によりRGBが混色された第1〜第4の加算画像を取得し、前記低解像動画生成部は、前記第1〜第4の加算画像のうちの第1〜第3の加算画像に基づいて、前記低解像動画のRGBの画素値を推定により求めてもよい。
【0015】
このようにすれば、RGBが加算により混色されている加算画像から、RGBのカラー画像を生成することができる。これにより、撮像画像を復元することなく簡易的にカラー動画を得ることができる。
【0016】
また本発明の一態様では、前記圧縮処理部は、前記第mの差分画像をエントロピー符号化により可逆圧縮してもよい。
【0017】
差分画像は、平均画像と加算画像の差分であるため画素値のエントロピーを撮像画像よりも小さくできる。そのため、差分画像をエントロピー符号化することで高圧縮率で圧縮できる。
【0018】
また本発明の一態様では、前記撮像画像がRGBベイヤー配列の画像である場合に、前記推定演算部は、前記撮像画像の前記RGBベイヤー配列の画素値を推定により求め、前記画像出力部は、推定された前記RGBベイヤー配列の画素値をデモザイキング処理した画像に基づいて高解像動画を出力してもよい。
【0019】
このようにすれば、高圧縮率で圧縮された画像データから、撮像画像に相当する解像度の高解像動画を復元することができる。これにより、動画データの高圧縮率と高画質を両立することが可能になる。
【0020】
また本発明の一態様では、画素値の変化幅に応じて適応的に移動平均の範囲を調整する適応的ノイズ低減処理を、前記第mの差分画像に対して行うノイズ低減処理部を含んでもよい。
【0021】
差分画像は、平均画像と加算画像の差分であるため撮像画像よりも画素値の振幅が小さい。そのため、差分画像に適応的ノイズ低減処理を行うことで、効果的にノイズ低減を行うことができる。
【0022】
また本発明の一態様では、前記画像取得部は、第1フレームの撮像画像を基準撮像画像として取得し、前記第1フレームの前又は後の第2フレームの撮像画像と前記基準撮像画像の差分を差分撮像画像として取得し、前記加算画像生成部は、前記基準撮像画像に基づく前記第1〜第nの加算画像と、前記差分撮像画像に基づく前記第1〜第nの加算画像を取得してもよい。
【0023】
このようにすれば、フレーム間差分画像は、類似性が高い加算画像の差分となる。これにより、フレーム間差分画像から生成した平均画像の圧縮率を、通常の加算画像から生成した平均画像よりも向上可能である。
【0024】
また本発明の一態様では、第1のポジションに設定された前記加算単位と、前記第1のポジションの次の第2のポジションに設定された前記加算単位が重畳する場合に、前記推定演算部は、前記第1のポジションの加算画素値と、前記第2のポジションの加算画素値の差分値を求め、前記第1のポジションの加算単位から重畳領域を除いた第1の領域の加算画素値である第1の中間画素値と、前記第2のポジションの加算単位から前記重畳領域を除いた第2の領域の加算画素値である第2の中間画素値との関係式を、前記差分値を用いて表し、前記関係式を用いて前記第1、第2の中間画素値を推定し、推定した前記第1の中間画素値を用いて前記加算単位に含まれる各画素の画素値を求めてもよい。
【0025】
このようにすれば、加算単位が重畳しながら順次画素シフトされた第1〜第nの加算画像から中間画素値を推定し、推定した中間画素値から最終的な推定画素値を求めることができる。これにより、簡素な処理で撮像画像を推定できる。
【0026】
また本発明の一態様では、前記推定演算部は、前記第1、第2の中間画素値を含む連続する中間画素値を中間画素値パターンとする場合に、前記中間画素値パターンに含まれる中間画素値間の関係式を前記加算画素値を用いて表し、前記中間画素値間の関係式で表された前記中間画素値パターンと前記加算画素値とを比較して類似性を評価し、前記類似性の評価結果に基づいて、前記類似性が最も高くなるように、前記中間画素値パターンに含まれる中間画素値を決定してもよい。
【0027】
このようにすれば、加算単位が重畳されながら画素シフトされることで取得された複数の加算画素値に基づいて、中間画素値を推定により求めることができる。
【0028】
また、本発明の他の態様は、撮像画像を取得し、加算画素値を取得する単位である加算単位を前記撮像画像の複数の画素毎に設定し、前記加算単位に含まれる画素値を重み付け加算して前記加算画素値を求め、求めた前記加算画素値による加算画像を取得し、前記加算画像を圧縮し、圧縮された前記加算画像を伸張し、伸張された前記加算画像に基づいて前記撮像画像の画素値を推定するとともに、前記推定された画素値に基づく高解像画像を出力する場合に、前記加算単位を順次画素シフトさせて第1〜第nの加算画像(nは2以上の自然数)を前記加算画像として取得し、前記第1〜第nの加算画像の平均を平均画像として求め、前記平均画像と、前記第1〜第nの加算画像のうちの第mの加算画像(iはn以下の自然数)との差分を、第mの差分画像として求め、求めた前記平均画像と前記第mの差分画像を圧縮し、圧縮された前記平均画像と前記第mの差分画像を伸張して前記第1〜第nの加算画像を求める画像生成方法に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1のデータ圧縮手法についての説明図。
【図2】ハフマン符号テーブルの例。
【図3】撮像装置の第1の構成例。
【図4】融合画像データの第1の符号割り当て例。
【図5】融合画像データの第2の符号割り当て例。
【図6】撮像装置の第2の構成例。
【図7】撮像装置の第2の構成例における融合画像データの符号割り当て例。
【図8】撮像装置の変形構成例。
【図9】低解像動画の生成手法についての説明図。
【図10】低解像動画の生成手法についての説明図。
【図11】低解像動画の生成手法についての説明図。
【図12】撮像装置の第3の構成例。
【図13】高解像静止画と低解像静止画を同時に取得する撮像処理例。
【図14】高解像静止画と低解像静止画を同時に取得する撮像処理のシーケンス例。
【図15】データ圧縮前のデータ再構成例。
【図16】データ再構成において設定するデータ単位の例。
【図17】再構成データ単位の重畳シフト加算値の例。
【図18】同色の4画素を加算する場合の撮像部の構成例。
【図19】適応的ノイズ低減処理についての説明図。
【図20】図20(A)、図20(B)は、適応的ノイズ低減処理についての説明図。
【図21】適応的ノイズ低減処理についての説明図。
【図22】適応的ノイズ低減処理についての説明図。
【図23】適応的ノイズ低減処理についての説明図。
【図24】撮像装置の第4の構成例。
【図25】撮像装置の第4の構成例が行う処理の模式図。
【図26】撮像装置の第4の構成例における撮像部の変形構成例。
【図27】図27(A)、図27(B)は、推定画素値と中間画素値の説明図。
【図28】復元推定処理についての説明図。
【図29】復元推定処理についての説明図。
【図30】復元推定処理についての説明図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0031】
1.本実施形態の概要
デジタルカメラやビデオカメラの製品には、静止画撮影を主とするデジタルカメラに動画撮影機能をもたせたものや、動画撮影を主とするビデオカメラに静止画撮影機能をもたせたものがある。このような機器を使えば、静止画と動画の撮影を一つの機器でまかなえるという利便さがある。
【0032】
しかしながら、この手法では、多くの人が求めるシャッターチャンスを逃さず高品位な静止画を得ることが難しいという課題がある。例えば、動画撮影中に高品位静止画を撮影するモードに瞬時に切り替える方法では、動画が途切れたり、ユーザーが気づいたときには既に決定的瞬間を逃していたりするという課題がある。
【0033】
決定的瞬間の静止画を得るために、高フレームレートの高解像動画を取得し、その高解像動画から任意タイミングの静止画を抜き出す手法が考えられる。しかしながら、この手法では、高解像動画を撮影するためデータ量が増大するという課題がある。
【0034】
そこで本実施形態では、図1に示すように、撮像画像を画素加算して複数の低解像画像A〜Aを取得し、その複数の低解像画像A〜Aの平均画像Mを求める。そして、その平均画像Mと低解像画像A〜Aの差分画像D〜Dを求め、その差分画像D〜Dを例えばエントロピー符号化により圧縮する。差分画像D〜Dでは画素値がゼロ付近に偏在していると考えられるため、圧縮率を向上できる。
【0035】
さて、低解像画像から高解像画像を得る手法として、画素シフトにより撮影した低解像画像に対していわゆる超解像処理を行う手法が考えられる。例えば、この手法では、順次位置ずらししながら加算読み出しを行い、その複数の位置ずれ画像に基づいて高精細化画像を一旦仮定する。そして、仮定した画像を劣化させて低解像画像を生成し、元の低解像画像と比較し、その差異が最小になるように高精細画像を推定する。この超解像処理として、ML(Maximum-Likelihood)法、MAP(Maximum A Posterior)法、POCS(Projection Onto Convex Set)法、IBP(Iterative Back Projection)法等が知られている。
【0036】
例えば上述の特許文献1には、動画撮影時に画素シフトさせた低解像画像を時系列的に順次撮影し、その複数の低解像画像を合成することにより高解像画像を仮定し、その高解像画像に対して上記の超解像処理を施し、尤度の高い高解像画像を推定する手法が開示されている。
【0037】
しかしながら、この手法では、2次元フィルターを多用する繰り返し演算により推定精度を上げていく一般的な超解像処理を用いている。そのため、非常に処理の規模が大きくなったり、処理時間が増大したりしてしまい、例えばデジタルカメラのような処理能力やコストの制限がある機器への適用は困難であるという課題がある。
【0038】
また上述の特許文献2には、画素シフトさせた複数の低解像画像を撮像し、求めたい高解像画像を構成する仮の画素を副画素とおき、その副画素の平均値が、撮影された低解像画像の画素値と一致するように副画素の画素値を推定する手法が開示されている。この手法では、複数の副画素の初期値を設定し、算出したい副画素を除く副画素の画素値を低解像画像の画素値から差し引いて画素値を求め、それを順次隣接する画素に対して適用する。
【0039】
しかしながら、この手法では、初期値の特定が上手くいかないと推定誤差が非常に大きくなるという課題がある。この手法では、初期値を設定するために、所定の条件を満たす領域を画像から見つけ出している。そのため、適当な領域が撮影画像から見つけられないと、初期値の推定が困難になってしまう。また、初期値の設定に適当な領域を探索する処理が必要になってしまう。
【0040】
この点、本実施形態では、図1で後述するように、平均画像Mと差分画像D〜Dから低解像画像A〜Aを再生し、その低解像画像A〜Aから撮像画像を推定により復元する。この低解像画像A〜Aの加算画素値a(1)00〜a(4)01は、重畳画素シフトされたものであり、隣接する加算画素値は共通の画素を含んでいる。図27(A)〜図30で後述するように、この重畳画素シフトされた加算画素値を用いることで、高解像画像を推定する処理を簡素化できる。
【0041】
2.第1のデータ圧縮手法
次に、本実施形態について詳細に説明する。まず、撮像画像データの圧縮手法について説明する。なお以下では撮像素子がRGBベイヤー配列である場合を例に説明するが、本実施形態はこれに限定されず、例えば補色フィルターの撮像素子等であってもよい。また以下では4画素加算を行う場合を例に説明するが、本実施形態はこれに限定されず、他の画素数の加算を行ってもよい。また以下ではフレームfxの撮像画像を例に説明するが、他のフレームにおいても同様である。
【0042】
ここで、フレームとは、例えば撮像素子により画像が撮像されるタイミングや、画像処理において1つの撮像画像が処理されるタイミングである。あるいは、画像データにおける1つの画像も適宜フレームと呼ぶ。
【0043】
図1に示すように、フレームfxにおいて全画素読み出しによりRGBベイヤー配列の撮像画像(以下、「高精細フレーム画像fx」と呼ぶ)を取得する。高精細フレーム画像fxに、4画素で構成される加算単位(加算される画素群)を設定し、その加算単位の画素値に対して重み付けを行って加算する。このとき、加算単位を1画素分重畳させながら水平又は垂直にシフトさせ、4枚の画素加算画像A〜Aを生成する。
【0044】
4画素加算値aijは下式(1)で表わされ、画素加算画像A〜Aを構成する加算画素値はそれぞれ{aij、a(i+1)j、a(i+1)(j+1)、ai(j+1)}である。
ij=vij+(1/r)v(i+1)j
(1/r)vi(j+1)+(1/r)v(i+1)(j+1) (1)
【0045】
ここで、rは重み付けのパラメータであり、1≦rである。またvijは高精細フレーム画像におけるアドレス(i,j)の画素値である。
【0046】
次に、生成した画素加算画像A〜Aの加算位置の整合を行い、4枚の画素加算画像を重ね合わせた上で同一位置の値の加算平均をとることにより平均画像Mを生成する。即ち、画素加算画像A〜Aの4画素加算値をそれぞれ{a(1)ij,a(2)(i+1)j,a(3)(i+1)(j+1),a(4)i(j+1)}とすると、平均画像Mの画素値aijは下式(2)で表される。
ij=[a(1)ij+a(2)(i+1)j
(3)i(j+1)+a(4)(i+1)(j+1)]/4 (2)
【0047】
生成した平均画像Mを基準とし、その平均画像Mと画素加算画像A〜Aとの差分(方向ベクトル(1,−1)への射影)をそれぞれ差分画像D〜Dとする。差分画像D〜Dと平均画像Mを合わせて融合画像データF(M,D〜D)とする。差分画像D〜Dを構成する4画素加算差分値を{aD1ij,aD2ij,aD3ij,aD4ij}とすれば、下式(3)のように表わせる。
D1ij=aij−a(1)ij
D2ij=aij−a(2)(i+1)j
D3ij=aij−a(3)(i+1)(j+1)
D4ij=aij−a(4)i(j+1) (3)
【0048】
このようにして、静止画と動画を融合させた融合画像データF(M,D〜D)を生成し、それを記録しておき、その記録されたF(M,D〜D)を後段において解凍処理することにより、「高精細静止画データ」又は「動画データ」を適宜生成することが可能となる。
【0049】
なお、この例では差分(即ち方向ベクトル(1,−1)への射影)をとったが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、平均画像Mの画素値と画素加算画像A〜Aの画素値の相関分布に応じて、その主成分軸(分散が最も大きくなる直線)を求め、主成分軸に直交する軸に対して射影した値を用いた方が、より一層データの圧縮が可能となることは言うまでもない。
【0050】
3.エントロピー符号化
次に、上述した平均画像Mと差分画像D〜Dを圧縮する手法について説明する。
【0051】
平均画像M及び差分画像D〜Dの画素値データは、発生頻度分布の偏りが顕著になるため、エントロピー符号化(例えばハフマン符号,LZH等)がデータ圧縮として効果的である。エントロピー符号化とは、画素値の発生確率を求め、発生確率の高いものから短い符号長を割当てる圧縮手法である。
【0052】
例えば、平均画像Mの画素値データの平均値に対して最も短い符号長を割り当て、その平均値から離れる値ほど符号長を長くしていく符号化が適当である。即ち、差分画像D〜Dの画素値データは各々の平均がゼロであり、ゼロの発生確率をピークとして分布しているので、ゼロ値に最も短い符号を割当てるようにすればよい。また、平均画像M及び差分画像D〜Dの画素値データは、確率密度に応じて非線形量子化を行うことも有効である。
【0053】
一方、平均画像Mでは、確かに加算平均した画素値データなので発生頻度分布の偏りは顕著になるが、画素加算値の取りうる範囲は、差分画像D〜Dの画素値データと比較すると、かなり大きくなる。そのため、一般的に高圧縮率が期待できる非可逆圧縮法(JPEG,MPEG等)の適用がデータの圧縮としては効果的である。
【0054】
従って、平均画像Mにおいては画素数を削減して非可逆高圧縮を適用し、差分画像D〜Dにおいては、同様な発生分布の偏りを呈する特性を利用した高速エントロピー符号化を適用することが考えられる。
【0055】
次に、最も単純なハフマン符号を適用する場合の例を示す。多数の画像の画素値分布に基づいて一つのハフマン符号テーブルを生成すると、適用範囲が広くなり、圧縮効果は画像依存になってしまう。しかしながら、画像毎又は画像範囲毎にハフマンテーブルを毎回生成するのは効果的ではない。
【0056】
そこで、上記の平均画像Mに適用する場合、所定の画像領域毎に平均値αijを下式(4)により求め、その平均値αijと各加算平均値{aij}の差分値{a’ij}を下式(5)により求める。そして、その差分値{a’ij}を改めて平均画像Mのデータとし、ハフマン符号化を適用すればよい。このことにより、差分値{a’ij}は、普遍的にゼロを中心とした値の生起分布を形成できる。融合画像データF(M,D〜D)の中のMは、M={αij,a’ij}に置き換えて考えられる。
【数1】

a’ij=aij−αij (5)
【0057】
ここで、(h0,v0)は、平均値αijを算出する領域の始点であり、(h,v)は、平均値αijを算出する領域の終点である。例えば、平均値αijを算出する領域は、平均画像Mの全体である。平均値αijを算出する領域や、平均値αijの算出に用いる平均値aijの数は、データの圧縮率とのバランスを評価して決めればよい。
【0058】
上記の差分値{a’ij}と4画素加算差分値{aD1ij,aD2ij,aD3ij,aD4ij}は、それら自体が平均ゼロの値から成っているので、図2に示す符号割り当てが考えられる。このようにすれば、ハフマン符号テーブルは固定的な一種類で済ますことができる。
【0059】
なお、上述の平均値αijとして、下式(6)に示す固定値mAVRを適用し、変動データとして扱わずに先見情報として扱ってもよい。この場合、平均値mAVRはデータとして記録する必要はない。融合画像データF(M,D〜D)の中のMは、M={mAVR,a’ij}と置き換えて考えられる。下式(6)は、上式(1)で定義される重み付け4画素加算値の場合への適用であり、加算画素数や重み付けの掛け方によって適宜適正な値が設定されることに注意が必要である。
AVR=vmax・{1+(1/r)+(1/r)+(1/r)}/2 (6)
【0060】
ここで、rは重み付けのパラメータであり、1≦rである。vmaxは、画素値を規定する最大値である。
【0061】
4.第2のデータ圧縮手法
次に、上述した差分画像D〜Dのデータ量を更に削減する第2のデータ圧縮手法について説明する。
【0062】
差分画像{D,D}の組み合わせと差分画像{D,D}の組み合わせにおいて、相互に負の相関性がある。即ち、{aD1ij,aD3ij}はR画素又はB画素の重み付けがr=1のパターン同士であり、{aD2ij,aD4ij}はGr画素又はGb画素の重み付けがr=1のパターン同士である。これらの画素値は、平均値と加算画素値の差分値であるため、相互に負の相関性をもつことになる。
【0063】
そのため、4画素加算差分値{aD1ij,aD3ij},{aD2ij,aD4ij}の発生が規定される2次元座標空間において、生起分布の分散が最も小さくなる適切な軸を求め、その軸に差分値を射影した値を求めれば、更にデータの圧縮が可能である。生起分布の分散が最も小さくなる軸は、例えば、負の相関をもつ生起分布に沿った軸(1,−1)に直交する軸(1,1)である。
【0064】
ここでは、単純に上述の2組の4画素加算差分値を加算する例を示す。即ち、下式(7)に示すように、方向ベクトル(1,1)の軸への射影を行ってデータの圧縮を実現する。
φ=(aD1ij+aD3ij)/2,
φ=(aD2ij+aD4ij)/2 (7)
【0065】
この場合、記録データは、4画素加算差分値{aD3ij,aD4ij}に代えて差分加算値{φ,φ}とすればよい。差分加算値{φ,φ}で構成される画像データを{Φ,Φ}と表わせば、最終的に記録する融合画像データはF(M,aD1ij,aD2ij,Φ,Φ)と表わされる。
【0066】
5.高精細静止画の再生手法
上述の第1のデータ圧縮手法では、融合画像データF(M,D〜D)が得られる。このF(M,D〜D)から高精細静止画(図1のフレーム画像fx)を復元推定する手法について説明する。
【0067】
上式(3)を変形すると、下式(8)が得られる。下式(8)に示すように、平均画像Mを構成する4画素加算値{aij}と、差分画像D〜Dを構成する4画素加算値{aD1ij,aD2ij,aD3ij,aD4ij}から、画素加算画像A〜Aのそれぞれの4画素加算値{a(1)ij,a(2)(i+1)j,a(3)(i+1)(j+1),a(4)i(j+1)}が得られる。
(1)ij=aij−aD1ij
(2)(i+1)j=aij−aD2ij
(3)(i+1)(j+1)=aij−aD3ij
(4)i(j+1)=aij−aD4ij (8)
【0068】
求められた4画素加算値{a(1)ij,a(2)(i+1)j,a(3)(i+1)(j+1),a(4)i(j+1)}は、1枚の高精細画像を水平又は垂直に1画素ずつ重畳シフトした4画素加算値により構成されている画像データである。この4画素加算値を、図27(A)〜図30で後述する復元推定処理に適用することにより、元の高精細フレーム画像fxの画素値が求められる。
【0069】
上述の第2のデータ圧縮手法では、融合画像データF(M,aD1ij,aD2ij,Φ,Φ)が得られる。このF(M,aD1ij,aD2ij,Φ,Φ)から高精細静止画を復元推定する手法について説明する。
【0070】
上式(7)を変形すると、下式(9)が得られる。下式(9)より、差分画像D〜Dが得られる。差分画像D〜Dが得られれば、上記と同様に処理することにより、最終的な高精細フレーム画像fxが復元される。
D3ij=aD1ij−2φ
D4ij=aD2ij−2φ (9)
【0071】
なお、以上の実施形態では図1に示すように加算単位を4回シフトさせて加算画像A〜Aを取得し、平均画像Mと差分画像D〜Dを求めたが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、加算単位を9回シフトさせて加算画像A〜Aを取得し、平均画像Mと差分画像D〜Dを求めてもよい。
【0072】
6.撮像装置
図3に、上述のデータ圧縮処理と、高精細フレーム画像fxの復元処理を行う撮像装置の構成例を示す。
【0073】
撮像装置は、撮像とデータ圧縮処理を行う撮像部10と、高精細画像の復元処理を行う画像処理部20を含む。画像処理部20は、カメラ本体に内蔵されてもよいし、PC等の外部の情報処理装置により構成されてもよい。
【0074】
具体的には、撮像部10は、レンズ110、撮像素子120(撮像センサー)、加算画像生成部130(重畳シフト重み付け加算画像生成部)、圧縮処理部140、圧縮データ記録部150(融合圧縮データ記録部)、低解像動画生成部160(標準動画生成部)、動画データ圧縮部170、動画データ記録部180、モニター表示部190を含む。
【0075】
レンズ110は、被写体100を結像させる。撮像素子120は、結像された被写体像を撮像する。撮像により得られたアナログ信号は、図示しないA/D変換部によりデジタル信号に変換される。
【0076】
加算画像生成部130は、上述のように、画素シフトさせつつ撮像画像の画素値を加算し、撮像画像から画素加算画像A〜Aを生成する。
【0077】
圧縮処理部140は、画素加算画像A〜Aから平均画像Mと差分画像D〜Dを生成し、その平均画像Mと差分画像D1〜D4を圧縮する処理を行う。具体的には圧縮処理部140は、差分画像生成部141、平均画像生成部142、エントロピー符号化部143、データ圧縮部144を含む。
【0078】
平均画像生成部142は、画素加算画像A〜Aから平均画像Mを生成する。差分画像生成部141は、画素加算画像A〜Aと平均画像Mから差分画像D〜Dを生成する。エントロピー符号化部143は、上述のエントロピー符号化等の可逆圧縮により差分画像D〜Dを圧縮する。データ圧縮部144は、例えばM−JPEGやJPEG−XR等の非可逆圧縮により平均画像Mを圧縮する。
【0079】
圧縮データ記録部150は、圧縮された画像データを記録する。具体的には圧縮データ記録部150は、圧縮された差分画像D〜Dを記録する差分データ記録部151と、圧縮された平均画像Mを記録する平均画像データ記録部152を含む。
【0080】
低解像動画生成部160は、図9等で後述する処理によりリアルタイムの低解像動画を生成する。動画データ圧縮部170は、例えばAVCHD(H.264)やM−JPEG、JPEG−XR等により低解像動画を圧縮する。動画データ記録部180は、圧縮された低解像動画を記録する。モニター表示部190は、リアルタイムの又は再生された低解像動画を表示する。
【0081】
画像処理部20は、伸張処理部205、加算画像ノイズ低減処理部220、推定演算部230(高精細画像復元推定部)、高精細静止画生成部240、高精細動画生成部250、高画質標準動画生成部260、動画圧縮データ伸張部270、標準動画生成部280、画像出力部290、画像選択部295を含む。
【0082】
伸張処理部205は、圧縮データを伸張して加算画像A〜Aを再生する。具体的には、伸張処理部205は、圧縮データ伸張部200、加算画像再生部210(重み付け加算画像再生部)を含む。
【0083】
圧縮データ伸張部200は、圧縮された平均画像Mと差分画像D〜Dを伸張する処理を行う。加算画像再生部210は、平均画像Mと差分画像D〜Dから加算画像A〜Aを再生する処理を行う。加算画像ノイズ低減処理部220は、図19等で後述する適応的ノイズ低減処理を、加算画像A〜Aに対して行う。
【0084】
推定演算部230は、加算画像A〜Aに基づいて高精細フレーム画像fxを推定により復元する。復元された画像は、ベイヤー配列のRAW画像である。この推定演算については、図27(A)等において後述する。
【0085】
高精細静止画生成部240は、ベイヤー配列の復元画像をデモザイキング処理し、その画像に対して例えば階調補正処理等の画像処理を行い、高精細静止画を生成する。このとき、画像選択部295により選択されたタイミングの静止画が生成される。タイミングは、ユーザーの指示により選択される。ユーザーは、モニター表示部190の表示動画を見てタイミングを選択してもよいし、画像出力部290の出力動画を見てタイミングを選択してもよい。
【0086】
高精細動画生成部250は、ベイヤー配列の復元動画画像をデモザイキング処理し、その動画画像に対して例えば階調補正処理等の画像処理を行い、高精細動画を生成する。高画質標準動画生成部260は、高精細動画をダウンサンプリングし、例えばハイビジョン画素数の動画を高画質標準動画として生成する。
【0087】
標準動画生成部280は、加算画像再生部210により再生された加算画像A〜Aを用いて、図9等で後述する処理により低解像動画を生成し、その低解像動画を標準動画として出力する。標準動画は、例えばハイビジョン画素数の動画である。また、動画圧縮データ伸張部270が、動画データ記録部180からの圧縮低解像動画を伸張し、標準動画生成部280が、その伸張された低解像動画を標準動画として出力してもよい。
【0088】
画像出力部290は、高精細静止画、高精細動画、高画質標準動画、標準動画を、例えば表示装置やプリンターに出力する。
【0089】
7.融合画像データの符号割り当て例
【0090】
上述の圧縮処理部140が融合画像データF(M,D〜D)を圧縮する場合の符号割り当てについて説明する。
【0091】
図4に第1の符号割り当て例を示す。図4に示すように、融合画像データF(M,D〜D)の座標(i,j)の画素値に24ビットを割り当てる。具体的には、平均画像Mの画素値aijに8ビットを割り当て、差分画像D〜Dの画素値aD1ij〜aD4ijにそれぞれ4ビットを割り当てる。例えば撮像画像(原画像)の画素数をN画素とし、画素値データを12ビットとすると、圧縮データのデータ量は撮像画像のデータ量の1/2=(N/4画素×24ビット)/(N画素×12ビット)となる。そして、この符号割り当て後のデータに対して可逆又は非可逆の圧縮を行う。
【0092】
図5に第2の符号割り当て例を示す。図5に示すように、平均画像Mの各画素値に8ビットを割り当て、そのデータを非可逆圧縮する。また、差分画像D〜Dの各画素値に4ビットを割り当て、そのデータを可逆圧縮する。図5では、差分画像Dの符号割り当てを示すが、他の差分画像D〜Dの符号割り当てについても同様である。また図5において、dij=aD1ijである。
【0093】
この例では、再びデータ伸張したときに平均画像が多少劣化することが考えられるが、上式(3)に示すように、差分画素値{aD1ij,aD2ij,aD3ij,aD4ij}は、共通の平均値aijをもつ。後述する復元推定処理では、隣接画素値の差分値(例えばa(2)(i+1)j−a(1)ij=aD2ij−aD1ij)を用いて推定を行う。このとき、平均値aijがキャンセルされるため、平均画像が劣化していても隣接画素値の差分値は完全に復元できる。このように、隣接加算値の差分値により元の画素値関係を特定し推定する方法は、本方式の圧縮の仕方に非常に好都合な復元推定処理であると言える。
【0094】
8.撮像装置の第2の構成例
図6に、上式(6)で説明した平均値mAVRを用いて可逆圧縮を行う場合の構成例として、撮像装置の第2の構成例を示す。この撮像装置は、撮像部10、画像処理部20を含む。なお以下では、図3等で上述した構成要素と同一の構成要件については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0095】
撮像部10は、レンズ110、撮像素子120、加算画像生成部130、差分画像生成部141、平均画像生成部142、平均値算出部145、減算部146、可逆圧縮符号化部147、圧縮データ記録部150、低解像動画生成部160、動画データ圧縮部170、動画データ記録部180、モニター表示部190を含む。画像処理部20の構成要素は、図3の画像処理部20と同様である。
【0096】
平均値算出部145は、上式(6)で説明した平均値mAVRを、平均画像Mに基づいて算出する。減算部146は、平均画像Mの画素値aijから平均値mAVRを減算し、減算後の画素値mdijを出力する。可逆圧縮符号化部147は、差分画像D〜Dのデータと、画素値mdijのデータを可逆圧縮する。圧縮データ記録部150は、圧縮されたデータと平均値mAVRを記録する。
【0097】
圧縮データ伸張部200は、差分画像D〜Dと画素値mdijと平均値mAVRを、圧縮されたデータから伸張する。加算画像再生部210は、画素値mdijと平均値mAVRから平均画像Mを再生し、その平均画像Mと差分画像D〜Dから加算画像A〜Aを再生する。
【0098】
図7に、上記第2の構成例における融合画像データF(M,D〜D)の符号割り当て例を示す。図7に示すように、画素値mdijの先頭に平均値mAVRが配列され、画素値mdijと平均値mAVRにはそれぞれ8ビットが割り当てられる。また、差分画像D〜Dの画素値dijにそれぞれ4ビットが割り当てられる。これらのデータは可逆圧縮される。
【0099】
上記第2の構成例によれば、平均画像Mの画素値mdijの発生分布確率に偏りがない場合でも、4画素異色加算画像に変換することにより偏りを作り出すことができるのでエントロピーを低減でき、可逆圧縮における圧縮効果が期待できる。また、平均値mAVRと画素値mdijの差分をデータとして採用することにより、発生確率分布の位置(平均値)に大きく依存することなく安定したデータ値を得ることができ、圧縮効果が期待できる。また、全て可逆圧縮なので復元推定前のデータ劣化は存在しない。
【0100】
9.撮像装置の変形構成例
上記の実施形態では融合画像データF(M,D〜D)を圧縮する場合を例に説明したが、本実施形態はこれに限定されず、加算画像A〜Aを圧縮してもよい。図8に、加算画像A〜Aを圧縮する場合の撮像装置の変形構成例を示す。この撮像装置は、撮像部10、画像処理部20を含む。
【0101】
撮像部10は、レンズ110、撮像素子120、加算画像生成部130、データ圧縮部148、データ記録部155、低解像動画生成部160、動画データ圧縮部170、モニター表示部190を含む。画像処理部20の構成要素は、図3の画像処理部20と同様である。
【0102】
データ圧縮部148は、例えばM−JPEGやJPEG−XR等の非可逆圧縮により加算画像A〜Aを圧縮する。データ記録部155は、データ圧縮部148により圧縮された加算画像A〜Aと、動画データ圧縮部170により圧縮された低解像動画を記録する。
【0103】
この変形構成例によれば、重畳シフト重み付け加算による加算画像A〜Aを圧縮することで、通常のデモザイキング処理やYCbCr変換を行わずにダイレクトにベイヤー画像を圧縮可能である。
【0104】
以上の実施形態によれば、図3に示すように、撮像装置は、画像取得部(例えば撮像素子120)と加算画像生成部130と圧縮処理部140と伸張処理部205と推定演算部230と画像出力部290を含む。
【0105】
図1に示すように、画像取得部は撮像画像fx(高精細フレーム画像)を取得する。加算画像生成部130は、加算画素値(例えばa(1)ij)を取得する単位である加算単位を撮像画像の複数の画素毎(例えば4画素毎)に設定し、その加算単位に含まれる画素値を重み付け加算(上式(1))して加算画素値を求め、求めた加算画素値による加算画像A〜Aを取得する。圧縮処理部140は、その加算画像A〜Aを圧縮する。伸張処理部205は、圧縮された加算画像A〜Aを伸張する。推定演算部230は、伸張された加算画像A〜Aに基づいて撮像画像fxの画素値vijを推定する。画像出力部290は、推定された画素値vijに基づく高解像画像を出力する。
【0106】
この場合に、加算画像生成部130は、加算単位を順次画素シフトさせて第1〜第4(広義には第1〜第n)の加算画像A〜Aを取得する。圧縮処理部140は、第1〜第4の加算画像A〜Aの平均を平均画像Mとして求め(上式(2))、その平均画像Mと、第mの加算画像A(mはn以下の自然数)の差分を第mの差分画像Dとして求め(上式(3))、求めた平均画像Mと差分画像Dを圧縮する。伸張処理部205は、圧縮された平均画像Mと差分画像Dを伸張して加算画像A〜Aを求める。
【0107】
このようにすれば、撮像画像fxを効率よく圧縮することが可能になる。即ち、撮像画像fxと4枚の加算画像A〜Aは画素数としては同一になるが、上述のように差分画像Dの画素値のエントロピーを撮像画像fxよりも小さくできるため、圧縮率を向上できる。これにより、高圧縮率の画像データから撮像画像fxを復元して任意タイミングの高精細静止画を取り出すことが可能になる。また、加算画像A〜Aを1枚の撮像画像fxから生成するため、動体でもブレが少ない時間分解能が高い復元画像を得られる。
【0108】
また、センサー直後に高速に低解像化できることによるデータの縮小が可能であるため、後段でのデータ処理の負荷の低減が図られ、高速データ処理を伴わずに高精細画像の高速撮影処理システムが構築できる。また既存システムへの適用を容易とする技術の提供が可能となる。
【0109】
また本実施形態によれば、簡素な処理で圧縮データから撮像画像fxを再生可能である。即ち、加算画像A〜Aは、重畳シフト加算により得られた画像データであり、後述する復元推定処理を適用可能である。この復元推定処理は、低解像画像から高解像画像を推定する処理を、上述の特許文献1、2に比べて簡素化することができる。
【0110】
また本実施形態では、図1に示すように、加算画像生成部130は、加算単位を、水平又は垂直(i軸方向又はj軸方向)に1画素ずつ順次シフトさせて第1〜第4のポジション(例えば座標(0,0)、(1,0)、(1,1)、(0,1))に設定し、その第1〜第4のポジションにおいてそれぞれ加算画像A〜Aを取得する。第mのポジションと第m+1のポジション(例えば(0,0)、(1,0))の加算単位は、共通の画素(v10、v11)を含む。
【0111】
また本実施形態では、図3に示すように、圧縮処理部140は平均画像生成部142と差分画像生成部141を有する。上式(2)に示すように、平均画像生成部142は、第1〜第4のポジションの加算画素値の平均値aijを、平均画像の画素値として求める。差分画像生成部141は、平均画像の画素値aijと、第mのポジションの加算画素値(例えばa(1)ij)の差分値(aD1ij)を、第mの差分画像の画素値として求める。
【0112】
これらのようにすれば、共通の画素を含みながら加算単位を順次画素シフトして加算画素値を求める重畳シフト加算を行うことができる。また、加算画像A〜Aの加算画素値を平均することで、平均画像Mの画素値を求めることができる。また、平均画像の画素値と、加算画像A〜Aの加算画素値の差分値により、差分画像D〜Dの画素値を求めることができる。
【0113】
また本実施形態では、図3等で説明したように、圧縮処理部140は、第mの差分画像Dをエントロピー符号化により可逆圧縮する。
【0114】
このようにすれば、上述のようにエントロピーが小さくなった差分画像Dを高圧縮率で圧縮することができるため、画像データの圧縮率を向上できる。これにより、圧縮データを記録するストレージの容量を削減したり、データ通信における通信負荷を軽減できる。
【0115】
また本実施形態では、撮像画像fxはRGBベイヤー配列の画像である。この場合に、推定演算部230は、撮像画像fxのRGBベイヤー配列の画素値vijを推定により求める。画像出力部290は、推定されたRGBベイヤー配列の画素値vijをデモザイキング処理した画像に基づいて高解像動画を出力する。
【0116】
例えば本実施形態では、図3で説明したように、高精細動画生成部250がデモザイキング処理を行い、その画像に対して階調変換等の画像処理を行って高解像動画を生成し、画像出力部290がその高解像動画を表示装置等に出力する。例えば高解像動画は、撮像画像の画素数と同じ画素数の動画である。
【0117】
このようにすれば、高圧縮率で圧縮された画像データから、撮像画像fxに相当する解像度の高解像動画を復元することができる。これにより、動画データの高圧縮率と高画質を両立することが可能になる。
【0118】
10.低解像動画の生成手法
図3で上述のように、低解像動画生成部160や標準動画生成部280は、加算画像A〜Aから簡易的に低解像動画を生成する。この低解像動画の生成手法について詳細に説明する。
【0119】
この手法では、加算画像A〜Aのうち3つの加算画像A〜Aを用いて、低解像動画データを生成する。まず、図9に示すように、加算画像Aの4加算画素値{a(1)22}を用いて、加算画像Aにおいて未検出の4画素加算値{a(1)12}を{G12+G23}の関係式として算出する。
【0120】
具体的には、加算画像Aにおいて、配色と重み付けの関係が未検出値a(1)12と一致する周辺の4画素加算値を用いて、未検出値a(1)12の推定値の近似計算を行う。この推定値a(1)12は、R色画素の重み付けが基準の‘1’に設定されているものとして4画素加算値を求めている。
【0121】
未検出値{a(1)12}を構成する画素値を、色と対応させて{R22,G12,G23,B13}と表すと、未検出値{a(1)12}は下式(10)で表される。
(1)12=1・R22+(1/r)・G12
(1/r)・G23+(1/r)・B13 (10)
【0122】
未検出値{a(1)12}の右に隣接する4画素加算値{a(1)22}も同様に、下式(11)で表される。
(1)22=1・R22+(1/r)・G32
(1/r)・G23+(1/r)・B33 (11)
【0123】
未検出値{a(1)12}では、{R22}成分と{G23}成分の重み付けが強く支配的であることから、近似的にa(1)12≒a(1)22と考え、下式(12)と仮定する。
(1)12=1・R22+(1/r)・G12
(1/r)・G23+(1/r)・B13
=a(1)22 (12)
【0124】
なお、a(1)12の左右に隣接するa(1)02とa(1)22の補間値(平均等)として、a(1)12を求めてもよいし、左右に限らず配色と重み付けが同等な周囲画素加算値から補間によりa(1)12を求めても構わない。
【0125】
次に、図10に示すように、加算画像Aの4加算画素値{a(3)13}を用いて、加算画像Aにおいて未検出の4画素加算値{a(3)12}を{G12+G23}の関係式として算出する。
【0126】
具体的には、加算画像Aにおいて、配色と重み付けの関係が未検出値a(3)12と一致する周辺の4画素加算値を用いて、未検出値a(3)12の推定値の近似計算を行う。この推定値a(3)12は、B色画素の重み付けが基準の‘1’に設定されているものとして4画素加算値を求めている。
【0127】
未検出値{a(3)12}を構成する画素値を{R22,G12,G23,B13}と表すと、未検出値{a(3)12}は下式(13)で表される。
(3)12=(1/r)・R22+(1/r)・G12
(1/r)・G23+1・B13 (13)
【0128】
未検出値{a(3)12}の下に隣接する4画素加算値{a(3)13}も同様に、下式(14)で表される。
(3)13=(1/r)・R24+(1/r)・G14
(1/r)・G23+1・B13 (14)
【0129】
未検出値{a(3)12}に対し、{B13}成分と{G23}成分が重み付けが強く支配的であることから、近似的にa(3)12≒a(3)13と考え、下式(15)と仮定する。
(3)12=(1/r)・R22+(1/r)・G12
(1/r)・G23+1・B13
=a(3)13 (15)
【0130】
なお、a(3)12の上下に隣接するa(3)11とa(3)13の補間値(平均等)として、a(3)12を求めてもよいし、上下に限らず配色と重み付けが同等な周囲画素加算値から補間によりa(3)12を求めても構わない。
【0131】
さて、a(1)12とa(3)12におけるG12とG23は同一画素であり近接画素であるので、下式(16)に示すように、その平均値G12/23と等しいと近似して扱う。
12≒G23≒G12/23=(G12+G23)/2 (16)
【0132】
上式(16)を上式(12)、(15)に適用すると、下式(17)が得られる。
(1)12=R22+(1/r)・2G12/23+(1/r)・B13
(3)12=(1/r)・R22+(1/r)・2G12/23+B13 (17)
【0133】
上式(17)を解いて、下式(18)に示すように、R22,B13とG12/23の関係式を求める。このようにして、未検出値a(1)12又はa(3)12を構成するR22,B13がG12/23により求められることが分かる。
【数2】

【0134】
次に、図11に示すように、加算画像Aにおいて検出されている4画素加算値{a(2)12}を用いて、上記のR22,B13,G12/23を求める。
【0135】
具体的には、4画素加算値{a(2)12}は、上式(16)を用いて下式(19)で表される。
(2)12=(1/r)・R22+1・G12
(1/r)・G23+(1/r)・B13
≒(1/r)・R22+[1+(1/r)]・G12/23
(1/r)・B13 (19)
【0136】
上式(18)のR22,B13を上式(19)に代入すると、下式(20)に示すようにG12/23が導出される。下式(20)により導出されたG12/23を上式(18)に代入すれば、R22,B13が得られる。このようにして求めたR22、G12/23、B13を同一座標の画素値として、低解像動画のフレーム画像を構成する。
【数3】

【0137】
上記と同様にして4画素加算値{a(2)ij}を構成する各々の{R,G,B}の値を求めれば、図11に示すように、元の高精細画像fxを1/4の画素数に低解像度化したRGB3原色画像を得ることができる。
【0138】
以上に説明した手法によれば、簡単な演算処理により低解像3板化カラー画像を得ることができるので、リアルタイム処理を必要とする動画像生成処理として有効である。また、この手法では、従来の同色4画素加算方式に比べ、ベイヤー化したときのG色の重心位置のズレが発生せず、より高い画質を得ることができる。
【0139】
上記の実施形態によれば、図3に示すように、撮像装置は、低解像動画を生成する低解像動画生成部160を含む。図1に示すように、撮像画像fxはRGBベイヤー配列の画像であり、加算単位は、隣接する4画素(例えばR、Gr、Gb、Bの4画素)である。この場合に、加算画像生成部130は、第1〜第4のポジションにおいて、重み付け加算によりRGBが混色された第1〜第4の加算画像A〜Aを取得する。図9〜図11で説明したように、低解像動画生成部160は、第1〜第3A〜Aの加算画像に基づいて、低解像動画のRGBの画素値(例えば図11のR22、G12/23、B13)を推定により求める。
【0140】
このようにすれば、簡素な演算処理により低解像3板化カラー画像を得ることができるため、例えばライブビュー等のリアルタイム処理を必要とする動画像生成処理として有効である。また、同一位置(例えばa12)におけるRGB画素値を推定するため、従来の同色4画素加算方式に比べて、ベイヤー化したときのG色の重心位置のズレが発生せず、より高い画質を得ることができる。
【0141】
11.撮像装置の第3の構成例
上記の実施形態では、融合画像データF(M,D〜D)を圧縮したが、本実施形態では、差分画像D〜Dをエントロピー符号化した後にデータ再構成を行い、再構成されたデータを圧縮してもよい。
【0142】
図12に、データ再構成を行う場合の構成例として、撮像装置の第3の構成例を示す。この撮像装置は、撮像部10、画像処理部20を含む。なお以下では、図3等で上述した構成要素と同一の構成要件については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0143】
撮像部10は、レンズ110、撮像素子120、低解像画像生成部125(動画用低解像ベイヤー画像生成部)、第1の加算画像生成部130、第2の加算画像生成部135、差分画像生成部141、平均画像生成部142、エントロピー符号化部143、圧縮データ記録部150、低解像動画生成部160、画素データ再構成部165、第3の加算画像生成部175、データ圧縮部185(融合データ圧縮部)、モニター表示部190を含む。
【0144】
画像処理部20は、圧縮データ伸張部200、加算画像再生部210、低解像画像推定演算部215(動画用低解像ベイヤー画像生成部)、推定演算部230、高精細静止画生成部240、高精細動画生成部250、高画質標準動画生成部260、標準動画生成部280、画像出力部290、画像選択部295を含む。
【0145】
低解像画像生成部125は、例えば一般的な近接同色4画素加算等により、1/4の画素数のベイヤー配列の低解像画像を改めて生成する。第2の加算画像生成部135は、低解像画像に対して、図1で説明した加算処理を行って加算画像B〜Bを生成する。
【0146】
平均画像生成部142は、加算画像A〜Aの平均画像と、加算画像B〜Bの平均画像を生成する。差分画像生成部141は、加算画像A〜Aとその平均画像の差分画像、及び加算画像B〜Bとその平均画像の差分画像を生成する。エントロピー符号化部143は、差分画像生成部141からの差分画像に対してエントロピー符号化を行う。
【0147】
画素データ再構成部165は、平均画像の画素データと、エントロピー符号化された差分画像の画素データを、図16で後述する手法により再構成し、再構成データuijを出力する。第3の加算画像生成部175は、再構成された画素データに対して、図17で後述する加算処理を行って加算値ξijを生成する。データ圧縮部185は、例えばM−JPEGやJPEG−XR等の非可逆圧縮により加算値ξijを圧縮する。
【0148】
圧縮データ伸張部200は、圧縮データから加算値ξijを伸張する。加算画像再生部210は、伸張された加算値ξijから再構成データuijを再生し、その再構成データuijから加算画像A〜A、B〜Bを再生する。低解像画像推定演算部215は、図27(A)〜図30で後述する推定処理を加算画像B〜Bに対して行い、ベイヤー配列の低解像画像を復元する。標準動画生成部280は、ベイヤー配列の低解像画像をデモザイキングし、低解像動画(標準動画)を生成する。
【0149】
12.第3の構成例の動作、処理
次に、上記撮像装置の第3の構成例が行う動作や処理について説明する。
【0150】
図13に、高解像静止画と低解像静止画を同時に取得する撮像処理例を概念的に示す。なお以下では、撮像素子からの撮像フレームは高解像(例えば、12メガピクセル)であり、フレームレートは高速(例えば、60fps)であるとする。
【0151】
偶数フレームf、f、・・・は、図1で説明した加算処理により、12メガピクセルのベイヤー画像から4枚の3メガピクセルの加算画像に変換される。奇数フレームf、f、・・・は、例えば一般的な近接同色4画素加算等により、3メガピクセルのベイヤー配列画像に変換される。その変換された画像は、図1で説明した加算処理により、4枚の0.75メガピクセルの加算画像に変換される。
【0152】
これらの変換画像から平均画像と差分画像が生成され、差分画像はエントロピー符号化によりデータを圧縮される。圧縮された差分画像は、平均画像と合わせて画素ビットの再構成が行われる。再構成された画素データに対して画素加算が施され、その加算後のデータに対して通常の画像データ圧縮処理が行われる。
【0153】
ここで、再構成された画素データに対して画素加算を行うのは以下の理由による。即ち、図12で上述のように、加算画像A〜A、B〜Bから平均画像と差分画像が生成され、その差分画像がエントロピー符号化される。この平均画像のデータと、符号化された差分画像のデータは、もはや画像の性質を有した画素値集合ではなくなっており、ランダム性の高い単なるビットの配列でしかない。そのため、特定の符号に偏りをもつデータとしては認識できないものである。即ち、エントロピーが高い状態であると考えた方が無難である。また、この差分画像のデータと平均画像のデータを画素データ再構成部165により一つに統合したデータ群も、同様なことが言える。
【0154】
従って、一旦エントロピーが高くなったデータ群を再びエントロピーが低いデータに書き換える必要があり、そのために第3の加算画像生成部175における加算効果を使ってエントロピーを低減している。このようにして再構成データのエントロピーを低減することで、後段のデータ圧縮の効果を高めている。
【0155】
図14に、上記撮像処理のシーケンス例を示す。図14に示すように、まず期間Tにおいて偶数フレームfの高解像画像の露光と読み出しを行い、期間T+Tにおいてプリエンコード処理(PE0)と通常画像データ圧縮処理(圧縮0)を行う。このプリエンコード処理と通常画像データ圧縮処理に並行して、期間Tにおいて奇数フレームfの高解像画像の露光と読み出しを行い、期間T+T/2において低解像化処理とプリエンコード処理(PE1)と通常画像データ圧縮処理(圧縮1)を行う。この処理シーケンスでは、連続する偶数フレームfと奇数フレームfの通常画像データ圧縮処理(圧縮0、圧縮1)は、シリアルに期間2T以内で処理される。
【0156】
次に、画素値データの再構成について説明する。図15にデータ圧縮前のデータ再構成例を示す。この例は、データ圧縮前のデータが画素当り12ビットで形成される場合でありながらデータ圧縮処理が画素当り8ビットでしか処理できない場合のデータ再構成例である。
【0157】
図15に示すように、平均画像の画素値ビット列をm10〜m16、m20〜m26で表し、エントロピー符号化後の差分画像の画素値ビット列をd10〜d14、d20〜d24で表す。この12ビットの配列データを8ビットの配列データに再構成するとき、ビット列d10〜d14、d20〜d24を再構成データの上位ビットに配列し、ビット列m10〜m16、m20〜m26の中の上位ビットをなるべく再構成データの上位ビットに配列する。これは、エントロピー符号化後の画素値と平均画像の画素値が、データ圧縮復号による劣化をなるべく受けないようにするためである。
【0158】
図16に、データ再構成において設定するデータ単位の例を示す。図16に示すように、平均画像の画素値データ{aij}(固定ビット幅)に対して、エントロピー符号化後の差分画像の差分値データ{d}を上乗せ合成してデータを再構成する。即ち、エントロピー符号化後の差分値データと平均画像の画素値データのペア{aij}+{d}を、改めて仮想的画素値と見なしてデータ単位{uij}として再構成する。
【0159】
このデータ単位{uij}では、下位ビット側に平均画像画素値{aij}が配列され、上位ビット側に差分値データ{d}が配列される。このようにすると、この再構成データをJPEG等の非可逆圧縮伸張したときに、データ単位{uij}の復号誤差が固定ビット幅の平均画像画素値に影響を及ぼすようにできる。即ち、差分値データに対して復号誤差の影響を極力与えないようにできる。このようにするのは、差分値データがエントロピー符号化データなので、復号誤差があると大きな誤りをもった値として再生されてしまうため、それを避けるためである。
【0160】
なお、再構成データ単位{uij}は符号ビット長Nとして固定長で扱われるので、エントロピー符号化後のデータ{d}は、符号ビット長Nから平均画像の画素値{aij}の符号ビット長nM0を差し引いた符号ビット長[N−nM0]を満たすように、適切に連結構成すればよい。よって、データ{d}は、複数の再構成単位{uij}に跨って分割構成される場合もあり得る。
【0161】
図17に、上記再構成データ単位{uij}の重畳シフト加算値の例を示す。仮想的画素である{uij}は、平均画像ビット加算で且つ任意にビット分離された結果の値なので、発生分布の偏りや近傍画素間の高い相関性は期待できない。そこで、図17に示すように、再構成データ{uij}に対して再び重畳シフト重み付け加算処理を行い、加算値{ξij}を生成する。加算値{ξij}は下式(21)により求められる。
【0162】
ξij=[uij+(1/r)u(i+1)j
(1/r)ui(j+1)+(1/r)u(i+1)(j+1)]/4
(21)
【0163】
このようにして、加算値{ξij}の発生分布の偏りを強くし、また近傍画素間の相関性を高める(エントロピーを低減する)ことができる。これにより、後段の画像データ圧縮における圧縮効果を高めることができる。
【0164】
13.同色加算
上記の実施形態では、ベイヤー配列の異色の隣接4画素を加算する場合を説明したが、本実施形態では、ベイヤー配列の同色の4画素を加算してもよい。図18に、同色の4画素を加算する場合の撮像部の構成例を示す。
【0165】
図18に示す撮像部は、レンズ110、撮像素子120、加算画像生成部301〜304、差分画像生成部311〜314、平均画像生成部321〜324、エントロピー符号化部331〜334、ベイヤー画像生成部340、動画データ圧縮部350、圧縮データ記録部150を含む。なお以下では、図3等で上述した構成要素と同一の構成要件については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0166】
加算画像生成部301〜304は、ベイヤー配列の撮像画像の中のそれぞれR画素、Gr画素、Gb画素、B画素の画素シフト加算を行う。R加算画像AR1〜AR4の加算画素値{aR100,aR220,aR322,aR402}を例にとると、下式(22)で表される。
R100=R00+R20+R22+R02
R220=R20+R40+R42+R22
R322=R22+R42+R44+R24
R402=R02+R22+R24+R04 (22)
【0167】
平均画像生成部321〜324は、それぞれ各色の加算画像に基づいて平均画像を生成する。差分画像生成部311〜314は、それぞれ各色の平均画像と加算画像の差分画像を生成する。エントロピー符号化部331〜334は、各色の差分画像のエントロピー符号化を行う。
【0168】
ベイヤー画像生成部340は、4色の平均画像の画素値をベイヤー配列に配列して、1枚のベイヤー配列画像を生成する。動画データ圧縮部350は、そのベイヤー配列画像による動画データを、例えばAVCHD(H.246)やM−JPEG、JPEG−XR等により非可逆圧縮する。
【0169】
14.適応的ノイズ低減処理
図3で上述の加算画像ノイズ低減処理部220が行う適応的ノイズ低減処理について詳細に説明する。
【0170】
本実施形態では、4画素加算値に対してアダプティブ・ノイズ・リダクション(以下、ANRと略す)を適用する。ANRとは、空間軸に沿って適応的に対象範囲を異ならせながら画素値平均を行う適応的移動平均フィルターリングのことを言う。ANRでは、対象範囲内のサンプリング値の変化の幅が小さい場合、移動平均の範囲を広くとり、対象範囲内のサンプリング値の変化の幅が大きい場合、移動平均の範囲を狭くする。これを実現するためには、処理位置(着目位置)の画素値を中心とした所定の画素値幅に含まれるサンプリング値の平均を計算し、改めて処理位置の画素値とする。
【0171】
サンプリング値の変化の幅が小さい範囲では、その変化が高周波成分の場合であっても、振幅としては小さいので丸めても影響が少ないと考えられる。また低周波成分の場合は、移動平均を取っても情報は維持される。この場合は、移動平均の範囲を広くとるため、より多くのサンプリング値の平均を取ることになり、加算効果によるノイズ低減効果が大きい。
【0172】
一方、サンプリング値の変化の幅が大きい範囲では、その変化が高周波成分の場合でも低周波成分の場合でも、移動平均の範囲を狭くするため情報はほぼ維持される。この場合は、少ないサンプリング値の平均を取ることになるので、加算効果によるノイズ低減効果は小さい。
【0173】
よって、この方法を適用するケースとして効果が大きいのは、サンプリング値の振幅の変化幅が小さくなる状態のときである。図19に示すように、平均画像の画素値aijと加算画像の画素値(例えばa(1)ij)は、画素値の相関性が高い。これらの差分値aD1ijはベクトル(1,−1)への射影であるため、差分値aD1ijの生起確率は狭い範囲に分布し、元の撮像画像よりも差分画像のサンプリング値の振幅変化を小さくできる。そのため、この差分画像にANRを適用すれば、効果的に差分画像のノイズ低減が可能になると考えられる。
【0174】
次に、ANRの適用手法や演算手法について説明する。図20(A)に示すように、処理する4画素加算値(サンプリング値)をaとすると、aを中心として幅±Δ/2の範囲に入る近傍の4画素加算値を特定する。例えば、図20(A)の場合、幅±Δ/2の範囲に入る4画素加算値は存在しない。この場合、下式(23)に示すように、d1=d2=0として移動平均値a’を求める。
【数4】

【0175】
また、図20(B)の場合、幅±Δ/2の範囲に入る4画素加算値はak−2、ak−1、ak+1である。この場合、上式(23)においてd1=2,d2=1とする。なお、d1は、処理する4画素加算値aの左方向(k軸の負方向)の移動平均を取る4画素加算値の範囲を表わす。d2は、処理する4画素加算値aの右方向(k軸の正方向)の移動平均を取る4画素加算値の範囲を表わしている。d1、d2は、下式(24)に示す条件を満足しているものとする。
−Δ/2≦ak−d1、かつak+d2≦a+Δ/2
を満たすd1、d2のうち、d1+d2が最大となるもの,
d1、d2は0以上の整数,
0<Δ (24)
【0176】
次に、図3で上述の差分画像D〜Dを例にとり、上記ANRの適用例について説明する。図21に示すように、差分画像D〜Dは、それぞれ2次元配列のデータである。演算を簡単にするために、上記ANRを水平方向と垂直方向に別々に適用する。
【0177】
具体的には、図21に示すように、4画素加算値aijに対して水平方向(i軸方向)に順次ANRを適用すると、水平方向の移動平均値aijが得られる。また図22に示すように、4画素加算値aijに対して垂直方向(j軸方向)に順次ANRを適用すると、水平方向の移動平均値aijが得られる。図23に示すように、移動平均値aijとaijの平均値aij’(例えばaij’=(aij+aij)/2)を計算し、その平均値aij’を最終な移動平均値とする。
【0178】
上記の実施形態によれば、図3に示すように、撮像装置は、ノイズ低減処理部(加算画像ノイズ低減処理部220)を含む。図20(A)等で説明したように、ノイズ低減処理部は、画素値の変化幅に応じて適応的に移動平均の範囲d1+d2を調整する適応的ノイズ低減処理を、第mの差分画像Dに対して行う。
【0179】
例えば本実施形態では、処理対象の画素値aから幅±Δ/2の範囲に入る画素値の数に応じて範囲d1+d2を調整し、その範囲d1+d2内の画素値の平均値を、画素値aとして再設定する。
【0180】
このようにすれば、上述のように画素値の生起分布が狭く、画素値の振幅が小さい差分画像のノイズを効果的に低減できる。即ち、適応的ノイズ低減処理では、画素値の振幅が小さい場合には移動平均の範囲d1+d2が広くなるため、その範囲よりも高周波数のノイズ成分が効果的に低減される。
【0181】
15.フレーム間差分画像を用いたデータ圧縮手法
上記の実施形態では、平均画像と差分画像を撮像画像から直接に生成したが、本実施形態では、フレーム間で撮像画像の差分を求め、そのフレーム間差分画像から平均画像と差分画像を生成してもよい。
【0182】
図24に、フレーム間差分画像から平均画像と差分画像を生成する場合の構成例として、撮像装置の第4の構成例を示す。この撮像装置は、撮像部10と、画像処理部20を含む。なお以下では、図3等で上述した構成要素と同一の構成要件については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0183】
撮像部10は、レンズ110、減算部115、撮像素子120、加算画像生成部130、差分画像生成部141、平均画像生成部142、平均値算出部145、減算部146、可逆圧縮符号化部147、圧縮データ記録部150、低解像動画生成部160、動画データ圧縮部170、動画データ記録部180、モニター表示部190を含む。画像処理部20の構成要素は、図3の画像処理部20と同様である。
【0184】
撮像素子120が、フレームfx−1、fx、fx+1において撮像画像Vt−1、V、Vt+1を撮像するものとする。減算部115は、撮像画像Vを基準画像とし、その基準画像と他の撮像画像の差分画像V’t−1=V−Vt−1、V’t+1=V−Vt+1を求める。加算画像生成部130は、基準画像Vと差分画像V’t−1、V’t+1からそれぞれ加算画像を求める。以降の処理は、図6で上述の処理と同様である。
【0185】
推定演算部230が元の撮像画像を復元する際には、まず加算画像から基準画像Vと差分画像V’t−1、V’t+1を復元し、それらの画像から撮像画像Vt−1=V−V’t−1、Vt+1=V−V’t+1を求める。
【0186】
図25に、上記撮像装置が行う処理を模式的に示す。図25に示すように、所定時間間隔(例えば1/60sec.)で撮影されるフレームf、f、・・・のRAW画像データを、それぞれV、V、・・・と表わす。基準フレームf3k+1の撮像画像をV3k+1とし、差分フレームf3k、f3k+2を生成するための撮像画像をV3k、V3k+2とする。ここで、kは0以上の整数である。
【0187】
基準撮像画像V3k+1は高精細RAW画像データそのものであり、V3k+1に対して重畳シフト重み付け加算を行って4枚の4画素加算画像A(3k+1)〜A(3k+1)を生成する。また、基準画像の前後フレームの画像V3k、V3k+2と、基準画像V3k+1の対応画素値の差分を取り、差分フレーム画像V’3k、V’3k+2を生成する。これらの差分フレーム画像V’3k、V’3k+2に対して、それぞれ重畳シフト重み付け加算を行って、それぞれ4枚の4画素加算画像A(3k)〜A(3k)、A(3k+2)〜A(3k+2)を生成する。
【0188】
次に、図1で上述の手法と同様にして、4画素加算画像から平均画像と差分画像を生成し、その平均画像と差分画像に対して圧縮処理(特に可逆圧縮処理)を行い、そのデータを融合画像データとして記録する。
【0189】
以上の実施形態によれば、一般的に近接フレームは類似画像なので、フレーム間差分を利用すると、図1で上述の手法に比べて動画データとしての圧縮効果を大きくできる。なお、単純なRAWデータの差分では、類似しない部分のエントロピー低減は期待できないので、可逆圧縮を考えると後段の処理が活きてくる。
【0190】
図26に、上記第4の構成例における撮像部の変形構成例を示す。この撮像部は、レンズ110、減算部116、撮像素子120、加算画像生成部130、差分画像生成部141、平均画像生成部142、平均値算出部145、減算部146、可逆圧縮符号化部147、圧縮データ記録部150、低解像動画生成部160、動画データ圧縮部170、動画データ記録部180、モニター表示部190を含む。なお以下では、図3等で上述した構成要素と同一の構成要件については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0191】
この変形構成例では、撮像画像のフレーム間差分画像ではなく、加算画像のフレーム間差分画像を求める。具体的には、加算画像生成部130は、撮像画像V3k、V3k+1、V3k+2に対して重畳シフト重み付け加算を行い、加算画像A(3k)〜A(3k)、A(3k+1)〜A(3k+1)、A(3k+2)〜A(3k+2)を生成する。減算部116は、基準フレームの加算画像A(3k+1)〜A(3k+1)と、その前後フレームの加算画像A(3k)〜A(3k)、A(3k+2)〜A(3k+2)の差分を求め、差分フレームの加算画像として出力する。そして、図1で上述の手法と同様にして、基準フレームの加算画像と差分フレームの加算画像から、平均画像と差分画像を生成し、その平均画像と差分画像に対して可逆圧縮処理を行い、そのデータを融合画像データとして記録する。
【0192】
上記の実施形態によれば、図25に示すように、画像取得部(例えば撮像素子120)は、第1フレームf3k+1の撮像画像V3k+1を基準撮像画像として取得し、第1フレームf3k+1の前又は後の第2フレーム(例えば前のフレームf3k)の撮像画像V3kと基準撮像画像V3k+1の差分を差分撮像画像V’3kとして取得する。加算画像生成部130は、基準撮像画像V3k+1に基づく第1〜第4(広義には第1〜第n)の加算画像A(3k+1)〜A(3k+1)と、差分撮像画像V’3kに基づく第1〜第nの加算画像A(3k)〜A(3k)を取得する。
【0193】
なお、第2フレームは、第1フレームf3k+1の後のフレームf3k+2であってもよい。この場合、差分撮像画像V’3k+2、第1〜第nの加算画像A(3k+2)〜A(3k+2)を取得する。また、第1フレームf3k+1の前後両方のフレームを用いて、それぞれ差分画像、加算画像を求めてもよい。
【0194】
このようにすれば、フレーム内での画素加算によりフレーム内の画素間相関が大きくなり、更にその加算画像同士の引き算によりフレーム間差分画像を求めることができる。これにより、類似性がより高い画像同士の引き算とすることができ、差分効果が期待できる。例えば、フレーム間差分画像から生成した平均画像は、通常の加算画像から生成した平均画像よりもエントロピーが低いと考えられる。そのため、平均画像のエントロピー符号化等による圧縮率を向上できると考えられる。
【0195】
16.復元推定処理
次に、図3等で上述の推定演算部230が行う推定処理について詳細に説明する。なお以下では、加算画素値{a00、a10、a11、a01}を例に説明する(i,jは0以上の整数)が、他の加算画素値についても同様である。また、加算単位が2×2画素毎に設定される場合を例に説明するが、これに限定されず、例えば3×3画素毎であってもよい。
【0196】
図27(A)、図27(B)に、推定画素値と中間画素値の説明図を示す。図27(A)に示す加算画素値{a00、a10、a11、a01}は、図1で説明した加算画像A〜Aの加算画素値{a(1)00,a(2)10,a(3)11,a(4)01}に対応する。推定処理では、この加算画素値を用いて、最終的な推定画素値v00〜v22を推定する。推定画素値vijは、図1で説明した撮像画像fxの画素値に対応する。
【0197】
図27(B)に示すように、まず加算画素値a00〜a11から中間画素値b00〜b21(中間推定画素値)を推定する。中間画素値は2画素加算値に対応し、例えばb00は画素値v00とv01の加算値に対応する。これらの中間画素値b00〜b21から最終的な画素値v00〜v22を推定する。
【0198】
まず中間画素値を推定する処理について説明する。以下では、水平方向の最初の行の中間画素値b00〜b20を推定する場合を例に説明する。次の行の中間画素値b01〜b21についても同様の手法により推定される。
【0199】
図28に示すように、中間画素値b00〜b20は、水平方向の最初の行の加算画素値a00、a10に基づいて推定される。説明を簡単にするために、例えば重み係数r=2とすると、加算画素値a00、a10は下式(25)で表される。
00=v00+(1/2)v01+(1/2)v10+(1/4)v11
10=v10+(1/2)v11+(1/2)v20+(1/4)v21
(25)
【0200】
下式(26)に示すようにb00、b10、b20を定義する。
00=v00+(1/r)v01=v00+(1/2)v01
10=v10+(1/r)v11=v10+(1/2)v11
20=v20+(1/r)v21=v20+(1/2)v21 (26)
【0201】
次に、上式(26)を用いて上式(25)を変形すると、下式(27)が成り立つ。
00=b00+(1/2)b10
10=b10+(1/2)b20 (27)
【0202】
上式(27)において、a00、a10に所定の重み係数を掛けて差分δiを取り、上式(26)を使って変形すると、下式(28)が成り立つ。
δi=a10−2a00
=(1/2)b20−2b00 (28)
【0203】
00を未知数(初期変数)とすると、下式(29)に示すように、中間画素値b10、b20をb00の関数として求めることができる。このようにして、b00を未知数として高精細な中間画素値{b00,b10,b20}の組合せパターンが求められる。
00=(未知数),
10=2(a00−b00),
20=4b00+2δi=4b00+2(a10−2a00) (29)
【0204】
次に、未知数b00を求める手法について説明する。図29に示すように、加算画素値のパターン{a00,a10}と中間画素値のパターン{b00,b10,b20}を比較する。そして、その誤差Eが最小になる未知数b00を導出し、中間画素値b00として設定する。
【0205】
具体的には、加算画素値{aij}と中間画素値{bij,b(i+1)j}には、下式(30)の関係が成り立つ。この下式(30)による重み付けを考慮すると、下式(31)に示す評価関数Ejが求められる。そして、この評価関数Ejにより、パターン{a00,a10}とパターン{b00,b10,b20}の類似性評価を行う。
ij=bij+(1/2)b(i+1)j (30)
【数5】

【0206】
図30に示すように、Ejを最小にする未知数b00(=α)を求め、b00の値を決定できる。そして、推定したb00の値を上式(29)に代入し、b10,b20が求められる。
【0207】
次に、求めた中間画素値bijを用いて最終推定画素値vijを求める手法について説明する。以下では、左端垂直列(i=0列)を例に説明する。最終推定画素値vijは、中間画素値bijを求めた手法と同様に求められる。即ち、上式(27)を下式(32)に置き換えれば、以降の処理は同様である。
00=v00+(1/2)v01
01=v01+(1/2)v02 (32)
【0208】
以上の実施形態によれば、図27(A)に示すように、第1のポジションに設定された加算単位(例えばa00)と、第1のポジションの次の第2のポジションに設定された加算単位(例えばa10)は重畳する。上式(28)に示すように、推定演算部230は、第1、第2のポジションの加算画素値a00、a10の差分値δiを求める。図27(B)に示すように、第1の中間画素値b00は、加算単位a00から重畳領域(v10、v11)を除いた第1の領域(v00、v01)の加算画素値である。第2の中間画素値b20は、加算単位a10から重畳領域(v10、v11)を除いた第2の領域(v20、v21)の加算画素値である。上式(29)に示すように、第1、第2の中間画素値b00、b20の関係式を、差分値δiを用いて表す。図29等に示すように、その関係式を用いて第1、第2の中間画素値b00、b20を推定する。推定した第1の中間画素値b00を用いて加算単位に含まれる各画素の画素値(v00、v10、v11、v01)を求める。
【0209】
このようにすれば、重畳シフトされた加算画素値から中間画素値を一旦推定し、その重畳シフトされた中間画素値から推定画素値を求めることで、高解像画像の推定処理を簡素化できる。例えば、2次元フィルターの繰り返し演算(特許文献1)や、初期値の設定に適当な部分を探索(特許文献2)する等の複雑な処理が不要となる。
【0210】
ここで、重畳するとは、加算単位と加算単位が重なった領域を有することであり、例えば図27(A)に示すように、加算単位a00と加算単位a10が、2つの推定画素v10、v11を共有することである。
【0211】
また、加算単位のポジションとは、撮像画像における加算単位の位置や座標のことであり、あるいは、推定処理における推定画素値データ(画像データ)上での加算単位の位置や座標のことである。また、次のポジションとは、元のポジションから画素シフトされたポジションであり、元のポジションと位置や座標が一致しないポジションのことである。
【0212】
また本実施形態では、第1、第2の中間画素値(例えばb00、b20)を含む連続する中間画素値を中間画素値パターン({b00、b10、b20})とする。上式(29)に示すように、推定演算部230は、中間画素値パターンに含まれる中間画素値の間の関係式を加算画素値a00、a10を用いて表す。図29に示すように、中間画素値の間の関係式で表された中間画素値パターンと加算画素値とを比較して類似性を評価する。その類似性の評価結果に基づいて、類似性が最も高くなるように中間画素値パターンに含まれる中間画素値b00、b10、b20を決定する。
【0213】
このようにすれば、加算単位が重畳されながら画素シフトされることで取得された複数の加算画素値に基づいて、中間画素値を推定できる。
【0214】
ここで、中間画素値パターンとは、推定処理に用いられる範囲の中間画素値のデータ列(データの組み)である。また、加算画素値パターンとは、推定処理に用いられる範囲の加算画素値のデータ列である。
【0215】
また本実施形態では、上式(31)に示すように、推定演算部230は、中間画素値の間の関係式で表された中間画素値パターン({b00、b10、b20})と加算画素値(a00、a10)との誤差を表す評価関数Ejを求める。評価関数Ejの値が最小となるように中間画素値パターンに含まれる中間画素値b00、b10、b20を決定する。
【0216】
このようにすれば、誤差を評価関数で表し、その評価関数の極小値に対応する中間画素値を求めることで、中間画素値の値を推定できる。例えば、上述のように最小二乗法を用いて未知数を求めることで、簡素な処理で中間画素推定の初期値を設定できる。例えば、初期値設定に適当な画像部分の探索(特許文献2)が不要である。
【0217】
また本実施形態では、上式(25)に示すように、加算単位の各画素値(例えば、v00、v10、v01、v11)が重み付け加算された加算画素値(a00)を取得する。取得された加算単位の加算画素値(a00、a10)に基づいて、加算単位の各画素の画素値(v00、v10、v01、v11)を推定する。
【0218】
このようにすれば、加算単位の各画素値を重み付け加算して加算画像を取得し、取得した加算画像から高解像画像の画素値を推定できる。これにより、推定処理において、被写体の持つ高周波成分の再現性を向上できる。すなわち、加算単位の画素値を単純加算した場合には、矩形の窓関数を結像にコンボリューションすることになる。一方、加算単位の画素値を重み付け加算した場合には、矩形よりも高周波成分を多く含む窓関数を結像にコンボリューションすることになる。そのため、被写体の持つ高周波成分をより多く含む加算画像を取得でき、推定画像での高周波成分の再現性を向上できる。
【0219】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また撮像部、画像処理部、撮像装置等の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定に限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0220】
10 撮像部、20 画像処理部、100 被写体、110 レンズ、
115,116 減算部、120 撮像素子、125 低解像画像生成部、
130,135 加算画像生成部、140 圧縮処理部、
141 差分画像生成部、142 平均画像生成部、
143 エントロピー符号化部、144 データ圧縮部、145 平均値算出部、
146 減算部、147 可逆圧縮符号化部、148 データ圧縮部、
150 圧縮データ記録部、151 差分データ記録部、
152 平均画像データ記録部、155 データ記録部、
160 低解像動画生成部、165 画素データ再構成部、
170 動画データ圧縮部、175 加算画像生成部、
180 動画データ記録部、185 データ圧縮部、190 モニター表示部、
200 圧縮データ伸張部、205 伸張処理部、210 加算画像再生部、
215 低解像画像推定演算部、220 加算画像ノイズ低減処理部、
230 推定演算部、240 高精細静止画生成部、250 高精細動画生成部、
260 高画質標準動画生成部、270 動画圧縮データ伸張部、
280 標準動画生成部、290 画像出力部、295 画像選択部、
301〜304 加算画像生成部、311〜314 差分画像生成部、
321〜324 平均画像生成部、331〜334 エントロピー符号化部、
340 ベイヤー画像生成部、350 動画データ圧縮部、
〜A 加算画像、D〜D 差分画像、M 平均画像、T〜T 期間、
3k+1 基準撮像画像、V3k,V3k+2 差分撮像画像、
(1)00,a(2)10,a(3)11,a(4)01 加算画素値、
D1ij〜aD4ij 差分画像の画素値、aij 平均画像の画素値、
ij,aij,a’ij 移動平均値、b00-b20 中間画素値、
d1,d2 範囲、fx 撮像画像、mAVR 平均値、r 重み付け係数、
ij 再構成データ、v00-v22 推定画素値、αij 平均値、
δi 差分値、ξij 再構成データの加算値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像画像を取得する画像取得部と、
加算画素値を取得する単位である加算単位を前記撮像画像の複数の画素毎に設定し、前記加算単位に含まれる画素値を重み付け加算して前記加算画素値を求め、求めた前記加算画素値による加算画像を取得する加算画像生成部と、
前記加算画像を圧縮する圧縮処理部と、
圧縮された前記加算画像を伸張する伸張処理部と、
伸張された前記加算画像に基づいて前記撮像画像の画素値を推定する推定演算部と、
前記推定演算部により推定された画素値に基づく高解像画像を出力する画像出力部と、
を含み、
前記加算画像生成部は、
前記加算単位を順次画素シフトさせて第1〜第nの加算画像(nは2以上の自然数)を前記加算画像として取得し、
前記圧縮処理部は、
前記第1〜第nの加算画像の平均を平均画像として求め、前記平均画像と、前記第1〜第nの加算画像のうちの第mの加算画像(mはn以下の自然数)との差分を、第mの差分画像として求め、求めた前記平均画像と前記第mの差分画像を圧縮し、
前記伸張処理部は、
圧縮された前記平均画像と前記第mの差分画像を伸張して前記第1〜第nの加算画像を求めることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記加算画像生成部は、
前記加算単位を、水平又は垂直に1画素ずつ順次シフトさせて第1〜第nのポジションに設定し、前記第1〜第nのポジションにおいてそれぞれ前記第1〜第nの加算画像を取得し、
前記第1〜第nのポジションのうちの第mのポジションと第m+1のポジションの前記加算単位は、共通の画素を含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記圧縮処理部は、
前記第1〜第nのポジションの前記加算画素値の平均値を、前記平均画像の画素値として求める平均画像生成部と、
前記平均画像の画素値と、前記第mのポジションの前記加算画素値の差分値を、前記第mの差分画像の画素値として求める差分画像生成部と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、
低解像動画を生成する低解像動画生成部を含み、
前記撮像画像がRGBベイヤー配列の画像であり、前記加算単位が、隣接する4画素である場合に、
前記加算画像生成部は、
第1〜第4のポジション(n=4)において、前記重み付け加算によりRGBが混色された第1〜第4の加算画像を取得し、
前記低解像動画生成部は、
前記第1〜第4の加算画像のうちの第1〜第3の加算画像に基づいて、前記低解像動画のRGBの画素値を推定により求めることを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記圧縮処理部は、
前記第mの差分画像をエントロピー符号化により可逆圧縮することを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記撮像画像がRGBベイヤー配列の画像である場合に、
前記推定演算部は、
前記撮像画像の前記RGBベイヤー配列の画素値を推定により求め、
前記画像出力部は、
推定された前記RGBベイヤー配列の画素値をデモザイキング処理した画像に基づいて高解像動画を出力することを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
画素値の変化幅に応じて適応的に移動平均の範囲を調整する適応的ノイズ低減処理を、前記第mの差分画像に対して行うノイズ低減処理部を含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記画像取得部は、
第1フレームの撮像画像を基準撮像画像として取得し、前記第1フレームの前又は後の第2フレームの撮像画像と前記基準撮像画像の差分を差分撮像画像として取得し、
前記加算画像生成部は、
前記基準撮像画像に基づく前記第1〜第nの加算画像と、前記差分撮像画像に基づく前記第1〜第nの加算画像を取得することを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかにおいて、
第1のポジションに設定された前記加算単位と、前記第1のポジションの次の第2のポジションに設定された前記加算単位が重畳する場合に、
前記推定演算部は、
前記第1のポジションの加算画素値と、前記第2のポジションの加算画素値の差分値を求め、
前記第1のポジションの加算単位から重畳領域を除いた第1の領域の加算画素値である第1の中間画素値と、前記第2のポジションの加算単位から前記重畳領域を除いた第2の領域の加算画素値である第2の中間画素値との関係式を、前記差分値を用いて表し、
前記関係式を用いて前記第1、第2の中間画素値を推定し、推定した前記第1の中間画素値を用いて前記加算単位に含まれる各画素の画素値を求めることを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記推定演算部は、
前記第1、第2の中間画素値を含む連続する中間画素値を中間画素値パターンとする場合に、前記中間画素値パターンに含まれる中間画素値間の関係式を前記加算画素値を用いて表し、
前記中間画素値間の関係式で表された前記中間画素値パターンと前記加算画素値とを比較して類似性を評価し、
前記類似性の評価結果に基づいて、前記類似性が最も高くなるように、前記中間画素値パターンに含まれる中間画素値を決定することを特徴とする撮像装置。
【請求項11】
撮像画像を取得し、
加算画素値を取得する単位である加算単位を前記撮像画像の複数の画素毎に設定し、前記加算単位に含まれる画素値を重み付け加算して前記加算画素値を求め、求めた前記加算画素値による加算画像を取得し、
前記加算画像を圧縮し、
圧縮された前記加算画像を伸張し、
伸張された前記加算画像に基づいて前記撮像画像の画素値を推定するとともに、
前記推定された画素値に基づく高解像画像を出力する場合に、
前記加算単位を順次画素シフトさせて第1〜第nの加算画像(nは2以上の自然数)を前記加算画像として取得し、
前記第1〜第nの加算画像の平均を平均画像として求め、前記平均画像と、前記第1〜第nの加算画像のうちの第mの加算画像(iはn以下の自然数)との差分を、第mの差分画像として求め、求めた前記平均画像と前記第mの差分画像を圧縮し、
圧縮された前記平均画像と前記第mの差分画像を伸張して前記第1〜第nの加算画像を求めることを特徴とする画像生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2012−231377(P2012−231377A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99265(P2011−99265)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】