説明

撮像装置及び電子機器

【課題】 高速オートフォーカス機能を有する撮像装置及び電子機器等を提供すること。
【解決手段】 撮像装置は、被写体Objを結像し、合焦するための光学素子10と、光学素子10によって結像された被写体Objの像を撮像する撮像素子30と、光学素子10と撮像素子30との間に設けられ、被写体Objの像に対してパターン像h(x/k)を光学的に重畳するためのパターン20を含む。撮像装置は、撮像素子30による撮像により得られた画像データと、パターン20に対応する参照パターンとの相関演算処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
オートフォーカス機能(例えば、特許文献1、2に開示されるオートフォーカス手法)は、カメラの機能として今や必須の機能となっている。昨今、デジタル一眼レフカメラ(DSLR)の市場が拡大基調にあり、市場ではデジタル一眼レフカメラの高性能化・小型化のニーズが高まっている。これを受けて、高速にオートフォーカス可能でカメラを小型化できるオートフォーカス技術が求められている。
【0003】
例えば、高速性を重視する方式として位相差AF方式がある。位相差AF方式では、光路を2つに分岐し、一方の光路には撮像素子を設け、他方の光路にはAF専用センサを設ける。そして、AF専用センサによってデフォーカス量を検出し、検出されたデフォーカス量を用いてフォーカス制御を行う。しかしながら、この位相差AF方式を用いると、光路を分岐するための構成(例えばミラー)とAF専用センサを配置するスペースが必要となり、カメラの小型化が困難となってしまう。
【0004】
また、小型化を重視する方式としてイメージャAF方式(コントラスト方式)がある。イメージャAF方式では、通常の撮像を行う撮像素子を用いてフォーカス位置を求める。すなわち、撮像素子で得た画像のコントラストを評価値とし、合焦位置において最もコントラストが高くなることを利用してフォーカス位置を探索的に求める(山登り法)。しかしながら、このイメージャAF方式では、フォーカスレンズを逐次駆動することでコントラストピークを探索するため、高速に合焦させることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−125177号公報
【特許文献2】特開平8−124838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の幾つかの態様によれば、高速オートフォーカス機能を有する撮像装置及び電子機器等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、被写体を結像し、合焦するための光学素子と、前記光学素子によって結像された前記被写体の像を撮像する撮像素子と、前記光学素子と前記撮像素子との間に設けられ、前記被写体の像に対してパターン像を光学的に重畳するためのパターンと、前記撮像素子による撮像により得られた画像データと、前記パターンに対応する参照パターンとの相関演算処理を行う相関演算部と、を含む撮像装置に関係する。
【0008】
本発明の一態様によれば、光学素子と撮像素子との間にパターンが設けられることで、光学素子によって結像された被写体像にパターン像が重畳される。その被写体像が撮像されることで、パターン像が重畳された被写体像の画像データが取得される。そして、その画像データに対して参照パターンが相関演算処理される。これにより、相関演算処理の処理結果を用いた種々の処理や、種々の機能を実現できる。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記相関演算処理により得られた評価値に基づいてデフォーカス情報を取得するデフォーカス情報取得部と、前記デフォーカス情報に基づいてフォーカス制御を行うオートフォーカス制御部と、を含んでもよい。
【0010】
このようにすれば、オートフォーカス機能を実現することができる。具体的には、評価値に基づいて取得されたデフォーカス情報に基づいてフォーカス制御されることで、オートフォーカス制御を行うことができる。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記デフォーカス情報取得部は、前記相関演算処理により得られた前記評価値に基づいてデフォーカス方向を判定し、前記フォーカス制御部は、前記デフォーカス情報取得部により判定された前記デフォーカス方向に基づいてフォーカス制御を行ってもよい。
【0012】
このようにすれば、評価値に基づいてデフォーカス方向を判定することで、デフォーカス情報としてデフォーカス方向の情報を取得できる。そして、取得したデフォーカス方向の情報に基づいてフォーカス制御を行うことで、フォーカス駆動の方向を決定できる。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記相関演算部は、第1の座標軸に沿った第1の方向で空間周波数が単調増加する第1の参照パターンと、前記画像データとの相関演算処理を行って第1の評価値を取得し、前記第1の方向で空間周波数が単調減少する第2の参照パターンと、前記画像データとの相関演算処理を行って第2の評価値を取得し、前記デフォーカス情報取得部は、前記第1、第2の評価値に基づいてデフォーカス情報を取得してもよい。
【0014】
このようにすれば、第1、第2の評価値に基づいてデフォーカス情報を取得できる。例えば、あるデフォーカス方向において、第1の方向で空間周波数が単調増加するパターン像が被写体像に重畳されるとする。そうすると、第1の参照パターンの方が、パターン像との相関性が高くなる。この相関性の違いにより、第1、第2の評価値がデフォーカス方向に応じて異なるものとなるため、第1、第2の評価値に基づいてデフォーカス方向を判定できる。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記相関演算部は、前記画像データと、複数のパターン幅縮小率に対応する複数の参照パターンとの相関演算処理を行い、前記デフォーカス情報取得部は、前記相関演算処理により得られた評価値に基づいて、前記複数の参照パターンのうちの前記画像データに重畳された前記パターン像との相関性が最も高い参照パターンのパターン幅縮小率を抽出し、抽出されたパターン幅縮小率に基づいてデフォーカス量を算出し、前記フォーカス制御部は、前記デフォーカス量に基づいてフォーカス制御を行ってもよい。
【0016】
本発明の一態様によれば、パターン像との相関性が最も高い参照パターンのパターン幅縮小率を抽出し、パターン幅縮小率に基づいてデフォーカス量を算出することで、デフォーカス情報としてデフォーカス量の情報を取得できる。そして、取得したデフォーカス量の情報に基づいてフォーカス制御を行うことで、デフォーカス量に基づいてフォーカス駆動の駆動量を決定できる。
【0017】
また、本発明の一態様では、前記相関演算部には、前記複数の参照パターンとして、第1の座標軸に沿った第1の方向で空間周波数が単調増加する複数の第1の参照パターンと、前記第1の方向で空間周波数が単調減少する複数の第2の参照パターンが入力され、前記相関演算部は、前記画像データと前記複数の第1の参照パターンとの相関演算処理を行って複数の第1の評価値を取得し、前記画像データと前記複数の第2の参照パターンとの相関演算処理を行って複数の第2の評価値を取得し、前記デフォーカス情報取得部は、前記複数の第1、第2の評価値に基づいて、前記複数の参照パターンのうちの前記画像データに重畳された前記パターン像との相関性が最も高い参照パターンのパターン幅縮小率を抽出してもよい。
【0018】
このようにすれば、複数の第1、第2の評価値に基づいて、パターン像との相関性が最も高い参照パターンのパターン幅縮小率を抽出できる。例えば、各パターン幅縮小率に対応する第1、第2の参照パターンが生成される。そして、相関演算処理により、各パターン幅縮小率に対応する第1、第2の評価値が求められる。この第1、第2の評価値は、パターン幅縮小率に応じて異なるため、これらの評価値に基づいて、パターン像との相関性が最も高い参照パターンのパターン幅縮小率を抽出できる。
【0019】
また、本発明の他の態様は、被写体にスポット光を照射するスポット光生成部と、前記被写体に照射された前記スポット光の像を結像するための光学素子と、前記光学素子による前記スポット光の像を撮像する撮像素子と、前記光学素子と前記撮像素子との間に設けられ、前記スポット光の像に対してパターン像を光学的に重畳するためのパターンと、前記撮像素子による撮像により得られた前記画像データと、前記パターンに対応する参照パターンとの相関演算処理を行う相関演算部と、を含む撮像装置に関係する。
【0020】
本発明の他の態様によれば、被写体にスポット光が照射され、スポット光の像が結像され、そのスポット光の像にパターン像が重畳される。その像が撮像されることで、パターン像が重畳されたスポット光の像の画像データが取得される。そして、その画像データに対して参照パターンが相関演算処理される。これにより、相関演算処理の処理結果を用いた種々の処理や、種々の機能を実現できる。
【0021】
例えば、本発明の他の態様では、前記相関演算処理により得られた評価値に基づいてデフォーカス情報を取得するデフォーカス情報取得部と、前記デフォーカス情報に基づいてフォーカス制御を行うフォーカス制御部と、を含んでもよい。
【0022】
このようにすれば、オートフォーカス機能を実現することができる。また、被写体にスポット光を照射することで、自然光等の照明が得られる状況や、得られない状況に関わらずオートフォーカス制御を実現できる。
【0023】
また、本発明の一態様及び他の態様では、前記パターン、及び前記参照パターンは、チャープ波パターンであってもよい。
【0024】
このようにすれば、パターン像と参照パターンとの相関性が向上し、デフォーカス情報をより高精度に取得することができる。
【0025】
また、本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載の撮像装置を含む電子機器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態の撮像装置の第1の基本構成例。
【図2】相関演算処理の説明図。
【図3】相関演算処理の説明図。
【図4】相関演算処理の説明図。
【図5】相関演算処理の説明図。
【図6】透かしパターンの具体的な構成例。
【図7】本実施形態の撮像装置の第1の構成例。
【図8】デフォーカス量の取得手法の説明図。
【図9】デフォーカス量の取得手法の説明図。
【図10】デフォーカス量の取得手法の説明図。
【図11】デフォーカス量の取得手法の説明図。
【図12】本実施形態の撮像装置の第2の構成例。
【図13】本実施形態の撮像装置の第2の基本構成例。
【図14】シンク関数の波形例。
【図15】本実施形態の撮像装置の第3の構成例。
【図16】デフォーカス量の取得手法の説明図。
【図17】第3の構成例の撮像装置の動作説明図。
【図18】電子機器の構成例。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0028】
1.基本構成例
図1に、本実施形態の撮像装置の第1の基本構成例を示す。この撮像装置は、レンズ10(広義には、光学素子、結像光学系)、透かしパターン20(広義には、パターン)、撮像素子30(広義には、光電変換素子)を含む。そして、透かしパターン20によるパターン像を被写体の像に重畳し、その重畳したパターン像を用いることでオートフォーカスを行うための装置である。
【0029】
レンズ10は、被写体Objの像を結像し、撮像面に焦点をフォーカス(合焦)する。例えば、レンズ10は、対物レンズ・フォーカスレンズ等の複数のレンズにより構成される。そして、フォーカスレンズがレンズ光軸方向に駆動されることで、レンズ10の焦点が撮像素子30の撮像面にフォーカスされる。但し、本実施形態では、レンズ10が単一のレンズで構成され、そのレンズが駆動されることでフォーカスされてもよい。なお、以下では便宜的に、フォーカスレンズの駆動によるフォーカス位置(焦点、合焦点)の移動を、撮像面の光軸方向の移動によって示す。
【0030】
透かしパターン20(特殊パターン、パターン部)は、被写体Objの像にパターン像を重畳する(重ね合わせる)。具体的には、透かしパターン20は、レンズ10と撮像素子30との間に設けられる。そして、被写体Objからの反射光が、レンズ10を介して透かしパターン20に入射されることで、透かしパターン20によるパターン像が被写体Objの像に重畳される。例えば、透かしパターン20は、レンズ10と撮像素子30との中間より少なくともレンズ10側に設けられる。被写体Objの各点に対応する像に対して適切にパターン像を重畳するために、透かしパターン20は、できるだけレンズ10に近い位置(近傍)に設けられることが望ましい。なお、レンズ10が複数のレンズで構成される場合には、透かしパターン20が、レンズとレンズとの間に設けられてもよい。すなわち、透かしパターン20が、複数のレンズのうちの最も対物側のレンズと撮像素子30との間に設けられてもよい。
【0031】
より具体的には、透かしパターン20は、自己相関性の高いパターン像を被写体Objの像に重畳する。例えば、A5に示すように、透かしパターン20は、2値化されたチャープ波パターンにより構成され、チャープ波パターンのパターン像(図1のA1に示すパターン像)を被写体Objの像に重畳する。この透かしパターン20は、透明な平板・フィルム等(パターン部材)にパターンが形成されることで構成されてもよく、レンズ10上に黒色フィルム・インク等(パターン部材)でパターンが形成されることで構成されてもよい。
【0032】
透かしパターン20によりパターン像が重畳された被写体Objの像は、撮像素子30の撮像面に結像される。このとき、撮像面におけるパターン像は、撮像面とフォーカス位置との位置関係に応じて幅(パターン幅)や向きが異なる。フォーカス位置が撮像面にあるとき(合焦時)には、パターン像は消失する。例えば、図1のFA1に示すように、デフォーカス位置に撮像面がある場合には、A2に示すように、撮像面上のパターン幅は透かしパターン20のパターン幅よりも縮小された幅となる。FA2に示すように、FA1よりもフォーカス位置に近い位置に撮像面がある場合には、A3に示すように、撮像面上のパターン幅はさらに縮小されたパターン幅となる。そして、FA3に示すように、前ピント状態のデフォーカス位置に撮像面がある場合には、A4に示すように、撮像面上のパターン像は透かしパターン20を反転したパターン像となる。すなわち、レンズ10の光軸に直交する軸をx軸(広義には、第1の座標軸)とし、透かしパターン20(透かしパターン20の透過率)を関数h(x)で表すとすると、FA1、FA2に示す後ピント状態において、パターン像はh(x/k)で表される。また、FA3に示す前ピント状態において、パターン像はh(−x/k)で表される(kは、パターン幅縮小率)。ここで、後ピント状態は、フォーカス位置がレンズ側から見て撮像面後方にある状態であり、前ピント状態は、フォーカス位置がレンズ側から見て撮像面の前方にある状態である。
【0033】
撮像素子30は、透かしパターン20によってパターン像が重畳された被写体Objの像を撮像する。そして、撮像素子30の撮像により得られた画像信号に基づいて画像データが生成される。例えば、撮像素子30は、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等の固体撮像素子により構成できる。これらの撮像素子は、撮像した画像の画像信号(アナログ信号)を出力する。そして、その画像信号がA/D変換処理(Analog to Digital Conversion)され、撮像画像の画像データが生成される。
【0034】
2.相関演算処理、及びデフォーカス情報の取得手法
図2〜図5を用いて、本実施形態の相関演算処理、及びデフォーカス情報の取得手法について説明する。
【0035】
図2に示すように、被写体Objの撮像領域の各点をr〜rとする。そうすると、各点r〜rからの反射光がレンズ10に入射し、各点r〜rに対応する像が撮像素子30の撮像面に結像される。このとき、各点r〜rに対応する像には、それぞれ透かしパターン20によってパターン像が重畳される。そのため、撮像面に結像される像は、被写体Objの像に対してパターン像を光学的にコンボリューションしたものとなる。
【0036】
例えば、図2のFB1に示すように、後ピント状態のデフォーカス位置に撮像面があるときには、B1に示すように、被写体Objの像に対して正転のパターン像h(x/k)がコンボリューションされる。一方、FB2に示すように、前ピント状態のデフォーカス位置に撮像面があるときには、B2に示すように、被写体Objの像に対して反転のパターン像h(−x/k)がコンボリューションされる。そして、B3、B4に示すように、パターン像がコンボリューションされた画像の画像データに対して、透かしパターン20に対応する参照パターンhs(x)(参照パターンの関数)が相関演算処理される。
【0037】
具体的には、図3のC1に示すように、後ピント状態のデフォーカス位置に撮像面がある場合の像は、被写体Objの反射率分布r(x/m)とパターン像h(x/k)とのコンボリューションにより表される(mは、被写体像の縮小率)。すなわち、下式(1)で表される。ここで、記号“*”は、コンボリューション演算を表す(下式(1)においては、光学的なコンボリューション)。
fB(x,k)=r(x/m)*h(x/k) ・・・ (1)
【0038】
参照パターンhs(x)は、C2に示す第1の参照パターンhs(x/ks)、及びC3に示す第2の参照パターンhs(−x/ks)により構成される(ksは、参照パターンの縮小率)。hs(x/ks)は、正転のパターン像h(x/k)に対応する参照パターンであり、hs(−x/ks)は、反転のパターン像h(−x/k)に対応する参照パターンである。そして、下式(2)に示すように、これらの参照パターンを画像データにコンボリューション演算することで相関演算処理が行われ、評価値V(x)、V(x)が求められる。
(x)=fB(x,k)*hs(x/ks),
(x)=fB(x,k)*hs(−x/ks) ・・・ (2)
【0039】
一方、図4に示すように、前ピント状態のデフォーカス位置に撮像面がある場合の像は、下式(3)で表され、評価値V(x)、V(x)は、下式(4)で表される。
fF(x,k)=r(x/m)*h(−x/k) ・・・ (3)
(x)=fF(x,k)*hs(x/ks),
(x)=fF(x,k)*hs(−x/ks) ・・・ (4)
【0040】
ここで、参照パターンが下式(5)を満たすと仮定する。
hs(x/ks) =h(x/k),
hs(−x/ks)=h(−x/k) ・・・ (5)
【0041】
そうすると、後ピント状態において、上式(1)、(2)より、下式(6)が成り立つ。
(x)=r(x/m)*h(x/k)*h(x/k),
(x)=r(x/m)*h(x/k)*h(−x/k) ・・・ (6)
【0042】
また、前ピント状態において、上式(3)、(4)より、下式(7)が成り立つ。
(x)=r(x/m)*h(−x/k)*h(x/k),
(x)=r(x/m)*h(−x/k)*h(−x/k) ・・・ (7)
【0043】
このとき、本願の発明者が、上式(6)、(7)に示すV(x)、V(x)をシミュレーションにより求めたところ、V(x)がV(x)に対してシフトする現象が生じることが判明した。具体的には、図3のC4に示すように、後ピント状態において、V(x)がV(x)に対して、x軸の正方向にシフト量δ(+δ)だけシフトする。また、図4のD1に示すように、前ピント状態において、V(x)がV(x)に対して、x軸の負方向にシフト量δ(−δ)だけシフトする。なお、本願の発明者は、上式(5)が成立しないとき(ks=kでないとき)でも、V(x)がV(x)に対してシフトすることを確認している。
【0044】
図5に示すように、本実施形態では、評価値V(x)と評価値V(x)とが相関演算されて、シフト量δが求められる。具体的には、V(x)・V(x+s)をxで積分する相互相関演算(Cross correlation)により、相関値S(s)が求められる。そして、相関値S(s)の値が最大となるsが求められ、そのsがシフト量δとして設定される。例えば、図5に示すように、V(x)がV(x)に対して+δシフトするときには、相関値S(s)が最大値となるsとしてs=+δが求められ、シフト量s=+δが設定される。
【0045】
本実施形態では、この評価値V(x)、V(x)のシフトに基づいてデフォーカス情報が取得され、取得されたデフォーカス情報に基づいてフォーカス制御が行われる。例えば、シフト方向に基づいてデフォーカス方向の情報が取得される。具体的には、s>0(シフト方向がx軸の正方向)の場合には、後ピント状態であると判定され、s<0(シフト方向がx軸の負方向)の場合には、前ピント状態であると判定される。また、s=0(s≒0)の場合には、合焦点であると判定される。あるいは、図8等で後述するように、シフト量sの大きさ(絶対値)に基づいてデフォーカス量の情報が取得される。すなわち、シフト量sの大きさに基づいてパターン幅縮小率kが推定され、そのkに基づいて撮像面の位置とフォーカス位置との距離が求められる。
【0046】
3.透かしパターン、参照パターン
図6に、透かしパターンの具体例を示す。図6に示す透かしパターン20は、E1に示すチャープ波パターン(掃引波パターン)を2値化したものである。具体的には、E1に示すように、チャープ波パターンは、x軸の正方向に空間周波数が単調減少(または、単調増加)する三角関数で表される。例えば、E2に示すように、x軸の正方向で空間周波数fxがリニア(直線的、線形)に減少する三角関数で表される。そして、三角関数の値が所定の値以上(例えば、正)となるxの範囲では、高透過率(第1の透過率)とし、三角関数の値が所定の値以下(例えば、負)となるxの範囲では、低透過率(第2の透過率)とすることで、チャープ波パターンを2値化できる。
【0047】
参照パターンには、この透かしパターン20に対応して、チャープ波パターンが2値化された参照パターンが用いられる。すなわち、参照パターンを関数hs(x)で表すとすると、チャープ波パターンの三角関数の値が所定の値以上となるxの範囲に対して、例えばhs(x)=1(第1の値)が対応する。また、三角関数の値が所定の値以下となるxの範囲に対して、例えばhs(x)=0(第2の値)が対応する。パターン幅縮小率ksに応じた参照パターンは、上記のhs(x)において、xをx/ks又は−x/ksで置き換えてhs(x/ks)又はhs(−x/ks)とすることで求められる。なお、参照パターンの関数hs(x)は、例えば数値テーブルにより実現できる。
【0048】
4.第1の構成例
図7に、本実施形態の撮像装置の第1の構成例を示す。この撮像装置は、撮像部100、参照パターン生成部110、相関演算部120(コンボリューション演算部)、デフォーカス情報取得部130(画像シフト判定部)、レンズ駆動部140、オートフォーカス制御部150(フォーカス制御部)、撮像取込部160、画像記録部170、モニター表示部180を含む。なお、本発明の撮像装置は、図7の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり他の構成要素を追加したりする等の種々の変形実施が可能である。
【0049】
撮像部100は、被写体を撮像し、画像データを出力する。具体的には、撮像部100は、図示しない光学素子、透かしパターン、撮像素子、AFE(Analog Front End)回路を含む。AFE回路は、撮像素子からの画像信号をA/D変換処理し、画像データを生成する。
【0050】
参照パターン生成部110は、透かしパターンに対応する参照パターンを生成する。具体的には、所定のパターン幅縮小率ks(例えば、ks=2)の参照パターンhs(x/ks)、hs(−x/ks)を生成する。相関演算部120は、相関演算処理を行う。具体的には、撮像部100からの画像データと参照パターンとのコンボリューション演算(畳み込み積分)を行って、評価値V(x)、V(x)を求める。デフォーカス情報取得部130は、評価値V(x)、V(x)に基づいて、デフォーカス情報を取得する。具体的には、評価値V(x)、V(x)のシフト量に基づいて、フォーカスが前ピント状態であるか後ピント状態であるか(デフォーカス方向)を判定する。そして、判定結果に基づいて前ピント・後ピント判定信号(デフォーカス方向判定信号)を出力する。
【0051】
オートフォーカス制御部150は、デフォーカス情報取得部130からのデフォーカス情報に基づいて、オートフォーカス制御及び合焦の検出処理を行う。具体的には、オートフォーカス制御部150は、前ピント・後ピント判定信号が前ピント状態を示す時には、フォーカス位置を後退させる制御を行う。また、前ピント・後ピント判定信号が後ピント状態を示す時には、フォーカス位置を前進させる制御を行う。レンズ駆動部140は、フォーカスレンズの駆動を行う。具体的には、レンズ駆動部140は、オートフォーカス制御部150からの制御信号を受けて、フォーカス位置を前進又は後退させる。撮像取込部160は、合焦時において撮像部100からの画像データを取り込み、取り込んだ画像データを画像記録部170に出力する。具体的には、撮像取込部160は、オートフォーカス制御部150が合焦を検出処理することで生成された合焦確定信号を受けて、画像データを取り込む。
【0052】
画像記録部170は、画像取込部160からの画像データを記録する。例えば、画像記録部170は、半導体メモリや、光学式ドライブにより構成できる。モニター表示部180は、撮像取込部160または画像記録部170からの画像データを表示する。例えば、モニター表示部180は、液晶ディスプレイ(LCD)や、EL(Electro-Luminescence)ディスプレイにより構成できる。
【0053】
ここで、デジタル一眼レフカメラ等のデジタルカメラにおいて、小型の構成で高速にオートフォーカスできるオートフォーカス機能が求められているという課題があった。例えば、位相差AF方式では、高速オートフォーカスが可能である反面、光路の分岐手段やAF専用センサが必要なため小型化が困難である。また、イメージャ方式(コントラスト方式)では、小型化が可能である反面、フォーカス位置を探索的に求めるため高速オートフォーカスが困難である。
【0054】
この点、本実施形態によれば、レンズ10が被写体Objを結像し、透かしパターン20が、被写体Objの像に対してパターン像を光学的に重畳し、撮像素子30が、パターン像が重畳された被写体Objの像を撮像し、相関演算部120が、撮像により得られた画像データと参照パターンとの相関演算処理を行う。
【0055】
また、本実施形態では、デフォーカス情報取得部130が、相関演算処理により得られた評価値に基づいてデフォーカス情報を取得し、オートフォーカス制御部150が、そのデフォーカス情報に基づいてフォーカス制御を行う。
【0056】
このようにすれば、評価値に基づいてデフォーカス情報が取得され、そのデフォーカス情報に基づいてフォーカス制御が行われることで、オートフォーカス機能を実現できる。また、本実施形態によれば、位相差AF方式のように光路の分岐手段やAF専用センサを必要としないため、構成をコンパクトにすることができる。これにより、カメラの小型化を図ることができる。
【0057】
また、本実施形態では、デフォーカス情報取得部130が、評価値に基づいてデフォーカス方向を判定し、オートフォーカス制御部150が、そのデフォーカス方向に基づいてフォーカス制御を行う。
【0058】
このようにすれば、デフォーカス情報としてデフォーカス方向の情報を取得できる。そして、デフォーカス方向に基づいてフォーカス制御を行うことで、フォーカス駆動の方向を直接に決定することができる。これにより、フォーカス駆動の方向を探索的に決定するイメージャ方式に比べて、オートフォーカスを高速化できる。
【0059】
なお、本発明では、参照パターンとして1つの参照パターンを生成し、評価値として1つの評価値を求めてもよく、参照パターンとして複数の参照パターンを生成し、評価値として複数の評価値を求めてもよい。
【0060】
例えば、本実施形態では、参照パターンとして第1、第2の参照パターンhs(x/ks)、hs(−x/ks)を生成し、相関演算処理により第1、第2の評価値V(x)、V(x)を求める。このようにすれば、評価値V(x)、V(x)のシフト量δを求めることで、そのシフト量δの符号に基づいてデフォーカス方向を判定できる。
【0061】
また、本実施形態では、図8等で後述するように、デフォーカス情報取得部130が、評価値V(x)、V(x)に基づいてデフォーカス量を算出し、オートフォーカス制御部150が、そのデフォーカス量に基づいてフォーカス制御を行ってもよい。
【0062】
このようにすれば、デフォーカス情報としてデフォーカス量を取得して、撮像面とフォーカス位置の距離を検出することができる。そのため、デフォーカス量に基づいてフォーカス制御することで、例えば1回のフォーカス駆動でフォーカスレンズを合焦点まで駆動できる。これにより、フォーカス駆動の方向を探索的に決定するイメージャ方式に比べて、オートフォーカスを高速化できる。
【0063】
また、本実施形態では、相関演算部120が、x軸(第1の座標軸)に沿った第1の方向(正方向又は負方向)で空間周波数が単調増加する第1の参照パターンhs(x/ks)と、画像データとの相関演算処理を行って、第1の評価値V(x)を取得する。また、第1の方向で空間周波数が単調減少する第2の参照パターンhs(−x/ks)と、画像データとの相関演算処理を行って第2の評価値V(x)を取得する。そして、デフォーカス情報取得部130は、第1、第2の評価値V(x)、V(x)に基づいてデフォーカス情報を取得する。
【0064】
例えば、図3のC2、C3に示すように、x軸の正方向に空間周波数が単調増加するhs(x/ks)と、x軸の正方向に空間周波数が単調減少するhs(−x/ks)が用いられる。このとき、C1に示すように、パターン像の空間周波数がx軸の正方向に単調増加するとする。そうすると、このパターン像に対して、hs(x/ks)はhs(−x/ks)よりも相関性が高い。そのため、評価値V(x)とV(x)がシフト等の差異を生じ、その差異に基づいてデフォーカス情報を取得することができる。
【0065】
本実施形態では、図6で説明したように、このような参照パターンとしてチャープ波パターンが用いられてもよい。このチャープ波パターンは、自己相関性が高いパターンである。すなわち、被写体像や反転パターン等の他のパターンに比べて、自己と同形状のパターンに対して非常に高い相関性を示す。そのため、透かしパターン及び参照パターンにチャープ波パターンを用いることで、hs(x/ks)、hs(−x/ks)の相関性の差がより大きくなり、デフォーカス情報をより高精度に取得できるようになる。
【0066】
5.デフォーカス量の取得手法
図8〜図11を用いて、デフォーカス量の取得手法について具体的に説明する。図8に示すように、F1に示すデフォーカス位置に撮像素子30の撮像面があるものとする。このとき、F2に示すフォーカス位置と撮像面との距離をdとし、パターン20と撮像面との距離をdiとする。距離dは、F1に示すデフォーカス位置におけるデフォーカス量である。また、パターン20と撮像素子30の位置は、撮像装置内部で固定されているため、距離diは既知である。なお以下では、説明を簡単にするために、パターン20のパターン幅を1とする。
【0067】
図9に示すように、参照パターンのパターン幅縮小率ksとして、第1〜第nのパターン幅縮小率k1〜kn(複数のパターン幅縮小率。nは自然数)が設定される。k1〜knに対応して、参照パターンhs(x/k1)〜hs(x/kn)、hs(−x/k1)〜hs(−x/kn)が生成される。そして、hs(x/k1)〜hs(x/kn)が、撮像画像データr(x/m)*h(x/k)に対してコンボリューション演算されることで、評価値V1(x)〜Vn(x)が求められる。また、hs(−x/k1)〜hs(−x/kn)が、撮像画像データr(x/m)*h(x/k)に対してコンボリューション演算されることで、評価値V1(x)〜Vn(x)が求められる。
【0068】
そして、評価値V1(x)〜Vn(x)、V1(x)〜Vn(x)に基づいて、シフト量+δ1〜+δn(または、−δ1〜−δn)が求められる。例えば、V1(x)のV1(x)に対するシフト量から+δ1が求められ、Vn(x)のVn(x)に対するシフト量から+δnが求められる。
【0069】
図10に示すように、パターン幅縮小率k1〜knに応じて異なったシフト量+δ1〜+δnが得られる。これは、参照パターンのパターン幅縮小率が異なると、参照パターンとパターン像との相関性も異なるためである。そして、シフト量δの最大値+δi(iは、1以上n以下の自然数)が検出され、+δiに対応するパターン幅縮小率kiが求められる。参照パターンとパターン像との相関性が最大のとき、シフト量も最大になると考えられることから、kiは、パターン像のパターン幅縮小率kに最も近いパターン幅縮小率となる。このようにして、パターン像のパターン幅縮小率k(=ki)が求められる。
【0070】
図11に、パターン幅縮小率kとデフォーカス量dの関係の説明図を示す。図11では、撮像面の位置とフォーカス位置を、上述の図8と同様の符号F1、F2で示す。図11に示すように、1/kとdが比例することから、下式(8)が成り立つ。
tanθ=(1−1/k)/di=(1/k)/d ・・・ (8)
【0071】
そして、上式(8)から下式(9)が導かれる。
d=di・1/(k−1) ・・・ (9)
上式(9)により、パターン像のパターン幅縮小率kと、既知の距離diに基づいて、デフォーカス量dが求められる。
【0072】
6.第2の構成例
図12に、本実施形態の撮像装置の第2の構成例を示す。この撮像装置は、撮像部100、参照パターン生成部110、相関演算部120(コンボリューション演算部)、デフォーカス情報取得部130、レンズ駆動部140、オートフォーカス制御部150、撮像取込部160、画像記録部170、モニター表示部180を含む。なお、図7等で説明したモニター表示部等の構成要素には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0073】
第2の構成例の撮像装置は、デフォーカス情報としてデフォーカス量及びデフォーカス方向を取得し、そのデフォーカス量及びデフォーカス方向に基づいてオートフォーカス制御を行うための装置である。
【0074】
具体的には、参照パターン生成部110は、相関演算部120からパターン幅縮小率k1〜knを受けて、k1〜knに対応する参照パターンhs(x/k1)〜hs(x/kn)、hs(−x/k1)〜hs(−x/kn)を生成する。相関演算部120は、撮像部100からの画像データと、参照パターンhs(x/k1)〜hs(x/kn)、hs(−x/k1)〜hs(−x/kn)とのコンボリューション演算を行う。そして、相関演算部120は、コンボリューション演算により得られた評価値V1(x)〜Vn(x)、V1(x)〜Vn(x)に基づいて、シフト量δ1〜δnを求める。
【0075】
デフォーカス情報取得部130は、シフト量δ1〜δnに基づいて、デフォーカス量とデフォーカス方向の情報を取得する。具体的には、デフォーカス情報取得部130は、適合パターン幅検出部200、画像シフト判定部210、デフォーカス量算出部220を含む。適合パターン幅検出部200は、シフト量δ1〜δnの最大値δi(絶対値の最大値)を検出処理し、最大値δiに対応するパターン幅縮小率kiを抽出する。画像シフト判定部210は、シフト量δiに基づいてデフォーカス方向を判定し、デフォーカス方向判定信号を出力する。具体的には、画像シフト判定部210は、δi>0のとき後ピント状態、δi<0のとき前ピント状態と判定する。デフォーカス量算出部220は、パターン幅縮小率kiに基づいてデフォーカス量を算出する。具体的には、上式(9)によりデフォーカス量dを求める。
【0076】
オートフォーカス制御部150は、デフォーカス量dと、デフォーカス方向判定信号を受けて、オートフォーカス制御を行う。具体的には、オートフォーカス制御部150は、デフォーカス方向判定信号に基づいてフォーカス駆動の駆動方向(フォーカス位置の移動方向)を制御し、デフォーカス量dに基づいてフォーカス駆動の駆動量(フォーカス位置の移動距離)を制御する。
【0077】
このように、本実施形態によれば、画像データに対して、複数のパターン幅縮小率k1〜knに対応する複数の参照パターンが相関演算処理されて、k1〜knに対応する評価値が求められる。そして、その評価値に基づいてパターン像との相関性が最も高い参照パターンのパターン幅縮小率kiが抽出される。
【0078】
このようにすれば、撮像面におけるパターン像のパターン幅縮小率kを求めることができる。すなわち、k1〜knのうちパターン像のパターン幅縮小率kに最も近いパターン幅縮小率としてkiを抽出できる。これにより、kiに基づいてデフォーカス量dを算出することで、撮像面のデフォーカス量を知ることができる。そして、求めたデフォーカス量dに基づいてフォーカス制御を行うことで、撮像面に対して高速にフォーカス位置を合わせることができる。
【0079】
なお、本発明では、k1〜knに対応する複数の参照パターンとして、k1〜knの各々について各々1つの参照パターンが生成されてもよく、k1〜knの各々について各々複数の参照パターンが生成されてもよい。
【0080】
例えば、本実施形態では、k1〜knに対応する複数の参照パターンとして、複数の第1の参照パターンhs(x/k1)〜hs(x/kn)と、複数の第2の参照パターンhs(−x/k1)〜hs(−x/ks)が生成される。そして、相関演算処理によって複数の第1の評価値V1(x)〜Vn(x)と、複数の第2の評価値V1(x)〜Vn(x)が取得され、シフト量δ1〜δnが求められる。このようにすれば、δ1〜δnの最大値δiに対応するパターン幅縮小率kiを求めることで、パターン像との相関性が最も高い参照パターンのパターン幅縮小率kiを抽出できる。
【0081】
7.スポット光による照明
図13に、本実施形態の撮像装置の第2の基本構成例を示す。この撮像装置は、レンズ10、透かしパターン20、撮像素子30、スポット光生成部40を含む。なお、図1等で説明したレンズ等の構成要素には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0082】
スポット光生成部40は、被写体Objにスポット光SP(ポインティングビーム)を照射する。具体的には、スポット光生成部40は、光源50、照射部60を含む。光源50は、スポット光を照射するためのビームを生成し、例えばLEDや半導体レーザによって構成される。照射部60は、光源50からのビームを反射または屈折させて被写体Objに照射する。例えば、照射部60は、ミラーやプリズムによって構成される。スポット光生成部40により照射されるスポット光SPは、図示しない制御回路(例えば、オートフォーカス制御部)によりオン・オフが制御されてもよい。
【0083】
スポット光SPは、例えば、被写体Obj上の1点(または、複数点)を照明する。このとき、レンズ10によりスポット光SPの反射光が結像されることで、撮像素子30の撮像面にスポット光SPに対応する1つのパターン像が結像される。このパターン像は、後ピント状態においてp・h(x/k)で表され、前ピント状態においてp・h(−x/k)で表される。pは、スポット光SPについての被写体Objの反射率である。一方、自然光やアクティブ照明等のスポット光以外の照明による像も撮像面に結像される。この像は、後ピント状態においてr(x/m)*h(x/k)で表され、前ピント状態においてr(x/m)*h(−x/k)で表される。
【0084】
本実施形態では、スポット光をオフしたときの像と、オンしたときの像が撮像される。例えば、後ピント状態では、スポット光をオフしたときに撮像される像fBN−1(x,k)と、スポット光をオンしたときに撮像される像fB(x,k)は、下式(10)で表される。
fBN−1(x,k)=r(x/m)*h(x/k),
fB(x,k) =r(x/m)*h(x/k)+p・h(x/k)
・・・ (10)
【0085】
そして、下式(11)に示すように、これらの像を撮像することで得られた画像データの差分が演算され、下式(12)に示すように、その差分と参照パターンとのコンボリューション演算により評価値が求められる。
gB(x,k)=fB(x,k)−fBN−1(x,k) ・・・ (11)
(x)=gB(x,k)*hs(x/ks),
(x)=gB(x,k)*hs(−x/ks) ・・・ (12)
【0086】
一方、後ピント状態では、スポット光をオフしたときの像fFN−1(x,k)と、スポット光をオンしたときの像fF(x,k)は、下式(13)で表される。そして、差分gF(x,k)は下式(14)で表され、評価値V(x)、V(x)は下式(15)で表される。
fFN−1(x,k)=r(x/m)*h(−x/k),
fF(x,k) =r(x/m)*h(−x/k)+p・h(−x/k)
・・・ (13)
gF(x,k)=fF(x,k)−fFN−1(x,k) ・・・ (14)
(x)=gF(x,k)*hs(x/ks),
(x)=gF(x,k)*hs(−x/ks) ・・・ (15)
【0087】
ここで、参照パターンが下式(16)を満たし、透かしパターン及び参照パターンがチャープ波パターンであるものとする。
hs(x/ks) =h(x/k),
hs(−x/ks)=h(−x/k) ・・・ (16)
【0088】
チャープ波パターン同士のコンボリューション演算では、下式(17)の関係が成り立つ。関数sinc(x)は、図14に示すシンク関数である。
h(x/k)*h(x/k)=h(−x/k)*h(−x/k)=sinc(x),
h(x/k)*h(−x/k)=0 ・・・ (17)
【0089】
そうすると、上式(10)〜(17)より、後ピント状態において下式(18)が成り立ち、前ピント状態において下式(19)が成り立つ。また、合焦時にはパターン像が消失することから、下式(20)が成り立つ。
(x)=p・h(x/k)*h(x/k) =p・sinc(x),
(x)=p・h(x/k)*h(−x/k)=0
・・・ (18)
(x)=p・h(−x/k)*h(x/k) =0,
(x)=p・h(−x/k)*h(−x/k)=p・sinc(x)
・・・ (19)
(x)=V(x)=0 ・・・ (20)
【0090】
本実施形態では、上式(18)〜(20)に基づいて、V(x)>0、V(x)=0のとき後ピント状態と判定し、V(x)=0、V(x)>0のとき前ピント状態と判定し、V(x)=V(x)=0のときフォーカス位置と判定することで、デフォーカス方向を判定する。なお、画像データの画素値は正のデータであることから、本発明では、上式(18)〜(20)の評価値がオフセットを含む値となってもよい。また、本発明では、透かしパターン及び参照パターンがチャープ波パターン以外のパターンであってもよく、ksがk以外の値であってもよい。このとき、後ピント状態におけるV(x)、前ピント状態におけるV(x)が、p・sinc(x)と異なる関数となってもよい。
【0091】
ここで、上記においては、スポット光以外の自然光等によっても被写体Objが照明されている場合について説明した。但し、本発明では、カメラによる夜間撮影や、内視鏡による撮像等のように、スポット光以外の照明が無いときでもオートフォーカス制御を行うことができる。この場合、スポット光照射時において撮像が行われ、撮像画像は下式(21)によって表される。
fB(x,k)=p・h(x/k),
fF(x,k)=p・h(−x/k) ・・・ (21)
【0092】
従って、画像データと参照パターンをコンボリューション演算して評価値を求めることで、上式(18)〜(20)と同様の演算結果が得られる。このようにして、上記と同様の手法によりデフォーカス方向を判定できる。
【0093】
8.第3の構成例
図15に、本実施形態の撮像装置の第3の構成例を示す。この撮像装置は、撮像部100、参照パターン生成部110、相関演算部120(自己相関演算部)、デフォーカス情報取得部130、レンズ駆動部140、オートフォーカス制御部150、撮像取込部160、画像記録部170、モニター表示部180を含む。なお、図7等で説明したモニター表示部等の構成要素には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0094】
第3の構成例の撮像装置は、被写体にスポット光を照射することで得られた被写体像に基づいてデフォーカス情報を取得し、そのデフォーカス情報に基づいてオートフォーカス制御を行うための装置である。
【0095】
撮像部100は、被写体にスポット光を照射するためのスポット光生成部40を含む。参照パターン生成部110は、相関演算部120からのパターン幅縮小率k1〜knを受けて、参照パターンhs(x/k1)〜hs(x/kn)、hs(−x/k1)〜hs(−x/kn)を生成する。相関演算部120は、参照パターンと、撮像部100からの画像データとのコンボリューション演算を行い、評価値V1(x)〜Vn(x)、V1(x)〜Vn(x)を求める。
【0096】
デフォーカス情報取得部130は、相関演算部120からの評価値に基づいてデフォーカス情報を取得する。具体的には、デフォーカス情報取得部130は、デフォーカス方向検出部230、適合パターン幅検出部200、デフォーカス量算出部220を含む。デフォーカス方向検出部230は、評価値に基づいてデフォーカス方向を判定し、デフォーカス方向判定信号を出力する。例えば、評価値V1(x)〜Vn(x)、V1(x)〜Vn(x)の任意の一組(例えばV1(x)とV1(x))の符号に基づいて前ピント状態・後ピント状態・合焦状態を判定する。適合パターン幅検出部200は、パターン像のパターン幅縮小率kを検出処理する。具体的には、評価値に基づいて、k1〜knに対応するピーク値p1〜pnを求める。すなわち、後ピント状態においてV1(x)〜Vn(x)のピーク値、前ピント状態においてV1(x)〜Vn(x)のピーク値を求める。そして、p1〜pnに基づいて、k1〜knのうちのパターン像のパターン幅縮小率kに最も近いパターン幅縮小率kj(jは、1以上n以下の自然数)を抽出する。デフォーカス量算出部220は、kjに基づいてデフォーカス量を算出する。具体的には、図11等で説明した算出手法によりデフォーカス量dを求める。
【0097】
図16を用いて、kjの取得手法について具体的に説明する。図16に示すように、p1〜pnとして、k1〜knに応じて異なった値が取得される。そして、適合パターン幅検出部200は、p1〜pnの最大値pjを検出し、pjに対応するパターン幅縮小率kjを抽出することで、パターン像のパターン幅縮小率kに最も近いkjを抽出する。ここで、p1〜pnがk1〜knに応じて異なるのは、k1〜knに応じて参照パターンとパターン像との相関性が異なるためである。参照パターンとパターン像の相関性は、パターン幅縮小率が一致するとき最も高い。また、参照パターンとパターン像の相関性が高いほど評価値のピーク(例えば、チャープ波パターンを用いたときのシンク関数のピーク)は鋭くなる。そのため、p1〜pnの最大値pjを検出することで、パターン像のパターン幅縮小率kに最も近いkjを抽出できる。
【0098】
図17に、本実施形態の撮像装置の動作説明図を示す。図17のG1に示すように、第1のフレームf1においてスポット光が点灯(オン)され、G2に示すように、撮像素子による撮像が行われる。G3に示すように、第2のフレームf2においてスポット光が消灯(オフ)され、G4に示すように、撮像素子による撮像が行われる。そして、f1、f2において撮像された画像に基づいてデフォーカス情報が取得される。デフォーカスと判定された場合には、G5に示すように、フォーカス駆動が行われる。
【0099】
同様に、第3のフレームf3において、スポット光が点灯された状態で撮像が行われ、f2、f3において撮像された画像に基づいてデフォーカス情報が取得される。そして、デフォーカスと判定された場合には、再びフォーカス駆動が行われる。このようなフォーカス制御が、合焦に至るまで繰り返される。例えば、G6に示すように、第5のフレームf5において合焦と判定されたとする。そうすると、G7に示すように、合焦確定信号がアクティブにされ、f5において撮像された画像が記録される。
【0100】
なお、上記第3の構成例の説明では、複数のパターン幅縮小率に対応する評価値が求められ、その評価値に基づいてデフォーカス量及びデフォーカス方向の情報が取得されるものとして説明した。但し、本発明では、1つのパターン幅縮小率に対応する評価値が求められ、その評価値に基づいてデフォーカス方向の情報のみが取得されてもよい。
【0101】
ここで、本実施形態によれば、スポット光生成部40が、被写体Objにスポット光SPを照射し、レンズ10が、被写体Objに照射されたスポット光SPの像を結像し、透かしパターン20が、スポット光SPの像に対してパターン像を光学的に重畳し、撮像素子30が、そのスポット光SPの像を撮像する。そして、相関演算部110が、撮像により得られた画像データと、透かしパターン20に対応する参照パターンとの相関演算処理を行う。
【0102】
このようにすれば、被写体に照明が当たらない状況であっても、オートフォーカス機能を実現することができる。具体的には、被写体にスポット光を照射することで、パターン像が重畳されたスポット光の像を撮像できる。そして、その撮像により得られた画像データと参照パターンとを相関演算処理することで、デフォーカス情報を取得できる。このようにして、被写体に照明が当たらない状況であってもデフォーカス情報を取得し、オートフォーカス制御を行うことができる。
【0103】
また、本実施形態によれば、デフォーカス情報の取得処理を簡素化できる。例えば、上式(18)〜(20)等で説明したように、評価値V(x)、V(x)の大小関係によりデフォーカス方向を判定できる。このように、評価値V(x)、V(x)をさらに加工することなくデフォーカス方向を判定できる。
【0104】
9.電子機器
図18に、本実施形態の撮像装置を含む電子機器の構成例を示す。この電子機器は、カメラモジュール910(撮像装置)、表示制御装置920、ホストコントローラ940、ドライバ950(表示ドライバ)、電気光学パネル960を含む。なお、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加したりするなどの種々の変形実施が可能である。
【0105】
カメラモジュール910は、光学素子、透かしパターン、撮像素子等により構成され、オートフォーカス制御や撮像を行う。表示制御回路920は、カメラモジュール910から供給される画像データや、水平同期信号、垂直同期信号等をドライバ950に対して供給する。ホストコントローラ940は、例えばCPUであり、操作入力部970からの操作情報を受けて、カメラモジュール910、表示制御回路920、ドライバ950を制御する。電気光学パネル960は、例えば液晶パネルやELパネルであり、ドライバ950の駆動により画像を表示する。操作入力部970は、ユーザーが各種情報を入力するためのものであり、各種ボタン、キーボード等により実現される。
【0106】
なお、本実施形態により実現される電子機器としては、例えばデジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯型情報端末、携帯電話機、携帯ゲーム端末、WEBカメラ等の種々の機器を想定できる。
【0107】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語(光学素子、パターン、光電変換素子、相関演算、第1の座標軸等)と共に記載された用語(レンズ、透かしパターン、撮像素子、コンボリューション演算、x軸等)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また相関演算部、デフォーカス情報取得部、撮像装置、電子機器等の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定に限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0108】
10 光学素子、20 パターン、30 撮像素子、40 スポット光生成部、
50 光源、60 照射部、100 撮像部、110 参照パターン生成部、
120 相関演算部、130 デフォーカス情報取得部、140 レンズ駆動部、
150 オートフォーカス制御部、160 撮像取込部、170、画像記録部、
180 モニター表示部、200 適合パターン幅検出部、
210 画像シフト判定部、220 デフォーカス量算出部、
230 デフォーカス方向検出部、910 カメラモジュール、
920 表示制御回路、940 ホストコントローラ、950 ドライバ、
960 電気光学パネル、970 操作入力部、
Obj 被写体、h(x/k) パターン像、hs(x/ks) 参照パターン、
k,ks パターン幅縮小率、V(x) 評価値、d デフォーカス量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を結像し、合焦するための光学素子と、
前記光学素子によって結像された前記被写体の像を撮像する撮像素子と、
前記光学素子と前記撮像素子との間に設けられ、前記被写体の像に対してパターン像を光学的に重畳するためのパターンと、
前記撮像素子による撮像により得られた画像データと、前記パターンに対応する参照パターンとの相関演算処理を行う相関演算部と、
を含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記相関演算処理により得られた評価値に基づいてデフォーカス情報を取得するデフォーカス情報取得部と、
前記デフォーカス情報に基づいてフォーカス制御を行うオートフォーカス制御部と、
を含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記デフォーカス情報取得部は、
前記相関演算処理により得られた前記評価値に基づいてデフォーカス方向を判定し、
前記フォーカス制御部は、
前記デフォーカス情報取得部により判定された前記デフォーカス方向に基づいてフォーカス制御を行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記相関演算部は、
第1の座標軸に沿った第1の方向で空間周波数が単調増加する第1の参照パターンと、前記画像データとの相関演算処理を行って第1の評価値を取得し、前記第1の方向で空間周波数が単調減少する第2の参照パターンと、前記画像データとの相関演算処理を行って第2の評価値を取得し、
前記デフォーカス情報取得部は、
前記第1、第2の評価値に基づいてデフォーカス情報を取得することを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記相関演算部は、
前記画像データと、複数のパターン幅縮小率に対応する複数の参照パターンとの相関演算処理を行い、
前記デフォーカス情報取得部は、
前記相関演算処理により得られた評価値に基づいて、前記複数の参照パターンのうちの前記画像データに重畳された前記パターン像との相関性が最も高い参照パターンのパターン幅縮小率を抽出し、抽出されたパターン幅縮小率に基づいてデフォーカス量を算出し、
前記フォーカス制御部は、
前記デフォーカス量に基づいてフォーカス制御を行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記相関演算部には、
前記複数の参照パターンとして、第1の座標軸に沿った第1の方向で空間周波数が単調増加する複数の第1の参照パターンと、前記第1の方向で空間周波数が単調減少する複数の第2の参照パターンが入力され、
前記相関演算部は、
前記画像データと前記複数の第1の参照パターンとの相関演算処理を行って複数の第1の評価値を取得し、前記画像データと前記複数の第2の参照パターンとの相関演算処理を行って複数の第2の評価値を取得し、
前記デフォーカス情報取得部は、
前記複数の第1、第2の評価値に基づいて、前記複数の参照パターンのうちの前記画像データに重畳された前記パターン像との相関性が最も高い参照パターンのパターン幅縮小率を抽出することを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
被写体にスポット光を照射するスポット光生成部と、
前記被写体に照射された前記スポット光の像を結像するための光学素子と、
前記光学素子による前記スポット光の像を撮像する撮像素子と、
前記光学素子と前記撮像素子との間に設けられ、前記スポット光の像に対してパターン像を光学的に重畳するためのパターンと、
前記撮像素子による撮像により得られた前記画像データと、前記パターンに対応する参照パターンとの相関演算処理を行う相関演算部と、
を含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記相関演算処理により得られた評価値に基づいてデフォーカス情報を取得するデフォーカス情報取得部と、
前記デフォーカス情報に基づいてフォーカス制御を行うフォーカス制御部と、
を含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
請求項1乃至8において、
前記パターン、及び前記参照パターンは、
チャープ波パターンであることを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の撮像装置を含むことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−256776(P2010−256776A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109115(P2009−109115)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】